IPEの果樹園2013

今週のReview

12/23-28

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連銀のテイパー・ショック ・・・北朝鮮の権力闘争 ・・・ユーロ圏の問題 ・・・アジアの模索 ・・・ECBの役割 ・・・危機後のアイルランド ・・・Alibabaと人民元 ・・・アフリカの成長 ・・・金融危機を考える ・・・アベノミクスの評価 ・・・ポピュリストと世界市場 ・・・第1次世界大戦から100年 ・・・プーチン対ヨーロッパ ・・・経済停滞とシェール革命 ・・・アフガニスタンの政治 ・・・通貨操作の禁止基準 ・・・デモと世界民主主義

[長いReview]

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主な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)


l  連銀のテイパー・ショック

NYT December 8, 2013

Saving the Fed From Itself

By MARTIN S. FELDSTEIN

連銀は非常に危険な金融政策を追求している.長期金利を押し下げ,短期金利の上昇がないという約束で,人々に過度なリスクを取らせている.その効果は限られており,1兆ドルを超える負担に連銀が苦しむ理由にならない.

追加の税収も,支出削減も行わずに,連銀がさらに1兆ドルを負担するのか? 議会は,短期の財政刺激策と長期の財政赤字抑制を決めて,金融政策に景気回復の負担を過度に押し付ける状況を回避しなければならない.

FT December 15, 2013

The Fed will look for add-ons to its taper trick

Mohamed El-Erian

NYT December 16, 2013

Many Detect End of Line for Stimulus by the Fed

By BINYAMIN APPELBAUM

FT December 17, 2013

Can Yellen’s Fed sidestep lurking monsters?

By John Plender

イエレンの引き継ぐ連銀は,バーナンキに比べて,経済状態が大きく改善されている.しかし,バランスシートの悪化をどうするか,イエレンが議会で責められるかもしれない.そのリスクを重視するだろう.

FT December 19, 2013

The long farewell to quantitative easing

By Gavyn Davies

量的緩和QEがようやく終わる.アメリカ労働統計が雇用の回復を示したからだ.連銀はいよいよ債券購入を減らすだろう.そのバランスシートは安定するが,改善するには数年を要する.

5年前にリーマンブラザーズが倒産して,各国の中央銀行は一斉に膨大な流動性を供給した.アメリカのバーナンキやイギリスのメルヴィン・キングは歴史をよく知っており,銀行システムが流動性を必要とすることに応じた.それは1931-33年の銀行システムに起きたデレバレッジに連銀が対応しそこなったこと,それがマネーサプライを減らし,大恐慌を悪化させたことを前提に行われた.

こうして銀行システムへの信頼は回復した.インフレなどを懸念する声はあったが,QE1は成功であった.しかし,その後,景気回復が遅く,失業率が高いままであるのに,議会が財政刺激策を打ち出せなかった.主要経済の景気悪化を恐れて,連銀はより長期の債券を購入し,長期金利を下げる政策をQE2として2009年から実施するようになる.それは投資家にリスクの高い投資を促すことになった.

中央銀行のバランスシート悪化やバブルなど,様々な批判が起きた.しかし,今度も批判は退けられた.中央銀行は新しい金融政策を発見したと主張するようになった.2011年,長期債の購入と,昨年にはQE3が始まった.金融政策と債券市場との連動性,分配に及ぼす効果が明白になって,いよいよ金利の上昇と債券価格の下落が予想されている.

連銀は勝利宣言をした後,まだ,QEの終結を管理しなければならない.すでに新興市場からの資本流出が問題を生じている.中央銀行の独立性を失う危険もある.膨大な債券を紙幣の発行で吸収したQEを見て,政治家たちが何を考えたか,その長期の効果はまだわからない.

FT December 19, 2013

Taper in a teapot: The Fed’s tweaking of monetary policy

By Barry Eichengreen

アメリカ連銀は債券購入を月に100億ドル減らすと決めた.しかし,それは何も大きな騒ぎにならなかった.

今月の公開市場委員会の声明は,今後の金融政策も予期されたよりも幾分長く緩和状態が続くことを示した.これは中期の景気見通しが不確かな中で,金融政策を微調整するものだ.月に100億ドルというのは,4兆ドルのバランスシートにとってわずかなしずくでしかない.

午後の株式市場は何も変動を示さなかった.顕著に動いたのはドルの為替レートである.しかし,これは他の価格が動かない中で,円など,他の通貨に対してオーバーシュートしただけで,すぐに戻るだろう.

5月のバーナンキ発言に比べて静かであったのは,投資家も,新興市場も,その政策担当者も準備していたからだ.5月には,新興市場の為替レートも株価も過大評価されていた.新興市場は,今,外貨流入に頼っていない.

今週の決定はシンボリックなものだ.連銀は,非伝統的な金融政策に対する批判の声をしっかり聴いていること,正常化することを望んでいることを示した.しかし,同時に,経済が正常化するまで金融政策も正常化できないこと,を示した.ヒポクラテスが教えたように,害をなさないこと,である.

FT December 19, 2013

The Fed swaps one course of monetary drugs for another

Stephen King

VOX 19 December 2013

Tapering talk: The impact of expectations of reduced Federal Reserve security purchases on emerging markets

Barry Eichengreen, Poonam Gupta

20135月から6月にかけて,バーナンキの「テイパー談話」ショックが新興諸国を襲った.それは,驚くほど規模が大きく,国によって影響が異なった.為替レート,外貨準備,株価によってショックの程度を測り,どのような対応がショックを抑えることに効果的であったか,調査した.

マクロ経済のファンダメンタルズは重要ではなかった.むしろ,市場規模の大きな国がポートフォリオ管理の調整として大きな変動を被った.その意味で,開放的な規模の大きな金融市場を築くことに成功した新興諸国は,その矛盾したマイナスの影響を受けたことになる.

最も大きな影響を受けた諸国は,アメリカの量的緩和で大量の資本流入を許し,それ故,実質為替レートの大幅な増価や,増大する経常収支赤字の資本流入による充足,外貨準備の増加を歓迎した諸国であった.逆に,こうした幸運を国内経済に対して抑制した慎重な諸国は,最も小さな影響(落ち込み)で済んだ.

注意すべきは,資本規制や財政引き締めによる影響はほとんど重要でなく,もっと幅広いマクロ・プルーデンシャルの政策実施が効果的であった.すなわち,銀行融資の抑制,モーゲージ市場の規制,などである.

量的緩和とテイパリングに対して,資本規制を主張するより,新興諸国は正しい対応を学ぶべきである.


l  北朝鮮の権力闘争

NYT December 9, 2013

A Gamble for North Korea’s Young Leader

By CHOE SANG-HUN

その犠牲者Jang Song-thaekがキムジョンウン(金正恩)の後見人とみなされていた叔父であったこと,さらにその権力剥奪の過程で本人を代議員席から公然と連行し,その姿を国営メディアが報道し,さまざまな罪状を挙げて非難したこと,が全く異例の事件である.

キムジョンウンが,権力を完全に確立し,自分で決定を行う体制になったのか,国内の騰勢を強めるために韓国に対するこれまでにない厳しい挑発や軍事行動を取るのか,軍部がアレンジして,経済改革や中国資本を重視するJang Song-thaekを失脚させたのか,さまざまな推測がなされている.

theguardian.com, Friday 13 December 2013

The execution of Kim Jong-un's uncle signals the hardliners are back

Jasper Becker

FP DECEMBER 13, 2013

And Then There Were Two ... Kim Jong Il's Dwindling Inner Circle

BY J. DANA STUSTER

FP DECEMBER 13, 2013

Bad Blood

BY SHEN DINGLI

FT December 15, 2013

North Korea may now be more of a danger than ever before

By Victor Cha

北朝鮮とは,権力者に関する不満を囁いただけで強制収容所に送られ,死ぬまで出られない国である.それでも,Jang Song Thaekの追放は異常であった.すべての専門家は彼が北朝鮮のNo.2であると考えていた.それが間違っていたのだ.

20127月にRi Yung Ho将軍を追放し,今回,Jang Song Thaekを追放したことで,Kim Jong Unの権力は確立されたと言える.しかし,その権力基盤が何であるのか,わからない.

金日成は,軍よりも党を重視した.金正日は,党よりも軍を重視した.キムジョンウンは両方の幹部を失脚させた.彼の権力が,それらのクローニーや組織を破壊するのはリスクの高い方針だ.1950年代初め,スターリンに選ばれた金日成が国内の競争者を大量に殺戮した時代をのぞけば,北朝鮮にこのような政変はなかった.

少なくとも,改革や開放を目指すのではなく,個人崇拝や強硬派が権力を得ると予想される.

中国は不思議なほど沈黙している.明らかにJangは中国側の人物だった.特に3回目の核実験を行ってから,中国は北朝鮮を支持しなくなった.習近平とオバマは北朝鮮の非核化で静かな同盟を組んでいる.

激変に備えるしかない.この政変は若い指導者の自信というより,絶望を示したものだろう.宮廷劇は公開され,すでに核兵器を保有する無法国家が不安定化すれば,大きな脅威をばらまく.

FT December 15, 2013

Pyongyang’s purge

FT December 16, 2013

North Korea is an Asian hybrid of Orwell and Hobbes

Kurt Campbell

北朝鮮のNo.2であった叔父が,「熱意の無い拍手」(ほか,多くの理由)で失脚した,反党的な,反革命的な分子である,という.

閉鎖的な,全体主義国家の問題点は,その内部で何が起きているのかわからないことだ.このホッブズとオーウェルの想像力によって合成されたようなアジアの怪物が21世紀の北東アジア,すなわち,世界経済の最も重要なエンジンに今後も存在する,ということに驚く.

中国は,現在のテクノクラートによる指導体制から見て,このスターリン的な,あるいは毛沢東の文革的な全体国家が示す醜い脅迫や武力行使を懸念しているだろう.しかし,イデオロギー的な親類関係と,朝鮮戦争の盟友であることから,この体制を見殺しにはできないのだ.Jang Song Thaekは,北朝鮮を徐々に改革する手がかりであったが,その失脚は中国をさらに遠ざける.

アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒』である.

BLOOMBERG Dec 16, 2013

Can China Teach North Korea to Grow Up?

By William Pesek

この政変に,中国はどう対応するのか? と皆が考えた.

201112月,スイスの学校に学ぶ20歳程度の若者が金正日の後継者となった.今から2年前だ.当時,世界で最も抑圧的な国家の政治を彼に教えたのは,叔父のJang Song Thaekであった.そのとき,中国は彼に接近して,北朝鮮を新しい道へ進めてやればよかった.

つまり,胡錦濤が彼に,電話をすればよかったのだ.・・・あなたの国をごらんなさい.世界を脅迫して食糧と金融支援をもらうしかないのです.しかし,今の時代はGPSやドローンが広まっており,北朝鮮がミサイルの販売や通貨の偽造で生きる道などなくなるでしょう.100ドル紙幣を偽造しても,運べないからです.もっと中国の真似をして,工業化し,国民を貧困から救い出す方が良いでしょう.民主主義など心配しなくてよい.中国があなたの権力を維持してあげよう.・・・

しかし,胡錦濤は,以前の指導者たちと同様に,北朝鮮が残った方が,アメリカ,日本,韓国,との取引で有利になる,と考えた.その結果,中国はめったにないチャンスを失った.

習近平は,北朝鮮をどう扱うかによって,中国の台頭が何を意味するのか,世界に示すことができる.習が唱えてきたように,中国は責任ある指導的国家になって,地域の平和,協力,安定に貢献するのだろうか.朝鮮半島のリスクを鎮静化できれば,IMFADB,など,国際機関における中国の発言力は高まるだろう.


l  ユーロ圏の問題

FP DECEMBER 9, 2013

No Quiet on the Western Front

BY DANIEL ALTMAN

20127月,ECBMario Draghi総裁が発言してから,短期金利が安定した.また,赤字国の債券も価格が安定している.ユーロ圏は景気が悪化から改善に転じ,スペイン,ポルトガル,イタリアが,銀行の整理や財政再建に取り組み始めた.危機が終わったように見える.

しかし,中期において,危機が再現しないとは言えないだろう.高水準の失業はユーロ圏とEU全体に長期の改革を求めている.問題の根底には,景気変動が同時化していないことがある.それゆえ,金融政策は苦痛をもたらす.

ユーロの導入が貿易や投資を促し,経済の統合化を加速するはずだった.しかし,ユーロを拒んだイギリス,デンマーク,スウェーデンと比べて,ユーロ圏が統合化を特に加速できたわけではない.そうであれば,ユーロ圏内の不況地域は為替レートを切り下げて貿易や投資を増やす方法がないから,ますます不況に苦しむだろう.さらにEUの財政ルールが政策を制約している.

将来を見ても,ユーロ圏の景気同時化は困難である.ある地域はビジネス環境に優れ,革新に投資が集まる.しかし,他の地域は官僚制と腐敗によって動けないのだ.ある地域は若者が多く,債務も朝得られている.しかし他の地域では高齢化が進み,債務が累積して,年金負担が抑えられない.

もし労働者が自由に移動できることで,こうした不況地域から好況地域に移動するなら,賃金や失業の差を緩和するかもしれない.しかし,EU内の自由移民を前提しても,まだ資格や言語の差があり,偏見がある.今は移民排斥の感情が高まっている.

FT December 12, 2013

Europe faces a bigger threat than German caution

By Philip Stephens

ドイツを非難してもユーロ圏の問題は解決できない.確かに,ドイツの大連立は社会民主党の要求を取り入れて,ドイツの刺激策や賃金上昇をもたらすだろう.しかし,それでユーロ圏の赤字諸国の問題が大きく改善するわけではない.南部の財政赤字や構造改革は自分たちで解決するしかない.

ドイツは他の諸国よりもグローバリゼーションに対応してきた.ヨーロッパはそれを拒んでいる.近代化論者と国家介入論者との対立が強まった.

VOX 13 December 2013

The Eurozone: If only it were the 1930s

Nicholas Crafts

ユーロ圏の公的債務は危機を深刻にしている.1930年代末と比べても,その規模と選択肢は一層困難である.当時の債務負担が軽減できたのは,国際金本位制が崩壊して,むしろ財政・金融政策による安定化(デフレの回避)や債務負担の緩和,成長促進が可能になったからだ.

債務負担は,公的債務の金利抑制,インフレ率上昇,財政収支の改善,成長率の引き上げによって緩和される.国際金本位制の崩壊後,中央銀行は財政に従属するようになるが,この金融抑圧と資本規制は,こうした条件を可能にした.そして,こうした苦痛の少ない公的債務軽減に続いて,戦後の「黄金期」が実現されたのだ.

しかし,ユーロ圏の健全財政正統派はマーストリヒトの原則に戻ろうとしている.その場合,債務・GDP比率の高い期間が長引くだろう.それは景気停滞が長く,政府的な急進主義も活発化する危険があることを意味する.

その痛みを減らすには,まず,ECBがユーロ圏内でデフレを起こさないことだ.そして財政再建ではなく,金融抑圧,債務軽減,債務の組み換えやデフォルトを取り入れることだ.金融抑圧は政府が市場金利・成長率以下で資金調達できることを意味し,そのためには資本規制と中央銀行による公的債務管理が必要だ.他方,債務免除は債権者のコストが大きすぎるし,モラル・アハザードを生じるだろう.ECBが無利子の債券と交換するような形で,軽減できるかもしれない.

より高いインフレ目標を受け入れ,債務免除を進めるECBの姿は,ドイツなどの理想と異なる.ユーロ圏の断層は明白だ.

Project Syndicate DEC 16, 2013

Germany’s Coming Downgrade

SYLVESTER EIJFFINGER & EDIN MUJAGIC

FT December 17, 2013

Cameron’s European gamble is a losing proposition

By CharlesGrant

NYT December 18, 2013

Is Fascism Returning to Europe?

By FEDERICO FINCHELSTEIN and FABIÁN BOSOER


l  マキャヴェリ

NYT December 9, 2013

Why Machiavelli Still Matters

By JOHN T. SCOTT and ROBERT ZARETSKY

500年前,マキャヴェリNiccolò Machiavelliは,手紙を書き,その中で初めて『君主論』に触れている.マキャヴェリは,この本を書く10か月前に,まだ拷問を受けていた.

彼は,母国であるフィレンツェ共和国の外交と防衛に関する監督を使命としたが,メディチ家が権力に復帰すると政府を追われた.新しい支配者たちは,彼が謀略を企てていると考えた.しかし,彼は何も答えなかった.

マキャヴェリは『君主論』を,彼への拷問を命じたメディチ家のLorenzo de Mediciに捧げている.その経験と知識により最高の助言者であった,と.政治に友人などいない,ということを,この本は教えている.

『君主論』は,権力を得るための,そして権力を維持するための指南書である.彼は権力の行使について教えたが,それ以上に,友人についての新しい考え方を示した.現実の政治を見るためには,友人ではなく,内外における同盟者を見るべきだ.あまりにも多くのよくないことがある世界を生きるには,悪であることも学ばねばならない.ライオンのパワーと狐の狡知を持たねば,共和国を守れない.

ド・ゴールやカルザイを見ればわかるように,指導者にとって同盟者が友人であるのは,それが彼らの利益になる間だけだ.またマキャヴェリは,指導者は敵に対してだけでなく,仲間の内にも恐怖を与える棒が良い,という.ヘルスケアの大失策について謝罪したオバマ大統領は,マキャヴェリに言わせれば,間違っていた,彼は敬意を受けるどころか,侮蔑されたからだ.


l  アジアの模索

FT December 9, 2013

Riot tarnishes Singapore’s image as place of ethnic harmony

By Jeremy Grant in Singapore

Project Syndicate DEC 11, 2013

Asia’s Historical Furies

JASWANT SINGH

外交政策は何よりも国益を実現すると思われている.しかし,アジアの多くの国で,商業的関係を深め,安全保障を高める,という国益はしばしば歴史に服従しており,その想像力も制約されている.

例えば,インドとパキスタンがそうだ.互いに指導者たちは両国間で貿易が増える大きな利益をよく知っている.しかし,外交は直ちにテロや軍事的紛争に関する問題で支配されている.同様に,中国と日本の間では,尖閣諸島をめぐる紛争が激化している.日本は戦争期の問題を緩和しようと,中国に向けて多くの投資や援助を行った.しかし,2国間関係は改善できなかった.

日本と韓国の関係もそうである.韓国は植民地化された歴史について,今も強い不満を持っている.しかし,特に安全保障に関しては,両国がアメリカと協力することが非常に重要である.その意味で,中国の台頭と攻撃的な姿勢は,日本の安倍政権に,かつてリチャード・ニクソンが行ったような,保守派による過去の転換を期待する余地がある.

安倍の目指す「普通の国」とは,軍備強化と,アジアの地域安全保障に参加することかもしれない.

BLOOMBERG Dec 15, 2013

What the Rest Really Should Learn From the West

By Pankaj Mishra

Milton and Rose Friedmanが『選択の自由』で民間市場と国家介入との対比を始めた.Francis Fukuyamaは,『歴史の終わり』で東アジアを称賛し,ドイツと日本の経験を再現し,経済自由主義の成果を示した,と書いた.しかし,ドイツと日本は国家介入による近代化,保護主義の代表である.

近年,Alice Amsden, Sanjaya Lall and Ha-Joon Changなどは逆のことを主張している.インドのDeepak Nayyarも,17世紀,18世紀にアジアがヨーロッパ向けに製造業品を輸出したことを振り返る.1820年でも,インドと中国は世界貿易の多く,世界工業生産の半分を占めた.19世紀にこのパターンが逆転したのだ.

自由貿易の歴史とは,「発展途上諸国を国際分業に閉じ込めたが,それは工業化や成長をできない貿易であった.」 1950年以後の東アジアの成功とは,市場の見えざる手よりも,国家の見える手に関して多くの中身を持つ.フリードマンが好む「価格を正しくする」こと以上に,「国家介入を正しくする」ことであった.

すべてが成功するわけではなく,失敗の例も多い.しかし,グローバルなヴァリュー・チェーンに組み込まれることが成功を意味するわけではない.独自の技術革新が決定的である.韓国,台湾は達成したが,中国,インド,ブラジルはまだだ.

VOX 17 December 2013

Investment in the wake of crises: Asia 15 years later

Carmen M Reinhart, Takeshi Tashiro

FT December 18, 2013

From Xi’s rise to Abenomics, six events that shook Asia

By David Pilling

アジアに重要な影響を与えた6つの事件とは,天災,習近平の体制,尖閣・釣魚問題,アベノミクス,テイパー発言,ラナ・プラザの崩壊事故.


l  ECBの役割

FT December 10, 2013

The ECB’s reserve currency dilemma

Lorenzo Bini Smaghi

50年前,エコノミストのRobert Triffinは,国際通貨が準備通貨として使用されるとき,経常収支赤字が悪化する,と述べた.これが,ドイツや日本の経済も強くなったけれど,通貨の国際化を拒んだ理由の一つである.ユーロ圏は今同じ問題に直面している.ユーロ圏は経常収支黒字があり,革新的な解決策が求められる.

Project Syndicate DEC 10, 2013

The ECB’s Bridge Too Far

BARRY EICHENGREEN

中央銀行の仕事とは何か? まず,景気を維持する適当な金融状態を保つことである.政府と企業の改革交渉に立ち会うことではない.ギリシャの改革にECBは参加してしまっているが.また,何でもするという約束でECBが始めたOMTも本当の仕事から外れている.救済機関としてはESMEuropean Stability Mechanism)があるのだから.

しかし,決済システムの統一性を維持することは文句なしに重要だ.政府債券を売るパニックで決済システムが機能しないようなら,ECBは直ちに債券を購入しなければならない.問題は,ESMの役割が矛盾していることだ.

EMSはドイツ人を安心させるために作られた.ECBが裁量的な介入をしなくなる,というわけだ.これでは最後の貸し手として行動できないかもしれない.しかも,ドイツ人はECBが金利引き下げや通貨・信用供給でインフレを起こすことを恐れている.デフレの状況にもかかわらず,こうした不合理な恐怖を理由にECBの行動を制約するのは間違いだ.

ECBは,必要なら非伝統的な金融緩和も行うべきだ.それを避けて,ヨーロッパ経済がデフレになることのダメージは深刻である.

FT December 11, 2013

European Central Bank: Credibility test

By Sam Fleming and Alex Barker

FT December 15, 2013

This is not the banking union Europe is looking for

By Wolfgang Münchau

政治合意に達したユーロ圏の銀行同盟は本来の目的に合ったものではない.多くの提唱者はそのコストを過小評価している.金融危機の際に救済する資金は巨額であり,今回の合意で銀行から集める資金(10年かけて550億ユーロ)ではとても足りない.それは,ECBが監督するユーロ圏の主要銀行の資産に対して,その0.2%でしかないからだ.

唯一,機能する銀行同盟にはECBESMの信用供与なければならない.しかし,ドイツなど,少数の債権国が拒否権を持つ仕組みでは,これを拒むだろう.このような銀行同盟がユーロ圏の銀行に対する保険となることはない.

VOX 16 December 2013

Can we move beyond the Maastricht orthodoxy?

László Andor

FT December 19, 2013

Europe’s north and south must reform together

By Mario Monti

この数年,私はアルプスに住んでいるようだった.欧州理事会で,地中海諸国に対して規律の重要性を説き,北部の諸国には南部の諸国が感じている苦しみを説いた.

今や,両者の違いは少なくなって,互いに理解し,助け合う条件ができている.

FT December 19, 2013

European banking union is a sham that solves nothing

By Sony Kapoor

FT December 19, 2013

The European banking union is a disappointment

Lorenzo Bini Smaghi

Project Syndicate DEC 19, 2013

The Fox and the ECB

HOWARD DAVIES


l  危機後のアイルランド

NYT December 11, 2013

As Bailout Chapter Closes, Hardships Linger for Irish

By LIZ ALDERMAN

FT December 12, 2013

When did the Irish become so accepting of their lot?

By Roy Foster

The Guardian, Friday 13 December 2013

Economic austerity: the island of Ireland

Editorial

FT December 13, 2013

Irish lessons for Europe’s banks

銀行の債務を債務がすべて支払う,という約束が致命的であった.その教訓を受けて,2016年からの新しいルールは,政府が救済する前に,株主,債券保有者,保証されていない預金から負担を求めている.それでも,銀行が倒産するとき誰が債務を支払うのか,問題は解決されていない.一国の政府だけでは負担できないことを示しており,銀行同盟の試金石でもある.

Project Syndicate DEC 18, 2013

Ireland’s Model Crisis

MICHAEL O’SULLIVAN

アイルランドはようやくトロイカのくびきを脱する.アイルランドは緊縮策の成功モデルなのか?

その少し前は,アイルランドが成長のモデル,ヨーロッパの輝く星であった.多くの国民は緊縮策が成功したとは思わないだろう.これは,所詮,政策モデルやシンクタンク,国際機関の想像力の産物だ.人々の生活スタイルは変わらないし,公的機関の説明力は全く物足りない.

アイルランドが他の周辺諸国と異なったのは,緊縮策を受け入れる政治的な合意を形成したことだった.その意思を内外に繰り返し表明した.それが正しかったかどうか,はまだ分からないが.もしユーロ圏内で,フランスのような大国が同じ緊縮策を強いられたら,それを成功と呼ぶだろうか?

トロイカの計画では不十分だ.アイルランドの銀行システムを再建し,社会保障システムを再生し,社会が受けたダメージを回復しなければならない.緊密な協力関係や革新をもたらすビジネスのリスクテイクを可能にする力を,自分達で再生するしかない.

FP DECEMBER 18, 2013

The Celtic Cougar

BY SEAN KAY


l  Alibabaと人民元

FT December 12, 2013

Person of the year: Jack Ma

By Jamil Anderlini

今年の注目の人は,中国のAlibaba創業者であるJack Maになった.

創業から10年でAlibabaはインターネット・コマースを確立し,Maを億万長者にした.さらに,Alibabaのグローバルな株式公開は,1000億ドルを超えるだろう.世界で最も成功した経営者になる.

Alibabaの売り上げはAmazoneBayの合計額を超えており,中国のGDP2%に達する.中国の小包の70%Alibabaから発送され,インターネット・コマースの80%Alibabaのサイトでなされている.しかも,中国の人口の半分はまだインターネットを利用していない.アメリカを超えて,世界最大のインターネット市場になるだろう.

MaB2Bビジネスを始めたのは,アマゾンやトウィッターをまねて中国に持ち込んだのではない.彼が始めたのだ.しかも,次の目標を中国の金融ビジネスに見ている.

しかし,それだけではない.Ma48歳でAlibabaのトップを引退した.その理由は,中国にとって重大な問題となっている環境汚染と,それが引き起こす癌などの問題を解決するために,自分の資金と時間を投資したい,と考えたからだ.

Project Syndicate DEC 12, 2013

Renminbi Rising?

WING THYE WOO

人民元は国際化して国際媒介通貨an international vehicle currency (IVC)になるのか? また,上海はロンドンやニューヨークと並ぶ第1級の国際金融センターa first-tier international financial center (1-IFC)になるのか?

歴史がその答えを示す.1.その国の通貨がIVCになれば,金融センターも1-IFCになる.2.その通貨がグローバルに使用されることでIVCになる.3.その金融部門が開放的で,高度に洗練されていなければならない.金融取引を監視し,マクロ経済の安定性を維持し,危機を処理し,予測可能で,透明,公正な司法システムがあること.4.その国の経済規模が大きくなければならない.日本・円はこの点でアメリカに代わることができなかった.中国が「中所得の罠」に陥り,アメリカの一人当たり所得水準を30%までしか達成しないとすれば,同じような限界がある.しかし,70%に達するなら,IVCになるだろう.

もうひとつ重要な点は,金融取引の自由化に伴う危機のリスクである.これに対しては規制や制度を発達させるしかないが,自由度を抑えつつ,経験において蓄積されるものだ.

FT December 13, 2013

China’s brightened prospects

Yukon Huang

2013-12-13 (China Daily)

Difficult trilateral relations

By Yang Danzhi

NYT December 14, 2013

Dear President of China

By THOMAS L. FRIEDMAN

中国のバブルは崩壊するのか,あるいは,それを防ぐ十分な手段と賢明な指導部があるのか?

外国のジャーナリストを締め出し,新聞のホームページを閉鎖しても,中国の指導部が腐敗の追求に成功するとは思えない.インターネットの利用者が3億人を超える社会で,ニュースを隠し続けることは不可能だ.もし人々が報道や発言によって社会を変えることができないなら,彼らは街頭デモに訴えるだろう.

緊密に情報が結びつく社会では,ますます少数の者に富が集まり,ますます底辺まで情報が行き渡る.政治指導者の腐敗を報道するのは,心臓発作の警告である.歴史的に見て,中国の体制が崩壊したのは強欲と腐敗によってであった.

Project Syndicate DEC 16, 2013

China’s Xi Factor

WILLIAM H. OVERHOLT

FT December 17, 2013

Caribbean in crisis: Chequebook diplomacy

By Robin Wigglesworth

アメリカに代わって中国が,カリブ海諸島の経済に主要な投資国として現れた.アメリカの裏庭で中国が外交関係を固めている.アメリカは不在地主でしかなく,特に中東の紛争に関わってからはそうであった.だからカリブ海域は中国を大歓迎している.

Project Syndicate DEC 18, 2013

The Trouble with China’s Troubled-Asset Relief

ZHANG MONAN


後半へ続く)