IPEの果樹園2013

今週のReview

12/9-14

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移民政策の論点 ・・・東アジアの防空識別圏 ・・・Ha-Joon Chang ・・・破滅への経済戦略 ・・・バンコクの政治騒乱 ・・・ドイツとユーロ ・・・アメリカの指導力 ・・・日本の転換点

[長いReview]

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l  移民政策の論点

FT November 29, 2013

Is Cameron right about immigration?

Gideon Rachman and Janan Ganesh

キャメロン首相は移民流入を抑制する追加の措置を発表した.

Gideon Rachmanはこれを支持する.

わずか18か月前に,オリンピックの開会式で,ロンドンの多様な文化と移民たちを誇ったばかりのキャメロンが,今度は移民への開放政策を批判している.しかし,イギリス社会をダイナミックで魅力的にしているのは移民たちである.ロンドンの住民は,その3人に1人が外国生まれである.もし両親が移民である住民を加えると,半分を超える.

しかし,キャメロンの政策を批判する者は,4つの点を無視している.1.移民の歴史的変遷,2.提案の限定的で,穏健な中身,3.イギリス政治,4.ヨーロッパ政治.

歴史が示すように,移民流入で多くの利益がある国でも,開放政策は常に抑制策に代わった.1900-1920年,アメリカは2400万人の移民を撃入れたが,その後,移民を大幅に抑制した.イギリスは1950年代,英連邦諸国からの移民を歓迎したが,1962年,抑制に転じた.どちらも両国に多くの利益をもたらした開放政策であったとしても,永久に支持されはしなかった.

Janan Ganeshはこれに反対する.

政治家は,証拠を示すことなく,有権者の関心だけで,彼らが望むからという政策を推進してはならない.キャメロン首相が発表した,EU内の自由移動を制限する主張は,この古典的なケースである.

彼は(移民による)危機を強調し,前政権で労働党が犯した「とんでもない間違い」を責めた.中東欧からの移民管理をしない,という決定だ.移民がイギリス経済全体に与えた不利益,イギリス人労働者に与えた不利益,イギリス観光業に与えた不利益,移民が浮浪者の増大をもたらす,財政を圧迫する,公的サービスやインフラを悪化させる,送出国の経済を弱める,などについて,彼は何の証拠も示していない.

キャメロンの支持者は,移民に対する大衆の不満を放置すれば,いつか,もっとひどい転換が避けられない,と主張する.たとえば,極右政党が議席を伸ばし,2017年の国民投票でEU離脱を選択する,と.

キャメロンは大衆の期待に応じることで,ますます大衆の要求を強めているだけだ.ブルガリアやルーマニアに対する上限をどのように決めても,大衆はそれでは多すぎると思うだろう.1945年以降の英連邦移民,1990年代後半のアルバニア難民,2004年以後の東欧新加盟諸国からの移民,これらは同じパターンで政治的なパニックを起こした.メディアが騒ぎ,政治家は厳しい措置を約束し,大衆は不満を高める.

FT November 29, 2013

A Lone Star in the immigration debate

By Gillian Tett

先週,ダラス連銀がこの論争に加わった.ダラス連銀は連邦準備銀行の中でも独立心が強いことで有名だ,Richard Fisher議長は銀行の規模を削る政策を要求したし,そのスタッフたちは自由市場派の,保守的思想を持っている.

しかしダラス連銀は,移民に関してはティーパーティーも反対する意見を,“Gone to Texas”というタイトルで発表した.移民は地域経済に好ましい,というのだ.移民が地元住民の仕事を奪うという意見を拒否し,逆に,移民と地域経済の成長はウィン・ウィンの関係だ,と主張した.

NYT November 29, 2013

Migration Hurts the Homeland

By PAUL COLLIER

リベラル派は移民の権利を主張し,実業家たちは人々が移動する権利を主張する.しかし,これらは違うものだ.

Facebook Mark Zuckerbergは,「1100万人が不公平な権利しか持たないというのは重大だ」と,述べた.確かにITビジネスは優秀な留学生がアメリカに残れないことを不都合に感じているだろう.また,移民を支援するリベラル派の人たちは,アメリカがもっと人間的な移民政策を取るべきだ,と主張する.

しかし,だれにとって人間的なのか?

移民たちは,アメリカで学んでから帰国する方が,その国の民主化を促し,経済発展を担うエリートになるはずだ.彼らが帰国しないことは,そうした国々に残された人々にとって,はるかにひどい状況を放置することである.


l  東アジアの防空識別圏

FT November 29, 2013

Red line over China

無人の岩礁をめぐって,中国,日本,アメリカが戦争することが破滅的なことは,だれにもわかる.しかし金曜日,中国の戦闘機はこの防空域に入った日本の戦闘機にスクランブルをかけた.

中国に対抗する姿勢をアメリカが取り続けることは難しい.冷戦のとき,ソ連に対抗するアメリカは経済的な影響を考える必要がなかった.アメリカはソ連経済に何も依存していなかったからだ.しかし今,アメリカと中国は経済的に結び付いている.アメリカがアジアの安全保障を考えるとき,そのことを考慮する必要がある.

東シナ海における緊張緩和の方法を見出すことにしか,希望は見いだせない.

theguardian.com, Monday 2 December 2013

China's bellicose declarations aren't helping its quest to be a superpower

Andrew Hammond

中国の強硬姿勢は,ますますアジア諸国を同盟させ,特にアメリカとの同盟にバランスを求める動きを強めさせる.中国は,宇宙旅行や国際協力プロジェクトなど,ソフトパワーを高める方が良いだろう.

中国の政府機関に国際的なコミュニケーションが欠けている点は,外国人から見た正当性や信頼を損なっている.一つの解決策は,市民社会,華僑,学生,ビジネス団体,など,非国家集団の国際交流を外交的に拡大することだ.

諸外国に対して,中国が国内の政治改革を進める強い姿勢を示すことは重要だ.国内の民主化要求や人権問題を暴力的に解決する政府に対して,国際社会は疑念を持つだろう.

SPIEGEL ONLINE 12/02/2013

Cold War in the Pacific

China Escalates Tensions with Neighbors

By Hans Hoyng, Wieland Wagner and Bernhard Zand

ヨーロッパ人は,各国の外交政策がいかに急速に非合理的な連鎖反応に陥るかをよく知っている.歴史家や政治家は,東アジアの現状が第1次世界大戦勃発に先行した国際情勢に似ている,とすでに比較している.

政治学者のRobert Kaganは言う.ワシントンは東アジアで大英帝国の役割を担っている.アメリカは中国に明言するべきだ.「どの国が当時のドイツになるのか?」 もし中国が受け入れられないような仕方で行動するなら,それが答である.

歴史家のChristopher Clarkは,現在の世界秩序に関して述べた.「冷戦が終わって,2極化した安定性は失われた.より複雑で,予測しがたいさまざまな軍隊の動きがあり,衰退する帝国や台頭する大国が含まれている.こうした現状が1914年のヨーロッパと比較される.」

NYT December 2, 2013

The Hijacking of Chinese Patriotism

By YU HUA

中国政府が最近宣言した防空識別圏は,日本やアメリカとの緊張を高めている.しかし,私の見方では,これは日本に警告を発するというより,愛国心を刺激するための行為だった.

過去64年間にわたる中国共産党の愛国教育は,「国家を愛すること」が共産党と政府を愛することだと強く主張してきた.しかし,国家と支配者との区別が失われれば,愛国心は,偏狭なナショナリズムに乗っ取られ,政府によって操作される.

昨年,反日デモの際に,「戦争だ」というスローガンは2つの意味を持っていた.もし勝利すれば,中国は釣魚島を得る.もし敗北すれば,われわれは新しい中国を得る.「新しい中国」とは,共産党が支配しない国だ.

FP December 2, 2013

How Long Will China Tolerate America's Role in Asia?

Posted By Stephen M. Walt

中国は東アジアでアメリカと共存できるのか? あるいは,アメリカと同盟諸国との間にくさびを打ち込み,最終的にはアメリカをこの地域から追い出すのか?

現状は歴史的に見て例外である.アメリカはアジア地域から遠く,中国に対して,近隣諸国の同盟を支援している.他の同盟諸国は中国に対抗できる軍事力をほとんど持たず,アメリカがその近辺に軍を置いている.アメリカはヨーロッパにも軍を置くが,ソ連の影響は西半球にほとんど存在せず,地政学的にも,経済的にも弱かった.

大国が,競争する他の大国による安全保障に頼る諸国と,そのための軍事力を,近隣に置きたいと思うだろうか? 明らかにアメリカは,西半球にヨーロッパの大国が影響力を伸ばすことを嫌った.モンロー・ドクトリンだ.アメリカは地域で唯一の大国になることで自国の安全保障が高まると信じた.中国がそう考えないはずがない.

アメリカによる地域的覇権の確立は模範的なケースである.しかしそれは,西半球の植民地がイギリスやフランスから非常に遠く,ヨーロッパでドイツの覇権を防ぐために重要な要素でもなかったからだ.

アメリカの東アジアにおける同盟国(と潜在的な同盟諸国)がどう反応するか,アメリカの安全保障専門家たちがアジアの安全保障を,特に中国に対して,どこまで譲る合意に達するか,が重要になる.

FT December 3, 2013

China must not copy the Kaiser’s errors

By Martin Wolf

専制体制が台頭し,民主制は相対的に衰退するとき,両者の対立を回避しつつ,われわれは開放型の世界経済を維持できるのだろうか?

この問題は,19世紀後半,ドイツが台頭したとき,今また,共産主義中国が台頭する中で,立てられている.不信感が高まり,新興の大国は戦争に及ぶのか? われわれは第1次世界大戦が些細な事件から起きたことを知っている.その破壊的な結果は,25年たっても,ヨーロッパが戦前の状態を回復できなかった.習近平と安倍晋三は,同じリスクを冒すのか?

専門家の判断では,中国が戦争すれば,その損失はアメリカと日本を合わせたよりも,中国にとって大きいだろう.何よりアメリカはこの海域を支配している.戦争になれば,中国は世界貿易から切り離される.また,中国の保有する海外の流動資産は封鎖される.中国は資源に乏しく,重要な原料を輸入している.また,技術やノウハウも外国企業の直接投資によって得ている.GDP40%に及ぶ外貨準備を失うリスクがある.

習近平は,中国国民の長期的な利益をよく考えて,強硬姿勢を変えるべきだ.


l  Ha-Joon Chang

FT November 29, 2013

Lunch with the FT: Ha-Joon Chang

By David Pilling

Changは数学を使わない.経済学がそれほど狭い学問であるとは考えないからだ.「多くのエコノミストは私をエコノミストとは思わない.」 経済学は物理学をまねた科学を目指し,複雑な数学を使うほど尊敬されるが,Changはそう考えない.むしろ経済学とは,多くの領域の知識を駆使して現実の経済を理解する学問なのだ.生物学が,さまざまな異なる方法で研究しながら,現実の生命体が複雑であることをよく理解しているから一つの学問であるように.

・・・経済学は複雑な数学と統計でできた科学になり,エコノミストは専門技術者や中央銀行家のための聖書をラテン語から翻訳する大司教になった.私は主流派経済学者のように真実を独占していると思わないが,現実の異なる側面を指摘する.

Changが生まれる2年前,韓国の一人当たりGDP82ドルで,ガーナの179ドルより少なかった.その頃,軍事クーデタで権力を握った朴正煕は,鉄鉱石もコークス用石炭もない韓国に,製鉄業を設立すると決めた.朴は独裁者であったが,いくつかの鋭敏な選択を行った.経済学や比較優位を完全に無視して,彼は製鉄業を成功させ,韓国経済の成長を導いたのだ.熱帯の島でバナナを植えても,貧困からは抜け出せない.

Changは産業政策を研究した.もちろん,産業政策が失敗したケースも多くある.彼は,保護が必ずしもその産業の成功を意味しない,と応える.「われわれは市場を何か自然な存在と信じているが,それは間違いだ.市場とは政治の産物である.」

スミス,マルクス,シュムペーターにとって,経済学は,常に,倫理学を含んでいた.


l  破滅への経済戦略

Project Syndicate NOV 30, 2013

Turning Good Economic Luck into Bad

RICARDO HAUSMANN

ある国々が非常に優れた経済から最後は大混乱で終わるのを説明するのを正しく理解するのはしばしば難しい.まるで地下室から飛び降りて自殺を図ったみたいに.

その典型は,輸出品の高価格を扱いそこなったアルゼンチンとヴェネズエラだ.彼らは経験から学ぶことなく,自殺のような政策を繰り返した.

すべてはインフレ(もしくは,為替レート,電力,水道,ガソリン,など,重要商品の価格上昇)を生じる圧力で始まる.政府は価格を低く管理し,さらに不足させるのだ.

最もひどいのは為替管理だ.財政と金融が緩和されすぎて貨幣の洪水をもたらすとき,中央銀行が供給できる以上のドル需要が発生する.政府は通貨の減価を嫌って,為替を管理し,「本当に」ドルを必要とする人々のために,「人民」を苦しめる「投機家たち」を阻止する,と言うのだ.


l  バンコクの政治騒乱

Project Syndicate DEC 5, 2013

Thailand’s Democratic Disorder

THITINAN PONGSUDHIRAK

選挙で成立したタイ政府が,反対する少数派のデモによって首都を占拠される事態は,民主主義そのものの正当性を破壊しつつある.タイ政治の分裂・両極化は深刻であり,妥協する余地はどこにもない.

新興諸国の民主主義では,しばしば,反政府運動が,選挙の少数派において,旧エリートたちの指導で組織される.社会の底辺層や不満を持つ人々が,ソーシャル・メディアで,反政府派に大衆的な基盤を与える.彼らは大義を掲げて街頭を占拠し,敵対勢力の権威を傷つけることができる.

多くの国で,民主主義の多数派と少数派のダイナミズムが機能しなくなっている.民主的な政府が権力を維持できる期間はますます短くなる.


l  ドイツとユーロ

Project Syndicate DEC 4, 2013

An Agenda to Save the Euro

JOSEPH E. STIGLITZ

ユーロはヨーロッパの成長,繁栄,団結を実現するはずだった.しかし,今は停滞,不安定,分裂を意味する.

ユーロの設計はネオリベラリズムに染まっている.すなわち,何よりもインフレを抑えること.成長や安定にはそれで十分だ.中央銀行の独立性があれば,それによってのみ,金融システムの信頼性は与えられる.債務を減らし,財政赤字を減らせば,ユーロ圏は中心の諸国に収斂する.貨幣と人が自由に移動する単一市場によって効率性と安定性が実現する.

こうしたことはすべて間違いだとわかった.もっと独立性の低い新興市場の中央銀行は,もっと危機を適切に処理した.スペインやアイルランドは危機前に債務も財政赤字も少なかった.資本と人の自由移動で,危機に陥った諸国は債務負担や空洞化,労働力の非効率な再配置を強いられた.

緊縮策によって景気を回復できた国はない.内的な切り下げが成功するなら,国際金本位制も,アルゼンチンも,崩壊しなかった.

Project Syndicate DEC 5, 2013

The German Scapegoat

DANIEL GROS

世界人口の1%でしかない,世界GDP5%にもならないドイツが,世界経済の不況に責任があるのか? アメリカ財務省の通貨操作キャンペーンは,欧州委員会も加わって,間違ったコーラスを奏でている.

ヨーロッパ経済内では,確かにドイツが重要であるが,ユーロ圏GDP30%EU4分の1)以下であり,決して支配的ではない.北欧・チュートン諸国は黒字を出しているが,ユーロ圏(ドイツ,オランダ),ユーロに固定(スイス),変動制(スウェーデン)のように,その制度的な違いは明白だ.

ドイツの黒字が減っても,南欧の赤字諸国はその利益をほとんど受けないだろう.むしろ黒字諸国(ロシア,中国,日本)がさらに黒字を増やす.ドイツを責めるのは,合わせて8000億ドルの経常収支赤字を出すアメリカ,イギリス,英連邦諸国,という「アングロ・サクソン」貯蓄不足諸国である.

ドイツを責めても問題は解決しない.


l  アメリカの指導力

Project Syndicate DEC 3, 2013

Who Should Lead the Global Economy?

HAROLD JAMES & DOMENICO LOMBARDI

世界経済を牽引するのはだれか? 16世紀のスペイン,19世紀のイギリス,20世紀のアメリカ.次は? 中国? EU?

1に経済規模である.経済が大きいほど,システムに与える影響が大きく,国際的な意思決定にも重要な役割を占める.アメリカ(16.7兆ドル),ユーロ圏(12.6兆ドル),中国(9兆ドル)には,いずれもその資格がある.

将来の見通しも重要である.誰もユーロ圏が高成長するとは予想しない.中国のGDP2020年にアメリカを抜くかもしれないが,その人口抑制策の影響で成長が低下するだろう.それ故,アメリカが優れている.

また,貿易,通貨,金融の国際システムに果たす役割も重要である.この点では中国よりもユーロ権威資格がある.

さらに,真の指導国は,他の諸国や市場が機能するようなグローバルな経済構造を形成し,結びつける必要がある.それこそアメリカが過去70年間行ってきたことだ.

現在,アメリカは世界の基軸となる国際通貨を供給し,さまざまなシステムを結び付けている.貿易赤字が続いても,危機を生き延びてきた.アメリカの赤字は,輸出によって成長するドイツや日本,中国にとって必要でもあった.

世界経済は,融資条件を決めるという意味で,黒字国によって指導されるのがふつうである.中国やヨーロッパが次の指導国になるとすれば,19世紀のパックス・ブリタニカに似た,長期の資本供給国になる.しかし,さまざまなショックを乗り越え,グローバルで複雑な金融システムの中心が機能するほど,まだ,どちらの国内制度も十分に準備されていない.


l  日本の転換点

NYT December 2, 2013

Japan in a Post-Growth Age

By NORIHIRO KATO

小泉元首相が発言してから,日本のメディアは月原発を好意的に伝え始めた.なぜ彼は変心したのか?

日本人は,「失われた20年」を悔いる気持ちから,2011年の大震災と津波,福島原発事故を経て,もはや過去の政党の時代は再現できない,成長の時代は終わったのだ,という気持ちに変わり始めた.

2012年の選挙は,それを問いながら,自民党がアベノミクスを掲げて勝利した.20年間の停滞は打破できる,というメッセージが多数を占めたわけだ.しかし,いよいよアベノミクスが実行されてみると,輸出による高度成長が回復する,という幻想は現実と合わなくなっている.

小泉は,自民党の若手政治家たちのために,アベノミクスが瓦解した後の自民党支配を築く方針を示そうとしたわけだ.

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The Economist November 23rd 2013

The man who used to walk on water

Special Report: America’s foreign policy – Time to cheer up

Afghanistan after 2014: Harder than it should have been

Reforming China’s state-owned firms: From SOE to GLC

The Balkanisation of banking: Putting Humpty together again

(コメント) オバマ政権のアメリカ外交に関する考察が興味深いです.オバマは,ブッシュの負の遺産から解放されて,アメリカの軍事力や経済力における優位を,地域の安定化や現実の秩序再編に結びつける戦略を持たなければなりません.アメリカの利益として,また,各国が参加することを望む理想的な基準として,外交を駆使し,国際機関を再び活性化するでしょう.

アフガニスタンがアメリカ軍やNATOの活動を受け入れる条約は,日米安保条約に似ているな,と驚きました.莫大な費用と人命を費やして,戦争に勝利した側は占領し,秩序の再建に関与しなければならないのです.

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IPEの想像力 12/9/13

日曜日の朝,テレビを点けると,「新報道2001」で,最近の論争点から,数人が議論していました.面白いな,と思ったのは,桝添要一が,「集団的自衛権」の理解を,自民党幹事長の石破茂に質し,石破がそれに応えたときです.それは,必ずしも厳密に以下のような会話ではありません.しかし,それを基に,多分,こんな主張であったかな,と思いました.

「集団的自衛」とは,自国が攻撃された場合も,他国が攻撃された場合も,集団で自衛するために戦争に参加する,という仕組みである.しかし,この地域でパワー・シフトが起きており,数年で中国の経済規模がアメリカを抜くかもしれない.日本もこれに対応しなければならない.石破の主張は従来の「集団的自衛権」と少し違うものだ.・・・

これに対して,石破の答えは,国民を説得することは難しい.中国にとって国境線は戦略的なものであり,移動するものだ,と主張しました.私たちの考えではそうではない.各国は国境を維持し,自由と民主主義を守っている.集団的自衛権によって,われわれはこうした政治体制を守る,ということだ.これを理解してもらう.・・・

桝添は,中国の行動を理解できるものとして示しました.中国から世界地図を見ると,日本は太平洋に向かう中国にとって,それをふさぐ障害に見える,と.それはどういうことか? 日本が尖閣諸島で中国と合意に達するのは難しく,たとえ合意したとしても,今後,中国の攻撃的な行動は続くだろう.・・・

これに応えて,石破は,よく知られているように,中国にとって望ましい国際関係は「朝貢」である,と指摘しました.「中国に従えば,悪いようにはしないよ」という主張を受け入れたことを,各国は「朝貢」という形で示すのだ.そうなるまで,中国は様々な圧力を強めてくる.だから集団的自衛権が必要であり,これまで反対した人々も含めて,国民に理解してもらうまで,自民党は丁寧に説明し,説得しなければならない.

そして,そのためにも,安倍首相の経済改革が成功しなければならない,と強調する.日本経済が弱ければ,アメリカも中国も日本の主張を重視しないだろう.・・・

石破茂の発言は慎重で,これまで防衛問題の専門家・利益代表者と思っていた以上に,政治家として合理的・現実的である,と思いました.たまたまゼミ生と話した「日本の大戦略」(R.サミュエルズ)に拠るなら,「富国強兵」に回帰するエッセンスを,この対話は伝えています.

公明党は反対しているようだが,と司会者に質されたとき,石破の発言が,国内の「朝貢」システムに似ているのは,理由のあることでしょう.国内の政治的秩序とは,概ね,地位や特権,経済力を,支配者によって配置するパワーや仕組みであるからです.中国の場合,おそらく,その国内の政治システムに従う形で,周辺の諸国が同じ,ただし下位のシステムに帰属することを許すのです.それは中国が経済的に繁栄し,政治の安定性や高尚な文明化の源泉であると認められる時代に成功したかもしれません.しかし,逆に,経済的な破滅や不安定化,野蛮な政治弾圧の時代には,この地域に不安定化と鎖国・隔離をもたらしたのです.

安倍や石破が,R.キャンベルの言う,21世紀型の国家ではなく,20世紀型の国家に拠って,集団的自衛権を考えているなら,冷戦思考という非難を日本も中国とともに受けるでしょう.そして,アメリカの特異な優位を利用した東アジアのバランス・オブ・パワーによって,日中ともに,この地域的な冷戦思考があだとなり,アメリカの利益に従って振り回されるのか,と思いました.

中国は,国内改革に安定した成果を上げるとともに,国際システムの改革・運営に必要な独自の手法とソフトパワーを習得しなければならないでしょう.アメリカは,地域のバランス・オブ・パワーを操作するにとどまるのではなく,既存の秩序に隠されたアメリカの特権を,市民の公平な視点から改革する積極的姿勢を強調しなければならないでしょう.

地域のバランス・オブ・パワーが変化を吸収して,平和を維持するでしょう.その過程を注視しつつ,中国の国内改革を支援し,アメリカの新しい国際秩序に積極的に参加するため,日本は資源を配置します.

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