IPEの果樹園2013
今週のReview
12/9-14
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移民政策の論点 ・・・東アジアの防空識別圏 ・・・イランとの合意 ・・・通貨・金融危機の種 ・・・Ha-Joon Chang ・・・破滅への経済戦略 ・・・もう一つの「アラブの春」 ・・・賃金引き上げ ・・・バンコクの政治騒乱 ・・・ドイツとユーロ ・・・アメリカの指導力 ・・・日本の転換点
[長いReview]
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主な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
l オバマケアのコスト
NYT November 28, 2013
Obamacare’s
Secret Success
By PAUL KRUGMAN
オバマケアは医療保険の削減に成功している.ジェネリック薬品を使うからだ.それ以上に,医療費の申請に変化が起きた.監視委員会が設立されるなら,今後,もっと削減できるだろう.
l 移民政策の論点
FT November 29, 2013
Is
Cameron right about immigration?
Gideon Rachman and Janan Ganesh
キャメロン首相は移民流入を抑制する追加の措置を発表した.
Gideon Rachmanはこれを支持する.
わずか18か月前に,オリンピックの開会式で,ロンドンの多様な文化と移民たちを誇ったばかりのキャメロンが,今度は移民への開放政策を批判している.しかし,イギリス社会をダイナミックで魅力的にしているのは移民たちである.ロンドンの住民は,その3人に1人が外国生まれである.もし両親が移民である住民を加えると,半分を超える.
しかし,キャメロンの政策を批判する者は,4つの点を無視している.1.移民の歴史的変遷,2.提案の限定的で,穏健な中身,3.イギリス政治,4.ヨーロッパ政治.
歴史が示すように,移民流入で多くの利益がある国でも,開放政策は常に抑制策に代わった.1900-1920年,アメリカは2400万人の移民を撃入れたが,その後,移民を大幅に抑制した.イギリスは1950年代,英連邦諸国からの移民を歓迎したが,1962年,抑制に転じた.どちらも両国に多くの利益をもたらした開放政策であったとしても,永久に支持されはしなかった.
キャメロンの提案している措置は驚くほど穏健な内容だ.失業手当を受け取るには3カ月待たねばならない.住宅費の補助が得られない.路上で寝る者は国外退去させられる.また,将来,貧しい諸国がEUに加盟したとき,大量移民を抑える新しい措置にも言及した.EUがトルコ加盟を議論しているからだ.しかし,これらの措置がEU市民の自由移動を否定する,というのは愚かである.
キャメロンが国益ではなく党略でこのような方針を取った,という批判も正しくない.UKIP(独立党)の台頭を警戒しているだろうが,それは移民排斥でキャメロンがUKIPと手を組んだことを意味しない.直接,移民の利益を訴えるべきだ,と反対する者もいる.しかし,学者ならそれでいいが,政治家ならそれで有権者を説得し,選挙を勝つことはできないと知っている.実際,労働党は,キャメロンの抑制措置がまだ弱すぎる,と批判した.
キャメロンのが抑制措置を発表して数時間内に,一時雇用者や社会的給付に関して,ドイツ,フランスも同様の抑制策を発表した.他のヨーロッパ諸国でも,移民排斥を叫ぶ極右政党が台頭しているからだ.オランダ,フランスで,来年のヨーロッパ議会選挙に向けた政策のトップに,極右政党が移民排斥を掲げている.これを無視することは,いっそうの事態の悪化を招くだろう.EU内の移動の自由を守るためにも,キャメロンの方針は支持されるべきだ.
Janan Ganeshはこれに反対する.
政治家は,証拠を示すことなく,有権者の関心だけで,彼らが望むからという政策を推進してはならない.キャメロン首相が発表した,EU内の自由移動を制限する主張は,この古典的なケースである.
彼は(移民による)危機を強調し,前政権で労働党が犯した「とんでもない間違い」を責めた.中東欧からの移民管理をしない,という決定だ.移民がイギリス経済全体に与えた不利益,イギリス人労働者に与えた不利益,イギリス観光業に与えた不利益,移民が浮浪者の増大をもたらす,財政を圧迫する,公的サービスやインフラを悪化させる,送出国の経済を弱める,などについて,彼は何の証拠も示していない.
こうした事実に基づかない政策変更は,移民に対して社会的給付を制限するだけでなく,EU加盟の条件変更を交渉する政策にも見られる.
大衆が求めるから,というだけで,それが良い政策であるとは,我々は考えない.それが事態を改善するという証拠を示して主張しなければならないし,証拠を示せないなら,それはできない,ということだ.
キャメロンの支持者は,移民に対する大衆の不満を放置すれば,いつか,もっとひどい転換が避けられない,と主張する.たとえば,極右政党が議席を伸ばし,2017年の国民投票でEU離脱を選択する,と.
そうだろうか? 政府は,この3年間,移民の各年上限を厳しく管理した.移民の純流入は3分の1に減った.数10年間で,これほど厳しい措置を取った政府は無かった.それでも大衆の移民に対する不満は2010年よりも高まっている.大衆を満足させるためにもっと厳しい措置が必要か? 上限数をさらに減らす? EU内の移動の自由を否定する? そのためには離脱も辞さない?
キャメロンは大衆の期待に応じることで,ますます大衆の要求を強めているだけだ.ブルガリアやルーマニアに対する上限をどのように決めても,大衆はそれでは多すぎると思うだろう.1945年以降の英連邦移民,1990年代後半のアルバニア難民,2004年以後の東欧新加盟諸国からの移民,これらは同じパターンで政治的なパニックを起こした.メディアが騒ぎ,政治家は厳しい措置を約束し,大衆は不満を高める.
そうではない.政治家は事実に依拠し,ヒステリックな要求に対抗する.約200万人のイギリス国民がヨーロッパ大陸で暮らすことのできるEUこそ現代世界の誇りである.各国は世界で競い合っているが,若くて勤勉な人々も世界中で競って獲得している.キャメロンは,そう主張できるはずだ.
FT November 29, 2013
A
Lone Star in the immigration debate
By Gillian Tett
アメリカの移民は多すぎるのか? ワシントンではこれが激しい政治論争になっている.
オバマは移民法を改正すると約束してヒスパニック系の支持を集め再選された.しかし,南部の共和党員は憤慨したし,失業率が高いままでは,移民たちがアメリカ人の雇用を奪っている,という懸念,不安から,論争がさらに激化するのだ.
先週,ダラス連銀がこの論争に加わった.ダラス連銀は連邦準備銀行の中でも独立心が強いことで有名だ,Richard Fisher議長は銀行の規模を削る政策を要求したし,そのスタッフたちは自由市場派の,保守的思想を持っている.
しかしダラス連銀は,移民に関してはティーパーティーも反対する意見を,“Gone to Texas”というタイトルで発表した.移民は地域経済に好ましい,というのだ.移民が地元住民の仕事を奪うという意見を拒否し,逆に,移民と地域経済の成長はウィン・ウィンの関係だ,と主張した.
これが移民の少ない,雇用の余っている州であればわかるが,テキサスはそうではない.1990年以来,外国生まれの人口は150万人(9%)から430万人(16.4%)に増えている.大きな州でテキサスほど移民が増えた州はない.しかも移民の3分の2は高校を卒業しておらず,約半分は非合法移民だ.農場や工場で働くためにメキシコ系移民が殺到している,というのは,まさにテキサスに当てはまる.
しかし,移民はアメリカ生まれの労働者の利益を損なわない,連銀は主張する.移民の増加は,特化をもたらすからだ.「高等教育を受けていないアメリカ人も,コミュニケーション集約的な職場に就くだろう.高等教育を受けていない移民は肉体労働に就く.」 また言い換えるなら,メキシコ人はトマト畑で働き,アメリカ人は受付で働く.移民は,「移民が作る財・サービス」の価格を下げ,年間34億ドルから66億ドルの利益をもたらしている.テキサスは,他の大きな州に比べて社会的給付は少ないから,それを差し引いても大きな違いはない.
この主張がティーパーティー支持者からも,左派の経済学者からも強く嫌われ,またテキサスが例外的なケースだと言われると思う.近年のエネルギー・ブームで成長し,新しい雇用が増えているからだ.
オバマが移民法の改正に取り組むには,興味深い援軍だが,残念ながら,この1年は移民が減少している.
NYT November 29, 2013
Migration
Hurts the Homeland
By PAUL COLLIER
リベラル派は移民の権利を主張し,実業家たちは人々が移動する権利を主張する.しかし,これらは違うものだ.
Facebook のMark Zuckerbergは,「1100万人が不公平な権利しか持たないというのは重大だ」と,述べた.確かにITビジネスは優秀な留学生がアメリカに残れないことを不都合に感じているだろう.また,移民を支援するリベラル派の人たちは,アメリカがもっと人間的な移民政策を取るべきだ,と主張する.
しかし,だれにとって人間的なのか?
移民たちは,アメリカで学んでから帰国する方が,その国の民主化を促し,経済発展を担うエリートになるはずだ.彼らが帰国しないことは,そうした国々に残された人々にとって,はるかにひどい状況を放置することである.
中国やインドのように,豊富な労働力がある国をイメージして,移民政策をできるだけ開放的にすることが正しいと考えるのは間違っている.中国やインドの場合,移民が流出した方が,残された農民・労働者たちの状態は改善されるだろう.しかし,多くの移民送出国では労働者が不足しており,優秀な労働者が真っ先に移民となって出て行ってしまう.戦争や,政治が不安定な諸国から難民となって出ることのできる人々も,多くはその国のエリートたちである.彼らを多く受け入れ,しかも定住化や家族の呼び寄せを促すことは,彼らが自国に送金することも,帰国することもなくなる,送出国にとって好ましくない,受入国の政策である.
戦乱が集結し,安定化が可能な国へは,移民たちが帰国するのを促す政策が望ましい.難民受け入れの増大には和平とリンクした時限措置が良いだろう.優れた人々を奪う開放政策は,ビジネスにおいても,労働者・移民の権利としても,不当なのだ.
l 東アジアの防空識別圏
FT November 29, 2013
Red
line over China
シリア問題だけでなく,多くの問題でオバマは決断力のない指導者のように見える.
先週の土曜日,日本が管理する島々の周りを含む防空識別圏を中国が発表した,火曜日,アメリカは直ちに対応した.中国当局に知らせることなく,B52爆撃機を問題の地域に飛行させたのだ.そのメッセージは明白だ.アメリカは武力による現状の変更を認めない.
無人の岩礁をめぐって,中国,日本,アメリカが戦争することが破滅的なことは,だれにもわかる.しかし金曜日,中国の戦闘機はこの防空域に入った日本の戦闘機にスクランブルをかけた.
オバマはまた,アジアに関するより広いメッセージを与えた.中国の攻撃を恐れる多くの諸国に対して,アメリカがその圧倒的な海軍力で関与することを明白に示したのだ.
中国に対抗する姿勢をアメリカが取り続けることは難しい.冷戦のとき,ソ連に対抗するアメリカは経済的な影響を考える必要がなかった.アメリカはソ連経済に何も依存していなかったからだ.しかし今,アメリカと中国は経済的に結び付いている.アメリカがアジアの安全保障を考えるとき,そのことを考慮する必要がある.
東シナ海における緊張緩和の方法を見出すことにしか,希望は見いだせない.
NYT December 1, 2013
In
the East China Sea, a Far Bigger Test of Power Looms
By DAVID E. SANGER
ドローンやハイテク諜報活動など,紛争の最新形態に関心を払ってきたオバマ政権が,東シナ海の岩礁をめぐる危険な争奪戦によって一気に冷戦時代に逆転した.
日本は新しい基地を設け,沖縄にF15や哨戒機の配備を増やして,自国の領土を守る姿勢を示している.それは第2次世界大戦後の日本の考え方が大きく変化したことを意味している.
これは単なる島々の問題ではない.中国がアメリカを太平洋の西側から後退させる長期戦略にどう対抗するか,という問題である.
theguardian.com, Monday 2 December 2013
China's
bellicose declarations aren't helping its quest to be a superpower
Andrew Hammond
中国の強硬姿勢は,ますますアジア諸国を同盟させ,特にアメリカとの同盟にバランスを求める動きを強めさせる.中国は,宇宙旅行や国際協力プロジェクトなど,ソフトパワーを高める方が良いだろう.
中国の政府機関に国際的なコミュニケーションが欠けている点は,外国人から見た正当性や信頼を損なっている.一つの解決策は,市民社会,華僑,学生,ビジネス団体,など,非国家集団の国際交流を外交的に拡大することだ.
諸外国に対して,中国が国内の政治改革を進める強い姿勢を示すことは重要だ.国内の民主化要求や人権問題を暴力的に解決する政府に対して,国際社会は疑念を持つだろう.
FT December 2, 2013
China
air zone divides US and its allies
By Demetri Sevastopulo in Hong Kong
FT December 2, 2013
China
is treading on thin ice in the Pacific
Kurt Campbell
これはもはや中国と日本の採る対決姿勢とナショナリズムだけの問題ではない.中国,台湾,韓国,アメリカ,日本,ロシア,などの民間航空機を含む問題である.1983年,ソ連の戦闘機によって大韓航空KE007が撃墜された事件を思い出させる.
これはまるで,開放的で,透明性の高い,地域的なシステムの下で機能する21世紀の国家ではなく,影響圏や立ち入り禁止区域をめぐって戦争する20世紀の国家である.個の空位期に入った航空機に対して,中国はどのように対応するのか?
確かに,アメリカ,韓国,グアム,日本を含む,他の諸国も防空識別圏を設けている.しかし,こうした不安を生じたケースはかつてなかった.中国のコメンテイターはしばしばアメリカを非難して冷戦思考というが,それこそピッタリだ.中国がどのような大国になるのか,この問題が示すだろう.
SPIEGEL ONLINE 12/02/2013
Cold
War in the Pacific
China
Escalates Tensions with Neighbors
By Hans Hoyng, Wieland Wagner and Bernhard Zand
ヨーロッパ人は,各国の外交政策がいかに急速に非合理的な連鎖反応に陥るかをよく知っている.歴史家や政治家は,東アジアの現状が第1次世界大戦勃発に先行した国際情勢に似ている,とすでに比較している.
政治学者のRobert Kaganは言う.ワシントンは東アジアで大英帝国の役割を担っている.アメリカは中国に明言するべきだ.「どの国が当時のドイツになるのか?」 もし中国が受け入れられないような仕方で行動するなら,それが答である.
歴史家のChristopher Clarkは,現在の世界秩序に関して述べた.「冷戦が終わって,2極化した安定性は失われた.より複雑で,予測しがたいさまざまな軍隊の動きがあり,衰退する帝国や台頭する大国が含まれている.こうした現状が1914年のヨーロッパと比較される.」
NYT December 2, 2013
Chinese
Leader’s Rise Came With New Attention to Dispute With Japan
By JANE PERLEZ
NYT December 2, 2013
The
Hijacking of Chinese Patriotism
By YU HUA
中国政府が最近宣言した防空識別圏は,日本やアメリカとの緊張を高めている.しかし,私の見方では,これは日本に警告を発するというより,愛国心を刺激するための行為だった.
この点で,私は昨年夏の事件を思い出した.
7月17日,湖南省の町,Linwuで,瓜栽培の農夫Deng Zhengjiaとその妻が,スイカの露店のことで地方警察ともめた.数人の警官が彼を殴り,道路に倒れて死亡した.
7月27日,マイアミの近くのアパートで発砲事件があり,犯人は6人を殺害した後,警察官に射殺された.
2つの事件は,全く何の関係もない,と思われた.
その翌日,貴州の副省長,Chen Mingmingがフロリダ銃撃事件について自分のブログに意見を書いた.「アメリカではまた事件が起きるのだろうか?」 「中国なら,こうした事件は起きる前に厳しく取り締まる.」 「こうした者は堕落した反愛国者である.社会のクズだ.」
これに関する論争は過熱し,政府を罵倒することが国家を罵倒することではない,という者を,愛国者であるか,そうでないなら社会から追放せよ,という者が攻撃した.Chenの支持者たちは,政府は国家である,と強く感じている.
過去64年間にわたる中国共産党の愛国教育は,「国家を愛すること」が共産党と政府を愛することだと強く主張してきた.しかし,国家と支配者との区別が失われれば,愛国心は,偏狭なナショナリズムに乗っ取られ,政府によって操作される.
昨年,反日デモの際に,「戦争だ」というスローガンは2つの意味を持っていた.もし勝利すれば,中国は釣魚島を得る.もし敗北すれば,われわれは新しい中国を得る.「新しい中国」とは,共産党が支配しない国だ.
NYT December 2, 2013
Biden
Faces Delicate Two-Step in Asia Over East China Sea Dispute
By MARK LANDLER and MARTIN FACKLER
FP December 2, 2013
How
Long Will China Tolerate America's Role in Asia?
Posted By Stephen M. Walt
50年後の世界政治を予想するために,今,答えるべき重大な問題とは何か? 気候変動,ユーロ圏,テロ,パンデミック.いずれも重大な問題であるが,米中関係の将来が誰のリストでもトップ5に入るだろう.
中国は東アジアでアメリカと共存できるのか? あるいは,アメリカと同盟諸国との間にくさびを打ち込み,最終的にはアメリカをこの地域から追い出すのか?
現状は歴史的に見て例外である.アメリカはアジア地域から遠く,中国に対して,近隣諸国の同盟を支援している.他の同盟諸国は中国に対抗できる軍事力をほとんど持たず,アメリカがその近辺に軍を置いている.アメリカはヨーロッパにも軍を置くが,ソ連の影響は西半球にほとんど存在せず,地政学的にも,経済的にも弱かった.
大国が,競争する他の大国による安全保障に頼る諸国と,そのための軍事力を,近隣に置きたいと思うだろうか? 明らかにアメリカは,西半球にヨーロッパの大国が影響力を伸ばすことを嫌った.モンロー・ドクトリンだ.アメリカは地域で唯一の大国になることで自国の安全保障が高まると信じた.中国がそう考えないはずがない.
中国は,何の明確な説明もなく,「平和的な台頭」から,地域の現状維持に対する攻撃的な姿勢に転換した.そこには中国版の「モンロー宣言」はないし,中国が支配する「大東亜共栄圏」もないし,ヒトラーがヴェルサイユ体制を非難して行った激越な演説もない.しかし,現状に対する低レベルの不満と,中国の好むような変更を他国が受け入れるように圧力を加える.いつでも祖母目標は,中国の要求する領土を他国が認め,地域の大国として敬意を払わせる,ということだ.
これこそ大国が近隣地区で行うことである.アメリカは大西洋の北西やラテンアメリカからイギリスを追い出すために戦争しなかった.そうではなく,ロンドンが他の優先事項を選択し,自国の周辺でバランス・オブ・パワーが有利に維持されるためにはアメリカとの友好関係が必要だ,と決断するまで,圧力をかけ続けただけだ.
地域の覇権を求める大国は戦争を避けることが賢明である,ドイツは2度,日本も1度,そしてナポレオン戦争も,破滅的な結果になった.軍事力で覇権を要求すれば,近隣諸国は同盟して対抗する.逆に,ゆっくり,着実にパワーを得る方が,対抗戦略は取りにくく,戦争の不確実さを避けられる.
アメリカによる地域的覇権の確立は模範的なケースである.しかしそれは,西半球の植民地がイギリスやフランスから非常に遠く,ヨーロッパでドイツの覇権を防ぐために重要な要素でもなかったからだ.
アメリカの東アジアにおける同盟国(と潜在的な同盟諸国)がどう反応するか,アメリカの安全保障専門家たちがアジアの安全保障を,特に中国に対して,どこまで譲る合意に達するか,が重要になる.
FT December 3, 2013
China
must not copy the Kaiser’s errors
By Martin Wolf
専制体制が台頭し,民主制は相対的に衰退するとき,両者の対立を回避しつつ,われわれは開放型の世界経済を維持できるのだろうか?
この問題は,19世紀後半,ドイツが台頭したとき,今また,共産主義中国が台頭する中で,立てられている.不信感が高まり,新興の大国は戦争に及ぶのか? われわれは第1次世界大戦が些細な事件から起きたことを知っている.その破壊的な結果は,25年たっても,ヨーロッパが戦前の状態を回復できなかった.習近平と安倍晋三は,同じリスクを冒すのか?
ドイツも同じような行動を取った.1911年,フランスのモロッコ軍事介入に対して,ドイツが戦艦を送ったのだ.その目的は,少なくとも一部,フランスとイギリスの関係を試すためであった.当時のイギリスと同様,アメリカは,この地域の同盟諸国を,台頭する中国から守ることに苦悩している.
当時,この問題にNorman Angell(The Great Illusion)は,戦争が起きるはずはない,と答えたように思われている.それは間違いだ.Angellは,戦争は勝者にとっても何ら利益がない,と主張したのだ.しかし,実際,戦争はすべての国を損なう破滅的な形で行われた.
専門家の判断では,中国が戦争すれば,その損失はアメリカと日本を合わせたよりも,中国にとって大きいだろう.何よりアメリカはこの海域を支配している.戦争になれば,中国は世界貿易から切り離される.また,中国の保有する海外の流動資産は封鎖される.中国は資源に乏しく,重要な原料を輸入している.また,技術やノウハウも外国企業の直接投資によって得ている.GDPの40%に及ぶ外貨準備を失うリスクがある.
Angellは,中国が開放的な貿易と,相互依存を続ける相互利益の方が,わずかな島を得るよりも,はるかに重要だと言うだろう.しかし,古代の歴史家Thucydidesが示したように,破滅的なペロポネソス戦争は,台頭するアテネによって生じたスパルタの警戒心から生じた.
習近平は,中国国民の長期的な利益をよく考えて,強硬姿勢を変えるべきだ.
NYT December 3, 2013
Biden,
in Japan, Calibrates Message Over Tensions With China
By MARK LANDLER and JANE PERLEZ
Project Syndicate DEC 3, 2013
The
Rise of an Insecure Giant
SHLOMO BEN-AMI
中国は,国際的な舞台で交渉をまとめる自信と経験を欠いている.脆弱な国家が独自に行動しようとするとき,危険が高まる.
FT December 4, 2013
China
stands to lose in island spat
By Geoff Dyer in Washington
NYT December 4, 2013
As
Biden Visits, Chinese Push Back Over Air Zone
By MARK LANDLER
FP DECEMBER 4, 2013
Hack
Tibet
BY JONATHAN KAIMAN
FP DECEMBER 4, 2013
Team
Obama Changes Course, Appears to Accept China Air Defense Zone
Posted By Dan Lamothe, Yochi Dreazen
アメリカ政府の姿勢は,中国がADIZを直ちに取り下げよ,というものから,数日で,その適用の仕方を批判する内容に変化した.アメリカは中国のADIZを認めて,中日の軍事衝突を回避することを主要な目標にしたのだ.明らかに,この変更を日本は喜ばない.
FT December 5, 2013
Biden
tells Xi that US is unhappy with air defence zone
By Jamil Anderlini in Beijing and Demetri Sevastopulo in Hong Kong
2013-12-05 (China Daily)
US should see big picture
FT November 29, 2013
Banking
on Bitcoin
BLOOMBERG Nov 29, 2013
Building
Better Bitcoins
By Stephen L. Carter
l イランとの合意
FT November 29, 2013
FT
interview: Hassan Rouhani
By Roula Khalaf, Lionel Barber and Najmeh Bozorgmehr
NYT December 3, 2013
Bibi
and Barack, the Sequel
By THOMAS L. FRIEDMAN
ネタニヤフとオバマは2014年のノーベル平和賞など(the Nobel Prize, an Emmy, an Oscar and the Pritzker Architecture Prize)を分け合うだろうか?
さまざまな残虐な事件を越えて,多くの党派が流動的な関係にある今,2人の行動は中東世界を変える可能性がある.わずかでも想像力を持ち,タフさと開放性を適度に組み合わせて,イラン,イスラエル・パレスチナの問題に取り組めば,イスラエル首相とアメリカ大統領は苦いレモン果汁をレモネードに変えることができる.
NYT December 4, 2013
Iran’s
Economic Crossroads
By VALI R. NASR
NYT December 5, 2013
Is
Rouhani an Iranian Gorbachev?
By JOCHEN BITTNER
l アフリカ
SPIEGEL ONLINE 11/29/2013
Billions
from Beijing
Africans
Divided over Chinese Presence
By Bartholomäus Grill in Bagamayo, Tanzania
NYT December 1, 2013
Africa's
Crumbling Center
By THIBAUD LESUEUR and THIERRY VIRCOULON
Project Syndicate DEC 2, 2013
Kenya’s
Resource Challenge
Rick van der Ploeg & Samuel Wills
ケニヤで発見された石油資源が「資源の呪い」を生じないように,まず課税ではなくロイヤリティーで外国企業の利潤から財源を徴収し,インフラ投資に向けるべきだ.それには時間がかかるから,為替レートが増価するのを抑え,物価の安定を重視するべきだ.東アフリカ共同体の通貨同盟は,この資源の発見によって,加盟諸国の高金利や失業を避けるため,見直すべきだ.
FP December 3, 2013
Can
the World Still Make a Difference in the Central African Republic?
Posted By Ty McCormick
l 通貨・金融危機の種
Project Syndicate NOV 29, 2013
Back
to Housing Bubbles
NOURIEL ROUBINI
住宅市場のバブルが世界金融危機の始まりであったが,あれから5年で,各地に住宅バブルが再現しつつある(Switzerland, Sweden, Norway, Finland, France, Germany, Canada, Australia, New Zealand, and, back for an encore, the UK (well, London)).新興市場では,Hong Kong, Singapore, China, and Israel, and in major urban centers in Turkey, India, Indonesia, and Brazil.
マクロ・プルーデンシャル規制は弱く,各地のバブルを生んでいる条件はアメリカのデフレ懸念として続いている.
Project Syndicate NOV 29, 2013
Big
Banks’ Shadow Dance
SIMON JOHNSON
Project Syndicate DEC 2, 2013
Central
Banking’s New Club Class
KATHARINA PISTOR
FT December 4, 2013
US
faces cash flood from world’s savers
By Charles Dumas
NYT DECEMBER 5, 2013
Preventing
Currency Manipulation
By SIMON JOHNSON
オバマ政権は,TPPにより,貿易と投資の新しいルールを決めることに熱心である.しかし,C. Fred Bergsten and Joseph Gagnonが指摘するように,輸出を伸ばすための「通貨操作」が新しい保護主義になりつつある.
l ウクライナ
FP NOVEMBER 29, 2013
The
Bear Hug
BY JAMES TRAUB
FT December 1, 2013
The
setback with Ukraine will teach Brussels to be patient
By Mary Dejevsky
NYT December 1, 2013
Thousands
Demand Resignation of Ukraine Leader
By DAVID M. HERSZENHORN
FT December 2, 2013
How
Putin miscalculated in the struggle for Ukraine
By Gideon Rachman
FT December 2, 2013
Ukrainian
protests deserve solidarity
FP December 2, 2013
The
Hard Limits of Economic Power
Posted By Daniel W. Drezner
NYT December 2, 2013
A
Moment of Peril in Kiev
By THE EDITORIAL BOARD
BLOOMBERG Dec 2, 2013
How
the EU Can (Help) Save Ukraine
By the Editors
NYT December 5, 2013
U.S.
Official Tells Ukraine’s Protest Leaders to Find a Solution
By DAVID M. HERSZENHORN
(後半へ続く)