(前半から続く)
l 長期停滞論
NYT November 17, 2013
A
Permanent Slump?
By PAUL KRUGMAN
IMF年次総会で「長期停滞論」“secular stagnation”を唱えたのは,ほかの誰でもない,あのLarry Summersだ.
住宅バブルや債務増大を前提とした成長に戻ることはない,とSummersは言う.需要不足は常態である.バブルなしに完全雇用は実現できない.
なぜ緩やかな不況が続くのか? 人口増加は減り,貿易赤字が続くから,需要が制限されてしまう.しかし,それが意味するのは,中央銀行が金利引き上げを準備する話などやめるべきだ,ということだ.現実に停滞が続く限り,金利は永久に低い.
FT November 19, 2013
Why
the future looks sluggish
By Martin Wolf
Summersは,早期回復を期待する楽観論者に,たっぷりと冷水を浴びせた.
金融危機後の裕福な諸国では,金融システムが再建されても,貯蓄過剰が残り,需要が不足している.またグローバル・インバランスも残っている.世界経済は,異常な低金利であっても,実業界が望む投資額を超える過剰な貯蓄を生じてしまう.
何ができるだろうか? 金利をさらに下げる.マイナスの金利も.企業の投資を妨げる者を排除する.低炭素技術に結びつくような公共投資を増やす.利潤が期待できる新興市場や途上国に投資する.
高齢化する,人口減少の経済にとっても,最善の策は,生産を高める公共投資である.
Project Syndicate NOV 19, 2013
What’s
Stopping Robust Recovery?
MICHAEL SPENCE
BLOOMBERG Nov 20, 2013
No, Larry Summers, We Don’t Need More
Bubbles
By Clive Crook
l 中国と日本の衝突
FT November 18, 2013
China
and Japan are heading for a collision
By Gideon Rachman
中国と日本の対立はますます激化し,双方の攻撃的な姿勢が軍事衝突の危険を高めている.それは安保条約に従って,アメリカを巻き込む恐れがある.いずれの国も戦争を望まないが,それを避けるにはコースを変えねばならない.
北京では,日本が1930年代の軍国主義を再現するのは許さない,という声を聴く.東京では,中国政府が軍隊への支配力を失ってアメリカとの対決を目指している,という声を聴く.
中国の経済規模は2020年にアメリカを抜くかもしれないが,軍事力ではまだ大きく劣っている.しかし,アメリカを超える軍事支出を続け,不確実性が増すだろう.日本政府が歴史に対して示す姿勢は,アジア諸国にも批判される.
中国の強さは,弱さを見せないために,日本政府の姿勢をますます硬直的にする.他方,中国には妥協する余地がある.新しいアジアの秩序に日本を入れる姿勢を示すことが,両者の対立を回避するカギになる.
FP NOVEMBER 20, 2013
Super Hercules in the Himalayas
BY ASHTON B. CARTER | NOVEMBER 20, 2013
アメリカとインドの軍事協力.
FP NOVEMBER 20, 2013
No More Easy Wars
BY SCOTT GERBER
l イランとアメリカ外交
FT November 18, 2013
Time
for Obama to deploy his cunning in the MidEast
Kishore Mahbubani
「狡猾さの美徳the virtues of cunning」を知るべきだ.西側は,その狡猾さによって世界を支配した.わずか10万人のイギリス軍が3億人のインド人を支配したように.
今や,西側は華麗な衰退を管理しつつ,長期的な安全保障を維持しなければならない.狡猾さが何より必要な局面だ.オバマが狡猾さを示せば,アメリカと世界の利益を実現できる.
第1に,オバマはもっと盛大にロウハニ大統領との合意を宣伝する.ロウハニはイランの核武装を回避することができる.すなわち,まず,(すでに)NPTで保証されているように,イランは核の平和利用を「許される」.次に,その交換という形で,イランのIAEA加盟を認め,すべての核施設を査察する.
ロウハニ大統領も非常に狡猾であるに違いない.イランの隣人で脅威をもたらす者はいなくなった,と挨拶する.タリバンとフセインはジョージ・W・ブッシュ大統領が葬ってくれた.さらに,ロウハニは,論争的な点を指摘する.核兵器はイランの安全保障を高めない.むしろ,核兵器がないことが,イランをアラビア湾岸における支配的国家にするだろう,と.
このロウハニの「非核化計画」に対して,狡猾なオバマは積極的に応じる.イスラエルとパレスチナの和平を推進するのである.そのために,イスラエルとサウジアラビアの政治指導者を協力させる.彼らはすでにアメリカに絶望している.イランとの和平を合意することは彼らへの裏切りだ.しかし,イランの強大化を抑えるには,両国が協力するしかない,と理解するだろう.
パレスチナは,サウジアラビアの2国家案を支持してきた.パレスチナが狡猾であれば,自分たちの領域で完全な非武装化を受け入れるだろう.なぜなら,パレスチナが武装の強化でイスラエルに勝利することはないから.しかし,パレスチナはアラブ社会で最も優れた近代化への適応力を持っている.日本,韓国,台湾,シンガポールが示したように,パレスチナは中東のシンガポールになる.それがアラブ社会の近代化と発展を刺激し,イスラエルとサウジアラビアによるイランへの対抗力に重みを与える.
ワシントンのイスラエル・ロビーも狡猾でなければならない.イスラエルが「鉄の防壁」で得る安全保障は短期的である.長期的にはそれが,小国に必要な,近隣諸国との慎重,かつ,実践的な調整を妨げている,と理解することだ.
近代化と経済発展は,地域の化学変化を生じる.それこそ,ミャンマーがシリアにならなかった理由だ.同じように,オバマによるロウハニとの狡猾な合意は,イラン社会に化学変化を生じる.イランで一気に神権政治が崩壊することなどない.しかし,徐々に市場を開放し,その運命に従うだろう.すなわち,中国やインドがそうであるように,文明の輝きを取り戻すのだ.
NYT November 18, 2013
A
Dangerous Interregnum
By ROGER COHEN
国際システムに権力の空位期が訪れた.それは多くの死の兆候をともない,危険な局面である.
9・11後の時代は終わった.アフガニスタンとイラクで多くの死傷者を出し,アメリカは疲弊した.調査によれば,アメリカ人の83%が大統領に内政に専念することを求め,外交を重視せよと求めたのは6%でしかない.これはこれまでで最低だ.2007年には,39%が内政を求め,40%が外交を優先した.
イギリスの帝国が衰退したとき,グローバルなパワーはアメリカが継承した.その移行にはほとんど継ぎ目がなく,いとこ同士の交代だった.今は違う.王国を継ぐ者がいない.
EUの状態はそれどころではない.ロシアのプーチンも時計のねじを逆転させている.中国にはシリアもイランも関係ない.安定性,を唱えるだけだ.アジアでアメリカは必要だし,アメリカ経済の崩壊は避けてほしい.中国もインドも,世界を組織する新しい原則など示せない.
むしろそうした新原則は,技術や社会ネットワーク,個人が示すのかもしれない.しかし,権力の空位は解消しない.
30年間の対立を経て,アメリカがイランと和解するとしたら,世界の不安定化に応じて,アメリカが戦略を見直す柔軟性を示した証拠であろう.空位期は危険である.パワーの構造が変化することを再考しないとき,死の危険は倍加する.
FT November 19, 2013
It
was not sanctions that brought Iran to the table
By Hossein Mousavian
FT November 19, 2013
Israel
has much to lose if Iran talks fail
By Roula Khalaf in Washington
NYT November 19, 2013
Let’s
Make a Deal
By THOMAS L. FRIEDMAN
FP NOVEMBER 20, 2013
Vive la Freeze!
BY JEFFREY LEWIS
FP NOVEMBER 21, 2013
Smother 'Em With Love
BY ROSA BROOKS
イランを封じ込める政策は失敗した.軍事的.経済的,文化的な関係を縮小することは事態を改善できなかった.むしろ,拡大に転じるときだ.イランに接近せよ.
第1に,現実として,すでにイランは核能力を獲得している.核兵器を生産するのは時間の問題だ.これは良いニュースではないが,世界の終りでもない.
核兵器を保有する国にとっての拡散のロジックはイランにも否定できない.イラン指導部はそれを合理的に計算する.核保有には大きなリスクがあり,核兵器を使用することはできない.テロリストに渡すこともありえない.
アメリカは制裁によって目的を達成できない.核施設を空爆しても無駄だ.むしろ将来世代を危険にさらす.そのことは,アメリカ軍も,ホワイトハウスも,イスラエルの諜報部も理解している.ネタニヤフとアメリカ共和党の一部が認めないだけだ.
イランと対決することで得るものがなく,核保有を阻止できないとしたら,アメリカはイランの核保有を受け入れるしかない.イランの核施設と平和利用を認め,制裁解除だけでなく,国交の正常化を進める.
FP November 21, 2013
U.S. Middle East Strategy: Back to
Balancing
Posted By Stephen M. Walt
アメリカの戦略に関するいかなる議論も,世界においてアメリカが占める特に優れた地位を認めることから出発しなければならない.アメリカは他国に比べて安全保障上の大きな優位を確保している.アメリカが外の世界において脅威を感じるものは何もない.何が起きても対応できるだろう.1910年,中米フランス大使は述べた.「アメリカの北には弱い隣国,南も弱い隣国,西には魚,東にも魚しかいない.」
それはアメリカの外交を特別なものにしている.
アメリカはどの地域も直接に支配する必要はなかった.その地域を誰も支配できなければ,それで十分だった.中東では,イラン・イラク戦争も,イラクのクウェート侵攻も,一時的な介入で均衡を守らせた.アメリカの中東外交は,9・11後,イランとイラクを同時に封じ込めること,さらに,ジョージ・W・ブッシュが愚かな「中東改造」に乗り出した.
それを以前の外交に戻すことは,自国を非難する「撤退」や「不確実さ」で意味するような政策転換ではない.1950年代,60年代,70年代,80年代がそうであったように,コストの少ない地域管理に戻るだけである.
l EUとアメリカ外交
NYT November 18, 2013
Europe
Needs Ukraine
By SLAWOMIR SIERAKOWSKI
NYT November 19, 2013
Is
Britain Sleepwalking Toward Disaster?
By MATTHEW D’ANCONA
FT November 21, 2013
America should not try to keep its
shale gas to itself
By
Bill Richardson
シェールガス「革命」は,アメリカの経済,雇用,エネルギー安全保障を変える力を持つ.それは,アメリカの国際経済・地政学における利益にも影響する.
LNGを輸出するリスクと機会が激しく議論されている.反対派は,輸出が国内価格を上昇させるという.現在は1000立方フィートで3ないし4ドル,ヨーロッパの価格の3分の1である.
ロシアは中・東欧への外交手段として天然ガスを利用している.特に,ポーランドはその高価格に苦しみ,ウクライナはEUとの通商協定を妨害されている.アメリカのLNG輸出は,この介入を阻むだろう.
LNG輸出は米欧関係に3つの利益をもたらす.1.アメリカのエネルギー部門に雇用を増やす.2.3.ヨーロッパのエネルギー価格を下げ,競争力を高め,エネルギー安全保障を高める.3.ヨーロッパが経済危機を脱し,米欧間のパートナーシップが強化され,アメリカの経済と雇用にも影響する.
l スコットランド独立の財政問題
FT November 19, 2013
What
does independence even mean for Scotland?
By Alistair Darling
FT November 21, 2013
The depth of an independent
Scotland’s fiscal hole
By
Martin Wolf
l 金融危機後の経済学
The Guardian, Wednesday 20 November 2013
Orthodox
economists have failed their own market test
Seumas Milne
80年間で最大の危機を予測できず,むしろ危機の条件を創ることに貢献した正統派の経済学は,今も支配的な地位を保っている.原子化された個人の効用最大化を仮定して均衡を数式で表現する新古典派の説明は,現実を無視して,まさに宗教に近い.
Manchester Universityで800人の学生がa post-crash economics societyを結成した.その動きは他大学(Cambridge, Essex, the London School of Economics and a dozen other campuses, and linking up with university groups in France, Germany, Slovenia and Chile)に広がっている.
Project Syndicate NOV 21, 2013
Four Fallacies of the Second Great
Depression
ROBERT
SKIDELSKY
2008年以来,政治指導者たちは経済学的な誤謬をまき散らしてきた.ここに私が興味を持った4つの代表例を挙げておく.
1.The
Swabian Housewife.シュヴァーベンの主婦.ドイツのメルケル首相は,リーマン・ブラザーズが2008年に倒産したとき,主婦なら「不相応な暮らしはできない」ことを知っている,と述べた.これが緊縮策を正当化するわけだが,総需要に関して間違っている.もしすべての主婦が支出を削ったら,需要が失われて,雇用も削られる.夫の失業に直面し,主婦は生活がさらに苦しくなったと知るだろう.
「合成の誤謬」,また,ケインズの言う「節約のパラドックス」である.
2.資金がない政府は支出できない.イギリスのキャメロン首相は緊縮予算を組んで,繰り返しこう言った.しかし,政府は主婦や企業と違って,常に必要な資金を債券発行で得られる.それは金利が上昇してできなくなる,というのは間違いだ.中央銀行が必要な資金を印刷できるから.いわゆる量的緩和である.
中央銀行の無い政府には,これができない.ECBが行動する前のユーロ圏がそうだ.
3.債務は増税を先延ばしするだけだ.これも何度も聞いた.債券を発行すれば,その返済をするために増税しなければならない.同じことだ,という.納税者はそれを予想するから,支出を減らして納税を準備する.それは政府の支出による拡大効果を失わせる.
実際には,政府は返済するより,さらに新しい債券を発行して借りなおすだけだ.もっと重要な問題は,現に資源が遊休状態にあるときなら,政府が債券を発行して支出することで,この遊休資源が活用され,追加の所得と税収を生み出す.返済は必要ない.
4.政府債務は将来世代の負担になる.しかし,返済は国民所得に影響しない.現在の債券は,将来世代の間で所得や資産を移転しているのだから.しかし,外国の債券保有者に関してはそうではない.
経済学は,物理学や化学のような自然科学ではない.正しいかどうかが状況によって,特に,人々の予想によって変化する.ただし,全ての人が増税を予想して貯蓄するから財政刺激策は無駄だ,というような,エコノミストだけが考える異常な仮定で議論するのは間違いだ.
l アフガニスタン
NYT November 20, 2013
How
Is Hamid Karzai Still Standing?
By WILLIAM DALRYMPLE
FP November 20, 2013
The War In Afghanistan Could Be Lost
This Week
Posted By Dan Lamothe, Yochi Dreazen
theguardian.com, Thursday 21 November
2013
How Afghans see America: the cowboy
that divided the village
Nushin
Arbabzadah
l カザフスタンの鉄道
NYT November 20, 2013
Kazakhstan’s Bet on Rail
By
KEITH BRADSHER
カザフスタンの首都に機関車の工場と世界最効率のエンジン工場が建てられる.石油を輸出した富で,鉄道のネットワークと,機関車産業の国営帝国K.T.Z.(Kazakhstan Temir Zholy)を作るつもりだ.鉄道は,カスピ海からカザフスタンを通じて中国まで,第2のルートを開拓する.中国も,アメリカ軍の守る海域に物流を頼ることに不安を覚え,カザフスタンに協力する意欲を示すだろう.
歴史上,多くの国が自然資源の富を得たことで国内産業の空洞化を招いた.通貨価値が増大し,競争力を失ったのだ.17世紀,18世紀,スペインの羊毛や織物は,南北アメリカ大陸の植民地から金銀が流入することで競争力を失った.1960年代,オランダは海底の天然ガスが開発され,国内産業が衰退した.
人口860万人のカザフスタンで,K.T.Z.は16万人を雇用する.労働力の54人に1人である.
l 貧困と社会不安
BLOOMBERG Nov 20, 2013
Blame Rich, Overeducated Elites as
Our Society Frays
By Peter Turchin
複雑な社会は壊れやすい.相互の信頼と社会的な協力の網の目によって維持されているからだ.この網の目は,政治的不安定性,内部対立,社会の崩壊によって,容易に擦り減ってしまう.
不安定化は歴史的にゆっくりと発展し,後退した.ローマ帝国,中華帝国,中世と近代初期のイングランドとフランス,アメリカでは長期の不安定が1850年代にはじまり,金ぴか時代を通じて,「暴動の1910年代」まで続いた.
同様の力が現代にも生じつつある.現在のアメリカが抱える難問は1970年代から始まった.労働者の賃金が生産性の上昇と一緒に上がらなくなったからだ.所得の上位1%が所有する資産と99%の資産とが「乖離」し続けて論争になった.それは長期的な政治不安が高まることを示していた.
奴隷制は道徳的に邪悪であり,廃止されるしかなかった.しかし南北戦争で何十万人も犠牲になる必要はなかった.アメリカの歴史的循環は南北戦争で終わらなかった.金ぴか時代に形成された莫大な資産がその後の経済的不平等を形成し,1919-21年にピークとなるもう一つの政治的暴力が襲った.大規模な暴動が26回,騒乱は1000回以上起きた.
われわれは2020年代をピークとする新しい政治的大動乱を迎えるだろう.
l 子供の売買
NYT November 20, 2013
When Children Are Traded
By
NICHOLAS D. KRISTOF
l 日本企業
FT November 21, 2013
Japanese companies face double
challenge
By Henny Sender
日本企業は,もっと効果的な資本の使い方を学び,市場占有率ではなく利潤率を目指す必要がある.JALの再建,日立と三菱重工の火力発電部門統合,など.企業が人口減少や海外市場へ向けた変身を遂げるまで,その高い賃金に見合った投資は不可能だ.金融緩和と円安だけで,企業が賃金を引き上げることはない.
BLOOMBERG Nov 21, 2013
Japan’s Losing Battle Against
’Goldman Sachs With Guns’
By William Pesek
l 政治家の行動
NYT November 21, 2013
Kennedy's Legacy of Inspiration
By ROBERT DALLEK
ケネディーの影響を損なう厳しい批判も多い.しかし,最大の成功は,そのカリスマを使って,感動を呼ぶ指導者となり,アメリカにとって希望に満ちた未来があることを示し,国民を前進させたことである.その演説を通じて,世界中の人々にアメリカの理想を示し,それに応じた行動を取ったことである.
NYT November 21, 2013
A Time for Courage
By ROGER COHEN
Willy Brandtの生誕100周年であった.彼がワルシャワ・ゲットーで,黙って跪いた行動は,ドイツ人がホロコーストを恥じる感覚を明確に示した.
象徴的な行動は非常に重要である.しかし,われわれの時代には見られなくなった.政治家が単なる管理者になったからか.
私は,同時に,Helmut Schmidtのことを思い出す.彼はいつも,東西再統一は可能だと信じていた.そしてMerkelを,世界最大の黒字を持つ国の首相として,ヨーロッパへの共感や連帯が欠けている,と批判する.東ドイツの人々は,連帯よりも自由を求める.ポーランド人やチェコ人と同様,自由とはアメリカのことだ.
FP NOVEMBER 21, 2013
Thailand's War of Attrition
BY
STEVE FINCH | NOVEMBER 21, 2013
l ドルとそのライヴァル
Project Syndicate NOV 21, 2013
The Dollar and Its Rivals
JEFFREY
FRANKEL
国際通貨としてのドルの地位は変化してきた.1945-71年のブレトン・ウッズ体制で頂点にあったが,アメリカの財政政策が機能しないのに,最近,地位は高まっている.意外なことに,ドルの地位低下が議論されるときに地位が回復している.1992年,中央銀行の外貨準備に占めるドルの割合は46%であったが,2000年には70%に高まった.
しかし,長期の低落傾向は変わらない.現在の地位が高いのは,当然かもしれない.投資家たちは金融危機に対して,ドルから逃避したのではなく,ドルに逃げ込んだからだ.ユーロ圏の問題は深刻であり,中国など,新興市場の通貨が国際化するのはまだ先のことだ.
******************************
The Economist November 9th 2013
The global economy: the perils of
falling inflation
New York’s mayor-elect: Don’t screw it
up
Civil wars: How to stop the fighting,
sometimes
Education: On your marks
(コメント) しっかり読めませんでした.世界経済がインフレよりもデフレを制御しなければならない,というのは,グローバリゼーションと金融危機,投資不足が重なっているからでしょうか.ニューヨーク市長の交代をどう見るか,世界都市の変貌に注目したいです.特集記事は,内戦が減っている,という話です.冷戦後,外部支援が失われ,交渉による終結を維持できる国連・平和維持軍の役割が強調されています.
教育でも,市場の成果と報酬とが結びつくのでしょう.急速に変化する個々のスキルを重視し,インターネットで学ぶ時代になるからです.大学と呼ばれる教養教育の価値は,何かもっと別の形で再発見されるのか・・・
******************************
IPEの想像力 11/25/13
今週は,同志社EVE祭になっています.何のEVEか? 創立記念日の前夜祭です.
風邪を再発して,不調なままですが,今,思いつくことを書きました.
l 脱アメリカ化と脱炭素化.
フラッキングによる新しい炭素エネルギーの採掘は,その利益を,アメリカや世界の限られた者に集中させるなら,彼らの政治圧力により脱炭素化の政策や国際的枠組みは放棄されるでしょう.あるいは,その利益をアメリカが独占するなら,アメリカは脱炭素の枠組みから離脱するかもしれません.前者の場合,脱アメリカ化と脱炭素化は延期され,温暖化は加速します.後者の場合,脱アメリカ化は進みますが脱炭素化は進まず,温暖化も続くでしょう.
新しい技術や利益を国際的な合意に従って脱炭素社会に向けた転換の促進,技術開発・移転と補償メカニズムに利用できれば,脱アメリカ化と脱炭素化がともに進みます.そして,世界の新しい政治権力は,アメリカでも中国でもなく,いわば森林を多く育てる者たちに委ねられるのです.
l 共通の安全保障と脱軍事化
安全保障の目的は,他国を支配し,相対的優位を得ることではありません.侵略や暴力による破壊活動から身を守ることです.しかし,各国による防衛力の整備は,自国の安全保障を確立するために一方的な戦略と相対的優位を目指す軍備拡大競争になります.世界貿易や外国の資源・エネルギーに依存する限り,いずれの国も安全保障は得られないでしょう.
「防空識別圏」が,自国の領土に接近する航空機を識別することであれば,どの国にとっても必要です.こうした情報を共有することは,例えば,小国の集まるヨーロッパなら,すでに行っていると思いますが,どうでしょうか? 日本政府も,中国の示す防空識別圏のあり方を,もっと冷静に,考えてみるべきでしょう.
安全保障の共有は,もちろん,容易なことではありません.しかし,ヨーロッパが模索し,中東地域が模索し,東アジアや南アジアでも模索することで,互いに良い影響を受けるでしょう.安全保障のリスクを抑える地域ほど,新興市場への投資や技術革新への積極的な投資が長期停滞を解決する契機になります.
日本の首相が,もっと積極的に,中国や韓国からの歴史認識を問う声に応えなければ,日本は東アジアにおける安全保障や貿易・投資圏の枠組みから外れて行くのではないでしょうか? 日本との交渉だけが遅れるのであれば,切り離して,別枠になるからです.
日本人の戦争意識と,中国人,韓国人の戦争意識とが違うとしても,それを共有できる条件を積み上げていくような合意が無ければなりません.なぜ日本の保守政権は,自国民をも激しく弾圧した当時の戦争国家を(同じ日本人だから?)擁護しようとするのでしょうか? 東西ドイツ再統一に向けて,ブラント元首相はヨーロッパの近隣諸国と和解することを絶対に必要と考えました.その意味で,日本の不幸は,日本ではなく,朝鮮半島が分断されたことでした.
Kishore Mahbubaniの称える「狡猾な」外交を日本が学ぶとしたら,日本は尖閣諸島を台湾に返還し,台湾の民主主義と経済発展に共感を示すでしょう.また,竹島については韓国政府を説得して,国際裁判所の裁定に従うか,むしろ両国で合意して主権を共有し,両国間の共通経済圏を推進することです.もちろん,韓国がこうした条件を歓迎するとは思えません.しかし,従軍慰安婦や強制連行など,植民地期の問題で,両国が大きな前進を示す一環であれば,支持されると思います.
次の政権は,今からアジア・スーパー外交の構想を練ることです.アメリカやEU,インド,ロシア,なにより地域の多くの中・小国が,東アジアの平和と繁栄に日本の積極的な姿勢を歓迎するでしょう.
******************************