IPEの果樹園2013
今週のReview
11/11-11/16
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ドイツの貿易黒字批判 ・・・機密・原発・防衛 ・・・スノードン氏に感謝する ・・・銀行業の社会的な評価 ・・・超富裕層とポピュリスト ・・・新旧世界の逆転 ・・・メキシコのソーダ税 ・・・中国の権力と社会変化 ・・・核軍拡から共存へ ・・・主権廃止のドイツ・モデル ・・・タクシン共和国
[長いReview]
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l ドイツの貿易黒字批判
2013-11-01 (China Daily)
US
monetary gamble
中国やドイツを大げさに非難する暇があったら,アメリカは自国の問題を解決すべきだ.その歴史的な累積債務がデフォルトする瀬戸際で危機を逃れたばかりなのに,中国やドイツを無責任だと非難し始めた.
アメリカは自分たちの均衡を回復する苦しい努力をせずに.他国を非難している.2008年の金融危機以降,中国とドイツは新しい現実に合わせて経済モデルを修正してきた.しかも,アメリカは人民元の増価や国際化を求めているが,それが財務省証券への需要を減らすことは意味している.アメリカの金融的なギャンブルが失敗することこそ,脆弱な世界経済をより大きく損なうだろう.
VOX 4 November 2013
What’s
wrong with Europe?
Isabella Rota Baldini, Paolo Manasse
アメリカは2.5%で成長しているのに,なぜユーロ圏は回復しないのか? その理由は,成長率の高い,貧しい地域のキャッチアップが,2000-2007年には起きたが,金融危機後は止まってしまった.逆に,金融危機後,物価や賃金の硬直性が回復を妨げ,しかも,アメリカに比べて,ユーロ圏の不十分な財政制度が総需要の不足を補えなかった.
ユーロ圏の解体は悲惨なコストをもたらす.各国は構造改革を一気に加速し,連邦型の財政を導入する.すなわち,各国は国家間で保証し合うが,救済することはない.最後に,ユー圏は非効率的で,他国を侵害する,中央集権的なシステムから抜け出す必要がある.
FT November 5, 2013
Germany
is a weight on the world
By Martin Wolf
公平な批判も人を傷つける.ベルリンがアメリカ財務省の批判に憤慨したのも不思議ではない.
ドイツの財務省は,黒字はドイツにとっても,ユーロ圏にとっても,世界経済にとっても問題にならない,と返答した.こうした反応は予想されたことだが,間違いだ.
輸出黒字は,単に競争力を反映するだけでなく,その国が支出以上に生産過剰であることを示すものだ.世界需要が十分なときは,赤字国が借入れで後の債務返済をまかなえる投資をすればよい.しかし,多くの場合,輸入に使ったり,非貿易財に投資したりしてしまうのだが.現状は金利がほぼゼロで,世界中が慢性的に需要不足であるから,黒字国は需要を奪ってしまい,「近隣窮乏化」によって世界経済を損なっている.
このままではユーロ圏も日本型のデフレに向かっており,また,必要な競争力の改善をもたらさない.金融危機後の赤字国は露骨な緊縮策によって生産性をも損なっているのだ.たとえ金融政策を用いて量的緩和がユーロ安を導き,デフレを緩和するとしても,それは成功しない.なぜなら世界経済が不十分な成長しかしていないとき,ユーロ圏のような規模の経済が生きがいの需要に頼って回復することは不可能だから.
ドイツは,緩やかなデフレ,大規模な失業,ユーロ圏内の均衡回復と対外的な黒字を,望ましい,道徳にかなった,「成功」とみなす.なぜなら,彼らは神話を信じているからだ.すなわち,危機は財政的な違法行為によるものだ.財政政策で需要を動かしてはならない.中央銀行が政府債券を買うのはハイパーインフレにつながる.競争力が高いから黒字になる.
こうしてヨーロッパのプロジェクトは,繁栄ではなく貧困を,パートナーシップではなく苦痛を,意味するようになる.
l 機密・原発・防衛
BLOOMBERG Oct 31, 2013
Edward
Snowden Has Japan Copying China’s Playbook
By William Pesek
安倍首相が就任以来,日本は機密保持や諜報に関してもアメリカだけでなく中国の真似をする.国家機密の定義を示さず,まるで香港に規制を押し付けた中国をまねているようだ.
FT November 6, 2013
How
America should handle a changing Japan
Kurt Campbell
安倍首相が当選してから,日本の経済改革だけでなく,国際的な役割を転換する決意を明確に示している.日本は周辺地域がますます予測不能になっており,北朝鮮の核武装や中国の増大する地域的な野心に刺激されている.それはまた,1930年代の記憶で日本を見る中国や韓国に,軍国主義の復活を懸念させており,アメリカの難しい選択を迫っている.
静かな時代と激動する時代を交代させる日本の歴史に従えば,激動する時代が来たのかもしれない.アメリカは日本の主張から距離を置くことができる.あるいは,「普通の」国家に向かう日本の戦略に緊密に連携することもできる.後者の道はリスクと不確実さを含むが,アジアにおけるもっとも重要な2国間関係を維持し,地域の経済的奇跡に依拠するものであろう.
日本が単独で闘うより,変化しながらアメリカとのパートナーシップを育てる方がよい.
l スノードン氏に感謝する
FT November 3, 2013
Edward
Snowden has done us all a favour – even Barack Obama
By Edward Luce
われわれは皆,スノードン氏に感謝する.アメリカ政府が情報を収集することで,いつかそれが盗まれることは明らかだった.
ジョージ・W・ブッシュとバラク・オバマは,9・11以後のテロ攻撃を防いだ.それは優れた成果であるが,9・11は過剰な学習効果をもたらした.アメリカが情報監視国家になったことだ.
近い将来に,諜報活動の行動規範に関して,アメリカは同盟諸国と緩やかな合意に達するだろう.アメリカが指導する世界の成否は,大国間の戦争で決まるのではなく,アメリカの経済と民主主義の質で決まるだろう.
われわれは皆,アンゲラ・メルケルなのだ.
FP November 4, 2013
NSA
Spying: Where's the Beef?
Posted By Stephen M. Walt
NSAの諜報活動に関する記事を読んで思うのは,その外交的な価値に関する疑問だ.・・・「本当に,こんなことをする価値があるのか?」 重要な外交政策や我が国の安全保障に,どんな利益があったというのだろうか?
私はリアリストであるから,政府が互いに諜報活動をしても,それを驚いたり,恐れたりしない.アメリカのように豊かで,強力で,尊大で,幾分かはパラノイア的な国家が,他国よりも多くの諜報活動を行っていたとしても,そうだ.しかし,この戦略性のない,明らかに制御不能になった,情報収集は何なのか? どのような推定上の利益があると言っても,外交などの,大きな損失がそれを上回っている.
徹底的に,情報収集の損益を分析するべきだろう.その独立委員会は,諜報活動の専門家,市民の自由に関する専門家,諜報活動に強く懐疑的な姿勢のジャーナリスト,年季の入った,分別ある政治家,鋭敏な学者,で構成される.
l 銀行業の社会的な評価
FT November 1, 2013
Why
can’t banking be more like baking?
By Tim Harford
アダム・スミスが述べたように,市場は美徳によってではなく,私的利益によって機能する.しかし,スミスの挙げた肉屋,酒屋,パン屋と違って,銀行業は消費者が選択できない.その競争は限られており,市場における選択が正しく行われるには,そのサーボスが有害ではなく有益であることを監視する仕組みが必要だ.
金融監督者自身が判定できないことを心配するようなら,市場は好ましい成果を上げるのにふさわしくないほど,あまりにも複雑で,あいまいなサービスを売っているのだ.
銀行業からの所得は高度に集中している.イギリスのように,経済が金融サービスに高度に依存するなら,産油諸国を苦しめる「オランダ病」の効果と少し似てくるだろう.石油輸出は通貨価値を高めて他の産業を破壊し,しかも国内にほとんど雇用を生まない.
しかも銀行業は爆発しやすい.そのとき資産の価値が大きく失われる.銀行業は,石油採掘業(オランダ病)と,原子力発電所(メルトダウン)と,中古自動車販売業(デリバティブ)の性格を併せ持っている.
銀行業は構造的な改革を必要としている.それbankingがもっとパン屋bakingに似た仕事であるように.
l 超富裕層とポピュリスト
NYT November 1, 2013
Plutocrats
vs. Populists
By CHRYSTIA FREELAND
現代アメリカの謎は,富裕層がますます富とパワーを得ているが,ポピュリストがますます拡大し,政治を動かしていることだ.そして左右の中道派は衰退している.
しかし,彼らの富をもたらす経済の変化は,富の不平等を累積していった.そして経済的な格差だけでなく,文化や社会の分断化をもたらす.富裕層のもたらす公共政策の恩恵は,チャーター・スクールへの通学や,マラリア対策ほど,支持されない.ますます多くの者にとって,富裕層の父権的な官僚支配は利益を実現する彼らのシステムであるとしか見えない.
21世紀の中道派が資本主義をファイン・チューニングして,すべての者に利益をもたらすことができるのか?
問題は,まだ誰も技術革命とグローバリゼーションが中産階級の職場を破壊する力を抑えられないことだ.また,官僚の提示するデータで武装された政策ではなく,下から積み上げた,一人一人の政治的意見を集約できない.99%の運動が公共政策を動かすのも,勝者がすべての利益を独占する世界では難しいのだ.
l 新旧世界の逆転
NYT November 2, 2013
Calling
America: Hello? Hello? Hello? Hello?
By THOMAS L. FRIEDMAN
シンガポールは完全な民主主義ではない.しかし彼らは優れた政府を持っている.政府は,毎日,目覚めると問いかけるのだ.われわれはどんな世界に住みたいのか? われわれはその資源を最大圏に活用して,この世界で住民たちが繁栄するように,何ができるのか?
他の諸国ではすでに長く習得されてきた良識のある解決策を,われわれは実施できないのだ.国民を守る医療保険制度も,銃の規制も,渋滞する道路への課金も,財政赤字や炭素排出量を減らすガソリンへの課税も.
NYT November 4, 2013
The
Post-American Mall
By ROGER COHEN
南米に投資する中国のビジネスマンが好むドバイからブラジルへの直行便に乗った.アメリカを周辺にしてしまう新興世界のハブをつなぐ.
ドバイ空港の朝6時,恐るべき光景を目にした.膨大な数のブランドが並ぶショッピングモールに,中国,インド,ロシア,アフリカ,その他の世界に興隆するさまざまな土地から無数の買い物客が殺到している.この10年,西側が衰微する間も,急速な成長を楽しむ土地があったのだ.これに比べたら,ニューヨークのケネディ空港も,オランダのスキポール空港も,安っぽくて素人臭い.
ドバイのなにもかもが巨大で,最高水準で,最高品質である,という.街路樹には照明が点灯し,通りまで輝いている.
他方,ブラジルはこの3年間にワールドカップとオリンピックを控えているが,それほどの熱気はない.不動産ブームは空前の規模に達し,バブルという者もいるが,失業率は低く,新しい石油埋蔵量が確認され,中産階級は信用の利用可能性が増した.しかし,新しい不安が生じているのだ.
一面では,経済管理の失敗である.一気に成長が減速し,公的債務が増え,インフレが高まっている.しかし,さらに深いレベルで,ブラジル社会の表面的な富裕化が根本的な発展の歪み,暴力と腐敗を隠していたのだ.大都市の至る所に不満が満ちている.人口が膨張しているのにインフラは不足し,交通渋滞,水不足,教育・衛生・治安の悪化,が顕著である.警察は暴力的に人々を抑圧し,あまりにも多くの死者を出している.
ドバイとブラジルに現れた新興世界が私に衝撃を与えたのは,彼らがますます批判を受け入れず,熱烈に貨幣を欲求する姿勢,素早く儲けることを好み,富裕層の排他的クラブに参加することを許された,その新しい貨幣文化を見たからだ.もしそれを<文化>と呼んでも良いなら.
l メキシコのソーダ税
NYT November 3, 2013
Mexico's
Soda Pop Ploy
By DAVID TOSCANA
私は大学を出てすぐにコカコーラで働いた.研修を受けてから,毎日,トラックを運転して,メキシコ各地にコカコーラのボトルを届けたのだ.
教会にも,売春宿にも届けた.同じようなソフトドリンクや,チップスなど,ジャンクフードの配送トラックしか走らない道路を,全く地図にないような土地まで,コカコーラを届けた.政府も知らない,病院も,学校も,飲み水もないような土地まで行った.今,メキシコで最も危険な職業の一つが,配送トラックの運転手だ.強盗や強請に遭い,殺されることもある.
2006-12年のFelipe Calderón大統領は,麻薬戦争に没頭し,社会契約が破棄されて信頼を失った.市民の安全も,学校の改善もできずに,政治家たちは非合法に私腹を肥やしていた.しかし,最悪の方法は,市民への増税だ.
砂糖の入った飲料1リットル当たり1ペソ(約8セント)の課税が木曜日に議会で成立した.その目的は,肥満の解消である.メキシコはアメリカと,世界一の肥満率を競っている.メキシコは暑く,国民はソフトドリンクの消費に頼っている.多国籍企業が管理し,コマーシャルは盛んに消費を称え,細菌に汚染されていない(通常は)のだから.他の健全な代替物もないのに,ソーダの消費を非難するのは,マリー・アントワネット風に,「ワインでも飲みなさい」である.
こうして政府が集める約10億ドルは,はたして何に使われるのか? フロリダ,テキサス,カリフォルニアで,政治家たちが不動産を買うだけではないか?
そうだ.もっと良い方法がある.ソーダではなく,汚職に課税しよう.
l 中国の権力と社会変化
BLOOMBERG Nov 4, 2013
China
Is Choking on Its Success
By William Pesek
中国はディケンズ時代のイングランドなのか? 大気汚染がひどくなれば,政治家たちは対策に向けて動くはずだ.しかし,それはイギリスやアメリカの話である.中国は巨大な一党支配国家であり,彼らの正当性はもっぱら8%の経済成長にかかっている.しかも,党の幹部たちは既存の生産システムで大きな富を得ている.
中国は予測不可能な世界をもたらしつつある.1970年代に美しい環境を取り戻すため,日本やアメリカを助けたような民主的な市民的制度を欠いたまま,むしろ高度な汚職に染まった制度の下で,中国は環境問題に直面している.
共産党は土地収奪の紛争に関心をそらせたり,外国メディアが大げさに報道していると非難したりするが,街を歩けば飛行場の喫煙ルームに迷い込んだような現実を疑う余地などない.解決策は明白である.直ちに石炭の使用をやめることだ.莫大な外貨準備を使えば,天然ガスに移行することは可能である.
ただし,それには長期にわたる成長の減速と,国営企業を通じて製剤と富を支配するエリートたちの反対を抑えねばならない.石炭を燃やす工場を人口の少ない陜西省や内モンゴルに移転するだけで,毎年,都市に増える自動車も抑えられない.今の指導部には,それだけの政治的資本がないのだ.
FT November 6, 2013
The
ghost at China’s third plenum: demographics
By David Pilling
中国は豊かになる前に老いていく.その平均的生活水準は,エクアドルとジャマイカの間である.
中国の高齢化が急速に進むことをどれほど強調しても正しく伝えることは難しい.平均余命は,1949年の35歳から現在は75歳に改善された.ほとんど奇跡である.しかも,出生率は人口を維持する2.1人よりもはるかに低い,1.5人に急落した.
中国は人口過剰から人口不足に,歴史上最速で転換した,と研究者は言う.2011年には労働力が減少した.日本も最初に減少したのは1990年であった.中国にとって不吉なことに,日本はその後,20年間も経済が停滞している.
l 核軍拡から共存へ
Project Syndicate 04 November 2013
Latin
America’s Lessons for Nuclear Diplomacy
Juan Gabriel Tokatlian
イランとP5+1(国連安保理常任理事国+ドイツ)との交渉には,これまでにない強い期待がある.西側経済の不透明性や中東・北アフリカの政情不安など,困難な状況はあるが,交渉が進むためにも,非核化交渉が成功した「最善のケース」を双方が学ぶべきである.それは「革新的思考」で非核化を実現したブラジルとアルゼンチンだ.
多年にわたって,両国は核兵器を求めていた.国内には核保有を支持する勢力があった.その核武装が近づくにつれて,国際社会は神経質になっていた.軍事的に見て,状況はエスカレートしそうであった.しかし,戦略的な指導力と国内政治システム,経済的相互依存は,核軍拡競争を原子力のパートナーシップに転換させた.
その経験から学ぶべき5つの教訓がある.
1.マキシマリスト,最大限の要求は失敗するしかない.協力は常に可能だ.
2.部分的な,漸進的手法が,信頼と互恵を高める.包括的,恒久的戦略ではない.
3.リアリズムが不可欠だ.理想主義は役に立たない.
4.国際機関・ルールが決定的に重要だ.
5.すべてのアクターの戦略的目標を組み込むこと.
l 主権廃止のドイツ・モデル
Project Syndicate 04 November 2013
Falling
for Germany
Harold James
ドイツはヨーロッパ諸国,さらには中国にも賞賛されている.それは優れた経済状態や,国内に極右の反ヨーロッパ勢力がいないことによるだろう.しかしさらに,国家主義的な統一と発展を経て,主権の数を一貫して歴史的に減らしてきた姿勢が,これからのEU政治統合を指導する地位にふさわしいからだ.
ルターによる宗教改革以来,大まかに言って100年ごとに,ドイツの政治単位は10分の1に減少した.1648年,ウェストファリア条約は神聖ローマ帝国の中にあった独立した政治体の数を3000-4000から300-400に縮小した.ナポレオン戦争の後,ドイツ連邦に残った領邦の数は39に減った.
その後の戦争と平和で,小ドイツ主義のドイツ帝国が成立し,ヨーロッパのドイツ語圏は,オーストリア・ハンガリー(もしくは,ハプスブルク帝国)とともに,スイス連邦の3つになった.いずれも伝統的な国民国家ではない.1949年には東西ドイツに分割されて4つになったが,その傾向は明らかだ.
ドイツ政府の指導する,強力かつ連邦的なヨーロッパには,100年後,ドイツを含めて,国民国家はすべて消滅する.
l タクシン共和国
BLOOMBERG Nov 7, 2013
Thailand’s
Big Brother Drama
By William Pesek
タイは一人の億万長者に政治を支配されている.空港には「ようこそタイへ」とあるが,ここは「タクシン共和国」である.
タイに限らず,アジアにポピュリスト政治家があふれている.彼らにとって具体的な改革よりも,カリスマと才覚による人気が何よりだ.安倍晋三,習近平,ベニグノ・アキノ,ラフル・ガンディー.
2001年2月から2006年9月まで,タクシンはタイの民主主義を苦しめ,ロシアのオリガークでも恥じるほど,彼の家族と仲間に富が集まるようにした.ベルルスコーニのように,ビジネスの成功を政治に利用し,首相となって,地方を彼の政治基盤に変える「タクシノミクス」を実行した.経済のファンダメンタルズや技術革新を改善することなく,融資や補助金を注いだ.
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The Economist October 26th 2013
South Korea’s education system: The
great decompression
The future of Laos: A bleak landscape
Juvenile crime: Hard times
Illegal immigration: Over the top
Puerto Rico’s debt crisis: Puerto Pobre
(コメント) 特集記事としては,企業の新しい形態と,朝鮮半島の分析があります.韓国の「圧縮型」発展を支えたチェボルと教育システムが次の変化を妨げます.国際移民への反発が強まり,イギリスも移民に関する厳しい規制を盛り込んだ法律を定めました.プエルトリコは非課税の特権を失ったことでデフォルトの危機を迎えます.
いずれも正しいルールを見いだせない国際システムの難問ですが,それ以上に,ラオスと中国の記事に衝撃を受けます.ラオスはまるで「囲い込み」のように中国やベトナムからの投資を受け入れ,森林と土壌を失っています.そして中国では,都市への出稼ぎ労働者が子供たちを村に残し,あるいは,都市の戸籍がないために学校や医療のサービスを受けられず,若年層の犯罪が急増します.
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IPEの想像力 11/11/13
国家は競争し,次第にその外郭が壊れてしまい,優れたガバナンスだけを残します.ドイツ人は100年単位で政治体の数を10分の1にした,という歴史に驚きます.
朝鮮半島では,今も国家が分断されたままです.
北に拉致されて,30年ぶりに帰ってくることができた漁師は,あまりにも大きく変わってしまったソウルの姿に「右も左もわからなかった」と言います.そして,何よりも,だれもが敵であるかのように激しく競争する社会に驚きます.
安全保障から,貿易・投資のシステムに話題を移しながらも,戦争によって征服されるよりも,貿易と投資を受け入れることの方が,ある意味で,社会は激しく変わるのだ,と説明したかったことを,受講生たちは理解してくれたでしょうか?
過度の受験競争を抑えようと,韓国政府は塾を法律で禁止しましたが,その法律が憲法違反の判決を受けて失敗した,と言います.10時以降の塾の営業を禁止しても,子供たちは自宅へ帰ってネットで勉強し続ける,というのが恐ろしいです.
日本でも,韓国でも,中国でも,子供を産む女性の数が減っています.韓国政府は子供を産まなかった女性の年金を減らす,という話も興味深いです.アメリカには若者に多くの目標があるけれど,韓国では公務員になるか,チェボルに就職するか,この2つしか目標がない.今では政府が率先して,ベンチャー企業を育て,映画や文化を育成し,輸出しています.
世界に現れた新しい頂点,ドバイやリオデジャネイロ,シンガポール,上海,に比べて,日本の都市は老朽化し,縮小していくでしょう.
明らかに,新興世界の諸都市とビジネス・エリートが急激に富を蓄積します.しかし,それに見合った政治システムは生まれているでしょうか? ベルルスコーニ,タクシン,ブルームバーグ,など,通信やメディアを支配する超富裕層の築く権力は様々な姿になります.他方,政治の世界では,貧富の格差,環境破壊,通貨・経済危機,攻撃的ナショナリズム,などを利用して,ポピュリストの政治家たちが互いに刺激し合います.
ミャンマーやラオス,カンボジアなど,開発の遅れた地域に流れ込む資本とビジネスマンは,「囲い込み」を再現します.土地を奪われて浮浪化する住民の姿は,まるで『ユートピア』です.すでに国土の30%を失った.それらをラオス政府は回復できないだろう,という政府高官は,将来に「1917年,レーニンの革命」を予想します.
急速な開発も,貧困と抑圧も,その底辺ではよく似た様相を呈します.伝染病や公衆衛生,治安問題,そして輸送や通信のインフラが最も激しく議論されています.こうした「都市問題」をめぐって,民主主義は具体的な制度や政策を革新してきたと思います.
底辺では,移民たちが非合法化され,国境を越えた人身売買や偽装結婚の形で,さまざまな奴隷制が広まっています.
アニメ作家たちは30年も前から,この現実を克明に描いています.それは第3次世界大戦後,「アキラ」で武装し,「攻殻機動隊」が都市の治安と政治システムを守り,「風の谷のナウシカ」が描くエコロジカル・タウンを全土に散在させた,2050年のJAPANです.
偶然このページを見た人は,3週間続けて,Reviewを全部読んでみてください.何か違った意味で,世界が変化していることを,あなたも意識しないでしょうか? まるで地面が鳴動し,地底から巨人たちが立ち上がってくるのが見えるような・・・ そんな気がしませんか?
100年後の世界に,国家はいくつ残っているのか?
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