IPEの果樹園2013

今週のReview

11/4-11/9

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情報化社会と諜報の限界 ・・・超富裕層と寡頭政治 ・・・アメリカ外交の再検討 ・・・中国外交の進展 ・・・中東のバランス・オブ・パワー ・・・日本の改革 ・・・EUの改革 ・・・オバマケア論争 ・・・アフガニスタンからの撤退 ・・・金融ビジネスの将来 ・・・金融緩和とバブルの問題 ・・・トマト摘み労働者

 [長いReview]

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l  情報化社会と諜報の限界

FT October 25, 2013

Obama can finally confront the over-mighty spies

By Gideon Rachman

数週間前,こんなジョークでアメリカ政府の職員たちは苦笑いしていた.

ブラジルのルセフDilma Rousseff大統領がバラク・オバマに公式訪問の中止を伝えた.どうやってか? ・・・自分宛てにe-mailを出したのだ.(オバマはNSAからそのe-mailの内容を知るから.)

しかし,その影響はさらに広まって,とても笑いごとではない,と理解した.オバマ効果は消えた,とアメリカ政府の元スタッフは言う.「われわれは2004年に戻ってしまった.ヨーロッパの人々は思うだろう.民主党でも共和党でも,黒人でも白人でも,関係ない.これ(盗聴)がアメリカ人のやり方なのだ,と.」

この事件がアメリカ政府に与えた短期的ダメージは明らかだ.しかし,長期的な利益があるかもしれない.オバマは諜報活動の広がりに歯止めをかける必要を理解したのだ.

スパイはいつの時代にもなくならない.しかし,この20年間は,2つの事情で大きな変化が起きていた.第1に,911のテロ攻撃後,アメリカが諜報活動に配分する資源が爆発的に増えたこと.第2に,携帯通信と「ビッグ・データ」の世界では,技術的な諜報の能力が飛躍的に高まったことだ.

リベラルな政治家としてのオバマは,この強力な「諜報コミュニティー」の増大を抑えたいと思っても,難しかっただろう.しかし今,大衆がそれを知り,世界的なスキャンダルとなって,アメリカがもっと早くこの問題を考えておくべきだった,とわかった.

FT October 30, 2013

Germany must stop moralising and embrace espionage

By Jan Techau

同盟諸国間では信頼が必要だ.誰でも諜報活動はやっている.しかし,それだけでは重要な点を忘れている.

ドイツは,自分たちがパワーを得て,外交的な主張を強めていることに見合う代償を支払うのだ.もはや国際政治の傍観者ではない.

アメリカの元ドイツ大使が述べたように,ドイツは「世界で3番目に重要な大国」である.ドイツはアメリカのイラク進攻に反対した.ドイツはユーロ危機で厳しい融資条件を赤字諸国に強いた.ドイツは自動車でも,化学でも,機械でも,最近では太陽光発電でも,自国の利益を主張した.ヨーロッパは,メルケルが発表した脱原発の方針によって,多くの諸国のエネルギー政策を根本的に変えた.

つまり,ますます多くの国がドイツ政府の決定を待って,それを前提に自国の財政から外交に至る重要政策を決定するのである.それは,敵であれ同盟国であれ,多くの国がドイツ政府の考え,その意図を知る必要がある,ということだ.しかし,冷戦の40年間,ドイツはその主権を制限され,政策決定を外部に委ねてきた.そういう未成熟な(低開発な)精神状態を引きずっている.

再統一後も,その規模と地位を楽しむより,ドイツは東の負担を引き受けた.ようやく最近になって,変化した状況を受け入れ,アメリカがヨーロッパの安全保障を担いたがらないことを理解するようになった.ところが,まだ,独自の意思決定ができる国家の地位と,国際政治の道徳的な不純さとを切り離して考えている.

幸い,メルケル女史の対応は,戦術として十分に計算されたものである.アメリカを攻撃しつつ,憤慨する自国民をなだめられる程度に抑えている.そして,戦術を超えて,大国の政治力を行使するだろう.それにはドイツも諜報技術に投資しなければならない.将来,他国の諜報活動に煩わされたくないからだ.

アメリカの邪悪さを非難することは,国際政治におけるドイツの発言力に見合わない.


l  超富裕層と寡頭政治

FP OCTOBER 24, 2013

Tycoon Warning

BY CHRISTIAN CARYL

Credit Suisseによれば,ロシアでは,たった110人がその国の富の35%を所有している.同時に,ロシア人の93.7%1万ドル以下しか持っていない.ロシアは世界で最も貧富の差が大きな国である.

アメリカはそれほどひどくない.しかし,もっと悪化することもあるだろう.問題は,ロシアが世界の趨勢を示している,と思えることだ.民主主義が直面する最大の問題は,寡頭制のグローバルな拡大傾向である.


l  アメリカ外交の再検討

FT October 25, 2013

A revolution in thinking

By Gillian Tett

アメリカの外交専門家たちが,「アラブの春」と言わずに,「アラブ革命」と呼ぶようになった.

Aspenに集まったビジネス・リーダーたちの会合で,ワシントンの高官は述べた.「歴史上の革命を観るなら,アメリカ革命,ロシア革命,フランス革命,中国革命,キューバ革命,わずか一つだけが成功した.アメリカだ.」

しかし,アメリカ以外のこれに反対する声が出た.アメリカ革命も安定した,平和的な民主体制を作れず,内戦(南北戦争)になった.アメリカ以外に成功した革命もあった.ベルリンの壁崩壊後の東欧は激しい流血を避けられたし,バルチック諸国はロシアから自由を得たが,基本的な平和な革命であった.イギリスで釈放されたネルソン・マンデラが南アフリカで成功した「革命」は,アメリカの何にも劣らず驚異的なものである.

Aspenでの論争は2つに分かれた.一方では,アメリカがもっと強力に中東へ介入するべきだ,と主張した.人道的に,独裁者を倒す人々の希望に,極端なイスラム政治を拡大しないために.他方には,中東の狂気に巻き込まれることを拒むべきだ,と主張する者がいた.アメリカ国民はグローバリゼーションに圧倒され,戦争に疲れた.と.

彼らが同意したのは,アメリカの財政をめぐる議会の論争が,経済,軍事,そして信用を低下させた,という点だ.「アメリカの安全保障に対する最大の脅威は,中東にではなく,ワシントンの2マイル四方にあるのだ.」


l  中国外交の進展

Project Syndicate 30 October 2013

Are China’s Banks Next?

Simon Johnson

中国は銀行改革と国際化を支持し,ロンドンにはこうした銀行の進出が増えるだろう.ロンドンはそれを歓迎している.そしてイギリスの規制に従う支店ではなく,中国の規制に従う支局の開設を許している.

しかし,中国の改革はまるでシンデレラだ.彼女はようやく舞台に出ることを許され,注目を集めたが,すぐに深夜になって日が変わってしまう.その結末は全く違うものだろう.

NYT October 31, 2013

Easing Tensions on the India-China Border

By THE EDITORIAL BOARD

先週,両国の首相は国境防衛協力協定に合意した.小さな衝突がエスカレートするのを防ぐこと,国境貿易を認めて緊張を緩和すること,が含まれている.しかし,主要な紛争点は未解決だ.合意には,ホットラインの開設や,国境パトロールの廃止なども含まれている.

両国は国境地帯に空港や鉄道,道路を競って整備し,軍の移動を迅速に行えるインフラを建設してきた.しかし,これらは国境貿易にも利用できる.インドの国境地帯の貧困を減らし,中国は一層の市場拡大を期待できる.インドの赤字が増大しているが,成長の回復にも輸出が望ましい.

両国の軍備は拡大しており,中国の領土要求は「一つの中国」を実現する政治目標の一部としてあきらめる気はないようだ.完全な国境線の合意なしには,軍事衝突の可能性を真剣に受け止めるしかない.


l  中東のバランス・オブ・パワー

FP October 25, 2013

Playing Hard to Get in the Middle East

Posted By Stephen M. Walt

中東におけるアメリカの2つの同盟国は不満を感じている.サウジアラビアとイスラエルだ.アメリカがシリアに直行せず,イランとの対話を重視する姿勢に不満なのだ.しかし,アメリカの利益を守る,より柔軟な戦略を得るには,イランとの対話を進めるべきだ.

バランス・オブ・パワーは,イスラエルやサウジアラビアとの「特別な関係」を,アメリカのコストにする.アメリカは,外交的な弾力性を高め,特定の同盟国に過度に加担してはいけない.ところが今,アメリカは,パレスチナ人にイスラエルが取る不当に冷酷な扱いや,アメリカ政府の政策を無視して行う入植地の拡大によって,外交の弾力性を損なわれている.また,サウジアラビアの退廃した王政は,アメリカ自身の政治的価値に矛盾している.

イランと対話することは,中東地域に介入する非常に好ましいアプローチを可能にする.アメリカはテルアビブやリヤドから距離を取って,テヘランとも対話できることで,将来,外交のテコを強化できるのだ.アメリカは地理的に離れており,中東の国家ではないことを認識するべきだ.

アメリカの主要な目標は,中東のバランス・オブ・パワーを維持することである.いずれの国もアメリカにとっての脅威ではない.アメリカが圧倒的な軍事的優位を持っている.こうした条件では,アメリカの保護や支持を求める各国の姿勢を強めることが,さらにアメリカを有利にする.


l  日本の改革

NYT October 29, 2013

Japan's Illiberal Secrecy Law

By THE EDITORIAL BOARD

日本政府の提出する秘密保護法案は,国民の知る権利を否定するものだ.政府は,防衛や外交,諜報,対テロ活動に関する情報を,国家機密と定義できる.しかし,何が国家機密となるのか,何の指針もない.政府は,都合の悪い情報を隠すことができる.

これまで,「防衛機密」を定義できるのは防衛省だけであった.しかし防衛省は,2006-2011年に55000の文書を秘密に指定し,その期間の終わるときに34000の文書を破棄した.公開されたのはわずか1件である.

新しい法律では秘密期間を無制限に延長できる.またジャーナリストを5年以下の懲役にできることで,今でも不明瞭な政府の姿勢は一層わかりにくくなる.ジャーナリストと政府職員との対話を著しく妨げるものだ.


l  EUの改革

Project Syndicate 30 October 2013

Harmonizing Europe’s Elections

Ana-Maria Llopis Rivas

多くの改善策が示されてきた.例えば,イタリア元首相のモンティMario Montiは,雇用促進と競争力改善のため,ユーロ圏4大国(ドイツ,フランス,イタリア,スペイン)による1300億ユーロの景気刺激策を提案した.

しかしどのような意欲的提案も,それをEUは迅速かつ効果的に実行できないのだ.あまりにも加盟国のどこかで選挙があれば,多くの時間,資金,努力が各国の選挙に費やされて,EUの計画は待たされる.権力を得た新しい政党や指導者がその計画を支持するかどうか,見極めるために時間がかかる.

各国毎に選挙が無限に繰り返されるとき,この無駄をどうするべきか? 大胆かつ実際的な解決策がある.ヨーロッパ各国の政治的時計を同時化することだ.すべての国民選挙は同じ年に,できれば,同じ月に行う.選挙後,各国は4年もしくは5年間の政治的案敵を得るだろう(議会の代表任期を等しくするのが望ましい).

FT October 31, 2013

Hollande holds the key to Merkel’s euro plan

By Philip Stephens

ドイツに関する話は,すぐにフランスに及ぶ.ヨーロッパを動かすのは,ドイツの逡巡とフランスの弱さである.

ベルリンは他の関係も重視した.しかし,イギリスはEUに背を向け,ポーランドはベルリンでイギリスに代わったが,パリとの関係は欠かせない.

フランスのオランド大統領も,競争力を改善し,増税ではなく政府の縮小が重要であると理解している.しかし,それを急ぎ過ぎると街頭デモが起きる.他方,それを遅らせるほど,人々はル・ペンのような排外主義的右翼に傾く.

政治が通貨同盟を救うのだ.一時的な景気回復ではない.


l  オバマケア論争

NYT October 27, 2013

The Big Kludge

By PAUL KRUGMAN

オバマケアは機能する.多くの州でそれ自身のオバマケアがうまく機能しているのだから.問題は,なぜ最初にこれほど紛糾したのか,である.

65歳以上が利用しているメディケアを国民全体に拡大する方がよかった.それに保険業界とすでに企業で保険契約をしている労働者,そして「政府は悪」というイデオロギーに染まった政治家たちが反対したのだ.オバマケアとして成立した,煩雑で,醜い,非効率な保険契約の補助システムを,Steven Teles “kludgeocracy”と呼んだ.

政府は常に悪だ,というイデオロギーに従う社会で,政府は粗悪になる.

Project Syndicate 29 October 2013

Obamacare’s Fatal Flaw

Martin Feldstein

オバマケアは失敗するリスクが高い.

企業も個人も,オバマケアに参加するより,健康な限り,加入しないことを選択するだろう.オバマケアの契約は慢性的な病気や手術が必要な人に集中して,コストがかかる.それゆえ強制加入にしたが,その罰金は安い.小さな規模の企業やパートタイムの労働者はこれを免れている.企業は中小企業に仕事を移し,オバマケアを利用しない労働者を雇えばよい.保険会社も,オバマケアを回避するための保険商品を開発する.


l  アフガニスタンからの撤退

FP October 28, 2013

Leaving Afghanistan: Not With a Bang, But a Whimper

Posted By Stephen M. Walt

大国が最もやりたくないことは,戦略的な大失敗を犯して,逆戻りすることだ.特に,そこで戦争が行われた場合.Fred Ikleはその本で多くの理由を挙げている.政治家は失敗を認めたくないし,巨額の「埋没費用」という議論を振り回す.軍隊も負けを認めない.

アフガニスタンがそうだ.2009年,アフガニスタンでまともな,正当性のある政府を樹立できる見込みはなかった.しかし,アメリカの利益の点から戦略的に好ましい結果が求められた.オバマ大統領が「増派」を決めたのは,アメリカの安全保障のためではなく,その損失や撤退を認めることで起きる国内の反発を恐れたからだ.

さらに5年たって,NATOとアメリカは撤退を準備している.カルザイ政府が米軍の駐留を認める条件は厳しい.NYTが伝えるように,それでも米軍は財政資金の流れを監視するべきなのか? 第1に,アメリカはほとんどが使途不明になる資金を援助するだけである.第2に,これこそ失敗を隠すためだけの,体面をつくろう計画である.

10年も戦争をして,汚職にまみれた政府を何とか樹立し,タリバンと闘うどころか,それを維持するために米兵が何千人も残り,毎年多額の資金を与え続けるのだ.ほぼ無限に.


l  金融ビジネスの将来

FT October 29, 2013

Bank of England’s Mark Carney places a bet on big finance

By Martin Wolf

イングランド銀行総裁,Mark Carneyは,シティの拡大が将来も維持できるとする演説を行った.すでにイギリスGDP4倍に達するシティであるが,新興諸国などで金融深化と国際化が進み,2050年には9倍を超えて,シティの重要性がさらに高まるだろう.

しかし,金融部門が拡大することがその国の成長を意味するか,は疑問である.2007年のアイスランドのように,経済規模を超越した金融肥大化は国民に多大なショックをもたらした.また,香港のように,経済成長とは一致しないケースもある.銀行救済のコストは,金融危機になって初めて現れる.

それゆえ,Carneyはイングランド銀行の流動性供給強化と,銀行を過大な債務やリスクの高い金融ビジネスから切り離す,債務の株式化という新しいルールも主張した.それらが成功するかどうか,まだわからない.

theguardian.com, Wednesday 30 October 2013

Germany wants the Robin Hood tax – and Europe's voters do too

Stephany Griffith-Jones

金融取引税(FTT)に反対する声は常に起きる.確かに課税は,ロンドン株式市場の半分を占める,コンピューターで頻繁に取引を繰り返す業者に不利であるが,それはリスクを増やすのではなく減らすことになる.逆に,典型的な長期投資家には何も問題ない.


l  金融緩和とバブルの問題

FT October 31, 2013

No need to worry about too much easy money

By Samuel Brittan

国家が貨幣を発行できるとき,その供給はどれほどで過剰になり,あるいは,過少になるのか? 金本位制を基に,その適量を判断する者もいるだろう.それは,現在の量的緩和をめぐる論争にもつながる.

「公開市場操作」の固有な教科書による説明は,「マネタリー・ベース」が銀行の準備を決めるから,中央銀行は債券市場を観て,融資を調整できる.その操作は対称的なはずである.だから,「量的緩和(QE)」という間違った言葉を使用せず,「拡大された公開市場操作」と呼べば,このような論争は起きなかっただろう.

銀行融資がバブルを生む,という批判は,不況回避と難しいバランスになる.しかし少なくとも,家計と政府の財政とを混同する政治的な非難は免れただろう.


l  トマト摘み労働者

Project Syndicate 30 October 2013

Justice from Tomatoes

Naomi Wolf

世界中どこでも,トマトを摘む労働者の生活は非常に貧しい.フロリダでは32ポンド(14.5キロ)摘んで0.50ドル.夜明け前からの重労働でも,1年に1500ドルを得るのは幸運なことだ.それでもまだ貧困ライン以下である.人権の侵害も多い.

Just Harvest USAで働くJake Ratnerは,ボイコットなどの古い戦術ではなく,世界の食糧に関するトップ多国籍企業(McDonald’s, Taco Bell, and Burger King, and supermarket chains like Whole Foods and Trader Joe’s)の「ブランドを叩く」新しいアプローチを選んだ.それは企業の公的なイメージを損ない,トップ経営陣の注意を惹きつけた.

より重要なことは,労働者,消費者,連帯する活動家の連携が生まれ,インド,バングラデシュ,中国,など,グローバル化した産業でも労働者が積極的な変化を生み出せるモデルとなったことだろう.


l  難民キャンプ

FP OCTOBER 30, 2013

The Last Refugee Camp

BY NICHOLAS SEELEY

ヨルダンのZaatari難民キャンプでは,ほぼ毎晩,シリアへ戻るバスを待つ人々が集まる.難民キャンプの生活は耐え難いからだ.「ラクダでも,ここで夜は過ごせない.」

キャンプには栄養不足や病気の問題がある.しばしば暴力が激化する.犯罪集団が支配し,しばしば暴動が起きる.紛争状態では,人々が武装する.キャンプは一時的なものと考えられている.しかし,実際はしばしば長期化し,数世代に及ぶ場合もある.

支援諸国やUNHCRは,この状態を変えようとしている.議論されている2つの基本戦略は,キャンプを完全に避けるか,キャンプそのものを都市化することだ.前者は,既存都市のインフォーマルな一部として難民を受け入れ,後者は難民キャンプのインフラだけでなく,彼らに法的資格を与え,キャンプの経済活動を正常化する.

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The Economist October 19th 2013

Relations with South-East Asia: Being there

Rape in the armed forces: Breaking the silence

Riots in Russia: Dangerous game

Solving global problems: Grey matters

(コメント) 中国が東南アジアで影響力を高めていることは,習近平主席のインドネシア,マレーシア訪問,APEC出席,李克強首相のASEANサミット出席,タイ訪問で,明確に示されました.最も厳しい対立関係にあるベトナムにも,ベトナム戦争の英雄が亡くなった葬儀に李克強が出席しています.また,アメリカ軍内部のレイプ事件と,ロシアにおける民族差別,ポグロムの恐怖が,生々しい現実を伝えます.

それでもグローバルな問題を解決する指導者たちの動きを助ける仕組みは,何か,実現できないのでしょうか? ここに紹介されたthe Oxford Martin Commissionの提言を読んでみたいです.既存の国家間制度に縛られず,参加型のグローバルな機関を整備するよう求めています.

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IPEの想像力 11/4/13

アベノミクスが3周遅れのトップランナーであるなら,諜報活動に対して市民の権利を守る世界の動きに逆らい,日本政府の国家機密を強化する姿勢は倒錯した時代感覚だと思います.日本国民は,本当に,軍事予算の増大を人民解放軍から,諜報活動の強化をNSAから学んで,時代の不安と狂気に追いつきたい,と望むのでしょうか?

2030東京オリンピックが,福島原発の処理や震災復興の観点で評価されるより,アジアの軍備拡大競争と諜報コミュニティーの饗宴になるかもしれません.そんなオリンピックを阻止したい,と思う人は多いはずです.

1964東京オリンピックはどうだったのか? それを実現した人たちの話を読みました(野地秩嘉『TOKYOオリンピック物語』).面白いです.特に,食事を担当した帝国ホテルの村上信夫や,オリンピックのポスターを作った亀倉雄策が印象に残りました.

亀倉の他の作品,「ヒロシマアピールズ83」のポスターは,美しくて,悲しい.なぜ悲壮感を求めたのか,という疑問に対して,末尾の回想で,彼はB29の操縦士の空爆ノートを紹介します.B29の搭乗員たちは,日本の美しい緑と,野球を楽しむ子供たちの白いシャツを見たのです.しかし,その上に自分たちがこれから爆弾を落とす,ということに,重く沈黙するしかなかった,と.

爆弾を落とすアメリカ兵士の視点で,戦争の非情さを考えることができたからこそ,その作品は原子爆弾を落とす戦争の指導者と人類を対置させる「ヒロシマアピールズ」になったのでしょう.

視点の重要さは,2020年に向けた国立競技場の立て直し計画にも表れています.

「この計画に対し,槙氏は8月の日本建築家協会機関誌への寄稿で「完全なミスマッチ」と批判.日本の人口減少などを踏まえ「(都市の自然景観を維持するために定められた)風致地区になぜこのような巨大な施設を造らねばならないのか」「50年後の東京にふさわしいスケールを」と訴えた.」(毎日新聞 20131011日 東京朝刊)

JIA Magazine 295建築家

http://www.jia.or.jp/resources/bulletins/000/034/0000034/file/bE2fOwgf.pdf

2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の総工費が、見込みの1300億円から最大約3000億円まで膨らむ可能性があることが分かった.収容人数を増やすための大型化や独特のデザインの採用が響いたとみられ,政府は,新競技場の規模見直しなどコスト削減の検討に入った」(毎日新聞 1019() 田口雅士)

トルコやブラジルのデモ参加者は,政府の進めた開発計画やワールド・カップ.オリンピックによって,インフレや財政赤字が悪化するのを嫌いました.雇用改善,賃金上昇のために,政府は支出するべきだ,と考えたでしょう.

何年も,何世代も,難民キャンプに暮らす人々がいることに,私は怒りと不安を感じました.「ラクダでも住めない」というような惨憺たる暴力,病気,犯罪の蔓延する難民キャンプを,日本政府はどのように支援しいるのでしょうか? 軍備拡大や諜報活動より,紛争地域の安定化や朝鮮半島の再統一について語るべきだと思います.

槇氏が明治神宮の歴史的景観を強調する姿勢は,東京オリンピックの招致でアベノミクスを援護できると考える現政権とその支持者も共鳴するはずです.巨大な建築物というのは,権力の意志や社会的な意味を表すことであり,オリンピックの場合,国家意志と国際社会に向けたメッセージでもあるでしょう.

建築家と私たちを結ぶ思想,イデオロギーが問われています.もっと住民にやさしい,日本の経済や社会にふさわしい競技場を建ててほしいです.多くの建物を解体して難民キャンプに移設し,利用できるようにしてはどうですか?

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