IPEの果樹園2013

今週のReview

11/4-11/9

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情報化社会と諜報の限界 ・・・超富裕層と寡頭政治 ・・・アメリカ外交の再検討 ・・・中国外交の進展 ・・・中東のバランス・オブ・パワー ・・・日本の改革 ・・・EUの改革 ・・・オバマケア論争 ・・・アフガニスタンからの撤退 ・・・金融ビジネスの将来 ・・・金融緩和とバブルの問題 ・・・トマト摘み労働者 ・・・オリンピックの誤解

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)


l  情報化社会と諜報の限界

NYT October 24, 2013

The Handyüberwachung Disaster

By ROGER COHEN

Project Syndicate 28 October 2013

Merkel’s American Minders

Karl-Theodor zu Guttenberg

FT October 25, 2013

Obama can finally confront the over-mighty spies

By Gideon Rachman

Edward Snowdenが漏らした情報によって,アメリカ政府がNational Security Agency (NSA)に,メルケルなどEU指導者たちを盗聴させていた,という主張について深刻な摩擦が生じている.

数週間前,こんなジョークでアメリカ政府の職員たちは苦笑いしていた.

ブラジルのルセフDilma Rousseff大統領がバラク・オバマに公式訪問の中止を伝えた.どうやってか? ・・・自分宛てにe-mailを出したのだ.(オバマはNSAからそのe-mailの内容を知るから.)

しかし,その影響はさらに広まって,とても笑いごとではない,と理解した.オバマ効果は消えた,とアメリカ政府の元スタッフは言う.「われわれは2004年に戻ってしまった.ヨーロッパの人々は思うだろう.民主党でも共和党でも,黒人でも白人でも,関係ない.これ(盗聴)がアメリカ人のやり方なのだ,と.」

この事件がアメリカ政府に与えた短期的ダメージは明らかだ.しかし,長期的な利益があるかもしれない.オバマは諜報活動の広がりに歯止めをかける必要を理解したのだ.

スパイはいつの時代にもなくならない.しかし,この20年間は,2つの事情で大きな変化が起きていた.第1に,911のテロ攻撃後,アメリカが諜報活動に配分する資源が爆発的に増えたこと.第2に,携帯通信と「ビッグ・データ」の世界では,技術的な諜報の能力が飛躍的に高まったことだ.

リベラルな政治家としてのオバマは,この強力な「諜報コミュニティー」の増大を抑えたいと思っても,難しかっただろう.しかし今,大衆がそれを知り,世界的なスキャンダルとなって,アメリカがもっと早くこの問題を考えておくべきだった,とわかった.

メルケルやルセフが,友人を盗聴するのは間違いだ,というのは,ある意味で,ナイーブである.19世紀のイギリス首相,パーマストン卿が注意したように,「永久に友人や同盟国である国民は存在しない.あるのは永久にそれぞれの国益だけだ.」 アメリカは同盟国の影響を強く受けるのであるから,たとえばNATOの防衛義務を守るなら,その指導者たちの考えを知っておく必要がある.しかし,それを外交として行うことは,諜報として行うことと違う問題である.

今や大衆が,この諜報活動は自分たちに対しても行われていることを知っている.たとえNSAの盗聴で何か有益な情報を得ているとしても,このダメージに見合うものなのか?

FP October 29, 2013

Mr. President, We Can Handle the Truth

BY DAVID ROTHKOPF

Edward SnowdenNSAの諜報活動を暴露したとき,最初,ホワイトハウスは裏切り者として処罰すると説明した.

政府・国民は裏切り行為の犠牲者であると主張した.ホワイトハウスのスタッフは,50万人以上の人々に対して情報収集してきた,という倫理問題を無視した.そしてロシアやラテンアメリカ諸国がSnowdenの亡命を受け入れる動きを妨害した.このときはEUもボリビア大統領の飛行機を止めて協力した.

その後,メキシコも,ブラジルも,自分たちの指導者や市民が諜報活動の対象であることに憤慨した.ホワイトハウスは「誰でもやっていることだ」と答えただけだった.たとえば,この諜報活動で,Petrobrasがアルカイダと関係ある,などとわかったわけではない.

さらに,ホワイトハウスはダブル・スタンダードであることを示した.ブラジルやメキシコはジョークの材料にしていたが,ドイツの憤慨は無視できないのだ.フランスやスペインもそうだ.ホワイトハウスは,こうした苦情を無視するように国民に求めた.大統領はNSAの活動を知っていたのか? 知っていたのに,嘘をついているのか? なんと馬鹿げた対応だろう.

真に重要な同盟国を選別する,ということもあるが,問題の核心は,友人をスパイしたことではない.政府が膨大な民間情報を収集できることが問題である.それは,何百万人もの外国市民のプライヴァシーを侵すとともに,建国以来のアメリカの価値観に反するものだ.

この問題は,外国政府がグローバリゼーションや情報アクセスに反対し,サイバー・ナショナリズムに向かう動きを刺激するだろう.テロ攻撃以上に我々の利害を損なうものである.イラクやアフガニスタンが,アブグレイブが,愛国者法が,アメリカの評価を傷つけたように.

ホワイトハウスはもはや,知らなかった,とか,諜報活動との妥協,を主張するべきではない.「われわれが間違っていた.諜報活動に行き過ぎがあった.」と認めるべきだ.そして,諜報活動の全体を見直すというDianne Feinstein上院議員の要求に応えるべきである.

FT October 30, 2013

Germany must stop moralising and embrace espionage

By Jan Techau

同盟諸国間では信頼が必要だ.誰でも諜報活動はやっている.しかし,それだけでは重要な点を忘れている.

ドイツは,自分たちがパワーを得て,外交的な主張を強めていることに見合う代償を支払うのだ.もはや国際政治の傍観者ではない.

アメリカの元ドイツ大使が述べたように,ドイツは「世界で3番目に重要な大国」である.ドイツはアメリカのイラク進攻に反対した.ドイツはユーロ危機で厳しい融資条件を赤字諸国に強いた.ドイツは自動車でも,化学でも,機械でも,最近では太陽光発電でも,自国の利益を主張した.ヨーロッパは,メルケルが発表した脱原発の方針によって,多くの諸国のエネルギー政策を根本的に変えた.

つまり,ますます多くの国がドイツ政府の決定を待って,それを前提に自国の財政から外交に至る重要政策を決定するのである.それは,敵であれ同盟国であれ,多くの国がドイツ政府の考え,その意図を知る必要がある,ということだ.しかし,冷戦の40年間,ドイツはその主権を制限され,政策決定を外部に委ねてきた.そういう未成熟な(低開発な)精神状態を引きずっている.

再統一後も,その規模と地位を楽しむより,ドイツは東の負担を引き受けた.ようやく最近になって,変化した状況を受け入れ,アメリカがヨーロッパの安全保障を担いたがらないことを理解するようになった.ところが,まだ,独自の意思決定ができる国家の地位と,国際政治の道徳的な不純さとを切り離して考えている.

幸い,メルケル女史の対応は,戦術として十分に計算されたものである.アメリカを攻撃しつつ,憤慨する自国民をなだめられる程度に抑えている.そして,戦術を超えて,大国の政治力を行使するだろう.それにはドイツも諜報技術に投資しなければならない.将来,他国の諜報活動に煩わされたくないからだ.

アメリカの邪悪さを非難することは,国際政治におけるドイツの発言力に見合わない.

FT October 30, 2013

Barack Obama: I hear what you say, Angela

By Robert Shrimsley

The Guardian, Thursday 31 October 2013

Whether it's hacking or the NSA, some of us don't accept that privacy is dead

Timothy Garton Ash

革命的な技術進歩で情報化する社会において,プライヴァシーは消滅した.自由と安全保障とのジレンマもプライヴァシーに関係する.誰が,どれくらい多く,何を,収集しているのか? 新聞も,個人もそうである.


l  終末論

NYT October 24, 2013

Addicted to the Apocalypse

By PAUL KRUGMAN

かつては変人でしかなかった終末の予言者が,今ではインターネットで世界の終末を予言し,敬意を集めている.

アメリカの債券やドルの破滅を予言するStanley Druckenmillerもそうだ.この億万長者の投資家は,2008年より深刻な金融危機を待っている.Fix the Debtは財政赤字を攻撃し,Alan Simpson and Erskine Bowlesが債務の爆発を待っている.

こうした破滅の予言者たちがいるのは,何度も予言が間違っているのに,それでも主張を変えないことだ.ニュース業界が彼らを重視するからだろう.また,彼らはなぜそれが起きるのかを何も説明しないからだ.

20106月のWSJに載ったグリーンスパンのコラムを読み返した.彼は予算赤字のせいでインフレと金利が上昇するだろうと警告した.その後,どちらも低いままである.3年半経ってもそうだ.日本を見ても,それはわかる.安倍晋三首相はインフレを促して投資家を動かした.すべて成功している.

なぜ我々はまだ債務の終末論を聞くのか?


l  超富裕層と寡頭政治

FP OCTOBER 24, 2013

Tycoon Warning

BY CHRISTIAN CARYL

Credit Suisseによれば,ロシアでは,たった110人がその国の富の35%を所有している.同時に,ロシア人の93.7%1万ドル以下しか持っていない.ロシアは世界で最も貧富の差が大きな国である.

アメリカはそれほどひどくない.しかし,もっと悪化することもあるだろう.問題は,ロシアが世界の趨勢を示している,と思えることだ.民主主義が直面する最大の問題は,寡頭制のグローバルな拡大傾向である.

富の格差拡大は,次第に,権力の格差も拡大する.ロシアはこの危険性をよく示している.1990年代に,エリツィン政権に政治的な強いコネのある少数の企業家たちは,主要産業の民営化で,特に石油の富を支配した.彼らは経済的な富を政治的パワーに変えることをためらわず,1996年,エリツィンの再選を資金的に支援した.そして閣僚を指名し,政策を決めた.彼らはすぐに「オリガーク」と呼ばれるようになった.

Boris Berezovskyは,マキャベリ風にKGBの元長官,プーチンVladimir Putinを首相に仕立てた.しかしプーチンは,感謝するどころか,このパトロンを追い詰め,亡命させた.ほかにも,エリツィン時代のオリガークたちを何人も破滅させた.(Mikhail Khodorkovskyはシベリアの収容所にいる.)

グローバリゼーションと経済諸力の結果,少数の新エリートたちに富と政治権力が集中している.彼らは,the superclass, the plutocrats, the "global meritocracy"などと呼ばれている.ロンドンでも,クアラルンプールでも,都市の政治を支配している.中国における蓄財もそうだ.マルクス=レーニン主義的なクローニー資本主義を,高級官僚とその子弟たちが支配している.中国共産党の政治局員,特にわずか7人の常任委員に集中する権力が,何のチェックもなく,世界最大の経済圏の一つを動かせるのであるから,富が集まるのは避けがたい.

アメリカでは第2次世界大戦後の30年間,富の分散を進めたが,1970年代の経済停滞と国際競争の激化でその傾向が逆転した.ロビー活動や献金が放置されていたので,富裕層の影響力は増した.アメリカの社会契約が破壊される,という激しい論争も起きているが,富裕層がその権力を容易に手放すはずがない.ウォール街占拠運動も,その後の影響は何もないに等しい.


l  グリーンスパン

FT October 25, 2013

An interview with Alan Greenspan

By Gillian Tett

theguardian.com, Monday 28 October 2013

Alan Greenspan owes America an apology

Dean Baker

アラン・グリーンスパンは,住宅バブルとそれに続く市場の崩壊がもたらした膨大な経済ダメージに最も責任ある人物として,歴史に残るだろう.アメリカはなお趨勢よりも900万人も雇用が少なく,潜在的な産出レベルを年間1兆ドル近く失った.累積で5兆ドルに達する.

Project Syndicate 28 October 2013

Greenspan Has Left the Building

J. Bradford DeLong

共和党員として,グリーンスパンの考えでは,単にインフレと闘うだけでなく,繁栄する企業社会を築くことが連銀の目標があり,この二重の目標を達成したのが1990年代後半のITバブルであった.そして,ブッシュの財政政策を批判したのだ.


l  アメリカ外交の再検討

FT October 25, 2013

A revolution in thinking

By Gillian Tett

アメリカの外交専門家たちが,「アラブの春」と言わずに,「アラブ革命」と呼ぶようになった.

歴史上,「成功した」革命はいくつあったか? 持続可能な,安定した政治的変化はいくつあったか? こうした問いが学術的なものではなく,アメリカの中東を観る姿勢であるとき,新しい論争を引き起こす.

Aspenに集まったビジネス・リーダーたちの会合で,ワシントンの高官は述べた.「歴史上の革命を観るなら,アメリカ革命,ロシア革命,フランス革命,中国革命,キューバ革命,わずか一つだけが成功した.アメリカだ.」

しかし,アメリカ以外のこれに反対する声が出た.アメリカ革命も安定した,平和的な民主体制を作れず,内戦(南北戦争)になった.アメリカ以外に成功した革命もあった.ベルリンの壁崩壊後の東欧は激しい流血を避けられたし,バルチック諸国はロシアから自由を得たが,基本的な平和な革命であった.イギリスで釈放されたネルソン・マンデラが南アフリカで成功した「革命」は,アメリカの何にも劣らず驚異的なものである.

Aspenでの論争は2つに分かれた.一方では,アメリカがもっと強力に中東へ介入するべきだ,と主張した.人道的に,独裁者を倒す人々の希望に,極端なイスラム政治を拡大しないために.他方には,中東の狂気に巻き込まれることを拒むべきだ,と主張する者がいた.アメリカ国民はグローバリゼーションに圧倒され,戦争に疲れた.と.

彼らが同意したのは,アメリカの財政をめぐる議会の論争が,経済,軍事,そして信用を低下させた,という点だ.「アメリカの安全保障に対する最大の脅威は,中東にではなく,ワシントンの2マイル四方にあるのだ.」

Project Syndicate 28 October 2013

Post-Shutdown America

Anne-Marie Slaughter

アメリカの政府閉鎖が残した教訓は3つある.1.もはやアメリカはユーロ危機を非難できない.2.アメリカの例外主義や優位はどこにもない.3.女性政治家が妥協案を示した.

Project Syndicate 28 October 2013

Which Asian Century?

Richard N. Haass

21世紀はアジアの世紀だ,というのは簡単だ.人口も,生産も,影響力のある国家も多い.しかし,どのような世紀か? 2つのまったく異なる未来がある.成長を続け,紛争を回避する.あるいは,緊張が高まり,軍備拡張と,成長の減速に向かう.

ヨーロッパに似て,もし独仏の長期の対立やソ連との緊張を緩和できれば,平和と繁栄が持続する.しかし,アジアにはヨーロッパのような制度化が進んでいない.各国の間で,さまざまな問題が未解決であり,怨嗟が残っている.それはナショナリズムを強めている.2国間の積極的な交渉が必要だ.

ヨーロッパのモデルには,アメリカも重要な,持続的役割を果たした.アメリカは大西洋の国家であり,また,太平洋の国家でもある.

FP October 29, 2013

Rebalancing the World Stage

BY GORDON ADAMS | OCTOBER 29, 2013

アメリカはもはや世界舞台のショーを指導するディレクターではない.


l  中国外交の進展

Project Syndicate 25 October 2013

Protecting Civilians Responsibly

Gareth Evans

NYT October 25, 2013

Clearing the Air in China

By CHRIS P. NIELSEN and MUN S. HO

FT October 27, 2013

Beijing’s caution on reforms makes sense – for now

By Eswar Prasad

Project Syndicate 30 October 2013

Are China’s Banks Next?

Simon Johnson

中国は銀行改革と国際化を支持し,ロンドンにはこうした銀行の進出が増えるだろう.ロンドンはそれを歓迎している.そしてイギリスの規制に従う支店ではなく,中国の規制に従う支局の開設を許している.

しかし,中国の改革はまるでシンデレラだ.彼女はようやく舞台に出ることを許され,注目を集めたが,すぐに深夜になって日が変わってしまう.その結末は全く違うものだろう.

NYT October 31, 2013

Easing Tensions on the India-China Border

By THE EDITORIAL BOARD

インドと中国の間で,ほぼ無人のヒマラヤ高地における領土紛争が続いている.国境についての合意は全く得られず,1962年には戦争になった.中国は領土と主張する地域を占領している.この4月に,中国の舞台がインドの占拠している地域に進出して駐留した.この事件は平和的に解決され,中国は部隊を撤退した.

先週,両国の首相は国境防衛協力協定に合意した.小さな衝突がエスカレートするのを防ぐこと,国境貿易を認めて緊張を緩和すること,が含まれている.しかし,主要な紛争点は未解決だ.合意には,ホットラインの開設や,国境パトロールの廃止なども含まれている.

両国は国境地帯に空港や鉄道,道路を競って整備し,軍の移動を迅速に行えるインフラを建設してきた.しかし,これらは国境貿易にも利用できる.インドの国境地帯の貧困を減らし,中国は一層の市場拡大を期待できる.インドの赤字が増大しているが,成長の回復にも輸出が望ましい.

両国の軍備は拡大しており,中国の領土要求は「一つの中国」を実現する政治目標の一部としてあきらめる気はないようだ.完全な国境線の合意なしには,軍事衝突の可能性を真剣に受け止めるしかない.


l  中東のバランス・オブ・パワー

FP October 25, 2013

Playing Hard to Get in the Middle East

Posted By Stephen M. Walt

中東におけるアメリカの2つの同盟国は不満を感じている.サウジアラビアとイスラエルだ.アメリカがシリアに直行せず,イランとの対話を重視する姿勢に不満なのだ.しかし,アメリカの利益を守る,より柔軟な戦略を得るには,イランとの対話を進めるべきだ.

中東におけるアメリカの利益とは,1.湾岸から世界市場に向けて原油の円滑な供給を維持する.2.大量破壊兵器WMD,特に核兵器を得ようとする国を抑える,3.極端な暴力,特にテロの拡大を防ぐ.

そのためにアメリカは2つの方法を取る.1.地域のバランス・オブ・パワーを維持する.2.中東におけるアメリカ軍の駐留を最小化する.特に「アラブの春」以後,アメリカ軍の存在が彼らを刺激しないように.そのために,アメリカは急速展開部隊を創設した.

バランス・オブ・パワーは,イスラエルやサウジアラビアとの「特別な関係」を,アメリカのコストにする.アメリカは,外交的な弾力性を高め,特定の同盟国に過度に加担してはいけない.ところが今,アメリカは,パレスチナ人にイスラエルが取る不当に冷酷な扱いや,アメリカ政府の政策を無視して行う入植地の拡大によって,外交の弾力性を損なわれている.また,サウジアラビアの退廃した王政は,アメリカ自身の政治的価値に矛盾している.

イランと対話することは,中東地域に介入する非常に好ましいアプローチを可能にする.アメリカはテルアビブやリヤドから距離を取って,テヘランとも対話できることで,将来,外交のテコを強化できるのだ.アメリカは地理的に離れており,中東の国家ではないことを認識するべきだ.

アメリカの主要な目標は,中東のバランス・オブ・パワーを維持することである.いずれの国もアメリカにとっての脅威ではない.アメリカが圧倒的な軍事的優位を持っている.こうした条件では,アメリカの保護や支持を求める各国の姿勢を強めることが,さらにアメリカを有利にする.

Project Syndicate 29 October 2013

The Long Road to Agreement with Iran

Javier Solana

FT October 30, 2013

End western deference to Saudi petrodollars

By David Gardner


l  日本の改革

BLOOMBERG Oct 25, 2013

The Lust Beneath Japan's Sex Drought

By William Pesek

Oct. 19 Guardianの見出しは,"Why Have Young People in Japan Stopped Having Sex?"であった.若者たちはインターネットの世界に耽る.ほかにも,外国メディアは日本人の「不思議さ」を伝える.

しかし,それは日本人の文化ではなく,経済の問題である.チェコも,ポーランドも,シンガポールも,韓国も,スペインも,台湾も,出生率が低い.日本の生活コストは高く,ストレスは増し,将来への不安が強い.デフレが続き,法改正で企業は派遣労働者に依存するようになった.

日本の高齢化と人口減少が,膨大な国債残高とどのように均衡するのか,中国も,ドイツも,アメリカも,研究するべきだ.それは文化やリビドーの違いではない.

BLOOMBERG Oct 28, 2013

China Can’t Talk Its Way Out of Slowing Growth

By William Pesek

安倍は確かに成功した.困難な状況に,改革の3つの公式を示した.そして,最も簡単な,すぐに効果のある手段を使って,改革の成功をアピールした.日経株価指数225は今年になって38%も上昇した.安倍がまだ何も構造改革を実現していないことを忘れているのだ.

中国は安倍をまねてはいけない.“Likonomics”の宣伝は成功しない.ゲームのルールを変えるような改革は,何年もかけて行うものだ.中国の抱える不均衡の大きさを考えれば特にそうである.中身のないスローガンが続くほど,改革は遅れ,将来の不均衡が大きくなる.世界は中国を救えない.

NYT October 29, 2013

Japan's Illiberal Secrecy Law

By THE EDITORIAL BOARD

日本政府の提出する秘密保護法案は,国民の知る権利を否定するものだ.政府は,防衛や外交,諜報,対テロ活動に関する情報を,国家機密と定義できる.しかし,何が国家機密となるのか,何の指針もない.政府は,都合の悪い情報を隠すことができる.

これまで,「防衛機密」を定義できるのは防衛省だけであった.しかし防衛省は,2006-2011年に55000の文書を秘密に指定し,その期間の終わるときに34000の文書を破棄した.公開されたのはわずか1件である.

新しい法律では秘密期間を無制限に延長できる.またジャーナリストを5年以下の懲役にできることで,今でも不明瞭な政府の姿勢は一層わかりにくくなる.ジャーナリストと政府職員との対話を著しく妨げるものだ.

FT October 30, 2013

Importance of TPP to more trade leaves no room to monkey about

By Yasuhiko Ota

日本の反TPP運動は「サルでもわかるTPP」から情報を得ている.有機農法を進めるNPOだ.日本以外で,TPPに関して,これほど終末論を聞くことはない.それは反米感情や,日本の製造業がTPP支持を強く主張しないからであろう.アメリカの関税率はすでに低い.また,日本ではまだ,貿易を財の輸出入だと思っている.

FT October 30, 2013

Abenomics: Complacency is biggest threat to resurgence

By Yoichi Takita, Nikkei senior staff writer

FT October 30, 2013

Toppling Tepco


l  コンゴ民主共和国

NYT October 26, 2013

A Reason for Hope in Congo’s Perpetual War

By NICHOLAS KULISH


後半へ続く)