(前半から続く)
l EUの改革
FT October 27, 2013
Optimism
about an end to the euro crisis is wrong
By Wolfgang Münchau
FT October 29, 2013
The EU would be better led by Angela Merkel and Christine Lagarde
By Tony Barber
EUの政策がこの2人(Angela Merkel and Christine Lagarde)に託されたのは,ヨーロッパ政治の最高傑作だ.彼女らは世界で最も尊敬されるヨーロッパの政策担当者であり,公共政策における女性の地位が高いことを示し,指導力を欠いたヨーロッパにならない独仏協力が今も存在していることを教えている.
地政学,国籍,政治的,ジェンダー間バランス,という問題が,5年ごとに,ヨーロッパ政治を動かす重要な要因である.
Project Syndicate 30 October 2013
Harmonizing
Europe’s Elections
Ana-Maria Llopis Rivas
多くのEU政策は,金融,規制の調和,ジェンダー間の平等,など,重要な意味がある.しかし,ヨーロッパの経済危機を乗り越えるためには,各国の政治的支持と既存の規制枠組みによる協力が欠かせない.それはEU規模のガバナンス改善と倫理を必要とする.
多くの改善策が示されてきた.例えば,イタリア元首相のモンティMario Montiは,雇用促進と競争力改善のため,ユーロ圏4大国(ドイツ,フランス,イタリア,スペイン)による1300億ユーロの景気刺激策を提案した.
しかしどのような意欲的提案も,それをEUは迅速かつ効果的に実行できないのだ.あまりにも加盟国のどこかで選挙があれば,多くの時間,資金,努力が各国の選挙に費やされて,EUの計画は待たされる.権力を得た新しい政党や指導者がその計画を支持するかどうか,見極めるために時間がかかる.
各国毎に選挙が無限に繰り返されるとき,この無駄をどうするべきか? 大胆かつ実際的な解決策がある.ヨーロッパ各国の政治的時計を同時化することだ.すべての国民選挙は同じ年に,できれば,同じ月に行う.選挙後,各国は4年もしくは5年間の政治的案敵を得るだろう(議会の代表任期を等しくするのが望ましい).
こうすれば,選挙の無駄は抑制され,政治的関心が効果的に集中する.その結果,ヨーロッパの未来を強化する,若者の雇用や教育に関して,重要な活性化策が支持を得るだろう.ヨーロッパの分裂した政治循環を克服できるのだ.
FT October 31, 2013
Hollande
holds the key to Merkel’s euro plan
By Philip Stephens
ドイツに関する話は,すぐにフランスに及ぶ.ヨーロッパを動かすのは,ドイツの逡巡とフランスの弱さである.
ベルリンは他の関係も重視した.しかし,イギリスはEUに背を向け,ポーランドはベルリンでイギリスに代わったが,パリとの関係は欠かせない.
メルケルは社会民主党との連立交渉で,ユーロ圏の4つの経路を考察した.1.「マドル・スルー」,2.社民党の支持する包括的改革,3.銀行同盟などを各国の国民投票から守る,協定の改正,4.イギリスの反対を避ける,ユーロ圏の協定外合意,である.
メルケルは慎重な姿勢で第3の経路を支持した.いずれの経路でも,フランスとの協力が欠かせない.両国は常に異なる見解を持ってきたが,ドイツはフランスの弱さを利用しない.むしろ,メルケルはそれを協力関係の障害と理解している.
フランスのオランド大統領も,競争力を改善し,増税ではなく政府の縮小が重要であると理解している.しかし,それを急ぎ過ぎると街頭デモが起きる.他方,それを遅らせるほど,人々はル・ペンのような排外主義的右翼に傾く.
政治が通貨同盟を救うのだ.一時的な景気回復ではない.
Project Syndicate 31 October 2013
Europe’s
Elusive Growth Consensus
Jean Pisani-Ferry
FT October 27, 2013
Britain
needs strong, independent cities to boost growth
By Jim O’Neill
l エクソダス
FT October 27, 2013
Exodus
by Paul Collier
Review by Ravi Mattu
Paul Collierの新著(Exodus: Immigration and Multiculturalism in the 21st Century)は,ドイツからの貧しい移民の孫として,この問題に取り組んだ.移民に関する論調に変化が生じ,正しい問題を建てるべきだ,と考えたからだ.彼は,移民の規模,受け入れ社会への吸収が移民の規模に関係すること,を議論する.そして受入国政府と移民流出国政府が,どのようにすればそれぞれの得失を均衡できるか,考察する.
The Guardian, Monday 28 October 2013
Mainstream
economics is in denial: the world has changed
Aditya Chakrabortty
l オバマケア論争
NYT October 27, 2013
The
Big Kludge
By PAUL KRUGMAN
オバマケアは機能する.多くの州でそれ自身のオバマケアがうまく機能しているのだから.問題は,なぜ最初にこれほど紛糾したのか,である.
65歳以上が利用しているメディケアを国民全体に拡大する方がよかった.それに保険業界とすでに企業で保険契約をしている労働者,そして「政府は悪」というイデオロギーに染まった政治家たちが反対したのだ.オバマケアとして成立した,煩雑で,醜い,非効率な保険契約の補助システムを,Steven Teles は“kludgeocracy”と呼んだ.
政府は常に悪だ,というイデオロギーに従う社会で,政府は粗悪になる.
Project Syndicate 29 October 2013
Obamacare’s
Fatal Flaw
Martin Feldstein
オバマケアは失敗するリスクが高い.
企業も個人も,オバマケアに参加するより,健康な限り,加入しないことを選択するだろう.オバマケアの契約は慢性的な病気や手術が必要な人に集中して,コストがかかる.それゆえ強制加入にしたが,その罰金は安い.小さな規模の企業やパートタイムの労働者はこれを免れている.企業は中小企業に仕事を移し,オバマケアを利用しない労働者を雇えばよい.保険会社も,オバマケアを回避するための保険商品を開発する.
theguardian.com, Wednesday 30 October 2013
Ignore
Republican nihilism. Obamacare is already working
Michael Cohen
l アフガニスタンからの撤退
NYT October 27, 2013
NATO
Reduces Scope of Its Afghanistan Plans
By THOM SHANKER
アメリカ議会とヨーロッパ議会で,アフガニスタンの戦後統治に関する使命が縮小される懸念から,アメリカ・NATOの統合軍は財政資金の流れを監視する役割に集中することとなった.アフガニスタンでは,政府のトップにまで,汚職が蔓延している,軍や警察を厳しく監視しなければ,支援諸国の同意は得られないし,財源がこの国の発展を実現するために正しく使用されないであろう.その規模は年間40億ドル以上であり,世界最大の支援計画である.
FP OCTOBER 28, 2013
Bacha
Bazi: An Afghan Tragedy
By Chris Mondloch
10年に及ぶ戦闘で,アフガニスタンの地方では,暴力,女性の抑圧,極度の貧困,など,ホッブズ的な状態が広がっている.
特に,Bacha Baziは,アフガニスタンの伝統的な権力者が,思春期の子弟を徴用する性的な奴隷制である.タリバンはこれを禁止し,タブーとした.しかし,その後,ムジャヒディンの元戦士たちがタリバンを追い出した土地では復活した.
FP October 28, 2013
Leaving
Afghanistan: Not With a Bang, But a Whimper
Posted By Stephen M. Walt
大国が最もやりたくないことは,戦略的な大失敗を犯して,逆戻りすることだ.特に,そこで戦争が行われた場合.Fred Ikleはその本で多くの理由を挙げている.政治家は失敗を認めたくないし,巨額の「埋没費用」という議論を振り回す.軍隊も負けを認めない.
アフガニスタンがそうだ.2009年,アフガニスタンでまともな,正当性のある政府を樹立できる見込みはなかった.しかし,アメリカの利益の点から戦略的に好ましい結果が求められた.オバマ大統領が「増派」を決めたのは,アメリカの安全保障のためではなく,その損失や撤退を認めることで起きる国内の反発を恐れたからだ.
さらに5年たって,NATOとアメリカは撤退を準備している.カルザイ政府が米軍の駐留を認める条件は厳しい.NYTが伝えるように,それでも米軍は財政資金の流れを監視するべきなのか? 第1に,アメリカはほとんどが使途不明になる資金を援助するだけである.第2に,これこそ失敗を隠すためだけの,体面をつくろう計画である.
10年も戦争をして,汚職にまみれた政府を何とか樹立し,タリバンと闘うどころか,それを維持するために米兵が何千人も残り,毎年多額の資金を与え続けるのだ.ほぼ無限に.
FP October 29, 2013
The
Taliban’s New Tactic to Derail Afghanistan's Elections
By Najib Sharifi
l 新興市場
FP OCTOBER 28, 2013
Peso
Me Mucho
BY MICHAEL MORAN
1994年のテキーラ危機でメキシコは財政政策を健全化に向けた.アメリカの量的緩和策が終わるという予想で市場が混乱しても,メキシコ・ペソは依然と違って危機に向かわない.中国への輸出に大きく依存しているブラジルよりも堅調だ.ペソは危機を波及する導管ではなく,その防波堤になった.
FT October 29, 2013
How
a digital currency could transform Africa
By Jonathan Ledgard and John Clippinger
FT October 31, 2013
Money
mirage exposes emerging markets
By Gillian Tett
NYT October 31, 2013
Mexico's
Theology of Oil
By ENRIQUE KRAUZE
NYT October 28, 2013
Confronting
the Legacies of Slavery
By LAURENT DUBOIS
l 金融ビジネスの将来
FT October 29, 2013
Bank
of England’s Mark Carney places a bet on big finance
By Martin Wolf
イングランド銀行総裁,Mark Carneyは,シティの拡大が将来も維持できるとする演説を行った.すでにイギリスGDPの4倍に達するシティであるが,新興諸国などで金融深化と国際化が進み,2050年には9倍を超えて,シティの重要性がさらに高まるだろう.
しかし,金融部門が拡大することがその国の成長を意味するか,は疑問である.2007年のアイスランドのように,経済規模を超越した金融肥大化は国民に多大なショックをもたらした.また,香港のように,経済成長とは一致しないケースもある.銀行救済のコストは,金融危機になって初めて現れる.
それゆえ,Carneyはイングランド銀行の流動性供給強化と,銀行を過大な債務やリスクの高い金融ビジネスから切り離す,債務の株式化という新しいルールも主張した.それらが成功するかどうか,まだわからない.
theguardian.com, Wednesday 30 October 2013
Germany
wants the Robin Hood tax – and Europe's voters do too
Stephany Griffith-Jones
金融取引税(FTT)に反対する声は常に起きる.確かに課税は,ロンドン株式市場の半分を占める,コンピューターで頻繁に取引を繰り返す業者に不利であるが,それはリスクを増やすのではなく減らすことになる.逆に,典型的な長期投資家には何も問題ない.
その結果,FTTは,もっぱら非生産的な短期取引を減らし,金融危機のリスクを減らして,成長を高めるだろう.銀行の逃避が起きる,という主張も間違いだ.EUのFTTは,金融機関の所在地に関わらず,加盟諸国の債券・株式の取引すべてに課税されるからだ.
FT October 31, 2013
Madness
of JPMorgan’s $13bn settlement
By Jacob Frenkel
FP October 29, 2013
The
Dim Sum Dollar Carry Trade
BY DANIEL ALTMAN | OCTOBER 29, 2013
l 教育について
BLOOMBERG Oct 29, 2013
Tom
Friedman Is Too Optimistic About China’s Schools
By Adam Minter
NYT October 29, 2013
Meet
the Makers
By THOMAS L. FRIEDMAN
l イラクの現在
NYT October 29, 2013
Have
Patience With Us
By NURI KAMAL al-MALIKI
FP OCTOBER 29, 2013
How
We Won in Iraq
BY DAVID H. PETRAEUS
FP OCTOBER 30, 2013
The
Anti-Surge
BY JOHN MCCAIN, LINDSEY GRAHAM | OCTOBER 30, 2013
l 金融緩和とバブルの問題
FT October 30, 2013
High
profits to keep equity bubble at bay
By Gavyn Davies
FT October 31, 2013
No
need to worry about too much easy money
By Samuel Brittan
国家が貨幣を発行できるとき,その供給はどれほどで過剰になり,あるいは,過少になるのか? 金本位制を基に,その適量を判断する者もいるだろう.それは,現在の量的緩和をめぐる論争にもつながる.
「公開市場操作」の固有な教科書による説明は,「マネタリー・ベース」が銀行の準備を決めるから,中央銀行は債券市場を観て,融資を調整できる.その操作は対称的なはずである.だから,「量的緩和(QE)」という間違った言葉を使用せず,「拡大された公開市場操作」と呼べば,このような論争は起きなかっただろう.
銀行融資がバブルを生む,という批判は,不況回避と難しいバランスになる.しかし少なくとも,家計と政府の財政とを混同する政治的な非難は免れただろう.
Project Syndicate 31 October 2013
Bubbles
in the Broth
Nouriel Roubini
先進諸国の経済が容易に回復せず,高い失業率が続く中で,中央銀行は次第に非伝統的な金融政策を使用するようになった.アメリカ連銀議長に指名されたイエレンなどは,金融緩和によるバブルを心配する必要はない,と主張する.しかし,批判する者は,マクロ・プルーデンシャル規制・監視が機能しない,という.資金は寄生されていない影の経路に向かうだけであろう.
もしマクロ・プルーデンシャル規制・監視が効かなければ,金利は2つの対立する目標,すなわち,景気回復と金融安定性とを追求することになる.
NYT October 30, 2013
Italy:
The Nation That Crushes Its Young
By BEPPE SEVERGNINI
l トマト摘み労働者
Project Syndicate 30 October 2013
Justice
from Tomatoes
Naomi Wolf
世界中どこでも,トマトを摘む労働者の生活は非常に貧しい.フロリダでは32ポンド(14.5キロ)摘んで0.50ドル.夜明け前からの重労働でも,1年に1万500ドルを得るのは幸運なことだ.それでもまだ貧困ライン以下である.人権の侵害も多い.
公正な食糧を求める運動the Campaign for Fair Foodは,フロリダのトマト摘み労働者とその仲間が行い,勝利した.アウトソーシングとグローバル・サプライ・チェーンの時代に,組織労働者が直面する問題に答えた,他の産業にも模範となる成果である.
長年,フロリダのトマト産業は,プア・ホワイトやアフリカ系アメリカ人に労働力を頼ってきた.しかし最近では,ハイチ,メキシコ,グアテマラ,その他の中米諸国から移民労働者が集まっている.NAFTAで安価な農産物がメキシコなどに販売され,土地を追い出された多数の農民たちがアメリカの農場に働きに来る.
Just Harvest USAで働くJake Ratnerは,ボイコットなどの古い戦術ではなく,世界の食糧に関するトップ多国籍企業(McDonald’s, Taco Bell, and Burger King, and supermarket chains like Whole Foods and Trader Joe’s)の「ブランドを叩く」新しいアプローチを選んだ.それは企業の公的なイメージを損ない,トップ経営陣の注意を惹きつけた.
彼らのFair Food Programに同意した企業は,ポンドあたり1ペニーのプレミアムを支払い,労働者とその家族の生活を改善する.労働者はポンドあたり0.82ドルを受け取り,64%の賃金引き上げに成功するのだ.
より重要なことは,労働者,消費者,連帯する活動家の連携が生まれ,インド,バングラデシュ,中国,など,グローバル化した産業でも労働者が積極的な変化を生み出せるモデルとなったことだろう.
The Guardian, Thursday 31 October 2013
Welfare
dependency isn't Britain's gravest economic problem. Pitiful pay is
Polly Toynbee
l 難民キャンプ
FP OCTOBER 30, 2013
The
Last Refugee Camp
BY NICHOLAS SEELEY
ヨルダンのZaatari難民キャンプでは,ほぼ毎晩,シリアへ戻るバスを待つ人々が集まる.難民キャンプの生活は耐え難いからだ.「ラクダでも,ここで夜は過ごせない.」
キャンプには栄養不足や病気の問題がある.しばしば暴力が激化する.犯罪集団が支配し,しばしば暴動が起きる.紛争状態では,人々が武装する.キャンプは一時的なものと考えられている.しかし,実際はしばしば長期化し,数世代に及ぶ場合もある.
支援諸国やUNHCRは,この状態を変えようとしている.議論されている2つの基本戦略は,キャンプを完全に避けるか,キャンプそのものを都市化することだ.前者は,既存都市のインフォーマルな一部として難民を受け入れ,後者は難民キャンプのインフラだけでなく,彼らに法的資格を与え,キャンプの経済活動を正常化する.
FP OCTOBER 30, 2013
Pain
Relief
INTERVIEW BY SEYWARD DARBY
l オリンピックの誤解
theguardian.com, Thursday 31 October 2013
Bidder
beware: to host the Olympics comes at considerable cost
Jules Boykoff
アメリカが2024オリンピックの誘致を考えるなら,そのさまざまな神話を排除するべきだ.オリンピック開催が経済ブームを呼ぶという証拠はない.通常,そのコストは資産を大幅に超えてしまう.2012ロンドン・オリンピックでは3倍以上になり,2014ソチ冬季オリンピックは103億ドルの試算が510億ドルに膨張している.特に9・11以後,その保安コストは急増した.
観光業は繁栄するのか? それも期待できないだろう.開催都市の物価が急騰し,混雑の噂を嫌って人々は来ないからだ.
l ウクライナとポーランド
Project Syndicate 31 October 2013
Ukraine’s
Prisoner’s Dilemma
Anders Åslund
Vilniusで開催されたEUサミットが,Yanukovych 大統領はTymoshenko元首相に謝罪することをウクライナとの連合協定の条件に加える,という重要な決定を行った.
連合協定は,ほとんどすべてのEU貿易品目で関税を廃止し,ウクライナの長期GDPが推定12%増大する.またEU加盟諸国が支持する政治・経済・法の条件を整備する.それはEU加盟に向けた「コペンハーゲン基準」を満たすためにも必要だ.安定した民主主義,法の支配,人権,マイノリティーの尊重と保護,などを求めている.
ロシア政府は,ウクライナに,ベラルーシやカザフスタンとともに,ロシアの支配する関税同盟に参加するよう求めてきた.しかし,有権者やウクライナのオリガークたちもそれを嫌っており,次の大統領選挙のためにも,Yanukovychには連合協定の成立が必要だ.
EUは,謝罪とともにTymoshenkoの治療をドイツで受けるという妥協案を示したが,Yanukovychは,帰国すれば残りの刑期に服することを条件としている.しかし,EUは有罪判決そのものがEUの精神に違反していると考える.
Project Syndicate 31 October 2013
Mazowiecki’s
Miracle
Radosław Sikorski
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The Economist October 19th 2013
Relations with South-East Asia: Being
there
Rape in the armed forces: Breaking the
silence
Riots in Russia: Dangerous game
Solving global problems: Grey matters
(コメント) 中国が東南アジアで影響力を高めていることは,習近平主席のインドネシア,マレーシア訪問,APEC出席,李克強首相のASEANサミット出席,タイ訪問で,明確に示されました.最も厳しい対立関係にあるベトナムにも,ベトナム戦争の英雄が亡くなった葬儀に李克強が出席しています.また,アメリカ軍内部のレイプ事件と,ロシアにおける民族差別,ポグロムの恐怖が,生々しい現実を伝えます.
それでもグローバルな問題を解決する指導者たちの動きを助ける仕組みは,何か,実現できないのでしょうか? ここに紹介されたthe Oxford Martin Commissionの提言を読んでみたいです.既存の国家間制度に縛られず,参加型のグローバルな機関を整備するよう求めています.
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IPEの想像力 11/4/13
アベノミクスが3周遅れのトップランナーであるなら,諜報活動に対して市民の権利を守る世界の動きに逆らい,日本政府の国家機密を強化する姿勢は倒錯した時代感覚だと思います.日本国民は,本当に,軍事予算の増大を人民解放軍から,諜報活動の強化をNSAから学んで,時代の不安と狂気に追いつきたい,と望むのでしょうか?
2030東京オリンピックが,福島原発の処理や震災復興の観点で評価されるより,アジアの軍備拡大競争と諜報コミュニティーの饗宴になるかもしれません.そんなオリンピックを阻止したい,と思う人は多いはずです.
1964東京オリンピックはどうだったのか? それを実現した人たちの話を読みました(野地秩嘉『TOKYOオリンピック物語』).面白いです.特に,食事を担当した帝国ホテルの村上信夫や,オリンピックのポスターを作った亀倉雄策が印象に残りました.
亀倉の他の作品,「ヒロシマアピールズ83」のポスターは,美しくて,悲しい.なぜ悲壮感を求めたのか,という疑問に対して,末尾の回想で,彼はB29の操縦士の空爆ノートを紹介します.B29の搭乗員たちは,日本の美しい緑と,野球を楽しむ子供たちの白いシャツを見たのです.しかし,その上に自分たちがこれから爆弾を落とす,ということに,重く沈黙するしかなかった,と.
爆弾を落とすアメリカ兵士の視点で,戦争の非情さを考えることができたからこそ,その作品は原子爆弾を落とす戦争の指導者と人類を対置させる「ヒロシマアピールズ」になったのでしょう.
視点の重要さは,2020年に向けた国立競技場の立て直し計画にも表れています.
「この計画に対し,槙氏は8月の日本建築家協会機関誌への寄稿で「完全なミスマッチ」と批判.日本の人口減少などを踏まえ「(都市の自然景観を維持するために定められた)風致地区になぜこのような巨大な施設を造らねばならないのか」「50年後の東京にふさわしいスケールを」と訴えた.」(毎日新聞 2013年10月11日 東京朝刊)
JIA Magazine
295建築家
http://www.jia.or.jp/resources/bulletins/000/034/0000034/file/bE2fOwgf.pdf
「2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の総工費が、見込みの1300億円から最大約3000億円まで膨らむ可能性があることが分かった.収容人数を増やすための大型化や独特のデザインの採用が響いたとみられ,政府は,新競技場の規模見直しなどコスト削減の検討に入った」(毎日新聞 10月19日(土) 田口雅士)
トルコやブラジルのデモ参加者は,政府の進めた開発計画やワールド・カップ.オリンピックによって,インフレや財政赤字が悪化するのを嫌いました.雇用改善,賃金上昇のために,政府は支出するべきだ,と考えたでしょう.
何年も,何世代も,難民キャンプに暮らす人々がいることに,私は怒りと不安を感じました.「ラクダでも住めない」というような惨憺たる暴力,病気,犯罪の蔓延する難民キャンプを,日本政府はどのように支援しいるのでしょうか? 軍備拡大や諜報活動より,紛争地域の安定化や朝鮮半島の再統一について語るべきだと思います.
槇氏が明治神宮の歴史的景観を強調する姿勢は,東京オリンピックの招致でアベノミクスを援護できると考える現政権とその支持者も共鳴するはずです.巨大な建築物というのは,権力の意志や社会的な意味を表すことであり,オリンピックの場合,国家意志と国際社会に向けたメッセージでもあるでしょう.
建築家と私たちを結ぶ思想,イデオロギーが問われています.もっと住民にやさしい,日本の経済や社会にふさわしい競技場を建ててほしいです.多くの建物を解体して難民キャンプに移設し,利用できるようにしてはどうですか?
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