(前半から続く)
l ユーロ圏のトリレンマ
VOX 18 October 2013
Unemployment,
labour-market flexibility and IMF advice: Moving beyond mantras
Olivier Blanchard, Florence Jaumotte, Prakash Loungani
VOX 19 October 2013
The
European crisis in the context of historical trilemmas
Michael Bordo, Harold James
ユーロ圏の危機は金本位制に例えられる.金本位制には戦争などの非常事態においては離脱して復帰する可能性があったが,それができないユーロ圏は危機を深刻なものにしている.
さまざまな問題が関わっていることで,「不可能の三位一体」もしくは「トリレンマ」は異なった形であらわされる.
1. マクロ経済の古典的トリレンマ: 固定為替レート,資本移動,金融政策の自律性.
2. 金融部門: 固定為替レート,資本移動,金融の安定性.
3. 国際関係: 固定為替レート,資本移動,各国の政策的自律性.
4. 政治経済: 固定為替レート,資本移動,民主化.
第1次世界大戦後は,これらすべてが不可能になった.ユーロ圏もそうだ.
FT October 21, 2013
Bail-ins
are no better than fool’s gold
By Avinash Persaud
Cocos(“Contingent convertible” notes)について.それはバーゼル協定Ⅲに戻るだけか? むしろ我々に必要なものは,金融機関の,一時的な政府による保有“conservatorships”である.
Project Syndicate 21 October 2013
Misconceiving
British Austerity
Robert Skidelsky
l ノーベル賞と経済学
NYT October 19, 2013
Robert
Shiller: A Skeptic and a Nobel Winner
By JEFF SOMMER
FT October 20, 2013
The
Nobel Laureates on equity bubbles
Gavyn Davies
NYT October 20, 2013
Yes,
Economics Is a Science
By RAJ CHETTY
3人のエコノミストに同じ質問をすれば,3つの異なる答えを得る.ノーベル経済学賞の発表について,この言葉を思い出す.
最高の賞を受ける人物が全く反対の意見を持つなどと言うのは,経済学が科学ではない,という意味だろうか? 物理学や化学,薬学でも,バランスを取るべきか?
確かに,不況の原因や成長の決定要素など,「ビッグ・クエスチョン」に関しては答えが分かれている.しかし,それは他の科学でも同じだ.何が健康につながるか,を決めることは難しい.実験ができないという問題もあるが,経済学は次第にそれも克服しつつある.
多くのコンセンサスがあり,政策決定に役立つ,イデオロギーではない証拠がある.
VOX 21 October 2013
Fama,
Hansen, Shiller: Nobelists 2013
Marianne Andries, Bruno Biais
VOX 24 October 2013
Fama,
Hansen, and Shiller: An excellent choice of Nobel laureates
Tarun Ramadorai
l 日本が学ぶこと
NYT October 19, 2013
The
Lessons of Japan’s Economy
By STEVEN RATTNER
日本経済の富は明らかに増大した.昨年秋から株価は65%も上昇し,第2四半期の成長率は3.8%である.ついに物価も上昇し始めた.しかし,東京のムードはあいまいだ.安倍首相の金融・財政政策を称賛する声と,構造改革の成功を危ぶむ声が交錯している.
その苦しみは他の諸国に共通するものである.世界中で,マクロ経済政策のバランスが議論されている.もちろん,日本にはそれ自身の様々な硬直性がある.労働生産性はアメリカの71%でしかなく,イタリア並みだ.投資の利回りも不十分だ.医療,小売り,農業の非効率性は有名である.企業はあまりにも少なく,税制も不満な点が多い.移民政策や硬直的な労働市場の改革にも消極的である.
東京のくすんだ景色は,輝きを増す上海に比べると,全く劣っている.それは福島の原発事故で電力が乏しいこの夏に顕著であった.
YaleGlobal, 22 October 2013
Japan’s
Olympic Challenge
Jean-Pierre Lehmann
1964年の東京オリンピックは,敗戦後わずか20年で日本が国際社会に再統合したことを示す輝かしい成果であった.その翌年,日本はGATTとOECDに加盟し,1967年にドイツのGDPを抜いて,経済的奇跡と称賛された.
当時のアジアはまだ混とんとしており,中国は文化大革命を推進していた.
20世紀前半,日本は西側と同盟関係を結んだ.1902-22年はイギリスと,1938-44年はドイツと.そして,1952年以来,アメリカとの同盟を維持している.しかし,アジア諸国とは一つの同盟関係も,緊密な関係さえも無い.
中国人と韓国人にとって,日本が20世紀に示した帝国主義はヨーロッパと同じ,あるいは,それ以上にひどい政策だった.韓国人は経済・政治・文化において植民地化され,推定10万人の女性が慰安婦にされた.中国人は,南京大虐殺や,731部隊の生体実験を含めて,推定2000万人の市民が殺害された.
天皇裕仁はイギリス,オランダ,アメリカを訪問したが,アジア諸国を訪問しなかった.その息子,天皇明仁は,11月にインド訪問を計画している.2020年の夏季オリンピックを東京で開催することに決めた委員会は,北東アジアで戦争は起きない,と仮定したのだ.オリンピックの理想を実現するには,日本が中国や韓国とも戦争の傷を癒し,領土紛争を解決しなければならない.
フランスとドイツの戦後和解はそのモデルになる.特に,1984年9月22日,フランスのミッテラン大統領とドイツのコール首相が,ヴェルダンのDouaumont墓地で手を取り合った.そこは第1次世界大戦の激戦地で,15万人のフランス人兵士が眠っている.
ニューデリーへ向かう途中,天皇昭仁はソウルに立ち寄り,従軍慰安婦たちの記念碑の前で黙想し,生き残った慰安婦たちといっしょに朴クネ大統領の手を取ることができる.そして南京へも飛んで,習近平主席と南京虐殺記念館の前で,同様に手を取ることだ.そうすることで日本はアジアの一員となり,アジアの世紀に向かう歴史的な転換点として,2020年の東京オリンピックを祝えるのだ.
Project Syndicate 24 October 2013
Japan’s
Tax-Hike Test
Koichi Hamada
日本の官僚たちは,社会保障を維持する税収を得るため,権威を回復しようとしている.消費税引き上げにはさまざまな意見がある.
日本経済が15年間の停滞を脱するための回復を始めた時期に,増税は好ましくない.増税前に消費が増え,将来の消費を奪ってしまうだろう.同時に,突然の増税による無駄が生じる.財政再建は景気の心配がない時期に行うべきであるが,J.フランケルなど,西側のエコノミストが漸進的引き上げを主張するのに,日本国内ではそれを支持しないエコノミストが多い.
政府が行った意見聴取は財務省の見解に近い者が偏って集められた.まさにJ.スティグリッツが批判した「認識の捕虜」である.日本の債務依存度についてGDP比が200%を超えた,と言われるが,資産を考慮した純債務比率はアメリカと同じ100%未満である.
それでも私がアベノミクスに成功の見通しを持つのは,マンデル=フレミング・モデルが示すように,変動レート制下の日本で財政緊縮の効果を吸収する金融緩和が日銀によって実施できるからだ.日銀の黒田総裁は,2011年に同様の政策を怠ったとして責められたイングランド銀行のMervyn King元総裁の経験から学ぶべきだ.
l 米中共棲の終焉
NYT October 20, 2013
American
Debt, Chinese Anxiety
By MENZIE D. CHINN
Project Syndicate 21 October 2013
China’s
Wake-Up Call from Washington
Stephen S. Roach
中国が無制限にアメリカ財務省証券を購入した時代は終わった.
2000年でも,中国の保有するアメリカ財務省証券は600億ドルにすぎず,3.3兆ドルの民間保有残高の2%であった.その後,アメリカの政府債務は12兆ドルに増え,中国の比率は5倍以上の11%になった.中国の保有する政府と政府系機関の債券は2兆ドルに達する.
中国の通貨政策と輸出主導型成長モデルは,アメリカの貯蓄不足と慢性的な経常収支赤字に,ぴったりと合致した.アメリカは低金利と安価な輸入財を喜んだのだ.
しかし,いずれのモデルも持続可能ではなかった.中国はすでにその成長戦略を転換する決断を行った.アメリカにおける債務上限の論争は中国に対する明確なメッセージとなった.金融危機後のアメリカは総需要がなかなか伸びない.外国市場に頼った成長を,中国は続けられない.リバランスが唯一の選択なのだ.
Global Times | 2013-10-23
Dual
leadership in Asia can avert clashes
By Hugh White(professor of strategic studies at the Australian National University in Canberra)
アジアの様々な紛争の背後には米中の対立がある.米中関係が改善すれば紛争は容易に解消し,米中関係が悪化すれば紛争は深刻化し,軍事衝突も起きる.
それは両国にとって破滅的であり,そのことを指導者たちは知っている.米中間の調和が平和と繁栄のために必要なのだ.問題は双方がそれを達成する方法について大きく異なった見解を持っていることだ.アメリカは現状を維持し,中国は大きな変更を求めている.
それは当然なことであるが,戦略的なライヴァルが自分の考えを相手に押し付けるなら,深刻なリスクになる.対立がエスカレートして米中の衝突に至るリスクもある.それは特に,互いに相手の力を過小評価するとき,起きるだろう.アメリカは中国が新しいタイプの指導力を得る希望は捨てたと考えている.中国には,アメリカ政府の混乱や中東からの撤退を観て,アジア地域で中国が指導力を得るべきだ,と考える者がいる.
それはどちらも間違っている.両国の力は強く,その決意も固い.相手に譲る気などない.
つまり,戦略的な敵対が戦争に至るのを避けるには,両者が妥協するしかない.米中がアジアでパワーを共有する新しい秩序に合意するのである.アメリカはアジアの指導力を単独で維持する姿勢を取らず,中国がより大きな役割を受け入れる.
中国はその余地を示しており,アメリカは「アジア旋回」が機能しないことにより,それを受け入れるときだろう.
l ベルルスコーニとメルケル
NYT October 21, 2013
The
Great Desperation
By ROGER COHEN
超富裕層が世界のアジェンダを決めるという意味で,ベルルスコーニはイタリアを超えた時代精神の萌芽であった.パワーを失ったヨーロッパ政治家たちの中で目立つパフォーマンスを示し,イデオロギーを失った時代のエンターテイナーであり,退屈した大衆にリアリティー・ショーを提供し,イメージがすべての世界で素晴らしい衣装を身に着ける.
NYT October 21, 2013
A Woman
for All Seasons
By CLEMENS WERGIN
ベルリンの地下鉄で8歳の少女が母親に尋ねた.・・・男性も首相になれるの?
ロシアとの衝突後にグルジアを訪問したメルケルは,感情を抑えられない政治家たちを嫌った.ドイツはジェンダー間の平等を実現した最高の例である.メルケルが新しい任期を終えるころ,男性中心の企業文化も変わるだろう.
l 移民の国際ルール
BLOOMBERG Oct 21, 2013
Forget
Free Trade. Try Free Immigration.
By Pankaj Mishra
ユーロ危機に苦しむ諸国(Cyprus, Ireland, Latvia, Malta, Portugal, Spain)ではヨーロッパに住む権利を売る競争が起きている.マルタでは26万ユーロで国籍を買える.
シンガポールはアジア諸国(China, India, Indonesia, Malaysia and Philippines)の富裕層が集まる首都になっている.ただし住民たちは,拡大する不平等,上昇する住宅価格,フェラーリで暴走する中国人に怒りを高めている.
高所得国で起きている,政治的に不安定な,移民への不信感は,規制されない人口移動のもたらす問題の一つだ.政治家たちは様々な移民を必要としている事実をまったく認めず,偏見や間違った情報による移民への反感を克服する課題に向き合わない.賃金上昇,人口停滞や減少,人材不足,など,移民の経済的な根拠は軽視されている.
グローバリゼーションは,資本や財だけでなく,人口の移動にも示されているが,境界を越える人々の流れを管理する原則を定める,グローバルにもリジョナルにも,持続する試みは存在しない.財・サービスのルールを決めるWTOや,国際通貨制度とグローバルな資本市場の安定性に配慮するIMFに対応するような,移民機関はない.
エコノミストのDani Rodrik は,豊かな諸国が「一時雇用ビザ」を発行するように提案した.その利益は,全ての関税と補助金を撤廃する利益よりも大きく,しかも最も貧しい者に直接に届く.この政策に反対する声が強いのを知っているから,Rodrikはそれを抑える様々な政策も考えている.移民たちには政治的基盤がないけれど,それは貿易自由化でも同じであった.政治的指導力,ビジネス界のロビー活動,エコノミストたちによる説得が必要だ.
われわれは移民のルールをグローバルに設定する必要に迫られている.ヨーロッパの沿岸で悲劇が繰り返され,大陸では右翼の憎悪があふれている.
FT October 22, 2013
Lampedusa
brings shame on the European Union
By Bernard Kouchner
l 米欧間の信頼喪失
NYT October 22, 2013
How
to Fix the Glitches
By EZEKIEL J. EMANUEL
FT October 24, 2013
Europe
should stop whining about America’s spies
By Josef Joffe
NYT October 24, 2013
The
Handyüberwachung Disaster
By ROGER COHEN
l 戦場も,和平も
FP OCTOBER 22, 2013
What
Churchill Can Teach Us About the Coming Era of Lasers, Cyborgs, and Killer
Drones
BY P.W. SINGER
防衛予算が削減されることや,孤立主義への傾斜を懸念する軍人は多い.しかし,技術が急速に変化する時代には,未来の地政学と戦場を想像しなければならない.
The Guardian, Thursday 24 October 2013
Tony
Blair: Pain, passion and empathy – what I've learned about peacemaking
Tony Blair
アイルランドに多くの時間を注いだ.私が首相であった時代もそうだ.1997年,和平が無残にも破られた.首相就任直後,2人の警察官が残酷に殺害された.今でも,グッド・フライデー合意に至った日々を,それがいかにして結びつき,いかにして維持されたのか,深い驚嘆の念を抱かずに回想するのは難しい.
シン・フェインのGerry Adams and Martin McGuinnessは,その生涯をイギリス人と連邦に対する戦いに捧げてきた.彼らは演説し,抗議デモを指導し,純粋で単純なテロリストたちに見捨てられた.今,彼らは和平のために,正義を得るために,武器を置くように語っていた.それは容易なことではなかったが,私は彼らを信頼した.
l 世界貿易と成長の関係
FT October 24, 2013
Trade:
Into uncharted waters
By Shawn Donnan
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The Economist October 12th 2013
The gated globe: Special Report
Water in China: Desperate measures
Water: All dried up
America and Asia: Not being there
Banyan: Not a pleasant prospect
Chinese industry: Haier and higher
(コメント) World
Economy特集記事に期待しましたが,表紙のイラストが魅力的なほど,その中身は面白いと感じませんでした.世界金融危機後に1930年代のような通貨価値の切り下げや関税引き上げは起きませんでした.しかし,目に見えない形で,市場型の選別的保護主義が求められている.グローバリゼーションはゲートや壁によって分断されている,というわけです.
私が興味を持ったのは,中国の水不足と河川の流れを変えて,ダムを建設する政治であり,もっと面白いのは,Haierの経営者と中間管理職を一掃する核心です.トヨタの看板方式やQCとは違う,これも恐るべき経営者の革新魂です.
APECバリ大会の記念写真は,日本で報道されたのかどうか? 一目見て,驚きました.前列中央にはインドネシアの大統領と左右に中国,ロシアの指導者たち.後列の右端にケリー国務長官,安倍首相は後列の左端に近いです.
Banyanが紹介するアフガニスタンの現在を知り,平和を回復するはずであった欧米の軍隊が重苦しい気分で帰還することを考えます.
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IPEの想像力 10/28/13
NYTのホーム・ページで,トマス・フリードマンのアジア・フォーラムを観ました.・・・世界で起きていることの中で,何が重要なことか?
Global
Forum Asia: Thomas Friedman’s Next New World
http://nytmarketing.whsites.net/Friedmanasia/index.php
それは二つだ,フリードマンは考えます.1.オーソリティーの危機.2.ハイパーコネクティッド・ワールドの出現.・・・
鉄拳 “iron fist” による権威は失われた.帝国も機能しない.水平的な社会,深刻なほど多文化で,しかし多文化主義を欠いた社会に向かう.マンデラのような優れた指導者,外から来た米軍の駐留,各地の暴力的な支配者が,新しい権力の集中を促す触媒になるかもしれない.しかし,それは非常に難しい.つまり,私たちは<シリア>になる.Politics of Tribalism. ・・・アメリカの政府閉鎖も,ユーロ危機も.
そして世界のどこでも,指導者たちに残されたのは,“2 way conversation” だ.中国の習近平もWeibo(中国のTwitter)で国民に語る.オーソリティーは伝統的な権威や軍隊から生みだせなくなった.全ての制度・組織が苦しんでいる.世界は,“connected” から ”hyper-connected” に,”interconnected”
から ”interdependent” に変わった.
PCとインターネットは,個人と個人をつなぐ.ワーク・フォームが共有されて,グローバルなプラットフォームが形成される.世界の姿は根本的に変化し続ける.クラウドに繋がるタブレットだけで,他に何も要らない.私たちは世界中の個人と繋がる.ハイスピード・ブロードバンドとワイヤレスだ.利用できる情報は爆発的に増大している.
これが「グーテンバーグ・モーメント」だ.かつて私はNYTのオフィスで7人のコラムニストと競争したが,今は7000万人と競争している.何を恐れているか,私は知っている.普通のスキルでできる高賃金の職場(high wage, middle skill, job)は消滅していくだろう.・・・そう.あなたの仕事はアウトソースされる.どうすればよいか? 私の答えは5つだ.
1.新しい<移民>のように生き方を考える.彼らは楽天的だ.私たちは皆,新世界への移民である.2.大量生産に抗する<職人>であること.すべてが個人的なアイテムになる.追加的な,ユニークな価値をもたらせるか? 3.シリコンバレーの<起業家>であること.終わりだと思う者は終わる.新しい世界ではすべてが進行中であり,常に学ぶしかない.4.PQ-CQ-IQ(情熱を維持し,好奇心を持続し,インテリジェンスを高める).誰が好奇心を持ち続け,知識を蓄積する意欲に満ちているか? 自分だけのサービスを意識しているか? 5.Googleがすべて知っているのではない.答えは一人一人が出す.私が朝食を摂るパンケーキ・ハウスの<ウェートレス>のように.彼女は追加のスプーンを出せる.この新しい世界では,常に企業家精神が問われるだろう.・・・
情報・通信技術や価格革命,エネルギー革命の話が多い中で,P.C. Dohertyは“grand strategy”を議論しています.それは経済的基礎から,制度,外交と積み重なっている.・・・フリードマンは問いかけます.この”hyper-connected world” において,何が「経済のエンジン」であり,何が「グランド・ストラテジー」なのか? 封じ込め戦略は不可能になった.
正しい戦略は<経済のエンジン>から生じる.現在,持続不可能な国際システムにおいて,アメリカの戦略は4つの要素を持つだろう.1.新しく中産階級になる30億人を経済的に包摂する,2.エコロジカルな悪化を抑える,3.不況を封じ込める,4.経済活力を回復するために投資する.・・・そうすればアメリカの外交政策は,一方でグローバルなパートナーシップを広め,他方で2国間の安全保障を確立できるだろう.
フリードマンはさらに尋ねた.Dohertyの考える「グランド・ストラテジー」で助言するとしたら,中国に対してアメリカ大統領は何をするべきか? シリアに対して何が解決策か? ・・・中国が成長するにつれて,これまでのシステムには余裕がなくなり衝突する.しかし,財務省証券のデフォルトのように,中国の側にも持続的なパートナーシップを築く動機がいろいろある.米中間で平和的な調整は可能である.他方,シリアの解決策は地域の安全保障の一部として考えるべきだろう.近隣諸国と大国が集まって安定化を進める.内戦状態ではゼロサムだから銃しか答えがない.しかし長期的な再生の視点になれば違う.和平は有益だ.
MITのA. McAfeeは,コンピューターの能力が18か月ごとに倍増すること(ムーアの法則)を,われわれはまだ理解していない,という.これまで不可能と思われてきた分野も急速にコンピューターによって代替されていく.経済エンジンの背後で”Great decoupling”が進行する.これまではGrowth-Job-Wage-Productivityが一緒に増加する傾向が拡大を支えてきた.安定性や中産階級を維持できた.しかし,それは終わったのだ.
今や平均的な仕事は消滅していく.・・・どうすればよいのか? フリードマンは尋ねた.中国の復旦大学でも質問された.私たちは絶滅種になるのか?
McAfeeの短期的な答えは,“E.I.E.I.O.”= Education, Immigration reform,
Entrepreneurship, Infrastructure, Original research である.技術変化を止めることはできないのだから.将来,技術がどれほど世界を変えるか,だれも正確に想像できないだろう.たとえば世界のどこに行っても,知識や情報や言語を,視覚や聴覚から脳に流れる過程で直接に転換し,増幅できるようになる.これはグーグル・グラスではない.
長期的には,コンピューターがジャーナリストの仕事も,大学も,医療も,全て変えてしまう.今は好ましい職場でも,データが整理されてコンピューター化され,ほとんど人が必要なくなるだろう.
最後のテーマは,“education” と “skill” です.フリードマンは,シンガポールには石油がなくて幸せだった,という.人間に投資するしか選択肢がない.そして素晴らしい空港やインフラを建設した.それらこそ持続可能な富だ.
では,スキルとは何か? OECDでPISAを開発したA. Schleicherは,スキルにはさまざまな次元がある,という.それぞれに蓄積・教育される.アメリカでは,優れたスキルがよい仕事,多くの所得を意味する.スキルは日本で高い生産性を生み出す.そのようなシステムはどこにでもあるとは言えない.
スキルは長期的な思考で形成しなければならない.アジアや北欧はそれに優れている.上海の成功は特に目立っている.教育は社会的なプロジェクトである.上海の教師はしばしば生徒の家庭にも電話する.フィンランドも,上海も,すべての学校が好成績を取る.それはシステムが優れているからだ.中国の所得がアメリカより低くても,彼らは教育に多くの投資をして,成果を上げる.
しかし,とフリードマンは問う.大学が増え過ぎて,一種のバブルになっている.彼らが卒業しても仕事はない.では起業できるだろうか? 法の支配がない? 中国では成功できない? ・・・Schleicherは2つのことを指摘した.1.香港の製造業は大陸に流出してしまった.しかし,彼らはスペースを得た.それを生かすスキルに投資した.2.中国では,レストランのウェートレスも英語を学ぶ.彼らは長期のキャリアを想い描くからだ.
現在,教育はまだ大学など特別な制度に依存している.しかし将来は,だれでも世界中から “Harvard” のコンテンツにアクセスできる,直接,個人のスキルを得るだろう.
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私のReviewをいつも読んでくれている学生は,そう多くはないでしょう.しかし,その中でも優れた学生たちは,きっと図書館に行ってThe Economistの記事を(たとえ一部でも)読むでしょう.それは,100人に1人かもしれません.そして,ここで紹介するNew York Timesの主催したThomas Friedmanのフォーラムに関心を持って,そのビデオを(たとえ一つでも)観るでしょう.やはり,100人に1人くらいでしょうか?
そう,あなたが1万人に1人の学生,The Economistの記事を読み,Thomas Friedmanが様々な論者と交わす対談を面白いと聴いてくれる学生です.ぜひ感想をe-mailで私に送ってください.あるいは,研究室で話し合いましょう.
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