IPEの果樹園2013
今週のReview
10/28-11/2
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新興諸国とヨーロッパ ・・・イスラエルと和平 ・・・アメリカの衰退 ・・・アメリカ共和党の戦略 ・・・中国経済の悲観と楽観 ・・・サウジアラビアの憂鬱 ・・・Mikhail Khodorkovskyの10年 ・・・ユーロ圏のトリレンマ ・・・日本が学ぶこと ・・・米中共棲の終焉 ・・・ベルルスコーニとメルケル ・・・移民の国際ルール ・・・戦場も,和平も
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
l 新興諸国とヨーロッパ
SPIEGEL ONLINE 10/16/2013
Emerging
Challenges
What's
In Store for the New Global Powers
An Essay by Erich Follath
中国,インド,ブラジル.彼らが世界経済に嵐を呼び,政治的な自信を深めている.成長や技術の受け入れ能力で見て,これらの諸国の都市は世界で「最もダイナミックな都市」の最高位を独占している.ベルリン,フランクフルト,ミュンヘンは50位にも入らない.
工業生産で最も競争力があるのは,ドイツやアメリカを抜いて,中国である.世界の企業ヒエラルキーを動かすのは,2017年までに,旧工業諸国を退け,中国,インド,ブラジルになる.この150年間で初めて,中国,インド,ブラジルを合わせたGDPが,欧米の旧工業諸国(Canada, France, Germany, Italy, United Kingdom and the United States)を合わせたGDPに等しくなった.
中国,インド,ブラジルは世界人口の40%を占める.その拡大は多くの分野で著しいが,研究や技術でも新興勢力が現れた.世界最大のビール企業を持つブラジルのJorge Paulo Lemann,など,がおり,サンパウロでは800のドイツ企業が集まって食品研究を進めている.ボーイング,エアバスに次ぐ,世界第3位の航空機製造企業,Embraerがあり,2014年ワールドカップ,2016年夏のオリンピックをリオデジャネイロは準備している.
世界で最も高額の住宅をムンバイに所有するのはインドの企業家Mukesh Ambani,ジャガーやランドローヴァーを生産するのはインドのTata Motors,そして,ニューデリーには世界のトップ・ソフトウェア企業,宇宙企業が集まっている.中国で販売されるフォルクスワーゲンは,ドイツの販売台数を長期にわたって超えており,今年だけでも中国に5つの工場を建てる.
政治的にも,中国,インド,ブラジルは自信を深めている.国連安全保障理事会で,中東に関して中国は気に入らない決議をすべて拒否し,極東では海軍力を拡張してきた.インドも世界の軍縮に反して自国の核保有を強め,ブラジルはNSAの諜報活動に抗議してオバマ大統領との会談をキャンセルした.
ロシアと南アフリカを加えたBRICSは,世界銀行に対抗して,1000億ドルの開発銀行を設立した.国際的な環境規制を押し付けられるのを拒否した.インドと中国が支持し,アメリカは反対したが,WTO議長にブラジルのRoberto Azevêdoが選出された.
50年前,ブラジルは破産した軍事独裁国家であり,インドは遅れた農業国,中国では文化大革命が吹き荒れ,民間保有の自動車など町に1台も無かった.
しかし,喜べない反面もある.北京,ニューデリー,ブラジリアは成果を強調するが,国内各地に政府の汚職やコネ,非効率を糾弾するデモが起きている.同時に景気回復は遅れている.彼らの開発・経済発展モデルが互いに全く異なっている.中央集権と一党独裁に,野蛮な資本主義的要素を加えた中国,連邦制と混沌に陥った門主主義のインド,大統領制下で硬化した諸政党が動くブラジル.しかし,新しい都市中産階級が形成され,社会的不正義や貧富の格差にますます意識が高まっているのだ.
政治エリート層が自分たちに最も感謝すべきだと思っている人々がデモに参加して抗議している.それはかつて,フランスの旅行家Alexis de Tocquevilleが19世紀半ばに描いた,貧しい大衆が革命を起こすのではなく,失うものを持っている者たちが革命を起こす,という理論に近い.インドの化学工場建設,中国の有害な食品,大気汚染,特権層,ブラジルの教育機会,虚栄に満ちた建造物が,怒りを呼んでいる.人々は政治家に説明を求め,統治の改善を求めている.
数年前,Amartya Senは,経済発展を物質的は繁栄だけでなく,教育や医療へのアクセス,信仰の自由,政治的影響力を行使しても警察の弾圧から守られていること,などを含めて定義した.こうした分野でこそ,新興グローバル・プレイヤーとなった諸国は遅れているのである.経済発展は,貧困からの自由であるとともに,独裁からの自由でもある.
シンガポールの元首相,世界で高く評価されている中国系の政治家,Lee Kuan Yewは,イギリスの旧植民地を繁栄する都市国家に変えた.彼は21世紀が米中の競争時代であると理解し,アメリカがいつまで優位を維持できるかわからないが,中国は独自のやり方で容赦なくNo.1になる,と述べる.人権も中国で次第に受け入れられるが,まだ国家こそが最高の権威であるという考えが人々を支配している.儒教は人々に服従だけを教えたのではなく,教育の重要性や支配者の責任を主張した.憲法や意見交換の自由を欠くことは,長期的に中国の利益を損なう,と考える.
中国の指導者も政治システムの開放性を認めていくだろうが,それは自動的に西側の複数政党制になることを意味しない.また,中国は,労働力供給の限界に達した「ルイスの転換点」,人口増加の続くインド,ブラジルも「中所得の罠」という問題に直面している.「ワシントン・コンセンサス」同様,「チャイニーズ・ドリーム」が新しい開発モデルとして成功することはないだろう.
たとえ彼らが自壊する傾向を示しても,欧米が回復する保証にはならない.アメリカの楽観は,要するに,環境破壊の疑いのあるフラッキング技術により天然ガスの自給力を得たことだ.ヨーロッパには大きな不安がある.ユーロ圏の様々な改革はドイツのメルケル首相も受け入れているが,期待されるほどには進まない.
このまま停滞するヨーロッパは,新興勢力の争う世界で将棋の単なる駒になり,文化のアミューズメント・パークとしてだけ称賛されるかもしれない.われわれ次第である.われわれはここを住む場所に,われわれがダイナミックに未来を目指す場所にするのか?
l イスラエルと和平
FP OCTOBER 17, 2013
The
Shrinking
BY AARON DAVID MILLER
NYT October 17, 2013
If
Not Now, When?
By ROGER COHEN
今以上にイスラエルにとって好ましい状況を考えることは難しい.
シリアは化学兵器を放棄し,その内戦でヒズボラやイランは苦しみ,エジプト軍はムスリム同胞団を政権から追放し,イスラエルとの関係を回復してガザのハマスを抑えている.トルコのエルドアンは外交を広げ過ぎた.サウジアラビアはオバマ政権のエジプト,シリア,イラン外交に憤慨している.ヨーロッパの30年戦争など短すぎたと思えるほど,スンニ派とシーア派の敵対は激しい戦闘をシリアで展開,アラブとユダヤの対立など目立たなくなった.イスラエルのパワーと繁栄が,その65年の歴史で,これほど持続的に高まったことはない.
今なら,強さに依拠して妥協できるはずだ.
FT October 20, 2013
Iran’s
diplomacy shows a recognition of its decline
By Katerina Dalacoura
1979年のイスラム革命以来,アラブ世界の指導者になろうとイランは努めてきたが,そのイデオロギーは反米,反西側であった.しかし,2011年のアラブの春は,彼らが予想したような,若者たちのイスラム主義への支持を示さなかった.イランはその後のアラブ世界の変化で影響力を失ってきたのだ.
イランの同盟諸国は,シリアのアサド政権が無慈悲な弾圧政策を採用したように,反発を呼んでいる.イラン外交姿勢における転換は,このような失敗を認め,地域の指導力を得るために反米姿勢を改めたものである.イランの衰退がアメリカ外交に新しい機会をもたらしている.
FP OCTOBER 21, 2013
Rogue
State
BY URI SADOT
1981年6月7日,イスラエルは「オペラ作戦」を敢行し,サウジとイラク上空を越えて飛行小隊がバクダッド近郊の,フランスが建造中であったプルトニウム原子炉を爆撃した.イスラエルの指導者たちは,サダム・フセインがそれを使って核兵器を製造すると恐れたからだ.
作戦は成功したが,国際的な反発は強かった.アメリカ政府もイスラエルの姿勢を非難した.
もし外交がイスラエルの安全保障を与えないとネタニヤフが結論すれば,イランとの交渉がネタニヤフの爆撃命令を止めることはできないだろう.むしろ一つの起こりそうなシナリオとして,オバマがイランとの交渉で大きな成果を上げたとき,イスラエルが孤立し,しかもテヘランからの脅威を取り除けていないと考えたとき,イスラエルは行動するだろう.
l アメリカの衰退
YaleGlobal, 17 October 2013
The
Dragon’s Spear: China’s Asymmetric Strategy
Loro Horta
FP OCTOBER 18, 2013
Imperial
Understretch and the Fall of Great Powers
BY JAMES TRAUB
アメリカは典型的な衰退する大国の兆候を示している.Paul Kennedyは,ローマ帝国,スペイン帝国,ヴィクトリア時代のイングランドを特に参考に,地域を支配し,世界を支配しようとする野望が,その国の能力を超えることだ,と述べた.彼は1987年の著作で,アメリカの同じ傾向を指摘したのだ.
しかし,現在のアメリカには正しくない.9・11以後の防衛費の増大を考慮しても,アメリカの財政は破産になる状態から遠い.ジョージ・W・ブッシュの無謀な企画は例外であり,アメリカが帝国に向かうことはない.むしろアメリカはグローバルな指導国の負担を嫌っている.
過剰拡大ではなく,「過小拡大(関与)」がアメリカの問題である.それは国内の公共投資不足にも見られる.問題は,過剰な野心を持つ国家ではなく,国家に癒しがたい敵意を持つ市民である.最近,共和党が示した姿勢も,そのような政治的かつ心理的な病であった.彼らは,連邦政府が悪だ,と信じている.その結果,他国に比べて,アメリカはグローバルな指導力を失っている.
歴史家のE.ギボンは,ローマが滅んだ理由を道徳的なものと考えた.愛国主義のエトスや市民的な美徳は,利己主義と無関心に変わったのだ.アメリカ人はまだ共和国の理想によって結ばれている.しかし,極端な不平等は目的を共有することを妨げ,美徳が個人にのみ保たれ,コミュニティーや集団にはない,という気持ちにさせるのだ.
自由放任が支持されるアメリカは変化に対して柔軟に対応する力がある.しかし,集団的な努力を過去において支えたような市民意識の共有は,それとバランスしなければならない.そのバランスが失われている.
WP October 18, 2013
America’s
not in decline — it’s on the rise
By Ely Ratner and Thomas Wright
政府閉鎖,シリア空爆中止,APEC欠席.アメリカ衰退論の大合唱が起きている.
21世紀に入って,アメリカは内外の困難に直面し,ブラジル,インド,中国の急速な成長に比べて,その衰退が目立つからだ.
しかし,アメリカの衰退を予言するのは難しいビジネスだ.1970年代にも,1980年代にも同様の議論は起きたが,その後のアメリカ復活で破たんした.そのサイクルが再現する理由は多くある.アメリカは金融危機から甦った.しかも新しいエネルギー源を得た.他方で,新興経済には内部で問題が起きている.
新興諸国の成長率は落ちた.その通貨価値は不安定化し,政治システムが動揺している.新興諸国を組み合わせた国際組織は次々できるが,いずれも長続きしないだろう.他方,アメリカの強さは本物だ.財政状態も改善し,何より,ますます中東の石油に依存するアジアと違って,アメリカはエネルギー革命を実現した.ハード・パワーに関しても,アメリカは先端的な軍事力の技術で優位を強めている.
アメリカは国際社会における要の位置を押さえている.外交,経済圧力,秘密の軍事行動,などを通じて,アメリカには有効な多国間協力を保つ力があるのだ.人口,地理,教育,技術革新で,アメリカの基本的な強さは健全である.アメリカは,自ら描く戦略に従って,中国や東アジアの政治経済で不安定化が生じた場合も,中東の流血に染まった苦しい革命にも,ヨーロッパの長引く不況や国際的な役割の停止にも,対処する力を持っている.
最も深刻なリスクは,困難な世界情勢に苦しんだ後,アメリカが自国の問題にだけ関わる,閉じた姿勢を強めることだろう.衰退論に身をゆだねるより,アメリカは世界を新しく指導するべきだ.
BLOOMBERG Oct 20, 2013
When
the Best and Brightest Leave India and China
By Pankaj Mishra
FP OCTOBER 22, 2013
The
Price of War
BY LETTA TAYLER
Global Times | 2013-10-22
Mutual
needs pave way for Singh’s China visit
By Xie Chao
theguardian.com, Wednesday 23 October 2013
The
US shutdown is the latest in this 'dysfunctional' relationship saga
Leo Panitch
これはJ.M.ケインズがブレトン・ウッズ会議で交渉しながら感じたことである.英米の力の違いよりも,モーゲンソーがアメリカ議会をなだめることこそ重要なのだった.アメリカが自由に世界中で投資できるように,とブレトン・ウッズ合意はアメリカ国内で宣伝された.
50年後,ロバート・ルービンは,完全に自由化された,グローバル化した資本主義的金融システムの維持を担う役職を引き継いだ.G7の財務大臣は,そのインフォーマルな帝国幹部会を代表したが,1971年の固定相場制崩壊をアメリカやドルの覇権が衰退すると考えたのは間違いだった.逆に,金融市場の統合化と証券化は進み,資本移動の自由化や財務省証券によるデリバティブのリスク管理が広まったことで,世界はますますアメリカ財務省の行動や,行動しないことによって,決定されるようになった.
同時に,これによって,議会の態度はますます重要になったのだ.1995年にメキシコの銀行破たんを救済する融資が必要になったとき,それはウォール街とグローバルな金融システムを危機に陥れかねない問題であったが,IMFではなく財務省が主要な資金400億ドルを提供した.議会を抑えるために,財務省だけでなく,3人の元大統領,17人の元国務長官・財務長官,指導的な州知事が動いた.
財務省と議会との長引く対立が示すのは,アメリカ社会の状態と,グローバル資本主義に「欠かせない」国家としての役割が矛盾することだ.アメリカの非公式の帝国を維持する諸要因は,現代のグローバル資本主義の中心問題なのである.
FP October 23, 2013
Economic
Experiments and the Battle for East Asia
BY ELY RATNER
APECの記念撮影は,前列中央に中国の習近平主席が立ち,オバマの代理で参加したジョン・ケリー国務長官は後列の端に立った.
確かにこれは最新の外交的失点であるが,アジアにおける競争を決めるのは国際会議ではない.長期的に持続可能な成長を実現できる見通しこそ,その影響力を決めるのだ.
パワーには金がかかる.今後の4か月で,世界3大経済であるアメリカ,中国,日本は,すべて,ゲームのルールを変えるような経済改革の制度化に取り組む.その成否によって,だれがアジアを指導するかは決まるだろう.
OECDは,中国の経済規模が購買力平価でみてアメリカに等しくなるのを2016年だと予測した.アメリカのNISは,中国のGDPが世界最大になるのを2030年と予測した.すでに中国はアジアで第2か第1の貿易取引国である地位を利用し,台湾や人権など,中国の主張を他国に支持させている.2013年の軍事予算も10.7%の増加を実現して,領土問題への圧力を高めた.
しかし,他方で中国経済は減速している.労働コストの上昇,高齢化,慢性的な汚職,環境汚染,中所得国への移行問題,などが解決を迫っている.2009年の金融危機がもたらす不況を回避したが,その過程で地方政府は巨額の不良債権を生んだ.指導部が改革を唱えるが,国有企業などで既得権を握る者たちが反対する.
日本では20年間の停滞を打破するために,安倍晋三首相が金融・財政・構造改革を唱えている.それらが成功すれば,安倍は経済的・政治的な資本を得て,軍事予算の増大や憲法改正に進むだろう.オバマも,アメリカ経済の回復を加速することが求められている.今後,高齢化や医療費の増大で生じる財政的な圧力に対処しなければならない.
北京,東京,ワシントンが推進する経済改革に成功する国が,最強の影響力を手にする.
Project Syndicate 24 October 2013
The
Obama Anti-Doctrine
Christopher R. Hill
政府閉鎖で,オバマはAPECのバリ会議を欠席した.それは仕方ないかもしれないが,参加者たちは思ったはずだ.「アメリカのアジア旋回はどうなったのか・・・?」
中東におけるアメリカ軍の撤退は,アジアにおける展開を可能にする,と考えられた.中東諸国は不満だった.しかし,「アラブの春」で,アメリカ政府はあわてて中東外交を再開している.イスラエルはもはや,以前ほど重要でないのだが.
アジア旋回は,ヨーロッパ諸国にも影響を及ぼしている.それは,「大西洋同盟」を軽視することを意味したからだ.並行して,EUはアフガニスタンの軍を撤退させつつある.
最期に,アジア旋回は世界経済に占めるアジアの中心性を認め,同時に,中国が上昇するのを抑える,封じ込め政策であることを意識させた.もちろん,中国の姿勢もそれを促したのだ.南シナ海の紛争(ヒラリー・クリントンは「西フィリピン海」と呼んだ)や,北朝鮮の行動が韓国や日本の強硬策を正当化するのを許した.
しかし,最近の,シリア化学兵器をめぐるロシアとの協力とは何なのか? オバマ外交の原則がわからなくなっている.新しい秩序とは,要するに,秩序が失われることなのか? まだ3年もあるのに,オバマ政権の外交には世界が不安を感じている.
theguardian.com, Friday 18 October 2013
Asia
is a terrible model for elderly care, Jeremy Hunt
Hans Schattle
l アメリカ共和党の戦略
FT October 18, 2013
To win again, the Republicans must be a party of hope
By James Baker
共和党(GOP)はどうなるのか? 分裂する? 上院を支配できるのか? 2016年の大統領選挙は?
大統領選挙で負けた政党は,無能で,手におえない,失望感に苦しむ.しかし袈ならず,その同じ政党が深い内省の末に,復活するのだ.また,政党にはさまざまな利害集団が含まれている.それゆえ常に,内部闘争が激しい.しかし,政党の多様性は弱さを意味せず,強さなのだ.ティーパーティーの選挙における強さは明白であり,同時に,党主流派も欠かせない.統一するときに勝利し,分裂するときは敗れる.
ACA(オバマケア)の排除を政府閉鎖や債務上限と結びつけるのは愚策である.なぜなら民主党が上院と大統領を押さえているからだ.ACA批判は続けるべきだし,大きな政府が示す,機能しない最悪のケースである.法律を決めるには選挙で勝つことだ.
大統領は予算に関する議論に応じると述べている.彼は国を指導する立場にあるから,民主党の利益を守るだけではない.
共和党が優勢を示したのは,希望,機械,楽観を示すときであり,怒りや怨嗟を示すときではなかった.共和党の焦点は,小さな,効率的な,実効性のある政府を目指すことだ.知性的な,コストを抑える解決策を示さねばならない.
また共和党は,人口の変化を考慮し,有権者が望むことを意識しなければならない.もっとヒスパニックやアジア系の国民に,共和党の理想,経済的保守主義,個人の自由,勤勉,信仰,家族的な価値に対する支持を訴えるべきだ.そして,都市の問題にも取り組み,安全保障を重視するが,戦争の好きな政党ではない,と示すべきだ.
政治と政策の現実に依拠し,破滅的な戦略を捨てるべきだ.
FT October 20, 2013
It
is stupid to believe that the Tea Party has no brain
By Edward Luce
l 中国経済の悲観と楽観
FT October 18, 2013
China’s
growth prospects: bulls and bears
Yukon Huang
中国経済には強気と弱気とが交錯している.直ちに崩壊を予測する者は間違っているが,強気や弱気には理由がある.マクロ不均衡は,直ちに消費の割合を高める転換を強いるわけではないが,以前,アジアの虎と呼ばれた諸国が経験したような,生産性を上昇させる改革は欠かせない.不良債権の処理や労働力供給の減少,貿易黒字の減少は,改革を不可能ではないが難しくする.
政府の示した転換に多くの関心が集まっている.そして改革が進むことは,一時的には不均衡を拡大する影響を生むだろう.それ故,将来の予測は分かれる.
The Observer, Sunday 20 October 2013
George
Osborne in China – wide-eyed, innocent and deeply ignorant
Will Hutton
イギリスは投資に対して開かれた国である.しかし,自分たちと全く異なる価値観,実践,利害を示す国に,安全保障や経済的利益を売るのは,開かれた姿勢ではなく,無思慮である.オズボーン蔵相は,先週,北京で可愛がられたが,中国の森に潜む脅威には無頓着であった.
中国の原子力産業がイギリスに原発を建て,所有することに合意した.かつてサッチャー夫人は電力産業を民営化したとき,私が民衆にパワー(権力と電力の意味を持つ)を与えた,と自慢した.しかし30年後,それが中国共産党に与えられたことを知ったら驚くだろう.
中国の国有企業が,その非効率やレーニン主義的な意思決定を原発産業に持ち込めば,福島やスリー・マイル,チェルノブイリを経験した世界に何が起きるだろうか? 無邪気なオズボーンは,市場がそれを許すはずはない,と信じているのかもしれない.
People's Dailyが書いたように,英中合意が実現した背景には,イギリス政府がチベットに関して間違い(中国の主権を支持しなかった)を認めたことがあった.チベットには2009年以降も100人以上の僧侶たちが焼身自殺によって中国の支配に抗議しているのに.イギリスの譲歩・恥辱は明白だ.
1世代に及ぶ経済運営の失敗が,原則を無視する物乞いの国に堕落させた.あなたはどうか知らないが,私は恥ずかしい.
FT October 20, 2013
China:
A place to call home
By Simon Rabinovitch
FT October 22, 2013
China:
Foreign values
By Paul J Davies
FP OCTOBER 22, 2013
How
to Say 'Truthiness' in Chinese
BY DAVID WERTIME
「政府による噂・流言」guanyaoは,政府の検閲に抗議するインターネット利用者との戦いで,強力な武器になっている.政府は「インターネット流言監視」を強めている.
NYT October 22, 2013
The
Shanghai Secret
By THOMAS L. FRIEDMAN
中国に行くたび,その将来に関する非常に多くの異なった意見を聞く.将来に対して強気の見方をするものは,30年間のインフラと教育に対する投資がこれから実を結ぶ,と考えている.あなたがその証拠を観たいなら,上海の小学校を訪ねればよい.
上海の中学校は2009年のPISA(Program for International Student Assessment)で,数学,化学,読書の上位を独占した.その成功には何の秘密もない.教師の訓練,相互学習,不断に専門知識を増し,親たちにも子供の教育を真剣に取り組ませた.
教師たちは,仲間から学び,個人的な訓練を欠かさない.最も困難なクラスから,最も優れた教師たちが育っている.
FT October 23, 2013
China
and India agree border pact
By Victor Mallet in New Delhi and Jamil Anderlini in Beijing
NYT October 24, 2013
Tibetan
Monks Describe a Web of Unseen Controls
By DAN LEVIN
FT October 24, 2013
China
conjures up new ‘bad bank’ magic trick
By Henny Sender
中国の不良債権問題は,過去にそうであったように,新しい公的機関が引き継ぐことで,次第に社会化されるだろう.その費用は1兆元とも4兆元とも言われている.中国政府は人民元の国際化を目指しており,また,地方政府による銀行の監督権を弱めることを狙っている.
l サウジアラビアの憂鬱
NYT October 18, 2013
Down
With The King?
By CHRISTOPHER M. DAVIDSON
この夏,サウジの憂鬱はインターネットを満たした.不平等,貧困,汚職,失業.
多くの専門家は湾岸諸国がアラブの春を避けて生き残る,と信じている.他のアラブ諸国と全く違うからだ.しかし,根本的な部分で違いはない.彼らは要するに産油国だから,時間を買う資金を持っているだけだ.それも最後には尽きる.
王族たちは,リビアのカダフィやエジプトのムバラクが味わった運命には直面しないだろう.サウジアラビアは湾岸の6王国の首領である.その国内の安定性は地域を支えている.特に,この地域の時代錯誤の体制に多くの関心が集まるようになってから.80歳代の老人であるAbdullah bin Abdulaziz al-Saudは,反政府の抗議に対して補助金を与え,政府雇用を増やし,場稀代な政府支出策を発表して,ひたすら買収している.今のところ,人々が街頭デモに出るのを抑える最も効果的な手段はこれなのだ.
それは王家への支持ではない.それはアラブ世界全域に広がる民衆の不満,彼らの怒りが自国に及ぶことを恐れているだけだ.しかし,財政への負担は急増しており,石油価格の引き上げや将来の財政破たんが懸念されるに至っている.
石油の高価格に依存するバーレーンやオマーン,クウェートのような小国は,こうした買収による回避策が尽きて,弾圧を強めるしかない.その犠牲者は急速に増加している.ますますリヤドの属国になっている小国バーレーンは,パキスタンやヨルダンから傭兵を入れて,サウジアラビアやアラブ首長国連邦からの軍事介入を歓迎している.多数がシーア派の住民たちは,スンニ派の王にもはや従わない.
弾圧策による時間稼ぎにも限界がある.それ以上に,政治的な正統性が大きく損なわれていく.政治意識の高い,情報ネットワークに優れた若者たちが民主化を主張し,抑圧的なエリートに代わる日は近いだろう.
FT October 21, 2013
Saudi
Arabia pique will not help it change UN policy
By Roula Khalaf, Foreign Editor
FT October 21, 2013
Saudi
Arabia’s missed opportunity
By Ian Bremmer and Vuk Jeremic
木曜日,サウジアラビアは国連安全保障理事会UNSCの理事国に初めて選ばれた.しかし,サウジアラビアは安保理理事国になることを拒否する最初の国になって,外交官たちを驚かせた.
中東和平に失敗し,核拡散を防げない,とUNSCを批判しただけでなく,シリアの現体制が化学兵器を使用しても傍観していた,と批判し,国連改革がなければ受け入れられないと主張したのだ.
サウジアラビアが表舞台の外交を好まないのは理解できる.イランの核開発に関するUNSCの投票に参加したくないだろう.しかし,以前から外交的な働きかけを行って得た理事国への道を,このように打ち切るのは混乱した印象を与える.そのように関心を集めた,というのは理解しがたい.
UNSCの抱える多くの問題点は明らかであり,その改革を求めるのも当然だ.同時に,国連だけが我々の手にするグローバルな機関である,というのも事実だ.リヤドがUNSCの中東問題に対する無為を批判したいなら,その理事国として批判し,行動するべきだった.
しかも,UNSCの常任理事国が持つ拒否権を翻す手段はある.国連総会を経る決議と,第11条による勧告である.それはUNSCよりはるかに困難であるが,オープンな形でUNSCの決定を議論できる.国連の枠組みにあるこうした改革の余地を生かすべきだ.
FP OCTOBER 22, 2013
'This
Is Not How a Protection Racket Is Supposed to Work'
BY COLUM LYNCH
FT October 24, 2013
Unwise Saudi snub
l Mikhail Khodorkovskyの10年
FP OCTOBER 18, 2013
The
Race War in Russia's Capital
BY ANNA NEMTSOVA
NYT October 22, 2013
Russia
Putting a Strong Arm on Neighbors
By DAVID M. HERSZENHORN
FT October 24, 2013
One
day in the life of Mikhail Khodorkovsky
By Neil Buckley
私がKhodorkovskyに最後のインタビューをしたのは2008年2月であった.彼はモスクワから3800マイル離れたシベリアの町Chitaにいた.Khodorkovskyはダヴォスの世界経済フォーラムにいつも参加し,ホワイトハウスも訪問した.Forbesはその資産を150億ドルと推定した.しかし,今,彼は事実上の政治犯として,詐欺と脱税の罪で8年間服役している.Yukosの経営者と最大の株主であったが,Yukosは売却された.ロシア人が皆知っているように,彼の本当の罪は,プーチンに敵対したことだ.その結果,19世紀の革命家たちと同様,シベリアに追放された.
Khodorkovskyは,単に石油を売るだけで富を得るのが真の豊かさではないと知った最初のオリガークであった.西側のガバナンスを取り入れて株価を引き上げた.彼はまた,1世紀前のアメリカの泥棒貴族と同じく,慈善事業を行い,非営利活動の団体Open Russia Foundationを設立して教育に投資した.
NYT October 24, 2013
Ten
Years a Prisoner
By MIKHAIL KHODORKOVSKY
物や住宅の価格がこれほど高いのは,国家独占,汚職,行政の非効率があるからだ.権力の執念深さと,たった一人の人物に過度に権力を集中させているからだ.
多くの有能な人材がこの国を去っていく.わずか10年で200万人以上が去った.2008年に始まった資本逃避は3500億ドルに達して,今も続いている.300万人の企業家が告発された.
これこそロシアに技術革新がほとんどなく,アメリカどころか,今では中国にも遅れている理由である.凍りつき,固まった社会は,若者たちに何の希望も与えない.
変化するか,滅亡するか? 何千年も,われわれの歴史は文明に選択を迫ってきた.
(後半へ続く)