(前半から続く)
l 「国民国家」後の世界
NYT October 12, 2013
The
End of the Nation-State?
By PARAG KHANNA
最新のアメリカ国家インテリジェンス会議の報告は『もう一つの世界』である.これから1世代で世界が変化するシナリオを示している.
“Nonstate World”は,都市化,技術変化,資本蓄積が政府の改革努力を完全に放棄させて,それを外部の集団に外注し始めた世界である.その集団は彼らの法律の下で飛び地を運営する.
その世界は2030年ではなく,2010年にも存在した.人々が知らないだけである.国民国家は消滅したのではなく,多くのガバナンスの中の一つでしかなくなった.
世界を見渡せば成長や革新を生む,非常に成功した,政府・民間の混合物,国内と国外の融合地点に,さまざまな「準国家」が存在する.それは,いわゆる,「経済特区“special economic zones”」である.アフリカ,中東,アジアに,近年,多くの特区が誕生したが,その起源は中国の深圳Shenzhenであった.今,それらは世界第2の中国経済全体を覆っている.
アラブ世界にも300以上の特区があるけれど,その半分以上が一つの都市に集まっている.ドバイだ.Jebel Ali Free Zoneから始まり,今や世界最大,世界最効率の空港,さらに金融,メディア,教育,医療,ロジスティクスにまで及んでいる.
複雑な領土や法律,商業的管理の重層した世界は,権限移譲,という第2の流れを生んだ.急速な都市化は,各都市が権限を中央政府から移譲される.ニューヨークはアメリカ政治経済の一部であるというより,アメリカがニューヨークの成長に依存しているのだ.主要都市は,ますます財政や政策の権限を拡大している.中国もそうだ.革新的な諸都市の成長に北京は依存している.
こうして国家の枠を超えて進む急速な都市化を考えるなら,彼らは政府を経由せずに,直接,財やサービスのアクセスを改善し,貧困を減らし,成長を刺激し,生活の質を改善する.国際紛争が減って,ますます多くの国が道路,鉄道,パイプライン,橋,インターネット・ケーブルを建設している.そこに現れる都市センターは,貿易,投資,雇用において相互に依存している.
東アフリカ共同体(Burundi, Kenya, Rwanda, Tanzania and Uganda)は,中国が建設するインフラを梃子に,政治的境界を飛び越えて,アフリカのEUを建設する.そして,どこよりも中東地域が,こうした「国家」に依存しない発展を必要としている.各地がシルクロードによって結びつくことなしに,この地域の栄光は回復しない.
世界はますます分裂し,分割されるが,その繁栄のカギは近隣諸地域の超国家的な安定性である.
NYT October 14, 2013
In
Northern Iraq, a Thriving Economy and a Changing Landscape
By MICHAEL T. LUONGO
l 中国と世界
2013-10-12 (China Daily)
China-Thailand ties to turn strategic
By Kavi Chongkittavorn
The Guardian, Monday 14 October 2013
Forced
student labour is central to the Chinese economic miracle
Aditya Chakrabortty
イギリス蔵相George Osborneやロンドン市長Boris Johnsonは上海やシンセンを訪問するのに忙しい.しかし,中国の成長に魅了される前に,中国の巨大工場で働く10代の生徒たちが経験していることに目を向けるべきだ.
FT October 15, 2013
Chancellor
George Osborne cements London as renminbi hub
By Lucy Hornby in Beijing and Patrick Jenkins in London
FT October 15, 2013
Beijing
should cut back its lending to Washington
By David Li
中国政府はドルからの資産分散を図るように説明していたが,実際には,その集中を進めてきた.政府は米中関係をその言い訳にするが,財務省証券に代わる金融資産がない,というのは間違いだ.容易ではないが,財務省証券の半分を売って,3つの方法で分散できる.
1.多国籍企業の株式を買う.2.アメリカ以外の政府債券を買う.3.主要経済圏の公共機関の債券を買う.
FT October 15, 2013
Homely
lessons from a Tiger Mum
By Patti Waldmeir in Shanghai
FT October 15, 2013
Concern
grows at Chinese companies’ bad debts
By Henny Sender
NYT October 15, 2013
Busting
China’s Bloggers
By MURONG XUECUN
友人たちとの会話でしばしば話題になるのは,「次に逮捕されるのはだれか?」 である.中国の変化に向けて,犠牲を払う人々がいる.
FP October 15, 2013
Meet
China's Beverly Hillbillies
BY RACHEL LU
誰もが友人になりたいが,誰も彼らを好いていない.それは中国版のビバリー・ヒルズ族the tuhao(土豪):the Beverly Hillbillies of China,すなわち,新富裕層である.
Tuhaoはかつて裕福な地主を意味した.しかし,最近,この言葉が甦ったのは,9月の初めにソーシャル・メディアでジョークが流行ったからだ.
・・・若い男が禅の師匠に尋ねた.「私は豊かだが,幸せではない.何をなすべきですか?」 師は応える.「<富>とは何か?」 若い男は答える.「私は銀行に数百万元を持ち,北京の中心部にアパートを3つ持っている.それが<富>でしょうか?」 師は,静かに,片手を差し出す.若い男の閃きが刺激された.「禅師様,私は感謝します.それを社会に還元するのですね?」 師は言う.「違う… 私は,あなたの友人になりたい.」
習近平は,主席就任後,共産党内の腐敗を糾弾し,土豪tuhaoの悪名高い高額商品を身に着けている役人たちを取り締まった.しかし,同時に,彼らの生活は社会に認められ,彼らに取り入ることで利益が広まっている.その象徴的な出来事は,9月20日,Appleが黄金製のiPhone 5s smartphoneを発売したことだ.
FT October 16, 2013
Hong
Kong stands firm behind US dollar peg on 30th anniversary
By Demetri Sevastopulo and Josh Noble in Hong Kong and Ben Bland in Jakarta
FT October 16, 2013
China
may be in much better shape than it looks
By David Pilling
FT October 16, 2013
China
bases nuclear growth hopes on co-operation
By Lucy Hornby in Beijing and Guy Chazan in London
2013-10-16 (China Daily)
A step toward RMB internationalization
By Bob Gay
The Guardian, Thursday 17 October 2013
What
does China want with Britain's nuclear industry?
Isabel Hilton
民主的なヨーロッパに対してもイギリスの国家主権を守ることに熱心なオズボーン蔵相が,イギリスの死活的なインフラである原子力産業に中国からの投資を手放しで熱望する姿は,まさに衝撃的である.
FT October 17, 2013
A
globalised renminbi can transform both China and London
By Danny Quah
l ヨーロッパの苦悩
FT October 13, 2013
Blame
Europe’s policy makers for lost growth
By Wolfgang Münchau
FT October 13, 2013
Ireland:
Back on the market
By Jamie Smyth
FT October 14, 2013
Even
now, Ireland is sticking with the devils it knows
By Peter Cunningham
FT October 15, 2013
Europe:
United by hostility
By Joshua Chaffin
VOX 15 October 2013
The
IMF and the legacy of the euro crisis
Susan Schadler
ギリシャ,アイルランド,ポルトガルへのIMF融資は,以前の原則を変更するものであった.その姿勢を変えない限り,次の危機はさらに大きな失敗をもたらすだろう.IMFは融資条件として借り入れ国が債務を維持可能な水準に戻す確実な合意を得ないまま,EU・ECBとのトロイカ融資に加わった.これはIMFの危機救済における役割について,重大な原則の変更を意味している.
FT October 16, 2013
There
is no quick fix for extremism in Athens
By Yorgos Kaminis
FT October 16, 2013
The price of the ECB doing nothing
l 富とパワーの集中
NYT October 13, 2013
Inequality
Is a Choice
By JOSEPH E. STIGLITZ
豊かな諸国で所得と富の不平等が拡大している.特にアメリカでは大不況以来,さらに拡大した.他の世界ではどうか? インドや中国でも不平等は拡大しているのか?
世界銀行のエコノミスト,Branko Milanovicはこの点に関する研究を発表した.豊かな者と貧しい者との差は第2次世界大戦後からずっと拡大し,国家間の不平等は国内の不平等よりもはるかに大きい.
1980年代後半に共産主義体制が崩壊し,その後,グローバリゼーションが進む中で国家間の差が縮小した.中国やインドの成長で,国単位での世界所得格差は過去数十年間縮小したが,個人の人間的な不平等はほとんど縮小しなかった.
アメリカにおける不平等は西側世界全体に見られるようになった.過去10年で,伝統的に平等であった諸国でも不平等が現れている.(企業重役の報酬を抑制している日本は例外である.) トップ10%は所得を増やし,ボトム10%は所得を減らしている.
しかし,同じ期間に,チリ,メキシコ,ギリシャ,トルコ,ハンガリーは不平等を大きく減らしている.不平等は単にマクロ経済の諸力の結果ではなく,政治の産物である.不平等がグローバリゼーションの,資本や労働力,財,サービスの移動の,また技術変化の不可避の結果であるというのは間違いだ.
ヨーロッパはアメリカの悪い例に導かれてきた.過度の金融化,企業ガバナンスの欠如,社会的結束の侵食,などのせいで,企業の幹部と一般労働者との報酬とは大きく隔たっている.レント・シーキングにおけるアメリカのイノベーション,すなわち,経済のパイを大きくするのではなく,システムを操作してより大きな分け前を得る,というのは世界的に行われるようになった.賃金や労働条件の切り下げもAppleが開発し,移動性を高める資本が労働者に強制した.
アメリカで4人に1人の子供たちが貧困に苦しむのは,右派が考えるような,「怠惰と愚かな選択の結果」ではない.スペイン,ギリシャでも6人に1人,オーストラリア,イギリス,カナダでは10人に1人である.半世紀前,韓国の大学卒業者は10人に1人であった.今では世界最高水準である.
貧困を減らし,繁栄を共有するために行動する国もある.不平等を放置すれば社会は分裂して,ゲーティッド・コミュニティーに住む富裕層は貧困層と完全に隔離され,互いを理解できなくなる.
Project Syndicate 14 October 2013
Civilizing
the Marketplace of Ideas
Niall Ferguson
Paul Krugmanは,インターネット上で影響力を高め,若い,リベラルな研究者たちを支配している.Krugmanと私は,財政・金融政策に関して1999年から論争しているが,彼の影響力の行使に懸念を深めている.
Krugmanは,彼の経済コラムはすべて正しかった,と繰り返し述べているが,それは間違いだ.たとえば,2006年に住宅バブルが危機を拡大しない,と考えていた.アメリカの金融危機を予測しそこなった後,ヨーロッパの通貨同盟が解体する,と繰り返して予告した.しかし,彼はこうした間違いを認めない.
第2に,Krugmanは,大規模な財政刺激策でアメリカの景気回復を実現できるというが,そのマクロ・モデルは信頼できないものだ.第3に,Krugmanは,彼に同意しない者を個人攻撃する.しかも,文明的な論争で決して使ってはならないような言葉,「ゴキブリ」,「妄想」,「間抜け」,「ゾンビ」,などと攻撃する.
知識の世界にも「独占禁止法」が必要だ.Krugmanは,経済のアイデアを不当に独占して,自由な意見交換を妨げている.
l 人種差別政治
theguardian.com, Monday 14 October 2013
Russian
nationalists feed the fires of Moscow's race riots
Natalia Antonova
FT October 14, 2013
Time
to stand up to Marine Le Pen
l ノーベル経済学賞
FT October 14, 2013
Why
the efficient markets hypothesis merited a Nobel
By Tim Harford
ノーベル経済学賞は,古くからのジョークが言うように,意見の対立する二人に賞を与える.かつて,ハイエクとミュルダールに同時に賞を与えた.今年は,市場が不合理になることを示したRobert Shillerと,合理的市場仮説を広めたEugene Famaである.
金融危機がShillerの主張に重要性を認めるのはもちろんだが,Famaの考えるような効率的市場を投資家の多くが真剣に考えていたら,バブルも起きなかっただろう.
NYT October 14, 2013
3
American Professors Awarded Nobel in Economic Science
By BINYAMIN APPELBAUM
FT October 15, 2013
The
Nobel committee is muddled on the nature of economics
By John Kay
BLOOMBERG Oct 16, 2013
Nobel
Needs Grounding in Reality-Based Economics
By Roger Lowenstein
SPIEGEL ONLINE 10/14/2013
Asylum
Crisis
How
Many Refugees Can Germany Handle?
By Jürgen Dahlkamp and Maximilian Popp
l 新興市場の成長は続く
Project Syndicate 14 October 2013
The
Still-Emerging Markets
Richard Cooper, Jaana Remes
新興市場の株価が下落し,この数十年に及ぶ成長は終わったという主張があふれている.しかし,工業化と都市化の波は止まっていない.特に,こうした諸国の成長が,ますますパワーを持つ,ダイナミックな企業によって実現していることを知るべきだ.
新興のデータベース企業,MGI CompanyScopeによれば,世界的規模で活躍する8000に企業に関して,まだ4分の3は発展した地域に依拠している.しかし,2025年までに,7000の企業が追加され,そのうちの10社に7社は新興市場に依拠しているだろう.
フォーチュン誌の企業番付,Fortune Global 500もそれを示している.新興市場の企業が占める割合は,1980-2000年には常に5%であったが,2013年には26%に増大し,2025年までに39%か,もっと強気の予測では50%にまで達する.
急速に成長する市場が企業の世界的な競争力を与えるのは,大きく異なる所得水準の中で成長すること,さらに,インフラの不足に対応する能力があるからだろう.2001年,世界の直接投資FDIのわずか5%がOECD諸国以外の国から行われた.2011年に21%へと増大している.中国のFDIは2004-2010年に,年50%で伸びた.
新興市場から生まれる多国籍企業は,その収益を世界中で上げるだろう.本国の不況は,ますます外国での拡大を刺激し,世界が彼らの舞台になる.
l 世界不況は回避できたか?
VOX 14 October 2013
Exit
strategies: Time to think ahead
Charles Wyplosz
VOX 14 October 2013
Help-to-Buy:
More beneficial than the market thinks
Charles A.E. Goodhart, Melanie Baker
バブルの破裂がもたらしたデフレ圧力から脱出するには,住宅市場に公的な支援を与えることが有効である.反対意見は,こうした政策の供給面に対する影響はない,という.しかし,金融機関は規制の強化や将来への悲観によって住宅融資を減らし,住宅市場は供給過剰になっている.住宅建設の回復は消費と連動し,景気に大きく影響する.
マクロ・プルーデンシャルを高める手段として,住宅市場への公的支援策が採用されるべきだ.
FT October 15, 2013
It’s
time to face up to the crises that are yet to come
By Pascal Lamy
金融危機だけでなく,気候変動,不平等化,疫病,など,将来の様々な危機に対処しておくべきである.サイバー攻撃もその一つだ.
FT October 15, 2013
The
artificial fuel for growth cannot last forever
Mohamed El-Erian
FT October 17, 2013
A
moderate outlook with the chance of a new crisis
By Samuel Brittan
かつてIMFといえば,政府に予算赤字削減を説き,インフレを抑える金融政策を求め,組合には賃金の引き上げ要求を緩和するよう訴えた.
今は違う.IMFが出した最新のWorld Economic Outlookを観れば,世界が緊縮しすぎていることを恐れている.金融も財政も引き締め過ぎで,消費は抑えられ,失業率はあまりにも高い.インフレの脅威を懸念しすぎだ,と.
最終章のタイトルは,「資本移動の陰陽管理“The Yin and Yang of Capital Flow Management”」となっている.
すべては,ケインズの『雇用,利子,および貨幣の一般理論』(1936年)を現代化するための試みだ.ケインズは資本主義システムが資源を効率的に配分することをおおむね認めていたが,完全雇用を実現するには累積的なインフレを生じるという問題があった.残念ながら,その時代には,単一の国民経済が論じられていた.今はそれを世界経済に関して議論する必要がある.
NYT October 14, 2013
The
Middle East Pendulum
By ROGER COHEN
FP October 16, 2013
The
End of OPEC
BY AMY MYERS JAFFE, ED MORSE
FP October 16, 2013
U.S.
Political Dysfunction and the Trans-Pacific Partnership Trade Agreement
Posted By Phil Levy
l 環境破壊のコスト
Project Syndicate 16 October 2013
A
Better World Is Here
Bjørn Lomborg
何世紀にもわたって,悲観論者と楽観論者は論争してきた.悲観論者は,人口が増えると食糧が不足し,資源の枯渇,戦争が起きる,という.最近では,生産力を高めると環境破壊と温暖化を招く.他方,楽観論者はすべてが改善しているという.健康状態,生活水準,環境の改善.市場が何でも解決できると信じる,「豊饒さ」のエコノミストとも呼ばれる.
世界が改善しているのか,悪化しているのか,多くの分野で比較すべきである.世界のトップ・エコノミストたち21人とともに私は150年間,10の分野(health, education, war, gender, air pollution, climate change, and biodiversityなど)を考察した.エコノミストたちは同じ質問に答えた.「この問題の相対的コストを,1900年から2013年まで,そして2050年まで,年々で予測した場合,それはどう変化したか?」
問題の規模を推定するのに,利用可能な資源の全体と比べる.それをGDPのシェアで示す.例えば,ジェンダーの不平等に関して,1900年,女性は労働力の15%だけだった.その損失は世界GDPの少なくとも17%である.今日,女性の労働力参加は高まり,賃金格差は減少したので,損失が7%に減り,2050年の予測では4%である.
最も驚くのは気候変動であろう.1900年から2025年まで,気候変動はGDPの1.5%という利益を毎年もたらす.地球温暖化は複合的な効果を生み,この期間は,温暖な気候のもたらす利益が勝るからだ.例えば,CO2は農業にとっての化学肥料である(+0.8).クーラーのコストが増えるより,ヒーターのコストが減る方が優勢だ(+0.4).水不足や湿原の損失は,規模としては小さい(-0.2,-0.1).
しかし,温暖化が進めばコストが急速に増える.2070年以後はコストが上回るだろう.だから,今からコストを考慮した効率的な対策が必要だ.
健康状態の改善は最も顕著であり,それには理由がある.The Gates Foundation and the GAVI Alliance,the Rotary Club, the World Health Organizationなど,世界にワクチンを普及させるために資金提供したからだ.
Project Syndicate 17 October 2013
Global
Warming and Global Security
Muniruzzaman Khan
グローバルな安全保障の集まりでは,「国際社会」がしばしば語られる.気候変動は究極のグローバルな課題であり,グローバルな解決しかないからだ.
FT October 17, 2013
Falling
apart: America and Europe go their own way
By Philip Stephens
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The Economist October 5th 2013
No way to run a country
Ukraine and the European Union: West or
east?
Nicaragua’s proposed canal: A man, a
plan - and little else
Free exchange: Hot air
Making banks safe: Calling to accounts
(コメント) ガバナンスを正常化するには,世論が政党の支持率を変化させて戦略を変えるように求めるべきだ.それを阻止してしまうような選挙区の勝手な変更をやめさせる.それに似た政治的衝突を,ウクライナの貿易協定に関するEUとロシアが示していて,興味深いです.
中国人投資家が現れ,本当にパナマ運河に代わる新しい運河を,ニカラグアに建設できるのか? 気候変動の評価モデルが信頼できないことにも驚きます.
金融危機の教訓に関する最終回.銀行を安全にするには巨大銀行を分割する?
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IPEの想像力 10/21/13
政府閉鎖,デフォルト,統治不能が世界中に広まる気配です.しかし,それにもかかわらず,各地でガバナンスは革新され,成長を続けます.
1. アメリカが統治不能であるのは,大統領と議会が交渉によって妥協する政治過程が壊れたからです.その理由として,イデオロギーの両極化,選挙区の変更が既存の政治家によって行われること,さらに,インターネットで有権者に直接話しかけ,宣伝ビデオを流し,少額の選挙資金を大規模に集められる時代に,旧来の政党組織が機能しなくなったこと,をFareed Zakaria,Moises Naimは指摘します.
2.
選挙を通じて利益を得るには,組織された投票が重要です.高齢者,ウォール街,労働組合,などはこれに優れており,若者たちや,まだ生まれていない将来世代は最も損をする,とTHOMAS L. FRIEDMANは指摘します.日本について,Gideon Rachmanも同様の感想を述べています.
3.
アフリカでガバナンスを改善するには,優れた指導者を育てることも重要です.DESMOND TUTUは,国際刑事裁判所によって,指導者が国際法廷で罰せられること,Jeffrey Frankelは,指導者が賞賛され,引退後の生活を保障されること,に期待します.
4.
日本のガバナンスを改革するには,孫正義や三木谷浩史のような革新的企業家が億万長者になり,賞賛される社会になることをWilliam
Pesekは求めます.
5. 国際通貨のガバナンスをめぐって,José Antonio Ocampoはドルに代わるSDRの発行と普及を求め,為替レート安定化も支持します.Stephen Kingは,アメリカの国内政治を正気に戻すためにも,国際通貨の代替を示し,ドルの特権を奪う必要に言及します.
6.
後発工業化は,単に加速するだけでなく,工業化の経済に占める割合が低いまま,次のサービス化に移ってしまう,とDani Rodrikは懸念します.それは,工業化にともなう社会・政治・組織の変化を実現できないまま,何か,不安定な,異なる社会モデルを生み出します.
7.
「国民国家」の衰退は重要ではなく,むしろ成長をもたらすのは都市であり,<経済特区>である,とPARAG KHANNAは考えます.優れたインフラによって結びつくダイナミックな都市や地域は,ますます国家から権限を奪うのです.
8.
中国の共産党や国営企業のエリートたちが前提する成長モデルは,RACHEL LUが指摘する新富裕層の影響によって,根底から変化してしまうでしょう.かつて,Bill Emmott(『日はまた沈む』)や, Peter Tasker(『揺れ動く大国 日本』)が指摘した「日本」の富裕化・国際化を思い出します.
9. アメリカや,その間違ったモデルを信じた豊かな諸国の支配エリートと富裕層は,富と雇用を増やすより,<金融ビジネス>に有利な法律や制度を介して富の分配を変えることを学んだ,とJOSEPH E. STIGLITZは批判します.不平等の拡大はグローバリゼーションの不可避な事実ではなく,政治の産物だ,と「繁栄を共有する」政治を求めます.
10. 新興市場とは,国家によってではなく,都市化と工業化によって生まれたダイナミックな新興企業群のことである,とRichard Cooper, Jaana Remesは主張します.新興市場の成長や衰退が関心を集める以上に,新興企業群のグローバル化が重要です.
11. 資本主義システムが資源を効率的に配分する点で優れているとしても,その完全雇用を保障するものではない,とJ.M.ケインズは国民経済に関して考察しました.金融危機後の世界不況を回避する模索は,今も続いています.Samuel Brittanは一般理論の世界化を,Charles A.E. Goodhart, Melanie Bakerは,住宅融資への公的支援を求めます.
12. 環境破壊のコストと,それを抑制する政策のために利用できる資源が効率的に機能するには,リアリストの視点が必要だ,とBjørn Lomborgは訴えます.温暖化は利益とコストをもたらし,IPCCなど,予測モデルには深刻な限界があります.
もちろん,戦争が拡大すれば,全く異なった変化に向かうでしょう.しかし,平和な時代にも,むしろ,これほど変化するエネルギーを要するのだ,ということに感嘆します.
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