IPEの果樹園2013

今週のReview

10/21-/26

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アメリカ政府閉鎖と世界 ・・・アフリカの指導者を育てる ・・・日本は何を示すか? ・・・ティーパーティーと国際通貨制度 ・・・イラン核開発問題 ・・・早すぎる脱工業化 ・・・「国民国家」後の世界 ・・・中国と世界 ・・・富とパワーの集中 ・・・ノーベル経済学賞 ・・・新興市場の成長は続く ・・・世界不況は回避できたか? ・・・環境破壊のコスト

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  アメリカ政府閉鎖と世界

NYT October 10, 2013

Dealing With Default

By PAUL KRUGMAN

全面的なデフォルトよりも,優先順位を付けて債務を部分的に維持することができる,という主張に反対する.

WSJ October 10, 2013

A Crisis of the President's Own Making

By KIMBERLEY A. STRASSEL

The Guardian, Friday 11 October 2013

Who is responsible for the US shutdown? The same idiots responsible for the 2008 meltdown

Slavoj Žižek

WP October 11, 2013

A Republican Party no one could control

By Fareed Zakaria

ワシントンの混乱を説明するには,イデオロギーに目を向けることだろう.しかし,もう一つ長期的な変化が危機の原因として重要だ.共和党内の権威(秩序)が失われていることだ.

かつて共和党が政府閉鎖にまで進んだのは1995-96年に下院議長のNewt Gingrichが指導したからだ.しかし,今回,John Boehnerは危機を指導しているのではなく,妥協に反対する共和党内のティーパーティーを抑えられないからだ.オバマケア,予算,移民で妥協すれば,彼は地位を失う.

ティーパーティーは草の根の運動であり,長年にわたってアメリカの社会・文化・経済に起きた変化を嫌う人々が集まった政治運動だ.彼らは民主党も共和党も憎んでいる.例え共和党内に居ても,党への忠誠心はなく,内部の反乱軍である.こうした党内の規律の崩壊とイデオロギーが危機を拡大している.

共和党の伝統的支持基盤であったビジネス界は,この変化に気づくのが遅かった.他方,彼らは今も民主党を労働組合の利益を代弁する者と考える.しかし,今や,ティーパーティーはビジネス界の反対も無視する.ティーパーティーに支配された共和党員たちには,組織も,政策も,規律も,指導者ない.

この変化は1970年代に始まった.最近の技術や組織の変化はそれを加速している.政治のアウトサイダーが容易に資金集め,フリー・メディアへの浸透,有権者との直接的な関係を得られるからだ.こうした変化は各地に起きている,とMoises Naim, “The End of Power”は指摘する.

イデオロギーは交代するだろうが,権力の「衰微」は継続し,政治を変えてしまう.組織や指導が無ければ政府は機能せず,自治も不可能に近い.政治学者Clinton Rossiterはかつて宣言した.「民主主義の無いアメリカはあり得ない.政治の無い民主主義もあり得ない.政党の無い政治も,妥協と穏健派を欠いた政党も,あり得ないのだ.」

NYT October 12, 2013

From Summer Camp, a Parable for Washington

By N. GREGORY MANKIW

FT October 13, 2013

The sclerosis of America’s ‘non-essential’ government

By Edward Luce

FT October 13, 2013

The battle over the US budget is the wrong fight

By Lawrence Summers

医療保険制度の予算を力話しても,それはGDP比の0.015%を減らすにすぎない.もっとほかに赤字を減らすために協力できることがあるはずだ.

むしろアメリカ経済の成長を回復する方が重要だ.インフラに投資する必要があり,それは民間がインフラに投資するのを妨げる規制を減らすことで実現できる.教育や基礎科学研究にも投資する必要があり,天然ガスの供給を活かし,情報時代にふさわしい効果的な政策手段を開発することも必要だ.こうした分野で議会は協力できるだろう.

NYT October 13, 2013

The Dixiecrat Solution

By PAUL KRUGMAN

NYT October 14, 2013

Changing the Debt-Ceiling Game

By DAVID McADAMS

双方の信頼が欠けているとき,問題は解決できない.こうしたことは日常でも,ビジネスでもしばしば生じている.その解決は単純だ.互いが善意を持って相手に接することだ.

それができなとき,別の方法がある.自分の手を縛る,という合意だ.互いに,相手を害するような,相手を出し抜く行動を制限するのである.

財政的な保守主義者が合意するには,それを次の債務上限によるデフォルトによって脅迫するのではなく,債務上限を引き上げることと債務削減の目標とを結び付けるのである.

The Guardian, Tuesday 15 October 2013

Americans need to discover how the world sees them

Timothy Garton Ash

月曜日,コロンブス・デイの休日は,ワシントンのアメリカ政府庁舎の扉は閉じられていた.そして,休日でなくても政府閉鎖だ.コロンブスはアメリカを「発見」した.しかし,今は逆だ.アメリカが世界を発見しなければならない.世界がアメリカをどう見ているのか.

アメリカのパワーは,多くのアメリカ人が思う以上に,急速に失われている.IMFと世界銀行が警告し,オバマはAPECを欠席した.

Al-Jazeera, China's CCTV and Russia's RTを観れば,アメリカで経験を積んだ優れたジャーナリストたちが伝えている.RTは中国の政府メディアXinhuaのニュースを流した.脱アメリカ化世界への前進だ.

アメリカ人は,こんなニュースは非民主的な政府の意見でしかない,と思うだろう.誰がこんなニュースを信用するだろうか? 確かに,ヨーロッパや北米では,観る人も少ないし,信用もないだろう.しかし,アフリカやラテンアメリカ,アジアの一部では違う.メディアの国際競争でも,彼らは勝利しつつある.

アメリカの大手投資信託Fidelityが,すべてのアメリカ政府短期債券を売却した.アメリカがアフガニスタンやイラクで勝利した,と思う人は少ないだろう.最後の瞬間に,債務上限は合意に達したが,アメリカを政治的に信用できる,と世界は思わない.

公共心に富むアメリカの億万長者が,主要なTVチャネルとインターネット・ニュースを作って,アメリカを世界がどう見ているか,伝えてくれないだろうか? タイトルは,"Christopher Columbus!"

FT October 15, 2013

The debt-ceiling doomsday device

By Martin Wolf

余りにも危険な法律が存在していることもある.その一つが,アメリカ政府の債務上限だ.これはアメリカ自身に向けられた法的な原子爆弾に等しい.その破壊力はすべての世界に及ぶ.

なぜ債務上限はこれほど危険なのか? 一つは,憲法の危機を意味するからだ.大統領はトリレンマに苦しむ.債務上限を無視して借金すれば,議会の借入に関する権限を侵す.一方的に増税すれば,議会の課税権を侵す.一方的に支出を削減すれば,議会の支出に関する権限を侵す.

もう一つは,破滅的な仕方でしか回避できないからだ.債務に優先順位を付けて返済を継続する,という意見もある.しかし,優先順位を付けるのは難しいし,巨額の支払を選別できない.たとえ選別できても,一部デフォルトであり,アメリカの信用は損なわれ,金融システム全体が動揺する.

デフォルトを避けるために,アメリカ政府は支出を削減することもできるが,その方が破壊的でないとは言えない.GDP4.2%(乗数を考慮すれば約6%)の支出が削られる.自動安定化装置が壊れるのだ.GDP10%も減少して世界不況になるかもしれない.

政府が債務上限に従うなら,デフォルトか,不況か,を選択する.最も害の少ない方法は,上限を無視して,借入を続けることだ.オバマは法廷に訴えられるかもしれないが,それを強いたのは議会である.裁判所はどう判断するのか?

NYT October 15, 2013

Democracy After the Shutdown

By MICHAEL P. LYNCH

NYT October 15, 2013

Prospect of U.S. Default Keeps European Business on Edge

By JACK EWING

NYT October 15, 2013

Sorry, Kids. We Ate It All.

By THOMAS L. FRIEDMAN

交渉の結果は出た.高齢者,ウォール街,労働組合,すべて自分たちの意見を述べ,自分たちの利益を守った.一つの重要な変化は,課税,支出,給付をめぐる改革は,最も組織されない,長期的に最も影響を受ける者たちに,負担を押し付けることだ.それが若者たちである.

ミック・ジャガーのコンサートみたいに,サブプライムローン危機を予言した伝説の投資家Stan Druckenmillerが,しばしばその主要な出資者であるGeoffrey Canadathe president of the Harlem Children’s Zone)をともなって,各地の大学に若者たちを集めている.このままの税金,成長,防衛費,社会福祉が続けば,若者たちはどうなるか,を教えているのだ.

ベトナム戦争規模の若者たちの反乱が起きなければ,特集利益の集団が政治家を操るネットワークを破壊できない,と彼らは確信している.Druckenmillerは,若者自身が要求を示すべきだ,という.しかし,助言を求められれば,こう言うだろう.

キャピタル・ゲイン,配当,利子所得に増税して,所得税と等しくすること.これらは莫大な富を富裕層と高齢者に集中させているからだ.医療制度のもっと価格に応じた消費者の反応を取り入れること.年金や医療保険には資産チェックを行い,必要な者にだけ給付すること.給付資格の年齢を引き揚げ,法人税をゼロにして,雇用をもたらす者がもっと多くの資源を利用できること.

NYT October 16, 2013

The Republican Surrender

By THE EDITORIAL BOARD

theguardian.com, Thursday 17 October 2013

And so America's skewed democracy lurches on toward its next crisis

Gary Younge

The Guardian, Thursday 17 October 2013

The US shutdown crisis has shown us democracy red in tooth and claw

Simon Jenkins

theguardian.com, Thursday 17 October 2013

Washington's political chaos proves it's time for a de-Americanised world

Liu Chang for Xinhua, the official Chinese news agency

政治家たちがホワイトハウスと議会との間を右往左往するのを観るなら,アメリカ化されていない世界を築くことを考え始める好機である.

2次世界大戦の殺戮から世界最強国家として登場したアメリカは,それ以来,戦後の秩序を広め,ヨーロッパを復興し,ワシントンと敵対する体制を転覆して,世界帝国を築こうとしてきた.対抗するものがないように見えるアメリカの経済・軍事的パワーにより,世界中で自国の利益を主張し,自国からはるかに遠くの国や地域にまで介入するのが常習となっていた.

このパックス・アメリカーナthe Pax Americanaにおいて,われわれはアメリカが暴力と紛争の鎮静化,貧困や難民の減少,本当の,持続的な平和をもたらすと考えている.

しかしさらに,自分本位のワシントンは,責任ある指導的大国の義務を果たすことなく,超大国の地位を乱用し,世界に一層のカオスをもたらした.すなわち,金融リスクを海外に押し付け,地域的紛争や領土問題をこじらせ,虚偽の戦争を続けている.結局,世界はウォール街の貪欲なエリートたちが起こした災厄から抜け出そうともがき続け,独裁者から人々を解放したとワシントンが宣言した後も,イラクでは爆弾テロと殺害が日常茶飯事となっている.

最近では,予算案と債務上限の引き上げをめぐって周期的に超党派の合意が行き詰まり,多数の諸国のドル建資産を犠牲にして,国際社会を大いに苦しめた.他国の運命をこのように偽善的な国家の手に委ねる日々から学んで,新しい秩序に変えるべきである.大国も小国も,貧困国も富裕国も,すべての国が重要な利害を尊重され,平等な資格で保護されるような秩序に.

まず,全ての国が,主権の尊重,他国への不干渉を含めて,国際法を順守する.グローバルな紛争に関して国連の権威を認めねばならない.それは,国連の承認なしに,だれも軍事力を行使できない,という意味だ.

国際金融システムの改革では,もっと発展途上諸国や新興市場に大きな発言権を与えねばならない.こうして彼らの意見が国際的な政治・経済の改革に反映される.特に,アメリカ・ドルの地位に代わるため,新しい国際準備通貨を導入するべきだ.それはアメリカを排除するのではなく,アメリカ政治の混乱が波及するのを防ぐためである.また,アメリカが世界情勢にもっと建設的な役割を果たすよう促すだろう.

theguardian.com, Thursday 17 October 2013

Winners and losers in the shutdown and debt ceiling battle

Ana Marie Cox

FT October 17, 2013

GOP moderates need a political machine

By Jacob Weisberg

FT October 17, 2013

GOP self-harm – why we will be hearing more from Ted Cruz

By Edward Luce

これほど短期間で共和党の支持率を下げた政治的失敗は見当たらない.

しかし,何より重要なことは,今回の合意が小休止にすぎず,混乱は再開されるのか? という点だ.共和党のコーカスに占める投票結果は悪い方向を示している.共和党上院の18名(ほぼ40%),下院の144名(ほぼ3分の2)が,水曜日の法案に反対投票して,暗黙にデフォルトを支持したからだ.

また,この破滅的な戦術を指導したTed Cruzの支持は高まっている.議事妨害の最初の登壇者として人気を博し,今やティーパーティーが2016年の共和党大統領候補として彼の名を挙げている.

FT October 17, 2013

In place of peace, a Washington truce

WP October 17, 2013

Conservatism needs to lighten up

By Fareed Zakaria

FP OCTOBER 17, 2013

The Fire Next Time

BY ROBERT D. HORMATS

Project Syndicate 17 October 2013

In Praise of Debt Ceilings

Hans-Werner Sinn

現代の政府は本質的に巨大な再分配装置である.納税者から吸い上げた財源を公的支出によって受益者に与える.後者は常にもっとほしがり,前者は自分たちの財布を必死に守ろうとする.

この「再分配闘争」は,結局,より多くの政府債務に向かう.

負担が,現在の低税率もしくは高政府支出による受益者から,他の人々に移転できるなら,借り入れの魅力は抗しがたいものになる.例えば,それは子供の無い人々だ.彼らは政府支出によって利益を得るが,その債務を支払うのは自分ではなく,他の家族が育てる子孫である.

子供や孫たちの利益を考慮して親たちが政治過程に参加できなければ,債務中毒は治らない.それゆえ,ドイツ憲法はあらゆる債務を禁止している.また,EUにおける債務の共有化は,債務の限度を無視した国の負担を他国が支払うことになる.Emergency Liquidity Assistance loansは,不良債権で破たんした銀行を救済するためにアイルランド政府が必要な資金を,ECBが市場の金利以下の長期債券として400億ユーロを与えた.ギリシャへの融資もそうだ.

他方で,EUの「財政協定」に含まれる制裁メカニズムは無視されている.

アメリカの初期において,債務の共有化が借入れを増やす強い動機になった.初代財務長官ハミルトンAlexander Hamiltonが,1791年に,独立戦争による各州の債務を共有化したからだ.各州は運河の建設に多くの借入を行い,好況が信用バブルをもたらした.それは結局,1837年の金融パニックで終わる.当時のアメリカ26州のうち8州が破たんした.

それ以後は債務の共有化が支持されることはなく,奴隷制に関する論争もあって,アメリカは内戦に向かった.だから,アメリカ政府に債務上限があることを感謝するべきである.

Project Syndicate 17 October 2013

America the Reckless

Michael Spence


l  アフリカの指導者を育てる

NYT October 10, 2013

In Africa, Seeking a License to Kill

By DESMOND TUTU

アフリカ機構の加盟諸国がエチオピアのAddis Ababaに集まり,ICC(国際刑事裁判所)から離脱することが議論された.こうした要求は拒否されねばならない.アフリカは,あまりにも長い間,ICCが提供するような保護を得られなかったことで苦しんできたからだ.

裁判所を避ける指導者たちは,事実上,何の心配もなく,自国民を殺害し,手足を切り,拷問することのできるライセンスがほしいのだ.彼らは国民の利害が彼ら自身の富やパワーの追及を邪魔してはならないと信じている.ICCに説明を求められることは自分たちの利害に反し,彼らの邪魔をするものは,顔のない,声もない犠牲者になる.

裁判所がなければ最悪の犯罪者たちが強硬を繰り返し,暴力的な指導者がアフリカを蝕み続けるだろう.さらに,正義と秩序が再建されなければ,人々は癒されることも和解することもなく,暴力と憎しみの時限爆弾が各地で爆発するのを待っている.

いかなる国も過去の直面する以外にそれを正しく処理する道はない.これはアフリカと西側との闘いではない.アフリカの魂を求める,アフリカ自身の闘いだ.

Project Syndicate 15 October 2013

African Leaders’ Eyes on the Prize

Jeffrey Frankel

1014日,アフリカの優れた指導者に与えられる賞をthe Mo Ibrahim Prize Committeeが発表した.Mo Ibrahim財団はIbrahim Index of African Governance (IIAG)も発表している.受賞者には10年間で500万ドルが支払われ,その後も年間20万ドルを終生支払い続ける.

アフリカの多くの恐ろしい指導者が有名であるけれど,優れた指導者にももっと関心が集まるべきだ.2007年,2008年,2010年の受賞者たち(Presidents Joaquim Chissano of Mozambique, Festus Mogae of Botswana, and Pedro Verona Pires of Cape Verde)は,後の2者は,小国の優れたガバナンス,人的開発,経済パフォーマンスが,目立っている.

しかし,モザンビークはそうではない.大国で,歴史的にも1977-92年にひどい内戦があった.この20年か,政治・経済状態は大幅に改善されたが,今も開発は非常に遅れている.

優れた指導力を定義するのは難しい.その成果を観るべきか,あるは政策を観るべきか? 指導者がコントロールできない要因も多い.国内の反対は,クーデタの試み,侵略にさらされても優れた指導者は生き残るかもしれないが,干ばつや洪水,その他の自然災害に苦しむかもしれない.もちろん,いくつかのコントロールできる要素もある.

候補者リストは,民主的に選出され,この3年以内に法に従って退任した指導者が入る.

一方には,良い意図と高い能力を持って権力を得たが,その第1期に優れた成果を上げた後,再選を繰り返せるように憲法を改正し,選挙結果をねつ造し,反対派を弾圧する指導者がいる.他方には,法の定める任期を守って自ら退任する指導者もいる.しかし,その場合,退任後の生活は苦しく,権威や政治基盤も失い,時には後の指導者に告発される.Ibrahim Prizeは彼らを称え,守るのだ.

その成果は,アフリカの将来を変えることだ.


l  日本は何を示すか?

BLOOMBERG Oct 10, 2013

Japan Needs More Brawling Billionaires

By William Pesek

インターネット市場で最も成功した,裕福で,革新を指導する二人の経営者,孫正義と三木谷浩史にとって最も重要な役割は,日本人にとっての模範となることである.

二人には多くの共通点がある.ゲームのルールを変える技術を持った企業によって,自分の力で億万長者になった.ソフトバントと楽天の,それぞれの企業の大株主であり,英語に堪能で,アメリカの大学(Son at the University of California at Berkeley; Mikitani at Harvard University)に学んだ.海外のインターネット企業に迅速に投資し,スポーツ好きで野球チームを所有している.二人はまた,日本の財界の閉鎖的な体質を公然と批判している.原発に反対し,自民党や経団連の方針と対立している.

彼らの共有する変化への情熱は,日本がよみがえるために何より必要なものである.

最近,孫と三木谷はショッピング・ビジネスで公然と敵対している.楽天は日本最大のインターネット・ショッピング・モールだが,孫のYahoo Japanは手数料なしの小売サイトを開設した.Yahooは広告から収入の半分以上を得ているからだ.旧経営者の考える日本株式会社からは考えられないような挑戦だ.

アベノミクスとは何か? それが本当に意味のある改革なら,彼ら二人がそのエネルギーになる.

FT October 14, 2013

Japan offers an unsettling glimpse of all of our futures

By Gideon Rachman

日本がどうなるか,われわれは注目するべきだ.ヨーロッパも北米も,政策担当者たちは日本と同じ問題を抱えている.

寿命が延びて,出生率が低下した国では,人口が減少し高齢化する.どちらも日本の顕著な傾向だ.2010年から日本の人口が減少し始めている.推定では,現在の12700万人から2060年までに8670万人にまで減少する.65歳以上の高齢者が国民の40%になる.その結果,「介護ロボット」が成長産業だ.ロボットたちは高齢者のトイレを助け,あるいは,話し相手にもなる.

老人たちは投票において,若者に比べて,圧倒的な多数を占め,他のサービスを削ってでも年金の水準を維持するように求める.他方,若者たちはますます将来の高い税金と不安定な雇用に苦しむ.

逆に,アメリカで政府債務の上限を騒ぐ政治家たちは日本に来ればよい.GDPに対する債務比率が世界週末だと思うなら,日本の比率が230%で,しかも秩序ある,機能している日本の姿を見るべきだ.しかし,もちろん,日本は世界の金利水準に対して非常に脆弱になっている.今の超低金利でも,予算の25%は利子支払いに充てられる.

アベノミクスは,この債務を減らすための政策であり,その前からバブル破裂後の「ゾンビ銀行」を維持した政策に,20年後,根本的な転換を試みるものだ.さらに,安倍の過激さは中国の台頭を脅威と意識する国民によって支持されている.

日本の姿から単純な教訓を得るのは難しい.しかし,日本は社会的な調和を強調し,老人たちの雇用を守り,その代償として,若者たちの機会を奪っている.移民の受け入れに反対して,介護ロボットの開発に頼っている.

NYT October 14, 2013

Fukushima Politics

By THE EDITORIAL BOARD

FT October 15, 2013

Japan balancing act grows more precarious

By Ralph Atkins in Tokyo


l  ティーパーティーと国際通貨制度

FT October 11, 2013

US debt stand-off provokes ire among China’s officials

By Simon Rabinovitch in Shanghai

アメリカの瀬戸際政治は中国政府の真剣な憤慨を引き起こし,世界がドルに依存することの危険性を明白に示した.

「お前たちは政治闘争のために世界経済をハイジャックできない.それこそ無責任だ.」

短期的には中国政府の手は縛られている.13000億ドルのアメリカ財務省証券を売却することは,ドル建て資産の急激な下落を意味し,中国の外貨準備管理者が望むことではない.しかし,長期的には,ドル建資産からの分散化を進めるだろう.また中国は,人民元の国際化,国際通貨制度の改革を進める.

NYT October 15, 2013

Thinking the Unthinkable in the City of London

By DANNY HAKIM

Project Syndicate 16 October 2013

Revoking America’s Exorbitant Privilege

José Antonio Ocampo

アメリカにおける政治混乱は,国際通貨制度にとって2つの意味がある.第1に,世界の準備通貨であり,世界で「最も安全な」資産である財務省証券が,ますます深刻な不確実性に悩まされている,巨額の外貨準備として保有する中国や日本が警告するのは当然だ.

2に,IMF2010年に決めた分担金とガバナンスに関する改革がさらに遅れる.基金を倍増し,主要な新興諸国の投票権を増やす改革だ.しかし,重要な案件に実質的な拒否権を持っているアメリカが反対している.そのアメリカが示すデフォルトの脅威は,現在の国際通貨「ノン・システム」がグローバル化した世界にふさわしくないことを明確にした.

改革の第1の要素は,真に唯一の国際通貨であるIMFSDRをもっと活用することだ.IMFの条文に主要な準備資産として記されているが,実際は,そうなっていない.2009年に金融危機に応じて2500億ドルに相当するSDRが発行されたような,危機において発行されるだけである.

SDRをもっと弾力的に,中央銀行のように利用するよう条文を改訂すべきだ.そして,世界不況においては発行し,ブームにおいては吸収する.IMF融資の財源としてもSDRを基本にして,IMFSDRの預金と受取り,融資を行い,それ以外は各国の政府債券に投資する.G20ではなく,IMFがグローバルなマクロ経済政策の協調における手段となり,近年,EU内で起きているが,グローバルな不均衡を縮小させる.

改革の第2の要素は,グローバルな為替レート制度の管理を改善することだ.為替レートの「人為的操作」や,Kindlebergerが「国際特化への課税」と読んだ,為替レートの浮動性を減らす.また,特定の状況においては,資本移動の規制がIMFの「マクロ・プルーデンシャル」の視点からも支持される.

最後に,新興諸国や発展途上諸国により大きな投票権を与えるガバナンスの改革だ.いかなる国も拒否権を持つべきではない.世界は,アメリカの指導者の中に大人として行動できない者がいると心配しているが,現行のノン・システムを維持するコストは余りにも明白だ.

FT October 17, 2013

No alternative to dollar except financial chaos

By Stephen King

もしこれがアメリカでなければ,こんな国の資産は売り払って,他へ移すだろう.その国は融資を受けるコストが上昇し,通貨価値が大幅に下がるはずだ.

しかし,アメリカのドルや財務省証券は,グローバルな金融システムのアンカーである.だからわれわれは手を合わせて,アメリカがデフォルトしないことを祈り,安堵のため息を漏らしている.

しかし,その願いもむなしい.水曜日の投票では,多くの共和党員がデフォルトを支持した.デフォルトしても大きな被害はないと考えて,金融版のロシアン・ルーレットをする者もいる.近年の政府閉鎖は小さな政府を求める正しい行動だと考える者もいる.

しかし,ここにはより深刻な流れがある.第1に,まともな成長率が達成できていないことだ.それは増税や政府支出削減を必要とする.第2に,所得分配の不平等が極端に悪化していることだ.ますます少数の者に,ますます多くの所得が集まっている.これに対して,再分配を支持する者と,19世紀的な富裕層の貯蓄が長期投資の源泉だ,という者がいる.

3に,アメリカがその他の世界に莫大な債務を負っていることだ.アメリカの政治家は気にしていないが,準備通貨の地位は危機に瀕している.しかし,アメリカ・ドルに依拠したグローバルな金融システムを放棄することのコストは,アメリカ自身にとってよりも,その債権者たちにとっての方が大きいだろう.そのせいでアメリカの政治は,誰も予想しないような愚行を繰り返している.

債務上限の引き上げが合意できても,アメリカの財政に視点と債権者の利害とはますます一致しなくなっている.だからといって,1970年代初めのブレトンウッズ体制崩壊と同じだ,というわけではない.当時は,ベトナム戦争の赤字をドルの供給でまかなっていた.それは財政の制約を緩和したが,金の準備を減少させ,ドルと金との固定レートを守れなくなった.アメリカの政治的野心とグローバルな金融の必要性とがますます一致しなくなり,ブレトンウッズ体制は崩壊,1970年代の金融的な破局をもたらした.

皮肉なことに,アメリカ連銀は驚くべき予見によって量的緩和の終了を遅らせた.しかし,次の債務上限が近付く中で,連銀は緩和策を終息させる.ドルに依拠した国際金融システムに代わるものが欠けている.


l  イエレン新議長

FT October 11, 2013

A memo to Janet Yellen, the world’s most powerful economist

Robin Harding

WP October 12, 2013

A new mandate for the Federal Reserve

By Glenn Hubbard and Justin Muzinich

Project Syndicate 15 October 2013

The Federal Reserve’s Captive Minds

Luigi Zingales


l  イラン核開発問題

FP OCTOBER 11, 2013

One-Two Punch

BY BRIAN KATULIS, CHARLES A. KUPCHAN

シリアの内戦はますます悪化し,周辺諸国にまで不安定化が波及しつつある.その解決策は外交と政治に拠るしかないが,ロシアはアサド退陣に応じても,その体制を維持するつもりだろう.

イランとの核問題を解決する過程で,アメリカはシリアのアサド退陣を,ロシアだけでなくイランを加えて交渉できるだろう.

The Guardian, Tuesday 15 October 2013

We cannot verify and must not trust Iran's promises on nuclear weapons

John Bolton

FP October 15, 2013

Peace Through Strength

BY SEN. RAND PAUL, ISAAC APPLBAUM

FP October 15, 2013

The Talks with Iran: 3 Voices Whose Advice We Should Ignore

Posted By Stephen M. Walt

主要な論点は3つある.1.イランは核施設のどこまで放棄するつもりなのか? 2.残された施設の国際査察を受け入れるのか? 3.アメリカなどによる経済制裁はどの程度早く解除されるのか?

政府は直ちに3つの提言を拒むべきだ.イスラエル政府,上院の超党派グループ,ロビー集団(JINSA and United Against Nuclear Iranなど).彼らは今も,最大限の目的を追求し,そのために飴は要らず,経済制裁と軍事的圧力を強めるだけで十分だ,と主張している.このアプローチは顕著に偽善的である.なぜならアメリカだけは核武装し,しかもアメリカはイランよりも軍事力をしばしば利用するからだ.しかも,この圧力は完全に失敗であった.かつて圧力を加え始めたときよりも今の方がイランの核処理能力は高まっている.

Project Syndicate 15 October 2013

Can Rouhani Deliver?

Said Amir Arjomand

theguardian.com, Wednesday 16 October 2013

Nuclear diplomacy, not force, offers the safest, surest route to rein in Iran

Heather Hurlburt

FT October 16, 2013

Iran: A changing of the Guards

By Najmeh Bozorgmehr

ロウハニ大統領は,制裁下の,イラン革命防衛隊による営利追求と蓄財を攻撃する.


l  早すぎる脱工業化

Project Syndicate 11 October 2013

The Perils of Premature Deindustrialization

Dani Rodrik

イギリスではじまった産業革命の歴史を,他の国々でも経験すると思われている.労働力が農業から工業部門に移動し,人口の45%に達してから,その後,工業人口は減少し,労働者はサービス部門で増えた.他の豊かな諸国でも脱工業化が起きた.

しかし,発展途上諸国の工業化は違う.工業化が遅いだけでなく,脱工業化が早いのだ.ブラジルやインドがそうであり,中国でもそうであろう.

歴史的に急速な成長は工業化と結びついていた.工業化の余地が少ないということは,今後,年長の奇跡が起きないことを意味する.また,持続的な工業化と一緒に起きた社会・政治変化,組織された労働運動,規律ある政党,左右の対立に結びつく政治の競争,も起きないかもしれない.

早期の脱工業化を経験する世界では,民主主義やグッド・ガバナンスのための条件を欠いて,激しい変動が生じるかもしれない.


後半に続く)