前半から続く)


l  イギリスの社会主義

FT September 27, 2013

A new populism is shaping politics in Britain and beyond

By John McDermott

金融危機から5年,ポピュリズムが動き始めた.アメリカ上院で,カウボーイ・ブーツの好きなテキサスの共和党員,Ted Cruzが,21時間の「オバマケア」非難演説を行った.再びティーパーティー運動が強まり,アメリカ政府を閉鎖すると脅している.

テキサスの政治家は,彼の仲間,Rand Paul and Marco Rubioも,右派でありながら,エリート攻撃の言動を好む.金融危機以後の欧米において,左派ではなく,右派のポピュリズムが強まった.

アメリカのティーパーティー,イタリアのファイブ・スター,ドイツの海賊党,オランダのフリーダム・パーティー,イギリスの独立同,ミリバンドの反エリート演説.これらは結びついている.ミリバンドは,ガス・電気料金の引き下げを掲げた.

保守党もその影響力を知っている.しかし,労働党と違うのは,その解決を一層の市場圧力によって実現することだ.また,国家は最大の既得権者である.

The Observer, Saturday 28 September 2013

Socialism has failed. Neoliberalism has failed. But Ed Miliband's new deal might just work

Will Hutton

エド・ミリバンドは冬の宮殿に迫るボルシェビキなのか? 労働党大会における彼の演説に対する誇張とヒステリーは新しい頂点に達した.

エネルギー価格の上限というアイデアは,彼が政治的コンセンサスに挑戦し,その見返りを得たケースになるだろう.ミリバンドは,労働党を中道からそらせて,左派に追いやったのか? 「左派」とは何か?

20世紀の社会主義は,経済と社会に指令を発し,労働組合を優遇し,市場や企業家の行動を決定する,再分配に必要なものを支配する,とDigby Jonesは批判する.国民医療保険のような成功例もあるが,多くは失敗した.しかし,ミリバンドを,こうした1945年の社会主義を再生する政治家とみなすのは間違っている.

他方で,思想と経済組織のシステムとして,社会主義に代わるネオリベラリズムの壮大な実験も失敗した.イギリスの,そして西側の,銀行システムは国家の膨大な財政支援でやっと生き延びた.現在の連立政権は,投資リスクを取り,革新を促す産業政策に夢中である.それは正しいことだ.イギリス企業は8000億ポンドの資金を持ちながら,生産性の上昇が遅れている.生活水準は100年間で最大の落ち込みにもなるだろう.

社会主義も,ネオリベラリズムも,ともに失敗した.市場資本主義は,それ自体のためではなく.労働者,消費者,市民のために,改善されねばならない.ミリバンドは,社会と資本主義との新しい協定を目指している.

The Guardian, Wednesday 2 October 2013

The Daily Mail may not realise, but Marxists are patriots

Priyamvada Gopal

FT October 3, 2013

Britain faces a fight between pessimists and dreamers

By Philip Stephens


l  移民の扱い

The Guardian, Sunday 29 September 2013

The arrest of Golden Dawn's leader will do little to counter institutional racism

Costas Douzinas, Hara Kouki and Antonis Vradis

Project Syndicate 01 October 2013

A Decalogue for the UN Migration Summit

Peter Sutherland


l  嵐の前の静けさ

FT September 29, 2013

Do not kid yourself that the eurozone is recovering

By Wolfgang Münchau

BLOOMBERG Sep 29, 2013

Europe’s Voters Wisely Stick With Frugal Leaders

By Anders Aslund

メルケル再選の意味を考えてみる.メルケルは金融危機に際して,EUの財政を健全に維持し,融資によってユーロ圏から離脱する国もなかった.「緊縮」政策は,多くの評論家が非難したにもかかわらず,正しい政策として有権者に支持されたのだ.

危機以後に政権が交代した国は,EU28カ国中の19カ国である.再選された8か国(Estonia, Finland, Germany, Latvia, the Netherlands, Poland, Sweden and, Luxembourg)の政府は,全て財政の健全さを重視する中道右派の政府であった.

金融危機に対して財政刺激策を主張することは,すでに財政が債務に依存していた現実を無視している.また,刺激策は成長に有益でもなかった.ゴードン・ブラウンやベルルスコーニは政権を去り,メルケルは残った.

Project Syndicate 30 September 2013

The Eurozone’s Calm Before the Storm

Nouriel Roubini

BLOOMBERG Sep 30, 2013

The Anti-Debt-Relief Crowd Is Wrong on Greece

By Charles Wyplosz

債務に押しつぶされて,ギリシャは成長できない.債務免除するべきだ.あるいは,インフレを起こすしかない.その場合,ギリシャはユーロ圏を離脱することになる.


l  気候変動

FT September 29, 2013

World leaders must act faster on climate change

By NicholasStern


l  イタリア政治の暗闘

FT September 30, 2013

Delaying elections will prolong Italy’s misery

By Bill Emmott

SPIEGEL ONLINE 09/30/2013

The Hostage-Taker

Berlusconi Pushes Italy to Brink

An Analysis by Hans-Jürgen Schlamp in Rome

BLOOMBERG Oct 1, 2013

Italian Lesson for Washington’s Republican Minority

By Clive Crook


l  インドの政治的真空

FT September 30, 2013

India’s dangerous political vacuum


l  日本の消費税引き上げ

FT September 30, 2013

Japan VAT hike to test Shinzo Abe’s political popularity

By Jonathan Soble in Tokyo

FT September 30, 2013

Abe’s tax rise puts more QE on menu

By Peter Tasker

2段階で2倍へ,消費税の引き上げは安倍首相の最初の失策になるだろう.3つの対策として,財政刺激策である公共工事,民間投資を促す法人税引き下げ,を用意している.しかし,決定的に重要なのは,黒田日銀総裁の金融緩和だ.

BLOOMBERG Oct 1, 2013

The Threat of ‘Abegeddon’ From Taxes in Japan

By William Pesek

財政健全化は必要であるが,安倍の消費税引き上げは,橋下竜太郎の景気回復失敗と同じ結果になるだろう.

ドルに対して20%の円安は,日本が原発事故で弁量を輸入しなければならなくなったとき,進んだ.この重荷は,日本が成長しないままインフレに向かう,スタグフレーション,もしくはAlexander Friedmanが「アベゲドン」と呼んだシナリオになるだろう.増税が日本の債務比率を下げるのではなく,上げるとしたらどうだろうか?

日本は,規制緩和や企業の設立,TPPによる交渉によって成長を刺激する道に進むべきだ.

FT October 2, 2013

Techs eye Japan’s ‘keiretsu’ as VC model

By Richard Waters

NYT October 2, 2013

Former Japanese Leader Declares Opposition to Nuclear Power

By MARTIN FACKLER

WSJ October 3, 2013

The Reform Abenomics Needs

By Nicholas Benes

安倍は第3の矢を実現する気があるのか? 女性の進出,労働の移動性,コーポレート・ガバナンス.・・・まったく足りない.


l  指導国の消えた世界

FP OCTOBER 1, 2013

Pre-Existing Condition

BY DAVID ROTHKOPF

アメリカは傷ついている.その多くは自分の責任だ.誰も,われわれ自身が傷を負わせるほど,われわれにダメージを与えることはできない.多くの傷は,少なくとも今のところ,表面的だ.

世界はアメリカをどう見ていたか? 2度の世界大戦に勝利し,冷戦に勝利した国.世界を帝国的に設計し,援助と嫌がらせの全てが,アメリカの強さから生じていた.

しかし,今やガバナンスの要求を満たせない.アメリカ政治が落ち込む政府閉鎖や債務上限の問題は,アメリカがもっと真剣に取り組むべき重要な問題を無視している.投資,教育,革新,気候変動,平等,持続的な成長.これらを解決して,アメリカは世界の指導的な国にふさわしい自分を取り戻すべきだ.

シリアも,イランも,アメリカの弱さが交渉選択の条件であった.彼らは,以前よりも今の取引の方が有利になる,と考えているのだ.その弱さとは,アメリカが首尾一貫した,効果的な対応を示さないこと,エジプトの危機に対しても指導力を発揮しなかったことだ.アフガニスタンからの撤退も,われわれがこれまで排除してきた勢力の拡大につながるだろう.

新しく台頭する諸国があり,特に中国はこの数十年で世界最速の成長を実現する震源地となるだろう.アメリカの子供たちは算数や化学ができない.ヨーロッパにおける同盟諸国は弱体化した.アメリカによる情報収集の結果,同盟諸国や他の諸国はアメリカへの信頼を失った.

われわれは自分自身の失策や判断ミスでやけどを負い続けてきた.911,イラク,アフガニスタン,金融危機は,われわれにPTSDの苦しみを与えている.顔をしかめ,これ以上のリスクから身を避けようとしている.

オバマ政権が交渉に向かったのは,大統領がためらった後である.議会も,アメリカ国民も,軍事行動を支持しなかった.今までにも増して,アメリカは本当の非常時にしか行動しない,と分かった.われわれは強い立場から交渉するのではない.誰もが,アメリカは長期的に中東から撤退することを知っている.弱さから弱さへ,アメリカは国内だけでなく国際政治でもさまよっている.

こうしたことは変えられる.アメリカは立ち上がることができる.シリアでもイランでも,アメリカが扉を開けば,人々は集まってくる.地球上で最も豊かで,最も強い国であり,国家の再生はアメリカのDNA,アメリカ憲法に組み込まれている.世界もアメリカの指導力を,政治取引に縛られない,明確な国益に関するビジョンと,指導力が意味するリスクに対する姿勢とを,期待している.

Project Syndicate 01 October 2013

Filling the Global Leadership Vacuum

Yoon Young-kwan

世界が新しい混沌の時代に入らないためには,アメリカと中国がより深い協力関係を確立しなければならない.すなわち,アメリカは中国を国際機関で高い地位に就け,TPPにも参加させて全アジアの自由貿易圏を実現するべきだ.アメリカはまだ軍事上の優位を保持しているが,それが逆に対等な協力関係を妨げている.

ドイツの台頭にたとえて戦争の不安を説く者もいるが,イギリスがアメリカの台頭を受け入れたように,アメリカも中国と協力できる.

Project Syndicate 01 October 2013

The IMF’s Next Test

Gita Gopinath

FT October 2, 2013

Dollar-based system is inherently unstable

By Ousmène Mandeng

FP OCTOBER 2, 2013

Nonessential

Has Obama given up on the Asia pivot?

BY ALEX N. WONG, LANHEE J. CHEN

FT October 3, 2013

Global economy in ‘epic scale’ change, says IMF’s Lagarde

By Robin Harding in Washington

BLOOMBERG Oct 3, 2013

Congress Plays With Fire as Asia Examines Debt

By William Pesek

Project Syndicate 03 October 2013

The Paradox of Central-Bank Cooperation

Harold James

バーナンキは,金融政策の国際的な波及効果を考慮するべきか? 中央銀行間の協力は望ましいことか?

歴史上の1つのケースだけがしばしば議論されてきた.協力は,最初,望ましいことであったが,その後,破滅的であることが分かった.

1920年代後半に,大西洋の両側には常に緊張があった.アメリカの金融政策がヨーロッパで借り入れコストを引き上げ,成長を損なったからだ.1927年,ニューヨーク,ロングアイランドの秘密会議で,ヨーロッパの指導的な中央銀行家たちはアメリカ連銀に金利引き下げを説得した.これは短期的にヨーロッパの信用条件を安定化したが,アメリカで投機的なバブルを生み,1929年の株価暴落につながった.

当時の協力は中央銀行家の個人的な友情に基づく,壊れやすいものだった.イングランド銀行総裁,Montagu Normanと,ニューヨーク連銀総裁,Benjamin Strong,そして,程度は劣るが,ドイツのライヒスバンク総裁,Hjalmar Schachtがこうした関係を持っていた.しかしその後,ストロングは肺炎で死亡し,ノーマンも神経の障害を患って,大恐慌後には協力よりも,各国内の管理に従うようになった.

国際協力にはジレンマがある.危機はグローバルな公共財として金融安定化への中央銀行間の協力を求めるが,特に安定化の介入によって財政赤字が増えるから,協力のコストは劇的に増大する.それ故,危機のたびに金融協力の魅力は消え,破局となるのだ.


l  分離か,統合か?

NYT October 2, 2013

Does Scotland Want Independence?

By DENISE MINA

FP OCTOBER 3, 2013

The Case for Canamerica

BY J. DANA STUSTER

中国の企業が,10年かけて,次第にカナダの銀行や採掘会社に浸透する.ロシア政府と組んで,カナダの北極圏の石油も採掘する.中国の港湾ネットワークは,北西航路の全域に及んで,カナダの安全保障と軍事力を無効にする.こうしてカナダは,実質的に,北京とモスクワを頂点とした家父長的な新植民地主義に頼る奴隷国家になる.・・・

これが,National Postの編集者Diane Francisの新著(Merger of the Century: Why Canada and America Should Become One Country)で示されたディストピアだ.中国は資源を求め,ロシアは北極圏を求める.彼らはビジネスに従うだけかもしれないが,カナダとは規模が異なる.オオカミがやってくる.カナダはアメリカへの入口であり,トルコがEUへの入口だ.

アメリカは外国から原油を買い,アジアから安価な商品を買い続ける.そして,アメリカの製品を買ってくれる諸国を守る.・・・カナダには戦略が必要だ.

国家間にも,企業間で生じる,合併のシナジー効果がある.安全保障,投資,労働力の移動.カナダ北部の石油や天然ガスを開発するため,雇用をもたらす新しいマーシャル・プランとして,インフラ投資が必要だ.国家間の合併には,さまざまな方法があるだろう.ルイジアナの買収,資源ファンドの設立と国民への配当,アメリカの新しい州として加盟,イギリス連邦,東西ドイツの再統一,スイス型,EU型,・・・朝鮮半島の潜在的な再統一.

かつて1985年に,ジョージタウンのIbrahim Ibrahim教授がカサンドラ的な提案をしていた.エジプト,リビア,スーダンの統合である.

統合は,経済的に意味があるけれど,政治的には無視される.多くの意味で,アメリカとカナダの統合はすでに実現している.300万人のカナダ市民がアメリカ側に住み,100万人のアメリカ市民がカナダ側に住む.それは氷河の移動に似た,緩やかな主権の移動である.


VOX 3 October 2013

Long-term barriers to growth

Enrico Spolaore, Romain Wacziarg

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The Economist September 21st 2013

The weakened West

America, Russia and Syria: Style and substance

Lexington: The American Dream, RIP?

Monetary policy after the crash: Controlling interest

Latvia lessons: Extreme economics

(コメント) オバマはどうなっているのか? アメリカが変だ? という失望とも不安とも言えない感覚を持ちつつ,シリアのすぐ後に,イランとの外交的な和解,ワシントンDCの政府閉鎖,リビアとソマリアにおける特殊部隊の同時展開,・・・ なんだかわけのわからない様相に驚きます.

だからこそ指導的な国のグランド・ビジョンが重要な意味を持ちます.アメリカは,そして,中国やロシア,ドイツ,日本,ブラジル,インド,などは,どのような戦略をもとに行動しているのでしょうか?

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IPEの想像力 10/7/13

風邪をひきました.おもしろい話は書けません.中東秩序の分裂と再編,中国人の胃袋,カナダのアメリカ併合,この3つの話に共鳴して書き始めました.

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統合か,分裂か? 帝国でも,戦争でもなく,インフラと産業政策の共有によって.あるいは,企業の吸収合併と同じ視点で,国家が政治統合の相手を探す時代になったようです.

今週のReviewに言及された国家改変のケース(歴史的・仮想的)は,エジプト,リビア,スーダン,シリア,イラク,イラン,サウジアラビア,イエメン,トルコ,インド,パキスタン,バングラデシュ,スコットランド,カナダ,中国,ロシア,ドイツ,アメリカ,韓国,北朝鮮,を含みます,

たとえばカナダは,資源,安全保障,開発,などについて,中国とロシアの浸透と圧力を恐れ,アメリカとの合併を望みます.しかし,アメリカやヨーロッパから遠く離れたオーストラリアの場合は,統合相手に困るでしょう.

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日本には,アメリカとの統合化を主張する意見は少ないように思います.市場は統合化しても,アメリカの新しい州になるには,政治や文化が全く異なるからでしょう.

日本には,中国との統合化を主張する意見もほとんどありません.歴史や文化では共有するものが多いはずです.しかし,厳しい戦争の経験が歴史として共有されていません.

日本には,朝鮮半島との連携を模索する声がもっとあってよいはずです.もし日本が国家を連結・共有するとしたら,それは韓国でしょう.アメリカ合衆国でも,EUでもない,東アジアの統合モデルを模索するときが,すでに来ていると思います.

まるで南北戦争のように,ワシントンの政府機関を閉鎖してしまうまで対立するアメリカの政治家たちは,なるほど,移民とフロンティアの国だな,と感じます.

日本は,イギリスやドイツの経験からも多くを学ぶべきでしょうが,同じ姿にはなりません.帝国主義によって国力を高め,植民地拡大のために戦争を重ねて,ついに敗北し,天皇制を残し,アメリカから安全保障と産業技術だけでなく,ドルや経済政策,民主主義の多くのブロック,その他,何でも輸入しました.

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国家とは,いわば,戦争と世界戦略です.

それは領土と人口を持ち,単一の権力システム,支配集団・階層が,法律や制度に守られた正当な強制力を独占しています.支配層は,投票や能力による選抜だけでなく,さまざまなネットワーク・派閥,富や市場を通じた影響力から形成されます.歴史的な感覚や伝統・文化,共通の言語,教育・メディアが,帰属する国民の一体感を醸成し,幻想の共同体を築きます.

国家が,ナショナリズムや,人種差別や,軍備拡大(そして,工業力,技術力,文化)競争によって刺激され,強大化を目指す装置になるより,もっと多様な市民にふさわしい,小さな容器の集積であればよいのに,と思います.

それは,幾分,レゴで作った城に似ています.EUに参加する小国は幸せそうに見えますが,さらに分裂を続けるのか,という懸念があります.

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現代の国家も,内部でさまざまなブロックが形成・変形され,連結されて,薄れるアイデンティティに抗して,独自の政治意識や仕組みを維持しています.

しかし,平和な時代が続いても,日本は東アジアの連邦制を指導する役割を,未来に向けて,明確に描けませんでした.こうした問題を真剣に,内容豊かに,議論できない政治家や知識人,メディアの水準を問うべきでしょう.

未来の平和とは,異なるガバナンスの自由な競争と,都市間の移民によって実現される世界のことかもしれません.

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