IPEの果樹園2013

今週のReview

9/23-28

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シリア危機の新局面 ・・・プーチンの仲介とNYT投書 ・・・景気回復のために ・・・中国はどうする? ・・・日本の困難 ・・・リーマン・ショック後の金融改革 ・・・人口の限界 ・・・ドイツの選挙後に ・・・無意味のカルト

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  シリア危機の新局面

NYT September 12, 2013

An Anchorless World

By ROGER COHEN

アメリカの元ドイツ大使が述べた.「われわれが目撃しているのは,戦後システムの着実な解体である.」

シリアの大統領Bashar al-Assadは,子どもたち数百人を殺害した.アメリカは,その大統領と国務長官が「驚くべき小さな」軍事的報復を約束した.しかし,その約束も破って,後退し,イギリスはアメリカとの同盟関係を破壊した.EUは分裂している.ドイツは沈黙し,フランスは残ったが,NATOは動かない.

戦争に倦んだアメリカはロシアの仲介に頼った.アメリカ議会が大統領の求める攻撃を否決しそうになって,無制限に延期された.だから,外交による解決の道が残った.

アサドが,今まで存在も認めなかった化学兵器を,すべて国連監視下に置くという提案を受け入れた.成功するとは思えない.ボスニアも重火器を国連に渡すと約束したが,空爆に至った.

オバマは,アメリカが70年近くグローバルな安全保障のアンカーであった,と述べた.しかし,その後,アメリカは世界の警察官ではない,と宣言した.世界のアンカーは失われた.それは,アメリカの世論調査で示した,3分の2が外国に介入を望まない,という意向を反映している.

ベルリンは,アメリカの「レッド・ライン」があったので,自由な都市として生き延びた.アメリカの姿勢が変化したことに,ベルリンは注目し,テヘラン,モスクワ,北京,エルサレムも注目する.

ドイツ誌Der Spiegelへの投書は述べる.「我々はこの大量殺戮に対して何をしたか,と子供たちに聞かれるだろう.我々がナチスに対して何をしたか,親たちに尋ねるように.我々はそのとき,目を伏せ,沈黙することになる.」

FP SEPTEMBER 12, 2013

Absent Without Leave

BY WILL MARSHALL

1960年代後半,イギリスはスエズ運河の東にある重要な軍事基地を撤退し,世界政治の大国から長い時間を経て衰退していった.アメリカにも,同じ「スエズの東」から撤退する瞬間が来たのか?

アメリカはイギリスと違って帝国ではない.しかし,グローバルな安全保障を守ってきた.

ベトナム戦争以来,分裂した民主党の姿勢を,軍備拡大やナショナリズムを支持して共和党は批判した.しかし共和党員の中にも,大きな政府・財政赤字を嫌うティー・パーティが軍事介入に反対する,共和党のハト派,を形成している.介入は,アメリカの戦略的利益ではなく,道義的なジェスチャーにすぎないとオバマを批判する.

民主党内では,戦争反対と,人道主義的介入とが対立している.エスニック・クレンジングも,ジェノサイドも,サリンも,われわれの問題ではない?

事実は,シリア問題にアメリカの死活的な利益がかかっている.平和的なアラブの春が地域を巻き込む宗派間の代理戦争になっている.シリアは聖戦主義者を集める磁石である.難民の洪水が近隣諸国に及び,レバノン,ヨルダン,トルコの負担を増す.もしアサドが勝利すれば,その支援者であるヒズボラ,イラン,ロシアとともに中東地域で勢力を広げ,逆に,アメリカの重要な安全保障の利益を損なう.すなわち,スンニ派過激主義の拡大を抑え,イランの核武装計画を阻止し,イスラエルの安全保障を確保することだ.

ところがオバマはそう主張せず,化学兵器の恐怖や国際法を訴えた.

不幸にも,イラク症候群の有害な遺産が政権にあるため,スポークスマンは「体制転換」に言及することを火傷した犬のように恐れる.ロシアとの合意ができなければ,議会は軍事介入に選択を求められる.それはイデオロギー的な転換点であるだろう.議会の拒否を,中国やロシア,イランは,左派の反戦派と右派の孤立主義者が同盟することで得られる勝利だ,とみなす.

The Guardian, Friday 13 September 2013

If the Syrian talks are to progress, the US will have to include Iran

Michael Williams

Project Syndicate 13 September 2013

The Remaking of the Middle East

Shlomo Avineri

NYT September 14, 2013

Hearing You Out

By NICHOLAS D. KRISTOF

FT September 16, 2013

Cruise missiles alone cannot secure credibility

By Gideon Rachman

ワシントンから見れば,シリア問題とは化学兵器の問題であるとともに,オバマの信用の問題でもある.

ロシアのプーチン大統領がオバマの議会に対する提案否決を救った,という経過は,アメリカ大統領の決断が議会によって制約されていることを示した.それはアメリカに敵対する者がアメリカの実行力を試すきっかけになるだろう.

しかし,大統領が安全保障の約束を守るために軍事力を行使する,というのは,アメリカの信用を決める一つの要因でしかない.外交における致命的な間違いを避ける,強い経済や魅力ある社会を維持する,というのも重要な要因だ.アメリカがグローバルな大国として,その地位をもっとも深く損なったのは,イラク戦争であり,2008年の金融危機であった.

間違って軍事力を行使する方が,軍事介入をためらうよりンも,さらに大きな信用失墜をもたらす.この半世紀のアメリカ外交で最悪の失敗が,イラク戦争とベトナム戦争であり,最大の成果が,軍事力を用いなかった,ソビエト帝国の崩壊であった.

保守派にとってレーガンRonald Reagan大統領は,ジミー・カーターやオバマの弱さに対して,強い大統領のモデルである.しかし,レーガンは軍事費を増大したが,軍事介入には非常に慎重だった.レーガンが行ったもっとも勇敢な軍事介入は,人口9万人のグレナダに対してだった.また,レバノンの爆破による241人の米兵殺害に対しては軍を撤退した.レーガンが行ったリビア空爆は,短期の,体制転換を考えない,ちょうど今,オバマが検討している介入と同じである.

結局,レーガンの時代が強さを取り戻したのは経済が回復したからであった.アメリカや自信と地位を回復し,ソ連は分裂した.オバマもアメリカのグローバルな力が経済の回復に依存していることを知っている.彼は繰り返し,自国の再建“nation-building at home”に集中することを主張してきた.イギリス,フランス,ソ連が影響力を失ったのも,その経済が国際的な約束を実行できなくなったからだ.中国がアメリカを抜いて世界最大の経済になるとき,コストのかかる戦争を始めるのは,長い目で見て,間違っている.

政府がシリアに空爆できなかったとしても,それが国際情勢からアメリカの軍事力を永久に消し去る,と思うのはばかげている.アメリカは軍事的な優位を保つし,介入の長い歴史を持つ国である.オバマは軍事行動を取る前により慎重に考慮するが,それはアメリカの信用を失わせるよりも,むしろそれを維持するのに役立つだろう.

FP September 16, 2013

Iran Is the Real Prize for Obama's Foreign Policy

Posted By Stephen M. Walt

シリアは,その国自体の重要性が低い.しかし,もしシリア問題に新しい意味があるとしたら,イランとの関係改善に動くことだ.

FP September 16, 2013

What to do about Syria: Time for Plan B

Posted By Thomas E. Ricks

FP SEPTEMBER 16, 2013

The Tally

BY AARON DAVID MILLER

シリアの化学兵器に関するプーチンとオバマの合意によって,だれが利益を得て,だれが損失を強いられたか?

勝者Winners: (1) Common Sense and Rational Thinking(2) Putin(3) Assad (with an asterisk)  (4) Obama -- and John Kerry, too (with an asterisk), (5) Iran(6) Israel (with an asterisk)(7) The Commentariat

敗者Losers: (1) The Syrian Opposition(2) The Saudis and the Gulf

Project Syndicate 17 September 2013

Muzzling the Dogs of War

Anne-Marie Slaughter

アメリカ憲法は,ヨーロッパの君主たちと違って,政府幹部に立法府への説明を課した.戦争を始めて多大な戦費が必要になったら,立法府がこれを拒むだろう.その心配は軍事力の行使と戦争を抑えた.

しかし,他方で,アメリカ憲法は大統領が「最高司令官」としてアメリカの軍事力を行使し,アメリカの利益を守ると定めている.オバマは,こうした大統領の権力を制限するように求めてきた.指導者のパワーをできるだけ制限した少数派の大統領である.以前は,「テロとの戦い」として,世界のどこでも軍事力を行使できた.

ジェファーソンから2世紀を経ても,人々の意思決定への参加は重要だ.

NYT September 17, 2013

The Man With Pink Hair

By THOMAS L. FRIEDMAN

誰も助けてくれないから,オバマはプーチンの提案を受け入れた.プーチンはシリアの影響力を維持し,何より国際政治における指導者の役割を求めていた.

オバマの苦しみは,スイスのピンク・ヘアーの若者と,オバマのグレイ・ヘアーに示される.プーチンは信用できないが,ともかく一緒にやってみるしかない.

WSJ September 18, 2013

The Syria Deal Has a Hint of Munich

By BERNARD-HENRI LÉVY

シリアの化学兵器に関するロシアとアメリカによる合意は「前進」か? 実行できるはずがない.検証不可能で,化学兵器を処理する資金もない.多くの市民が,毎日,殺害されているとき,半年先や2年先の計画にもめている.

アサドは,戦争犯罪者,人間性の敵から,国際合意の正当な交渉相手,そして,もうすぐ協力と責任の精神において称賛される政治指導者になる.

NYT September 18, 2013

Fawzia’s Choice

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT September 18, 2013

Let’s Be Honest About Israel’s Nukes

By VICTOR GILINSKY and HENRY D. SOKOLSKI

化学兵器はイスラエルの核兵器に対する抑止力だ,とシリアのアサド大統領は常に主張する.もしシリアを武装解除するなら,エジプトやイスラエルはどうか? アメリカは沈黙しているが,エジプトもイスラエルを標的にした化学兵器を蓄えている.イスラエルも,もちろん,シリアやエジプトに対抗する化学兵器を蓄えている.

WSJ September 18, 2013

The Best Diplomacy Is Armed Diplomacy

By HENRY R. NAU

かつてプロシアのフレデリック大王は述べた.「軍事力をともなわない外交は,楽器の無い音楽に等しい.」 交渉以外には武力で敵を阻止できるときしか,彼は平和的な交渉に関心を持たなかった.

イランを観ればわかる.西側と交渉している間に,イランは武力で目的を達成してきた.着実に核武装に近付いている.レバノンとシリアの聖戦主義勢力を強化し,イラクとアフガニスタンで影響力を拡大し,アメリカの撤退する真空を埋めている.

他方,アメリカは交渉が失敗するまで軍事力を考慮しない.それは,結局,事態を悪化させ,大きな代償につながる.

1948年,トルーマン大統領は有名な空輸によってベルリンを守った.彼の顧問たちはすべて,このソビエト圏内に残された飛び地を放棄するように主張した.しかしトルーマンは,ヨーロッパにおける大規模な地上戦を回避したのだ.その後,朝鮮半島で,アメリカが早期の軍事介入を行わなかったために,戦争が起きたように.

軍事的圧力をともなう外交は,戦争によって敵を敗北させるか,永久に道義的な意味で受け入れがたい敵と共存することを意味しない.敵に自由が広まることで,交渉の目的を達成する.

それゆえ,イランやシリアを独裁国家と非難する姿勢を変えてはならない.彼らとの合意を一時的に守ることは,彼らの体制を容認することではない.

FT September 19, 2013

Syria deal holds a lesson for Barack Obama – talk to Iran

By Philip Stephens

Project Syndicate 19 September 2013

Syria’s Balkan Tragedy

Joschka Fischer

Project Syndicate 19 September 2013

The Irresistible Rise of the Muslim Middle Class

Shahid Javed Burki

ムスリム社会を動揺させている要因としては,信仰でも,宗派対立でもない,もう一つのものがある.それは急増する中産階級だ.彼らは政治への発言を求め,より大きな経済的機会を求めている.

ムバラクが倒されたのも,ムスリム同胞団が権力を失ったのも,彼らの要求を満たせなかったからだ.エジプトでも,イランでも,トルコでも,新しいイスラム社会の街頭運動が求めているのは,包括的な政治システムである.それは,Daron Acemoglu and James Robinsonが著書(Why Nations Fail)で強調したように,持続的な経済成長の条件である.

意外かもしれないが,イスラム社会の大国で,アラブの春の前から,この方向に改革を進めているのはパキスタンだ.パキスタンとトルコは,政治家ら軍を排除しようとしてきた.政治システムを変える制度の構築には時間がかかる.

エリートたちが拒んでも,政治改革が前進する圧力は,人口動態から生じている.ムスリム諸国の人口は非常に若く,国民年齢の中間値は20代の半ばから後半である.国民の半分以上が30歳以下である.


l  プーチンの仲介とNYT投書

FT September 12, 2013

Russia’s Vladimir Putin plays to strengths on foreign policy

By Charles Clover in Moscow

theguardian.com, Friday 13 September 2013

On Syria, Putin is a modern Machiavelli – and that's a good thing

Vadim Nikitin

プーチン大統領の投書は,アメリカ人の思い込みを容赦なくたたき潰した.「善人こそが悪を成すものだ.」 アメリカ人のヒーローは,情け深い,リベラルな,憲法の元教授で,イラク戦争に反対した.

プーチンの投書を読むと,個人的には大嫌いな奴が,あなたの欠陥をすべて指摘して,それが煩わしいことに正確である,という印象を持つ.我慢ならないが,そのすべてに同意できる.

プーチン大統領の主張は正しい.アメリカ人は,価値に基づく外交が間違いを犯すことに,反省を強いられたのだ.道義的な軍事介入は,しばしば逆の結果をもたらす.短期的な空爆でも,罪のない多くの市民を巻き込み,また,暴力のエスカレートを招くかもしれない.

道徳と国際関係を区別する,というのはマキャヴェリNiccolò Machiavelliが主張したことだ.政治的行動に,個人や人間関係の道徳的基準を適用するのは,道義的にも,戦術的にも,間違いである.

一般の思い込みとは逆に,マキャヴェリは不道徳な陰謀を推奨したのではない.むしろ彼は,政治的問題で達成不可能な基準を掲げれば,政治家が自ら幻滅に至り,究極的に,その価値さえも裏切ることになる,と恐れた.世界を舞台にしたときの人間的な価値の限界について,リアリスティックな,明晰な思考を維持すること,事態をあるがままに,あるべき姿ではなく,見ることがより優れている.マキャヴェリはプーチンを称賛するだろう.

NYTの読者は書いている.「何と狂った世界に私たちは生きているのか.深刻な国際的危機について,我々の政府よりも,ロシアの主張の方が正気で,責任あるように聞こえる.」

FT September 13, 2013

A long week: Putin’s diplomatic gambit

By James Blitz

WP September 13, 2013

The American people’s reply to Putin

By Dana Milbank

親愛なるプーチン大統領

英語がうまいね.・・・イスラエルやローマ法王にも友好的? ・・・アメリカ人は例外じゃない,という言葉にアメリカ人は傷ついた.・・・むしろ,あなたのやってることはまるでアメリカ人だね.シベリアでシャツを脱ぎ,アメリカ人の弁護士を雇い,ハーレー・ダヴィッドソンに乗り,黒い服が好きで,半分の年齢でしかない愛人を持つ.・・・

早く次の投書が読みたいよ.

theguardian.com, Thursday 19 September 2013

Vladimir Putin: a tyrant at home, a friend of tyrants abroad

John McCain

BLOOMBERG Sep 19, 2013

Putin Was Right About American Exceptionalism

By Ronald Inglehart

シリアへの軍事介入をめぐって,アメリカは例外的な国家化,という議論が起きている.化学兵器による攻撃を知って,オバマはYesと主張し,プーチンはNoと応えた.「自分たちを例外だと思うのは,極めて危険な考え方だ.」

アメリカの例外主義には長い歴史がある.それは軍事的に強力であるだけでなく,その価値観を意味している.ではアメリカ人の価値観はどれほど例外であるか?

調査The World Values Surveyによれば,信仰心が篤い(教会に通う),民主主義を支持する,違いを受け入れる寛容な社会だ,市民的なつながりの強い伝統,といった,良く言われる価値観で,アメリカは世界のNo.1ではない.

むしろ,こうした発達した裕福な民主国家に共通する価値観と,世界最大の市場規模,圧倒的な軍事的優位,が合わさったとき,アメリカは世界の紛争に介入する超大国として,自分たちの価値観を正義として押し付ける姿勢が生まれる.

Project Syndicate 19 September 2013

The Russian Janus

Robert Skidelsky

ロシアは世界に二つの顔を示す.恐ろしい顔と,めぐみ深い顔だ.それらは結びついて,意外なことに,アメリカと他の西側諸国が破滅的な軍事介入に向かうのを止めた.

ロシアの国内情勢も嘆かわしいものだ.計画経済が1991年に崩壊した後も,ロシアは市場で売れる商品を持たなかった.ロシアは,エネルギーという単一商品経済だ.才能ある者や技術者は海外へ出て働く.汚職の蔓延する国内経済から資本も逃げ出して行く.

その弱さは,プーチンの支配した14年間,エネルギー価格高騰によって隠されてきた.略奪政治と,反体制派の弾圧,所得の上昇したショッピング狂の中産階級とが,結び付いている.多様化に必要なインフラ投資をせず,ラテンアメリカになっている.

西側の外交は人権を重視するが,ロシアは気にしない.不正選挙による「管理された民主主義」がソフトな独裁体制を支える.法律は政治の目的に従い,それでも足りないときは暗殺してしまう.そのリアリズムは保守的な慎重さであり,中国も共有しているものだが,西側の守れない基準と同じ問題を含む.

プーチンは,反政府軍が西側の軍事行動を招くため,化学兵器を使用した,と示唆する.こうした政治体制下で真実は分からないだろう.ロシア人の多くは,19999月に爆弾テロで300人の市民を殺害したのは,プーチンの選挙を有利にするため,ロシア秘密警察が行ったことだと信じている.

合意は,中東におけるロシアの地位を高めただろう.プーチンはオバマを救った.しかし,その報酬は期待できない.


l  景気回復のために

NYT September 12, 2013

Rich Man’s Recovery

By PAUL KRUGMAN

最も優秀な者が,家族の事情と関係なく,高い報酬を得る社会.その理想は,現実には,裕福な家族の子供が中産階級や労働者の子供よりもはるかに恵まれていることで否定されている.それは社会を道徳的にむしばむ.

アメリカ社会の多数の国民は今も不況に生きている.しかし,富裕層は損失を回復し,力強く前進している.超富裕層の所得の多くは金融部門から生じており,この分野は経済全体を破滅させる寸前に,国民の税金で救済された.

新しい経済に向けて,政府や交渉力によって中産階級を増やすニュー・ディールが必要だ.しかし,政治の状況はそれから大きく隔たっている.競争条件を平等にする小さな前進でも,忘れてはいけない.ニューヨークは前市民に幼稚園を提供する.超富裕層に課税し,不利な子供たちの機会を広げるのだ.

Bill de Blasioは,こうした新しい経済ポピュリズムに乗って,ニューヨークの新市長になるだろう.

WSJ September 16, 2013

Martin Feldstein: How to Create a Real Economic Stimulus

By MARTIN FELDSTEIN

量的緩和はその効果が疑わしい.このまま維持すれば,将来のリスクが増大する.アメリカ経済は,成長と雇用を増やす新しい戦略を必要としている.

即時に税率を引き下げ,多年度にわたってインフラ投資することと,公的債務の規模を相対的に低下させることを組み合わせる.それが正しい戦略だ.

FT September 18, 2013

Never underestimate the Fed’s dovishness

by Gavyn Davies

連銀が「テイパーリング」を始めると予想した市場は,その延期の発表に驚いた.バーナンキの連銀はQEを続けることを恐れていない.金融市場はそれに負けた.バーナンキは労働市場の改善を待っている.バブルを懸念することはない.


後半に続く)