IPEの果樹園2013

今週のReview

9/9-14

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シリア空爆・イギリスの離脱 ・・・シリア空爆・アメリカの選択 ・・・新興市場の不安 ・・・インドの新総裁 ・・・金融改革と景気循環 ・・・スウェーデンの経済モデル ・・・ドイツとユーロ圏 ・・・中国の改革

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  シリア空爆・イギリスの離脱

The Guardian, Friday 30 August 2013

I believe Britain can still make a difference in Syria

Ed Miliband

木曜日の下院における投票を,人道的な意味で破滅的状況に苦しむ人々がいても,イギリスには何もできない,と言う意味だと考える者がいるけれど,私はそれに同意しない.われわれは来週のロシアにおけるG20を使って, 世界の注目をシリアに向けねばならない.そして国際社会として,戦争行為を終わらせ,政治的解決を強制する必要がある.

しかし投票は,議会にとっても,イギリスにとっても,世界との関係についても,重要である.すべての政党が,外交に関する正しい教訓を学ぶべきときだ.

イギリスが世界で重要な役割を果たすことはなく,自重するべきだと主張する,狭量な孤立主義に陥ってはならない.そのような考えは我々の国の長期的な利益を損ない,世界の平和と安全を脅かす.

我が国の人々は,内に向かうより,世界に目を向けることでイギリスが繁栄することを知っている.第2次世界大戦時に,海岸へたどり着いた難民たちを受け入れたように,他者への義務を果たすことを知っている.2年前のリビアと,今回のシリアとで違うのは,外交の進め方である.

イラク戦争の開戦から10年を経て,われわれは正しい教訓を学んだ.あのとき,結論を急いで国連査察団に報告のための時間を与えず,確実な証拠もないままわれわれは決断した.決定的瞬間に,重要な国際機関を無視した.軍事行動の結果に関しても,十全に考えていなかった.

今週,議会は3つの点で変化した.

1.十分な証拠に基づく,理性的な熟慮による判断を求めた.2.国際機関を効果的に取り込むように求めた.国連や国際法を重視しなければならない.アメリカとの関係は,さまざまな背景により明白だ.アメリカ大統領の難しい判断について,いつでも話し合う.3.行動の結果,地域への影響について,開かれた視点で説明を求める.

イギリスは世界から身を引くのではない.逆である.断固とした多角主義(国際主義),冷静かつ熟慮された決断,国際機関・国際法の重視が,イギリスの未来を示す.

The Guardian, Friday 30 August 2013

The Syria vote: Britain's new mood

Editorial

theguardian.com, Friday 30 August 2013

Britain did not turn away from Syria. The case for action was not made

Jack Straw

FT August 30, 2013

The Syria vote brings to an end decades of delusion

By Philip Stephens

帝国の最後の見せかけが崩れ落ちた.

それは60年前のスエズ危機でアイゼンハワーがアンソニー・イーデンに撤退を強いたときから明らかであったが.それ以降,イギリスはアメリカの影に従って行動してきた.

イギリスはアメリカとともにイラク戦争に参加し,アフガニスタンでタリバンとも戦った.しかし,下院でキャメロンが敗北したのは,偶然でもあり,歴史的必然でもあった.国連の査察も,安保理の議論も無視して,キャメロンは休暇中の議員たちを呼び戻し,採決を急いだ.しかし,労働党は党内政治から反対派になり,国民感情は戦争を嫌っていた.アサドを罰するという大げさな騎士道精神は,キャメロンの外交のすべてだった.

否決が示したのは,国民の疲労感である.国民はイギリスの軍事力についても現実を直視していた.イラクやアフガニスタンは,その犠牲が何のために支払われたのか,納得できなかった.リビアでわずかに上向いたが,結局は,イスラム過激派の勢力が拡大している.

キャメロンは,容赦ない緊縮策を,軍備削減も含めて追求したにもかかわらず,威勢の良い空爆論を唱えている.アメリカ議会でもオバマが学んでいるように,民主主義システムの不都合な政治的現実を受け入れるしかない.同時に,アメリカはイギリスに失望しただろう.イギリスというのは,アメリカとの同盟も,EUとの協力も,解消し始めた,後ろ向きの国である,と.

帝国の遺産の陰に隠れて,この危険な世界に乗り出すようでは,失敗する.

FT August 30, 2013

Britain’s double ‘Brexit’

By François Heisbourg

これはイギリスの二重離脱危機a double “Brexit”である.イギリスは,アメリカにもフランスにも背を向けた.

すでにアジア重視になっているアメリカのヨーロッパ政策は,さらに沈鬱なものになる.アメリカの示す「厳しい愛」の姿勢は,厳しさを増すと同時に,愛を失う.中東の混乱,強硬姿勢のロシアだけでなく,ヨーロッパが繰り返した危機とも,手を切る方が良いだろう,と.フランスとの軍需産業における協力も消えてしまった.

国際システムはその重要な要素を変質させる.冷戦後の秩序における,市民を守る,という原則は,シリアをめぐるロシアや中国の拒否権ですでに打撃を受けたが,コソボ空爆のような国際協力もイギリスが否定したのだ.フランスは行動に誇りを示すかもしれないが,ジャングルの規則しかない,侵略者のますます自由な,傍観者ばかりが増える,アメリカだけの孤独な覇権に付き合う,厳しい世界である.

イギリス下院がアサドの処罰を見送った後,化学兵器の拡散は止められないだろう.

FT August 30, 2013

Britain drifts towards isolation

Richard Haass

FP AUGUST 30, 2013

Rue Britannia

BY ALEX MASSIE

FP AUGUST 30, 2013

Don't Call This a Humanitarian Intervention

BY CHARLI CARPENTER

キャメロンは,国際社会の新しい規範である,「保護する責任」The "responsibility to protect" (R2P)によって軍事介入を正当化しようとした.しかし,ケリー国見長官はそれを避け,化学兵器の使用を強いタブーにするため,と説明した.「保護する責任」には6つの原理があり,キャメロンは3つしか示さなかった.

「正当な理由」とは,シリアに起きている人道的な極限状態を思えば,十分だとイギリス政府は考えた.しかし,第2の原則として,軍事介入は「最後の手段」でなければならない.外向的な手段は尽くしたのか? この点でも,西側諸国は肯定的に考える.

さらに,人道的な目的に,必要かつ比例的,という条件がある.R2Pがその手段を制限しているのだ.あるNGOがキャメロンに質問状を送ったように,空爆がシリアの市民を,多数傷つけるようなことはないか?

3の原則は,「正し意図」である.自分たちの政府による弾圧で苦しむ市民を,助けなければならない.しかし,アメリカの考える空爆はそのような意図ではない.内戦も,アサド体制も,変わらない.これは懲罰のための攻撃である.

さらに,別の原則は,介入により市民の保護が成功する十分な合理的見込みを示さねばならない.これまでの例は,それを支持しない.悪化するケースもあった.また,R2Pは,単独の攻撃を認めない.国際社会の合意による,国際機関を介した攻撃が求められる.

ロシアは2008年にグルジアに侵攻する理由を,市民を守るため,と主張した.アメリカは2003年にイラク侵攻を,独裁者から人民を解放する,と述べた.

なぜ多角主義が重要か? それはR2Pが,国際システムの,対立する,2つの重要なルールについて慎重な,暫定的な妥協を示しているからだ.すなわち,国家主権と,人権である.この2つのルールがグローバルな安全保障を支えている.

主権に守られて虐殺を続ける政府を,国際社会は許さない.その集団的な怒りが高まったとき,国際システムにR2Pという正当化が示された.R2Pを用いて,一方的な軍事介入を「人道的介入」と見なすことはできない.

The Observer, Saturday 31 August 2013

After the Syria vote, Britain must not sleepwalk into isolationism

Paddy Ashdown

NYT September 5, 2013

Syria Crisis Reveals New Paradigm

By ALAN COWELL


l  シリア空爆・アメリカの選択

NYT August 29, 2013

One Great Big War

By DAVID BROOKS

世界平和に対する最大の脅威は何か? それは,シリアの化学兵器でも,イランの核武装でもないだろう.最大の脅威は,中東における宗派争いが激化して,地域全体に広がることである.

シリア内戦は暴力の波を広げている.それは最初,宗教戦争ではなかった.しかし,シーア派とスンニ派の大国が,宗教を名目に介入し,宗派の対立を地域に拡大した.サウジアラビアとイランが,戦争の背後にいる.

シリアの死者がルワンダの規模に近づくにつれて,大量作陸のイメージが流布され,近隣や遠方から兵士たちが流入した.過激な宗教戦士は強力であり,戦場を宗教によって分割した.人々は無秩序と(宗教戦士の)残虐さの間で,選択を迫られている.

イラクにおける宗派間対立が再び激しくなってきた.さらに,トルコ,パキスタン,バーレーン,クウェートでも,暴力の影響がみられる.それは一つの地域戦争になりつつある.これは世代に及ぶ長期の戦争の一部であり,第1次世界大戦後にそうであったように,各地の体制が崩壊し,国境線が描き変えられるだろう.人々を分断する勢力が,人々を包括する勢力を圧倒する.

アメリカは軽い外交を展開してきた.アメリカ国内の再建を優先し,撤退を進めたのだ.イラクの紛争を鎮静化するために,もっと多くの軍隊を駐留させることもできたし,シリアにおける反政府勢力をもっと早く支援することもできたはずだ.しかし,もう手遅れである.

オバマ政権がアサドに対して空爆を主張するのは,アメリカの信認を失わないためだ.アメリカの警告,国際規範を無視する指導者を放置しておけない.しかし,アメリカに,この宗教戦争に対する戦略はあるのか?

広い意味では,3つの選択肢がある.封じ込め,和解,中立,である.しかし,紛争を国境内に封じ込めることにも,対立する宗派間,特に,サウジとイランとの関係を安定化することにも,アメリカが関与する外交的余地はなかった.

結局,アメリカは中立を保つだろう.アメリカがサウジに味方して武器や情報を利用すれば,スンニ派だけを支援することになり,それは長期的な宗教戦争における中立の立場に背くことになる.反シーア感情,反スンニ感情を抑えるグローバルな教育がもっと必要だった.

今となっては,外部から何かするのは事態を悪化させるだけだ.「大規模な森林火災と同じく,われわれは最善を尽くしてそれを封じ込めることである.」

FP AUGUST 29, 2013

Wounded Giant

BY ROSA BROOKS

かわいそうなオバマ大統領.彼は負けるしかない.

シリアで虐殺が続いている間も,彼は何もしない.批判派は弱腰と言う.戦略がない.アサド体制が国民を弾圧していることに無関心だ.アサドが国際法を犯しても気にしない.

シリアだけじゃない.エジプトもそうだ.アラブの春はその希望を失った.ロシアとの関係を「リセット」できなかったし,アジアへの「ピヴォット」も実現していない.

しかし,オバマの失敗だけでなく,グローバルなパワーの構造変化や,アメリカ国民が好まなくなったことで制約されている.オバマは,われわれが嫌う真実を語れないのだ.

アメリカの世紀は終わった.アメリカが望む世界に変える力はない.われわれには物を破壊する力がある.アフガニスタン,イラク,リビアで見たように.しかし,ミサイルを撃って,アサドの体制を安定した民主主義に変えることはできない.

オバマは,アメリカの限界を認めるように求めている.エジプトの問題も,シリアの問題も,アメリカには解決できない.われわれにできる問題に集中するべきだろう.これは正直な議論だ.孤立主義ではない.グローバルな関与を続けるが,軍事力の行使には限界がある.

FP August 29, 2013

An Imaginative, Creative Way to Deal with the Syrian Crisis

Posted By Stephen M. Walt

限定的な軍事力の行使で何を達成できると考えるのか? 懲罰的なミサイル攻撃で国際的な規範が守られるのか? 明らかではない.アメリカ国民は戦争に関与することを嫌っており,もし報復された場合に,オバマは重大な代償を支払わされる.アメリカにとって重大な利益に関係ない問題で軍事力を政治的に利用する,エリートたちの慢性病を見る.

さらに問題であるのは,シリア危機を外交的な転換に結びつける想像力がないことだ.危機を利用して,外交ゲームの流れを大きく変えるべきだ.

化学兵器による危機を,新しい外交イニシアティブにするべきだ.安保理の検討事項にして,各国が情報を提示すればよい.何より重要なことは,ミサイルを発射する前に,アメリカ,EU,ロシア,中国,トルコ,そして,イランを招いて,シリア問題に関する国際外交会議を行うべきだ.イランを招くことで,従来から求めていた地域的な役割をイランは認められる.アメリカはイランの建設的な役割を評価する.また,イランの核開発問題と切り離す.選挙に勝利した穏健派の新大統領Hasan Rouhaniを支援できる.

会議は停戦への可能性を示す.敵対勢力の支配地域にシリアが事実上,分割されたことを認める.それは権力をシェアする交渉への出発点となる.また,残虐な弾圧を行ったアサド体制を支援するロシア,中国,イランは,その体制との距離を取れる.

ミサイルを発射することが好きなアメリカ,という印象を拒む方がよいだろう.

FP AUGUST 29, 2013

Bunker Mentality

BY JAMES TRAUB

theguardian.com, Friday 30 August 2013

President Obama should listen to US and UK public: don't strike Syria

Mark Weisbrot

FT August 30, 2013

An American shot across the bows will not help Syria

By DavidGardner

Project Syndicate 30 August 2013

A No-Fly Zone for Syria

Charles Tannock

Project Syndicate 30 August 2013

Waking from the Middle East Nightmare

Javier Solana

中東には果てしない不安定性のスパイラルが起きている.

中東におけるアメリカの伝統的な同盟諸国,すなわち,サウジアラビア,イスラエル,トルコ,エジプト,湾岸諸国は,重要な紛争についての立場が敵対している.

サウジアラビアは,エジプトにおけるムスリム同胞団の権力掌握を恐れている.イスラム主義の運動が選挙で民主的に正当化されるのを望まない.それゆえ自国のイスラム主義者より穏健なムスリム同胞団と敵対した.

イスラエルは,エジプトの軍事クーデタを支持し,国際的に軍事政権を承認するよう求めた.また,エジプトの情勢やケリー国務長官の姿勢によって,パレスチナなどと,交渉を進めている.シリアの宗派対立は内戦をもたらし,エジプトの軍事クーデタは失敗だった.

何より重要なことは,イランが,予測可能な,地域の安定的大国として行動することだ.核開発計画の問題から目をそらすことはできない.

NYT August 31, 2013

Tripping on His Own Red Line?

By DAVID E. SANGER

FT August 31, 2013

Stop the politics on Syria

Ian Bremmer and Jon Huntsman

アメリカは主張し,アメリカは行動する.化学兵器の拡散を止め,中東地域の安定化を図る.アメリカだけがそれを主張する.しかし,良い選択肢はない.

それに反対する者は容易に得点する.しかし,アメリカの信用は損なわれる.政治家,民主党員,共和党員,などは団結する必要がある.

FP AUGUST 31, 2013

The Gamble

BY DAVID ROTHKOPF

FP AUGUST 31, 2013

Questions and Airstrikes

BY DANIEL BYMAN

The Guardian, Sunday 1 September 2013

Syria: the US public faces a grim reality TV choice

Jonathan Steele

FT September 1, 2013

Barack Obama risks morethanjust his credibility on Syria

By Edward Luce

FP SEPTEMBER 1, 2013

Showdowns and Shutdowns

BY NORM ORNSTEIN

FT September 2, 2013

The world would miss the American policeman

By Gideon Rachman

1899年,帝国主義の詩人Rudyard Kipling“Take up the white man’s burden”と唱えたように,今,アメリカの黒人大統領はあえて帝国主義的な言葉を使っても,世界の安全保障を担うアメリカの特別な役割を宣言する.シリアに対する軍事行動とは,それである,と.1945年以後のグローバルな秩序を築き,守ってきたのはアメリカであった.

しかし,アメリカは平和をもたらす野蛮な戦争を引き受けるべきか? アメリカ議会は論争する.国民の多くはそれを疑っているのだ.世界第4の軍事力を持ち,安保理の常任理事国でもあるイギリスの議会は,シリアへの軍事行動を否決した.アメリカ議会も否決するとしたら,世界は震撼するはずだ.

イラク,アフガニスタンの戦争,シェールガス革命,花吹雪の歓迎という幻想の消滅,それどころか,アメリカは守ったはずの人々から憎まれている.イギリス人の4分の3はシリア攻撃に反対し,アメリカ議会は2分している.

「限定された攻撃でしかない」というオバマの説明には不安が残る.もしアサドが再び化学兵器を使ったら,どうするのか? シリアで行われている,それ以外の人権蹂躙は放置するのか? シリアの将来について,アメリカには実行可能な政治的見通しが無いのか? ダマスカスにミサイルを撃ち込んで,後は事態が好転するのを願う,というのでは,余りにもお粗末だ.

アメリカはこれまで,グローバルな秩序を保証したが,世界中の紛争に関わらなかった.1980年代のイラン・イラク戦争は,シリアと似た,アメリカが信頼しない2国間の,化学兵器を含む戦争であったが,アメリカは関与していない.内戦や,特別な兵器の使用禁止に関与するようになったのは,1990年代から,ルワンダの虐殺や,ボスニアでの戦争,テロとの戦いで大量破壊兵器に注目したからだ.リベラルな軍事介入の原則を唱えた一人であるトニー・ブレアも,その立場が伝統的な,慎重かつ現実的な姿勢に戻ることを,2009年,介入の予想外の結果に関わらせて言及していた.イギリス議会は,ブレアの遺産を葬ったのだ.

たとえアメリカ議会が否決しても,伝統的な,限定的な武力介入に戻るだけである.アメリカが世界の警察官であることを拒んだわけではない.しかし,それがアサド体制の野蛮さを助長する以外に,より広範なメッセージを世界にもたらす.太平洋,アラビア湾岸,ロシア・ポーランド国境,など,グローバルな安全保障を築く「アメリカの警告」America’s “red lines”が疑わしくなるからだ.

オバマはシリアに警告したが,もし行動しなければ,その結果からアメリカの敵は学ぶだろう.日本,ポーランド,イスラエルなど,アメリカの同盟諸国も学ぶ.世界は,思っている以上に,アメリカという警察官に頼っているのである.

FT September 2, 2013

America must stick to a course on Syria

Richard Haass

アメリカの利害とアメリカ政府の影響力とは一致しない.選択肢はほとんどないし,どれにも欠陥がある.しかし,アメリカの重要な利害が関わるのだ.行動しないことは,政策の結果と同じくらい重要だ.

1.シリア政府の化学兵器使用に対する空爆を行う.2.軍事的関与は限定的である.3.シリアの近隣諸国,特に難民を吸収するヨルダンを助ける.4.外交的な努力を続ける.ロシアをアサド体制から切り離し,政府側の妥協を促す.それにはまだ時間がかかる.

アメリカは,それに従って長期的に行動できる戦略を必要としている.それは,ただちに体制や戦争を終わらせるものではない.しかし,緊急の利害を守り,内外におけるアメリカの安全保障に関するより大きな諸問題を解決するような軌跡を描くものである.

Project Syndicate 02 September 2013

Bombing for Morality

Ian Buruma

何を守るのか? 人命か? 何千人,何万人,・・・何百万人であれば? あるいは,殺し方が問題か? 守っているのは,オバマの名誉か?

NYT September 2, 2013

Debating the Case for Force

By THE EDITORIAL BOARD

NYT September 2, 2013

NATO Must Help Obama on Syria

By JAMES G. STAVRIDIS

BLOOMBERG Sep 2, 2013

What Obama Is Risking in Syria

By Stephen L. Carter

The Guardian, Tuesday 3 September 2013

Syria strikes: Obama risks being pushed into a prolonged military campaign

Simon Tisdall

FT September 3, 2013

Syria is following the same script as Afghanistan

By David Miliband

国際的な関与は先進民主主義諸国でますます支持されなくなっている.しかし,多極化した世界ではますます必要になる.人道的な介入は人道に基づきものであり,政治的支持ではない.しかし,介入には政治的結果が伴う.

我々にはより多くの人命を救出する能力がある.しかし,それには政治的意志が必要だ.戦争が増えれば,人道的な支援は増やすべきである.

Project Syndicate 03 September 2013

Calling Off America’s Bombs

Jeffrey D. Sachs

アメリカ政府はシリア人民の利益を何度も主張した.それは非常に疑わしい.アメリカはシリア内戦を,イランとの代理戦争と見なしている.

アメリカは仲介者や問題解決者から,シリア反政府軍の支援者に変わったが,それは重大な失敗であった.そのせいでアメリカは,国連のアナン元事務総長による和平工作を妨げた.

今や,シリア政府の化学兵器使用をめぐって(おそらくは,双方が使用しただろう),アメリカは非難を強め,再び国連を迂回して,軍事介入を計画している.実際,アメリカが考えているのは,イランやイスラエルのことだ.世界中に多くの独裁政権があるけれど,アメリカはその退陣を要求していないし,友好関係を維持している.オバマ政権は,中東における体制転換を目指したネオコンの思想を継承したのだ.

そうではなく,アメリカは化学兵器使用の証拠を国連に提出するべきだ.国連安保理で違反者を非難し,国際刑事裁判所に訴える.そして,ロシアや中国とも協力するのだ.もし彼らが協力を拒めば,それは国際的な重要問題で彼らが孤立するだけである.

NYT September 3, 2013

Red Lines Matter

By ROGER COHEN

NYT September 3, 2013

Arm and Shame

By THOMAS L. FRIEDMAN

問題は複雑だ.シリアの化学兵器使用を止め,アメリカはシリア内戦に巻き込まれず,シリアの国家が突然崩壊して化学兵器が拡散したり,さらに悪いことに,ヒズボラやイランの同盟者としてシリアが強化されたりするのを阻止しなければならない.この針の穴を通すような戦略として,オバマが採用した1回限りの“shock and awe” シリア軍事施設にミサイル攻撃する,というのは間違いだろう.むしろ,“arm and shame”の戦略が正しい.

シリア内戦を終結させるのは容易でない.おそらく,国際的な,多宗派による,連合軍が全土を支配するしかないだろう.そして,すべての武器を取り上げ,合意された支配に向けて移行期を監視する.21世紀にそのような軍事力の組織化が可能とは思えないし,イラクのケースは,それでも必ず上手く行くとは限らないことを示した.

最も起こりうるのはシリアの分割である.アサドを支持するアラウィート派,スンニ派,クルド人など.さらにスンニ派は,西側に近い世俗派のFree Syrian Armyと,アルカイダなど,イスラム主義,聖戦主義のグループに分かれる.

だから,アサドに対して化学兵器の使用に懲罰的なミサイル攻撃をするより,Free Syrian Armyの軍事訓練と(対戦車,対戦闘機を含む)武器供与を強化することが最善である,と思う.これには3つの利点がある.1.アサド体制を苦しめる.2.自分たちを守れる.3.穏健派の支配領域を拡大し,交渉と妥協をもたらす.

他方,限敵的な空爆は,アメリカの弱さを示す.シリア人の犠牲者が出た場合,アサドの戦争犯罪から離れて,焦点がアメリカに向けられる.

さらに,戦略を次に進める.あらゆる外交的手段を駆使して,アサドとその妻や仲間を化学兵器の使用に関して断罪する.国連安保理で彼らを指名し,国際刑事裁判所にも持ちこむ.それによって正義がなされる見込みはないが,世界が彼らの犯罪者の烙印を押すことは重大な意味を持つ.ロシアや中国,イランがアメリカの軍事介入を非難するのは容易である.しかし,アサドの犯罪,化学兵器の使用を擁護することは非常に難しい.

オバマが自分の信用を傷つけないために空爆すれば,アサドではなく,自分たちの行動に関心が向けられる.

NYT September 3, 2013

On Syria, a U.N. Vote Isn’t Optional

By OONA A. HATHAWAY and SCOTT J. SHAPIRO

FP SEPTEMBER 3, 2013

Bait and Switch

BY BRUCE ACKERMAN

WP September 3, 2013

Congress, think carefully before intervening in Syria

By Katrina vanden Heuvel

FP September 3, 2013

Applying the 8 Questions of the Powell Doctrine to Syria

Posted By Stephen M. Walt

The Guardian, Wednesday 4 September 2013

Syria's people need us now

Justine Greening

FT September 4, 2013

The west is accelerating its strategic decline

By François Heisbourg

FT September 4, 2013

History shows why we must take action in Syria

Philip Zelikow

SPIEGEL ONLINE 09/04/2013

Syrian Hell

Why We Must Not Forget the Lessons from Bosnia

A Commentary by Wolfgang Ischinger

NYT September 4, 2013

The Right Questions on Syria

By NICHOLAS D. KRISTOF

空爆に反対するあなたは,他に何をするというのか? 国際機関や平和的な手段を支持するけれど,その成果は無かった.毎月,5000人の市民が殺害されるシリアを放置するのか?

空爆への報復もあるだろう.しかし,問われるべきは,次の質問だ.“Are the risks greater if we launch missiles, or if we continue to sit on our hands?”

NYT September 4, 2013

Syria Is Not Kosovo

By JAMES P. RUBIN

FP September 4, 2013

Obama Can't Win

BY ROSA BROOKS

FP September 4, 2013

Dollars, Not Bombs

BY DANIEL ALTMAN

シリアの平和の価値はどれくらいか? アメリカが空爆する場合,クルーズミサイルの費用,何千万ドル,が内戦状態の国土に落ち,しかし,即座に平和になるとも思えない.もっと安価に平和を実現できるのではないか? どれを買う?

アメリカは援助を行い,平和維持を行っているが,それが平和や成長に役立つと思うからだ.しかし,それらが無駄になるのを恐れて,内戦状態にある国は支援しない.

しかし,平和の市場がある.売り手は,平和によって支払い,買い手は,平和に対して支払う意志を示す.平和な国はアメリカから多くの財・サービスを輸入するからだ.

シリアの人口は2100万人,その1人当たり所得は戦争中も3300ドルあった.シリアは所得の38%を輸入に充てたが,貿易は国内生産とともに減少した.隣国であるヨルダンは,1人当たり所得4900ドル,その73%を輸入した.レバノンは,9700ドル,49%であった.レバノンの輸入の9分の1,ヨルダンの輸入では16分の1が,アメリカからである.少なく見積もっても,平和で自由なシリアを回復した場合,年に70ドルの財・サービスをシリア人はアメリカから買うだろう.総額で15億ドルである.そこから約3億ドルがアメリカ政府の税収になる.

アメリカはこの税収をシリア国民に払い戻す.平和を維持するという条件で,アメリカ政府は,毎年,20年といった決まった期間,この額を支払う.現状に比べて,この政策はアメリカの財政に中立的である.

他国も,同様に,このシステムを採用して,シリアの平和に報償することができる.例えば,ヨーロッパの主要諸国だ.EUは地中海地域との経済関与政策を掲げているが,まだシリアの主要貿易相手ではない.EUが参加すれば,平和の報奨金は10億ドルも増える.アサドとその支持者は,敗北すれば全てを失うと知っている.だから,報奨金をアサドと分け合うことが,平和的な政権移行の交渉(その後の停戦,政権安定化)を促すだろう.双方が殺し合うよりもはるかによい.

平和の報奨金は,北朝鮮のような独裁体制や,コンゴ民主共和国のような内戦状態にも,適用可能である.より大規模な抑圧や内戦状態であるほど,報奨金は大きくなる.

さらに,この報奨金が(アメリカによる)非合法な輸出補助金と見なされるかもしれない.WTOを介して,報奨金を輸入量に関係なく一定額にするか,全加盟国が同じシステムを採用すればよい.

1990年代に,冷戦が終結するとき,アメリカはその報奨金を得て財政赤字が解消できる,と議論された.その後,アメリカは減税と2つの戦争で報奨金を使い果たしたが,別の形で手に入れることができる.

FP September 4, 2013

Idealizing the United Nations Charter

Posted By David Bosco

WSJ September 4, 2013

How Not to Persuade Congress on Syria

By KARL ROVE

The Guardian, Thursday 5 September 2013

For Syria there is no safe, morally pure solution

Jenni Russell

theguardian.com, Thursday 5 September 2013

Obama's 'pass the buck' policy on Syria

Michael Boyle

FT September 5, 2013

There is no one left to enforce the global rules

By Philip Stephens

SPIEGEL ONLINE 09/05/2013

US-Russia Stalemate

Merkel Must Take the Initiative on Syria

A Commentary by Frank-Walter Steinmeier

20でも,シリアは主要テーマになる.アメリカとロシアはシリアに関して対立している.しかし,双方が化学兵器の使用を禁止する点で共通の利益を持つ.メルケルは対立に加わらず,彼らが政治的解決策を見出すのを助けるべきだ.

NYT SEPTEMBER 5, 2013

Can Iran Help the U.S. in Syria?

アメリカが空爆を避けてイランの協力を求めれば,シリア停戦の交渉は進む.

あるいは,シリアをイランの同盟国として認め,アサドはイランに退去して安全を保証される.アサド体制が崩壊して,イランを憎むスンニ派のイスラム主義体制が成立するよりも良いだろう.

あるいは,テロ集団を抑えるためにシリア政権とヒズボラに軍事攻撃することが,イランとの核開発交渉も促進する.

WP September 5, 2013

Obama’s mixed messages on Syria

By Anne Applebaum

本当はできないことを,する,というアメリカ大統領の言葉は,戦争を長引かせた.


後半へ続く)