IPEの果樹園2013

今週のReview

9/2-7

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Bo Xilai薄熙来裁判 ・・・タイから学ぶ ・・・シリアへの軍事介入 ・・・バブルのサイクル ・・・エジプトと中東外交 ・・・“I Have a Dream” speech ・・・囁きのアメリカ外交

 [長いReview]

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l  Bo Xilai薄熙来裁判

NYT August 22, 2013

It’s All About Mao

By ZHENG WANG

Bo Xilai薄熙来裁判では,その汚職,セックス,殺人,政治的陰謀に,世界の注目が集まっている.しかし,重要なことは,経済・社会危機が深まる中で,中国共産党の権力掌握をめぐる姿勢について理解することである.

この裁判は共産党の汚職追放キャンペーンの一部である.しかし,Bo Xilaiが示したのは,今も共産党が称え,中国国民の多くが尊敬している,毛沢東の破滅的な戦略と政策を復活させたことだ.「文化大革命」をまねた,愛国的,革命的な歌の奨励,新富裕層に対する草の根的な糾弾,黒社会・マフィア撲滅と称した財産没収,を彼は重慶市で行った.また,「大躍進」に似た,大規模なインフラ建設と外資誘致は,GDPを高めたが,債務と優遇策に大きく依存し,持続不可能なものであった.彼は,貧困層に向けて,将来の間違った期待を高めることで,権力を強化した.

今,中国は多くの内部の危機を経験している.急激な社会経済変化は緊張や対立を生み出す.共産党の権力を維持するために,毛沢東の大衆動員が再現される不安は高い.この亡霊を,中国は根絶しなければならない.

Project Syndicate 26 August 2013

Why Bo Stole the Show

Minxin Pei

なぜ共産党はこの裁判を公開したのか? 法の支配や公平性に対する新指導部の約束を守った,と見るのは素朴過ぎる.証言記録は,初日以後,公開されなくなった.そして,その後はBoへの非難を繰り返している.党幹部とその家族の資産公開を求めた人権活動家の弁護士Xu Zhiyongも,正式に逮捕している.

この裁判は,共産党内部でBo Xilai失脚をめぐる最高幹部の内紛があったことを示すものだろう.彼の支援者や同盟者たちは,彼を救うことはできなかったが,彼の裁判をできる限り公開にするよう要求した.Boが大衆を魅了する力を考えれば,それによって彼の地位を法的に,そして,政治的に守ることができる,と信じたのだ.


l  タイから学ぶ

NYT August 22, 2013

Can Egypt Learn From Thailand?

By JONATHAN TEPPERMAN

インラックは追放されたタクシンの傀儡だと言われていた.しかし,成功の秘訣は単純だ.礼儀正しい,清潔なガバナンスと,敵との妥協,そして,経済の改善に焦点を絞る.

インラックは広範な政策目標を掲げ,貧困層の生活を改善するために政治の正常化,その任期を全うすることに重心を置いた.大胆な景気刺激策と改革キャンペーンとして,貧困層の支持者に利益をもたらす最低賃金の40%引き上げ,自動車購入の補助金,インフラ建設,敵対する富裕層の利益になる個人・法人への減税,などを行った.

それは,富裕層の既得権を維持し,それと交換に,彼女の権力を保持する,戦略的取引である.

インラック首相は王様と歓談し,エリート層や軍とも会談した.現行の憲法を擁護し,秋のタクシン元首相が帰国することは避けた.2010年に,軍が支持した政府によって殺害され,あるいは,投獄されたタクシン支持者たちの多くは,彼女の醜い取引を嫌っている.

しかし,政治的な平和が続くほど,経済成長が続くほど,民主的な政治の可能性は拡大し,分断は克服される.人々は街頭デモではなく,投票によって解決しようとするだろう.インラックの妥協に人々がイライラするのは,彼女の方針が正しい証拠である.誰も,望むものをすべて得ていないからだ.


l  シリアへの軍事介入

NYT August 24, 2013

In Syria, America Loses if Either Side Wins

By EDWARD N. LUTTWAK

シリア内戦に深入りすることをオバマ政権は拒むべきだ.どちらが勝利してもアメリカにとって望ましくない.

アサド体制が反政府軍を完全に制圧し,勝利することは破滅的だ.戦闘において支配的な要素は,イランの資金,武器,ヒズボラの兵士である.アサドの勝利は,シーア派イランとヒズボラのパワー,そして権威を高め,スンニ派のアラブ諸国とイスラエルにとって直接の脅威になる.

他方,反政府軍が勝利することも,アメリカと,ヨーロッパや中東における同盟諸国にとって,極めて危険なことだ.なぜなら急進派のほとんどはアルカイダと同類である.彼らがシリアで最強の部隊になる.反政府派が政権を組織すれば,その政府は反米的になる.イスラエルも国境の北に聖戦主義のシリアが現れることを冷静に受け入れられない.

2年前は,反政府軍の穏健派が政権を組織する可能性があった.また,2011年半ばには,より大きな正規軍を持つトルコのエルドアン首相が,シリアの平和を維持する意志を示していた.しかし,アサド政権のスポークスマンはこれを冷笑し,トルコの戦闘機を撃墜した.トルコ領内で何度も軍事衝突が起き,致命的な自動車爆弾テロが起きたとき,意外にも,トルコはこれに報復しなかった.それはトルコ政府が,シリアとの国境地帯や軍内部に,政府を支持しないグループを抱えているからだ.

アメリカにとって望ましいのは,彼らが引き分けになるまで戦闘し続けることだ.アメリカの敵である4者,アサドの軍隊,イラン,ヒズボラ,それに対してアルカイダと同盟するさまざまな過激派が戦い,互いに殺し合っている.アメリカは,その利害が攻撃されるときだけ参加する.

FT August 27, 2013

The steps that Obama must now take on Syria

By Zbigniew Brzezinski

同胞のシリア人を殺害したアサド軍の道義的犯罪は,オバマ大統領に特別な機会を与えた.第1に,破壊的なセクト間のシリア内戦に対するグローバルな世論を高める.第2に,地域全体に及ぶ紛争の勃発を防ぐ包括的な努力への,広範な,国際的参加を要請する.

シリア内戦は,宗派間・エスニック集団間の対立や,地域内の国家対立に競争する大国の関与が加わって,紛争の急激な拡大に向かっている.

シリア市民に対する化学兵器による攻撃は,戦争そのものを非難するグローバルな世論の一部として,処罰されるべきだ.さらに,各国の自己利益に従い,地域規模の紛争拡大を回避する広範な同盟を生み出すべきである.

安保理決議が拒否権によって阻止され,国連総会でも反対する諸国が多いと懸念するのは正しい.しかし,間違った結論だ.国連総会に訴えるのは,化学兵器の使用に対する道義的な非難決議であって,どの国を特定して非難するのでもない.軍事的な処罰については,アメリカが指導力を示して,地域規模の紛争拡大が生じる地政学的・経済的な結果を回避するため,同盟を結成する.

シリア内戦は,すでにセクト対立の波及を懸念されており,国家さす地方への波及など,ロシアも国益(ソチ・オリンピックも含む)を脅かされる.ヨーロッパ諸国だけでなく,その旧植民地諸国も,潜在的には最も影響を受けるアジア諸国,特に中国も,同盟に参加すべきだろう.

すでにシリアは,1世紀前のバルカン半島と同じ,大規模な戦争の引き金となりつつある.シリアにおける停戦の國際監視,イスラエルとパレスチナの和平合意,民主的な成立したイラン新政権との和解,を含む,

NYT August 28, 2013

Reinforce a Norm in Syria

By NICHOLAS D. KRISTOF

数日中にシリアに対するトマホーク・ミサイル攻撃が行われるだろう.それに関して懸念が生じるのは当然だ.・・・アサドの行動はエスカレートし,ヒズボラは西側への報復テロを企て,ミサイルが市民を殺傷してしまい,他国の内戦に深入りして,アメリカ自身の国家再建がおろそかになり,敵に無能さを示すだけである,など.

しかし,明らかにオバマの慎重な政策は失敗し,より強硬な政策を示すときであろう.すでにシリアの内戦は周辺諸国(Lebanon, Jordan, Iraq and Turkey)に拡大しつつある.穏健派は過激派に圧倒されてしまった.シリア軍が支配領域を拡大している.宗派対立が深まって,すでに10万人以上が殺害され,さらに加速している.このままではルワンダ規模の虐殺になる.

私は武器の使用を懸念するし,イラク戦争にも,アフガニスタンの増派にも反対した.しかし,外交と組み合わせた軍事力が人命を救うことを知っている.クリントン政権がコソボでやったし,最近はマリで,それを見た.問題は,アフガニスタンとイラクで過剰に関与したことが,我々を社会的なPTSDにしていることだ.

私がシリアに最後にいたのは昨年11月だ.夫と息子と,義理の息子を,アサド体制の下で亡くした祖母に出会った.彼女は5度目の家となる水漏れのするテントで,次に誰が死ぬか恐れていた.そして,すべての者と同じように,国際的な支援を願っていた.「私たちはこれが終わるように神に祈っています.そして,オバマにも.」

私たちは彼女に何と言うのか? 彼女を救う度胸はないのか? 彼女の孫たちがすべて殺されてしまうのを待つだけか? そして死者が数十万人に達しても,何もしない?

沈黙するより,立ち上がるべきだ.

The Guardian, Thursday 29 August 2013

Syria: it takes more courage to say there is nothing outsiders can do

Simon Jenkins

外国の紛争に関わることは,事態を悪化させることしかできない,と結論する勇気を持つべきだ.


l  バブルのサイクル

FT August 23, 2013

Emerging markets can avoid a crisis

By John Authers

調整か,危機か? それが問題だ.インド・ルピーなど,通貨が売られている.

新興市場が少なくとも10年間におよぶ成長で生じた不均衡を解消することを求められている.しかし,市場に弾みがつくと,危機にもなりかねない.

1.新興市場向け投資の背景は,特にアメリカの金融緩和であった.2.通貨価値が下落し,中国の成長が需要を拡大する間は,輸出が好調であった.3.中国がバブルを懸念し,かつてほど外貨準備を増やさなくなった.4.アメリカの株価上昇が新興市場向け投資を奪うようになる.5.さらにQEの終息に向けて,アメリカの債券市場も利回りを回復してきた.

しかし,変動レート制は危機を回避する.1994年のメキシコ,1997年の東南アジアと違い,ブラジルは資本流入で通貨が強くなりすぎたことを「通貨戦争」と非難していた.為替レートは,危機の安全弁となって,調整を助けている.ユーロ圏の周辺諸国がそれをよく示している.

新興市場の株価を正しく再評価するべきだ.循環を通じて,株式の価値は底に達している.ただし,1.過去のドル安が新興市場の株価上昇を増幅したことは再現されない.2QEをめぐって,アメリカの債券市場が荒れた場合,新興市場が最大の犠牲を強いられる.

FT August 27, 2013

Central bankers have given up on fixing global finance

By Robin Harding

Jackson Hole, Wyomingにおける会議に集まった中央銀行家たちは,世界がバブルを繰り返し,金融危機と通貨の暴落を経験することは避けられず,それに慣れるしかない,と考えた.国際金融システムの改革論が消えてしまい,宿命的な現状維持が承認されている.

Hélène Reyの論文によれば,資本移動と変動レートを受け入れても,各国は金融政策の自由など得ていない.つまり「トリレンマ」ではなく,「ジレンマ」なのだ.資本規制するか,アメリカ連銀のルールを受け入れるか? それに対して,Reyの助言は,的を絞った資本規制,厳しい銀行規制,そして,国内政策による信用ブームの回避,というものだ.・・・それは無理だろう.変化しやすい資本移動に,そのような対策は実現不可能だ.

国際金融システムの欠陥はよく知られている.経常収支不均衡を是正する,特に,黒字国に強制するメカニズムがないことだ.ある国の通貨(ドル)が国際通貨であるだけでは十分でない.なぜなら,世界経済の拡大に比べて,アメリカ連銀はドルを十分に供給しないから.

1930年代に,ケインズはこれに対する解決策を示した.国際準備資産を供給し,各国通貨を調整するルールを示し,持続的な黒字国に対して罰を与える.危機後に,Joseph Stiglitzや,中国人民銀行総裁から,同様の改革が提案された.しかし,いずれも実現していない.

その改革に向けた重要な一歩は,IMFの増資と,新興経済に対する投票権の増大,である.アメリカ議会は認めないだろう.しかし,以前より,改革は受け入れられる条件にある.今や,アメリカは準備通貨を供給することの不利益を知ったし,新興経済はアメリカの金融政策を輸入することの危険を知ったから.


l  エジプトと中東外交

WP Aug 23, 2013

The choice in Egypt

By Charles Krauthammer

エジプトのゼロサム・ゲームは,ムスリム同胞団と軍隊の間で,アメリカ外交に選択を迫っている.将軍Gen.Abdel Fatah al-Sissi3年待つべきだった.選挙でムスリム同胞団の大統領を辞めさせるのがよい.しかし,将軍は考えた.選挙が行われないかもしれない.

アメリカは,エジプト国民のために良い未来を選択する道義上の責任がある.ムスリム同胞団は,無能で,不寛容な,ますます独裁化する政治を示した.他方,軍隊も野蛮で,流血を繰り返した,望ましくない選択肢だ.しかし,民衆はモルシに革命の成果を奪われ,裏切られたことを理由に,軍隊の行動を求めた.

同時に,アメリカの戦略的利益を守らねばならない.すなわち,1.スエズ運河,2.アメリカとの友好関係,3.湾岸諸国など,アメリカの同盟諸国との関係,4.イスラエルとの和平協定,5.アメリカの反テロ作戦への協力,6.ムスリム同胞団が支配するガザ地区の隔離.こうしたアメリカの戦略的利益を,ムスリム同胞団は何一つ守らない.

軍隊のガバナンスは失敗する.速やかに兵舎に戻るため,テクノクラートによる暫定政府を樹立するべきだ.憲法を起草し,女性や少数派の権利を守り,地域レベルから選挙を始める.そして,地方政府,最後に国家レベルの選挙を行う.選挙は遅らせる方がよい.

半世紀に及ぶ冷戦の経験には,全体主義(共産主義,今はイスラム主義)と権威主義(多くは軍隊)との間で,より小さな邪悪さを選択するジレンマが多くあった.韓国,台湾,フィリピン,チリ,ブラジル,スペイン,ポルトガル(ファシスト政権が1970年代半ばまで続いた).チリのピノチェト将軍も,最後はアメリカの要求に屈して選挙を行った.共産主義やイスラム主義の体制で,選挙を受け入れたものがいくつあるだろうか.

Project Syndicate 26 August 2013

The Middle East’s Arc of Prosperity

Anne-Marie Slaughter

エジプトは内戦への瀬戸際にある.中東から北アフリカで,希望のある土地はなかなか見つけられない.

ケリー国務長官は中東和平に重点を置いた.注目すべき別の視点は,イスラエル・パレスチナ・ヨルダンの経済圏がもたらす潜在的な経済価値である.

中東から北アフリカで政治が混乱し,デモが起きる背景は,何よりも経済の困窮である.逆に,イスラエル・パレスチナは相対的に安定している.もし安全が保障されるなら,イスラエルはその高水準のインフラを西岸やガザ地区にも容易に拡大し,若い世代の企業家や技術者たちが国境の両側で協力し,繁栄を築くだろう.

中東地域に最も不足しているハイテク部門がイスラエルにはある.西岸地区がイスラエルとともに3G インターネット接続を利用可能になれば,大学を卒業する多くのパレスチナ人技術者が,ハイテク企業の拡大に参加するだろう.西岸とガザ地区を結ぶ輸送回廊,空港,港湾,を建設する計画もある.

計画の背景には,パレスチナの人口規模がある.サンフランシスコの湾岸エリアやカイロの大都市圏に匹敵する人口が,パレスチナに居住するだろう.計画の成功によって,彼らは経済的繁栄を実現し,イスラエルは政治的,社会的な利益を得る.

これまで,イスラエル・パレスチナは地域の不安定さと暴力の源泉であった.しかし,今や立場は逆転する.イスラエル・パレスチナが,その違いを受け入れ,民主的で,共存する土地になれば,政治的無秩序と経済的衰退の海に浮かぶ,繁栄と安定の島になる.

さらに自由貿易圏を形成し,ヨルダンを加えた関税同盟が成立するなら,ここが中東におけるベネルクスだ.(ベルギー,オランダ,ルクセンブルグは,ヨーロッパ共同体を生み出す中核地になった.)


l  “I Have a Dream” speech

FT August 23, 2013

A dream deferred

By Ayana Mathis

「不正義に初めて直面したときのことを思い出すだろう.今すぐに,全面的に改めるべきであることが,信じられないが,そのまま続いている,そんな間違った何かに直面したときだ.」 20世紀が大変動を繰り返した後に,幸いにも,われわれは生まれた.不正義の経験は個人に帰属している.われわれは自由に慣れてしまい,守る者も,改める者もいない,不正義の体制の中で生きる者の恐怖から,救われている.

しかし今も,町の裏通りや,駅前の公園,河川敷に,段ボールや板で囲んだホームレスたちの住処を観て,あなたが何も感じないとしたら,Martin Luther Kingを思い出せ.

NYT AUGUST 27, 2013

How Dr. King Shaped My Work in Economics

By JOSEPH E. STIGLITZ

キング牧師の演説を聞くと,私には様々な感情があふれる.私は若く,安全な場所にいたが,過去が残した不平等を知っていたし,不正を正すために行動した世代に属しているから.

私が大学Amherst Collegeの学生会議代表であったとき,クラスメートたちと南部へ行って,人種的な統合を助けようとした.人種を隔離する旧システムを守ろうとする人々が示す暴力をわれわれは知らなかった.黒人だけのカレッジを訪ねたとき,われわれは教育条件がいかに異なっているかを実感した.平等な競争,アメリカン・ドリームなどなかったのだ.


l  囁きのアメリカ外交

NYT August 24, 2013

Foreign Policy by Whisper and Nudge

By THOMAS L. FRIEDMAN

エジプトや中東に対するアメリカ外交についての風評を耳にする.・・・地域の人々は言う.「なんでも,アメリカが悪い.」・・・外交専門家たちは言う.「なんでもオバマのやることは失敗する.」・・・アメリカ国民は言う.「この地域にはうんざりだ.アメリカン・フットボールの話をしよう.」

Johns Hopkins University の外交専門家Michael Mandelbaumと話した.冷戦期のアメリカ外交は,「諸国家の外面的な行動に影響するもの」だった.その内面的な行動は無視した.それは同盟を組むために障害でしかなく,どのような違いが内部にあっても,ソ連との対決につながるしかなかったから.

冷戦後の外交は,「諸国家の内部要素やガバナンスに影響するもの」である,とMandelbaumは言う.中東がわれわれにとって重要であるのは,その強さによるのではなく,崩壊し,統治不能になった地域で問題を生じるからだ.

しかし,ボスニア,アフガニスタン,リビア,イラク,エジプト,シリアでわかったように,他国の内面的な行動を変えるのは非常に難しい.その国の政治文化を変え,伝統的な敵対し続けてきた者を和解させねばならないからだ.従来の武器“guns, money, and rhetoric“は役に立たない.「まるでスポンジで缶詰を開けるようなものだ.」

他国を内部から変えるには,審判として,警察として,コーチとして,動機付け,力で抑え込み,模範を示さねばならない.その住民たちが参加する意志を持たなければ,変化は維持されない.George W. Bushが,Saddam Husseinを権力から追放して,試みた.アメリカ軍が審判として駐留した間だけ,何とか社会契約の合意と和解を進めた.アメリカ軍が去ると,イラクの指導者たちはそれを継承しなかった.「われわれが弱いときに,相手は妥協などしない.」・・・「われわれが強いのに,相手に妥協などしない.」

余りにも早くイラクから撤退した.もっと深くリビアやシリアに関与するべきだ,とオバマは非難される.人道的な介入を求めるリベラル派は,それが長期の占領によって地域の政治文化を変える必要を考えていない.保守強硬派も,すべての者に対して,自由,平等,正義が優先される土地ではないこと,「自由」とは,イスラム主義者と世俗派とが異なる意味で支持することを理解していない.

旧外交は,悪いことが起こるのを止めた.しかし,良いことを起こす手段はない.もしシリアが化学兵器を使用したことを証明できたとしても,シリアを巡航ミサイルで罰するだけであり,それは正しいけれど,シリアが統一し,民主的・包括的な政治に変わるわけではない.それにはアメリカのより大きな関与と,シリアの多数派の支持が必要だ.

アメリカ国民は感じている.エネルギー効率は改善し,再生可能エネルギーも普及し,フラッキングや水平掘削技術があれば,アメリカは中東の石油に依存しない.中東への依存症から,嫌悪感に変わった.5年前なら,これほどの中東各国における紛争状態を聴いて,「1バレル200ドル」を心配するのが当然だった.しかし,1973年にGDP単位当たりのエネルギー利用水準から,今は60%も低くなっている.あるいは,2006年にアメリカが消費したエネルギーの36%が外国産石油である.「中東は中国の問題になった」と,専門家は言う.

オバマはそれをすべて知っているが,言えない.その結果,彼の外交は「唆し」と囁き(“nudging” and whispering)になる.それは満足できるし,楽しいが,歴史を作ることでも,最善を尽くし,善行に励むことでもない.しかし明らかに,これこそアメリカ人の多数が求めるものだ.

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The Economist August 17th 2013

Banyan: Climbing trees to catch fish

Buttonwood: Net gains and losses

Free exchange: Down towns

(コメント) エジプトの軍政がもたらす弾圧の恐怖,インドとパキスタンの軍事衝突,中国の成長モデルが示す転換局面,ユーロ危機に対してポーランド軍が抱く懸念,東欧や中国など,各地の孤児院が閉鎖される時代,イギリスのソマリア系住民,について面白い記事があります.

しかし,ここに挙げたのは,中国における「立憲主義」をめぐる論争.インターネットが高める生産性のシナリオ.デトロイトの破産が示す都市の盛衰・再生,です.

インターネットが生産性を高める理由はいろいろありそうです.ここで紹介されているのは,自営業者の感覚で仕事に励む半面,労働者は集団的な帰属意識を失い,資本家との交渉力を低下させる.そこに生じた膨大な利潤に対して,極端な金融緩和が積極的な投資を促す,というシナリオを考えます.それは途中まで来て,停まったままです.

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IPEの想像力 9/2/13

シリア空爆の提案が,イギリス議会では否決され,アメリカ議会の説得は続いています.それは日本から見ても,遠い,見知らぬ土地の問題である,と言えません.

もし国内で化学兵器を使用する犯罪が起きたら,(オウム真理教団がサリンを使用したケースですが),皆が徹底的な捜査と犯人逮捕に同意します.しかし,国際政治ではそうならない,という現実があります.

戦争に関しても国際法はありますが,それを守らせる明確な仕組みを欠いています.化学兵器を「貧者の核兵器」と呼ぶのも,個々の国家が生存のために戦争を最終的な選択肢として持っているからです.核保有国がその使用を否定しないように,化学兵器も秘密に(大量に)保有されていると思われます.

イアン・ブレマーは,「米国がシリアに軍事介入する本当の理由」(ロイター828日)として,化学兵器を使用しない,という国際基準.とアメリカのメンツ・威信を挙げています.

各国は,自国の独立や安全保障を重視し,その意味では,平和を維持することを求めています.しかし,平和が前提する秩序は,しばしば,互いに異なります.そのため,平和は自国の軍事的な優位(しかも,国際的に認められる,圧倒的な優位)によって実現するしかなく,あるいは,それを単独で得られない小国は,軍事同盟に参加します.

国際政治の基準が何であれ,ルワンダやコソボのような,宗派や部族間の紛争が大規模な虐殺に至るのを許さない,という姿勢を,私たちは守りたいと思います.そうであれば,その力を持つ国が,たとえば,アメリカが,助けてほしいと切実に願う市民たちの声を無視できるでしょうか? 国境の向こうで虐殺が続くのを,国際社会は受け入れるべきでしょうか?

シリアの内戦を止めるには,外部からの軍事介入ではなく,国際支援や外交も含めて,国内の政治システムが機能する条件を再生することです.オバマの「空爆」案は,地域的・国際的な安全保障体制の構築に向けた<触媒>として意味を持ちます.

アメリカは,イラク戦争によって,この地域に介入することの限界を知りました.民主主義や人権という価値は,国境を越えて,人類共通のものであると主張するとき,それが守られていない他国に介入するべきか,そのコストや実現の可能性を含めて,慎重な判断が求められるのです.

中東地域で欧米が最も重視する問題は,安定的な石油供給でしたが,今では,イランの核開発を阻止することです.パレスチナ難民が何十年も問題であり続けるのも,冷戦や中東情勢をめぐる国際政治に翻弄されてきたからです.虐殺を止めるだけでなく,テロや組織犯罪(麻薬,武器,人身売買,資金洗浄,脱税・送金ネットワーク)に対しても,国家は安全保障を理由に行動する時代になりました.

それは経済の秩序にも及びます.冷戦終結によって,アメリカが各地の独裁政権との関係を見直し始めたせいで,たとえば,通貨危機に陥った際,インドネシア政府への救済融資を拒んだのではないか,と言われます.Anne-Marie Slaughterは,平和と繁栄を結びつける人々の在り方が,地域や国境を越えて広がる姿を示して,変化を促します.

シリア空爆に関して,完全な答えも,容易な答えもありません.軍事的な基準,さらに,国家を基準とした発想が否定されます.そこに現れる,国際政治の望ましい在り方,平和をめぐる判断は,日本が外交や安全保障を考えるときにも必要です.

中国共産党の英字紙(chinadaily.com.cn)が紹介する,中日関係についての若者の声(My view of China-Japan ties)は,日本の若者の声であっても不思議でないほど,正当な,つまり,理性と利益,共感に基づくものです.

シリアをめぐる国際政治の変容とは,私たちが生きる時代の政治と経済の現実,および可能性を,誕生しつつある世界議会に向けて,問いかけるものだと思い至ります.

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