IPEの果樹園2013

今週のReview

9/2-7

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Bo Xilai薄熙来裁判 ・・・タイから学ぶ ・・・シリアへの軍事介入 ・・・バブルのサイクル ・・・エジプトと中東外交 ・・・ドイツとヨーロッパ ・・・“I Have a Dream” speech ・・・囁きのアメリカ外交 ・・・ネットワーク独占資本 ・・・中国式土地バブル

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  Bo Xilai薄熙来裁判

NYT August 22, 2013

It’s All About Mao

By ZHENG WANG

Bo Xilai薄熙来裁判では,その汚職,セックス,殺人,政治的陰謀に,世界の注目が集まっている.しかし,重要なことは,経済・社会危機が深まる中で,中国共産党の権力掌握をめぐる姿勢について理解することである.

この裁判は共産党の汚職追放キャンペーンの一部である.しかし,Bo Xilaiが示したのは,今も共産党が称え,中国国民の多くが尊敬している,毛沢東の破滅的な戦略と政策を復活させたことだ.「文化大革命」をまねた,愛国的,革命的な歌の奨励,新富裕層に対する草の根的な糾弾,黒社会・マフィア撲滅と称した財産没収,を彼は重慶市で行った.また,「大躍進」に似た,大規模なインフラ建設と外資誘致は,GDPを高めたが,債務と優遇策に大きく依存し,持続不可能なものであった.彼は,貧困層に向けて,将来の間違った期待を高めることで,権力を強化した.

Bo Xilai薄熙来は,毛沢東と同様に,個人崇拝を広めた.大衆集会において,扇情的な演説を繰り返し,メディアを使って,自分には驚異的な能力,ビジョン,知識がある,と宣伝した.彼が手書きした政治スローガンは,重慶市のいたるところに飾られ,今も中国社会の一部で人気がある.

毛沢東のイデオロギーと政策は,西側にとって政治的悪夢であるが,多くの中国人は毛沢東とその時代を懐かしく感じている.毛沢東は,中国にとって屈辱の100年を終わらせた.すべての者が彼のユートピアに参加できると鼓舞した結果,実際に何が起きたかを国民は知らない.彼の非人道的な犯罪行為,共産党が権力を掌握し続けるためにとった手段を,広く議論したことはない.少しは失敗を犯したとしても,毛沢東は偉大な指導者である.

こうして,Bo Xilaiだけでなく,中国指導部は毛沢東の過ちを繰り返すことを完全に否定できない.政治戦略として,権力継承を優先するのだ.中国の近代史はそれを示している.Dowager Cixi西太后は改革派を政治的に弾圧した後,自ら改革を推進した.Zhao Ziyang趙紫陽を失脚させたDeng Xiaoping鄧小平も,改革開放の指導者になった.

今,中国は多くの内部の危機を経験している.急激な社会経済変化は緊張や対立を生み出す.共産党の権力を維持するために,毛沢東の大衆動員が再現される不安は高い.この亡霊を,中国は根絶しなければならない.

FT August 23, 2013

Bo trial exposes lavish world of China elite

By Jamil Anderlini in Jinan

Project Syndicate 26 August 2013

Why Bo Stole the Show

Minxin Pei

この歴史的な公判において,Bo Xilaiは過去の失脚した指導者たちと違い,告発に対して力強く反論した.その主張は初日の映像とともに公開された.妻や警察署長を非難し,2人が秘密に交際していた,と主張した.贈賄を認めた幹部の供述も,精神的に圧迫されて行った自白も否定した.告発する側は,Bo Xilaiに対する尋問の不手際や無能さを示した.

なぜ共産党はこの裁判を公開したのか? 法の支配や公平性に対する新指導部の約束を守った,と見るのは素朴過ぎる.証言記録は,初日以後,公開されなくなった.そして,その後はBoへの非難を繰り返している.党幹部とその家族の資産公開を求めた人権活動家の弁護士Xu Zhiyongも,正式に逮捕している.

この裁判は,共産党内部でBo Xilai失脚をめぐる最高幹部の内紛があったことを示すものだろう.彼の支援者や同盟者たちは,彼を救うことはできなかったが,彼の裁判をできる限り公開にするよう要求した.Boが大衆を魅了する力を考えれば,それによって彼の地位を法的に,そして,政治的に守ることができる,と信じたのだ.

Bo Xilaiは期待を裏切らなかった.彼は政治的な敗北を受け入れていない.その復活を計算している.中国では事態が急激に変化する.裁判が終わっても,Boのショーは続く.


l  タイから学ぶ

NYT August 22, 2013

Can Egypt Learn From Thailand?

By JONATHAN TEPPERMAN

少し前まで,バンコクの街頭をデモ隊が埋め尽くすのは見慣れた光景だった.しかし,この2年間は例外になっている.もし分断化された社会が破滅の縁から甦れるとしたら.タイは他の社会にとっての希望である.

タイの混乱は,2006年,タクシンThaksin Shinawatra首相の追放で始まった.クーデタは,その後の数年に及んで,旧・半封建秩序を支持する「黄色いシャツ」と,地方や都市の貧困層に多いタクシン支持者の「赤いシャツ」とがぶつかった.街頭デモの衝突を繰り返す中で,4年間に4度の政権交代が起きた.

20118月,タクシンの妹,インラックYingluck Shinawatraが首相になった.その4年間の任期の半分を経たが,タイは鎮静化した.経済は,通貨価値,地価,株価の上昇が続き,この15年間で最高の状態だ.観光客も戻ってきた.

インラックは追放されたタクシンの傀儡だと言われていた.しかし,成功の秘訣は単純だ.礼儀正しい,清潔なガバナンスと,敵との妥協,そして,経済の改善に焦点を絞る.

インラックは広範な政策目標を掲げ,貧困層の生活を改善するために政治の正常化,その任期を全うすることに重心を置いた.大胆な景気刺激策と改革キャンペーンとして,貧困層の支持者に利益をもたらす最低賃金の40%引き上げ,自動車購入の補助金,インフラ建設,敵対する富裕層の利益になる個人・法人への減税,などを行った.

それは,富裕層の既得権を維持し,それと交換に,彼女の権力を保持する,戦略的取引である.

インラック首相は王様と歓談し,エリート層や軍とも会談した.現行の憲法を擁護し,秋のタクシン元首相が帰国することは避けた.2010年に,軍が支持した政府によって殺害され,あるいは,投獄されたタクシン支持者たちの多くは,彼女の醜い取引を嫌っている.

また,米の価格維持政策など,すでに問題も生じている.タイ経済は今も輸出に依存し過ぎており,富裕層と貧困層との不平等も拡大している.潜在する社会対立は,兄が帰国したり,85歳の王様がなくなったりすれば,表面化するかもしれない.

しかし,政治的な平和が続くほど,経済成長が続くほど,民主的な政治の可能性は拡大し,分断は克服される.人々は街頭デモではなく,投票によって解決しようとするだろう.インラックの妥協に人々がイライラするのは,彼女の方針が正しい証拠である.誰も,望むものをすべて得ていないからだ.

エジプト,ヴェネズエラ,ジンバブエなどで,人々はそのような混乱の終息をうらやましいと感じるだろう.


l  シリアへの軍事介入

FP August 22, 2013

U.N. Pressures Syria to Open Up 'Chemical' Battlefields

Posted By Colum Lynch

NYT August 24, 2013

In Syria, America Loses if Either Side Wins

By EDWARD N. LUTTWAK

シリア内戦に深入りすることをオバマ政権は拒むべきだ.どちらが勝利してもアメリカにとって望ましくない.

アサド体制が反政府軍を完全に制圧し,勝利することは破滅的だ.戦闘において支配的な要素は,イランの資金,武器,ヒズボラの兵士である.アサドの勝利は,シーア派イランとヒズボラのパワー,そして権威を高め,スンニ派のアラブ諸国とイスラエルにとって直接の脅威になる.

他方,反政府軍が勝利することも,アメリカと,ヨーロッパや中東における同盟諸国にとって,極めて危険なことだ.なぜなら急進派のほとんどはアルカイダと同類である.彼らがシリアで最強の部隊になる.反政府派が政権を組織すれば,その政府は反米的になる.イスラエルも国境の北に聖戦主義のシリアが現れることを冷静に受け入れられない.

2年前は,反政府軍の穏健派が政権を組織する可能性があった.また,2011年半ばには,より大きな正規軍を持つトルコのエルドアン首相が,シリアの平和を維持する意志を示していた.しかし,アサド政権のスポークスマンはこれを冷笑し,トルコの戦闘機を撃墜した.トルコ領内で何度も軍事衝突が起き,致命的な自動車爆弾テロが起きたとき,意外にも,トルコはこれに報復しなかった.それはトルコ政府が,シリアとの国境地帯や軍内部に,政府を支持しないグループを抱えているからだ.

結果的に,トルコの関与,トルコに支援された反政府軍がアサド体制を倒し,新政権を組織することはできなくなった.そして,アナーキー状態が広がり,反政府勢力内の均衡は,タリバン型のサラフィストなど,過激派に奪われた.スンニ派の過激派は宗教を理由にアラウィート派やキリスト教徒を殺害し,イラクからは聖戦主義者が来て,シーアを欧米に対する聖戦の拠点に変えつつある.

アメリカにとって望ましいのは,彼らが引き分けになるまで戦闘し続けることだ.アメリカの敵である4者,アサドの軍隊,イラン,ヒズボラ,それに対してアルカイダと同盟するさまざまな過激派が戦い,互いに殺し合っている.アメリカは,その利害が攻撃されるときだけ参加する.

それはシリアの住民にとって悲劇であるが,すでに現実である.戦闘のこう着状態がアメリカの目標であり,アサド軍の優位を挫く程度の武器援助を続ける.

彼らを一掃するには,アメリカ軍の全面的な侵攻と占領が必要であるが,国民は決して望まない.

FT August 25, 2013

If there are no limits in Syria, there will be none elsewhere

By David Gardner

FT August 25, 2013

Three questions on Syria for the US and its allies

by James Blitz

SPIEGEL ONLINE 08/26/2013

Assad's Cold Calculation

The Poison Gas War on the Syrian People

By Hans Hoyng and Christoph Reuter

FP August 26, 2013

'Obama Just Can't Say It'

Posted By Stephen M. Walt

FT August 27, 2013

The steps that Obama must now take on Syria

By Zbigniew Brzezinski

同胞のシリア人を殺害したアサド軍の道義的犯罪は,オバマ大統領に特別な機会を与えた.第1に,破壊的なセクト間のシリア内戦に対するグローバルな世論を高める.第2に,地域全体に及ぶ紛争の勃発を防ぐ包括的な努力への,広範な,国際的参加を要請する.

シリア内戦は,宗派間・エスニック集団間の対立や,地域内の国家対立に競争する大国の関与が加わって,紛争の急激な拡大に向かっている.

シリア市民に対する化学兵器による攻撃は,戦争そのものを非難するグローバルな世論の一部として,処罰されるべきだ.さらに,各国の自己利益に従い,地域規模の紛争拡大を回避する広範な同盟を生み出すべきである.

安保理決議が拒否権によって阻止され,国連総会でも反対する諸国が多いと懸念するのは正しい.しかし,間違った結論だ.国連総会に訴えるのは,化学兵器の使用に対する道義的な非難決議であって,どの国を特定して非難するのでもない.軍事的な処罰については,アメリカが指導力を示して,地域規模の紛争拡大が生じる地政学的・経済的な結果を回避するため,同盟を結成する.

シリア内戦は,すでにセクト対立の波及を懸念されており,国家さす地方への波及など,ロシアも国益(ソチ・オリンピックも含む)を脅かされる.ヨーロッパ諸国だけでなく,その旧植民地諸国も,潜在的には最も影響を受けるアジア諸国,特に中国も,同盟に参加すべきだろう.

すでにシリアは,1世紀前のバルカン半島と同じ,大規模な戦争の引き金となりつつある.シリアにおける停戦の國際監視,イスラエルとパレスチナの和平合意,民主的な成立したイラン新政権との和解,を含む,

FT August 27, 2013

Syria crisis: the cases for and against intervention

NYT August 27, 2013

Bomb Syria, Even if It Is Illegal

By IAN HURD

WP August 27, 2013

In Syria, U.S. credibility is at stake

By David Ignatius

FP AUGUST 27, 2013

How Assad United the Middle East … Against Him

BY DAVID KENNER, YOCHI DREAZEN

FP AUGUST 27, 2013

The Playbook for the Syrian War Has Already Been Written -- in Iraq

BY JEFFREY LEWIS

FP August 27, 2013

We're Going to War Because We Just Can't Stop Ourselves

Posted By Stephen M. Walt

The Guardian, Wednesday 28 August 2013

The Syrian regime cannot use chemical weapons without being punished

Malcolm Rifkind

The Guardian, Wednesday 28 August 2013

Even if Assad used chemical weapons, the west has no mandate to act as a global policeman

Hans Blix

国連安保理は信頼できる世界の警察官ではない.加盟諸国間の意見対立により,その行動は遅い.2003年のジョージ・ブッシュ大統領とは違い,オバマ政権は爆撃を好まないし,国連や国連憲章を侮辱しない.国連憲章は,自衛のためか,安保理が認めた軍事力の行使のみを許す.しかし,オバマも,ブッシュやブレアと同じように,安保理を無視して,イギリスとフランスなどの支持だけで,シリアへの軍事攻撃を命じるつもりだ.

アサド政権が化学兵器を使用したと主張し,自ら世界の警察官として行動するのは,賢明な判断ではない.国連の報告書を待ち,国連安保理の判断や他の加盟諸国の多くの声を聴いてから行動するのがよい.

戦争はしても,化学兵器は許せない,という.しかし,核保有国が化学兵器を犯罪と呼ぶなら,自分たちが核兵器を最初に使用するのも犯罪にしてはどうか? オバマは,優柔不断や受け身という国内の批判をかわしたいから,空爆するのではないか?

では,正しい対応とは何か? 国連や他の諸国からも証拠が提出され,国連安保理で議論し,化学兵器の使用をタブーとするような強い国際合意が形成される.そして,化学兵器だけでなく,全ての武器の使用を禁じ,すなわち,停戦を求めるべきだ.そして,関係する集団や諸国を集めて国際会議を開き,暫定政権を作る.

敵意を禁止することはできない? しかし,戦闘は外国から持ち込まれた武器と資金で行われている.それらの支援諸国が,影響力を梃子にして合意を求める.

theguardian.com, Wednesday 28 August 2013

Does the UN's Responsibility to Protect necessitate an intervention in Syria?

John Holmes

FT August 28, 2013

Echoes of the Iraq war are eerie but misleading

By Gideon Rachman

現在のシリア危機と2003年のイラク戦争に至る過程とを類似しているとみなすのは不気味である.すべての要素がそろっている.しかし,この類推は間違いだ.

2003年には,イラクが化学兵器や核兵器が保有している,と誰も証明できなかった.しかし,シリアで化学兵器は実際に使用された.誰が使用したか,は諜報機関の情報が問題になっている.しかし,問題の方向は全く違う.ジョージ・W・ブッシュとトニーブレアは,明らかに戦争を支持するように求めていた.逆に,オバマは軍事介入を避けたがっている.諜報機関は,彼が聞きたくない情報をもたらした.

国連決議を得られないのは同じである.しかし,国際政治情勢は全く異なる.2003年には西側陣営の内部で対立が起きた.独仏は,ロシアと組んで,米英に反対した.シリアの情勢は,すでに内戦状態が続き,混沌としており,これに対する攻撃は,イラク進攻に比べて,まったく小さな,限定した規模で行われるだろう.地上軍の投入もない.

アメリカと同盟諸国が取るリスクは非常に限られている.

NYT August 28, 2013

Reinforce a Norm in Syria

By NICHOLAS D. KRISTOF

数日中にシリアに対するトマホーク・ミサイル攻撃が行われるだろう.それに関して懸念が生じるのは当然だ.・・・アサドの行動はエスカレートし,ヒズボラは西側への報復テロを企て,ミサイルが市民を殺傷してしまい,他国の内戦に深入りして,アメリカ自身の国家再建がおろそかになり,敵に無能さを示すだけである,など.

しかし,明らかにオバマの慎重な政策は失敗し,より強硬な政策を示すときであろう.すでにシリアの内戦は周辺諸国(Lebanon, Jordan, Iraq and Turkey)に拡大しつつある.穏健派は過激派に圧倒されてしまった.シリア軍が支配領域を拡大している.宗派対立が深まって,すでに10万人以上が殺害され,さらに加速している.このままではルワンダ規模の虐殺になる.

私は武器の使用を懸念するし,イラク戦争にも,アフガニスタンの増派にも反対した.しかし,外交と組み合わせた軍事力が人命を救うことを知っている.クリントン政権がコソボでやったし,最近はマリで,それを見た.問題は,アフガニスタンとイラクで過剰に関与したことが,我々を社会的なPTSDにしていることだ.

私がシリアに最後にいたのは昨年11月だ.夫と息子と,義理の息子を,アサド体制の下で亡くした祖母に出会った.彼女は5度目の家となる水漏れのするテントで,次に誰が死ぬか恐れていた.そして,すべての者と同じように,国際的な支援を願っていた.「私たちはこれが終わるように神に祈っています.そして,オバマにも.」

私たちは彼女に何と言うのか? 彼女を救う度胸はないのか? 彼女の孫たちがすべて殺されてしまうのを待つだけか? そして死者が数十万人に達しても,何もしない?

沈黙するより,立ち上がるべきだ.

FP August 28, 2013

Restraining Order

BY MARC LYNCH

The Guardian, Thursday 29 August 2013

Syria: it takes more courage to say there is nothing outsiders can do

Simon Jenkins

限定的で,計画された,明確な,断固とした一撃,をアメリカ政府は考えている.しかし,その戦術の基礎はあいまいだ.それが化学兵器の使用を禁止するとは言えない.アサド政権が倒れるというロジックも成り立たない.何かしなければならない,という形で始まった戦争は歴史に多くある.空爆の軍事的・政治的な意味が誇張されている.地上軍の協力なしには,その成果はないだろう.

外国の紛争に関わることは,事態を悪化させることしかできない,と結論する勇気を持つべきだ.

The Guardian, Thursday 29 August 2013

The Syria debate: two cheers for parliament

Editorial

FT August 29, 2013

The west is playing in to Moscow’s hands on Syria

By Georgy Mirsky

YaleGlobal, 29 August 2013

Syria Is Dying

Azeem Ibrahim


l  バブルのサイクル

NYT August 22, 2013

This Age of Bubbles

By PAUL KRUGMAN

また一つ,BRICが壁にぶつかった.元から私はこの言葉が嫌いだ.ロシアは石油経済であり,全く仲間ではない.しかし,ブラジルはじめ,他の諸国は限界に直面した.

欧米経済の不調に,投資家たちは新興市場へ莫大な資本を流入させていた.それが逆流し始めたのだ.インドのルピー,ブラジルのレアルが下落し,インドネシアや南アフリカ,トルコなど,他の諸国も通貨価値が下落している.バブルがまた破裂した.

なぜバブルを繰り返すのか? アメリカ連銀の政策が責められる.しかし,金利の変化は連銀の仕事にともなって正しく起きた.金融緩和が責められる.金融ビジネスが新興諸国の政策を容易にし,同時に,危機から危機への変遷を強いている.

FT August 23, 2013

Emerging markets can avoid a crisis

By John Authers

調整か,危機か? それが問題だ.インド・ルピーなど,通貨が売られている.

新興市場が少なくとも10年間におよぶ成長で生じた不均衡を解消することを求められている.しかし,市場に弾みがつくと,危機にもなりかねない.

1.新興市場向け投資の背景は,特にアメリカの金融緩和であった.2.通貨価値が下落し,中国の成長が需要を拡大する間は,輸出が好調であった.3.中国がバブルを懸念し,かつてほど外貨準備を増やさなくなった.4.アメリカの株価上昇が新興市場向け投資を奪うようになる.5.さらにQEの終息に向けて,アメリカの債券市場も利回りを回復してきた.

しかし,変動レート制は危機を回避する.1994年のメキシコ,1997年の東南アジアと違い,ブラジルは資本流入で通貨が強くなりすぎたことを「通貨戦争」と非難していた.為替レートは,危機の安全弁となって,調整を助けている.ユーロ圏の周辺諸国がそれをよく示している.

新興市場の株価を正しく再評価するべきだ.循環を通じて,株式の価値は底に達している.ただし,1.過去のドル安が新興市場の株価上昇を増幅したことは再現されない.2QEをめぐって,アメリカの債券市場が荒れた場合,新興市場が最大の犠牲を強いられる.

Project Syndicate 23 August 2013

Brazil’s Growth Imperative

Danny Leipziger

FT August 23, 2013

Currency sell-off: Tragedy in three acts

By Victor Mallet

FT August 25, 2013

The ironies of India’s economic crisis

By Ruchir Sharma

The Guardian, Monday 26 August 2013

None of the experts saw India's debt bubble coming. Sound familiar?

Jayati Ghosh

Project Syndicate 26 August 2013

The Global QE Exit Crisis

Stephen S. Roach

アメリカ連銀がいわゆる量的緩和QEから抜け出すことを準備し始めたら,多くの新興経済が墜落し始めた.

連銀は罪などないというが,それは間違いだ.2008-09年の金融危機を,彼らは過度の金融緩和で吸収した.それで世界を危機から救ったと同時に,新興経済には高利回りを求める短期の「ホット・マネー」が流入した.2000年の半ばもそうだ.

新興経済は経常収支赤字を出すが,それはQEによって維持された.外から貯蓄を補ったのだ.現代の世界経済は慢性的に間違いを繰り返している.不況を嫌う政治家たちが騒ぎ出すと,連銀は金融緩和する.グリーンスパンは資産バブルに信用供給して成長をもたらし,バーナンキはホット・マネーの流出入をQEで増幅した.

新興経済は,その経常収支赤字を自ら是正せず,QEからの資本に頼った点で間違いだ.しかし,連銀も,この間違った政策のグローバル調整を始めた点で,一層大きな罪がある.

FP AUGUST 26, 2013

The Great Asian Sell-Off

BY DANIEL ALTMAN

BLOOMBERG Aug 26, 2013

Don’t Blame the Fed for Asia’s Problems

By William Pesek

FT August 27, 2013

Central bankers have given up on fixing global finance

By Robin Harding

Jackson Hole, Wyomingにおける会議に集まった中央銀行家たちは,世界がバブルを繰り返し,金融危機と通貨の暴落を経験することは避けられず,それに慣れるしかない,と考えた.国際金融システムの改革論が消えてしまい,宿命的な現状維持が承認されている.

Hélène Reyの論文によれば,資本移動と変動レートを受け入れても,各国は金融政策の自由など得ていない.つまり「トリレンマ」ではなく,「ジレンマ」なのだ.資本規制するか,アメリカ連銀のルールを受け入れるか? それに対して,Reyの助言は,的を絞った資本規制,厳しい銀行規制,そして,国内政策による信用ブームの回避,というものだ.・・・それは無理だろう.変化しやすい資本移動に,そのような対策は実現不可能だ.

国際金融システムの欠陥はよく知られている.経常収支不均衡を是正する,特に,黒字国に強制するメカニズムがないことだ.ある国の通貨(ドル)が国際通貨であるだけでは十分でない.なぜなら,世界経済の拡大に比べて,アメリカ連銀はドルを十分に供給しないから.

1930年代に,ケインズはこれに対する解決策を示した.国際準備資産を供給し,各国通貨を調整するルールを示し,持続的な黒字国に対して罰を与える.危機後に,Joseph Stiglitzや,中国人民銀行総裁から,同様の改革が提案された.しかし,いずれも実現していない.

その改革に向けた重要な一歩は,IMFの増資と,新興経済に対する投票権の増大,である.アメリカ議会は認めないだろう.しかし,以前より,改革は受け入れられる条件にある.今や,アメリカは準備通貨を供給することの不利益を知ったし,新興経済はアメリカの金融政策を輸入することの危険を知ったから.

BLOOMBERG Aug 27, 2013

The Fed and the Emerging Markets Peril

By Mohamed A. El-Erian

SPIEGEL ONLINE 08/28/2013

Economist Jayati Ghosh

India's Woes Foretell 'Chaos and Violence'

NYT AUGUST 29, 2013

India’s Economic Crisis

By SIMON JOHNSON

金融危機は時代遅れだ.政策は改善されて,欧米でも,新興諸国でも,危機は起きない,と言われた.それは間違いだ.資源の採掘や製造業の輸出に成功した国は,金融自由化を進めた国と同様に,投資を集め,海外からの融資を得て,経常収支赤字を出す.それは脆弱性を増し,通貨の減価はドル建債務の危機につながる.

資本移動は,いつ,どこでも不安定になる.インドは,その資本流出の5分前まで国際銀行や投資家によって好まれていた.ルピーが安くなることは,外貨準備がまだ危機を招く水準ではないから,次第に,純輸出を増やす(経常赤字を抑える).

アメリカ連銀は自国の景気や危機に対して政策を変更し,それゆえ新興市場などが資本の流入・流出に影響を受ける.それが資本市場の動き方である.

WP August 29, 2013

Pop goes the emerging-market bubble

By Robert J. Samuelson


後半へ続く)