IPEの果樹園2013

今週のReview

8/26-31

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インド通貨危機 ・・・アメリカの中東外交 ・・・風立ちぬ ・・・PEMEXの改革 ・・・シンガポールの不安 ・・・政府・課税の根拠 ・・・中国をめぐって ・・・世界資本市場 ・・・主要国政策の不確実性 ・・・ジブラルタルの紛争 ・・・政策立案の敗北主義 ・・・Bo Xilai裁判 ・・・FRB次期総裁 ・・・シリアでの化学兵器使用

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  インド通貨危機

NYT August 15, 2013

India Seeks to Overhaul a Corporate World Rife With Fraud

By JEN SWANSON

FT August 16, 2013

Gloomy India tries to staunch the economic bleeding

By Victor Mallet in New Delhi and James Crabtree in Chennai

インド政府は予想外にも資本規制を導入したが,それは市場の不安を強め,資本逃避を促しただけだった.6年間の自由化で流入していた直接投資が流出するのを止めるには,諸要因の有毒な連鎖を断ち切るしかない.すなわち,ルピーの下落,成長の減速,経常収支と財政とが示す双子の赤字,高インフレの継続,である.

外国支店の悪用,ルピー下落を予想した投機,なども指摘されるが,場当たり的な緊急対策が危機を深めてきた.例えば,金輸入の制限だ.もっと長期の投資を促す政策が必要だ.財務大臣のPalaniappan Chidambaramは何年もそれを試みてきたが,官僚制は動きが遅く,自由化に反対する政治家は与党内部からも強く反対する.

アメリカ経済が回復し,量的緩和が終わるという予告で,新興市場からアメリカに資本が戻りつつある.インドはルピー下落が続き,インフレと不況を併発する「スタグフレーション」も懸念されている.

NYT AUGUST 16, 2013

The Rupee’s Decline

By VIKAS BAJAJ

NYT August 18, 2013

A Summer of Troubles Saps India’s Confidence

By GARDINER HARRIS and BETTINA WASSENER

中国と常に比較されるインドだが,最近の3つの事件は,インドが中国のようには台頭しない,という不安を強めた.すなわち,インドの最新鋭潜水艦が爆発,沈没した事件.カシミールにおいてインドの管理地域で,最近,インド軍が28人を殺害した事件.また,インド株価指数が4%近く下落し,ルピーも下落し続けていること.

「インドはアジアの病人だ」と言うエコノミストもいる.問題は長年にわたるものだ.インフラ整備が不十分で,投資の決断や改革もできない.これまで資本の流入が埋めていたが,経常収支の赤字も続いている.アメリカ経済の回復で,資本が流出すれば,ルピーの下落に歯止めがなくなってしまう.それはインド経済に零細な,業績の悪い製造業や鉱業しかないからだ.他方,石油や石炭,重要な物資を輸入に頼っている.

軍の整備は中国に大きく遅れ,いまだにロシア製の旧式潜水艦を使っている.パキスタンとの関係が安定しなければ,地域の影響も限られているだろう.

FP AUGUST 19, 2013

If India's Really Booming, Why Is the Rupee Crashing?

BY DANIEL ALTMAN

FT August 21, 2013

The dithering state is at the heart of India’s problems

By David Pilling

投資家たちは,インドから資本が吸い出されていく音を聞くのだろう.政府やインド準備銀行の対策はパニックを刺激している.

ルピーの下落が輸出を促し,経常収支が均衡するという希望はある.それも頼りないものだが.1991年には外貨準備が数週間分しかなくなっていたが,それに比べるとまだ十分な外貨がある.問題は,短期と長期に分けて考えるべきだ.

短期的には,ルピーの為替レートを安定させる.下落する限り,金利を引き上げ,社会不安を生じても財政赤字を削るしかない.長期には,外国投資家の信頼を回復するために,その最大のネックとなっている,インフラの建設・整備を進めることだ.それには土地利用や資源,環境をめぐって対立する関係者を合意させる国家の役割が重要だ.

インドの成長が伸びない問題の核心にあるのは,国家に対する信頼が欠けていることである.


l  アメリカの都市

NYT August 15, 2013

What Really Ails Detroit

By STEPHAN G. RICHTER

デトロイトの破綻は,製造業に依拠したアメリカの諸都市に共通する問題だ.アメリカ企業は競争相手がヨーロッパやアジアで現れても,その事を真面目に考えなかった.それは経営者の責任だ.しかしまた,労働者たちは高度な熟練を形成しなかった.それは組合の責任だ.

アメリカ社会は技術革新のために社会の諸集団が協力することに劣っていた.グローバリゼーションは,その問題点を示しただけである.

NYT August 15, 2013

No Banker Left Behind

By THE EDITORIAL BOARD


l  アメリカの中東外交

FP AUGUST 15, 2013

Speak Softly and Carry No Stick

BY JAMES TRAUB

NYT August 16, 2013

Democracy in Egypt Can Wait

By CHARLES A. KUPCHAN

アメリカ政府は,エジプトに,即時の選挙実施と民主主義体制の復活を要求するべきではない.むしろ移行期の政権が安定し,民主的ガバナンスのための条件を整備するよう要求することが望ましい.

オバマ大統領はエジプトの将軍たちに,即時,選挙で決めた民間政府に,責任を持って,権力を移管せよ,と求めた.しかし,移行期の不安定な政府に選挙を求めると,しばしば,機能しない,リベラルではない政権が選ばれる.むしろ,暴力行為を抑え,政治的弾圧を控えさせる.そして国家の基本的な機能として,経済の再生,武装した急進派への対抗策,イスラエルとの和平継続,を求めるべきだ.

アメリカ政府が,その外交の目標を民主化の推進から後退させる理由は3つある.

1に,民主化を急ぐことは,歴史的に,国内秩序の崩壊,国境を越えた不安定化を招いた.民主主義的な統治の伝統がない国で選挙を行うと,勝利した側がすべての優位を独占し,権力保持を永久化しようとする.漸進的な改革の方が優れている.選挙前に,憲法によって権力を規制し,司法改革,政党制や民営化の実現,などが必要だ.それらは,1688年の名誉革命の後,イギリスも実現したのは20世紀になってからである.

2に,中東地域に特有な問題がある.イスラム教は政治との一体性を主張し,宗派や部族が忠誠心を侵す.イスラム圏と民主主義が矛盾するわけではないが,宗教は社会的結束のために強く働いた.中東において,西側の政教分離をすぐに求めることはできない.それは西側でも,多くの戦争と宗教改革の後に,ようやく実現した.世俗派や部族によって民主化を進めることは不確かである.民主主義と一緒に現れる国家への帰属意識,ナショナリズムがエジプトではまだ弱い.

最期に,アメリカが求める民主化は妥協を繰り返すことで,アメリカ外交への政治的信認を損なってしまった.その主張を現実の行動に合わせる方が,アメリカは影響力を示せる.

緩やかな変化を求め,政権の基礎を安定化するべきだ.責任ある,効果的な政府ができれば,民主主義はそのあとでよい.

FP AUGUST 16, 2013

A Model of American Opacity

BY ROSA BROOKS

FT August 19, 2013

Stability, not an election, is what Egypt needs now

By Gideon Rachman

多くの要求事項を並べたリストではなく,優先順位をつけるべきだ.アメリカとヨーロッパは民主化の促進を第1に優先する.民主的な政府は,より繁栄し,より平和で,西側に友好的である,と考えたからだ.しかし,それは現実に合致しない.楽園は実現しなかった.

経済は崩壊し,対立が激化,地域全体に不安定化が広がって,テロ組織に好都合な無秩序状態に満ちている.民主化の推進を唱え続けることは,現実的でないばかりか,危険でもある.エジプトの軍事政権は対決によってムスリム同胞団を圧倒する決意を固めている.選挙の結果を重視しない者同士が,選挙を通じて和解することは不可能だ.

内戦を避けることが最優先である.もしそれが政治的な和解で実現できないなら,欧米は人権擁護とクリーンな政府を求めるべきだ.それも難しいが,可能である.政治的弾圧を緩和すれば,経済の回復に協力する.軍事政権が寄生的な抑圧体制に変わることを防ぐ.

クリーンな政府,経済成長,政治的正統性を高めたシステムの下での方が,民主主義が機能するための諸制度が社会に普及する余地がある.すなわち,独立した司法,自由なメディア,学校,など.

それには時間がかかる.チリでは,ピノチェットの軍事クーデタから民主主義が復活するまでに,17年を要した.

NYT August 19, 2013

The Egyptian Debacle

By ROGER COHEN

FP AUGUST 19, 2013

Obama's Egypt Policy Makes Perfect Sense

BY AARON DAVID MILLER

アメリカ外交の迷走を非難する声は強い.ネオコンもリベラルな国際介入主義者も,オバマ政権を強く批判する.しかし,オバマ外交は一貫している.それは,5つの司令に要約されるだろう.

1.中東よりも中産階級を重視せよ.2.アフガニスタンとイラクに注意せよ.3.アメリカの敵を殺せ.4.既知の支配者と手を組め.5.アメリカの核心的利益を守れ.

オバマは世界秩序の再建よりもアメリカ社会の再建を重視している.移民法改正,予算編成,オバマケア(社会保障制度),インフラと教育.任期は限られているのに,シリア内戦にまで手を出せない.

アフガニスタンとイラクで,アメリカは史上最長の戦争を戦った.6000人以上の戦死者を出し,数兆ドルを費やした.オバマは,エジプトとシリアに対する政策を,アフガニスタンとイラクの教訓から導いている.アメリカが中東社会の内紛に介入することは,影響力が限られている.カブールやバクダッドでしたことを想えば,エジプトの将軍たちに10億ドルの支援をするかどうかなど,重要ではない.またアメリカ軍の介入は,達成可能な目的に対して限定されて行うべきである,とオバマは考えたのだろう.

オバマがこうした戦略を採用した事情は,同時に,ドローンによるテロリストの殺害を支持した対テロ戦略に明確だ.それが,アメリカの安全を確保する,というオバマの戦争である.911の再発を許さない,という姿勢を崩すことはできない.

内政と異なり,外交において,オバマは現状維持を選択している.歴史の正しい側に立ち,アメリカの価値を守る,という大統領が,中東において最も重要な影響力を王族たちの現状維持に依存している.それは矛盾した姿だが,混乱の中では,現状維持と安定化を支持するのが正しい.エジプトへの軍事援助も,シリアの反政府派に対する軍事支援も,イスラエルによる空爆を抑えたのも,オバマの反テロ戦略を維持するためだ.そして,中東の秩序を決めるのは中東の人々に委ねる.

オバマは5つの核心的利益と2つの選択を意識している.すなわち,イラクとアフガニスタンから撤退する.アメリカに対する攻撃から安全を確保する.アラブの石油に対する依存を減らす.イスラエルの安全に対する約束を守る.イランの核武装を阻止する.最後の点をのぞいて,オバマは成功している.また,2つの選択とは,アラブ諸国とイスラエルとの和平,中東世界の民主化推進,である.

ケリー国務長官やオバマが何を言おうとも,アメリカは核心的利益に従って動いている.

FT August 20, 2013

Egyptians will no longer put up with authoritarians

By Ezzedine Choukri Fishere

FP August 20, 2013

Egypt's Algerian Moment

BY ROBERT ZARETSKY


l  風立ちぬ

FT August 16, 2013

Japan’s culture warriors enlist anemblemofthe imperial past

By David Pilling

靖国神社の遊就館は,日本のリビジョニストたちの礼拝所であるが,入って最初に目につくのはゼロ戦(三菱重工業のA6Mゼロ式戦闘機)である.1941年の真珠湾攻撃のときから,1943年には敗戦が避けられない状況でも神風攻撃(特攻)に,ゼロ戦が使用された.

宮崎駿は,世界的な高い評価を得たアニメ映画の監督であるが,その平和主義的,左派的な傾向に反して,このゼロ戦の設計者に関する新しい映画『風立ちぬ』The Wind Risesを作った.宮崎は,その設計者の才能を称えている.

日本の保守派や右翼がこの映画を大いに歓迎した,と思うかもしれない.しかし,インターネット上で,彼らは宮崎を「裏切り者」,「反日」と非難している.宮崎は,(中国人・朝鮮人・韓国人・日本人のすべてに対して,また,その他のアジア諸国で)従軍慰安婦への十分な補償や,尖閣諸島の日中共有,など,保守派にとって許せない意見を示しているからだ.宮崎はインタビューで,この映画を作った動機として,ゼロ戦やその設計者を保守派の人々から取り戻すことである,と述べている.

日本人の意識は確かに変わった.安倍首相は終戦記念日の靖国参拝を控えたが,その談話には以前と違う姿勢を示した.「謝罪外交」を嫌う気分が若者には強い.しかし,安倍の目指す憲法改正にはまだ多くの障害がある.

何より,宮崎の『風立ちぬ』が,4週連続で観客動員のトップであること.

WSJ August 22, 2013

Japan's Misleading Tax Debate


FT August 16, 2013

The west desperately needs more madcap schemes like the Hyperloop

By Stian Westlake


Project Syndicate 16 August 2013

No Exit from Afghanistan

Jaswant Singh


Project Syndicate 17 August 2013

Will Turkey Weather the Middle East Storm?

Kemal Derviş


l  ジャマイカの改善

NYT August 17, 2013

Jamaica Fights to Break Grip of Violent Past

By DAMIEN CAVE

ジャマイカの首都,キングストンでは,毎晩のように銃撃,放火,殺人が起きていた.しかし,今は違う.街灯の明かりで裸足の子供たちによるサーカー試合が行われ,以前は殺し合った対立するギャングのメンバーたちが地区のパーティーに集まる.この地区に,3年間殺人は起きていない.

麻薬取引や組織犯罪と闘う南アメリカやカリブ海諸国の中で,ジャマイカは数少ない成功例だ.ジャマイカ政府は,率直に弱点を認め,外部からの協力や支援を受け入れた.20105月,最も強力な麻薬組織の支配者Christopher M. Cokeを逮捕する警察との銃撃戦が.国民の意識を変えるきっかけになった.

その銃撃戦は大きな犠牲を出した.その結果,人々は平和を求め,警察は信頼を高め,政治腐敗が減り,ギャングたちはCokeとの関係を悔い,互いに和解し,若者たちが農場に戻り始めた.


l  PEMEXの改革

FT August 18, 2013

Not all forms of resource nationalism are alike

By DavidGardner

1938年,カルデナスLázaro Cárdenasがメキシコの石油会社を国有化したとき,世界の貧しい諸国は歓迎した.石油は我々のものだ,という宣言は,ジャコバン派の革命を示した.

75年後,現在の大統領Enrique Peña Nieto Pemexへの民間資本参加を認めるとき,何が変わるのか? 資源が国有化され,企業が多国籍化した今,ラテンアメリカでも,新興諸国でも,政府は技術や資本を求めている.特に,海底油田の採掘など,最新技術だ.資源ナショナリズムは変化するしかない.ナショナリズムと革命,石油地代の政治的利用は今もある.しかし他方で,プラグマティックな国際交渉も始まっている.石油は支配者の者だ.支配者は国際石油資本と共謀する.

資源ナショナリズムは,さまざまな国家や支配,制度を構築する.地下資源を国有化することではなく,政府はその国の持続的な富の源泉を,何であれ,確実にすることだ.


l  シンガポールの不安

FT August 18, 2013

Singapore PM promises ‘strategic shift’ to protect city state’s success

By Jeremy Grant in Singapore

シンガポールのLee Hsien Loong首相は,「国家建設」に対する戦略転換を約束した.そして,過去20年間のシンガポールの奇跡に対するさまざまな挑戦に応える新しい計画を説明した.

2時間のテレビ演説で,首相は有権者の不満に対する人民行動党PAPの根本的な反省を示した.その結果,政府が医療保障にもっと支出し,1960年代の国家建設に貢献した世代が,もっと安価に住宅を手に入れることや,社会的なセーフティーネットを築くようにする,と述べた.

シンガポールは,バーレーンやカリブ海の小島ほどの面積しかないが,この10年の平均成長率は5%から7%であり,アジアの金融ハブ拠点となっている.法人税や個人税率は低く,犯罪もほとんどなく,外国投資を集めている.

しかし,出生率が低いため,次第に外国人・移民に依存するようになった.また,スイスに匹敵する一人当たりGDP5USドルと,ジニ係数で示される所得格差が増大し,公平で公正な社会のために,首相も政府介入の必要を認めた.問題は,製造業の生産性が低いことにもある.

野党は,かつてない得票を示し,PAPの危機感を高めた.リー首相は,シンガポールが第三世界から第一世界になった後,われわれが向かう社会の在り方,シンガポール人とは何か,という問題について,長期的な答えを求められている.

リー首相はFacebookTwitterにも積極的である.しかし,政治的な多元主義や,ソーシャル・メディアの扱い方を政府は模索している.

FT August 19, 2013

Singapore’s strains


l  政府・課税の根拠

FT August 18, 2013

America’s last frontier shows the need for government

By Martin Dickson

「アラスカの川の中に立って,フライフィッシングの糸を飛ばし,サケが食いつくのを待つとき,現代の政府に関して意外な考察に至る.」

サケ釣りができる時間や釣り上げる魚の数は,州当局(the Alaska Department of Fish and Game)によって厳しく規制・監視されている.アラスカは,共和党の副大統領候補に指名されたサラ・ペイリンが有名であるように,政府に反対するリバタリアンの強い土地である.しかし,フィッシング規制は公共財の古典的な例であり,規制がなければサケは乱獲されてしまう.

防衛,インフラ,教育,など,優れた公共財の供給こそ,人々が政府を支持する理由である.経済の安定性や健全な銀行も,同様に,公共財である.2008年の金融危機について,今も人々は苦しんでいる.

確かに,連邦政府はイデオロギーの対立で行き詰まっているが,州政府や都市は公共財の供給に関して広く合意している.Bruce Katz and Jennifer Bradleyが新著で指摘するように,都市の指導者たちが,大学,企業幹部,労働組合,環境保護,市民組織,チャリティーなどとともに,アメリカを革新している.

FT August 21, 2013

Why innovation needs the help of an active state

By Mariana Mazzucato

成長は,インフラや教育に融資し,基礎研究に関わる市場の失敗を正すだけでなく,技術革新の実践を直接に支援するべきだ.IMFも,単に財政赤字を削るのではなく,その中身を区別しなければならない.

イノベーション指向型の成長モデルを実現するには,政府の積極的な支援が必要だ.

NYT August 22, 2013

The Government and the Entrepreneurs

By SIMON JOHNSON


l  中国をめぐって

FT August 18, 2013

Search for a safer path in the race for Asia

Review by Gideon Rachman

オーストラリア防衛省にいた,現在は大学教授のHugh White による新著(The China Choice: Why We Should Share Power)を紹介する.

Whiteによれば,アメリカと中国は衝突するコースにあり,このままでは戦争が避けられない.アメリカも中国も,アジアでの支配的な地位を独占できない.両国は調整し合って,パワーを共有しなければならない.しかし,オバマ政権は中国に対する「封じ込め」を明確にした.

こうした議論に反対する意見(中国の経済崩壊・政治不安,米中の経済的相互依存)を,彼は明確に否定する.中国がアメリカの市場規模を抜くことも,アメリカが空軍力の優位に頼ることも,それだけでアジアの覇権を確立することにはならない.Whiteが支持するのは,ナポレオン戦争後の「ヨーロッパ協調」をアジアで再生することだ.

しかし,それも現代に実現することはないだろう.大国の指導者たちも有権者の意向に振り回される.アメリカの経済規模を超えた中国が,遠くのアメリカに対して,アジアにおける覇権を共有するだろうか? むしろ,Whiteは否定するが,核抑止,経済的国益,政治的な勢力均衡,を組み合わせる現在の国際秩序が,中国を含めたアジアにも再生するだろう.

FT August 19, 2013

How China can defuse its looming demographic crisis

By RobertPozen

中国の一人っ子政策は,その年金システム構築にかかるコストを考慮して,改革されるだろう.二人の子供が認められるべきだ.

Project Syndicate 19 August 2013

China’s New Growth Order

Andrew Sheng, Xiao Geng

BLOOMBERG Aug 19, 2013

It Looks Like 1998 Again in China

By Willie Pesek

FT August 20, 2013

Asia’s debt conundrum reawakens ghosts of 1990s crisis

By Josh Noble in Hong Kong

現在は,1998年のアジア金融危機に似てなくもない.アメリカからの大量の資本流入が,流出に変わって,それに依存していたインドやインドネシアなどで,ある種の通貨危機が起きている.政府・中央銀行は,通貨危機にも,不況にも,対処できる.しかし,両方を同時に対処する方法はない.

中国経済の減速は,危機の感染を懸念させる.アジアの債務依存率は,世界金融危機後の輸出減少に対して,金融緩和により増大したからだ.中国の企業や銀行にも,債務危機の懸念がある.しかし,当時に比べて,自国通貨で資金調達できる債券市場も整備した.地域の協力制度も発達してきた.

SPIEGEL ONLINE 08/20/2013

'Liconomics'

China's Green Revolution Arrives

By Gerald Traufetter and Bernhard Zand

中国は,都市化・サービス化とともに,環境ビジネスも拡大する.それが「リコノミクス」Liconomicsである.

YaleGlobal, 22 August 2013

China-US Vie for World Approval

Bruce Stokes

Project Syndicate 22 August 2013

China’s American Bailout?

Alexander Friedman

21世紀の世界経済は,中国からアメリカへの資本移動が形成する.ただし,それは普通の民間投資ではなく,中国人民銀行PBOCの持つ35000億ドルのアメリカ財務省証券が主要な形態である.

これほど少数の者が,世界のマクロ変数を動かす時代は過去になかった.もし彼らがアメリカの債務に対する信用を失えば,証券は売却され,ドルの価値は暴落する.しかしそれは,国務省も分析したように,人民元の価値を急騰させ,中国の輸出を失わせる.アメリカ以上に中国が損失を被るのだ.

しかし2009年,この共棲関係は崩壊し,中国のドル債売却が彼らの利益になっている.中国政府は,むしろ中国の銀行融資や土地投機を拡大することで,金融危機後の不況を回避した.その結果,中国で生じた不良債権は1兆ドルに達する,と推定されている.

中国政府は,アメリカのように,銀行システムの健全化のために資本注入しなければならない.それを財政赤字の累増やインフレに委ねるなら,中国は成長を損なう.成長と雇用を維持するために,中国は他の資産,すなわち,外貨準備で相殺するだろう.アメリカの財務省証券を売却する.人民元への影響は,資本規制の緩和や,以前に比べて小さくなった輸出依存から見て,受け入れ可能なのだ.

アメリカ連銀は,QEの終結だけでなく,中国のドル売却にも注意しなければならない.中国政府の銀行救済も,アメリカ連銀は支えることになる.


l  世界資本市場

FT August 18, 2013

The glut of capital that desperately requires guidance

By John Authers

世界資本は1990年から2010年の間に3倍に増えた,とBain & Companyは推定する.この金融商品の開発,レバレッジの利用,中国や新興市場における貯蓄の増加,など,金融資産の過剰供給に対して,過去には,利回りを求める危険な投資やバブルが生じた.

投資家はもっと低利回りに慣れ,資産価格の急激な変化にも備えておくべきだ.また,新興市場や基礎技術(ナノテクノロジーやロボット,バイオ,遺伝子,人口知能)に注目すべきだろう.しかし,ITバブルを繰り返さないために,技術開発企業の株式上場より,旧来の銀行融資を拡大する方がよい.

Project Syndicate 21 August 2013

Financial Inclusion Now

Zeti Akhtar Aziz

世界の最も貧しい人々も,金融システムに包摂することが必要だ.それは彼らの人生の可能性を開くだけでなく,世界経済の利益になる.


後半へ続く)