前半から続く)


l  社会科学と経済学

NYT July 19, 2013

Let’s Shake Up the Social Sciences

By NICHOLAS A. CHRISTAKIS

自然科学は大きく変化しているのに,社会科学は変化しない.もっと変わるべきだ.

VOX 24 July 2013

Why economics needs economic history

Kevin H O’Rourke


l  黒人少年の殺害事件

guardian.co.uk, Friday 19 July 2013

America is not a post-racial society

Barack Obama

(人種差別に関するオバマの演説)

Trayvon Martinの昨夜の裁定を聴いて,私は先週の論争について自分の意見を表明しておくべきだと考えた.

私は法廷のシステムが適切に機能していると考える.しかし,私は人々が何を感じているか,ひとこと言いたかった.Trayvon Martinが銃弾に倒れたとき,それは私の息子であったかもしれない,と.あるいは,彼は35年前の私自身であった,と.

この事件を考えるとき,それはアフリカ系アメリカ人のコミュニティーがその歴史を通じて経験してきたことであり,それが今も続いている,と認めることこそ重要である.アフリカ系アメリカ人は,デパートで買い物をするとき,通りを歩くとき,自動車のドアの施錠音を聞くとき,あるいは,エレヴェーターに女性と乗り合わせて,彼女が財布を握りしめ,降りるまで胸を隠すようにしているとき,経験したはずだ.

それを誇張する気はない.しかし,そのような経験は,フロリダでTrayvon Martinに起きたことを彼らに理解させる.

アフリカ系アメリカ人の若者が,その人口比以上に多くの囚人として投獄されていることについて彼らが何も知らない,などと話すつもりはない.彼らは暴力の犠牲者であり,その加害者でもある.

しかし,事件を利用して間違った印象を与えてはいけない.自警団が組織され,抗議デモが起きるのはわかる.だが,本当に我々にできることは,犯罪の基準を地域社会が決める伝統を理解しつつ,連邦政府として,司法省が法の執行に関する生産的な役割を果たすだろう.そしてシステムについての不信を減らす.

フロリダの裁判に対する講義や論争を支持する.しかし,銃火器で武装することを許さない.何より,私がミシェルと話し合ったのは,黒人の若者たちを励ます方法であった.さまざまな連邦政府の支援プログラムがあり,それを追加する考えはない.しかし,もっとできることはないか?

私たちはアメリカ社会が人種差別を解決したわけではないと認める.人種に関する論争を組織する政治家たちは,多くの場合それを利用して,分裂や対立をあおる.しかし,われわれは人間の良い側面を育てることに努めるべきだ.子供たちは,われわれよりも人種差別から自由である.アメリカ社会がより完全なユニオンであるように,私たちは前進している.

FT July 19, 2013

Obama identifies with teenage gun victim

By Anna Fifield in Washington

FT July 19, 2013

A civil rights chase of Zimmerman is doomed to failure

By Christopher Caldwell


l  金融政策と金融システム改革

FT July 19, 2013

Next Fed chairman must focus on price stability

Philipp Hildebrand

FT July 21, 2013

Banks need far more structural reform to be safe

By Michael Barr and John Vickers

構造的な改革の必要が認められている.アメリカ,イギリス,ヨーロッパでその関心は重なってきた.そこには,厳格さ,効率性,システム全体,などの点でトレード・オフがあるために,各地の規制は複雑になる.

BLOOMBERG Jul 21, 2013

Why Fed Has Failed to Lower U.S. Unemployment

By A. Gary Shilling

guardian.co.uk, Wednesday 24 July 2013

10 reasons the US economy is stuck

Moira Herbst

FT July 25, 2013

Summers dismissed QE effectiveness

By Robin Harding in Washington

QEの効果を否定する発言により,次のFRB議長候補であるSummersが注目を集めた.

FT July 25, 2013

Go for growth, inflation is still a long way away

By SamuelBrittan

Project Syndicate 25 July 2013

The Maddening of America

Liah Greenfeld


l  東地中海のカオス

FP JULY 19, 2013

Flash Point in the Eastern Mediterranean

BY JAMES STAVRIDIS

東地中海に関する戦略が必要だ.この地域に高まる不満や憎悪に関わらず,立ち去ることが最善の方針であると思うかもしれない.しかし,それは重大な失敗になる.第1次世界大戦に道萎靡板数年に及ぶバルカン地方の不安定化と同様に,レバント地方と東地中海は,はるかに大規模な戦争に及ぶ発火点である.

スンニ派とシーア派の紛争,経済資源をめぐる新しい紛争(天然ガス田に対して,キプロス,イスラエル,ガザ,シリア,レバノンが権利を主張している),ロシアとアメリカは影響範囲を争い,中国とインドは海上の安全保障に関して争う.シリア内戦は,体制を支持するイラン,ロシア,中国がアサド体制を支持し,アメリカ,サウジアラビア,湾岸諸国の多く,NATOが対抗している.

Project Syndicate 22 July 2013

The Middle East Turmoil Trap

Javier Solana

FP JULY 22, 2013

Go Big or Go Home

BY DANIEL BYMAN

FP JULY 22, 2013

Is Kerry Right to Put Peace First?

BY SHIBLEY TELHAMI

FT July 25, 2013

In the Middle East, a decade of war promises a decade of disorder

By Philip Stephens

FP JULY 25, 2013

Prepare for the Worst

BY NATAN B. SACHS


l  デトロイトの破産

NYT JULY 19, 2013

We Have to Step In and Save Detroit

By STEVEN RATTNER

NYT July 21, 2013

Detroit, the New Greece

By PAUL KRUGMAN

デトロイトが破産を宣言するとき,どの程度まで,ギリシャと同じことが起きるのか? それを期待する人々がいる.

ギリシャも財政危機に陥った.その影響は限られていた.ギリシャの経済規模は小さく,デトロイトの1.5倍ほどでしかない.ギリシャは非常に特殊なケースであり,財政赤字は問題の一部でしかない.それは公的年金システムの赤字と関係ない.

デトロイトの財政破たんは,確かにガバナンスの失敗もあるが,基本的に市場諸力の結果である.市場を支持する者は,シュムペーターの「創造的破壊」を信奉するが,創造的な破壊者を好むだけで,破壊される側は気にしていない.市場は常に破壊される者を生む.

技能を持つ労働者も職を失うし,市場のニッチを失った企業は倒産する.経済の生態系から外れた都市は衰退する.デトロイトのように.

特に都市中心部の雇用は流出して,再生しないことが多い.しかし,同じ旧来の工業都市,鉄の町,ピッツバーグは活力に満ちている.従来の比較優位を失っても速やかに新しい優位を見つける都市もあれば,そうでない都市もある.

デトロイトをギリシャに例えて,衰退や救済を議論するのは間違いだ.

Project Syndicate 22 July 2013

The Detroit Syndrome

Sanjeev Sanyal

FT July 23, 2013

Detroit will start a wave of municipal bankruptcies

By Meredith Whitney

都市の破産宣言は歴史的に珍しい.しかし,デトロイトの破産は先例となり,これから諸都市に広まるだろう.

問題の根源には,地方政府の公務員が政治家の重要な選挙基盤になっていることがある.選挙の際,政治家は公務員に年金の引き上げなどを約束し,確実な票を得た.公務員の年金は財政赤字になっても法律によって削減を禁じられている.また地方政府の赤字は均衡化を求められている.そのために,学校や公園,図書館,インフラ工事などが削られた.

今日,われわれはその浪費のツケに直面している.地域住民への公共サービスが悪化し,それが住民の流出や地域の衰退につながる.デトロイトのケースでは,初めて,住民・納税者と政治家が手を組んで,組合,債権者に対して削減を求めた.

FT July 23, 2013

Screech from Motown’s collapse will be heard in Europe

By Ralph Atkins in London

デトロイトの債務再編は,アメリカの諸都市に対しても,ヨーロッパの財政緊縮策や債務の組み換えに対しても,重要な意味を持っている.

BLOOMBERG Jul 24, 2013

Government, Not Globalization, Destroyed Detroit

By Michael Tanner


l  緊縮策論争

VOX 20 July 2013

When is the time for austerity?

Alan Taylor

財政緊縮政策の効果に関する論争を整理する.


l  戦争の予測

NYT July 20, 2013

The Pipe Dream of Easy War

By H. R. McMASTER

FP JULY 22, 2013

Is the U.S. Ramping Up a Secret War in Somalia?

BY COLUM LYNCH


l  新シルクロード

NYT July 20, 2013

Hauling New Treasure Along the Silk Road

By KEITH BRADSHER

かつてのシルクロードと同じ道を,中国とヨーロッパを結んで,鉄道が走っている.Hewlett-Packardが再生した.絹ではなく,ラップトップ・コンピューターやアクセサリーなどを満載して.


FT July 21, 2013

Tax reform for a changing world


NYT July 21, 2013

Our Coming Food Crisis

By GARY PAUL NABHAN


l  アメリカとエジプト

Project Syndicate 22 July 2013

What America Wants in Egypt

Anne-Marie Slaughter

アメリカは,特定の党派ではなく,自由民主主義の考え方を支持して最善を尽くしている.すなわち,自由で公平な選挙,少数派や市民の権利を尊重する統治である.そのためには,イスラエルやサウジアラビアに反対するときもあるだろう.

アメリカの駐エジプト大使は,選挙で大統領になったモルシが民主的な統治をおこなうように協力した.しかし,モルシが政治的妥協よりも暴力的な抑圧を唱えたため,軍によって権力を奪われたとき,アメリカ政府はこれを軍事クーデタとは呼ばなかった.こうしてアメリカは民主派から嫌われ,ムスリム同胞団からも嫌われている.

モルシの追放はクーデタであったが,軍事政権を樹立せず,ムスリム同胞団を含めて,自由で公平な選挙を行うなら,軍事クーデタではない.アメリカや西側諸国は,軍部がイスラム主義者を非合法化したり,弾圧したり,しないように求めている.

長期的には,選挙で成立する政府が十分に多くの党派をまとめてエジプト社会を統合するだろう.そうして,国家内の軍による腐敗した準国家構造を解体し,補助金を削減し,経済再生の基礎をすえることができる.ムスリム同胞団を地下活動に追い込むことは,一層の不安定さを生じるだろう.

革命はしばしば両極端の過激主義の間で権力が移動し,十分に強力で,正当な政権が成立しない.エジプトの友好国は,原則としての自由民主主義を,政治家や党派によらず支持する.

guardian.co.uk, Tuesday 23 July 2013

If I were in charge … how would I improve Egypt's economy?

Kayla Epstein

NYT July 23, 2013

Egypt’s Three Revolutions

By THOMAS L. FRIEDMAN

アメリカはエジプトの暫定政権に選挙を急がせる時ではない.まず,経済が機能するような決定を促すべきだ.その一方で,もっと包括的な政治党派を形成し,多元的な政治が可能となるような諸政党を確立するように求めるのだ.

Project Syndicate 25 July 2013

The Past in Egypt’s Present

Tarek Osman


l  ロンドンの資産家

guardian.co.uk, Monday 22 July 2013

London: where only the wealth of a global elite can find a home

Rowland Atkinson for OpenDemocracy, part of the Guardian Comment Network


l  新興市場の成長モデル

Project Syndicate 22 July 2013

Trouble in Emerging-Market Paradise

Nouriel Roubini

何がBRICSや他の新興市場を弱らせるのか?

12010-2011年,経済の過熱.2.欧英日米の不況や低成長が,貿易,投資,投資家心理によって波及.3.国家資本主義の傾向と改革の遅れ.4.国際商品市場のスーパー・サイクルが終わった.5.アメリカの量的緩和が逆転し,債券市場が中国の減速にも影響を受ける.6.経常収支赤字とリスクの高い融資方法.国内金融引き締め.

これらの要因には,循環的なものも,構造的なものも,ある.

VOX 22 July 2013

How to avoid middle-income traps? Evidence from Malaysia

Aaron Flaaen, Ejaz Ghani, Saurabh Mishra

BLOOMBERG Jul 22, 2013

Why Buffett Bailed on India

By Willie Pesek

Project Syndicate 25 July 2013

The Conglomerate Way to Growth

Ricardo Hausmann

諸国は同じものを多く生産しても豊かになれない.生産方法を革新するのだ.

グローバルな革新によって数十億ドルの価値を持つ企業を立ち上げたSteve Jobs, Bill Gates, and Mark Zuckerbergなどがいる.また,多くの新興企業がある.Instagram, Skype, YouTube, Tumblr, and, most recently, Waze.国家も彼らをまねるべきだ.

情報産業の起業はユニークだが,その条件であるインフラ,輸送,規制,集中,サプライ・チェーン,補完的ビジネス・サービス,は発展途上諸国の成長にも共通している.チリは、起業家を集める政策を展開した.また,企業が求める条件を整備するために,コングロマリットの多国籍企業を誘致することが考えられる.

しかし,韓国のコングロマリットは成功例であるが,その弊害は変化を拒み,格差を拡大することである.政府の支援を受けながら国民から支持されるような成長の一部となるとき,新興企業は発展途上諸国の成功につながる.


l  イギリスの王子誕生

NYT July 22, 2013

Britain’s Baby Bump

By LIONEL SHRIVER

人々の関心が集まり,人々の消費が刺激される.王室の新生児は,イギリス社会が今も階級支配を受け入れる能力を示した.王室はイギリス人の魂や善意,楽観を刺激する.

guardian.co.uk, Tuesday 23 July 2013

Enjoy today, young prince. It's all downhill from here

Simon Jenkins

君主制は国家を代表しない.それは国家の擬人化である.血脈が国家の永久性を示す.個人へのカルトにつながる.現代の憲法によって認められた王室は,国家が王室の財政を支えている.そして彼らはプライヴァシーを失う.その幸せを数百万人と共有することが勤めである.

FT July 24, 2013

The infant Prince George is a source of real-world power

By Joseph Nye

王室がロックスターや陸上選手たちと著名さを競い合う時代に生きている.現代イギリスのソフトパワーを王室が支えるのは皮肉である.

FT July 25, 2013

Falling fertility rates pose threat to government revenues

By Gillian Tett

ヨーロッパのどこで,子どもは生まれているのか? 各国の出生率の変動は興味深い.布教によって,2008年,ドイツは子供の養育を考える余裕を得たが,現在,スペインは余裕を失って子どもを減らした.経済危機は,南欧の失業と出生率低下により,また,移民流出や高齢化による労働人口の減少により,将来の衰退を描き出す.

高齢者は交際を需要するが,その返済を担う労働者は失われている.ユーロ圏だけでなく,アメリカの都市,例えばデトロイトでもそうだ.特に,日本では深刻だ.労働生産性や労働参加率の改善はそれを緩和するが.


2013-07-23 (China Daily)

EU takes a bad trade gamble against US

By Zaki Laidi


l  アメリカの自由移民

NYT July 23, 2013

Bonjour, America!

By STEPHEN R. KELLY

19世紀後半から20世紀前半にかけて,約100万人のフランス系カナダ人が,アメリカの北の国境を越えて,ニュー・イングランドの衣服工場や靴工場に仕事を求めた.この移住は,さらに大規模なイギリス系カナダ人の大規模な南下の一部であった.1880年代から1920年代に頂点となるその移住は,南北戦争後に始まり,大不況まで続いた.

彼らの多くはフランス語を話し,なかなか同化せず,カソリック教徒であったが,ビザも,労働許可証も,パスポートもなく入国した.当時はカナダ国境が実質的に開放されたままであったからだ.アメリカはこの規制のない移民の流入に耐えただけでなく,むしろ繁栄した.

現代のアメリカも,カナダとメキシコに対する国境を開放し,テロ対策や麻薬対策を共有するのがよい.


l  アメリカの中産階級

NYT July 24, 2013

The Middle Class at Center Stage

By THE EDITORIAL BOARD

WP July 24, 2013

Does part-time job growth signify a weak economy?

By Robert J. Samuelson


l  国際社会はあるか?

Project Syndicate 24 July 2013

What International Community?

Richard N. Haass

イランの核兵器開発,北朝鮮のミサイル発射,シリアの内戦激化,北極・南極の氷減少.・・・「国際社会」の行動が求められているが,そのようなものは存在しない.世界を一致して行動させるメカニズムが欠けている.確かに,国連総会には,アメリカも中国も,フィジーやギニアビサウも参加しているが.

アメリカは第2次世界大戦後,安全保障理事会を創った.しかし,その改革は進まない.「多元主義(国際協力)のジレンマ」とは,多くのアクターを参加させるほど,正当性は高まるが,組織の統一性は低下する,ということだ.

気候変動,核兵器の拡散,貿易自由化,サイバー戦争,知的所有権,人道的犯罪とR2P,・・・

「国際社会」が現実ではなく希望でしかない限り,多元主義(国際協力)は様々な形を取る.二国間や地域の合意.「ミニ協定」,そして,その実行は地域的に模索されている.

NYT JULY 24, 2013

A Policy of Rape Continues

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT JULY 24, 2013

Garment Trade Wields Power in Bangladesh

By JIM YARDLEY


FT July 25, 2013

The world might be drifting into an oil price shock

By Paul Stevens


NYT JULY 25, 2013

A Better Way to Think About Trade

By SIMON JOHNSON

******************************

The Economist July 13th 2013

Has the Arab spring failed?

The Arab Spring: A climate of change

Europe’s zombie banks: Blight of the living dead

Charlemagne: Lessons from Lagarde

(コメント) アラブの民衆は恐怖によって支配されてきたが,「アラブの春」はその恐怖を翻した.革命には時間がかかる.しかし,過去の例を見ても,もはや民主化は止められないだろう.

ヨーロッパの「ゾンビ銀行」とは,日本の不良債権問題と同じです.IMFのラガルド専務理事は,ユーロ圏の赤字国だけでなく,ユーロ圏そのものに次第に批判を強めています.

******************************

IPEの想像力 7/29/13

「国際社会」は無いのでしょうか? 国家を超える国際秩序はなく,「アナーキー」である,という主張に対して,「国際協力」の可能性や,それを促す「メカニズム」,「国際制度」,「国際世論」,などがある,と主張されます.

しかし,「社会」を示すことは難しいでしょう.答えを探し出すとしたら,・・・そう,まるで百科事典か辞書のような,アンソニー・ギデンズの『社会学』を読むのも一つかな,と思います.

オバマの演説がアメリカ諸都市の人種暴動を鎮めたのだ,と思いました.

フロリダの「ゲーティッド・シティ」(塀で隔離された富裕層の住宅地区)で,自警団の男性が17歳の黒人青年を射殺しました.青年は何も武器など持たず,歩いていただけでした.警察は,撃ち殺した男性が「正当防衛」を主張したので,そのまま帰宅させました.しかしその後,苦情や抗議が高まったため,捜査を始めました.証拠や証言も集めていなかったのです.

警察による暴行に対しては,かつて,カリフォルニアやイギリス,フランス,最近のスウェーデンでも,黒人・アジア系移民・イスラム教徒・人種に対する差別が問題となり,これに反対する抗議デモや暴動が起きています.オバマ大統領の演説は,差別される人々の感情をくんだ,しかも,彼らの不満を社会の統一と助け合い,次世代によって解決する方向に導く,優れたものだと思いました.アメリカは,最初の黒人大統領によって,1960年代の都市暴動再発を回避しました.

最近,アメリカの最高裁は,黒人差別を是正するためのテキサス大学入試に関して,アファーマティブ・アクションを否定する判決を出しました.最高裁は,黒人の参政権を拡大するための投票権法を否定し,他方,同性婚は肯定して,保守派とリベラル派との激しい論争が起きました.人種差別は過去のものではない,とオバマは明確に主張しています.

イギリスの王子誕生は,不況に苦しむ国民や保守党政権を救うのでしょうか?

なぜ新聞や雑誌の紙面が王子誕生に関する情報ばかりで埋まるのか,という不満が出ています.イギリス人は,本当に,それほど王室が好きなのでしょうか? それはどのイギリス人か? むしろ,人種の混在した町に住むのを嫌って出ていく,あるいは,外国に老後の住宅を買い求める白人のイギリス人でしょう.

ドイツは国籍法を改めて,移民とその2世がドイツ国籍を取りやすくしました.アメリカは,国境を自由に出入りできる国から,国境警備隊や自警団が巡回する国に変わりました.日本にも,オランダにも,サウジアラビアにも,王室があり,王子は誕生します.部族の長や独裁体制を築いた軍人が,危機を回避するために,大統領や新しい王室を名乗ります.

「社会はある」と思います.国内でも,世界でも,私たちは衝撃的な事件や指導者の発言,人々の示す共感や抗議行動によって,それを確認できます.

中国や新興市場の成長モデルが転換し,LCC(格安航空会社)により若者たちの国際旅行が飛躍的に増大し,アラブ世界の自由民主主義が安定して開放型の成長を目指すとき,日本の「社会」はそれらに応えなければなりません.

もし(NHK7時のニュースが伝えたように),現場監督がいないから被災地の復興計画が進まない,というのであれば,現場監督の養成を急ぐべきです.同時に,韓国や台湾,中国からも,建設会社を入札に応募できるよう招待してはどうでしょうか?

******************************