IPEの果樹園2013

今週のReview

7/15-20

 

*****************************

エジプト軍事クーデタの将来 ・・・安倍と企業家 ・・・バングラデシュの労働条件改善 ・・・中国の金融引き締め ・・・アジアと米中関係 ・・・スーパー地域統合 ・・・アメリカと中国の中央銀行 ・・・グローバルなシステム統合

 [長いReview]

******************************

l  エジプト軍事クーデタの将来

NYT July 4, 2013

Defending the Coup

By DAVID BROOKS

エジプト,トルコ,イラン,ガザ,世界各地で,ラディカルなイスラム主義者は近代的な政府の統治に失敗した.彼らの多くは絶対主義の,終末論的な考え方である.それは「神のために死ぬことを至高の価値とみなす」,死の文化,である.

イスラム主義者は効果的な反対運動や街頭の福祉活動を組織できるかもしれないが,統治に要する感性がない.政府を得るなら,権力を集中し,彼らを当選させた民主主義も掘り崩す.ムスリム同胞団は,選挙後,司法を妨げ,市民社会を弾圧し,反対派の活動家を逮捕した.憲法の制定を悪用し,権力を集中して民主的討議を不可能にした.

アメリカが外からエジプトに対してできることは,そのアイデアに影響することだけだ.現在,中東の全域にわたって,現状のすべてに不満や強い憤りをもつ人が増えている.事態を改善するアイデアが欠けている.現地の知識人は,そのほとんどが投獄されたり,亡命したりしている.彼らを助け,彼らを守ることが重要だ.

エジプトは民主的な移行に失敗した.民主主義の基本となる心性も欠いている.

The Observer, Saturday 6 July 2013

Democracy doesn't on its own mean effective government

Tony Blair

これは民主政府か軍か,という単純な選択ではない.1700万人がカイロの都市を埋めた.それは選挙とは異なるが,人民のパワーである.想像してほしい.イギリスの人口であれば,それは1300万人のデモになる.イギリスの軍は介入しないだろう.しかし,政府は生き延びることができないはずだ.

ムスリム同胞団は,反政府運動から政権党に変わることができなかった.経済状況も,法律や治安も,公共サービスも悪化した.

エジプトで起きていることは,世界中でも起きている.民主主義と,反政府デモと,政府の有効性との間に起きる相互作用だ.民主主義は政策担当者を決める.しかし,政策決定それ自体とは異なる.エジプトが独裁体制を倒し,民主主義になったとき,人々はすべての問題が解決すると信じていた.

しかし,民主的政府は効果的政府ではない.政府が効果的でないとき,民衆は抗議する.彼らは次の選挙まで待とうとしない.トルコやブラジルでは,経済が成長していた.それでも,成長によって中産階級に高まる期待に対して,政府は様々な不満を解消しなければならない.

この自由民主主義の精神は,ソーシャル・メディアに刺激されて,急速に危機へと向かう.それは一貫した運動や,合理的な主張でないかもしれない.抗議は,政策でもないし,政府に代わるものでもない.しかし,これに応えられない政府は,深刻な事態に陥る.

エジプトが民主主義を築くのに,われわれは関与しなければならない.彼らが崩壊するのを許すことは間違いだ.新しい事実上の政府に協力して,彼らが必要な変化を,特に経済の再生を成し遂げるように協力する.

われわれは彼らを包摂しなければならない.短期の選択肢は限られているが,長期の関与は重要だ.それは困難で,時間と財源を要する.誰かに代わってほしいが,われわれがやるしかない.各地には,民主的な政府を求めてわれわれと協力する人々がいる.

NYT July 6, 2013

Can Egypt Pull Together?

By THOMAS L. FRIEDMAN

次の選挙でムスリム同胞団が権力を失うことが最善であっただろう.しかし,貧しい者たちには食糧がなく,政府には外貨が枯渇し,燃料も電力も不足している.誰もあと3年待って選挙で政府の交代を求める余裕はなかった.

Daron Acemogluは,その研究(“Why Nations Fail”)において,「搾取」による社会の古典的例として,エジプトを挙げている.

FT July 8, 2013

Freedom and democracy can become enemies

By Gideon Rachman

自由と民主主義は同時に要求されるが,エジプト民衆は民主主義の選挙を否定して,ムスリム同胞団の大統領から自由を得た.同様の反政府デモは,トルコでも起きている.

それはイスラム世界にとどまらない.ロシアのモスクワや,タイのバンコクでは,選挙で勝利した政府による非リベラルな政策に対する抗議デモが起きた.

それらの共通する問題は,比較的裕福で教育を受けた都市エリートたちが,その国の都市以外で支持されず,権力を失う,ということだ.権力を得たポピュリストの指導者は,都市中産階級の自由を奪い,地方都市や農村における「真の国民」に支持を訴える.

選挙の自由は,現在の西側が信じるような,全ての自由の基礎であるより,むしろ最後に得られる自由であった.イギリスでは,裁判の独立性が認められ,18世紀に出版の自由が認められた.21歳以上の男女が選挙権を得たのは1928年になってからである.ヴィクトリア時代を通じて,財産と教育の基本水準を満たすことが,投票の条件であった.1867年,投票権が拡大されたとき,ある保守党員は述べた.教育改革が急務である.「我々の主人を教育しなければならない.」

西側の批評家は,中国の増大する中産階級が民主主義を要求するだろう,と予想していた.しかし,中国の都市富裕層は,農民が国家経営に同じ発言力を得るなら,秩序が崩壊する,と恐れていた.

エジプトのリベラル派は,有権者の40%が文字を読めず,モスクと宗教テレビ番組が強い影響力を持つ国で,同じような不安を感じている.エジプトの貧困層は,イスラム主義政党に投票し続けるだろう.

しかし,「リベラルな軍事クーデタ」というのも間違いだ.民主的な選挙を経た政府を追放した軍隊が,次にするのは弾圧である.検閲,反対派の排除,しばしば街頭における銃殺.・・・

NYT July 10, 2013

To Save Egypt, Drop the Presidency

By BRUCE ACKERMAN

問題の核心には,ムバラク時代から残る大統領制にある.民主主義を確立するために,エジプトはヨーロッパ型の議会制にして,権力を競う形に,憲法を修正するべきだ.

議会制にも問題はある.イタリア議会は「不信任」が可決されると不安定化する.しかし,ドイツの場合,不信任が可決されても,新しい内閣ができるまで旧内閣が執行する.それはエジプトの現状よりもはるかに優れている.

エジプトの未来は,指導者たちの国論を導く精神と政策の有効性にかかっている.よく組織された議会制は,反対派に対する積極的な働きかけを促すだろう.


l  安倍と企業家

BLOOMBERG Jul 4, 2013

What Abe Can Learn From Japan Inc.’s Mavericks

By William Pesek

安倍首相は,日本の異端の企業家たちから改革を学ぶべきだ.

ユニクロを経営するFast Retailing Co.の柳井正は,国内のデフレが続くと理解し,世界展開を進めて成功した.伝統的な日本企業がしないこと,リスクを取り,英語を採用したからだ.

ソフトバンクの孫正義は,200億円を投資して,ムンバイから東京までの都市をつなぐアジア・スーパーグリッドを計画している.


l  バングラデシュの労働条件改善

NYT July 10, 2013

U.S. Retailers Offer Safety Plan for Bangladeshi Factories

By STEVEN GREENHOUSE and STEPHANIE CLIFFORD

北米の大手小売店17社(Walmart, Gap, Target and Macy’sを含む)が,バングラデシュの工場の安全性を改善する計画に合意した.しかし,ヨーロッパの企業が示した合意ほど厳格ではない,という不満が労働運動の中から出ている.

アメリカの計画では,労働の安全基準を改善するために4200万ドルを用意する.それは検査官や,自分が働く工場の安全性に不安を持った労働者が匿名で通報できるホットラインを含む.1億ドル以上が,安全基準を高める工場の投資を助けるために融資される.

ヨーロッパの合意との違いは,火事や安全性の問題に関して,ヨーロッパは下請けを利用する企業が責任を負うと決めていることだ.

SPIEGEL ONLINE 07/10/2013

An Awkward Truth

Bangladesh Factories a Way Up for Women

By Marianne Scholte

バングラデシュの女性労働運動家,Nazma Akhterは,衣服工場が女性の社会的な地位向上において重要であることを強調した.

Nazma Akhterは,11歳のとき,ダッカの衣服工場に働き始めた.14歳で,工場の暴力団に殴打され,労働条件の改善を求める抗議デモに加わって警察の催涙ガスを浴びた.現在,39歳の彼女は,バングラデシュで最も尊敬される,影響力のある労働運動家の一人である.

「われわれは政治を求めていない.」 彼女は主張した.「われわれは厳しい労働によって生活の糧を得ている.」 ところが,政治家たちは口論を続け,企業家たちは短期で金を儲けるための建物しか考えない.「厳しい労働によって生きる衣服労働者たちがいたから,そのバングラデシュ製品は世界中で有名になった.」


l  中国の金融引き締め

Project Syndicate 06 July 2013

The Politics of a Slowing China

Minxin Pei

信用の急激な膨張による中国経済の拡大が終わり,世界第2の経済がハード・ランディングに向かっている.2008-2012年の信用拡大はGDP30%に等しい.この債務依存率は,タイ,日本,スペイン,アメリカで金融危機が起きる前と同じである.

問題は,債務の縮小が,いつ,どのように起きるか,である.

2つのシナリオがあるだろう.1.中国の指導部が信用の拡大を抑える政策を採って,ソフト・ランディングに成功する.過剰な債務を負うものを破たんさせ,銀行システムを守るために財政で支援する.2.地方政府の債務依存,政治家と結びついた不動産部門,国有企業(SOEs)が債務の抑制に反対し,政府は信用の膨張を止められない.結局,中国版「リーマン・ショック」が起きるまで,膨張が続く.

いずれにせよ,債務依存は終わり,その後の中国経済は減速する.それは,中国の政治にどのような影響を及ぼすのか?

成長率の低下は共産党支配の正当性を大きく損なうだろう.さらに,経済過程が崩壊すれば,支配エリートたちの団結が失われ,政治的に弱くなる.特に,信用拡大を最も利用してきたのは中小企業や市民ではない.信用膨張の規模からみて,救済できるのは一部である.

中国のシステムは巨大な地代(レント)分配システムである.全体が成長しなくなれば,共産党内の生存競争が激しくなる.


l  アジアと米中関係

FT July 11, 2013

The perilous imperative that keeps the US in Asia

By Philip Stephens

アジア諸国は共通の疑問を抱えている.アメリカの「アジア旋回」はいつまで続くのか? 誰にも確かな答えはない.

米中の経済情勢は変動する.アメリカ経済は少し好転し,中国の攻撃的姿勢も和らいだ.しかし,アメリカが採るエンゲイジメントとヘッジングの使い分けは,アジアの同盟諸国における信頼を低下させる.アメリカとアジア諸国との関係は,ますます微妙なバランスを取るものに変わっていく.そして,双方の誤解や判断ミスが,重大な失策となって戦争にもつながる.

中国は自国の安全保障と地域秩序を確保するために,軍備の近代化をやめないだろう.そして,米中の間で太平洋の秩序を決める,と提案するだろう.アジアにおけるアメリカの存在は,安全保障を高める条件から,紛争の源泉に変わっていく.ドイツの追い上げに直面したイギリスを通じて,ヨーロッパ諸国がよく知っているように.


l  スーパー地域統合

The Guardian, Wednesday 10 July 2013

Welcome to the geopolitics of trade, where Dr Pangloss meets Machiavelli

Timothy Garton Ash

世界中で,貿易と投資に関する自由協定が交渉されている.これをthe Widest West Webと呼ぶことができる.ただし,西側に含まれるのは,Japan, Peru, Brunei and Vietnam,つまり,何でもよいが,中国は入れない,だ.これをEBCEveryone But China)と呼んでもよい.

その背後にあるのは,geoeconomics地理的経済学(地経学),そして,geopolitics地理的政治学(地政学)だ.

最大の交渉が,今週,欧州委員会とアメリカ政府の間で始まった.TTIPTransatlantic Trade and Investment Partnership)と呼ぶが,TAPTrans-Atlantic Partnership)でよいだろう.このTAPTPPを補完する.TPPTrans-Pacific Partnership)も地理的経済学の代表格だ.その貿易・投資額は推定47000億ドルに達する.the US, Canada, Mexico, Australia and Japan, といった市場型民主主義の諸国と,Vietnam and Bruneiなども加わり,世界貿易の3分の1を占める.アメリカとEUは,インドやブラジルとも交渉を試みている.

交渉の障害となるのは,民主主義という,特殊な集団的利益をめぐる妥協のシステムだ.企業と,業界のロビーが動き,政治家は選挙区の要求として農民を無視できない.EUの場合は,その集約に28か国が関与する.もし政治家たちが奇跡的に合意できるとしたら,それは世界経済不況と中国の台頭に挑戦しなければならないからだ.この二重の圧力によって,政治は限界を超えるかもしれない.

自由化による利益は,勝者も敗者もあるが,総体として巨大である.TAPにより,長期的な利益として,アメリカの1人当たりGDP13%増え,EUと日本が合意するだけでもヨーロッパの雇用が40万人増える.

しかし,この地経学が中国共産党に対する地政学であることを,アメリカは知っている.ヨーロッパも知っている.日本ももちろん知っている.そして,中国が知っているのだ.Guoyou SongFudan University in Shanghai and Wen Jin Yuanthe University of Maryland)は,TPPをアメリカの中国封じ込め策である,と主張した.しかし,彼らの結論は,冷静な計算を示している.中国はTPPに参加する可能性を否定していない.もし,参加の利益がそのコストを上回るなら,中国は応募するだろう,と.

この中国共産党が示す,旧来の言葉で表現するなら,弁証法で,地経学と地政学とは統一される.中国を排除するthe Widest West Webの高いルールが,市場統合を実現して,中国に参加への誘因を強めるだろう.それでも西側諸国が中国に,No,というのであれば,それは第1次世界大戦を招いたヨーロッパの政治家たちと同じくらい無責任である.

それは中国にとっても正しい.中国を含むリベラルな国際秩序では,中国が西側の諸大国と並んで秩序の形成に権利を持つ.また,オープンで,多元的で,法の支配を求める中国市民たちが増えている.

FT July 10, 2013

The curious case of the protectionist dog that has not barked

By Arvind Subramanian

悪いニュースばかりの世界経済に,奇跡的な良いニュースがある.新興市場,特に中国から生じる構造的な貿易ショックにもかかわらず,過去10年間,工業諸国には深刻な保護主義が現れていない.

中国からの輸入は,アメリカ国内需要の19900.5%から20105.2%に増大した.散発的なアンチダンピング提訴だけで,深刻な保護主義的反応はない.1990年代初めのNAFTAとメキシコに対する反対運動,1980年代の日本に対する反発と比べて,その違いは明白だ.

その理由としては,1.中国製品と競争するようなアメリカ国内の未熟練労働者を集約的に利用する産業がなくなった.2.アメリカ企業を脅かした日本との摩擦に比べて,中国からの輸入はスキルの低い分野である.3.中国はアメリカ企業を中国向けの直接投資によって吸収した.彼らは中国市場の拡大に利益を感じている.4.貿易構造の調整コストを緩和する政府の所得移転プログラム,すなわち,失業,障害者,年金,医療保険の支払が150億ドルもあった.

中国のように大きな貿易ショックをもたらすケースに対しても,保護主義の再燃を回避する仕組みを得たかもしれない.


l  アメリカと中国の中央銀行

Project Syndicate 11 July 2013

A Tale of Two Tapers

Barry Eichengreen

アメリカ連銀は,Ben Bernank議長の記者会見で,経済が好調であれば,長期債券の購入を徐々に減らし始める,と予告した.それに対する市場の反応は激しかった.連銀はあわててその意図をさらに明確に示した.

中国人民銀行は逼迫した信用市場への追加の流動性を供給しなかった.市場の予想に反して,成長を維持するための金融緩和を行わず,それが破壊的な反応を招いた.

中央銀行がこの失敗から学ぶべき教訓とは.1.市場との対話をもっと習熟するべきだ.特に,中国人民銀行の行動は市場の信認を損なうものだった.人民元を国際通貨にしたいと考えるなら,その道のりは遠いだろう.

2.中央銀行は最新のニュースに反応すべきではない.もっと多くのデータが出るのを待って,慎重に発言・行動するべきだ.

3.資産市場の問題に関して,金融政策を使うべきではない.バブルが問題であるとしても,それを扱うのは金融監督局の仕事である.


l  グローバルなシステム統合

FT July 9, 2013

Why China will not buy the world

By Martin Wolf

Peter Nolan‘Is China Buying the World?’)は,中国の視点で世界経済を考える.中国は世界を買い取ってしまうのか? という不安がある.しかし,その答えは,No,である.

Nolanによれば,世界経済はこの30年間で技術主導の統合化を進めてきた.ごく少数の支配的企業が,企業買収,直接投資で,先進諸国のすべてに拠点を構えている.世界経済の中核をなすのは,「システム統合化」を担う企業群である.支配的ブランド,圧倒的な技術優位を持つ彼らが,世界の中産階級に商品・サービスを供給するグローバル・チェーンの頂点に立つ.

2006-09年のデータによれば,支配的なグローバル企業の数は,航空機,炭酸飲料で2社,携帯電話機,スマートフォンで3社,ビール,エレベーター,大型トラック,パソコンで4社,デジタル・カメラは6社,自動車,薬品は10社,である.部品供給でも同様の集中が起きている.自動車,情報,飲料,など,多くの分野で,主要な部品を供給するのは少数の企業である.

世界の生産と流通を組織するのは,統合化企業である.彼らは「多くの重要な部品供給企業を結びつけ,それらが新企画に必要な資金調達を助け,高度な研究開発に必要な(人的・物的)資源を提供し,技術的な指導力とグローバルなブランド力を維持し,最新鋭の情報技術,最優秀な人材を引き寄せる.

世界のトップ1400社のR&D投資額の内,5分の4は最上位の100社が占めている.資本主義的グローバリゼーションの技術的基礎が実現される.こうした企業は,中国に限らず,世界中に投資している.それゆえ,企業の国民性や忠誠は失われていく.

中国はこの新しい世界経済に適応し,優れた成果を示した.外国投資を受けた企業が,工業部門付加価値の28%,ハイテク産業の生産額の66%,最新ハイテク製品輸出の90%を占めている.中国人がこれに不信を感じるのは当然だ.

中国の視点で見れば,企業は優れた技術を外国に頼っていることが明白である.世界企業が自国の利益を反映しないことを,中国が最も恐れている.しかし,世界企業は中国に投資しており,中国市場の規模から考えて,その影響を受けているのである.

それゆえ,西側も中国も,こうした世界経済の統合化をこのまま継続することが望ましいだろう.

******************************

The Economist June 29th 2013

The march of protest

China’s cash crunch: Bear in the China shop

Teaching and technology: E-education

South-East Asia’s smog: Unspontaneous combustion

Free exchange: Levying the land

(コメント) 世界中で反政府デモが起きるのはなぜか? アメリカだけでなく,中国でも金融ひっ迫が起きたのはなぜか? 東南アジアのパーム・オイルの畑が燃やされて,シンガポールが大気汚染に苦しむのはなぜか? 所得よりも土地に課税する方がよいのに,人々が土地への課税に反対するのはなぜか?

******************************

IPEの想像力 7/15/13

好き嫌いの多い,野菜を残す子供に,明日から食べ物のない国へ行け,と,だれでも必ず言ったことがあるでしょう.

マララ・ユスフザイの国連演説に驚きました.彼女は16歳です.パキスタンで,イスラム教徒の女性が学校で学ぶ権利を主張したため,タリバンに脅迫され,それでも主張し続けて,テロの銃弾を浴びました.

私が驚いたのは,彼女の強い政治的意志と,教育が与える希望です.マララが演説したように,銃弾よりもペンが強い,という信念を実現するには,子供たちへの教育が必要です.テロリストやその娘も教育を受けてほしい,教育だけが和解をもたらすことができる,と彼女は訴えています.

多くの子供たちが,世界の貧しい地域で,宗教,内戦,干ばつ,など,様々な事情で,学校に行けないのです.日本の財政支援で学ぶ機会を与えることは,地域の平和と繁栄に対して重要な意義を持つでしょう.

それ以上に私が驚くのは,彼女のように,学校に通うことを許さないような社会に住む子供たちが多くいると同時に,学校に通うことを嫌い,学校で学ぶことを侮り,学校で生き生きとした関心を失うような子供たちのいる社会もあることです.

長い戦争の後には,学校の建物や教科書がなく,教える人もいなくなった国があるでしょう.黒板を担いで,貧しい山岳地域や農村を回り,子供たちに教育する人々がいる,という話を思い出します.今では,安価なパソコンと優れたインターネット授業があれば,語学や数学,技術などが急速に安価,かつ,容易に学べるでしょう.その国際的な資格試験も実施されます.

将来,そうした教育プログラムが世界中で利用できるようになって,誰でも,治安の良い国で,自然が美しく,しかも,都市生活の便利さもあるような,たとえば,ちょっとヨーロッパの小国に似たアジアの古都へ,留学するようになるかもしれません.

*******

中国の産業構造が「垂直分解」している,という興味深い分析を知りました(丸川知雄『現代中国の産業』).また,M. WolfPeter Nolan‘Is China Buying the World?’)の関連する分析を紹介しています.

ほかにも最近のReviewを読めば,世界の成長や雇用がますます主要国,特に,米中の金融政策と金融市場・資本移動の転換に影響を受けています.しかも,統合化する世界で,最先端の技術革新とその普及は,ますます少数のトップ企業に集中しています.

自由な貿易と投資が世界各地の産業や雇用にプラスの影響を与えるだけでなく,マイナスの影響も与えることを,だれもが不安に思っています.市場統合には敗者がいるからです.貿易の自由化が,各国の成長や雇用の増加をもたらすだけでなく,積極的な産業構造の変化を助ける財政的支援もあれば,グローバルな産業構造の出現や各地の新しい社会的統合化は円滑に進むでしょう.

中国に限らず,世界中の貧しい諸国でも,グローバル企業の拠点や部品供給基地が成長し始めると思います.バングラデシュの衣服工場も改善されるでしょう.少数の国家ではなく,グローバルな企業と社会制度・法律の共有が,ますます国境を超えて繁栄の条件を決定する時代になりました.

スペインの熟練工が,不況の自国を離れて,ドイツで就職するように,技術革新や投資が促進されるだけでなく,グローバリゼーションの敗者に対するさまざまな給付が制度化されていることで,保護主義や排外主義的な人種思想が広まるのを防ぎます.

貿易と投資が自由化され,さまざまなショックを吸収できる制度の整備に協調的な基金が設けられる時代が来るでしょう.その制度の一つとして,マララの教育基金もきっと大活躍します.教育の与える希望に応える活発な子供たちが国境を超えることは,各地の成長を刺激するはずです.

それとも,アメリカと中国の対立によって,日本は,そのはざまに落ち込むのを心配し,次の戦争に備える方が賢明でしょうか? ・・・そう,おそらく.しかし,マララの教育基金を拡充して,日本の子供たちを世界に派遣してほしいです.学ぶことや働くことの意味を発見するように.

******************************