IPEの果樹園2013
今週のReview
7/1-6
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KRUGMANの気炎 ・・・中東・北アフリカの再編 ・・・ブラジルのデモと政治改革 ・・・中国の経済改革 ・・・中東の民主化 ・・・新興諸国の民主主義 ・・・安倍の矢 ・・・インフラ投資ファンド
[長いReview]
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l KRUGMANの気炎
NYT June 20, 2013
Profits
Without Production
By PAUL KRUGMAN
Carmen Reinhart and Kenneth Rogoffの素晴らしい本は,繰り返し危機が同じパターンを示す,と述べている.しかし同時に,経済は大きく変わった.21世紀のアメリカ経済は何が変わったか?
独占利潤(地代・レント)だ.投資に対する収益ではなく,市場支配に対する価値を示す.レントが重要になれば,利潤と生産とは切り離され,不況は長期化する.
2つの時代の代表的企業を観ればよい.1950年代,60年代のGMと,現在のAppleだ.GMもその最盛期には市場を支配していたが,企業の価値は概ねその生産能力によって得ていた.多くの工場と労働者(全労働者の約1%)を所有したのだ.
これに対して,Appleは,物的な世界にほとんど関与しない.アメリカで最高あるいは2番目の価値を持つ企業だが,労働者の0.05%以下しか雇用していない.なぜなら生産のほとんどを海外に移転してしまったからだ.また,中国人がAppleの販売額から多くを得ていないことも確かだ.あなたが買うi-what(Appleの電子機器)は,その生産コストと関係ない.Appleは市場を支配して,その移動から多くの利潤を得ている.
長い間,莫大な利潤を得ているMicrosoftも,企業利潤の30%を占める金融ビジネスも,同じ独占利潤の性格を示す.こうした企業がその特権的地位に値するかどうかとは別に,利潤が生産ではなく,市場支配力によって決まることは,経済に影響する.
今では,不平等が拡大していることをとっくに知っているだろうが,現代では企業利潤が増えたことを反映するのである.それなら,なぜ企業はもっと投資しないのか? もっと景気が良くてもいいだろう.投資しないのは,オバマのせいではない.
独占企業は,生産力を拡大することに関心が無いからだ.彼らが利潤を得るのは,市場を支配するからだ.莫大な利潤を企業内に留保したまま,それを投資することはない.賃金を減らし,投資を減らすから,需要は失われ,不況が長引くのだ.
l 中東・北アフリカの再編
NYT June 22, 2013
Syria
Scorecard
By THOMAS L. FRIEDMAN
3万フィート上空から見るなら,現在の中東地域が,オスマントルコの崩壊から長引いた結末を示している,と分かるだろう.
第1次世界大戦の結果として,オスマントルコが崩壊したとき,そこには植民地勢力としてイギリスとフランスがいた.彼らは自分たちの利益を追求し,その土地の部族,セクト,信仰の上に,自分たちの秩序を押し付け,東アラブ圏を築いた.
第2次世界大戦の結果として,イギリスとフランスが撤退するとき,彼らは権力を多くの場合は王朝に譲り,王朝はまた,多くの場合,将軍に譲り,すべてにおいて,そのバラバラな民衆を強権によって支配した.
しかし今,オスマン人は去り,王族も去り,強権を振るった将軍も去った.そこには1つの問題が残されている.トップダウンで垂直的に統治された人々が,今,自分たちで社会契約を結び,水平的な統治を実現できるか? 上からの強権が無くても,平等な市民として,権力を規則的に交代することができるのか?
オバマが反アサドの反政府軍に武器を供給するのは,この渦中にアメリカも入ることを意味する.大統領が何を目指しているのか,良くわからないが,私は3つの可能な戦略があると思う.
リアリストは考える.2年にわたる内戦で9万人以上が死んだ今でも,統一した,多数のセクトを含む,民主的なシリアを実現するいかなる希望もない.アメリカの目標は,この地域の主要な反米勢力,イランとヒズボラが容易にアサドを助けて勝利できないように,彼らを苦しめることだ.長期的には,この戦略の結果,シリアが分割されるだろう.アラウィート,クルド,スンニの地域がある.スンニ派の地域でも権力闘争があり,アメリカが支援する世俗派と,宗教組織や湾岸諸国が支援するイスラム主義者が戦うだろう.分割は,最も安定的で人道的な,長期の選択肢である,より小さな自治単位にシリアが分裂して行くことに向かうが,その過程は醜く,我々が支援するグループではなく,聖戦主義者などが支配するかもしれない.
アイデアリスト・理想主義者は考える.統一した,多数のセクトからなる,民主的シリアを実現する.そのためには「良い反政府軍」を支援するだけでは不十分だ.アメリカ(あるいはNATO)が軍隊を送ってアサド政権を倒し,その後の数年間を駐留して内戦や過激派の暴力を抑える.そして穏健派が社会契約を書き,一緒に暮らすことを可能にする.それは,再度,イラク規模の介入を意味するだろう.アメリカ人のほとんど誰も,それがうまく行くと思わないし,支持しないが.
武器だけ送って幸運に委ねる,という考えもある.リビアがそうだ.しかし,リビア介入は成功したのか? ベンガジのアメリカ大使暗殺で明らかになったように,リビア東部は未だに治安が回復されていない.
シリアでも,わずかな武器を送るだけで,アサド政権と支援者が交渉に応じ,アサドが政権を去るかもしれない.多くの幸運が重なる必要はあるが,それでも,その後の平和維持軍を誰かが送ることになる.
オバマの考えを知りたい.
FP June 24, 2013
What
Is Obama REALLY Doing in Syria?
Posted By Stephen M. Walt
オバマは,就任してまだ何もしないうちに,ノーベル平和賞をもらった.ノルウェーの委員会が思い出したくないだろうが.オバマはいつも,その言葉ほどに,実行しなかった.
私はオバマを"buck-passer"(責任転嫁する者)と呼んだが,私の友人Alan Bergerは,シリアにおいて,オバマはもっと強烈なリアリストのゲームを選択した,と解釈する.
シリアの内戦は,イランの財政を枯渇させる.また,イランとヒズボラの,アメリカ帝国主義やシオニズムと闘うイメージを損なう.アサド政権を支持するロシアと中国のイメージも損なう.だから内戦が長引く方が良い.特に,その戦費はカタール人やサウジ国民が支払うのだから.オバマが積極的な介入を抑えてきたのは,いつもアメリカ帝国主義が非難されるからだ.彼らはもっと,アメリカの介入を願うようになるだろう.
この戦略のマイナス面は,シリア国民の犠牲が増えることだ.シリアは破綻国家になってしまうだろう.しかし,バラバラになって紛争を続ける中東は,アメリカの助けを求めて諸勢力が争うから,むしろ扱いやすい.アメリカが地上軍の派遣や占領,地域の再編をしないなら.
l ブラジルのデモと政治改革
FT June 23, 2013
Brazil’s
middle class gives voice to dissent
By John Paul Rathbone in London
ブラジルの抗議デモは,エジプトやトルコと何が違うのか? 政府はどうやってデモを終息させるのか?
Albert O Hirschmanは,そのもっとも有名な著作(Exit, Voice and Loyalty)において,国民であれ,企業であれ,個人がどのように闘って組織化されるかを描いた.それは,組織から抜ける(Exit)か,変化を求めて扇動すること(Voice)を選択する,というものだ.
東ドイツでは「退出」を抑制したが,結局,「発言」するに至り,大衆的な抗議がベルリンの壁を倒した.それほど劇的でないが,ブラジルも,Hirschmanが40年前に認めた多くの性格を示している.それは,ブラジルの抗議デモが解決する,という楽観的な見通しを与える.
まず,ブラジルの抗議デモが起きた理由である.4000万人の人々が貧困から抜け出した.それは,幾分かは,労働者党PTの政策によるものであり,また,貧しい者たちの厳しい労働によるものであった.しかし,政府のとった政策が良かったのか,あるいは,国際商品価格の高騰や信用ブームの方が重要であったのか,わからない.
例えば医療制度を考えてみる.ブラジルは世界で最も不平等なケースの1つである.かつて中産階級は,公立病院を避けて,私立病院に行けばよかった.この「退出」が,事態を改善するかもしれない抗議デモという「発言」を抑えていた.警察も,学校も,私立サービスによって解決できた.
しかし,貧困から抜け出した新しい中産階級には,そのような「退出Exit」の可能性がない.彼らの家計は頼りなく,公共サービスはぼろぼろで,その不満が結局,「発言Voice」へと向かった.
Hirschmanによれば,こうした対立は「新しい,より包括的な,民主的秩序」という成果をもたらす可能性が高い.なぜならブラジルの抗議デモは,分散して,明確な指導者もいないが,「多寡(多いか,少ないか)」をめぐる紛争であり,妥協による解決が可能であるからだ.
ブラジルは世界第8位の経済規模を持ち,その税収は4兆ドル,GDPの35%に及ぶ.これはイギリスと同じ水準だ.それでも公共サービスが不足しているのは,一つには,公的年金に支出し過ぎているからだ.例えば,教師は50代前半に引退し,たいてい最終年に昇進して,最後の給与を年金としてもらい続ける.ほかにも,公務員の腐敗,無駄な公共事業,お粗末な管理方法,など,問題が多い.
それを改革するのは,もちろん,言うよりも難しい.文化を変え,ガバナンスを改善しなければならない.しかし,ルセフ大統領は問題があることを認めている.他方,トルコのエルドアン首相は抗議デモ参加者を「役立たず・ごろつき」と呼んだ.
ブラジルの対立は「多寡」をめぐるものであり,中東が苦しむ(信仰,ジェンダー,言語,人種などの)「二者択一」とは違う.この点が重要だ.
l 中国の経済改革
FT June 23, 2013
China’s
conundrum
金融パニックの予感がした.先週,中国人民銀行が市場に流動性を供給するまで,金融機関は短期銀行間融資に殺到した.金利は,先月まで3%であったが,11%まで上昇した.中国の難問は,あまりにも自由に債務を積み上げた金融システムを,自由化しなければならないことだ.
金利上昇は,「資産管理型商品」をバランスシートに積み上げている銀行にとって,致命的である.それはあいまいな構造で,主に不動産に投資している.20%を超える信用の膨張はここに吸収され,銀行融資残高は中国の年産出額の200%に達する.それは5年前に120%であった.
貯蓄者は公的金利の低さに不満を強め,金融機関の提供する他の投資型商品に向かう.同時に,地方政府は成長率の目標を掲げ,建設業への資金供給を促している.銀行はビジネスを拡大できた.
しかし,銀行の流動性も,満期のミスマッチも,深刻な問題になる.多くの場合,こうした商品は支払い不能であると懸念される.もし融資残高が不良債権化すれば,北京は西側諸国と同じ問題に直面する.すなわち,無謀な融資の末に銀行が破たんするのを避けながら,信用の流れを生産的な投資に向けるには,どうすればよいか? 人民銀行が再融資するのは良いが,これは時限爆弾である.取り除くしかない.
金利を自由化すれば貯蓄は金融商品に向かわない.しかし,銀行の利潤が減る.銀行は帳簿外の取引を減らし,損失が明らかになる.北京はそれを補てんできる準備を持つが,金融破たんのコストは避けられない.それを誰が被るのか? 厳しい政治闘争が待っている.
l 金融市場の動揺
Project Syndicate 27 June 2013
Breaking
Bad Habits
Stephen S. Roach
それは容易なことではないが,世界の2大経済が金融政策を正常化(引き締め)に転じた.すなわち,アメリカと中国だ.アメリカ連銀と,中国人民銀行とは,全く異なる理由で同じ過程に入った.アメリカは金融危機に対する救済策と極端な金融緩和を続けてきた.中国は危機を回避するための先行的な刺激策として金融緩和していた.
しかし,アメリカの消費はかつてないほど反応せず,経済の回復は弱い.バランスシートの回復や経済活動の刺激に失敗し,量的緩和は世界金融市場の不安定化をもたらす危険な源泉となっている.
中国の金融引き締めは,独立した中央銀行の決定ではなく,習近平主席の新体制が以前の急成長を改める方針転換を決めたことによる.そのためには経済のバランスや考え方が変わる必要がある.特に,シャドー・バンキングにおける債務の累積は問題だ.
金融市場は,世界の2大中央銀行が転換したことで難しい状況に入る.同時に,投資家たちは安倍晋三の経済政策に深刻な疑問を示している.残念ながら,それは新しい構造改革を進めるより,金融政策に依存した,量的緩和と円安に頼り過ぎている.結局,4年に及ぶアメリカ連銀の非伝統的な緩和策がバランスシートを改善しなかったのに,日銀の資産購入が,20年に及ぶ停滞やデフレを速やかに終わらせると,信じる者などいるだろうか?
l 中東の民主化
Project Syndicate 21 June 2013
Iran,
Turkey, and the Non-Arab Street
Anne-Marie Slaughter
西側から見て,中東政治は逆転した.イランの神政で,選挙による穏健派のHassan Rowhaniロウハニ大統領が誕生した.そこには多くの限界があるけれど,明らかに民衆の意思が反映されている.他方,トルコでは,西側の好むイスラム的民主派,Recep Tayyip Erdoğanエルドアン首相が,ブルドーザー,催涙ガス,放水車,ゴム弾で,彼の計画に平和的に反対する人々を掃討した.
4年前には,テヘランの通りを埋めた民衆デモをイラン政府が弾圧し,体制のイメージを深く損なった.他方,エルドアンは民衆のヒーローであった.彼の政党はヨーロッパ型のキリスト教民主党と同じイスラム教徒の政党を目指していた.
民主主義においては,民衆の声が重要である.正統性は,強制によって得ることはできないし,正当性を失った支配者は,投資や成長ももたらさない,1.民衆は確かに1つではない.しかし,多数の民衆が声を上げるとき,それを政府は聴くべきであり,弾圧してはならない.2.中東から北アフリカにおいても,さまざまな管理型の民主制が広まってきた.3.政府の安定性は,その批判や厳しい抗議に対して,彼らの声を聴く姿勢で試される.
2011年,マンハッタンでウォール街の占拠運動が起きたとき,それは2か月間続いた.確かに最後は解散させられたが,それは衛生上の問題や,近隣住民の苦情があったからだ.シリアでは,立ち上がった民衆が銃撃され,武器が取られ,報復と内戦が続く.どこであれ,平和的な抗議デモを弾圧するより,法廷,政治交渉,妥協,そして新しい選挙によって解決する方が,はるかに優れている.
l 新興諸国の民主主義
FP June 21, 2013
The
Tyranny of the Majority
BY JAMES TRAUB
エジプトとトルコに共通するものは,民主主義の特殊な逸脱である,選挙による専制支配だ.エルドアンもモルシも,「人民」に支持され,おそらく,絶対多数が支配して,反対派を敵,がらくた,外国の考えや支援者によって動く非市民(非国民)とみなす.
エルドアン,モルシ,チャベス,プーチン,・・・すべて誇大妄想家であり,「民衆の意思」と自分の意志との区別ができない,そして,しようとしない.しかし,これは同時に若い民主主義の病気である.そこでは争われる使命があまりにも重要であるために,支配者も,反対派も,妥協を国益に対する裏切りとみなす傾向がある.
ネルソン・マンデラやジョージ・ワシントンがいて,権力の民主的な行使を教訓として残せた国は幸運である.また,ベルリンの壁が崩壊した後の東欧では,改革派と支配層とが一連の取引によって民主主義を実現し,だれもが妥協することを学んだ.しかし,エジプトのように,支配者が革命によって倒されたとき,指導者たちは一部のセクトではなく,国民全体のために妥協することを学べない.
民主主義をもたらすには,指導者,政治文化・習慣,ルール・憲法が重要である.
FT June 27, 2013
Prosperity
fuels protest in the new age of unrest
By Philip Stephens
新興世界の政治は,経済・社会のめまぐるしい変化のスピードについていけない.このストレスが去る見込みはなく,われわれは一層の騒乱を覚悟するべきだ.
抗議デモを結びつける要因は,民主的であれ,権威主義的であれ,新興世界の政治システムに対する不満である.経済・社会変化が速すぎるのだ.西側において,産業革命のストレスや社会的緊張は1世紀に及んで徐々に発生した.政治システムは,新興ブルジョアジーや,より強い要求を示し始めた労働者階級に対して,調整する時間があった.それでも,その過程では騒乱,革命,戦争が相次いだ.
現代の新興勢力は,わずか20年で誕生し,崩壊した.政治から排除されていた何千万人,何億人が,経済成長,都市化,デジタル技術によって結びついた.テキスト・メッセージから.ソーシャル・メディアまで,教育を受けた,しばしば仕事のない,若者たちが,不満を動員する強力な武器を手にしたのだ.
抗議デモの対象は,既存のシステムである.政治エリート,腐敗した公務員たち,富裕なビジネス指導者に,彼らの不満は集中する.既存の反対政党の旗は掲げない.増大する中産階級,都市の密集する若者たち,劣悪な公共サーニス,失業,所得格差の拡大,汚職の蔓延.
だから,政治階級に容易な出口はない.権威主義体制は,特に中国は,成長をその解決策と考えていた.しかし,それは違う.新興諸国もグローバルな経済の循環から逃れることはできない.成長は減速し,物的な豊かさだけでは社会的不満を解消できない.貧困を抜け出した人々は,腐敗や不平等を嫌うようになり,法の支配を要求する.
しかし,新興階級の世休はあまりにも急速に増大し,支配者たちを苦しめ続ける.この先も,不安定化や騒乱を避けることはできない.われわれは1840年代を経験するのである.
l 安倍の矢
WSJ June 24, 2013
The
Right Target for Japan's Third Arrow
By LAWRENCE B. LINDSEY AND DANIEL LOEB
安倍がもし「第三の矢」を構造改革に向けるなら,日本企業の資産を効率的に再配分し,日本企業のガバナンスを株主の利益に反応する姿に変え,日本の投資文化も変えるべきだ.安倍がこうした改革に成功すれば,日本経済の成長力は大幅に高まり,安倍は世界の歴史において,マーガレット・サッチャーと並ぶだろう.
WSJ June 26, 2013
Mr. Abe's Missing Arrow
By JOSEPH STERNBERG CONNECT
もし安倍首相が日本の若返りを成功させた計画の実行者として歴史に名を残すとしたら,それは移民の受け入れである.
移民は,新しい消費者と労働者になり,企業の国内投資を刺激する.移民は政府の課税できる人口を増やし,財政状態を改善する.移民は海外直接投資を容易にし,生産性を高める.
その重要性にもかかわらず,安倍はこの問題を計画から排除している.日本経済が人口減少から受けているダメージを過小評価することはできない.日本は2050年までに,その人口減少を埋めるためだけでも,1000万人の移民を必要としている.
l インフラ投資ファンド
WSJ June 27, 2013
How
to Kick-Start a Global Recovery
By JUSTIN YIFU LIN
大恐慌以来の世界経済の動揺を解消するには,G20が世界経済の回復を指導しなければならない.しかし,先進諸国では構造改革が求められており.その短期的な効果は,むしろ引き締めになる.そこで,これを緩和するためにIMFが通貨の減価を勧めているが,アメリカ,ヨーロッパ,日本の極端な金融緩和と通貨安は,競争的な切り下げを生じてしまう.
この問題を解決するには,先進諸国に比べて,まだ不足している発展途上諸国のインフラに投資するため,準備通貨とその外貨準備を多く持つ諸国が,グローバルなインフラ投資ファンドをG20で合意することだ.
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The Economist June 15th 2013
Germany and Europe: The reluctant
hegemon
Special Report Germany: Europe’s
reluctant hegemon
Abenomics: Not so super
The third arrow of Abenomics: Misfire
The United Nations in Congo: Art of
darkness
The yuan: The cheapest thing going is
gone
The Fed and emerging markets: The end of
the affair
(コメント) ヨーロッパの覇権を手にしたドイツは,あまりにも小国であることを理想にしているため,ユーロ危機や不況に手を出さない.健全な指導力を発揮する強国になれるか? メルケルが歴史の評価を気にし,ドイツやヨーロッパ各地から移民を受け入れ,周辺地域への投資を組織することで.他方,アベノミクスには重要な改革が抜けています.
コンゴにおける国連軍の役割,人民元の強さ,アメリカのQE終了と新興諸国からの資本流出.
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IPEの想像力 7/1/13
桜井先生に教えてもらった番組NHK・BS1「島耕作のアジア立志伝 モリス・チャンTSMC」の再放送を観ました.とても面白かったです.
モリス・チャンの「ファブレス」という考え方は,半導体産業だからできたのでしょうか? 技術革新が急速で,産業のコメとして大量に利用され,設備投資には莫大な初期投資が必要です.製品開発や流通まで単一の企業が担っていたら,最新型の半導体を生産する工場に,次々,大規模な投資を続けられません.企業を垂直統合型から水平統合型に転換することが,その解決策でした.
シリコン・バレーのベンチャー企業と,日本の半導体メーカーの失敗とが,TSMCというビジネスモデルを生む条件になった,というのが興味深いです.さらに番組によれば,成功の秘訣は,自社の製品を作らず,徹底した情報管理で,委託された製品技術を守る,という点でした.これは,中国が低賃金で「世界の工場」になった条件とも対照的です.
モリス・チャンの成功は永久に続くでしょうか?
そもそも半導体の生産技術は精密な設計図をシリコンウェハーに印刷する技術だ,と読んだように思います.TMSCは,製造機械の管理技術(番組が紹介した空気中のチリを減らす)は優れていると思いますが,ウェハーや機械を生産する企業ではないように思いました.日本の半導体メーカーが苦しんだように,過剰投資や商品開発の流れの変化が,世界各地の生産下請けの競争と利潤を一瞬で変えるかもしれません.
なぜ台湾なのか? 台湾海峡で軍事衝突が起きれば,あるいは,それを予想するだけでも,東北で大震災が起きたときのように,世界の電子機器メーカーは台湾以外の生産拠点を求めるでしょう.世界中に有利な立地があると思いますが,その中でも,なぜ台湾にTMSCを立ち上げたのか,わかりません.シンガポールや,アイルランドでもよかったでしょう.ファブレス企業の競争と,生産下請け企業の競争が激化するのは避けられません.
モリス・チャンは,裕福な実業家の家庭に生まれ,香港で育ち,日中戦争で家族は各地を逃げまわり,叔父を頼ってアメリカにわたって,学費のために働きながら,Harvard大学を出て,テキサス・インスツルメンツで働いた,ということです.台湾政府が彼のアイデアを採用し,独立しました.
多国籍企業論にも,垂直統合型と水平統合型の説明があります.TSMCやファブレスは逆の動きであり,企業の分割線がどこになるのか,ITや新興経済の新しい事情が世界の生産システムを作り変えます.グローバルな産業構造や市場競争が新しい企業や鉱業地帯を形成しつつあるのです.
だからTSMCの成長には,安全保障だけでなく,通貨・為替レートの安定性も欠かせない,と思います.世界の主要貿易圏と通貨圏,安全保障共同体が重なることに,新興諸国でアイデアを模索する第2,第3のモリス・チャンは賭けるのです.
他方,紹介したように,P. KrugmanがAppleやMicrosoftを批判しています.需要の水準を維持する,という意味では,このような新しい企業形態は,ケインズ主義的な需要管理の条件を損なうものになるからです.民間投資が埋める技術ギャップの大きな,インフラ投資や政府の積極的関与が続く新興諸国と違い,先進諸国の高所得・サービス・福祉経済ほど,ケインズ主義政策や債務の管理が重要になります.
アメリカと中国が,協力して,金融政策の転換を進めることも,G20が,発展途上諸国のインフラ投資によって,世界経済のバランスを回復する調整期の減速を緩和することも,難しいけれど,不可能ではないでしょう.しかし,政治的な関与が重要なときに,地域紛争や伝染病が,致命的な不況と世界戦争の引き金となる? ・・・もうすぐ,第1次世界大戦の記念日です.
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