IPEの果樹園2013

今週のReview

7/1-6

 

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KRUGMANの気炎 ・・・中東・北アフリカの再編 ・・・ブラジルのデモと政治改革 ・・・中国の経済改革 ・・・中国外交の展開 ・・・金融市場の動揺 ・・・中東の民主化 ・・・新興諸国の民主主義 ・・・安倍の矢 ・・・インフラ投資ファンド

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  KRUGMANの気炎

NYT June 20, 2013

Profits Without Production

By PAUL KRUGMAN

Carmen Reinhart and Kenneth Rogoffの素晴らしい本は,繰り返し危機が同じパターンを示す,と述べている.しかし同時に,経済は大きく変わった.21世紀のアメリカ経済は何が変わったか?

独占利潤(地代・レント)だ.投資に対する収益ではなく,市場支配に対する価値を示す.レントが重要になれば,利潤と生産とは切り離され,不況は長期化する.

2つの時代の代表的企業を観ればよい.1950年代,60年代のGMと,現在のAppleだ.GMもその最盛期には市場を支配していたが,企業の価値は概ねその生産能力によって得ていた.多くの工場と労働者(全労働者の約1%)を所有したのだ.

これに対して,Appleは,物的な世界にほとんど関与しない.アメリカで最高あるいは2番目の価値を持つ企業だが,労働者の0.05%以下しか雇用していない.なぜなら生産のほとんどを海外に移転してしまったからだ.また,中国人がAppleの販売額から多くを得ていないことも確かだ.あなたが買うi-whatAppleの電子機器)は,その生産コストと関係ない.Appleは市場を支配して,その移動から多くの利潤を得ている.

長い間,莫大な利潤を得ているMicrosoftも,企業利潤の30%を占める金融ビジネスも,同じ独占利潤の性格を示す.こうした企業がその特権的地位に値するかどうかとは別に,利潤が生産ではなく,市場支配力によって決まることは,経済に影響する.

今では,不平等が拡大していることをとっくに知っているだろうが,現代では企業利潤が増えたことを反映するのである.それなら,なぜ企業はもっと投資しないのか? もっと景気が良くてもいいだろう.投資しないのは,オバマのせいではない.

独占企業は,生産力を拡大することに関心が無いからだ.彼らが利潤を得るのは,市場を支配するからだ.莫大な利潤を企業内に留保したまま,それを投資することはない.賃金を減らし,投資を減らすから,需要は失われ,不況が長引くのだ.

NYT June 23, 2013

Et Tu, Bernanke?

By PAUL KRUGMAN

労働年齢の主要な部分である25歳から54歳を取れば,2007-09年の不況期に就業者の率が80から75に低下し,それ以来,まだ76である.経済は完全雇用からは程遠い.

しかし,バーナンキは金融緩和の「漸減」に言及した.それは経済の回復を挫く恐れがある.なぜバーナンキはそのような発言をするのか?

低金利がバブルをもたらすことを警告するエコノミストに同調するようになったのか? そうではないだろう.それを理由に高金利を許し,雇用を挫くとは思えない.むしろ,バーナンキは政治的な圧力を受けているのだ.連銀を批判する政治家たちは,量的緩和をドルの価値を奪う,インフレをもたらす,と非難してきた.

多くの政策担当者が完全雇用という目標を無視するようになった.バーナンキ,お前もなのか?


l  中東・北アフリカの再編

FP JUNE 20, 2013

So You Want to Intervene in Syria Without Breaking the Law?

BY ROSA BROOKS

NYT June 22, 2013

Syria Scorecard

By THOMAS L. FRIEDMAN

3万フィート上空から見るなら,現在の中東地域が,オスマントルコの崩壊から長引いた結末を示している,と分かるだろう.

1次世界大戦の結果として,オスマントルコが崩壊したとき,そこには植民地勢力としてイギリスとフランスがいた.彼らは自分たちの利益を追求し,その土地の部族,セクト,信仰の上に,自分たちの秩序を押し付け,東アラブ圏を築いた.

2次世界大戦の結果として,イギリスとフランスが撤退するとき,彼らは権力を多くの場合は王朝に譲り,王朝はまた,多くの場合,将軍に譲り,すべてにおいて,そのバラバラな民衆を強権によって支配した.

しかし今,オスマン人は去り,王族も去り,強権を振るった将軍も去った.そこには1つの問題が残されている.トップダウンで垂直的に統治された人々が,今,自分たちで社会契約を結び,水平的な統治を実現できるか? 上からの強権が無くても,平等な市民として,権力を規則的に交代することができるのか?

オバマが反アサドの反政府軍に武器を供給するのは,この渦中にアメリカも入ることを意味する.大統領が何を目指しているのか,良くわからないが,私は3つの可能な戦略があると思う.

リアリストは考える.2年にわたる内戦で9万人以上が死んだ今でも,統一した,多数のセクトを含む,民主的なシリアを実現するいかなる希望もない.アメリカの目標は,この地域の主要な反米勢力,イランとヒズボラが容易にアサドを助けて勝利できないように,彼らを苦しめることだ.長期的には,この戦略の結果,シリアが分割されるだろう.アラウィート,クルド,スンニの地域がある.スンニ派の地域でも権力闘争があり,アメリカが支援する世俗派と,宗教組織や湾岸諸国が支援するイスラム主義者が戦うだろう.分割は,最も安定的で人道的な,長期の選択肢である,より小さな自治単位にシリアが分裂して行くことに向かうが,その過程は醜く,我々が支援するグループではなく,聖戦主義者などが支配するかもしれない.

アイデアリスト・理想主義者は考える.統一した,多数のセクトからなる,民主的シリアを実現する.そのためには「良い反政府軍」を支援するだけでは不十分だ.アメリカ(あるいはNATO)が軍隊を送ってアサド政権を倒し,その後の数年間を駐留して内戦や過激派の暴力を抑える.そして穏健派が社会契約を書き,一緒に暮らすことを可能にする.それは,再度,イラク規模の介入を意味するだろう.アメリカ人のほとんど誰も,それがうまく行くと思わないし,支持しないが.

武器だけ送って幸運に委ねる,という考えもある.リビアがそうだ.しかし,リビア介入は成功したのか? ベンガジのアメリカ大使暗殺で明らかになったように,リビア東部は未だに治安が回復されていない.

シリアでも,わずかな武器を送るだけで,アサド政権と支援者が交渉に応じ,アサドが政権を去るかもしれない.多くの幸運が重なる必要はあるが,それでも,その後の平和維持軍を誰かが送ることになる.

オバマの考えを知りたい.

FP June 24, 2013

What Is Obama REALLY Doing in Syria?

Posted By Stephen M. Walt

オバマは,就任してまだ何もしないうちに,ノーベル平和賞をもらった.ノルウェーの委員会が思い出したくないだろうが.オバマはいつも,その言葉ほどに,実行しなかった.

私はオバマを"buck-passer"(責任転嫁する者)と呼んだが,私の友人Alan Bergerは,シリアにおいて,オバマはもっと強烈なリアリストのゲームを選択した,と解釈する.

シリアの内戦は,イランの財政を枯渇させる.また,イランとヒズボラの,アメリカ帝国主義やシオニズムと闘うイメージを損なう.アサド政権を支持するロシアと中国のイメージも損なう.だから内戦が長引く方が良い.特に,その戦費はカタール人やサウジ国民が支払うのだから.オバマが積極的な介入を抑えてきたのは,いつもアメリカ帝国主義が非難されるからだ.彼らはもっと,アメリカの介入を願うようになるだろう.

この戦略のマイナス面は,シリア国民の犠牲が増えることだ.シリアは破綻国家になってしまうだろう.しかし,バラバラになって紛争を続ける中東は,アメリカの助けを求めて諸勢力が争うから,むしろ扱いやすい.アメリカが地上軍の派遣や占領,地域の再編をしないなら.

The Guardian, Thursday 27 June 2013

Syria is not alone in its descent into sectarianism

Malise Ruthven


l  ブラジルのデモと政治改革

FT June 21, 2013

Brazil: The power of the streets

By Joe Leahy

ルセフ大統領が述べたように,ブラジルは目覚めた.学生たちも,貧しい労働者も,ペレのようなスター・サッカー選手も.

軍事独裁体制,ハイパーインフレーション,経済危機,など,ブラジルが分裂しそうなときでも,常に,サッカーは人々を統合した.しかし,バス運賃の値上げに反対する声から始まったデモについては,サッカーでさえも国民を宥和することができない,とわかった.

「フットボールの神様」と呼ばれる73歳のペレが,騒乱を忘れよう,と声明で呼びかけたが,群衆から逆に非難された.騒乱はブラジル全土,80以上の都市に広がっている.その抗議も,バス運賃の値上げから,政治腐敗,ワールド・カップ2014の放漫財政,ホモセクシャルを「治療」する法案,など,さまざまなものに及んでいる.

ブラジル社会は大きく変わった.しかし,無能で,腐敗した政治階級や,軍事政権下の野蛮な警察組織は変わっていない.投資家の見方も変わってきた.かつてBRICs1つとしてブラジルの成長見込みは高かったが,今では低成長,インフレ,競争力の低下に苦しんでいる.

デモ参加者はさまざまである.学生,建築家,ビジネスマン,労働組合員,家族連れ.木曜日の夜には,100万人規模に達した.ブラジル社会が現れた.

ルセフ大統領の辞任を要求しているのではない.しかし,大統領や労働者党PTの支持は低下した.人口が2000万人のサンパウロに,小さな地下鉄があるだけで,バスは超過密,道路は渋滞,ところが,政治家や富裕層はその上をヘリコプターで飛んでいく.最低賃金で働く清掃作業員のマリアは,毎日,5時間の通勤時間を嘆く.

PTは,自分たちが成功の犠牲者だ,と考える.貧困の多くを解消し,教育を広め,失業率も下がった.しかし,かつての貧困層は,生活の質が悪いと抗議している.

対立は,地域間や階級間にもある.サンパウロの富裕層は,自分たちが支払う税金に比べて,その便益は少なすぎると考えている.また,新旧の中産階級には,大学,道路,飛行機の利用において,激しい競争がある.

これについてはPTの政策・成長モデルも間違っていた.政府は消費者による需要を刺激するため,社会的給付,賃金引き上げ,インフラ建設のための低利融資を増やした.例えば,ルセフは自動車の購入を促したが,他方で交通渋滞は悪化していた.PTもルセフも,かつて独裁政権に立ち向かったデモが自分たちと敵対することを恐れている.

デモがいつまで続くのか,分からない.こうした事態が悪質な群衆を刺激する恐れがある.略奪が増え,デモの正統性が失われるだろう.

しかし,ソーシャル・ネットワークのおかげで,デモがすぐに再生する.今こそ,政治家たちが目覚めるときだ.

The Guardian, Friday 21 June 2013

Brazil: feel-bad factor

Editorial

guardian.co.uk, Saturday 22 June 2013

What do the Brazilian protesters want?

Toni Marques

ある運動は,都市の公共交通運賃を無料にすることを要求する.都市の輸送システムを「首都委員会」が管理する.

ブラジル国民は,ブラジルにうんざりしている.BRICsと言われても,都市住民の45%に下水が無い.殺人事件も多い.誰も10年に及ぶ好況など信じない.消費者と市民は違う.

ラディカルな抗議はすべての政党や代表制を否定する.直接的な民衆との関係を主張する.同時に,彼らは国家が何でも給付してくれると考える.

ブラジルは成長し,おとなになる苦しみを経験している.問題は,おとなが何をするのか,我々は何も知らないことだ.

NYT June 21, 2013

Brazil’s Vinegar Uprising

By VANESSA BARBARA

FT June 23, 2013

Mediation will not quell the anger on Brazil’s streets

By Paulo Sotero

FT June 23, 2013

Brazil’s middle class gives voice to dissent

By John Paul Rathbone in London

ブラジルの抗議デモは,エジプトやトルコと何が違うのか? 政府はどうやってデモを終息させるのか?

Albert O Hirschmanは,そのもっとも有名な著作(Exit, Voice and Loyalty)において,国民であれ,企業であれ,個人がどのように闘って組織化されるかを描いた.それは,組織から抜ける(Exit)か,変化を求めて扇動すること(Voice)を選択する,というものだ.

東ドイツでは「退出」を抑制したが,結局,「発言」するに至り,大衆的な抗議がベルリンの壁を倒した.それほど劇的でないが,ブラジルも,Hirschman40年前に認めた多くの性格を示している.それは,ブラジルの抗議デモが解決する,という楽観的な見通しを与える.

まず,ブラジルの抗議デモが起きた理由である.4000万人の人々が貧困から抜け出した.それは,幾分かは,労働者党PTの政策によるものであり,また,貧しい者たちの厳しい労働によるものであった.しかし,政府のとった政策が良かったのか,あるいは,国際商品価格の高騰や信用ブームの方が重要であったのか,わからない.

例えば医療制度を考えてみる.ブラジルは世界で最も不平等なケースの1つである.かつて中産階級は,公立病院を避けて,私立病院に行けばよかった.この「退出」が,事態を改善するかもしれない抗議デモという「発言」を抑えていた.警察も,学校も,私立サービスによって解決できた.

しかし,貧困から抜け出した新しい中産階級には,そのような「退出Exit」の可能性がない.彼らの家計は頼りなく,公共サービスはぼろぼろで,その不満が結局,「発言Voice」へと向かった.

Hirschmanによれば,こうした対立は「新しい,より包括的な,民主的秩序」という成果をもたらす可能性が高い.なぜならブラジルの抗議デモは,分散して,明確な指導者もいないが,「多寡(多いか,少ないか)」をめぐる紛争であり,妥協による解決が可能であるからだ.

ブラジルは世界第8位の経済規模を持ち,その税収は4兆ドル,GDP35%に及ぶ.これはイギリスと同じ水準だ.それでも公共サービスが不足しているのは,一つには,公的年金に支出し過ぎているからだ.例えば,教師は50代前半に引退し,たいてい最終年に昇進して,最後の給与を年金としてもらい続ける.ほかにも,公務員の腐敗,無駄な公共事業,お粗末な管理方法,など,問題が多い.

それを改革するのは,もちろん,言うよりも難しい.文化を変え,ガバナンスを改善しなければならない.しかし,ルセフ大統領は問題があることを認めている.他方,トルコのエルドアン首相は抗議デモ参加者を「役立たず・ごろつき」と呼んだ.

ブラジルの対立は「多寡」をめぐるものであり,中東が苦しむ(信仰,ジェンダー,言語,人種などの)「二者択一」とは違う.この点が重要だ.

SPIEGEL ONLINE 06/24/2013

The End of Brazil's Boom

Inflation and Corruption Fuel Revolt

By Jens Gluesing

NYT June 24, 2013

Responding to Protests, Brazil’s Leader Proposes Changes to System

By SIMON ROMERO

NYT June 25, 2013

Let Them Eat Soccer

By ELIO GASPARI

リオやサンパウロ市民が交通費に支払う額が生計費全体に占める割合は,ニューヨークやパリよりも高い.しかも,その質が悪い.ところがリオの市長は,公共輸送に1セントの補助金も出さなかったことを自慢した.その一方で,著名なサッカー場には56000万ドルをかけてワールド・カップの基準を満たすための工事をした.

高級官僚たちの無駄遣いが抗議デモの不満の対象になっている.2つのブラジルがあるのだ.1つは叫ぶブラジル.ただしサッカー場だけで.もう一つは楽しむブラジル.

2005年,前大統領Luis Inácio Lula da Silvaは,投票をめぐる大規模な買収にかかわったことがスキャンダルとなった.清廉な指導者という彼のイメージが失われた.国民の怒りの大きさは,アメリカにおけるRichard M. Nixon大統領のウォーターゲート・スキャンダルと同じである.


l  イギリスの金融改革

FT June 21, 2013

The world is still being held hostage by its rotten banks

By John Plender

FT June 24, 2013

Banking must pursue the holy grail of confidence

By Evelyn de Rothschild

FT June 25, 2013

Britain is leading the world on banking reform

By JohnKay

2008年の金融危機は,グローバルな銀行業が商業的に成長不可能で,システム的に脆弱であることを示した.しかし銀行業の安定化は,短期的に見て正しい大作であるが,長期的には間違った対応である.政府がこの矛盾を解かねばならないが,多くの場合,それを試みてもいない.

Project Syndicate 26 June 2013

British Banks’ Comedy of Terrors

Simon Johnson

この超現実主義の世界で,イギリスは不当なほど重要な役割を担っている.それはアメリカとヨーロッパの金融機関も加わった金融センターであり,英米の金融当局が相互に闘っているからだ.世界のオピニオン・リーダーたちは,イギリスが賢明かつ巧妙に金融部門を監督しているというが,それは現時点で全くのでたらめだ.イギリスの金融監督庁the Prudential Regulatory Authorityの最新報告“capital shortfall exercise”を読めば,だれでも最初に笑い出し,それから泣くだろう.

FT June 27, 2013

A change of guard at the Old Lady


l  中国の経済改革

FT June 21, 2013

The old Chinese model has run out of road

Stephen King

世界金融危機が起きるまで,中国は毎年輸出を20%も増加させて成長していたが,そのモデルは機能しなくなった.しかし,しばらくは,北京にその答がわかっていた.金融緩和でインフラ投資を増やすことだ.それは究極のケインズ主義的刺激策であった.中国のインフラ整備はまだ初期段階であったから,だれもそれに反対しなかった.

しかし,指導部の新体制が確立されて,その考えは見直された.Li Keqiang首相は,先月,政府投資による刺激策の限界を指摘し,民間投資と規制緩和の改革を重視する演説を行った.融資を増やし過ぎれば,金融危機を招くことを恐れたのだ.

重点は,経済のファンダメンタルズを改善する供給側の構造改革に向いている.しかし,それは短期的に,コストを意味する.政府支出を減らすことで,資源はより効率的な用途に向かうだろうが,短期的には需要が減るのだ.水道や電力など,公共料金を引き上げるなら,企業や消費者の行動は現実に近づくが,実質所得を失う.民間投資を促すことは,国有企業の市場支配を動揺させる.より厳しい競争は,必然的に,政治的な抵抗を強める.

ここから言えることは,1.政府は金融危機の前ほど高い成長率を求めない.しかし,出稼ぎ労働者が職を失った2009年の危機を繰り返さず,改革を進めるために一定の成長率は維持しなければならない.2.今後,高い成長を求めて自動的に刺激策が繰り返されることはないだろう.成長の量より質を重視する.

中国の政策変化は,近隣諸国と,中国の資源需要(とアメリカの金融緩和)に頼ってきた資源供給諸国にとって,重大な挑戦となる.

FT June 23, 2013

China’s conundrum

金融パニックの予感がした.先週,中国人民銀行が市場に流動性を供給するまで,金融機関は短期銀行間融資に殺到した.金利は,先月まで3%であったが,11%まで上昇した.中国の難問は,あまりにも自由に債務を積み上げた金融システムを,自由化しなければならないことだ.

金利上昇は,「資産管理型商品」をバランスシートに積み上げている銀行にとって,致命的である.それはあいまいな構造で,主に不動産に投資している.20%を超える信用の膨張はここに吸収され,銀行融資残高は中国の年産出額の200%に達する.それは5年前に120%であった.

貯蓄者は公的金利の低さに不満を強め,金融機関の提供する他の投資型商品に向かう.同時に,地方政府は成長率の目標を掲げ,建設業への資金供給を促している.銀行はビジネスを拡大できた.

しかし,銀行の流動性も,満期のミスマッチも,深刻な問題になる.多くの場合,こうした商品は支払い不能であると懸念される.もし融資残高が不良債権化すれば,北京は西側諸国と同じ問題に直面する.すなわち,無謀な融資の末に銀行が破たんするのを避けながら,信用の流れを生産的な投資に向けるには,どうすればよいか? 人民銀行が再融資するのは良いが,これは時限爆弾である.取り除くしかない.

金利を自由化すれば貯蓄は金融商品に向かわない.しかし,銀行の利潤が減る.銀行は帳簿外の取引を減らし,損失が明らかになる.北京はそれを補てんできる準備を持つが,金融破たんのコストは避けられない.それを誰が被るのか? 厳しい政治闘争が待っている.

FT June 24, 2013

China: City limits

By Simon Rabinovitch

Huang Ninghaiは中国の田舎で人生を始めた.すなわち,Shaanxi陜西省の貧しい北部にある小麦農家で生まれた.彼は高校を終えることはなかったが,経済成長で土地を離れ,都市に出て建設労働者になった.最初は近くのYan’anへ,その後,4年前に内モンゴルのOrdosに来た.」

「彼は36歳だが,今,生まれ故郷の農村に帰ろうとしている.経済が減速して,Ordosもドバイのような率で崩壊し,この国の一角に及んだ都市化の大行進は逆転したのだ.」

「『この町は香港と競争するはずだった.』と,Huangは言う.『しかし今は,不動産会社が賃金を支払う金もない.』」

毎年1000万人が都市に移住する中国にとって,この町の姿は警告である.

他方,成功している都市もある.Zhejiang は,Changxing浙江省東部の都市であるが,住民たちは90年代に果物,絹,魚で成功し,今は世界的規模のバッテリー産業,中国最高レベルの高校教育を自慢する.

どちらの都市が増えるのか,中国都市化の重要な問題だ.

FT June 24, 2013

China’s Ponzi credit boom faces crunch

By George Magnus

BLOOMBERG Jun 24, 2013

China Loses Control of Its Frankenstein Economy

By William Pesek

世界は,中国の指導者たちが驚異的な成長を操ることに慣れてしまって,世界金融危機を避けて2ケタの成長を維持したことも認めていた.今度,中国人民銀行のZhou Xiaochuan総裁が過剰流動性を抑えたことも,単に,中国のポール・ボルカーとして称賛していた.

現実はそうではない.短期金利の急騰で,Zhouは姿勢を逆転させ,資金を供給した.安価な融資の時代が終わったと不安を語る者もいるが,それが実行できないという恐れもある.

これまで中国経済は過剰な信用拡大に中毒となり,国有銀行が多くの摩天楼,ハイウェイ,空港,ダム,ゴースト・タウンに融資してきた.流動性の洪水が,多くは国有企業に向かい,株価や地価を上昇させ,外国投資家も強気であった.13億の中国国民は天安門事件を忘れ去った.

Zhouは,痛みを伴わずに信用を抑えることなどできない.問題は,中国の巨大な国有銀行がどの程度健全なのか,だれにもわからないことだ.言い換えれば,中国の銀行システムはどの程度までシャドー・バンキング・システムになったのか?

データがどのように集計されているのかもわからないのに,中国が7.7%で成長している,と信じることなどできるだろうか? アメリカのシャドー・バンキング・システムは,帳簿外取引や不正取引とともに,世界の金融市場を破滅に追い込んだ.しかし,中国経済の全体がシャドー・バンキング・システムであると想像するならどうか?

Zhouは問題を解決できない.なぜなら,この問題を生み出したのは共産党による経済支配であるからだ.しかし,この困難な改革を行わなければ,中国経済はフランケンシュタインと化す.

Project Syndicate 24 June 2013

Getting Prices Right

Andrew Sheng, Xiao Geng

FT June 25, 2013

China’s about face with banks eases fears of crisis

By Simon Rabinovitch in Shanghai

FP JULY/AUGUST 2013

The Cookbook Theory of Economics

BY TYLER COWEN

VOX 25 June 2013

Hopes and false hopes in China’s interest-rate reform

Shang-Jin Wei

金利を自由化して市場の決定に委ねるためには,銀行を民営化しなければならない.しかも,市場型金利が資源配分を通じて経済の効率化を進めるには,金利低下がさらなる過剰融資にならないよう,社会的コストや環境破壊のコストが融資の決定に内部化されねばならない.

金利の自由化は,中国の経常収支黒字を減らすことに役立たないだろう.中国の黒字は謎ではない.第1に,2001年後半,WTOに加盟し,中国企業は国内の投資利回りが減り,移行に備えて海外資産に貯蓄するようになった.この要因は弱まる.第2に,結婚適齢期の男女の比率が変化し,多くなった男子が結婚することは難しくなって,貯蓄を増やした.この傾向は終わらない.

FT June 27, 2013

China could reform its state businesses by stealth

By Nicholas Lardy


l  中国外交の展開

FT June 21, 2013

Mao’s cave becomes temple to Mammon

By Patti Waldmeir in Yan’an

FP JUNE 21, 2013

Why Is China Talking to the Taliban?

BY ANDREW SMALL

カルザイ政権とタリバンとの交渉が失敗したことを,中国も残念に思っているだろう.

911以後,中国だけはタリバンの亡命政府と関係を維持してきた.中国の最大の関心はウイグルの分離独立派の動向であり,タリバンがウイグルの武装闘争を支援することだった.タリバンとの話し合いで合意したことは,タリバンが中国に敵対するいかなる集団にも領土を使用させない,ということであり,それと交換に求められたのは,中国がタリバンを公式に承認し,国連制裁を受けない,という保証であった.どちらもその要求は十分に満たしていない.タリバンはウイグルのイスラム主義者を追放していないし,中国は国連制裁に拒否権を行使しなかった.

しかし,双方は交渉を維持することを望んだ.タリバンは,自分たちを支持する政府が少ないことを知っている.また,中国はカルザイ政権との良好な関係を深め,経済的な進出を図ってきた.アメリカも中国がこの地域に積極的に関わることを促してきた.

では,中国は,タリバンとカルザイ政権,アメリカとの和解を実現するために重要な役割を果たすだろうか? それはないだろう.中国は危険を避けようとしてきたし,パキスタン政府も中国の関与を望まないからだ.こうした中国の消極性は,交渉が進む限り,アメリカにとっても好都合だろう.今のところ,中国はパキスタン政府との関係よりも,地域の安定化を重視している.それは2014年にアメリカ軍が撤退するアフガニスタンで,アメリカと同じ目標だ.

Project Syndicate 23 June 2013

China’s South Korean Future

Christopher R. Hill

韓国の大統領が北京を訪問する.6か国協議で最も重要な関係は中国と韓国の関係である.中国は,韓国のソフト・パワーに対応しなければならない.韓国企業による中国市場への浸透だけでなく,韓国の女性大統領,韓国の文化,韓国の科学技術は世界に影響を与えている.

中国は,韓国がアメリカとの関係を重視していることを知っている.しかし同時に,韓国の歴代の指導者たちが中国との安定した関係を重視したことも知っている.しかも,韓国は中国とともに,日本の植民地支配に苦しんだが,彼女の父が日本帝国軍に参加したことに関心を持っている.

もし韓国の経験が参考になるとすれば,中国が成長の後に経験する社会.政治変化の激しさが想像できる.

FT June 25, 2013

Threats to peace are lurking in the East China Sea

By Kurt Campbell

わずかな岩礁であるが,尖閣諸島/釣魚島をめぐる日中対立は深刻だ.その衝突がもたらす衝撃は,北東アジアを動揺させ,世界経済にも及ぶ.なぜ中国と日本の関係にこれほど注視すべきなのか? 

1に,1914年と同じ空気がある.当時のヨーロッパと似て,東京都北京は自分たちの立場が正しいことを確信している.しかも,もう少し圧力を強めれば相手側が折れると考えている.それは衝突を実現する恐れがある.

2に,双方が危機の影響を過小評価し,それを管理できると考えている.ほとんど眠れないまま,大きな圧力の下で,現実の作業に従う少数のスタッフには,誤算や不注意が起きるだろう.

3に,中国の習も,日本の安倍も,双方の考え方は,あらかじめ固定されている.そこにあるのは互いの態度を硬化させ,関係を支配する不信感である.

4に,アメリカが両国に及ぼす影響は限られている.アメリカは安全保障に関与するが,外交や,アジアの問題に大きな役割を果たすという姿勢を強調したくない.

しかし,日本と中国は国内のナショナリズムを利用するだけで,こうしたアメリカや近隣諸国の懸念を重視しない.

FT June 25, 2013

Meet Wang Jing: the man planning a rival to the Panama Canal

Kathrin Hille

FT June 27, 2013

China commits combat troops to Mali

By Kathrin Hille in Beijing


後半へ続く)