(前半から続く)
l 金融市場の動揺
FT June 21, 2013
Unwinding
the world’s biggest economic experiment
By Gavyn Davies
VOX 22 June 2013
Unwinding
quantitative easing
Stephen Grenville
FT June 23, 2013
Quantitative
easing: End of the line
By Robin Wigglesworth and Stefan Wagstyl
FT June 23, 2013
Central
banks told to head for exit
By Claire Jones, Economics Reporter
FT June 23, 2013
No
end in sight to wild markets
Mohamed El-Erian
金融市場の動揺が続けば,実体経済が損なわれる危険がある.そうなれば,悪循環が始まる.市場参加者は中央銀行の姿勢が変化したことを受けて,人為的な高水準の資産価格から離れようとしている.しかし,バーナンキが予想するように,ファンダメンタルズの改善は続くだろう.しかし,ユーロ圏の混乱や,中国の減速,新興市場の政策ミスは懸念される.
西側経済は,総需要の不足,供給条件,債務問題に,十分な解決策を採用できず,回復のエンジンは弱い.ドイツとアメリカの政府債市場が安定し,それからメキシコやアジアへ,市場が安定するまで,まだしばらくかかるだろう.
FT June 24, 2013
A
cri de coeur from the central bankers
FT June 25, 2013
Careless
talk may cost the economy
By Martin Wolf
連銀はもっと注意深くあるべきだ.
FT June 25, 2013
ECB
needs timely response to Fed tapering
By Ralph Atkins in London
Project Syndicate 27 June 2013
Central
Bankers on the Ground
Raghuram Rajan
おそらく,2008年の危機後,金融システムが崩壊するのを防いだ,という中央銀行家の成功が,彼らへの大衆の信頼を高め,さらなる行動に向かわせたのだろう.中央銀行家自身に,手に触れる物をすべて黄金に変える,というミダス・タッチを信じさせた.
中央銀行家たちも政治やイデオロギーから独立した専門官僚ではない,ということだ.彼らもまた,その足は大地に立っている.
Project Syndicate 27 June 2013
Breaking
Bad Habits
Stephen S. Roach
それは容易なことではないが,世界の2大経済が金融政策を正常化(引き締め)に転じた.すなわち,アメリカと中国だ.アメリカ連銀と,中国人民銀行とは,全く異なる理由で同じ過程に入った.アメリカは金融危機に対する救済策と極端な金融緩和を続けてきた.中国は危機を回避するための先行的な刺激策として金融緩和していた.
しかし,アメリカの消費はかつてないほど反応せず,経済の回復は弱い.バランスシートの回復や経済活動の刺激に失敗し,量的緩和は世界金融市場の不安定化をもたらす危険な源泉となっている.
中国の金融引き締めは,独立した中央銀行の決定ではなく,習近平主席の新体制が以前の急成長を改める方針転換を決めたことによる.そのためには経済のバランスや考え方が変わる必要がある.特に,シャドー・バンキングにおける債務の累積は問題だ.
金融市場は,世界の2大中央銀行が転換したことで難しい状況に入る.同時に,投資家たちは安倍晋三の経済政策に深刻な疑問を示している.残念ながら,それは新しい構造改革を進めるより,金融政策に依存した,量的緩和と円安に頼り過ぎている.結局,4年に及ぶアメリカ連銀の非伝統的な緩和策がバランスシートを改善しなかったのに,日銀の資産購入が,20年に及ぶ停滞やデフレを速やかに終わらせると,信じる者などいるだろうか?
Project Syndicate 27 June 2013
De-Risking
Revisited
Nouriel Roubini
l オバマの2つの役割
FT June 21, 2013
Obama
is proving to be America’s Mikhail Gorbachev
By Christopher Caldwell
バラク・オバマはベルリンのブランデンブルク門で演説した.ホストを招いて,ハリウッドのコメディアンのように,彼らをくつろがせる.オバマは役割を混同している.
50年前のケネディの演説を使って,ベルリンを超えて自由を想うように,という言葉を借りる.ただし,当時の敵に囲まれた状況を忘れて.「我々は単にアメリカ人やドイツ人ではない.」と彼は言う.「我々はまた,世界市民である.」
これがオバマの問題だ.あれはアメリカの指導者として選ばれた.直接の正当性はないが,最近のアメリカ大統領がそうであるように,世界の指導者でもある.しかし,他の大統領と違って,オバマは国内よりも外国で人気がある.それはまるで,ソ連最後の指導者,ゴルバチョフのようだ.
二人はともに,自分の国が外国で人気のないときに権力を得た改革派であった.ともに二つの聴衆を意識した.システムの内部で改革を進める同胞と,システムそれ自体が腐っているという外国人だ.ゴルバチョフがそうであったように,オバマもこの2つを選択しなければならない.
ゴルバチョフは選択した.彼は国際社会のスターになって,自国では人気を失った.
WSJ June 21, 2013
The
Obama Age of Proliferation
FT June 23, 2013
US
nuclear policy
l トルコのエルドアン首相
SPIEGEL ONLINE 06/21/2013
Erdogan
and the Protests
Turkey's
Stubborn Man on the Bosphorus
By Maximilian Popp in Istanbul
アタチュルク以来,最高の政治的な成功を得たエルドアンは,最近の抗議デモに対して,聞く耳を持たない専制君主となった.
あるジャーナリストはエルドアンの政治経歴を「シェイクスピア悲劇」とみなす.軍事クーデタの企てをつぶし,法廷闘争に勝ったが,公園の木を切り倒そうとして抗議デモにあった.彼は自分自身の慢心によって破滅する.
AKP内部にも穏健派がいて,紛争をエスカレートさせないように,エルドアンに助言した.しかし強硬派を変えることはできず,エルドアンは抗議デモを彼のこれまでのやり方で処理した.すなわち,鉄拳で.
BLOOMBERG Jun 23, 2013
Turks
Are Fighting Over the Future, Not Religion
By Pankaj Mishra
SPIEGEL ONLINE 06/24/2013
A
Country Divided
Where
Is Turkey Headed?
By Daniel Steinvorth and Bernhard Zand
Project Syndicate 21 June 2013
Health
Care’s New Frontier
Joseph Jimenez
l 中東の民主化
Project Syndicate 21 June 2013
Iran,
Turkey, and the Non-Arab Street
Anne-Marie Slaughter
西側から見て,中東政治は逆転した.イランの神政で,選挙による穏健派のHassan Rowhaniロウハニ大統領が誕生した.そこには多くの限界があるけれど,明らかに民衆の意思が反映されている.他方,トルコでは,西側の好むイスラム的民主派,Recep Tayyip Erdoğanエルドアン首相が,ブルドーザー,催涙ガス,放水車,ゴム弾で,彼の計画に平和的に反対する人々を掃討した.
4年前には,テヘランの通りを埋めた民衆デモをイラン政府が弾圧し,体制のイメージを深く損なった.他方,エルドアンは民衆のヒーローであった.彼の政党はヨーロッパ型のキリスト教民主党と同じイスラム教徒の政党を目指していた.
民主主義においては,民衆の声が重要である.正統性は,強制によって得ることはできないし,正当性を失った支配者は,投資や成長ももたらさない,1.民衆は確かに1つではない.しかし,多数の民衆が声を上げるとき,それを政府は聴くべきであり,弾圧してはならない.2.中東から北アフリカにおいても,さまざまな管理型の民主制が広まってきた.3.政府の安定性は,その批判や厳しい抗議に対して,彼らの声を聴く姿勢で試される.
2011年,マンハッタンでウォール街の占拠運動が起きたとき,それは2か月間続いた.確かに最後は解散させられたが,それは衛生上の問題や,近隣住民の苦情があったからだ.シリアでは,立ち上がった民衆が銃撃され,武器が取られ,報復と内戦が続く.どこであれ,平和的な抗議デモを弾圧するより,法廷,政治交渉,妥協,そして新しい選挙によって解決する方が,はるかに優れている.
Project Syndicate 24 June 2013
A
Glimmer of Hope in Iran
Joschka Fischer
FP JULY/AUGUST 2013
'You
Can't Eat Sharia'
BY MOHAMED ELBARADEI
独裁者を倒す革命から2年たったが,エジプトはすでに破たん国家だ.なぜなら国家とは,安全と正義をもたらすものであるが,殺人,強盗,誘拐が急増している.人々が公開でリンチされているのを,他の者が映像で録画している.21世紀ではなく,まるでフランス革命だ.
このような国で投資はできない.エジプトの債務もデフォルトの危険がある.経済が成長するには,外国からの投資,健全な経済政策,機能する諸制度,熟練労働者が必要だ.政府は期待に応えられなかった.同胞団には質の高い人材が少ない.大連立を求め,イデオロギーの違いを超えて,協力するべきだ.人々はシャリア(イスラム法典)を食べるのではない.
NYT June 25, 2013
Talk
to Iran’s New President. Warily.
By DENNIS B. ROSS
l 新興諸国の民主主義
FP June 21, 2013
The
Tyranny of the Majority
BY JAMES TRAUB
エジプトとトルコに共通するものは,民主主義の特殊な逸脱である,選挙による専制支配だ.エルドアンもモルシも,「人民」に支持され,おそらく,絶対多数が支配して,反対派を敵,がらくた,外国の考えや支援者によって動く非市民(非国民)とみなす.
エルドアン,モルシ,チャベス,プーチン,・・・すべて誇大妄想家であり,「民衆の意思」と自分の意志との区別ができない,そして,しようとしない.しかし,これは同時に若い民主主義の病気である.そこでは争われる使命があまりにも重要であるために,支配者も,反対派も,妥協を国益に対する裏切りとみなす傾向がある.
ネルソン・マンデラやジョージ・ワシントンがいて,権力の民主的な行使を教訓として残せた国は幸運である.また,ベルリンの壁が崩壊した後の東欧では,改革派と支配層とが一連の取引によって民主主義を実現し,だれもが妥協することを学んだ.しかし,エジプトのように,支配者が革命によって倒されたとき,指導者たちは一部のセクトではなく,国民全体のために妥協することを学べない.
民主主義をもたらすには,指導者,政治文化・習慣,ルール・憲法が重要である.
NYT June 22, 2013
Emerging
Markets, Hitting a Wall
By TYLER COWEN
WP June 23, 2013
Brazil
and Turkey experience growing pains
By Editorial Board
3年前,トルコとブラジルは世界の羨望の的であった.急成長を続ける経済,ダイナミックな,民主的に選ばれた指導者がいた.両国は地域における影響力を広げ,その改革モデルであった.彼らは中東和平の仲裁や,イランの核開発問題にも発言し,世界政治への参加も試みた.
それが突然,両国とも激しい反政府デモに直面している.何が起きたのか?
The Guardian, Sunday 23 June 2013
Protests
around the world are keeping the spirit of Occupy alive
John Harris
guardian.co.uk, Tuesday 25 June 2013
The
spirit of protest in Brazil and Turkey has now swept into Bulgaria
John O'Brennan
FT June 27, 2013
Prosperity
fuels protest in the new age of unrest
By Philip Stephens
新興世界の政治は,経済・社会のめまぐるしい変化のスピードについていけない.このストレスが去る見込みはなく,われわれは一層の騒乱を覚悟するべきだ.
抗議デモを結びつける要因は,民主的であれ,権威主義的であれ,新興世界の政治システムに対する不満である.経済・社会変化が速すぎるのだ.西側において,産業革命のストレスや社会的緊張は1世紀に及んで徐々に発生した.政治システムは,新興ブルジョアジーや,より強い要求を示し始めた労働者階級に対して,調整する時間があった.それでも,その過程では騒乱,革命,戦争が相次いだ.
現代の新興勢力は,わずか20年で誕生し,崩壊した.政治から排除されていた何千万人,何億人が,経済成長,都市化,デジタル技術によって結びついた.テキスト・メッセージから.ソーシャル・メディアまで,教育を受けた,しばしば仕事のない,若者たちが,不満を動員する強力な武器を手にしたのだ.
抗議デモの対象は,既存のシステムである.政治エリート,腐敗した公務員たち,富裕なビジネス指導者に,彼らの不満は集中する.既存の反対政党の旗は掲げない.増大する中産階級,都市の密集する若者たち,劣悪な公共サーニス,失業,所得格差の拡大,汚職の蔓延.
だから,政治階級に容易な出口はない.権威主義体制は,特に中国は,成長をその解決策と考えていた.しかし,それは違う.新興諸国もグローバルな経済の循環から逃れることはできない.成長は減速し,物的な豊かさだけでは社会的不満を解消できない.貧困を抜け出した人々は,腐敗や不平等を嫌うようになり,法の支配を要求する.
しかし,新興階級の世休はあまりにも急速に増大し,支配者たちを苦しめ続ける.この先も,不安定化や騒乱を避けることはできない.われわれは1840年代を経験するのである.
NYT June 22, 2013
The
Disestablishment of Marriage
By STEPHANIE COONTZ
l 若者の失業
The Observer, Sunday 23 June 2013
Blame
austerity, not old people, for the plight of Britain's young
Will Hutton
FT June 23, 2013
Europe
must act to end the scourge of youth unemployment
By Enrico Letta
l インドネシア
FT June 23, 2013
Indonesian
fires highlight weak governance and corruption
By Ben Bland in Jakarta
l ギリシャ
NYT June 23, 2013
Central
Banks Criticize Europe for Political Gridlock on Economy
By JACK EWING and JAMES KANTER
NYT June 23, 2013
Only
Syriza Can Save Greece
By JAMES K. GALBRAITH and YANIS VAROUFAKIS
FT June 26, 2013
IMF
Greek apology shows need for bankruptcy code
By Komal Sri Kumar
l アフガニスタン
Global Times | 2013-6-23
Afghan
prospects strong for post-US era
By Moheb Jabarkhail
FT June 24, 2013
English
dyers aim to help revive Afghan manufacturing
By Andrew Bounds, North of England correspondent
FT June 25, 2013
Karzai
is part of the problem
Ahmed Rashid
l 米欧FTA
Project Syndicate 24 June 2013
The
Transatlantic Free-Trade Imperative
Alfred Gusenbauer
FT June 26, 2013
‘Buy America’ laws raise hurdles for US-EU
trade talks
By James Politi in Frederick, Maryland
FP JULY/AUGUST 2013
Leaning
Away
BY DAVID ROTHKOPF
l Haru老人の介護
NYT June 24, 2013
‘The
Caretaker’
By THEO RIGBY and KATE McLEAN
日系人として第2次世界大戦中には収容所に入れられたHARUさんが,老後の暮らしを移民労働者の手によって続ける姿が録画とともに紹介されています.
l アメリカ市民権運動
NYT June 24, 2013
The
Future of Fair Labor
By JEFFERSON COWIE
BLOOMBERG Jun 25, 2013
The
Civil-Rights Era Ended Today
By Noah Feldman
SPIEGEL ONLINE 06/26/2013
Unequal
States
Why
the US Still Needs Race Protection Laws
An Analysis By Marc Pitzke in New York
NYT June 26, 2013
The
Long Road to Marriage Equality
By GEORGE CHAUNCEY
NYT JUNE 27, 2013
Is
the Civil Rights Era Over?
l 安倍の矢
WSJ June 24, 2013
The
Right Target for Japan's Third Arrow
By LAWRENCE B. LINDSEY AND DANIEL LOEB
安倍がもし「第三の矢」を構造改革に向けるなら,日本企業の資産を効率的に再配分し,日本企業のガバナンスを株主の利益に反応する姿に変え,日本の投資文化も変えるべきだ.安倍がこうした改革に成功すれば,日本経済の成長力は大幅に高まり,安倍は世界の歴史において,マーガレット・サッチャーと並ぶだろう.
WSJ June 26, 2013
Mr. Abe's Missing Arrow
By JOSEPH STERNBERG CONNECT
もし安倍首相が日本の若返りを成功させた計画の実行者として歴史に名を残すとしたら,それは移民の受け入れである.
移民は,新しい消費者と労働者になり,企業の国内投資を刺激する.移民は政府の課税できる人口を増やし,財政状態を改善する.移民は海外直接投資を容易にし,生産性を高める.
その重要性にもかかわらず,安倍はこの問題を計画から排除している.日本経済が人口減少から受けているダメージを過小評価することはできない.日本は2050年までに,その人口減少を埋めるためだけでも,1000万人の移民を必要としている.
l 情報収集
guardian.co.uk, Tuesday 25 June 2013
Don't
expect James Bond to act like Mother Teresa
David Davis
The Guardian, Thursday 27 June 2013
If
Big Brother came back, he'd be a public-private partnership
Timothy Garton Ash
l ドイツ
SPIEGEL ONLINE 06/25/2013
About
Face
Chancellor
Merkel Cools on European Integration
By SPIEGEL Staff
Project Syndicate 25 June 2013
Germany’s
Case Against the ECB
Hans-Werner Sinn
l サブサハラ・アフリカ
Project Syndicate 25 June 2013
Sub-Saharan
Africa’s Subprime Borrowers
Joseph E. Stiglitz, Hamid Rashid
l インドのシン首相
FT June 26, 2013
Like
flawed Honest Abe, Singh should aim for greatness
By Swaminathan Aiyar
マンモハン・シン首相のインドは,エイブラハム・リンカーンのアメリカと同じである.歴史は,偉大な目標を達成した政治家を称える.たとえそれが,賄賂や戦争を経たとしても.
l 世界企業のガバナンス
Project Syndicate 26 June 2013
Modernizing
Corporate Taxation
Laura Tyson
多国籍企業に対する課税の仕組みを変える必要がある.アメリカの現在の制度は,企業に利潤を海外で保有することを促してしまう.その価値を生み出す土地で課税するべきである.
NYT June 26, 2013
A
Broken Outsourcing Model
By THE EDITORIAL BOARD
工場の倒壊で1100人以上の労働者が死亡してから2か月間で,西側企業50社が労働環境の改善に関する合意をバングラデシュの工場と結んだ.それだけでなく,アメリカやヨーロッパの大手小売業者は,生産者ともっと長期的な関係を維持し,その条件をモニターすべきである.
FP JULY/AUGUST 2013
Does
It Take a Village?
BY PAUL STAROBIN
Project Syndicate 27 June 2013
Profiles
in Peacemaking
Jeffrey D. Sachs
l オーストラリア
BLOOMBERG Jun 27, 2013
Here’s
the Real Crisis in Australia
By William Pesek
オーストラリアは,中国からの需要が減少すれば財政破たんするかもしれない.オーストラリア経済自体が,中国の信用バブルに付随する国際商品市場の上にできたCDO(債務担保証券)だ.
l インフラ投資ファンド
WSJ June 27, 2013
How
to Kick-Start a Global Recovery
By JUSTIN YIFU LIN
大恐慌以来の世界経済の動揺を解消するには,G20が世界経済の回復を指導しなければならない.しかし,先進諸国では構造改革が求められており.その短期的な効果は,むしろ引き締めになる.そこで,これを緩和するためにIMFが通貨の減価を勧めているが,アメリカ,ヨーロッパ,日本の極端な金融緩和と通貨安は,競争的な切り下げを生じてしまう.
この問題を解決するには,先進諸国に比べて,まだ不足している発展途上諸国のインフラに投資するため,準備通貨とその外貨準備を多く持つ諸国が,グローバルなインフラ投資ファンドをG20で合意することだ.
YaleGlobal, 27 June 2013
The
Quest for Green Jobs
Doaa Abdel Motaal
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The Economist June 15th 2013
Germany and Europe: The reluctant
hegemon
Special Report Germany: Europe’s
reluctant hegemon
Abenomics: Not so super
The third arrow of Abenomics: Misfire
The United Nations in Congo: Art of
darkness
The yuan: The cheapest thing going is
gone
The Fed and emerging markets: The end of
the affair
(コメント) ヨーロッパの覇権を手にしたドイツは,あまりにも小国であることを理想にしているため,ユーロ危機や不況に手を出さない.健全な指導力を発揮する強国になれるか? メルケルが歴史の評価を気にし,ドイツやヨーロッパ各地から移民を受け入れ,周辺地域への投資を組織することで.他方,アベノミクスには重要な改革が抜けています.
コンゴにおける国連軍の役割,人民元の強さ,アメリカのQE終了と新興諸国からの資本流出.
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IPEの想像力 7/1/13
桜井先生に教えてもらった番組NHK・BS1「島耕作のアジア立志伝 モリス・チャンTSMC」の再放送を観ました.とても面白かったです.
モリス・チャンの「ファブレス」という考え方は,半導体産業だからできたのでしょうか? 技術革新が急速で,産業のコメとして大量に利用され,設備投資には莫大な初期投資が必要です.製品開発や流通まで単一の企業が担っていたら,最新型の半導体を生産する工場に,次々,大規模な投資を続けられません.企業を垂直統合型から水平統合型に転換することが,その解決策でした.
シリコン・バレーのベンチャー企業と,日本の半導体メーカーの失敗とが,TSMCというビジネスモデルを生む条件になった,というのが興味深いです.さらに番組によれば,成功の秘訣は,自社の製品を作らず,徹底した情報管理で,委託された製品技術を守る,という点でした.これは,中国が低賃金で「世界の工場」になった条件とも対照的です.
モリス・チャンの成功は永久に続くでしょうか?
そもそも半導体の生産技術は精密な設計図をシリコンウェハーに印刷する技術だ,と読んだように思います.TMSCは,製造機械の管理技術(番組が紹介した空気中のチリを減らす)は優れていると思いますが,ウェハーや機械を生産する企業ではないように思いました.日本の半導体メーカーが苦しんだように,過剰投資や商品開発の流れの変化が,世界各地の生産下請けの競争と利潤を一瞬で変えるかもしれません.
なぜ台湾なのか? 台湾海峡で軍事衝突が起きれば,あるいは,それを予想するだけでも,東北で大震災が起きたときのように,世界の電子機器メーカーは台湾以外の生産拠点を求めるでしょう.世界中に有利な立地があると思いますが,その中でも,なぜ台湾にTMSCを立ち上げたのか,わかりません.シンガポールや,アイルランドでもよかったでしょう.ファブレス企業の競争と,生産下請け企業の競争が激化するのは避けられません.
モリス・チャンは,裕福な実業家の家庭に生まれ,香港で育ち,日中戦争で家族は各地を逃げまわり,叔父を頼ってアメリカにわたって,学費のために働きながら,Harvard大学を出て,テキサス・インスツルメンツで働いた,ということです.台湾政府が彼のアイデアを採用し,独立しました.
多国籍企業論にも,垂直統合型と水平統合型の説明があります.TSMCやファブレスは逆の動きであり,企業の分割線がどこになるのか,ITや新興経済の新しい事情が世界の生産システムを作り変えます.グローバルな産業構造や市場競争が新しい企業や鉱業地帯を形成しつつあるのです.
だからTSMCの成長には,安全保障だけでなく,通貨・為替レートの安定性も欠かせない,と思います.世界の主要貿易圏と通貨圏,安全保障共同体が重なることに,新興諸国でアイデアを模索する第2,第3のモリス・チャンは賭けるのです.
他方,紹介したように,P. KrugmanがAppleやMicrosoftを批判しています.需要の水準を維持する,という意味では,このような新しい企業形態は,ケインズ主義的な需要管理の条件を損なうものになるからです.民間投資が埋める技術ギャップの大きな,インフラ投資や政府の積極的関与が続く新興諸国と違い,先進諸国の高所得・サービス・福祉経済ほど,ケインズ主義政策や債務の管理が重要になります.
アメリカと中国が,協力して,金融政策の転換を進めることも,G20が,発展途上諸国のインフラ投資によって,世界経済のバランスを回復する調整期の減速を緩和することも,難しいけれど,不可能ではないでしょう.しかし,政治的な関与が重要なときに,地域紛争や伝染病が,致命的な不況と世界戦争の引き金となる? ・・・もうすぐ,第1次世界大戦の記念日です.
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