IPEの果樹園2013
今週のReview
6/24-29
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超緩和・金融政策の転換 ・・・シリアへの武器供給 ・・・ユーロ圏の迷走 ・・・日本の場合 ・・・イランの場合 ・・・金融制度改革 ・・・アメリカ・イギリス・中国の都市 ・・・ブラジルの場合 ・・・アメリカの移民論争 ・・・核兵器は必要か?
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP:
Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian,
NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington
Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 超緩和・金融政策の転換
SPIEGEL ONLINE 06/13/2013
End
of Cheap Money
Can
the World Handle Higher Interest Rates?
By Martin Hesse, Anne Seith and Wieland Wagner
この5年間,世界の中央銀行は危機と闘うために,極端な低金利と膨大な債券購入を続けてきた.しかし,今,アメリカ連銀が慎重にブレーキに足を乗せた.すると市場は崩れたのだ.
日本では,40冊も本を書いて,テレビに出るような「主婦投資家」が,安倍首相・黒田総裁の「アベノミクス」を強く支持している.しかし,日経インデックスも,11月末から80%上昇した後,5月後半,急激に下落した.
こうした市場の変動を引き起こしたのは,"Helicopter Ben"の異名を持つバーナンキ議長が経済に自立を促したからだ.危機と闘うためにはヘリコプターから紙幣を撒くことも正しい,という人物が,数年に及ぶチープ・マネー(低利融資)政策を終わる.そう,多くの投資家は信じている.市場はもっぱら予想によって変化する.だから株価も債権価格も下落し,長期金利は上昇した.主要な中央銀行は,どこも超低金利政策を変えていないのだが.
2008年の金融危機後,アメリカ連銀,ECBなど,主要な中央銀行は「キャッシュ・セラピー」を実施した.これまでに拡大した彼らのバランスシートは10兆ドルに達する.
しかし,何かが変化しつつある.少なくともアメリカ経済は危機を脱し,次第に回復に向かうだろう.連銀は「正常化」を模索し始めた.しかし,連銀の低利融資に依拠した回復は,その基礎を失えば,崩壊するかもしれない.たとえアメリカでは実験が成功しても,その影響はヨーロッパや日本,世界に及ぶ.債券価格が下落し,長期金利は上昇し,財政破綻や銀行の危機,金融ひっ迫が起きかねない.
政策によって舞い上がった金融市場は,たとえ「正常化」を理解していても,その恐怖から逃れられない.特に,ヨーロッパは懐疑的だ.ECBが現金を注入しなくなれば,ユーロ圏周辺部の多くの銀行が支払不能になる.
他方,日銀は市場に円の洪水を供給し続けるだろう.毎月,7兆円以上を購入し,しかもその7割が新規発行債だ.アベノミクスで日本が危機を脱するかどうかは,中央銀行だけで決められない.1990年代半ばから,金利はほとんどゼロであった.金融市場は構造改革を待っている.
アメリカ連銀が政策を転換しても,日本はむしろ利益だ,と考える者が多い.それによるドル高は,円安によって日本の輸出企業に有利であるから.それはヨーロッパも同様だ.しかし,投資家たちは新興市場から資金を引き揚げるだろう.また,例えば,不動産投資は金利上昇によって問題を生じる.低金利のせいで,リスクの高い高利回りの投資を行った生命保険会社も,急激な転換を恐れている.
金融引き締めが深刻なショックをもたらさないためには,銀行,家計,企業が債務を減らし,バランスシートを改善し,政府は構造改革に一層のスピードで取り組む必要がある,とBISは言う.
FT June 14, 2013
The
victims of the ‘great unwinding’
FT June 14, 2013
The
Fed is still keen to be investors’ best friend
Mohamed El-Erian
連銀が投資家の不安を払しょくするために強い行動を取る,という予想で,市場は急速に回復した.連銀は,その詳細を示す必要があるし,さらに望ましいのは,連銀が市場を有利にすることから,ファンダメンタルズの改善によって市場が改善する状態に移行することだ.
連銀が,「中央銀行によるプット・オプション」を余りにも早く取り去れば,投資家は混乱する.市場は中央銀行が自分たちの味方だと思う投資家によって支えられているからだ.他方,中央銀行は成長と雇用を得たいが,その手段は限られている.債券購入で金融資産の価格を上昇させるしかない.
この「ウィンウィン」状態による相場は,投資家によって,ファンダメンタルズとの乖離が問題視されるときが来る.すなわち,1.連銀の債券購入姿勢は続かない.2.日銀が示したような,政策手段を制御できなくなる不安.3.発表された経済データとの食い違い.4.流動性供給が市場の変化を十分に導かない,という理解.
そのような場合,結局,連銀は金融市場が早期に引き締まることを恐れ,投資家の期待を維持するために,国際協調の形で,緩和を継続したいと願うだろう.短期の影響は容易に確保できるが,長期の反応は制御できない.言葉だけでなく,行動が伴う必要がある.それは,経済のファンダメンタルズが変わる,ということだ.
上手く行けば,投資家たちと連銀とは永久に親友となれる.そのためには,より高い成長が,経済全体を包摂することである.
WSJ June 18, 2013
Bernanke
Rides the Bull
NYT June 19, 2013
Fed
Outlines Timeline for Winding Down Stimulus
By BINYAMIN APPELBAUM
BLOOMBERG Jun 19, 2013
Bernanke’s
Forward Guidance Is Transparent as Mud
By Clive Crook
FT June 20, 2013
Fasten
your seat belts for a turbulent QE exit
By Gillian Tett
数週間前,私はアメリカ経済政策に関する2人の著名人と食事する機会があった.話題は自然にQE量的緩和の論争に向かった.QEは正しい政策か? 連銀はスムーズな出口を見つけられるか?
一人は,Mr O, or Optimistと呼ぶが,連銀が何も特別なことをせずに,出口は見つかる,と主張した.これ以上,債券を買わなければ良いのだから.そのバランスシートにある約2兆ドルの債券は,満期が来て自動的に消滅する.7年か8年で,危機前の金融政策に戻るだろう.
そのイメージは,飛行機のスムーズな着陸である.エンジンの出力を落とせば,重力に従って,緩やかに降下する.調整する時間はたっぷりあり,揺れることもあるが,問題ない.市場を驚かせないように,その準備を促すために,今週,バーナンキは声明を行った.
しかし,Mr P, or Pessimistは納得しない.アメリカ経済政策の飛行機に乗った彼の経験では,政策担当者がそれほど円滑に操縦できると思えない.特に,7年間も.今から2021年までの間に,2回の妥当量選挙(そして中間選挙)があり,地政学的なショック(北朝鮮,ユーロ圏)も潜在的にあり,他国の中央銀行が自分たちの目標を追求している.何よりも,推定で10兆ドルという,2008年以後にG7諸国の中銀が供給した金融的刺激が,将来の金融引き締めで取り除かれるのだ.
投資家たちは過剰反応し,パニックに向かう傾向がある.世界の金融市場がチープ・マネーに依存し,キャリートレードを行っている以上,その調整はスムーズなはずがない.
Mr.Oは,もちろんこれに反論する.1994年と違い,2004年の政策転換は円滑に行われた.数年前,市場の崩壊を予想する声は多かったが,ドルは強く,債券市場も大丈夫であった.TARPは成功し,連銀はAIGなどへの融資を回収できた.
しかし,AIGの資産を売ることと,数兆ドルを市場から回収することとは,まったく異なる.しかもこの飛行機は濃い霧に包まれ,計器類は当てにならず,コンパスも乱れている.
出口への準備を解くバーナンキは正しい.しかし,Mr.Pが恐れるように,政策担当者が考える以上の乱高下が起きるだろう.パイロットが操縦できるものを超えている.シートベルトを締めよ.
l アメリカの経済政策
NYT June 13, 2013
Sympathy
for the Luddites
By PAUL KRUGMAN
1786年,イングランド北部の毛織物業の中心であったリーズの労働者たちは,機械化に抗議した.労働者たちが苦労して獲得した技能が,一気に失われ,失業して子供を徒弟奉公に出すしかなくなった.機械化は,結局,労働者全体の生活水準を高めたが,機械が破壊した熟練労働者たちの生活は回復できなかった.
この話は,機械化に伴う熟練の破壊は,労働者への教育によって克服できる,という結論に向かう.しかし,2000年頃から,アメリカの不平等が拡大し,その性格が変わった.技術革新がもっぱら利潤だけを増やし,中産階級の生活を破壊し始めたのだ.保守派は憎悪するが,アメリカ社会の復活には,教育だけでなく,再分配政策が必要だ.
NYT June 16, 2013
Fight
the Future
By PAUL KRUGMAN
Project Syndicate 14 June 2013
The
Austerity Pandemic
Isabel Ortiz, Matthew Cummins
l メルヴィン・キングとのランチ
FT June 14, 2013
Lunch
with the FT: Sir Mervyn King
By Martin Wolf
カニ料理が来てから,私は尋ねた.現在のイングランド銀行BoEは金融政策とプルーデンシャル規制とを行える体制だと思うか? 彼は応えた.危機前には問題がないと思っていたが,今なら「レバレッジが大きすぎる」「その戦略が危険すぎる」と言えるだろう.
インフレ・ターゲットが成功したからバブルが起きたのか? リーマンを倒産させるしかなかったのか? 「悲観主義の尊大さ」‘the audacity of pessimism’を考える.国際会議を重ねても,問題は解決できない.日本でも,貨幣を供給するのは簡単だが,実質GDPを高めるわけではない.
ユーロ危機の解決策はあるか? 彼は,4つある,と応えた.1.十分に賃金を下げるまで,南の不況を続ける.2.ドイツがより高いインフレを受け入れる.3.北から南への資金移転を続ける.ただし,北が受け入れ可能な規模に抑えるために,南はその条件を守る.4.ユーロ圏のメンバーが変わる(離脱,分割,解散).この中で,どれが正しいとは言えない.
l シリアへの武器供給
FT June 14, 2013
Arming
the Syrian rebels is justified
オバマの決断は正しい.
シリア内戦の人的な被害は記録的な水準に達している.およそ9万3000人が殺害され,150万人以上が難民となった.オバマ大統領が,穏健派の反政府軍にアメリカが武器を供給する,という決断は,イラク戦争から10年を経ても,激しい論争となっている.アメリカは再びアラブの土地に無用の軍事介入を試みるのか?
この決断は,われわれがシリアで実現したいと思うことに従って,判断されねばならない.最も望むのは,政治的解決である.体制と,さまざまな反政府勢力とが,和解することである.そのためには,アサド大統領が辞任することだ.
しかし,最近の事態は交渉を支持するより,アサドの軍隊が支配権を拡大してAleppoに接近している.アサドは辞任するどころか,その支持者,ヒズボラやイランを大規模に参加させている.ロシアがアサドを説得して交渉に参加させる必要がある.しかし,ロシアとアサド政権が交渉を受け入れるのは,戦場において反政府派が優位になるときだけだ,とアメリカは結論した.
シリアの紛争にアメリカが関与する十分な理由にならない,という意見がある.それはシリアが西側の安全保障にもつ意味を理解していない.内戦が続けば,周辺のレバノン,ヨルダン,トルコが不安定化する.中東全域でシーア派とスンニ派との対立が激化し,アルカイダが影響を広げる.また,アサド政権が化学兵器を使用したという証拠を米英仏政府は持っている.これを放置することはできない.
西側指導者たちは国民を説得しなければならない.同時に,武器援助は十分な規模で,関与を示さねばならない.何よりも,アメリカは外交的な交渉を継続し,プーチンの姿勢を変えることだ.
NYT June 14, 2013
After
Arming the Rebels, Then What?
By THE EDITORIAL BOARD
化学兵器の使用を「レッド・ライン」と述べたオバマは,それによって決断を迫られた.しかし,9万3000人の犠牲者に比べて,化学兵器の使用は100から150人の殺害にかかわるだけだ.
アメリカが反政府軍に武器を供給することが,他の紛争を刺激しないか? アメリカ政府は,供給した武器がアルカイダやその他の聖戦主義グループに流れないと保証できるのか? オバマはこれによってプーチンによるアサドへの武器供給を止められると考えるが,より多くの武器を供給するのではないか?
アメリカ国民の多くとともに,われわれはアメリカが中東で新しい戦争に参加するのを恐れる.
NYT June 14, 2013
Bad
Idea, Mr. President
By RAMZY MARDINI
ビル・クリントンによれば,オバマはシリアに介入しないと決めるなら,「愚か者」に見えるだろう.1999年にコソボ介入を決断した経験から,そう述べている.
グランド・セオリーを持たぬオバマは,アラブの春に乗せたレトリックに翻弄されている.
オバマ政権は,シリアの体制を「すべての正当性を失った」「権力にしがみついている」ものと述べた.しかし,体制は持続している.どちらの主張も正しくなかったのだ.アサドは今も,スンニ派の都市階級を含む,多くのシリア人に強く支持されている.イランとロシアを含む,外部からの支援を受けている.
また介入支持者は長期的な結果を見ていない.それは介入する土地の政治・文化状況を軽視することになる.シリア革命は,民主的でも,世俗的でもない.9万人を超える死者は,内戦の結果であって,大量虐殺ではない.人権は双方によって侵された.また,反政府軍は住民の多数から支持を受けていない.彼らは信頼できないし,責任ある政治勢力でもない.反政府軍が勝利することは,安定化を意味しない.
シリア介入は,クリントンのコソボではない.
FP JUNE 14, 2013
Is
Doing Something in Syria Better than Nothing?
BY JAMES TRAUB
FP JUNE 14, 2013
'Don't
Try to Convince Yourself That You're in Control'
BY JOSHUA E. KEATING
BLOOMBERG Jun 14, 2013
Five
Depressing Thoughts About Arming Syria’s Rebels
By Jeffrey Goldberg
1.介入は,遅すぎたとは言わないが,小さすぎる.反政府軍の中心があるアレッポを守ることはできない.2.誰を助けるべきか,わからない.3.オバマ自身は,介入の結果,事態が改善できるとは考えず,非介入を望んでいる.4.オバマの躊躇は,イランの強硬姿勢を強め,核兵器開発を加速する.5.人道主義的介入の支持者は,ルワンダの再現を恐れている.しかし,シリア内戦はルワンダと違う.
WP June 15, 2013
U.S.
intervention in Syria must be robust
By Editorial Board
WP June 15, 2013
The
U.S. should help Mideast moderates
By David Ignatius
FT June 16, 2013
US
inaction on Syria is shameful
Anne-Marie Slaughter
先週の国連による約10万人の死者数は少なすぎ,実際には25万人になるだろう,と関係者は言う.難民も200万人.シリアの町の写真は,第2次世界大戦で廃墟となった都市を思わせる
われわれに責任がない,という議論は多い.1.シリアには守るべきアメリカの利益がない.シリアはアメリカを攻撃していない.シリアには石油がない.2.オバマには多くの処理すべき問題がある.国内の課題でいっぱいだ.3.外交の基本は国内経済の再建である.インフラ,移民,教育,医療保険.4.その影響も,出口も,自分だけでは決められない.
アメリカの中東における影響力は失われ,次第に,シーア派とスンニ派との戦争が始まっている.
しかし,オバマはこの5年間,一つの理論を追求してきた.それは,大国には責任がともなう,というものだ.グローバルな政治主体になるなら,世界秩序の規範を維持し,高めねばならない.それは,シリアの場合,戦争を終わらせることだ.アサド側の空爆や重火器の使用をやめさせ,国境地帯に避難民の受け入れ地を提供することである.
FP June 16, 2013
Sliding
Down the Syrian Slope
Posted By Marc Lynch
FT June 17, 2013
The
west’s dominance of the Middle East is ending
By Gideon Rachman
SPIEGEL ONLINE 06/17/2013
Over
the Red Line
West
Considers Entering the Syrian Quagmire
By Susanne Koelbl, Kurt Pelda and Christoph Reuter
NYT June 17, 2013
To
Get a Truce, Be Ready to Escalate
By WESLEY K. CLARK
オバマ大統領の決定は,今後のアメリカの直接介入に至る,最初の一歩かもしれない.交渉を受け入れさせるため,アサドの支配回復を阻止する同様の戦術を,アメリカはセルビアの指導者に対して,1999年,コソボで行った.
介入を抑制したのは当然だ.さまざまな理由が考えられる.しかし,行動しないことは選択肢にならない.人道的な問題だけでなく,石油価格は上昇し,地域紛争に拡大しつつある.オバマが武器援助を本格的に開始すれば,イランやロシアも,オバマは本気だと認めるだろう.アサドは政権を失い,同時に,命も失う.石油の高価格は中国も苦しめる.
1999年も,西側は軍事力を外交のテコに使った.NATOによる限定的な空爆が,セルビアのエスニック・クレンジングを止めた.空爆は72日間続き,地上軍の投入が検討される中で,セルビアの指導者,Milosevicは交渉に同意した.
WP June 18, 2013
Giving
arms to Syrian rebels is a bad idea
By Eugene Robinson
これは昔からある代理戦争だ.CIAによる武器供給,「穏健派」への支援,・・・
武器供与によっても,戦闘は終わらない.これは人道的介入ではない.
何よりも,オバマは介入を望んでいない.これが意味するのは,ベトナム型の泥沼化である.
代理戦争で勝つこともある.アフガニスタンでは,CIAが地域の武装勢力を率いてソ連に勝った.しかし,権力の真空が生じ,そこにアルカイダが店を開いた.結局,9・11を起動する.
WP June 18, 2013
Obama’s
increasingly muddled Syria policy
By Richard Cohen
Project Syndicate 19 June 2013
The
Great War’s End in Syria
Jaswant Singh
第1次世界大戦が勃発して100年を記念する日が近づく中で,オスマン帝国崩壊の遺産がかつてないほど激しく動揺している.シリアや,トルコもそうだ.
レパントは何世紀も戦乱を続けた土地であった.アレキサンダー大王の遠征で征服したが,シリアやイラクはアラブ諸国の一部であった.オスマン帝国の支配者が敗北してから,国家は名目的なものである.
NYT June 19, 2013
While
Claiming Battle Gains Against Rebels, Syria’s Assad Is Facing Currency Crisis
By RICK GLADSTONE
WP June 20, 2013
Obama’s
Syria policy is full of contradictions
By Fareed Zakaria
アメリカの求める理想的な状態は,アメリカが認める手段で達成できないだろう.多くの介入が,最初は限定的なもので失敗を繰り返し,次第に拡大していった.
l NSAとスノーデン
FT June 14, 2013
National
Security Agency: The net rips apart
By Richard Waters, James Fontanella-Khan and Geoff Dyer
WP June 14, 2013
Five
myths about privacy
By Daniel J. Solove
FP JUNE 14, 2013
Secret
Police State
BY CHRISTIAN CARYL
WP June 15, 2013
Edward
Snowden, the impulsive ‘martyr’
By Anne Applebaum
「殉教・殉死」martyrdomへの願い,はどの文化にもある.反体制派は,人々の注意を惹くために自分の体に火を点ける.しかし,自爆テロは罪もない多くの人々を道連れにする.その行動は外から説明できない.自己犠牲は,時に勇敢であり,時に愚かであり,時に邪悪である.それは犠牲を払うポイント,だれを助け,だれを損なうか,によるのだ.
NSAの情報を漏えいしたEdward Snowdenの話には細部が不足している.しかし,明らかに,Snowdenは殉教者である.プライヴァシーやインターネットの自由を奪うアメリカ政府に警告を発するため,全てを犠牲にする,と述べている.
また,彼のとった方法が興味深い.アメリカには,こうした政府批判の伝統があるから,政府に批判的な議員に連絡して,法に守られながら告発することもできただろう.しかし,Snowdenが願ったのは,なぜ,Snowdenがこうした方法を選択したのか,その細部がわからない.
WP JUNE 15, 2013
Cyberwar’s
threat does not justify a new policy of nuclear deterrence
By Richard A. Clarke and Steven Andreasen
NYT June 16, 2013
Living
With the Surveillance State
By BILL KELLER
The Guardian, Monday 17 June 2013
In
the NSA we trust: the trouble with faith in an omniscient state
Giles Fraser
FP JUNE 17, 2013
The
Attribution Revolution
BY STEWART BAKER
guardian.co.uk, Tuesday 18 June 2013
Edward
Snowden's leaks are a grave threat to US national security
John Bolton
Snowdenは香港に逃れた.その政治的な意味は明白だ.しかし,中国は単純にアメリカを非難できない.中国自身がアメリカに対するサイバー攻撃を組織してきたからだ.
NSAの重要プログラムの情報も,中国側に漏れるだろう.彼を英雄と呼ぶ政治家たちは,アメリカ国家の安全保障を損なっている.
guardian.co.uk, Tuesday 18 June 2013
Prism:
how can this level of state surveillance be legal?
Anya Proops
FT June 19, 2013
America
cedes moral high ground on cyber spying
By David Pilling
FT June 20, 2013
Digital
intelligence and dumb terrorists
By Gary Silverman in New York
FP JUNE 19, 2013
Total
Recall
BY SHANE HARRIS
10年前,ペンタゴンが進めた研究計画("Total Information Awareness")が大衆的なパニックを引き起こした.それは我々のデジタル・ライフをあらゆる面から調査する,オーウェル的な計画であったからだ.
本当に,こうした調査はテロ計画を阻止したのか? その詳細を公開し,われわれが判断することだ.
l ユーロ圏の迷走
FT June 14, 2013
The
ECB is doing the right thing
Lorenzo Bini Smaghi
今秋,カールスルーエのドイツ憲法裁判所の聴聞会が興味深い問題を示すだろう.ECBの独立性と説明責任だ.
VOX 14 June 2013
EZ banking
union with a sovereign virus
Daniel Gros
銀行同盟の目的は,銀行と国家財政とを切り離すことである.しかし,ECBが監督し,共通の銀行整理を行うことは正しいが,それだけでは不十分だ.
銀行はあまりにも多くの政府債券を保有している.これを削減しなければ,銀行と財政との危機は切り離せない.銀行が多くの政府債券を保有したのは,それがリスクなしと評価されていたからだ.しかし,民間部門への債権放棄が求められたギリシャのケースによって,それは否定された.
さらに,BISが合意した金融監督の大銀行への委譲や,銀行が流動性を重視しなければならない状況が,こうした政府債券保有の増大をもたらした.
単純な解決策は,銀行に自己資本の25%までしか単一政府の債券を保有できない,と定めることだ.
FT June 16, 2013
Bond
market nerves threaten to end Europe’s calm
By Wolfgang Münchau
Project Syndicate 17 June 2013
Europe’s
Economic Groupthink
Hans-Helmut Kotz
SPIEGEL ONLINE 06/19/2013
The
Rise of the Fearmongers
Germany's
New Euroskeptic Elite
By Stefan Willeke
多くのドイツ人が,今やユーロを放棄すべきだ,と考えている.それは,ビジネス界や学術界から,新しいポピュリストたちが影響力を高め,恐怖をあおるからだ.しかも,彼らはその代替策を示さない.
元トレーダーで,ドイツ株価指数を代表する人物であるDirk Müllerや,ユーロ離脱を主張して誕生した新政党,Alternative for Germany (AfD).そして,社会民主党の中道左派と関係の深い社会学者,Wolfgang Streeckも,ヨーロッパの消費者を代表するという団体Foodwatch の創設者Thilo Bodeも,ユーロ圏の解体を主張する.
WSJ June 20, 2013
The
Stories Germans Tell Themselves
By RAYMOND ZHONG
Project Syndicate 20 June 2013
Germany
versus the Euro
Marcel Fratzscher
ドイツ人がECBの金融政策,特にOMTプログラム(outright monetary transactions)に反対するのは,ドイツの貯蓄文化,ドイツが他国の金融財政危機のスケープゴートにされること,新政党の影響力,が主な理由である.
もしドイツの憲法裁判所がOMTの制限を求めた場合,ECBは」金融政策に問題を生じる.それはさらにユーロ危機を悪化させるだろう.
VOX 20 June 2013
Putting
the ‘system’ in the international monetary system
Michael Bordo, Angela Redish
国際通貨システムのアレンジは,世界政治の変化によって促された.19世紀の自発的な金本位制の秩序から,管理の度合いを高め,人工的なブレトンウッズ・システムとヨーロッパの通貨システムに至った.
現行の変動レート制は,時に国際協調を試みるだけで,自発的な古典的金本位制に近い.成功のカギは,各国の通貨の金兌換から,信頼されるインフレ目標に変わった.
ユーロ圏は人工的なブレトンウッズ・システムに似て,調整メカニズムを欠き,周辺諸国には流動性が不足し,ドイツがデフォルト国を救済するコストは高く,ユーロ圏の持続性が信頼されない.
(後半に続く)