前半から続く)


l  アメリカ外交は必要か?

NYT MAY 11, 2013

In Syria and Beyond, the Tyrant as Target

By FEISAL G. MOHAMED

The Guardian, Monday 13 May 2013

Syria: the first conflict of the post-superpower era

John Kampfner

アメリカの超大国としての外交戦略,人道主義的な介入,という時代は終わった.

FT May 13, 2013

Staying out of Syria is the bolder call for Obama

By Gideon Rachman

FP MAY 13, 2013

How Do You Say 'Quagmire' in Farsi?

BY THANASSIS CAMBANIS

WSJ May 13, 2013

The Kissinger Question

By BRET STEPHENS

アメリカに外交は必要か?

アメリカは,わずかに悩むことと,喜んで無関心でいることとの間にいる.アメリカの外で,世界はますます悪化している.しかし,イランが核兵器を持っても,シリアで化学兵器が使用されても,アラブ世界でイスラム主義が広まっても,プーチンが政治裁判を繰り返しても,中国が日本と武力衝突しても,それは彼らの問題だ.彼らが解決しなければならない.

アメリカは事実上の財政破たんである.外交は国内から始まる.アメリカ経済の再建が必要だ.世界にとっては,アメリカの孤立主義である.アメリカの保守化が進む.

NYT MAY 15, 2013

When to Talk to Monsters

By CHRISTOPHER R. HILL

アサドとの交渉を絶つアメリカ政府の決定は間違いだった.内戦に勝者はおらず,交渉によって解決するしかない.シリアでもすべての者がそれを認めることだ.


l  中国の思考法

NYT May 11, 2013

China’s Evolving ‘Core Interests’

By THE EDITORIAL BOARD

かつて台湾についてしか使わなかった言葉である.中国と日本は,重要な経済関係を維持し,地域の平和を実現すべきである.そのためには,互いに政治的な体面を損なわない解決策を模索すべきである.

The Guardian, Sunday 12 May 2013

Food scandals are undermining trust in China's new regime

Jonathan Fenby

FT May 13, 2013

Reform can end loose talk of a Chinese revolution

By Deng Yuwen

トクヴィルの『アンシャン・レジームとフランス革命』ほど,最近の中国で広く読まれた本はない.多くの人が,これから10年以内に,中国で革命が起きる可能性を認めている.その革命とは,皮肉にも,革命を掲げて長く権力を独占してきた中国共産党を倒すものだ.憲法を確立することなしに,中国はその歴史的な混乱のサイクルから抜け出せない.

共産党は強い危機意識を持っており,変化に対応して全力で改革に取り組むだろう.党が支配するさまざまな資源があるから,革命のいかなる計画も阻止されるだろう.インターネットは,人々に教育を広め,市民権意識を育てて,革命を準備するが,他方で,支配層による革命運動の監視にも有効だ.中国の行政制度も共産党権力を維持するだろう.

それ故,革命は起きないかもしれないが,共産党は改革を取り入れるだろう.言論の自由,政治的自由,ガバナンスの改善,生活水準の向上,不平等の是正,である.

NYT May 13, 2013

China Warns Against ‘Dangerous’ Western Values

By CHRIS BUCKLEY

FP MAY 13, 2013

The Trust Deficit

BY HE YAFEI

オバマのアジア・太平洋に向けた「旋回」や「リバランス」という言葉と行動は,中国に大きな疑いを抱かせた.その疑いは,日本との釣魚島をめぐる紛争,南シナ海における海洋の紛争に関して,アメリカが中国との論争に加わったことで強められた.

中国は平和的な発展戦略を追求しており,このような地域戦略の見直しを強いられることを強く嫌う.平和で繁栄した世界は,近隣における関係から始まる.安定した中米関係も,その近隣であるアジア・太平洋から始まる.

中国から見て,アメリカは中国の外部環境を悪化させるパワーを持つ唯一の国である.だからアメリカの考えや行動に強い関心を持つ.中国は,アメリカと長期的な利益を共有している.それは協力の基礎になる.

中国など,新興諸国に向けて,世界のバランス・オブ・パワーはシフトしている.アメリカは強さを維持しているが,2008年の金融危機以降,この変化は加速した.アメリカの戦略は不確実さを増し,その優位を維持するために西太平洋で軍事同盟を強化し,中国に対するヘッジ戦略を取っている.

中国とアメリカの間に,戦略的な信頼関係が大幅に失われたことは,すべての問題の根本にある.しかし,多くの問題について,中国はアメリカを助けることができる.アメリカはそれを忘れてはならない.

中米関係の改善は,この関係を「脱中米化」することである.我々はグローバルな問題に焦点を当て,グローバル・ガバナンスを築き,世界の再活性化と改革に向けて協力するだろう.

FT May 14, 2013

Apple builds relations beyond Foxconn

By Sarah Mishkin in Taipei

FT May 14, 2013

China: High and dry

By Leslie Hook

WSJ May 14, 2013

The World Needs a More Active China

By YUKON HUANG

中国が,西側の国際秩序を外から批判するだけであれば,その反応は限られている.その能力に応じて,中国はもっと積極的な役割を担うべきである.

例えば,中国は外からTPPを中国に対する「封じ込め」戦略であると批判するのではなく,むしろTPP参加交渉を始めることで,米中の通商関係を改善できる.諸島の領有権紛争でも,中国は主権の確定を延期して,共同の監視や治安維持の訓練を行うことで信頼関係を築く方がよい.また,資源の共同開発権に限定して交渉する方がよいだろう.主権問題の複雑さは,多角的なアプローチを拒むより,むしろそれを促進することで,中国の目的をより効果的に実現できるだろう.

FT May 16, 2013

Coming to terms with China’s growth prospects

Yukon Huang

WSJ May 16, 2013

From Beijing to Jerusalem

By MICHAEL AUSLIN


l  バングラデシュの衣料工場

The Guardian, Sunday 12 May 2013

After the Savar tragedy, time for an international minimum wage

Muhammad Yunus

バングラデシュの衣料工場は,破壊されるべきではなく,改善されるべきだ.特に,その「奴隷労働」を改善するには,外国の主要なバイヤーが協力して,国際的な最低賃金制度を導入することが有効である.それは,時給50セントである.

アメリカの消費者が35ドルで買う衣糧を5.5ドルに値上げしても,だれも驚かないだろう.多分,気づきもしない.この追加の50セントで,衣料労働者福祉基金を設立し,労働環境,年金,医療,住宅,子供の教育,など,彼らの問題を解決できる.

NYT May 13, 2013

Major Retailers Join Bangladesh Safety Plan

By STEVEN GREENHOUSE

WSJ May 15, 2013

Letter From a Bangladesh Factory

By RUBANA HUQ

Global Times | 2013-5-16

Global profits built on Bangladesh deathtraps

By Ding Gang

YaleGlobal, 16 May 2013

Can Global Supply Chains Be Accountable?

Jerry Davis

アメリカの衣料製品の90%以上が海外で生産されている.低価格と利潤の追求は,工場における労働条件を悪化させる.しかし,1100人以上が犠牲となったバングラデシュの建物崩壊事故は,低価格の人命による代償を示した.消費者たちは,その距離のおかげで,直接の関連性を無視することができた.しかし,情報技術はそれを結びつけることができる.

ナイキの成功によってブランド製品の生産はグローバリゼーションを多くの企業に採用させた.第三者による製品の保証は,この場合にも有効だ.たとえばILOによる工場の監視結果を組み込むことにより,衣料製品の労働条件も消費者は判断できる.


NYT MAY 12, 2013

Student Debt and the Crushing of the American Dream

By JOSEPH E. STIGLITZ

WP May 13, 2013

The jury’s out on whether Dodd-Frank will save capitalism

By Robert J. Samuelson


FT May 12, 2013

How we can help African nations to extract fair value

By Paul Collier


l  19世紀の移民論争

WP May 13, 2013

On immigration, Charles Dickens matters

By George F. Will

チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』は,貧困層の単なる感傷的な物語ではなく,19世紀の移民論争でもあった.マルサスの人口論を否定し,人間は環境によって決定されない,環境を改善できる,と考えている.

現代の移民論争でも,移民の費用と便益が議論されている.

The Guardian, Monday 13 May 2013

The noise on immigration is drowning out real problems

Polly Toynbee

SPIEGEL ONLINE 05/15/2013

Coming to Germany

Spanish Workers Look for a Future in Bavaria

By Andrew Bowen in Munich, Germany

The Guardian, Friday 17 May 2013

People are told EU migrants steal jobs – in truth bosses want cheap labour

Deborah Orr


l  ソマリアとナイジェリア

FT May 13, 2013

Somalia: Oil thrown on the fire

By Katrina Manson

The Guardian, Friday 17 May 2013

Nigeria: states of emergency

Editorial


l  ケネス・N・ウォルツの訃報

FP MAY 13, 2013

Kenneth N. Waltz, 1924-2013

Posted By Stephen M. Walt

理論と現実を一致させる,クリアーな思考を持っていた.明快な文章を書くことに重点を置いた.それ故,彼の著作や論文は古典となり,現実の正しい方向を示した.

FP MAY 15, 2013

Requiem for a Realist


l  気候変動

FT May 14, 2013

Why the world faces climate chaos

By Martin Wolf

Project Syndicate 15 May 2013

Hugging a Burning Tree

Bjørn Lomborg


l  アメリカのIRSスキャンダル

WP May 14, 2013

The IRS’s turn to answer questions

By Editorial Board

NYT MAY 15, 2013

The Real I.R.S. Scandal

By SHEILA KRUMHOLZ and ROBERT WEINBERGER

WP May 16, 2013

In IRS and AP scandals, a frighteningly impotent government

By David Ignatius


l  イギリスとポーランド

The Guardian, Thursday 16 May 2013

The flight paths of Britain and Poland diverge in a disunited Europe

Timothy Garton Ash in Krakow

1930年代,一緒に戦ったイギリス軍のスピットファイアは,今,ポーランドと異なる方向に飛び去った.ポーランドはベルリンを目指し,イギリスは大西洋を目指す.かつての友情は薄れたのだ.各国の選択は,国益の冷静な計算だけでなく,歴史,政治,感情によって左右される.

先週,クラコウで行われた両国の会談において,緊張は明白であった.6年前の会談では楽観論を共有していた.ポーランドの政治家は,イギリスのEU取引論に不満を述べた.他方,イギリスの政治家は,なぜポーランド人がイギリスにもっと感謝しないのか,と不満を持った.トニー・ブレアが労働市場を開放したおかげで数百万人のポーランド人が職を得て,今やロンドンで最大の言語集団になっているのだ.

しかし,とポーランドの政治家は応えるだろう.それはポーランドが失業で苦しんでいたとき,ポーランドのEU加盟が投票されたときのことだ.永久に感謝される権利がイギリス側にあるわけではない.イギリスの行ったすべてのことがポーランドにプラスであったとは言えない.「ヤルタ」と私にささやく者がいる.

私がいなければお前たちはもっとひどい目にあったのだぞ,とイギリス人は叫ぶ.「こんな風に言いたくないが,ドイツに蹂躙されるままでよかった,というのか?」 ポーランド人は応える.「もしイギリスが抜ければ,我々がおそれるのはドイツの悪魔ではなく,南欧の危機,フランスの悪魔であろう.」 ポーランドは規律正しい北欧に参加したいのだ.ソ連が支配する東欧から抜け出し,ポーランドは中欧の一部として再生した.今では北欧と感じている.

水曜日の夜,イギリス議会下院が行われた投票は,イギリスがEUを永久の制度とは考えていないことを示した.キャメロン自身の保守党議員からも,114人が党首に反対したのだ.イギリスは大陸と切り離された島になる.動脈硬化と病気に苦しむユーロ圏ではなく,アメリカの成長が回復することに期待する.ダイナミックな新興市場は外にあり,それはかつてイギリスの植民地であった,英語を話す諸国である.Nigel Lawson元蔵相もMichael Portilloも,イギリスのEU離脱を支持している.

対照的にポーランドの政府は,ヨーロッパの中枢に位置するため,最大限の努力をしている.ここでも歴史は重要だ.鉄のカーテンで締め出され,さらに数世紀に及ぶカロシングのヨーロッパ文明から見て周辺に位置した,ヨーロッパの郊外,という意識がある.ついに中枢に属せるチャンスを得たのだ.たとえそのヨーロッパがドイツ的であっても,それでよい,と.クラコウの建物にはナチスによる占領で犠牲になった人々の記念碑があり,アウシュビッツもすぐ近くだ.それを想えば,この発想は驚異的である.

ポーランドのエリートたちは,ドイツの経済モデルがイギリスよりも優れている,と考えている.ドイツはポーランドの貿易額の4分の1を占める.EU予算はポーランドを助けているが,その最大の財源はドイツから来る.人々はEUを強く好む.そして,かつての敵は友人になり,プラスの感情を抱かせる.イギリスとの古い友好関係は,そうではない.

しかし,両国の飛行機が交差したとしても,そのまま違う方向に飛び去ってしまう,とは思えない.ほとんどのポーランド人はEU加盟を支持するが,ユーロ圏参加を支持するのは3人に1人でしかない.ポーランドの専門家たちは,ユーロを採用する前に,スペインやイタリアの経験をもっと研究しなければならないだろう.

他方,イギリスのEU離脱論は本当だが,そのリスクはあまりにも明白だ.たとえば,シティが離脱後もユーロ・ビジネスで支配的な地位を維持する,というのは,まったくの戯言である.

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The Economist May 4th 2013

Corporate social responsibility: Disaster at Rana Plaza

Disaster in Bangladesh: Rags in the ruins

Workplace safety: Avoiding the fire next time

Europe’s credit crunch: Mend the money machine

Singapore’s economy: Bashing the metal-bashers

Iceland’s election: Right back

Trade in Latin America: Oceans apart

Japan’s public debt: Don’t mention the debt

(コメント) 表紙は”Chinese Dream”の風刺漫画はセンスが悪く,記事も乏しい内容と思います.むしろ,バングラデシュで,衣料企業が複数入居するビルの崩壊によって,1000人以上の犠牲者が出た事件について,3つの記事が興味深いでしょう.企業の社会的責任,グローバリゼーションと工場の安全管理,それを強制できるのは,その国の政府ではなく,買い付け国際企業やNGO,国際機関の連携です.下請け生産の改革を要求するWalmartに感心します.

ヨーロッパ金融政策の機能不全,シンガポール製造業の競争力を高める支援策,アイスランドでは金融危機後の改革政府が選挙で敗北し,ラテンアメリカは地域市場統合を優先するか,アメリカとの市場統合を重視するか? そして,日本のアベノミクスが必要とする「4本目の矢」について,考える材料があります.

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IPEの想像力 5/20/13

ロボットは,人間との区別が明確であるように作られた,と言います.

・・・・ドローンは米兵の犠牲を減らすだけでなく,戦争における兵士たちのアメニティを大幅に改善するでしょう.自宅から通える国内のドローン管制室で,電子情報を処理することにより,遠方の,たとえば地球の裏側で,他国のテロリストを殺害することができます.しかし,戦場と家庭とがスイッチ一つで切り替わる,というのは,恐ろしいと思います.外国の戦場から来るテロリストは,ドローンのように切り替えスイッチを持つ人間です.

・・・・確かにロボットは,死を恐れないことはもちろん,人間と違って,間違いを犯すことが少なく,牧師や心理分析カウンセラーの助けを必要とするようなストレスも感じません.道徳的な問題に悩んで,判断が遅れることもないのです.それは,異なる世界からの傭兵です.

・・・・ドローンが必要である,とオバマ政権が判断したのであれば,その正当性(と法・制度条件)を世界に向けて説得しなければなりません.核兵器が戦争を減らす,また,海上における軍事衝突が犠牲を抑えて,速やかに明確な結果を得る,と読んだことがあります.ドローンやロボットの戦争が築く世界秩序はどうでしょうか?

・・・・イギリス,CornwallEngineered Arts社が生産するロボットの特徴は,一緒にいて親しみを感じることだ,とBBCが伝えていました(BBC 16 May 2013 I, Robot Maker: Making robots to interact with humans”).彼・彼女は,話す内容に応じて表情を変え,その歩行によっても人間的な感情を表現します.

・・・・こうしたことの背後にあるのは,情報革命です.現実を何かの信号に変換することは,情報を制限することによって可能になります.それは単純化や抽象として,現実と区別された記号の世界でした.しかし,情報が爆発的に増え,保存や処理について人間がコンピューターに大きく頼る世界になれば,どちらが現実なのか,わからなくなります.

・・・・日本で開発されていたロボットは,家庭で,老人や病気の人の介護者,あるいは,孤独をいやすペットでした.若者たちの大企業志向や,都市アメニティ・安定と高所得の追求により,また,外国人労働者を受け入れない政策により,若い,勤勉な労働者が安価に手に入らないとき,工場で,彼らに代わるのもロボットでした.現地の労働者が急激に死に絶えた後,植民地に導入された奴隷に似ています.

・・・・ロボットは家族となり,寄り付かなくなった息子や娘の声で優しく語りかけ,扱いにくい赤ん坊よりもかわいい声で話す幼児になり,頼りにならない友人や,手間のかかる恋人,ちっとも心の通わなくなった夫や妻の代わりに,最も大切なパートナーになります.

・・・・人間の欠陥や弱さ,道徳的な失敗,その他,間違った行為の豊富な情報によって,ロボットたちの作る社会は,最も野蛮な社会から,最も優れた社会まで,さまざまなモデルを示す集団的コロニーを形成するかもしれません.あなたは好きなコロニーを訪ねて,人間の本質を,ロボットたちと暮らして学びます.

・・・・有機的なエネルギーで生きるロボットもできるでしょう.その中でも,人間であることの本質を問い,優れた社会認識や歴史観を持つものを,人間と呼びます.

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