IPEの果樹園2013

今週のReview

5/6-11

 

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政策・統計・階級 ・・・中国と世界秩序 ・・・チェチェンとシリア ・・・安倍晋三という政治 ・・・ヨーロッパの緊縮策 ・・・アメリカのシリア不介入 ・・・ユーロ圏の調整過程 ・・・アメリカのいない世界 ・・・主要諸国の金融政策協調 ・・・アイスランドとラトビア ・・・バングラデシュの衣料工場崩壊 ・・・ECBの金利引き下げ ・・・スコットランド独立と通貨

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  政策・統計・階級

NYT April 25, 2013

The 1 Percent’s Solution

By PAUL KRUGMAN

ケインズ主義と緊縮派との激しい論争が続いてきたが,それは緊縮派の予言が現実によって否定され,また,その学問的な基礎が疑わしいものであるとわかって,はっきりと勝負がついた.こうしたことは珍しい.

なぜ緊縮派はこれほど影響力を持ったのか? これで緊縮策は風刺家の漫画話みたいに無視されるだろうか? 

その主要な研究(Alberto Alesina and Silvia Ardagna on “expansionary austerity” and Carmen Reinhart and Kenneth Rogoff on the dangerous debt “threshold” at 90 percent of G.D.P.)が,IMFの詳しい検証や論争を経て,間違いであるとわかったけれど,エリートたちの意見は変わらない,むしろ緊縮要求を強めるだろう.

これらの学術研究は,緊縮要求にともなう倫理的な後ろめたさを解消してくれる「科学」であった.緊縮派は,バブル破裂の後に苦しむ人々を観て,何の罪の意識も持ちたくない.だれでも所得を超えて消費してはいけない,債務は苦しくても返済しなければならない,などという.バブルで儲けた者と,今の失業者とは違うのに.

さらに,意見の違いは不平等の拡大や階級の違いを示している.富裕層は,財政再建のために医療や福祉を削るべきだ,と考える.自分たちの嫌う「財政赤字」につながる「刺激策」を拒み,「緊縮策」を支持するとき,統計や学術論文を好む.

上位1%の富裕層が示す政策への偏見を正当化する「科学」は次々に現れる.

NYT April 25, 2013

Debt, Growth and the Austerity Debate

By CARMEN M. REINHART and KENNETH S. ROGOFF

20105月に,私たちは学術論文を発表した.その主要な発見は,44か国の200年間について,データから,年産出額に対して政府債務が90%を超える,重債務国は,顕著な低成長と結びついている,というものであった.

ワシントン,ロンドン,ブラッセル,東京,工業世界に広がる大不況からの脱出をめぐる論争が背景となって,この論文は,政治家,評論家,活動家などに,政治的な視点でしばしば引用された.

先週出た3人のエコノミスト(the University of Massachusetts, Amherst)による論文は私たちを批判したが,私たちの研究の間違いを正した点もあるが,すでに説明しておいた処理手続きについて受け入れられない主張もある.

私たちの研究,さらには信用や尊厳をも,新聞やテレビが猛烈に攻撃した.憎悪や脅迫を含むメールを受け取ったし,公共部門の解雇や政府サービスの削減,増税について私たちを責める者もいた.それらは悲しむべき社会科学研究の政治化である.

Thomas Herndon, Michael Ash and Robert Pollinは,私たちの発見が緊縮の政治学を支持した,と述べ,欧米で緊縮策の見直しを要請した,と述べている.しかし,我々の発見はそれほど劇的なものではない.債務がGDP90%を超えた国は,長期的に,成長率が1%低い,ということだ.先の批判論文も,それを翻してはいない.

因果関係について,私たちはそれが双方向に働くと考える.また,すべての時期,すべての場所で,成立する法則は存在しない.90%が魔法の閾値である主張したことは一度もない.重債務の時期は長く続いており,リベラル派が考えるように,単に不況期の問題ではない.

私たちは,重債務国にとって成長を目指すのは難しいと考える.しかし,低成長期に,失業が長引く中で,支出削減や増税が難しいことも知っている.構造改革をともなわない緊縮策はめったに成功しないし,貧困層や中産階級に負担を集中するような間違った政策を失敗する.刺激策をあまりに早く中止することも危険である.

私たちはラディカルな提案も支持したことがある.公的債務や民間債務の組み換え,ギリシャ,アイルランドなど,ヨーロッパ周辺諸国の債務引き下げ,債務額を下回った住宅の元本引き下げ,を提案した.

多くの国が,特に高齢化による医療費や年金の負担を考慮すれば,公的債務の累積に取り組むべきであり,貯蓄者から債務者への富の移転を意味する.この苦痛に満ちた問題を扱うことが研究者にとって重要なのだ.

NYT April 25, 2013

Responding to Our Critics

By CARMEN M. REINHART and KENNETH S. ROGOFF

guardian.co.uk, Friday 26 April 2013

Rogoff and Reinhart should show some remorse and reconsider austerity

Heidi Moore

BLOOMBERG Apr 28, 2013

Refereeing the Reinhart-Rogoff Debate

By Betsey Stevenson & Justin Wolfers

Project Syndicate 29 April 2013

When Is Government Debt Risky?

J. Bradford DeLong

政府が十分に税収を得られない場合,債務に伴う問題がさまざまな形で発生する.インフレを嫌う債券保有者により名目金利が上昇し,企業は将来の増税を恐れて富をよそへ移転する.さらに実質金利が上昇し,政策の不確実性が増し,社会的に見て生産的でも,利潤を生まない投資になる.十分なネットワークの拡大によって実現した社会的分業が,個人の信用や小さな社会に限定され,それゆえ生産性を低下させる.

しかし,金利が低く,株価は高く,インフレが抑制されているなら,こうした問題は生じない,と我々は考える.これら3つの数値は青信号を示している.

Carmen Reinhart and Ken Rogoffの研究は,90%に「閾値」という間違った言葉を使い,そのタイトルも誤用されるものであった.90%まで大丈夫とか,成長のために債務を減らそう,という主張と結びついた.

金利が低く,インフレはなく,株価は上昇しているときに,景気回復のための債務による支出増を支持することは正しい.

NYT April 29, 2013

Debt and Growth: A Response to Reinhart and Rogoff

By ROBERT POLLIN and MICHAEL ASH

Project Syndicate 30 April 2013

Who’s Afraid of the Big Bad Debt?

Ricardo Hausmann

経済学者の論争が主要新聞でこれほど注目されたことはない.それはまるでテレビのコメディー番組のように人気を得た.Carmen Reinhart and Kenneth Rogoff と Paul Krugmanの論争である.

現在の景気刺激策と赤字削減の政策論争をめぐって関心を高めたのだが,実際の論争は,ケインジアンと「オーステリアン(緊縮派)」との論争であった.前者は現在の失業(景気回復の遅さ)を問題にし,低金利を利用して財政赤字による刺激策を支持し,後者は,重債務がもたらす長期的な成長率の低下を問題にしている.彼らは違う問題を扱っているのだ.

Krugmanは,債務の水準を無視する点で間違っている.債券市場の監視(警戒)という懸念は,英米を観れば間違いであった,と主張する.しかし,Reinhart/Rogoffは,世界的な観点で,債務の水準が問題となり,政府の地位を弱くする,と主張している.

現在のスペインもそうだが,金融の歴史には,多くの実例がある.重債務国への不安が顕在化して,一気に金利が上昇したのだ(Mexico in 1994, Russia in 1998, Ecuador in 1999, Argentina in 2001, Uruguay in 2002, the Dominican Republic in 2003, and even the UK in 1976).

債務の水準は重要であり,債務の通貨建は一層重要である.アメリカのドルは世界の準備通貨であり,日本も自国通貨建で債券を発行できるから危機を回避できている.

WSJ April 30, 2013

The Reinhart and Rogoff Distraction

By HOLMAN W. JENKINS, JR.

FT May 1, 2013

Austerity is not the only answer to a debt problem

By Kenneth Rogoff and Carmen Reinhart

ウルトラ・ケインズ主義者たちは,長期的な債務削減の関心も忘れてしまう.その姿勢は,成長が弱まる中で,最近特にひどくなった.彼らの合理性とは,結局,金利が低いのだから,「フリーランチ」(再利の融資)を利用するべきなのだ.

不幸にして,ウルトラ・ケインズ主義者たちは実質金利の上昇を軽視しすぎている.金利がなぜこれほど急速に,大幅に下がったのか説明できないように,それがいつまで続くかも説明できないままだ.しかし,金利は急激に上昇しうる.

Project Syndicate 01 May 2013

A Fateful Mistake

Jean Pisani-Ferry

FT May 2, 2013

Kenneth Rogoff, Carmen Reinhart and the spell of magic numbers

By SamuelBrittan

経済学者はずっと,経済学が物理学のような厳密な科学ではないことを妬んできた(“physics envy”).物理学のような法則を探すことが長年の夢であった.

しかし,経済学の目指すのは物理学のような真理ではないし,それは計量的研究を否定するものではなく,経済学の独自の一般化と正確さを求めるものである.


l  グアンタナモ

NYT April 25, 2013

The Guantánamo Stain

By THE EDITORIAL BOARD

NYT April 30, 2013

The President and the Hunger Strike

By THE EDITORIAL BOARD


l  中国と世界秩序

FP April 25, 2013

Paper Tiger

Why isn't the rest of Asia afraid of China?

BY DAVID KANG

アジアの軍事的緊張は高まっているか? 北朝鮮,領土紛争,アメリカの「アジア旋回」,中国軍の近代化,・・・

しかし2012年,東アジア,東南アジアの軍事支出は過去25年間で(おそらく50年間でも)最低の水準である.もし軍備拡大競争に参加している国があるとすれば,それは唯一,中国だけである.

軍事支出は,各国の持つ脅威の認識によって決まる.それは当面の問題と長期的な不測の事態への対応を示している.19883.5%であったGDPに占める軍事支出の割合が,2012年には,2%以下にまで低下した.ベトナムでも,それは7.1%から2.4%まで低下している.

これは他の地域には見られず,アジアに特有の現象だ.アメリカの安全保障の傘があるから,ということでは説明できない.ソ連崩壊とアジア通貨危機以後,こうした変化が起きた.唯一の例外である中国が,今後,アジアの軍備拡大競争を刺激するのかどうか,まだ.わからない.

Project Syndicate 27 April 2013

Long Live China’s Slowdown

Stephen S. Roach

FP APRIL 26, 2013

China’s Black Hole

BY ISAAC STONE FISH

FT April 29, 2013

China and the fallacy that trade will always lead to peace

By JohnPlender

アジア,太平洋は,古くからの考えを試すものとなる.グローバリゼーション,あるいは,経済的相互依存は平和をもたらす,という考え方だ.

さまざまな思想家が主張し,歴史がそれによって支持されたが,現在,中国のケースはそれに反しているように見える.中国経済は非常に相互依存を深めているが,その国民感情は平和を求めるようになっていない.2009年から2011年にかけて,中国のGDP53%に及ぶ貿易額がある.アメリカは28%であった.中国の外貨準備は3兆ドルを超え,米欧日から多くの投資を受けている.

それにもかかわらず,中国のナショナリズムは緩和されていない.近代の戦争は,しばしば,偏狭な集団的利益やナショナリズム,深刻な不安と軍備拡大競争によって起きた.緊密な相互依存関係は,ケインズも述べたように,経済危機に際して戦争を主張する政治と結びつく.

Project Syndicate 29 April 2013

China’s New Path

Martin Feldstein

習近平,李克強の指導部は,市場型の改革と消費・サービスに依拠した成長モデルへの移行を唱えている.年成長率は10%から,次の10年は7%に減速するだろう.

中産階級労働者の貯蓄と国有企業による投資に頼るのではなく,その消費による成長を実現すれば,国内貯蓄は減り,経常収支黒字も減少する.すでにそれはGDP2%以下の水準である.今後も中国が外国企業の買収や資源の取得に対して投資するとすれば,次第に海外債券を購入するより,それらを売却するようになるだろう.中国の外貨準備も減少する.

BLOOMBERG Apr 29, 2013

Why the China Dream Might Be a Mirage

By William Pesek

中国の官僚制こそが不均衡をもたらしたのに,彼らに依拠して改革できるとは思えない.

WSJ April 29, 2013

China Needs a 1997-Style Crisis

By PHILIP BOWRING

1997年の金融危機が起きたから,韓国,タイ,インドネシア,マレーシアで改革が始まった.中国にも,同様に,危機が来なければ改革は実現できないだろう.

WSJ April 30, 2013

China Manufacturers Survive by Moving to Asian Neighbors

By KATHY CHU

WSJ May 1, 2013

China Grapples With Labor Shortage as Workers Shun Factories

By KATHY CHU

WSJ May 1, 2013

The Quietly International Yuan

By KEE JOO WONG

WSJ April 30, 2013

Welcome to General Tso's Motors

By EDWARD NIEDERMEYER

アメリカ自動車会社は政府による救済だけで生き延びたのではない.GMは生産を中国に移転し始めた.これにより中国のやる気を引き出せると考えている.

中国で行う自動車の生産は,全体が中国企業による下請けになってきた.GMは上海に新しい技術センターを開設し,積極的に技術移転を行っている.それを促すような政策がある.

Global Times | 2013-5-1

More open North Korea an asset to China

By Ding Gang

Project Syndicate 01 May 2013

Controlling China’s Currency

Zhang Monan

中国の通貨は過剰に発行されている.その理由はよくわからない.

この10年間は,高成長と低インフレが実現した黄金の10年であった.しかし,かつてないスピードと規模で増大する人民元が,高インフレ,資産バブル,債務膨張,資本流出につながるのではないか,という懸念がある.

中国人民銀行のデータによれば,昨年末のM297.4兆元(15.6兆ドル),GDP188%であった.アメリカの比率はわずか63%である.2011年,中国は世界の流動性追加の52%を占めた.

中国の集中的な貨幣化の進行は,貨幣供給の主要な要因である.中国は経済を開放し,市場を導入するにつれて,政府が継続的に資源を貨幣化した.すなわち,資源,労働,資本,技術を市場に供給したのである.それが貨幣需要を高め,マネタリー・ベースと貨幣乗数を高めた.

しかも,GDP成長は政府による銀行融資と国有企業の投資を中心に起こった.そのことが中国の金融システムにおける流動性を増やしたのだ.国有企業部門は,ソフトな予算制約しかなく,安価な資本を利用できた.その結果,中国は通貨創造のサイクルに囚われている.成長が投資を増やし,それがさらに多くの資本を需要する.

通貨(中央銀行)と金融(金融部門・銀行システム)との関係は不明瞭だ.中央銀行が,ますます,政府による投資の不良債権化した部分を貨幣化するために債券を購入している.それは中央銀行の資産内容を悪化させ,金融政策を制約する.

FT May 2, 2013

China guides renminbi to fresh high against US dollar

By Simon Rabinovitch in Beijing

2013-05-02 (China Daily)

US abets Japan's rightists

Global Times | 2013-5-2

Xinjiang terrorism may take another turn

By Turgunjan Tursun

ボストン・マラソンで爆破テロがあってから1週間後,新疆ウィグル自治区のBachu county, Kashgar Prefectureで暴動が起き,15名の警察官と,女性2人を含む,労働者たちが死亡した.従来の暴動と違って,犠牲者のほとんどがウィグル人である.


l  チェチェンとシリア

BLOOMBERG Apr 25, 2013

Putin’s Medieval Peace Pact in Chechnya

By Ben Judah

WP April 29, 2013

Putin’s counterterrorism ‘help’ is more of a hindrance

By Jackson Diehl

先週,ロシアの新聞Nezavisimaya Gazetaは論説で次のように述べた.「チェチェン出身のアメリカ市民権を持つ2人の若者が取った非合理的な行動が,シリアの戦争と共通しているものは何か,考えてはどうか?

アメリカ人は,共通したものなどない,と思うだろう.しかし,ウラジミール・プーチンとモスクワのエリートたちは,ボストンのテロリスト2人とシリアでアサド政権を倒そうとしている反政府派は同じものである.そしてロシア政府はアサド政権に,ミサイルなどの武器を供給し続けている.

むしろ,シリアとチェチェンに共通点が多くある.民衆に支持された反政府派が求める要求を政府が拒否し,大規模な軍事攻撃により,平和的な抗議活動も,兵士も,罪のない市民も区別せずに,大量に殺した.

そしてテロは周辺地域やモスクワに拡大していった.プーチンにとってアサドは,チェチェンの再現でしかない.反対派は皆テロリストであり,市民の犠牲は無視して,武力で鎮圧しなければならない.プーチンにとって,西側の言うような,テロリストと反政府派との区別は無意味である.

しかし,別の見方をすれば,プーチンが独立要求とテロとを区別しなかったから,北コーカサスに聖戦主義が拡大し,Tsarnaev兄弟は感化された.シリアの民主的な改革を求める人々を支持しないから,プーチンはここでも過激派の新世代が誕生するのを促している.プーチンこそが,問題の発生源である.


l  安倍晋三という政治

BLOOMBERG Apr 25, 2013

Japans’s Scary Lesson on Slashing Interest Rates

By William Pesek

金融政策を極端に緩和すれば,正常な状態に戻るのは非常に難しい.日本の経験はそれを示している.政治家,銀行家,投資家,ビジネスマンがフリー・マネーの利用中毒になって,もっと多くの貨幣供給を願うからだ.1990年のバブル破裂後,黒田で6人目の日銀総裁である.

彼らはいかなる金利の上昇にも耐えられないのだ,と投資戦略家のSimon Grose-Hodgeは述べた.「流動性の罠」は「金融緩和による刺激策の罠」に変身し,そこから抜け出せない.

いつの日か,投資家たちは,急速に高齢化する国がGDP2倍以上も債務を負うことができないことに気づくだろう.あまりの低金利がそれを無視させている.中国も,この罠に陥るのは確実だろう.

WP April 27, 2013

Shinzo Abe’s inability to face history

By Editorial Board

安倍晋三が政権を執ったときから,一つの問題がはっきりと答えを求めていた.安倍は,日本のために,その個人的なナショナリズムの感情,特に,歴史の見直し,を抑えられるだろうか?

これまでは,その答えが肯定的であった.しかし,今週,それは逆転されるリスクを示した.韓国の植民地化について問われると,それは学術研究や国際社会の問題であって,立場によって見方は変わる,と答えた.

確かに歴史は常に再解釈される.しかし,変わらない事実がある.日本は朝鮮を植民地化し,満州を植民地化し,さらに中国の他の地域にもそれを広げた.日本はマレーシアを侵略し,攻撃した.なぜ,ヨーロッパで数十年前にドイツがしたように,歴史を直視できないのか?

安倍の求める軍事力の強化や憲法改正には合理的な理由がある.しかし,彼が戦前の帝国を懐古する気分であるなら,国民の懐疑は深まり,近隣諸国の反発を受けて,国内改革の力も失うだろう.

FT April 28, 2013

Shinzo Abe must resist dangerous distractions

それは時間の問題であった.日本の安倍首相は,その内なるデモン(邪心),ナショナリズムの衝動を抑えてきた.しかし,今や70%の高い支持率を得て,彼の仮面は剥げ落ちた.

戦没者を弔いたい,という彼のもっともな願いは,靖国参拝という間違った場所に向かっている.そこは,救いがたい天皇崇拝のナショナリズム・カルト集団が組織したものだ.安倍は,右派の信頼を得ていることを利して,もっと論争を生じない非宗教の記念施設を推進するべきだろう.

FT April 29, 2013

Russia and Japan revive talks over disputed islands

By Charles Clover

BLOOMBERG May 2, 2013

‘Abenomics’ Meets Curse of Second 100 Days

By William Pesek

およそ100日で政権の性格や評価は決まる.安倍政権はどうか?

100日目に,日銀総裁は歴史的な攻撃的金融政策で市場に衝撃を与えた.日本は,震災や,放射能漏れや,企業スキャンダルではなく,正しい理由で国際ニュースの関心を集めた.

しかし,安倍の過剰なレトリックはさっさと終わって,その中身を求めるときだろう.確かに,黒田総裁は期待を裏切らなかった.しかし構造改革は言葉だけで,全く中身が見えない.「3本の矢」ではなく,せいぜい「1本半の矢」でしかない.

麻生副総理に率いられた168人もの議員団が靖国神社に参拝するのは,どれほど円安が輸出に好都合でも,主要貿易相手国である中国と韓国の憤慨を考えれば,まともな行動とは思えない.また,高齢化と債務累積は,ますます金融政策に経済活性化の負担を集中することになる.

労働市場の末端にいる若者たちの所得が増えなければ,デフレを終わるとしても,停滞が続くだろう.ビックマックやフライドポテトの値段が下がるにつれて,若者たちの時給も下がってきた.


FT April 26, 2013

Virtual currencies must be taken seriously

By Stephen Foley in New York


l  移民法改正

FT April 26, 2013

The unintended consequences of immigration reform

By Christopher Caldwell


l  ヨーロッパの緊縮策

FT April 26, 2013

Austerity is hurting – but is it working?

By Chris Giles and Robin Harding

BLOOMBERG Apr 28, 2013

Germany Should End Austerity, Not Ireland

By Megan Greene

FT April 29, 2013

Not all European countries can be Germany

By AlexanderPrivitera

2010年のドイツ,シュレーダー社民党政権が行った改革Agenda 2010を,成功モデルとしてユーロ圏に輸出するのは間違いだ.シュレーダーは法律と社会保障制度を改革し,労働市場を開放的で,市場に反応する,弾力的なものにした.

しかし,Agenda 2010は,どの国にも適用できるモデルではない.そもそもそれが転換を実現したのではない.ドイツ経済は,東西再統一から転換し始めていた.

1990年代,東西再統一は西ドイツ企業に高熟練で安価な東欧労働力を利用可能にした.東ドイツへの大規模なインフラ投資にもかかわらず,ドイツ企業の多くは東ドイツよりも東欧に投資した.旧ソ連圏の諸国がドイツのサプライ・チェーンに組み込まれた結果,ドイツの労働者たちはますます厳しい競争圧力にさらされた.失業が増大し,ドイツはヨーロッパの病人になった.

1990年代末にユーロ圏が誕生し,ドイツの競争力を奪ってきた貨幣価値の変動(ドイツ・マルクの増価)が消滅し,ユーロ圏内の金利が下がって需要を刺激した.それらはドイツからの輸出を増やした.また労働市場の制約は,ドイツ外の労働力を利用することや,ドイツの労働組合が弱体化して緩和された.

しかし,このドイツの失業減少は,労働市場の2極化によって達成されたものである.シュレーダーのAgenda 2010は,ユーロ圏周辺諸国の苦境を解決するものではない.その時期や条件を見ずに,ドイツのモデルを強制すれば,彼らを崖から突き落とすだけである.

FT April 29, 2013

Austerity exposes the global threat from tax havens

By Jeffrey Sachs

FT April 29, 2013

Ireland: Bleak houses

By Jamie Smyth

WSJ April 30, 2013

Greek Austerity, at Last


l  アメリカのシリア不介入

FT April 26, 2013

Don’t give up on diplomacy in Syria

Mark Malloch-Brown

WP April 27, 2013

Obama should remember Rwanda as he weighs action in Syria

By Anne-Marie Slaughter

ルワンダのジェノサイドに関する失敗を思い出すべきだ.オバマ大統領はその警告に背いたアサド政権を攻撃しなければならない.アラブの民衆はアメリカ政府の複雑な計算など考慮しない.言葉と行動とが深刻なほど大きくかい離するとき,それはアメリカ外交の信用それ自体を大きく損なうものになる.

FT April 29, 2013

Syria and the undoing of Obama’s grand strategy

By Gideon Rachman

オバマ大統領は,彼自身の正しい判断に反して,シリアの戦争に引き込まれつつある.

もしオバマがシリア介入に踏み切れば,それは第1期に示した戦略を逆転させることになる.すなわち,1.中東で新しい戦争に関与しない,2.「アジア旋回」,すなわち,中東の流血よりアジアの成長にかかわる,3.国内の経済・社会改革を通じて,アメリカの力を回復する.

WP April 30, 2013

In Syria, U.S. inaction is better than intervention

By Eugene Robinson

アメリカの軍事介入は事態を悪化させるだけかもしれない.アメリカの安全保障上の利益は失われていないし,ルワンダンのようなジェノサイドも起きていない.

FP APRIL 30, 2013

Hawking Something

BY MICAH ZENKO

SPIEGEL ONLINE 05/01/2013

Obama's Syria Problem

'We Didn't Have a Strategy'

FP MAY 1, 2013

The Ghost of Iraq

BY JOHN NORRIS


l  (寓話)ドイツ首相候補

SPIEGEL ONLINE 04/26/2013

Fiction Excerpt

'The Jewish Candidate'

外国人排斥やネオ・ナチズムが危険なほど目立ってきた現状において,もし次の首相候補としてユダヤ人の名前が出たらどうなるか?

London Chronicleのリポーター,Frank Carverが書いた小説"The Jewish Candidate"の紹介です.ユダヤ人首相の誕生は,ドイツの過去を清算できるのか?


後半へ続く)