(前半から続く)
l 中国とガバナンスの多面性
FT April 14, 2013
China
must take care of its city-dwellers
By Tom Miller
大気汚染と交通渋滞が北京から外国人や市民までも脱出に向かわせる.
何億人もの農民が農場を離れて都市に向かい,目覚ましい成長をもたらした.しかし,都市化は空気を汚し,道路を渋滞させ,文化の崩壊や,魂を損なうような醜い街並みを生んだ.
地方政府は,成長に対してだけ多くの報償を与えられてきた.このことが公共投資を歪める結果となり,大きな間違いであった.その環境破壊はすさまじく,中国の都市の20%以下しか,硫黄などの有害物質に関するWHOの基準を満たしていない.
政府は成長を維持するために一層の都市化を支持するが,都市に増大する中産階級はすでに生活できる環境の回復を求めている.
FT April 15, 2013
China
should not fear slower growth
WSJ April 15, 2013
Does
China Really Want a Nuclear Japan and South Korea?
By BOB CORKER
北朝鮮の核武装を破棄させる圧力を行使できるのは中国である.もし北朝鮮が核による威嚇を続けるなら,韓国や日本は抑止力としての核武装を目指すだろう.東アジアにおける核兵器の拡散は迫っている.中国はそのリスクを軽視していないか?
FT April 16, 2013
China
local authority debt ‘out of control’
By Simon Rabinovitch in Beijing
FT April 16, 2013
Tears,
reality TV and the Chinese dream
By Patti Waldmeir in Shanghai
習近平とその妻は,まるで1960年のケネディー夫妻のようにふるまう.それは外観だけでなく,習の言葉「チャイニーズ・ドリーム」に明白だ.しかも,そう思うのは彼だけではない.
2億5000万人が観る人気TV番組MasterChef China が新しいチャンピオンZhao Danを紹介した.その話では,彼女が33歳のシングルマザーであり,台湾系の父親は失業している.彼は料理をしなかった.最終戦で,Zhaoは母親と登場する.彼女は肝臓病の末期で,移植しなければ死を待つだけである.審査員たちは,賞金の半分を母親の治療に使うことを認めた.
対抗したHong Hongxingも,不作によって幼い息子を育てることは難しく,あまりにも貧しくて病気の父親を訪ねることができなかった.2人の話に視聴者は涙を流したに違いない.しかし,この勝負を決めたのは料理の腕なのか,それとも,かわいそうな話なのか,という議論が起きた.
この勝負は,優勝者が女性であることも,男性ばかりの料理界に対する異端であったし,料理人が下層の世界であることも示した.
Zhao Danは,新しいレストランを開き,チャイニーズ・ドリームを実現する.
FT April 16, 2013
Debt
threat to China’s financial system
By Jamil Anderlini in Beijing
Project Syndicate 16 April 2013
A
Chinese Pivot?
Jaswant Singh
Project Syndicate 16 April 2013
China’s
Dream World
Minxin Pei
支配エリートはどこでも,民主主義と権威主義体制との違いはなく,巧妙な宣伝で民衆を刺激し,自分たちの支配を正当化できる,と考えている.
もちろん,そうではない.機能する民主主義では,政府の指導者たちは約束を守らねばならない.新聞が政策を精査し,野党が政府の嘘や欺瞞を攻撃する.政権を維持するには,少なくとも,いくつかの約束を実現できなければならない.
これとは対照的に,専制的な支配者にはその圧力が無い.結局,政府は,スローガンを決め,スローガンによって行動し,スローガンのために存在する.
この10年間,中国はこのような政府の典型であった.その宣言された目標が実現できたわけではない.GDPは増大したが,社会正義,ガバナンスの効率,公衆の福祉は低下した.マクロ経済の不均衡,所得分配の不平等,汚職・腐敗,社会的移動性は低下した.環境破壊は危機的だ.
新しい指導者となった習近平は,新しいスローガンと実現しない約束によって10年を過ごしてはいけない.「中国民族の偉大な再興」を唱えた「チャイナ・ドリーム」とは何か?
その中身は定義されていない.習は何も語らないからだ.中国の宣伝機関は何もかも信用を損なってしまう.国民はそれに飽きて,もっと中身を求めている.習は能力ある指導者として信頼されるために,チャイナ・ドリームのより明確な,より限定された,勇気を与える姿を,自分で示さねばならない.宣伝機関に委ねてはいけない.
そして習は,目標を実現するための明確な政策と行動を採ることだ.宣伝機関が作るスローガンは,すぐに腐ってしまう.
WSJ April 17, 2013
Chinese
Investment 2.0
By THILO HANEMANN AND DAN ROSEN
WSJ April 18, 2013
Beijing's
Paranoid Worldview
By MICHAEL AUSLIN
YaleGlobal, 18 April 2013
China
Targets Greenland for Mining
Will Hickey
Project Syndicate 18 April 2013
Can
China Adapt?
Zhang Jun
中国の低成長が続くという悲観論は,日本の例を観ている.アジアのその他の新興諸国も同じような「中所得の罠」を経験した.しかし,中国の所得水準はまだそれに達していない.
日本は停滞を続けたが,韓国は金融危機後に成長を回復した.経済発展は,それに必要な制度の改革を実現しなければならない.「最適な」経済システムがあるのではなく,長期の成長を維持する改革の能力が重要なのだ.国によってその差があるのは,既得権や強力な政治ロービーが政策をゆがめるからである.政府が改革の機を逃さぬためには,既得権に縛られず,また,独自の富と権力を保持しなければならない.
これまでの成長を制度改革で支えたように,中国政府にはそれがある.政府は手を縛られずに,今後も,改革を実行することができる.
l 東京裁判の反対意見
BLOOMBERG Apr 14, 2013
To
Erase Militarist Past, Japan Must Re-Learn It
By Pankaj Mishra
保守派の日本人は,安倍晋三のように,東京裁判や戦後の日本について批判的であり,インド人の判事Radha Binod Palが判決に異議を唱えたことに感謝する.しかし,その1235頁の反対意見を読んでみれば,まったく異なる多くのことを学ぶだろう.
靖国神社に行けば,歴史とは程遠い多くの自由な解釈が許されていることを知る.日本の汎アジア主義が,中国だけでも1000万人以上の命を奪った,という認識はない.
確かに,世界中の政府が自国の過ちを容易に忘れるのであり,日本だけが例外ではないが.真実は,社会経済的な必要と,地政学的な圧力の産物だ.
l シンガポール
Global Times | 2013-4-14
Singapore’s
middle class greenhouse under threat from migration
By Zha Wen
シンガポールは中産階級にも手厚い補助を行っている.特に公共住宅の供給は一部の富裕層を除いて多くの国民に市場価格よりもはるかに安価に集合住宅を供給する.
しかし,他方で,中産階級はこの「エアコン型」国家において,技術や才能のある外国人の雇用と競争している.中産階級は投票によって,こうした外国人を減らして,自分たちの雇用を確保しようとしている.それはシンガポールの競争力を損なうかもしれない.
Project Syndicate 15 April 2013
Battleground
Budget
Michael Spence
BLOOMBERG Apr 15, 2013
Australia
Must Wean Itself From China
By William Pesek
l ボストン・マラソンとテロ事件
NYT April 15, 2013
Bombs
at the Marathon
By THE EDITORIAL BOARD
マラソンは人々を結ぶスポーツ・イベントだ.誰が勝つか,負けるか,ではなく,どの国から来たか,でもない.ランナーたちを知らないにもかかわらず,彼らの奮闘と体力に沿道の人々が声援を送る.ボストンでは1897年からそうだった.
来年もランナーたちは集まるだろう.いかなるテロも,アメリカの伝統であるマラソン大会を止めることはない.
FP April 15, 2013
Beware
the Few
BY JOHN ARQUILLA
WSJ April 15, 2013
Terror
in Boston
The Guardian, Tuesday 16 April 2013
After
the bomb, mass hysteria is the Boston terrorist's greatest weapon
Simon Jenkins
FT April 16, 2013
The Boston bombs
勝手な疑いを広めず,警察の捜査を進めよ.テロは過剰反応を狙っている.冷静さを保ち,軽率な政治化を避けるべきだ.
NYT April 16, 2013
Living
Through Terror, in Rawalpindi and Boston
By HAIDER JAVED WARRAICH
FP April 16, 2013
On the
Boston Marathon attacks
Posted By Stephen M. Walt
一つの教訓は,テロが我々の社会や自由に与える影響は,我々が冷静である限り,非常に小さい,ということだ.人々は間違った情報による憶測で責任を問うことはしなかった.混乱やパニックは起きなかった.
70億の人類の中に,少数の者が無辜の人々を殺傷するようなテロ事件にかかわる.3億人以上が住むアメリカにも,そのような者が現れる.テロ事件は,北アイルランド,イラク,アフガニスタン,イスタンブール,バリで起き,アメリカの堕胎を行う医院でも起きた.モスクワの地下鉄,マドリード,オクラホマ・シティ.政治集団や,怒りに駆られた個人,昨日だけでなく,19世紀から20世紀を通じて起きた.
テロのない理想郷を実現することはできないが,われわれは慎重に警備体制を敷き,経験によって改善し続ける.またテロ攻撃の動機を知り,次のテロが起きるのを防ぐために役立てる.我々の最大の責任は,悲劇に直面したときも,それに負けない強い社会を作ること,その危険を限定し,たとえ,突然,テロに直面しても屈しない社会を築くことである.
WP April 17, 2013
The
limits of intelligence collection
By David Ignatius
NYT April 16, 2013
Bring
On the Next Marathon
By THOMAS L. FRIEDMAN
FP APRIL 18, 2013
Keep
Calm and Shut the Bleep Up
BY ROSA BROOKS
WP April 19, 2013
The
language of terror
By Charles Krauthammer
テロリズムはスピーチである.人を殺すことで,聴衆を集める.
なぜオバマ大踏力は,人権の後のスピーチで「テロ」と呼ばなかったのか? オバマは翌朝には修正した.それはベンガジの事件で遅すぎた修正を反省したからだろう.このテロの目的はまだわからないが.
l エコノミストの評価
guardian.co.uk, Tuesday 16 April 2013
How
much unemployment did Reinhart and Rogoff's arithmetic mistake cause?
Dean Baker
FT April 17, 2013
Austerity
after Reinhart and Rogoff
By Robert Pollin and Michael Ash
guardian.co.uk, Thursday 18 April 2013
The
Rogoff-Reinhart data scandal reminds us economists aren't gods
Heidi Moore
l デフレと金融政策
FT April 16, 2013
How
central banks beat deflation
By Martin Wolf
なぜ高所得国はデフレから抜け出せないのか?
一つの見方は,インフレが起きる恐れがないから,算出の不足をもっと積極的に財政刺激策で補うことができる,というものだ.ケインズ主義的なマクロ安定化が復活した.
しかし,別の見方は,構造的な問題だ,というものだ.危機の前,労働者たちの多くは建設など,バブルに関連する職種に就いていた.危機によって,彼らは間違ったスキル,間違った場所に固定されてしまい,容易に新しい職種に移動できない.さらに,最初は一時的な失業であっても,不況が長引くことで長期失業に代わり,彼らのスキルやネットワークが失われてしまう.そのことがさらに新しい就業を困難にする.
また,別の見方をすると,展望が開ける.インフレ目標は,労働市場と同様に,インフレを固定することになった,というものだ.労働者が名目賃金の下落を嫌うのはよく知られている.同様に,インフレ目標の成功は,失業の水準が変わってもインフレを固定している.金融政策の余地は,以前よりも拡大したのではないか.
VOX 17 April 2013
Augmented
inflation targeting: Le roi est mort, vive le roi
Richard Baldwin, Daniel Gros
インフレ目標は死なず,進化した.政府の行動は遅れ,しくじった.しかし,中央銀行は「連合軍のノルマンディー上陸作戦」のように,果敢に行動した.それは‘augmented inflation targeting’, ‘ inflation targeting 2.0’, or ‘inflation targeting plus’と呼ばれた.
「進化したインフレ目標」は,新しい目標と手段を持っている.すなわち,金融の不安定性は,物価の安定性を破壊する.伝統的な金融政策は効果を失った.マクロ・プルーデンシャルや将来の危機を回避することが重視される.
その手段としては,「バランス・シート」が操作される.量的緩和やモーゲージへの保証が行われる.「マインド・トリック」と呼ばれる操作は,インフレ期待を高めることでインフレを自己実現させる操作である.またインフレ目標の対象は変化し,物価が安定している限り雇用を目標に加え,また,インフレ目標を高くする.
「進化したインフレ目標」は,単にインフレ目標を決めるだけでなく,中央銀行への信頼を高めるものだ.そして,信頼を高めることが難しい.かつては政治からの「独立性」であったが,今では信頼を得るために,中期的に何でも行動する.成長や雇用をもたらし,金融安定性を実現する.物価の安定という目標は同じでも,それがインフレの抑制ではなく,デフレの回避・脱却になった.
「進化したインフレ目標」「インフレ目標2.0」の問題は,中央銀行による資産保有の増大である.金融政策と財政政策の区別がぼやけてくる.金融緩和だけでなく,債務超過や不要な住宅の整理,構造改革が必要である.
問題があるのは確かだが,ほかに選択肢はない.チャーチルの言葉を借りれば,インフレ目標は他のすべての金融政策を除いて,最悪の金融政策である.
Project Syndicate 17 April 2013
Central
Banks’ Outdated Independence
Mario I. Blejer
「中央銀行の独立性」という考え方は,世界金融危機によってその意味を失いつつある.金融政策の目標をあまりにも狭くとらえた結果,資産市場や商品市場でのバブルを放置し,銀行システムの安定性を損なったのではないか? また,金融危機が発生してから,中央銀行は否応なくインフレ目標から外れ,非伝統的な政策をとって,資産の購入を拡大している.
それは,金融政策の,しばしば逆進的な,所得分配に影響する効果を強め,政治的選択に従うものである.また,単に金融政策が政治介入にさらされるというだけでなく,さまざまな目標を扱うことで,中央銀行の政策には民主主義の赤字が問われることになる.
VOX 18 April 2013
Macroprudential
rebalancing
Jean-Pierre Landau
FT April 17, 2013
Markets
Insight: A weak yen is not the solution for Japan
By Axel Merk
FT April 17, 2013
The
BoJ makes its Pearl Harbor decision
By David Pilling
日銀黒田総裁の政策転換は,「悪名高い真珠湾攻撃」を思い出す.
日本は,インドシナ侵攻に対するアメリカによる石油禁輸措置により,オランダ領東インド(インドネシア)の支配を目指したが,それによってアメリカとの戦争を避けられないものと考えた.真珠湾攻撃は戦略的な優位を得る作戦であった.
日本の財政状態は持続不可能であり,支出の半分は借金であるのに,労働者の人口は急速に減少している.債務が限界に達するのは明らかだ.真珠湾攻撃のように,最初に紙幣を大量に印刷して,景気を立て直すことで優位を得るチャンスに賭けている.
FT April 18, 2013
Japan
is fighting back at stagnation
By Taro Aso
FT April 18, 2013
How
the IMF should respond to a ‘three-speed world’
Mohamed El-Erian
SPIEGEL ONLINE 04/18/2013
Risky
'Abenomics'
Can
Japan Jumpstart Its Economy?
By Wieland Wagner
WP April 19, 2013
An
ascendant Japan would boost U.S. interests
By Vance Serchuk
FP April 16, 2013
How
Geography Explains the United States
BY AARON DAVID MILLER | APRIL 16, 2013
WSJ April 15, 2013
Debating
the Tiger's Rise
By SADANAND DHUME
Project Syndicate 17 April 2013
Egyptian
Democracy’s Last Chance?
Álvaro D. Vasconcelos
NYT April 17, 2013
An Afghan
City’s Economic Success Extends to Its Sex Trade
By AZAM AHMED
NYT APRIL 17, 2013
Does
High Debt Cause Slow Growth?
By VIKAS BAJAJ
NYT April 16, 2013
An
Immigration Blueprint
By THE EDITORIAL BOARD
NYT APRIL 17, 2013
The
Economics of Immigration
The Guardian, Wednesday 17 April 2013
A
funeral designed to elevate Margaret Thatcher above politics
Jonathan Freedland
guardian.co.uk, Thursday 18 April 2013
Syrians
can be reconciled – through negotiation, not violence
Haytham Manna
FP APRIL 18, 2013
It's
Time to Act in Syria
BY DENNIS ROSS
guardian.co.uk, Thursday 18 April 2013
Mass
migration is a symptom, not a cause, of crisis
Bernard Keenan
WSJ April 18, 2013
Challenge
China to Free Tibetans
By ELLIOTT ABRAMS AND AZIZAH AL-HIBRI
******************************
The Economist April 6th 2013
Korean roulette
Mexico’s new president: Pena’s promising
start
Economic policy: A world of cheap money
Special Report China and the Internet: A
giant cage
(コメント) (日吉ダムマラソンに参加して,読む時間が足りませんでした.)
記事は,北朝鮮に対するハードな選択を求めています.ただし,中国が協力することを前提に.メキシコ大統領の革命的な転換姿勢には驚きます.まるで,裕福な諸国の中央銀行のようです.どちらも,決して容易に変わらないと思われていた方針を180度転換しました.
中国のインターネットが社会に何をもたらすのか,以前ほど革命的なものではないのか,という疑問が広がります.それは政府が与える民衆のアヘンでしょうか?
******************************
IPEの想像力 4/22/13
ボストン・マラソンの爆弾テロは,私に二つのアイデアを刺激しました.チェチェンとソーシャル・ネットワークです.
政治とテロについて考えるとき,たとえば,チェチェンやチベットは深刻な問題を示しています.現状を変える,何か新しい答えはないのか,ネットに現れるアイデアを私は探しています.
ソーシャル・ネットワークや市民からの情報提供“crowd-sourced information”がテロ犯罪の容疑者を迅速に発見し,追い詰めた,というのは,以前のロンドン・テロで監視カメラが示した威力と並んで,ネット社会の可能性を示しています.つまり,・・・
ふつう,政策とその効果は,ずっと後になって統計データにより評価されます.もし“crowd-sourced information /
investigation”が広く実現すれば,政策の効果をリアル・タイムで確認できると思います.たとえば,「アベノミクス」が,どのような分野で,どのような効果を発揮しているのか,だれが主要な利益を得て,だれが損失を被るのか,私たちは実際に市民から関連する情報を集めることができるでしょう.
日本だけでなく,構造改革が難しいのは,変化への不安や分配への不平等な効果について,不満があるからです.政府や政治への不信感,むやみに非難し合う政党や政治家への悲観論,無力感も重要でしょう.政治家に頼らず,直接,政策に影響を及ぼすことはできないのでしょうか?
もっと自分で評価し,その情報を集約(さらに検証)する(Google mapみたいな)独自のシステムがあれば,どの政策が自分たちの暮らしを改善するのか,私たちは納得できるし,それを実現する政府や政党をもっと積極的に応援するようになると思います.皆が,自分で集めたデータ,証拠,写真,隣人たちの証言,改善へのヒント,・・・を持ち寄ります.
特に,今こそ,派遣労働の実態や報酬の公平さを検証するシステムが重要です.日本の衰退を懸念する最も深刻な問題点は,非正規の賃金や労働条件の悪化,そこにいる若者たちに活躍する機会が乏しく,革新的な人々,野心的な意見を組織が取り込む力を持たないことです.企業は労働者たちの要求を受けて,正規の労働条件を安定化することに責任を負います.他方,雇用されない若者たちがどうなるか,それは企業の責任と考えません.企業は派遣やパートの形で弾力的な雇用契約を取り込めます.しかし,それが社会にもたらす影響は重視しません.
医療保険や生活保護,移民労働者の均等な働く機会,といった非常に論争的なテーマでも,もっと事実を広く集め,それをだれもが知ることで,論争は冷静になり,顕著な不正を速やかに正すとともに,良質な部分を育て,建設的な提案ができるでしょう.相互に利益を分かち合う分野を発見し,開拓・促進することが,新しいアイデアを持つ若者たちの活躍の場を広げるはずです.
TPPが本当に何を意味するのか,さまざまな試算が示されていますが,どれも前提やモデルが異なっており,評価に大きな違いがあります.もっと農家の人たちが自分の視点で,TPPが実現する変化を,常時,監視して情報を集約することができるなら,彼らももっとTPPに積極的にかかわり,暮らしや農業がどう変わるのか,政治家たちに説明と対策を求めるでしょう.・・・都市における市場価格の変化や適切な農業技術,気象情報,農薬や病気の知識を,アフリカの,貧しい農民たちが携帯電話で得るようになりました.それが革命的な影響を広めている,という記事に,私は感動します.なぜ日本でも,いろいろな問題について,同じようにできないのですか?
あるいは,中国政府は,地方政府に対して汚職の追放を求め,市民が集めた情報をマスコミに公開しています.日本でも,収賄や談合の情報を集めて,具体的な証拠や証言とともに,官僚・政治家と企業の行動を監視し,新規参入や競争を促進するべきでしょう.そして,それが単に価格を引き下げるための劣悪な工事や労働条件の悪化ではなく,優れた製品や革新的な手法によるものであった場合,これを市民たちに広く知らせることで,行政や政治の革新を進める条件にもするのです.
紛争地域の聖戦主義者(ジハーディスト)が,インターネットを通じて,豊かな諸国の移民や宗教的マイノリティー,若者の不満を吸収するリクルート活動を巧妙に組織していると思います.私たちがネット社会やネット上のコミュニティーに深くかかわる中で,閉ざされた親密な情報交換が“home-grown terrorists”の入り口になっているかもしれません.日本も,どれほど移民政策を抑制的にしても,その影響を免れないのです.
私は,潜在的なテロリストたちに「発言の自由」を積極的に与えてはどうか,と思います.彼らが社会的なリンクを回復するために,「ウィルス」に抗する「ワクチン」のような(少しTEDに似た)プログラムを開発します.豊かな社会に広まる不満を,テロ集団が吸収して,彼らの土地の訓練キャンプへ短期訪問旅行に勧誘するのであれば,学校や地域社会は,もっと自分たちのネットワークを充実させ,魅力的な,革新の機会が豊富にあることを教える職場や学校の短期訪問・参加企画を,若者たちに積極的に提供すべきでしょう.
・・・マラソンは,とてもシンプルで,ストイックな感動を呼ぶスポーツです.テロリストたちを生んだ紛争地域にも,彼らのマラソン大会を組織できる日が来てほしい,と願います.
******************************