前半から続く)


l  民主主義の動揺

NYT APRIL 6, 2013

Europe Doesn’t Trust Its Politicians. What’s the Alternative?

By HARVEY MORRIS

WP April 6, 2013

Why the financial crisis was bad for democracy

By Neil Irwin


l  地政学的危機の放置

NYT April 6, 2013

How We’ve Wasted Our Timeout

By THOMAS L. FRIEDMAN

危機はおびただしい浪費であるが,危機後になすべきことを「中断」するのは,また,深刻な浪費である.

我々は地政学的な問題を解決する時間をすでに5年も浪費した.もしわれわれが覚醒して協調した行動をとらなければ,すなわち,中国人,ロシア人,ヨーロッパ人が同じことをしなければ,後で大きく後悔することになるだろう.

2008年の金融危機後の大不況は,各国が地政学的な危機や防衛費を無視して,自国経済の債権だけに取り組んだ.この5年間は地政学的な中断であった.

今や,新しいリスクが登場している.北朝鮮は核を使って威嚇し,エジプトはパンを買い金がなく,シリアの指導者は支配するための破滅的な紛争をやめない.キプロス救済案はユーロ危機を再生してしまった.

未来の歴史家は,なぜアメリカはインフラ投資で政治的合意を形成しなかったのか,と非難するだろう.なぜ中国は北朝鮮の核を放置し,韓国,日本,ベトナム,台湾,近隣諸国に核武装が広まるのを止めなかったのか? ロシアはシリアのサダトを政権から追放せず,隣国のイランが核武装するのを許したのか?

この5年間,われわれはもっと有益な行動によって,地政学的問題の波及を阻止するべきだった,と知るだろう.

NYT April 9, 2013

The Arab Quarter Century

By THOMAS L. FRIEDMAN


l  グローバルな成長の持続

FT April 7, 2013

This is a golden age of global growth (yes, you read that right)

By ArvindSubramanian

裕福な諸国は経済停滞を嘆いているが,世界の格差は主唱し続けている.

1960年から2000年まで,アメリカは約2.5%で成長したが,それを超える諸国が約20か国あった.日本,韓国,シンガポール,中国,インドなどは顕著な例だ.

世界金融危機の前の10年から,変化が起きていた.約80か国がアメリカの生活水準にキャッチアップを始めたのだ.アジアだけでなく,サブサハラやラテンアメリカの国もある.繁栄は地球全体に,しかも加速的に広まっている.

成長とキャッチアップは続く.発展途上の世界には,その挑戦すべき課題が内部にある.


l  マーガレット・サッチャーとその遺産

The Guardian, Monday 8 April 2013

What did Margaret Thatcher do for Britain? Panel verdict

David Owen, David Mellor, Roy Hattersley, Virginia Bottomley, Paul Boateng, Paddy Ashdown, David Blunkett and John Redwood

The Guardian, Monday 8 April 2013

Margaret Thatcher and misapplied death etiquette

Glenn Greenwald

The Guardian, Monday 8 April 2013

Margaret Thatcher: the lady and the land she leaves behind

Editorial

The Guardian, Monday 8 April 2013

Margaret Thatcher and Ronald Reagan remade conservatism and the west

Dick Thornburgh

The Guardian, Monday 8 April 2013

Margaret Thatcher's Britain: we still live in the land Maggie built

Jonathan Freedland

我々は今もマーガレット・サッチャーが建てた国に住む.

周りを観ればよい.駅に行けば,鉄道会社が競争している.彼女がもたらした民営化の産物だ.道を走る自動車は,ほとんどイギリス製ではない.冷酷な「市場の力」に圧倒されて,イギリス産業の多くは衰退した.水道も,電話も,今では政府のものではない.

当時のイギリスを今思えば,まるで外国のようだ.労働党の古株が,家族を売るようなものといったが,マーガレット・サッチャーは1945年以来の産業国有化をすべて逆転させた.彼女はイギリスの景色だけでなく,イギリス人の心を変えた.

"There is no such thing as society". その言葉は誤解されてきたが,何度も言及されるのは彼女の信条を示すからだろう.個人主義を称え,集団的なものを侮蔑した.

その粗雑な意味で,サッチャーの精神は1980年代の即席で富をつかむ精神,強欲賛美につながった.シティの規制緩和,ビッグ・バンは,2008年の世界金融危機に至るバブルの種をまいた.

FT April 8, 2013

Thatcher: the great reformer

By Martin Wolf

サッチャーは,国家と市場の関係を逆転することで,保守党を変え,イギリス政治を変えた.彼女はまた,ロナルド・レーガンとのイデオロギー的な同盟関係により,グローバルな政治指導者ともなった.

しかし,彼女は自由市場の聖人ではなく,プラグマティックな政治家であったから,福祉国家の支柱を破壊するようなことはしなかった.彼女の政府もGDP39%を超える支出を続けていた.

それにも関わらず,サッチャーが首相として政治を転換した遺産は顕著なものである.為替管理の自由化,所得税の大幅引き下げ,労働市場の自由化,労働組合の法的地位の変更と,1984-85年,炭鉱ストライキにおける組織された戦闘的労働者の撃退,地方の公共住宅売却,国有化された多くの産業の民営化,1986年のビッグ・バンを含む金融自由化.

また,為替レートの維持から自由になった金融政策で,マネタリズムを採用した.ケインズ的な財政政策を拒み,金融政策を重視する.

EUにおいても重要な役割を果たし,1986年,単一ヨーロッパ市場によって,リベラルな経済学をヨーロッパに輸出しようとした.しかし,ヨーロッパの国家介入主義を嫌い,単一通貨に関しては強く反対した.

1980年代,90年代,2000年の最初の10年は,19世紀以来,イギリス経済がヨーロッパよりも,一人当たりGDPで高い成長を示した.その後の金融・経済危機は不平等や地域の衰退を示して,産業復興の成果を見失ってしまった.国家を分裂させるような強烈な政治家であったが,サッチャーの政治は今もイギリスを支配している.エド・ミリバンドの労働党も,1970年代の政策を支持することはない.その政治は世界に輸出され,特に,民営化の影響は今も続いている.

自由経済の復活に大きな貢献をしたが,そのテーマは今では新興経済において重視され,イギリス経済の復活も続かなかったのは,サッチャーの遺産と比べて,イギリスの不幸である.

FT April 8, 2013

Thatcher’s relentless focus to improve UK economy

By Chris Giles, Economics Editor

FT April 8, 2013

The Iron Lady towers over modern Britain

By Janan Ganesh

FT April 8, 2013

Radical Margaret Thatcher showed the power of character

By Philip Stephens

物事を変える指導者には,信念,勇気,幸運が必要だが,サッチャーはこのすべてを豊富に持っていた.あれほどのガッツを持った政治家はいなくなったし,その激しさは,おそらく毛沢東主義者にも劣らなかった.

FT April 8, 2013

Margaret Thatcher: Right about nearly everything

By NiallFerguson

反対派は今も認めたくないだろうが,彼女は多くの点で正しかった.偉大な政治家の多くがそうであるように,彼女も自国より外国で高く評価されている.

労働組合,国有産業,インフレーション,そして外交政策,すなわち,フォークランド諸島,ゴルバチョフ,冷戦終結,ヨーロッパ,単一通貨,ユーロ圏.

っ唯一,彼女が間違ったのは,東西ドイツの再統一に強く反対したことだろう.しかし,この点でも,将来の歴史家や,現在もすでに東欧や南欧は,その正しさを感じているかもしれない.ドイツは野心的になった.

FT April 8, 2013

General strike call echoes Thatcher era

By Brian Groom

SPIEGEL ONLINE 04/08/2013

The Iron Lady

Margaret Thatcher Dies at 87

By Carsten Volkery in London

Project Syndicate 08 April 2013

Margaret Thatcher’s Lessons for Europe

Harold James

彼女はイギリスで非常に嫌われた.それは2つの敵と戦ったからだ.一方は労働組合,もう一方はエスタブリッシュメントだ.

イギリスの支配階級は,大恐慌と第2次世界大戦の経験に由来する協定を守っていた.高い税率と莫大な資源再分配を条件に,自分たちのねじれた儀式,時代遅れの階級制,多くの身分を維持していた.その結果,非効率がはびこり,労働争議が頻発し,生産性は低く,経済は停滞し続けた.

サッチャーは,アメリカ的な生活の最良の側面を取り入れることで,そんなイギリスを改造しようとしたのだ.すなわち,個人の指導力と起業家精神,何でもやってやるという生活スタイルだ.

VOX 8 April 2013

The economic legacy of Mrs Thatcher

Nicholas Crafts

NYT April 8, 2013

Thatcher Freed Market Forces, and Europe Is Still Adjusting

By JOHN F. BURNS and ALAN COWELL

NYT April 8, 2013

Margaret Thatcher, Conservative Who Reforged Britain, Dies at 87

By JOSEPH R. GREGORY

NYT April 8, 2013

The Vigorous Virtues

By DAVID BROOKS

NYT April 8, 2013

Thatcher’s Divided Isle

By A. C. GRAYLING

NYT APRIL 8, 2013

Did Thatcher Turn Britain Around?

Paul Krugman

サッチャーは,瀕死のイギリス経済をよみがえらせた.そう,多くの者が断言するが,本当にそうなのか?

なぜ,その成果が現れるのに長い時間を要したのか? と問うべきである.むしろ,1990年代の金融部門の膨張が幸いした(後に災いとなった)だけではないか?

NYT April 8, 2013

Thatcher Fiscal Policies Are Still a Tough Sell for Europe

By JOHN F. BURNS and ALAN COWELL

FP APRIL 8, 2013

How Margaret Thatcher affected international relations theory

Posted By Daniel W. Drezner

FP APRIL 8, 2013

Think Again: Margaret Thatcher

BY CHRISTIAN CARYL

WSJ April 8, 2013

The World-Changing Margaret Thatcher

By PAUL JOHNSON

WSJ April 8, 2013

The Genius of Thatcherism Will Endure

By ANDREW ROBERTS

WP April 8, 2013

Margaret Thatcher: In every sense a leader

BLOOMBERG Apr 8, 2013

How Thatcher Saved Britain

By Clive Crook

The Guardian, Tuesday 9 April 2013

Clearing up the mess that Margaret Thatcher left

Frances O'Grady

The Guardian, Tuesday 9 April 2013

Margaret Thatcher made the north of Ireland a more bitterly divided place

Gerry Adams

FT April 9, 2013

Thatcher knew that foreign policy begins at home

Richard Haass

SPIEGEL ONLINE 04/09/2013

Tough Capitalist

For Better or Worse, Thatcher Changed World

By Wolfgang Kaden

WP April 9, 2013

Margaret Thatcher’s vigorous virtues

By George F. Will

WP April 9, 2013

Margaret Thatcher, a bold, decisive leader

By Eugene Robinson

WP APRIL 9, 2013

Margaret Thatcher’s revolution

By David Ignatius

彼女はカリギュラの眼とマリリン・モンローの唇を持っている,と,ヨーロッパの主要国を指導した最後の社会主義者であったフランソワ・ミッテランはサッチャーのことを語った.彼女こそ,ガバナンスとしての社会主義を埋葬するのに手を貸したのだ.

サッチャー以前には,イギリスの経済問題がしばしばその国民性のせいにされた.それゆえ改善策はない,と.サッチャーは,国民性を問題の一部と考え,それは経済原則を受け入れることで変えられる,と考えた.ロンドンのハイゲート墓地で眠るマルクスの霊は,このトーリー版経済決定論を聴いて,身をよじったことだろう.

WP APRIL 9, 2013

Margaret Thatcher recognized the big issues

By Anne Applebaum

サッチャーが最高の成果を示したのは,大きな問題を扱うとき,シンボリズムやレトリックによって政治を動かすときだった.そして,細かいニュアンスは苦手だった.イギリスの内では,暴動を招き,仲間の助言を無視する女性だった.しかしイギリスの外では,アメリカ,東欧,ソビエトで,それらが流行になる前から,反共産主義と大西洋同盟の偶像であった.

Global Times | 2013-4-9

Iron lady pioneered pragmatic approach to China’s changes

By Global Times

The Guardian, Thursday 11 April 2013

The Iron Lady is dead but Thatcherism lives on

Gary Younge

1964年,Martin Luther Kingはノーベル平和賞を受賞したが,その後の調査でもアメリカ国民の63%は彼を好ましくないと見ていた.彼は市民権運動の指導者であったが,国民の85%は,黒人が「人種間の平等を急いで求めすぎている」と考えていたのだ.また,ベトナム戦争にも公然と反対していた.キングが暗殺されて6日後に,下院で「人種間の不和や紛争を煽り,・・・(暗殺事件に至る)邪悪さの種をまいた」と,彼自身を非難する議員がいた.

キングに対する非難が消えて,国民の宝と祝福されるまでに,45年が経っていた.1986年に,彼の誕生日は祝日になった.「われわれは過去を観るとき,現在の視点でのみ,それを理解する.」と,歴史家EH Carrは,『歴史とは何か』で述べている.キングをアメリカ人が評価するようになったのは,人種による隔離を法律が間違いと認め,ベトナム戦争は失敗であった,富の再分配に関してもキングが述べたことは正しかった,という合意が形成されてからである.

マーガレット・サッチャーも同じである.彼女の死は,分極化した,激しい論争と問題を引き起こした.彼女の示した問題は,今なお分断を生じており,その決意が解決をもたらしたと信じる者ばかりではないからだ.失業や不平等が増大する今,保守党の率いる政権は緊縮策を採って,社会的な移動は減り,貧困が広がり,福祉が削減されている.彼女の死を巡って,過去だけでなく,現在の問題に関して,代理戦争が過熱している.

サッチャーの生き続ける遺産とは,市場化,民営化,経済的階層分化,社会の解体,である.その犠牲者と受益者は,まだ生きているだけでなく,これからも生まれるだろう.BBC放送には,サッチャーに関する報道が偏っている,という苦情が殺到し,The Telegraphは,サッチャーについて述べたウェブサイトを閉鎖した.あまりにも悪用されたからだ.「魔女が死んだ」という『オズの魔法使い』の曲がチャート上位に現れた.

サッチャーは死んだが,サッチャリズムは生きている.それはイデオロギー的に批判されたが,その問題を解決することも,回避することも,まだわれわれにはできていない.

The Guardian, Thursday 11 April 2013

Throw out the myths about Margaret Thatcher

Ken Livingstone

FT April 11, 2013

Energy: More buck, less bang

By Sylvia Pfeifer and Guy Chazan

FT April 11, 2013

Europe, sterling and Thatcher’s handbag

By Philip Stephens

WP April 11, 2013

Could Margaret Thatcher’s reforms work in 2013?

By Fareed Zakaria

私はマーガレット・サッチャーを崇拝して育った.それは当然だった.1970年代のインドでは社会主義的な経済学が機能せず,サッチャー型のラディカルな改革に向いていた.しかし,それには12年を経て,深刻な経済危機が起きるまで,待たねばならなかった.

当時は,アメリカでも税率が70%台,政府が通信,輸送,金融を厳しく規制していた.西側世界全体で,大規模な政府介入は成長と繁栄に必要だ,という合意があった.今日の世界は全く異なる.Peter Mandelsonは,1990年代に躍進する新しい労働党を築いたが,「我々は皆,サッチャー派だ」と宣言した.

サッチャーの考えがそれほど反響を呼んだのは,その時代の諸問題に効果的な解毒剤となったからだ.1970年代の西側世界は,オイル・ショック,賃金上昇,インフレの爆発,低生産性,低成長,労働争議,高い税率,動脈硬化の国有企業,といった負荷によって動揺していた.

それらは,今の我々が直面する諸問題ではない.

アメリカやヨーロッパの労働者たちは,技術とグローバリゼーションによって低下する賃金を維持するのに必死である.西側経済は,他国における素晴らしいインフラ整備と,教育・訓練の改善によって,厳しいグローバル競争に直面している.彼らは,好調な資本と不調な労働,という2車線経済になっている.大卒は繁栄するが,優れたスキルのない者は後退し,結果だけでなく機会における不平等が拡大している.

マーガレット・サッチャーは「信念の政治家」であった.しかし,その成功は,彼女の信念が時代の中心問題に対応していたからである.現代の問題は,そうではない.

Project Syndicate 11 April 2013

The Human Thatcher

Chris Patten

VOX 11 April 2013

Mrs Thatcher’s economic legacy

John Van Reenen


YaleGlobal, 8 April 2013

To Lift Afghan Women, Educate All

Susan Froetschel


l  アメリカ衰退論のチェック

WP April 8, 2013

An American future filled with promise

By David H. Petraeus and Michael O’Hanlon

FP APRIL 8, 2013

Head of the Class

BY RUCHIR SHARMA

アメリカ経済は衰退しない.中国でさえ,今後,アメリカの成長に及ばないだろう.


l  次のグローバル・アーキテクチャ

FT April 9, 2013

Prosperity requires more than rule of law

By JohnKay

Project Syndicate 09 April 2013

The Global Growth Quest

Mohamed A. El-Erian

Project Syndicate 10 April 2013

What the World Needs from the BRICS

Dani Rodrik

BRICSの政治や経済は大きく異なっており,一つのグループを表す概念ではない,とJ.ナイは批判した.

BRICSが合意して,発展途上諸国のインフラに長期の融資を与える開発銀行を設立し,流動性の不足に苦しむ諸国に融資枠を設けることになった.しかし,これらは1950年代の開発経済学が主張したことである.その後の開発論では,もっとさまざまな問題が,国によって異なる解決策を提案している.しかも今では,国境を超える資本移動の多すぎることが問題になっている.

BRICSが本当に重要な意味を持つとしたら,その人口規模と成長の可能性を基に,世界経済の課題に対して,自分たちの考え方,価値を明確にして,新しい解決のための国際的枠組みを提案し,責任ある行動をとることである.グローバルな経済アーキテクチュアの健全さや地球温暖化の防止策で,世界の行動は遅れており,その大きな代償を支払うのはBRICSである.

アメリカはリベラルな,ルールに依拠した,多国間体制を構築した.ヨーロッパは民主的価値と社会的連帯,最近,問題に苦しんでいるとはいえ,EUという制度を構築した.しかし,こうした旧大国は,新しいグローバルな秩序を将来に構築する正統性を持たないし,それにふさわしいパワーもない.BRICSが,旧秩序への不満を共有することにとどまらず,新しいグローバル・エコノミーに関するビジョンを示すことだ.

彼ら自身の経験から,その特徴はすでに表れている.指導者として行動せよ.


l  台湾の方針転換

FT April 9, 2013

Taiwan: Time to change gear

By Sarah Mishkin and David Pilling


l  フォークランド諸島

NYT APRIL 9, 2013

The Falklands Without Thatcher

31年前,サッチャーは,アルゼンチン軍の侵攻からフォークランド(マルヴィナス)諸島を防衛する決断をした.イギリスはフォークランド諸島をどうするべきか? アルゼンチンに返還する.あるいは,もう一つの香港になる.


l  メルケルのドイツ

FT April 10, 2013

Germany: Angela’s choice

By Quentin Peel


l  歴史のポートフォリオ

Project Syndicate 10 April 2013

The Use and Abuse of Monetary History

Barry Eichengreen

中央銀行には2つのタイプがある.1つは,攻撃型.もう1つは,沈着型である.もちろん,前者はアメリカ連銀であり,後者はECBだ.

その違いは,社会の歴史的な経験から生じた,という説明をよく聞く.1930年代の大恐慌で,アメリカ連銀は経済が崩壊するのを放置した.そのことがアメリカの中央銀行家の意識に強く残っている.次の不況を起こさないためには,攻撃的に行動する.

他方,ヨーロッパの金融政策を決定しているのは1920年代のハイパーインフレーションである.それには,中央銀行が財政赤字を許した,1970年代,80年代の記憶も加わった.

金融政策に限らず,他の政策,例えば外交でも過去の類推が重視される.リンドン・ジョンソン大統領は,ベトナム戦争で,ミュンヘン(ヒトラーへの宥和政策)の類推を用いた.そして,外交の研究で重要な結論は,それがしばしば間違いであった,ということだ.類推は「適合」していなかったのだ.

アメリカ連銀も,ECBも,もっと異なる時期について類推すれば,異なる政策を選択したであろう.少なくとも,ジョン・F・ケネディー大統領がキューバ・ミサイル危機でやったように,歴史の事例を一つの「ポートフォリオ」として整理し,現状にふさわしい選択肢を慎重に考慮する姿勢が必要だ.


l  中国へのチェック

FT April 10, 2013

Keeping China’s fragilities in check

NYT April 10, 2013

In China, Feudal Answers for Modern Problems

By YU HUA

FT April 11, 2013

Tackling graft should be China’s priority

By Roderick MacFarquhar

BLOOMBERG Apr 11, 2013

China’s Unlikely Rival: Japan

By William Pesek

WSJ April 11, 2013

China Belongs in the Pacific Trade Talks

By DAVID DREIER


NYT April 10, 2013

Child Migrants, Alone in Court

By SONIA NAZARIO


l  オバマの予算案

FT April 11, 2013

Obama’s budget signals the retreat of US government

Jeffrey Sachs

NYT APRIL 11, 2013

The Flaw in Obama’s Budget Approach

By SIMON JOHNSON

WSJ April 11, 2013

Alan Blinder: A Good Grade for a Responsible Budget

By ALAN S. BLINDER

WP April 12, 2013

Obama’s lazy budget

By Robert J. Samuelson

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The Economist March 30th 2013

Can India become a great power?

The Cyprus bail-out: This septic isle

Egypt: It’s the politics, stupid

Charlemagne: North is north

(コメント) インドは独立時に軍隊を政治から切り離すことに成功しました.しかしそのせいで,大国としての役割に必要な戦略的な思考を失ったようだ,と記事は注意します.

キプロスとエジプトの政治=経済危機は,その正しい解決策を見出すために,優れた政府の登場を待っています.しかし,間に合うのか?

フィンランドは確かに構造改革において優れた成果を上げたけれど,ユーロ圏内の調整の難しさは,もっと黒字諸国も理解し,赤字国の調整に協力しなければなりません.

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IPEの想像力 4/15/13

カリギュラとマリリン・モンローの両性を示すサッチャーの葬儀は,政治,の難しさを表しています.マイケル・サンデルは,「正義」に関する講義に人々が惹かれるのは,正義を語らなくなった政治家に対する不満が強いからである,と述べています.政治問題の市場化,数学化が進めば,墓場からサッチャーが這い出してくるでしょう.

ソロスの明晰な推論と提案に感銘を受けました.

ドイツのメルケル首相は,ユーロ圏を離脱するより,ユーロ債の発行を受け入れて,赤字諸国の構造改革に協力し,銀行同盟の成功を目指すことで,新しい政治課題を国民に示すときでしょう.ユーロ圏は,ユーロ債をめぐる対立より,財政や構造改革をめぐる政治家たちの相互不信,コスト分担の合意されたルールが欠けていることに制約されているのです.メルケルは,その呪縛を解く鍵を見つける必要があります.

「悪夢から覚める」という表現に,ガバナンスの真価が示されます.イタリアの予算赤字は消え,緊縮策よりも財政刺激策が可能になり,債券はデフォルトの不安を払しょくして,金融機関も資産が改善し,積極的に融資し始める.そうなれば,ECBもアベノミクスに負けずに,ユーロ高を阻止し,ドイツのインフレ率ではなく,ユーロ圏のインフレが起きるまで,積極的に金融緩和するでしょう.ドイツなどでは賃金が上昇し,労働集約的な関連産業が周辺諸国への移転を早めるのです.

北朝鮮の脅しは茶番劇である,と冷笑して,ソウルの野外スタジアムに集まった若い大観衆がステップを踏んでガンナム・スタイルを踊る・・・そんなテレビ・ニュースの映像に不安を覚えました.たとえ茶番劇でも,軍事衝突の危険が高まっているのは本当だ,と思うからです.

権力継承のために,核兵器を使った危機の限界を測っている北朝鮮の指導部が,テレビ映像で流れるガンナム・スタイルの侮蔑的な調子を,許せないと思うかもしれません.かつて韓国の哨戒艇を撃沈し,40名以上の犠牲者を出した以上,それを超える危機を望んでも不思議ではありません.ソウルに対して核兵器を使わないまでも,弾道ミサイル,公共機関や輸送・エネルギー部門へのハッキング,化学兵器,など,戦争状態を確認することが目的ではないでしょうか?

黒田総裁がどれほど金融政策の転換を唱えても,ユーロ債が発行されてヨーロッパの景気が回復し,あるいは,北朝鮮の危機が軍事衝突に至るなら,アベノミクスの将来は不透明になり,旧来のデフレが再現するでしょう.

つまり・・・ 政治とは何でしょうか?

Reviewを読むとき,きっと,こう思うでしょう.富をもたらす仕組みをもたらす支配を確立し,維持する儀式が続くことを,私たちは「政治」と呼ぶのだ.しかし,富と支配とが一致しないとき,それを変えるアイデアが旧社会を破壊する力と結び付き,革新を実現する.それは醜く,暴力的な過程であるかもしれません.その瞬間にも,政治は新しい協調のパターンを模索します.

変化する富の原理と分配の原理が,サンデルにとって,倫理的な問いを発し続けます.合理的な答えではなく,対話することで問題に関する共感と合意を広げる,というロマンチックな政治論の復活です.

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