IPEの果樹園2013

今週のReview

4/15-20

 

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日銀の戦い ・・・北朝鮮のゲーム ・・・政治論争を回復する ・・・ユーロ危機の決断 ・・・マーガレット・サッチャーとその遺産 ・・・次のグローバル・アーキテクチャ ・・・歴史のポートフォリオ

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  日銀の戦い

FT April 4, 2013

BoJ revolution: five things you need to know

by Chris Giles

黒田総裁は「大量のmassive」資金を供給すると述べた.中央銀行総裁は,ふつう,こうした言葉を使わない.そこで5つの疑問が浮かぶ.

1.どれくらい大きいのか? 2.通貨戦争に火をつけるか? 3.他の中央銀行は追随するか? 4.日銀の独立性を損なわないか? 5.うまく行くか?

債券保有者は利回りの減少に反発して支出を増やし,円安によって輸出が伸び,将来のインフレを予想して現在の購買を刺激される.政府も国債の増発による不安を抑えられるから,支出を増やす.日本の生産力に余剰がある限り,それは拡大のスパイラルを続ける.

その反面,日本の人口は減少し,高齢化が進んで,労働力が減少している.

Project Syndicate 05 April 2013

The Promise of Abenomics

Joseph E. Stiglitz

日本の経済パフォーマンスを冷静に見れば,労働者一人あたりの生産は正規転換期以降,増大してきた.それは安倍政権以前の2012年に年3.08%であり,アメリカ0.37やドイツ0.25を大きく超えている.

アベノミクスは,欧米でも多くのエコノミストが求めていること,すなわち,金融政策,財政政策,構造改革を組み合わせた包括的な戦略である.

また,日銀の総裁になった黒田東彦は,財務省官僚とアジア開発銀行総裁としての豊富な経験がある.東アジア危機の際に,アメリカ財務省やIMFの伝統的な思考が失敗するのを直接に味わった.その彼が日本のデフレを解消し,インフレ率を2%にすると約束している.

しかしデフレがそれほど重大な影響を与えているか,明確な証拠はない.他方で,円安はすでに進んでいる.金融政策の相互依存を考えると,アメリカ連銀の量的緩和は,他国における通貨価値増大を避けるために,こうした金融緩和を促す.将来は,より緊密な金融政策の協力体制ができるかもしれない.しかし今は,まだこのような形で日銀が応えている.金融政策で重要なことは,緩和が十分に融資の拡大につながらない点を改善する方策である.たとえば,住宅債務者が低利で借り換え,中小企業も融資を増やせる対策が必要だ.

財政刺激策を批判する者もいるが,それは間違いである.日本の財政刺激策は需要の水準を維持するのに役立ったし,インフラの質は優れている.

日本政府に必要なことは,規制緩和より,正しい規制によって,例えば雇用の慣行を改め,もっと競争を促すことである.政府は結果を管理できず,それを促すだけである.しかし,サービス部門の生産性改善,特に医療と工業力とのリンクは有用である.

もっと女性を雇用し,その活躍を可能にすること,もっと労働者の英語力を高めて国際ビジネスに生かすこと,など,日本経済の若返りを促す戦略は,日本の労働者の教育水準,製造業のデザイン力,世界で最もダイナミックな経済に囲まれているという条件を考えれば,十分に成功する理由がある.

FT April 5, 2013

Bank of Japan opens floodgates

FT April 5, 2013

Kuroda’s move will unleash copycat loosening

Lorenzo Bini Smaghi

FT April 7, 2013

Japan takes an introductory course in Abenomics

By RobinHarding

Project Syndicate 08 April 2013

Abenomics and Asia

Lee Jong-Wha

アベノミクスは消費者や投資家に自信を回復させている.しかし,他国は不安を感じている.その政策がもっぱら円安を促して,他国を犠牲にして国内の景気回復を実現するように見えるからだ.日本はグローバルな「通貨戦争」を煽る,と非難されている.

日本が15年に及ぶデフレを脱却して,景気回復を実現することは,他国にとっても望ましい.問題は,それが世界経済や,特に周辺のアジア諸国の経済を損なわないか,ということだ.アベノミクスはもっと国内の改革に重点を置くべきなのである.

日本の経済停滞の根本原因は,その金融システムが機能せず,民間需要が乏しいことだ.1990年にバブルが崩壊して,日本の金融システムは資産を減らした.しかも,その後の資産市場の回復が遅いために企業や家計のバランスシートが痛んだままで,銀行は積極的な融資ができなかった.

日本だけが通貨を安くして輸出を伸ばそうとする国ではない.多くの新興諸国の政府・通貨当局が市場に介入し,競争力を高めようとしている.しかし,それは近隣窮乏化政策であり,通貨戦争や保護主義をもたらすことによって,だれの利益にもならない.

また,日本,アメリカ,ユーロ圏の無制限量的緩和が不安定な資本移動を生み,アジアの新興市場にバブルをもたらす危険がある.中国の政策担当者はインフレや不動産バブルに深刻な関心を寄せている.

通貨市場への介入,保護主義,資本規制を避けるには,アジア諸国が一層の為替レートに関する合意形成,金融政策に関する監視と政策協調を実現することが望ましい.それによって,アジアの域内相互貿易が発展するような,建設的で安定した条件を維持できるのだ.

FT April 9, 2013

Japan’s unfinished policy revolution

By Martin Wolf

アベノミクスは成功するか? これは金融部門の債券保有と実物投資の交換を促す政策である.日本の企業部門が形成する構造的な貯蓄過剰を解消できるかどうか,がカギである.金融政策は,短期的に,その解消を促す.しかし,下手をするとインフレ期待が破滅的に高まって,日本はハイパーインフレーションに進む.極端な円安は為替規制を必要とするかもしれない.

問題の根本は,企業部門が機能せず,過剰貯蓄を経営者が失敗の隠ぺいに使っていることだ.日本の民間貯蓄は,ほとんどが企業部門から生まれるが,投資機会に比べて大きすぎる.2011年,GDP29.5%が貯蓄されたが,アメリカでは16%だった.マイナス金利は,短期的に日本の投資を増やす(貯蓄が減るから)が,長期的には日本の投資は減少する.家計部門は貯蓄も借り入れも少ないから,結局,外国と政府部門がその過剰貯蓄を吸収する.

この20年間,政府は貯蓄を吸収するために莫大な財政赤字を続けてきた.他方,対外黒字は減少した.企業部門の過剰貯蓄を吸収し,しかも財政を赤字から黒字にするなら,必要な経常収支黒字はGDP10%にもなるはずだ.それは無理だろう.

日本は構造改革を通じて,この問題を解決するしかない.企業の過剰貯蓄を解消し,投資機会を増やすように成長を高めることだ.アメリカに比べて,日本の一人当たりGDP76%でしかないから,改革の余地はある.企業は貯蓄を投資に,あるいは,配当に向けるか,政府によって課税されるべきだ.消費や増やすべきなのに,計画されている増税が消費に対するものであるのは間違っている.

安倍政権は,こうした方針転換を行いそうにない.

そして,中国も注意しなければならない.投資に偏り,消費を抑制した成長は,豊かさへのキャッチアップを目指す戦略であるが,その後,深刻な問題を生じる.

FT April 11, 2013

BoJ to pursue inflation target ‘flexibly’

By Jonathan Soble in Tokyo and Chris Giles in London

FT April 11, 2013

Market Insight: Japan should heed lessons of Volcker’s war

By Gillian Tett

30年前,アメリカ連銀議長であったPaul Volckerボルカーはインフレを抑えるために金融引き締めの賭けに出て,金利を最高で21.5%まで引き上げた.彼の名は歴史の教科書に載っている.そして黒が東彦は,デフレを止めるために,同じようなギャンブルに挑む.それには大きな経済的・政治的リスクがともなう.

ボルカーは,中央銀行のエチケットとして,その同僚たちの政策を直接に批判しない.しかしNew York Universityの論争で,その不安を隠すことはできなかった.「中央銀行がもはや中央銀行のように行動していない.」・・・「彼らが中央銀行の基本的な<機能>を見失うのは危険である,と私は思う.」

現在,中央銀行にはインフレを抑え,成長や雇用を高めることが求められている.しかし,ボルカーにとって,中央銀行の<機能>とは,「通貨の価値を維持すること」である.この価値機能は,インフレ目標なども,それと矛盾しない.ボルカーは,目標を一つに絞ることで,中央銀行はその能力を高められる,という.

なぜなら,今の金融政策では,中央銀行自身がさまざまな資産を購入して保有し,その資産価値が減少するリスクを冒しているからだ.そして,それを容認すれば,政治家たちが中央銀行を利用しようとするだろう.ボルカーは,適度にインフレを刺激して景気を刺激する,という日銀が採用したような考え方を強く嫌うのだ.

しかし,投資家はボルカーが昔の戦争を覚えていっているだけだ,と無視しているようだ.インフレの兆しは見えず,長期金利も低い.

WSJ April 11, 2013

Japan's Best Stimulus Bet: Foreign Investment

By FREDERIC NEUMANN AND IZUMI DEVALIER


l  清算主義者

NYT April 4, 2013

The Urge to Purge

By PAUL KRUGMAN

大恐慌のとき,影響力のある多くの人々が,政府は(経済危機の)ダメージを抑えることもすべきではない,と主張した.当時のメロンAndrew Mellon財務長官は,「労働者を清算・解雇し,株式を清算・暴落させ,農場を清算・売り払うように」と勧めたのだ.著名なエコノミストであったJoseph Schumpeterも,「人為的な刺激策は不況がなすべき仕事を残してしまう」と景気回復策に反対した.

しかし今も,メロン主義は生きている.その最深の例は,レーガン政権の予算局長であったDavid Stockmanの新著だ.その内容は標準的な清算主義であり,新しいものではない.債務が大きいことは,我々が借金で消費しすぎた,という問題ではない.金融システムが債務を膨らますことを規制するべきなのだ.

FP APRIL 5, 2013

David Stockman’s Dystopia

BY JARED BERNSTEIN


l  北朝鮮のゲーム

SPIEGEL ONLINE 04/05/2013

Crisis in Korea

Obama Must Change US Approach to Stop Kim

A Commentary by Andreas Lorenz

FP APRIL 5, 2013

How to Stop a Nuclear War

BY MICHAEL DOBBS

軍人に事前の権限移譲を認めることは危険である.キューバ・ミサイル危機から学ぶなら,北朝鮮には以下のように対処するべきだ.

1.一つの核兵器がすべてを変える.使用してはいけない.2.エスカレーションを避ける.3.不測の事態に注意しておく.4.「危機管理」の限界を知る.5.自分の発言や評価に縛られるな.6.敵と対話せよ.7.封じ込めは正しい答えだ.共産主義は軍事的に敗北したのではなく,経済,文化,イデオロギーにおいて敗北したのだ.

WP April 6, 2013

South Korea has already won

By Max Fisher

The Observer, Sunday 7 April 2013

Is North Korea's threat more than posturing this time?

Peter Beaumont, chief foreign editor, the Observer

FP APRIL 8, 2013

Seoul food for thought

Posted By Stephen M. Walt

北朝鮮に対する好ましい政策は見つからない.アメリカの対応は,よく知られた「しっぺ返し」戦略である.北朝鮮が軍事的な攻撃を行えば,その体制が破滅に至ることを教えて,抑止しているのだ.

この戦略は正しいと思うが,別の意味で,アメリカ政府は対応を再考しなければならない.それは,アジアの政治をアメリカだけが解決する役割を担うのではないことだ.アジアの同盟諸国がふさわしい役割を担うように注意しなければならない.

FP APRIL 8, 2013

Change We Can’t Believe In

BY STEPHAN HAGGARD

The Guardian, Tuesday 9 April 2013

In this nuclear standoff, it's the US that's the rogue state

Jonathan Steele

The Guardian, Tuesday 9 April 2013

North Korea: Russian roulette with China

Editorial

NYT April 9, 2013

In U.S., South Korean Makes Case for Nuclear Arms

By DAVID E. SANGER

NYT April 9, 2013

Stay Cool. Call North Korea’s Bluff.

By ANDREI LANKOV

FP APRIL 9, 2013

Mad Men

BY DAVID ROTHKOPF

Project Syndicate 09 April 2013

North Korea’s Step Too Far?

Zhu Feng

BLOOMBERG Apr 10, 2013

Why Capitalism Won’t Change North Korea’s Regime

By Andrei Lankova professor of history at Kookmin University in Seoul

韓国も台湾も,1960年には,アフリカ諸国と同様の貧しい国であった.そして,政府は民主的ではなく,リベラルでもない,軍事政権や独裁体制であった.彼らには資源がなく,輸出によって生きるしかなかった.その成長モデルは世界の予想を超えて成功した.

権威主義的な「開発独裁体制」の第2世代は,革命の第1世代が去った中国とベトナムであった.彼らは異なるイデオロギーを唱えていたが,ある意味で,一層,臆面もない過酷さで,先の開発独裁モデルを模倣した.そして成功したのだ.

しかし,北朝鮮は模倣しなかった.なぜなら,少なくとも15倍の高い生活水準を実現した隣国が,同じ言葉,同じ民族として横に存在したから.北朝鮮の政治エリートたちは,非常に合理的に,韓国と同じ開発モデルを採用することが危険であると判断したのだ.国民は,失敗した政府に従わなくなるだろう.それは自殺行為だ.東西ドイツの格差でさえ,3倍程度であった.

北朝鮮が成長するには,外交の資本や技術を受け入れる必要がある.しかし,情報交換や輸送・移動に厳しい統制がある国で,そのような開発は不可能である.中国共産党の多くの党員たちが,自分や親族が企業の重役になって,成長を自分たちの蓄財に利用しているのは公然の秘密である.しかし,北朝鮮はその可能性を持っていない.もし北朝鮮が成長するとしたら,企業の主要ポストはすべて韓国からのスタッフが占めるだろう.資本,教育,経験,政治的コネで,彼らの方が大幅に優れているからだ.

北朝鮮の支配層は,また,自分たちの支配の野蛮さをよく知っており,権力を失ったときの報復を恐れている.もし「人権」を国民に説明すれば,と,かつて北朝鮮の官僚は西側外交官に語った.・・・彼らはすぐに私たちを殺すだろう,と.

彼らは,ジョージ・オーウェルの1984年を生きるしかない.

guardian.co.uk, Wednesday 10 April 2013

Korea is the focus, but this is China versus Japan

Timothy Mo

北朝鮮や朝鮮半島は,中国と日本の間で行われている資源・エネルギーの支配をめぐる争いの一つである.

FT April 10, 2013

The perils of playing nuclear poker with a novice

By David Pilling

世界で最も注目されるポーカー・ゲームとなった朝鮮半島は,まだ誰も新しい北朝鮮の少年と話したことがない,という問題を抱えている.

ゲームの最初はありきたりの様子であった.12月にキム・ジョンウンがミサイルを発射し,オバマは「アジア旋回」を意識して,早速,国連制裁をまとめた.ジョンウン少年は核実験で対応し,さらに制裁が加わった.

その後,掛け金は急激に積み重なる.オバマがB2, B52でキムへの空爆能力を示すと,北朝鮮は韓国との停戦を破棄し,戦争状態を明確にして,核による先制攻撃の権利を主張した.そして今週,さらに掛け金を引き上げて,キム・ジョンウン少年は「熱核戦争」が起きるソウルから外国人は退去するように求めた.また,外貨を得る上で貴重なケソン工業団地を閉鎖している.

この少年は,とんでもない素人なのか? それとも,ポーカー・ゲームの天才か?

Foreign Affairs最新号で,2人の専門家が,若い指導者はエスカレーションによってしか権力を保持できないと確信しているから,核戦争の可能性は少なくない,と警告している.

またAndrei Lankovは,2点を指摘して,その悪化するシナリオを予想する.1.キムは2010年に韓国の哨戒艇を撃沈し,韓国人46名を死亡させた.そのとき,韓国は報復しなかったが,今度,同じようなことが起きたら,軍事的報復は確実だ.2.キムは,代償的な提案に全く関心を示していない.北朝鮮が核保有国として承認されることだけを,交渉不可能な要求として示すだけである.そして,西側がこれを受け入れることは難しい.

ワシントンは北京に圧力を期待する.しかし,習近平の明確な発言にもかかわらず,北朝鮮の姿勢は変わらない.中国の研究者は,キムが望んでいるのは,むしろ中国に従わない,中国式の改革や資源採取にだけ利用されたくない,という姿勢である,と見る者もいる.

今は,緊張状態を緩和すること.そして,いずれ誰かが,この少年と話し合うしかない.

FP APRIL 11, 2013

Will Chinese Troops Cross the Yalu?

BY ROBERT A. WAMPLER

BLOOMBERG Apr 11, 2013

How to Defeat North Korea

By Andrei Lankov

北朝鮮問題に,簡単な,すぐにできる答えなどない.

より多くの援助は好ましいが,彼らが核兵器を手放すことはないだろう.アメリカ政府が安全を保障しても,その言葉を信用しない.

北朝鮮のことを忘れ,無視しておくのはどうか? 魅力的だが,現実的ではない.その間に,北朝鮮は核兵器を生産する.ミサイル技術の改善する.彼らはその技術を他国にも売るだろう.

北朝鮮の行動を変えるには,その体制の性格を変えるしかない.問題は,それがどうすればできるのか,である.

東欧やソ連が崩壊したことから,何を学べるだろうか? 共産主義体制の命運は,その経済的な非効率さを国民の多数に隠ぺいし続ける能力にかかっている,と言える.もしソ連が,北朝鮮ほどの厳しい孤立と抑圧を実現していたら,崩壊しなかったかもしれない.

北朝鮮のプロパガンダは,韓国の繁栄を否定する,という難問を抱えていた.その情報が正しく伝わるなら,北朝鮮の体制は維持できなくなる.それには3つの経路があるだろう.1.知識人や文化人,技術者,エリートの交流.2.ケソン工業団地や,DVDプレーヤー,携帯電話など,公式のルート以外で伝わる情報,3.北朝鮮からの難民が非公式に維持している家族との連絡手段.

しかし,東欧の革命と異なるのは,北からの難民が反体制派の知識人などではなく,むしろ教育を受けていない,貧しい農夫である,という点だ.彼らは体制に変化をもたらすことなどできない.しかし,彼らを韓国社会に受け入れ,就業や教育を支援することが重要である.

次第に,北朝鮮の知識人や専門家が逃げ始めるだろう.そして北朝鮮が崩壊するに至るなら,彼らが北に戻って,故郷の再生に貢献するのである.南では何が実現できており,現代世界はどうなっているのか,彼らが伝えるはずである.今,彼らに投資することが,それを可能にする.


l  資本主義と紛争

guardian.co.uk, Friday 5 April 2013

Law and disorder: the destructive dynamic of America's segregated cities

Gary Younge in Chicago

NYT April 6, 2013

In History Departments, It’s Up With Capitalism

By JENNIFER SCHUESSLER

FT April 9, 2013

Detroit shows way to beat inner city blues

By Richard Florida


l  政治論争を回復する

FT April 5, 2013

Lunch with the FT: Michael Sandel

By Edward Luce

アメリカのメディアが「モラル・ロック・スター」と名付けたように,サンデルMichael Sandelは,スリラー作家やテレビ俳優のように多くの観衆を惹きつける.インドで彼の話を聞くために集まったのは,わずか5000人であったが,ソウルでは,野外スポーツ競技場に14000人が集まった.中国だけで,彼のオンライン講義を聴くために集まった訪問者が3000万人を超えた.しかし,その講義はソクラテス式の対話術である.

しかしなぜ,非常に異なる諸国で,これほど多くの聴衆があなたの講義を聴きに来るのか? と尋ねた.それに対して,サンデルはしばらく考えてから応えた.「公衆の討論において,どこでも強い不満があるからだ.正義や倫理,価値の問題について,議論が欠けている.・・・人々は,政治政党がこうした問題に答えていない,と考えている.」

1997年,サンデルは,京都議定書が環境問題に「取引可能な排出権」という仕組みを認めて,倫理的なスティグマ(負い目)を取り除いた,とエコノミストたちを非難した.エコノミストは,サンデルが市場の働きを理解していないと批判し,サンデルは,エコノミストが何にでも正しい価格を知っていると間違って主張している,という.こうした生活全体・社会の市場化をサンデルは批判するが,それは場所によって異なっており,アメリカと中国で最も市場が肯定的に受け入れられている.

グローバリゼーションに関してLawrence Summersと行った討論も有名だ.


l  ユーロ危機の決断

Project Syndicate 05 April 2013

Europe’s Procrustean Nightmare

Hans-Olaf Henkel

FT April 7, 2013

The ECB’s priority should be to fix southern Europe

By WolfgangMünchau

FT April 7, 2013

Cyprus reaches end of a long and sleazy road

By David Gardner in Beirut

BLOOMBERG Apr 7, 2013

Why Making Europe German Won’t Fix the Crisis

By Ivan Krastev and Georgi Ganev

ヨーロッパの経済危機は,ドイツのように成功した国と,ギリシャのように失敗した国があり,ギリシャがドイツと同じ政策を採るようになれば解決する,と考えるのは間違っている.

ヨーロッパの「ドイツ化」がユーロ危機の解決を意味しないのは,その財政健全化や労働市場・財市場の改革が,異なる政治・経済環境では全く異なる結果を導いた,ということでわかるだろう.すなわち,ブルガリアを観ることだ.

ドイツと同じように,2008年の金融危機の前,ブルガリアも数年間の慎重な予算,競争力改善のための改革,を行っていた.両国とも,危機直後は予算赤字を出したが,すぐにそれを抑制した.債務比率も低く,ブルガリアはすでに十分にドイツ的である.

しかし,その環境はまるで異なっていた.ブルガリアはドイツ的な冷静さで同じ政策を採ってきたが,その政権が電気料金の値上げに抗議するデモで,2月に崩壊した.ブリガリアはドイツの2倍半も貧困層が多かったからだ.

ドイツ人がEUを支持するのは,豊かな生活が変わらず,EUの政策をドイツが十分に支配できるからだ.他方,ブルガリア人がEUを支持するのは,自分たちの貧しい暮らしを変えることに失敗した政府への不満が強いからだ.ソ連崩壊と市場改革の後も,政治エリートや貧しい生活が変わらないことに憤慨していた.

EUは,これまで,最も効果的なキャッチ・アップ・マシーンとして成功してきた.しかし,ドイツ的な政策に収斂することは,異なる国に対して,このマシーンを破壊する意味を持っている.

The Guardian, Monday 8 April 2013

The Cyprus crisis is a symptom of what is rotten in the EU

Slavoj Žižek

Project Syndicate 08 April 2013

Three New Lessons of the Euro Crisis

Arvind Subramanian

ユーロ危機の結末は,通貨統合に必要だと以前からわかっていたこと,財政と銀行の同盟,に進むことなのか?

真の教訓は,もっと別の,驚くべきものだ.通貨同盟の根拠を支える2つの考え方,すなわち,外的なショックに対する脆弱性を抑える,非対称的なショックに対する制度的調整を行う,が,逆に内的なショックを強めた,ということである.前者は,より同質的な経済になることで,最適通貨圏に近づく.後者は,財政移転や労働力の移動性を高めることであった.

ここに皮肉な結果がある.通貨同盟は一定の非対称性を認めた結果であった.そして,資本移動の自由と異なる通貨背あることのリスクを取り除いてしまったことは,この非対称性の問題を強化することになっただろう.スペインに起きた住宅バブルがそうであった.また,ド・グローブが指摘したように,自国通貨を失った弱い国に,ECBが明確な介入を示すまで,自己実現的な流動性危機を繰り返す結果にもなった.

ユーロ圏内でドイツは,かつてアメリカが「途方もない特権」をドルによって得ていると非難されたような,同様の特権を,コストなしに手に入れている.ユーロ圏内の貯蓄が危機回避のためにドイツに集まり,それを低利で利用できるのだ.しかし,同時にユーロ圏の周辺部は崩壊しつつある.かつてのドイツ・マルクに比べて,はるかに弱いユーロで輸出を伸ばし続ける.

このユーロ圏の将来は,もちろん,政治が決める.

BLOOMBERG Apr 9, 2013

Cyprus Can Save Itself by Fleeing the Euro

By Megan Greene

Project Syndicate 09 April 2013

Germany’s Choice

George Soros

ユーロ危機は,EUを対等な諸国の自発的な共同体ではなく,容易に抜け出せない債権者と債務者の関係に変えてしまった.債務国がユーロ圏を離脱すると,債権国は巨額の損失を被る.債務国がユーロ圏にとどまるには,不況を強めるようなデフレ政策に耐え,債務負担が増し,従属的な地位にとどまる.その結果,危機は今やEUそれ自体を破壊するものになっている.

当初,ユーロ圏はどの国の債券も同じようにリスクがないものとして市場で取引されていた.しかし,ギリシャ危機後,デフォルトの妖怪が復活し,復讐ともいえる負担を求めて,重債務諸国を第三世界の外貨建て債務に苦しむ諸国と同じにした.

このことが理解できたら,その解決策も示されている.一言でいうなら,それはユーロ・ボンド(ユーロ債)だ.

もし新しい財政協定に従い,諸国がすべての既発債をユーロ債に転換できるなら,そのプラスの効果はまさしく魔法のように現れる.デフォルトの危険は消滅し,リスク・プレミアムがなくなる.銀行のバランスシートが即座に改善し,債務諸国の予算もそうだ.例えばイタリアなら,GDP4%が節約でき,予算は黒字化する.緊縮ではなく刺激策が採用され,成長が回復し,債務比率も下がる.手に負えなかった諸問題が蒸発して,まさに,悪夢から覚めるわけだ.

ユーロ・ボンドはドイツの信用状態を悪化させるのではない.逆に,それはアメリカやイギリス,日本の債券に比べて良好であろう.

確かに,ユーロ・ボンドは万能薬ではない.それだけで景気は回復しないし,競争力の格差は解消しない.各国が構造改革を進め,EUは銀行同盟を必要としている.しかし,ドイツがユーロ・ボンドを受け入れることが,その他の改革を推進する.

ドイツはユーロ・ボンドを拒む権利がある.しかし,重債務諸国が集団で苦境から脱出するのを拒む権利はない.つまり,もしドイツがユーロ・ボンドを拒むなら,ドイツがユーロ圏を離脱するべきなのだ.ドイツが抜けたユーロ圏が発行するユーロ・ボンドでさえ,驚くだろうが,米英日の債券よりも良好な条件で取引されるだろう.

なぜなら,ドイツが抜けることでユーロは安くなるからだ.債務諸国の競争力が改善し,債務も実質価値が減少する.デフォルトのリスクは消滅して,維持可能になる.他方,ドイツなど,ユーロ圏を去る諸国は,調整のコストを負担する.通貨価値が高まり,競争力を失って,自国市場でもユーロ圏からの厳しい競争にさらされる.また,ユーロ建ての債権や投資は大幅な損失を被るだろう.

逆に,イタリアが離脱することは,ユーロ建て債務を支払えなくなり,その組み換えによりグローバルな債券市場が混乱に陥る.離脱するとしたら,イタリアではなく,ドイツである.

ユーロ・ボンドを認めるか,ユーロ圏を離脱するか,ドイツ国民が決めるべきだ.どちらにも理由があり,どちらが優れているとは断言できない.もし今国民投票すれば,離脱が多数を占めるだろう.しかし,集中的な討論が人々の心を変え,ユーロ・ボンドを承認するかもしれない.

問題は,ドイツが選択を強制されていないことである.メルケル首相は,少なくとも選挙が終わるまでは,現状のまま,ユーロ圏を維持する最低限の行動しか採らないだろう.

ドイツの選択によって,いずれであってもユーロ圏は明確に回復する.ドイツもそうだ.悪化するままにすれば,いずれ,無秩序な形でユーロ圏が解体するだろう.ヨーロッパの歴史的な実験は失敗し,金融的混乱と不況が残る.それはドイツの利益にもならない.

FT April 10, 2013

Scapegoating Germany is easy but wrong

By Marcel Fratzscher

SPIEGEL ONLINE 04/10/2013

Investor George Soros

Germany Must Accept Eurobonds or Leave Euro


後半へ続く)