(前半から続く)
FT April 1, 2013
Regime
tests the limits of a MAD world
By Gideon Rachman
核武装した世界で平和を保ってきたのは,MAD(相互確証破壊)であった.キューバ・ミサイル危機からベルリンの壁崩壊まで,人類は危機から核戦争に向かうことはなかった.北朝鮮の危機で示される最も深刻な意味とは,その体制がMADの適用できないような異常なものかもしれない,ということだ.
冷戦の時代に,最も強固なスターリン主義者でもモスクワに来た毛沢東が核戦争を拒まないことに驚いた.彼はこう言ったのだ.「たとえ最悪のことが起きて,人類の半分が死滅しても,残りの半分は生き残る.帝国主義は粉砕され,世界全体が社会主義になる.」
北朝鮮は,毛沢東主義の中国と多くの最悪の特徴を共有している.外部世界からの孤立,強制労働収容所,国民の大規模な餓死を容認する決意.
韓国との戦争を再開し,アメリカに核攻撃するという北朝鮮の指導者に対して,アメリカや韓国は伝統的なMADによって対応している.危機の線を越えずに,しかし弱気を見せず,決して後退しないこと.
しかし,こうした対応は正気の敵に対してだけ有効である.アメリカの交渉担当者であったChris Hillが述べたように,明らかに北朝鮮は戦争をする意図などない.しかし,その経験不足の指導者が,偶発的な衝突を戦争に拡大してしまう間違った決定を下す危険がある.
重要なことは,当面の危機の水準を下げることである.朝鮮半島の平和に至る北朝鮮の長期的な解決策は,その内部から起きる変化しかない.実際,国境貿易にかかわる商人層や,韓国との共同工業団地が,すでに変化の種を生じている.外部世界の商品やニュースは,確実に北朝鮮に浸透するだろう.
貿易と対話を重視する中国の姿勢は,その意味で,正しいかもしれない.
Project Syndicate 01 April 2013
Realism
on North Korea
Yoon Young-kwan
北朝鮮に対して考えるべきことは,それが極貧の,敗北した国だということではない.
ハプスブルク皇室の宰相,Klemens von Metternichメッテルニヒは,ナポレオン戦争後の新しい国際秩序を築いた.その際,彼は敗北したフランスを窮地に追いやることはしなかった.フランスの復活をどのようにも阻止しようとしたが,その戦前の国境は回復したのだ.
これと対照的に,第1次世界大戦後の戦勝国は,敗戦国ドイツの復活を妨げることもなければ,ヴェルサイユ条約を受け入れる誘因も与えなかった,とキッシンジャーは論じた.ドイツを永久に苦しめる条件を押し付けたのだ.
ケネディーも,キューバ・ミサイル危機に際して,メッテルニヒのように行動した.ソ連に屈辱を与えるような,全面的な勝利を得ようとはしなかった.しかし,北朝鮮は,そのような対応を受けなかった.メッテルニヒやケネディーはいなかった.
問題を解決するチャンスは1991年のソ連崩壊直後にあった.金日成が孤立を脱する声明を新聞に公表したのだ.また,1999年のWilliam Perryが率いるアメリカ代表団がピョンヤンを訪問したときも,そのチャンスがあった.どちらの場合も,アメリカや韓国は最後まで北朝鮮の言葉を信用できなかった.その後,北朝鮮は核開発に成功し,交渉姿勢を硬化させた.
北朝鮮を周辺諸国が協力して説得するには,中国の協力が欠かせない.しかし,中国は難民流出を懸念するだけでなく,統一して生まれる隣国が体制の危機を刺激することを恐れている.東西ドイツの再統一でNATOの拡大をソ連が恐れたように.それ故,中国の協力を得るには,もっと踏み込んだ保証が求められるだろう.
中国の協力を得ても,北朝鮮の内部から崩壊が進むことには対処できない.北朝鮮は,すでにまったく孤立状態ではなく,中国の経済ブームと結びついて貿易を増やしている.この変化は促進されるべきであり,外部からの圧力よりも効果的である.関係諸国が集まって,包括的な転換と救済を計画しなければならない.
FT April 2, 2013
Calm in Korea is only a phone call away
By Kishore Mahbubani
北朝鮮の行動は予想できるものだ.好戦的な声明,ホットラインの切断,さらに攻撃的な姿勢.
では,アメリカはどうか? アメリカは歴史的な外交に従わない.北朝鮮との対話を拒否し,孤立させ,制裁する.交渉に応じるのは,北朝鮮の体制を延命するだけだ,という.
しかし,何千年もの昔から,外交とは敵との対話であった.アメリカ以外の国は,それを実行している.中国とベトナム,トルコとギリシャ,ロシアとポーランド,韓国と日本,インドとパキスタン,・・・ アメリカが例外なのだ.その結果,中国に重大な外交の指導的役割が回ってくる.
なぜ,アメリカ以上に,長期的には,一層大きな戦略的対抗者が中国であると知っていながら,プーチンは習と会談したのか? それはアメリカが両国に屈辱的なアプローチをとっているからだ.なぜ,キムはオバマとの対話を望むのか? それは,彼がアメリカではなく,中国を恐れているからだ.そして,アメリカの関心を引くには,攻撃的な姿勢を示すしかない.
オバマは,この地域における外交の枠組みを変え,アメリカ国民に新しい世界を提供できる.それは,アメリカが他の国と同じように,外交の歴史的な知恵に従うことだ.
Project Syndicate 02 April 2013
The Trouble with North Korea
Ian
Buruma
もし核兵器がなければ,アメリカ人のだれも北朝鮮など気にしないだろう.孤立した,人口2400万人に十分な食糧も供給できない,共産主義体制を自称する王朝国家だ.その国がアメリカと戦争を始めるのは,単に,自国の破滅を意味する.これは狂気の沙汰である.
しかし,狂気で話を終わることはできない.北朝鮮の政治システムには,それを支えた歴史がある.1945年に日本の敗戦で野蛮な植民地支配が終わったとき,北をソ連が,南をアメリカが占領した.ソ連はウラジオストックの軍事基地から金日成を北に運び,その英雄伝説とともに,北朝鮮のカルト的な支配体制を築いた.
それは,キムとその息子,孫を信奉する,一種の宗教国家であり,神政国家である.スターリン主義や毛沢東主義の要素も含むが,その多くは土着のシャーマニズムに拠るキムのカルト(狂信集団)と見るべきだ.神となった人が救済を約束する.韓国の統一教会を創ったSun Myung Moon文鮮明と同じように.
キム・カルトの権力システムには,1945年以前にさかのぼる政治の歴史がある.朝鮮半島は,中国,ロシア,日本という大国が勢力を競い合う戦場となってきた.朝鮮の支配者たちは,唯一,外国の支配を,他の外国の支配と対立させることで生き残り,主として中国の,帝国による保護を受ける代わりに,服従することで平和を維持できた.その歴史が,強国への恐怖と,依存を嫌う情念を形成した.
キム王朝のイデオロギーは,国家の自立を強調する主体思想である.朝鮮の支配者は,ソ連と中国を対抗させることで,自立を得てきた.ところが,ソ連の崩壊は中国だけを残した.ソ連からの経済支援だけでなく,中国をけん制する対抗力を失ったのだ.中国が食糧やエネルギーの支援を止めれば,北朝鮮は1日も耐えられない.
この屈辱的な地位から関心を逸らすために,アメリカ帝国主義や韓国に対する宣伝(プロパガンダ)が過激になった.組織されたパラノイアがなければ,キム・カルトの正当性が維持できない.いかなる専制君主も,暴力だけでは生き延びられない.
北東アジアの安全保障のために,アメリカは北朝鮮と妥協すべきだ,という意見もある.しかし,民主党の大統領であるオバマが「弱腰」と見られるのは避けたいだろう.韓国もそれを嫌う.また,北朝鮮の狂信的プロパガンダは,外部世界への恐怖を煽るために続くだろう.
朝鮮半島の悲劇は,現状を変えることは誰も望まないことだ.しかし,何か小さなことから,すなわち,サラエボの銃弾のように,破局が始まるかもしれない.しかも北朝鮮には核兵器がある.
guardian.co.uk, Wednesday 3 April
2013
North Korea and the US must break the
cycle of sanctions and bluster
Jim
Hoare
FT April 3, 2013
America is best to play its long game
on North Korea
Kurt
Campbell
北朝鮮の言動だけ見れば,アメリカ外交は無駄である.しかしアメリカは,長期の,我慢強い,成功の見込みがある戦略をとっている.その焦点は周辺の諸問題,ワシントンがより強い影響力を持つものに向けられている.
アメリカは北朝鮮との交渉を歓迎するが,近隣諸国を疎外するような重要問題では立場を変えない.また,核拡散のようなグローバルな規範を破ることもない.それでもアメリカ外交は北朝鮮に関して失敗しているように見えるかもしれない.ベルリンの壁が崩壊し,ソ連が解体するまで,東側に関するアメリカ外交の評価も低かったことを思い出すべきだ.
アメリカは一貫して,慎重な,包括的戦略をとっている.抑止力を示し,外交をオープンにし,韓国と日本の信頼を維持し,中国に北朝鮮への統制を求め,難民を助け,核拡散を監視する.何よりも,忍耐強く,プラグマティックに.
NYT April 3, 2013
As N. Korea Blocks Workers, U.S.
Plans More Pacific Defense
By
CHOE SANG-HUN
NYT April 3, 2013
It’s North Korea, Again
By
THE EDITORIAL BOARD
WP April 3, 2013
Answer
North Korea with financial sanctions
By Editorial Board
FP APRIL 3, 2013
Tell Me How This Starts
BY
PATRICK M. CRONIN
WSJ April 3, 2013
North Korea's Reckless Swagger
By
MICHAEL AUSLIN
Global Times | 2013-4-3
NK nuke issue faces more
uncertainties
By
Global Times
北朝鮮はYongbyonの原子炉を再稼働すると発表した.より多くのプルトニウムと核爆弾を製造する.アメリカと韓国には打つ手がない.
国際社会が求めても,北朝鮮に核を放棄するよう説得することはできない.また,核保有国として承認することもない.
現状を固定し,新しい核実験を阻止することが現実的である.地域の情勢をソフト・ランディングさせるには,北朝鮮の経済を正常化し,その安全と体制の維持を保証することだ.
中国は北朝鮮を説得できないが,冷静にさせる.中国が戦略的なジレンマを解決し,苦境を打開するには,より大きな力を持つべきだ.中国は,朝鮮半島における戦争の回避を求める.
WP April 4, 2013
China must act on North Korea if it
wants respect
By
Anne Applebaum
中国の新指導部が唱えた“China Dream”について,その中身も,達成方法も,まるで分らない.明らかなのは,中国が外国の介入によって屈辱を味わった近代史から完全に離脱し,国際的な地位を回復する,という愛国心の強調である.
中国の巨大さと経済成長から見て,それは全く当然の主張であろう.だからこそ,今,中国は“China Dream”に具体的な形を示すチャンスをつかむべきである.北朝鮮とアメリカによる醜い笑劇を終わらせ,一気に朝鮮半島の平和的な再統一を実現するのだ.中国は国際的に称賛され,長期的には,アジアにおけるアメリカ軍の役割を低下させる.
なぜなら,中国は北朝鮮の食料とエネルギーを供給しているから.また,このスターリン的な収容所国家に対して,国境を開放して難民を救済すればよい.それはベルリンの壁が崩壊したとき東ドイツが受けた衝撃に匹敵する.
この時代錯誤の体制を擁護することが中国の利益であると思うなら,旧来のゼロ・サム思考にとどまるなら,“China Dream”の中身も空虚なものである.
BLOOMBERG Apr 4, 2013
Understanding Kim Jong Un’s Tantrums
By
William Pesek
キム・ジョンウンの行動は,軍部をなだめて経済改革への時間を確保するためのものだ.その言葉ではなく,動機を正しく理解しなければならない.
FP MARCH 29, 2013
The
African Century
BY JAMES TRAUB
l 金融政策と長期金利
Project Syndicate 30 March 2013
When
Interest Rates Rise
Martin Feldstein
長期金利が持続不可能な低い水準になっている.金利は必ず上昇する.そのとき,バブルははじけ,債券価格は下落する.それを保有する者はだれでも損失を受ける.銀行など,高度なレバレッジを用いる機関がそれを保有するなら,バブルの破裂が倒産や金融市場の崩壊を招く.
FT March 31, 2013
Confessions
of a Keynesian heretic
By Roger Farmer
Project Syndicate 04 April 2013
The Long Mystery of Low Interest
Rates
Kenneth
Rogoff
世界的な低金利がなぜ起きているのか,論争が起きている.そして,これは貯蓄過剰によるのか? いつまで続くのか? 良いことなのか? 意見が分かれている.
2005年の「過剰貯蓄」論で,バーナンキはいくつかの要因を指摘した.1990年代後半の金融危機でアジア諸国の投資が減少し,同時に政府は次の危機を心配して流動的な資産保有を増やした.ほかにも,ドイツや日本で退職に備える貯蓄が増えていたこと,産油諸国が人口増加と長期の石油収入を心配していたこと,なども指摘した.
バーナンキは,長期金利が長期に低くとどまるとは考えなかった.それは需要を増やし,インフレを高める.だからインフレが低いなら,中央銀行は低金利について責められることもない.
ところが実際は,今,多くの投資家が金融政策(「量的緩和」)を低金利の原因と考えている.2005年から,世界金融危機を含めて,多くの変化が起きた.特に,アジアの投資は回復したが,金利はさらに低くなっている.
さまざまな理論が競合しているが,どれも完全ではない.長期成長に関するリスクが高まった.“Great Moderation”は見直された.技術革新.パワー・シフトと不確実さ.新興経済の金融資産市場が脆弱で,分散化できず,セーフティー・ネットも不十分だ.
しかし,新興市場のグローバルな統合化は,むしろ金利を高めるはずである.労働力の追加的な参入も利潤を増やし,金利を高める.グローバルな信用収縮や規制強化が,金融資産への需要を減らしたかもしれない.
l 社会福祉の転換
NYT March 30, 2013
Social
Security, Present and Future
By THE EDITORIAL BOARD
FT March 31, 2013
US
inequality will define the Obama era
By Edward Luce
guardian.co.uk, Monday 1 April 2013
Communism,
welfare state – what's the next big idea?
George Monbiot
FT April 1, 2013
The
retreat of the welfare state
FT April 2, 2013
Britain’s
welfare state can be cheaper and popular
By Graeme Cooke
それは支持する政党によって,福祉国家の終焉であったり,制御不能になった給付システムを健全化することであったりしただろう.
NYT March 30, 2013
America
the Innovative?
By EAMONN FINGLETON
NYT March 31, 2013
On
the Economy, Think Long-Term
By JEFFREY D. SACHS
NYT March 31, 2013
Mexico’s
Ambitious Economic Agenda
By THE EDITORIAL BOARD
guardian.co.uk, Sunday 31 March 2013
The
best of all possible worlds?
Michael Cohen
Project Syndicate 02 April 2013
Can We Feed the World?
Gordon
Conway
l 世界貿易体制
FT March 31, 2013
Trade
deals show power politics is back
By Zaki Laïdi
アメリカとEUとの自由貿易協定に多くの人は興奮しているが,それは間違っている.この自由貿易には別の意味がある.冷戦後の国際関係の基礎であった多国間主義が侵食されるのだ.
例えばWTOが進めるドーハ.ラウンドが崩壊したのは,アメリカがインドとの農産物補助金をめぐる紛争に合意しなかったからだ.アメリカはむしろ2国間交渉で有利な合意を望んだ.オバマ政権は,アジアにおけるTPP(the trans-Pacific Partnership)やヨーロッパとのTTIP(the Transatlantic Trade and Investment Partnership)によって,規制の基準を高くし,中国の台頭を阻止しようとしている.貿易だけでなく,環境問題でも,安全保障でも,アメリカは多国間主義から後退した.
アメリカも新興諸国も,多極化する世界のルールを求めていない.冷戦終結は,国家主権よりもグローバルな公共財が重視されるだろう,とヨーロッパ市民は期待した.パワー・ポリティクスが再生したのだ.
FT April 1, 2013
Questions
for the world’s next trade chief
By Robert Zoellick
WTOは世界の通商システムを改革するような政策を提起しなければならない.WTO議長の候補者9人は,Gary Hufbauer and Jeffrey Schottの示す5つの問いに答えるべきだ.
1.貧困諸国に利益をもたらす小さなパッケージにするべきか? それによりWTOは最も迅速,効果的に貧しい人々にも利益をもたらす.透明性の確保や紛争処理の迅速化も含めるのがよい.2.サービスの国際取引に関して,参加する意思のある諸国で互恵的な自由化の合意を進めるか? 3.部門ごとの,互恵的な関税・障壁の撤廃を技術革新などに応じて多国間で拡張していくか? 4.国有企業にも公平な取引の条件を求めるか? 5.IMFとの合意により,通商上の優位を得るため,為替レートを人為的に操作することを阻止するか?
WTO議長は,こうした問題に関する権限を行使して,グローバル.ガバナンスの改善を担う.
WSJ April 3, 2013
Mari Pangestu For WTO Chief
AND
MARIA MONICA WIHARDJA
VOX 3 April 2013
Pay attention to the WTO leadership
contest: It matters!
Bernard
Hoekman, Petros C. Mavroidis
(7人の候補者がVoxEUのe-Bookとして意見を表明した.その序文である.)
WP April 1, 2013
What
the Iraq war taught me about Syria
By Jackson Diehl
SPIEGEL ONLINE 04/04/2013
War without End
The Price of Inaction in Syria
A
Commentary by Christoph Reuter
l アメリカの駐日大使
NYT April 1, 2013
Japan
Shifts From Pacifism as Anxiety in Region Rises
By MARTIN FACKLER
FP April 2, 2013
Caroline
Kennedy's appointment is not very Kennedyesque
Posted By Clyde Prestowitz
FP April 2, 2013
Amateur hour
Posted
By Stephen M. Walt
ますます重要で,複雑になるアジアの国際関係にアメリカが関与する際の,日本大使に,まったくの初心者であるCaroline Kennedyを任命するオバマ政権の選択は間違っている.彼女は日本語を話せず,地域情勢の専門家でもなく,外交官や政治家としての経験もない.
国際政治は高度に競争的な事業であり,成功するためには,その職に見合った最善の人物を指名しなければならない.
FT April 3, 2013
India benefits from Japan Inc shift
By
James Crabtree in Mumbai
l IMFの財政緊縮条件
BLOOMBERG Apr 2, 2013
IMF Shouldn’t Abandon Austerity
By
Anders Aslund
IMFは通貨危機に陥った国に対して融資条件として財政緊縮を厳格に求めてきた.それはアジア通貨危機において他の構造条件を含める間違いを犯したが,最近,Olivier Blanchardブランチャード主任エコノミストとChristine Lagardeラガルド専務理事は,財政緊縮目標を緩和する発言をして,逆の間違いを犯した.
Olivier
Blanchardと Daniel Leighの論説は,財政緊縮策が従来のモデルが示す以上に厳しいデフレ的な影響をもたらしていることを示して,その条件の緩和を支持したのだ.しかし,多くの留保を述べている.これに対して,ラガルドは明確に財政引き締めや再建策に反対する姿勢を支持している.
最近,ブルガリアの財務大臣Simeon Djankovは,IMFの政策変更を非難した.政府が財政再建に支持を求めているとき,その反対派を正当化するような発言をIMFがして翌週,緊縮策への抗議デモにより,彼らは政権を失ったのだ.IMFは,改革を支援する機関としての信用を失った.
FT April 3, 2013
Europe needs to focus more on reform,
not just austerity
Philipp Hildebrand
l BRICS
Project Syndicate 03 April 2013
BRICS Without Mortar
Joseph
S. Nye
BRICSは意味のある政治勢力にならない.その政治的性格も,経済構造も,全く異なっており,共通の戦略を合意することもない.
南アフリカを加えることに意味はないし,ロシアは旧超大国で,新しいダイナミックな工業化を実現していない.ブラジルやインドの自由化や成長率は,中国に及ばないだろう.中国は,他のすべての国を合わせたよりも大きい.
The Guardian, Thursday 4 April 2013
Trident renewal: nations with nuclear
options
Editorial
The Guardian, Thursday 4 April 2013
Where's the real threat here – Kim
Jong-un or Trident?
Simon
Jenkins
l パレスチナ
NYT April 4, 2013
West Bank Funerals Become Displays of
Palestinian Defiance
By
ISABEL KERSHNER
Project Syndicate 04 April 2013
Obama’s Promised Land
Ana Palacio
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The Economist March 23rd
2013
The Alibaba phenomenon
Alibaba: The world’s greatest bazaar
The euro-zone crisis: Just when you
thought it was safe…
The Cyprus bail-in: A bungled bank raid
America’s combat veterans: The waiting
wounded
Lexington: The price of detachment
Bagehot: Striving for Harlow
Retail: Mixing bricks with clicks
Manufacturing in Bosnia: Balkan
brakelights
(コメント) アリババの話は面白く,社会に広がる革新は素晴らしい威力です.日本の企業や消費者もアリババのネットワークに入るようになれば,国際金融システムの新しい姿も見えてくるように思います.それと並んで,小売業は店舗とインターネット販売とを組み合わせる戦略を模索しています.イギリスの都市Harlowの変貌や,Bosniaの町Gorazdeがドイツの部品供給拠点となっていること,も興味深い内容でした.
それに比べて,ユーロ危機の新局面であるキプロス危機の適切な処理策がユーロ圏の制度にあるべきこと,また,オバマ外交の説得術に欠けているのは「棍棒」である,と議論することも欠かせない視点です.
アメリカに関しては,戦場から帰還する負傷兵たちのコストがどれほど大きいか,に驚きます.大国であることの意味が変わったと思います.
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IPEの想像力 4/8/13
まったく勝ち目のない戦争を宣言する北朝鮮の行動を,どのように合理的に説明できるのか,だれでも疑問を感じるでしょう.
アメリカ本土の都市を核ミサイルで攻撃する(宣伝).同じ民族の隣国,韓国の首都を焼き払う(宣伝).国民に十分な食糧もないのに,核爆弾や弾道ミサイルなど,軍備拡大のために支出する(現実).貿易や投資,技術移転を拒み,せっかくの開発区をも放棄する(現実).
・・・なんだ,これは?
しかし,おそらくこれが,限定された条件の中で,合理的に選択された政策なのです.
国際関係において,北朝鮮も諸国家の均衡状態に組み込まれて生存を目指しています.日本の植民地支配が崩壊した後の北朝鮮に,ソ連が社会主義政権を築くため金日成を送り込んだ,という話は,東欧や南欧で展開された米ソの冷戦初期と同じ力学を感じさせます.
さらに,朝鮮半島における武力統一を阻んだアメリカ・国連軍と中国・人民解放軍との介入は,38度線の軍事境界線で凍結されました.その均衡が,今に至って溶け始めたことを感じます.アジアにおけるパワー・シフトが起きているからです.しかし,ロシアと中国が,北朝鮮の非核化や朝鮮半島の再統一に関して,アメリカの方針に従わないのは,それが彼らの利益や戦略上の優位になると思わないからでしょう.
・・・なぜこれほど危険な言動を繰り返す必要があるのか? 北朝鮮が,ソ連崩壊や中国の改革開放によって,自分たちも体制転換を進める必要があると理解したなら,積極的に改革に取り組むべきではないのか?
9・11後にアメリカが唱えたテロ国家撲滅という外交方針が,イラク,イランと並べて,北朝鮮を名指し,核兵器を手に入れなかったイラクのフセイン,リビアのカダフィが殺害されました.核兵器を保有するイスラエルが孤立状態でも繁栄し,破たん国家といわれるパキスタンでさえアメリカから巨額の援助を得ています.だから北朝鮮も,核保有国の地位を求めます.
Reviewで紹介したいくつかの論説は,国内権力システムとイデオロギーに言及します.同じ国際システムの構造的な制約下において,たとえ客観的な戦力や経済力の比較が可能であっても,それだけで政治指導者や国民の選択は決まらないでしょう.キム・ジョンウンの権力を,朝鮮半島の歴史や伝統的なシャーマニズムに拠る,カルト集団の支配として理解するなら,終末論の宣伝は正当性の維持に欠かせない条件なのです.
2006年に書いた状況は,驚くほど変わっていません(IPEの種 10/26/2006;『グローバリゼーションを生きる』 83-84頁).
・・・変わったのは,国際システムや私たちです.
大気汚染から豚の死骸,鳥インフルエンザまで,都市と文明の崩壊が始まった,と北京・上海の市民たちは懸念しています.政治改革にかかわる様々なテーマを含めて,重要問題がインターネット上のブログで議論され,政府に影響を与えるかもしれません.新指導部と市民が対話し,その成長モデルの転換にも関与し始めます.
貿易・投資のパターンが緊密になれば,たとえ限定的なものでも,軍事力の行使を避けることが必要です.開放型の成長を遂げた中国が,北朝鮮の体制崩壊を阻むために,かつてと同じ規模で軍事支援するとは思えません.
アリババによるネット販売が,中国の新興企業や地理的に切り離された消費者を結びつけ,社会的・政治的に不利な条件を克服して,その能力と意欲を実現するよう人々を刺激しています.政府とアリババが協力すれば,賃金の上昇する沿岸部の諸都市から北朝鮮にも,工場を移転できるでしょう.
北朝鮮に関して,軍事的な解決はないのです.国際システムの構造が急速に変化して,キム・ジョンウンの「狂気」の行動を,衝撃による制度的な妥協へ導くでしょう.そのチャンスをつかむには,私たちも強く,合理的でなければなりません.
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