IPEの果樹園2013

今週のReview

4/1-6

 

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オバマの北爆 ・・・キプロス救済とユーロ危機 ・・・中国について ・・・日本について ・・・エネルギー転換 ・・・政策思想の転換 ・・・銀行システムの改革 ・・・大西洋自由貿易 ・・・オバマの中東和平 ・・・北朝鮮について ・・・7つのデフレ ・・・働くということ

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  オバマの北爆

NYT March 21, 2013

Obama’s Nixonian Precedent

By MARY L. DUDZIAK

1969317日,リチャード・ニクソン大統領は,南ベトナムからB52爆撃機を送って,カンボジアへの秘密の作戦を開始した.この事件はほとんど歴史に埋葬されていたが,予期せぬところで,最近,浮上した.オバマ政権の政府報告書が,テロに関与したアメリカ市民を標的にした殺害を正当化したのだ.

作戦が秘密であることは,その正当性に疑問を生じている.カンボジア爆撃がそうであったように.オバマは,作戦を指揮しているJohn O. BrennanCIA長官を支持するように国民に求めたが,我々はカンボジアと同じ理由で,これを支持できない.

カンボジアへの秘密作戦はリンドン・ジョンソン大統領のときから始まっていたが,ニクソンはこれをエスカレートさせ,じゅうたん爆撃carpet-bombingを行わせた.ニクソンは国務省のWilliam P. Rogers長官が反対することを嫌って,後戻りできなくなるまで知らせるな,と当時のHenry A. Kissinger国家安全保障担当補佐官に指示した.作戦に参加する飛行士たちにも本当の目的地は知らされず,記録も改ざんされていた.

14か月にわたって,4000回の爆撃で,103921トンの爆弾を投下した.批判派の歴史家に言わせれば,ニクソンの戦略のもたらした究極の結果は,シアヌーク殿下の政府を不安定化し,1975年のクメールルージュによる政権奪取が起きたことであり,その後のジェノサイド(大虐殺)であった.

カンボジア空爆は,現在の対テロ掃討作戦を正当化する論拠には全くなりえない.もしニクソンが議会にこの作戦を報告していたなら,議場は怒号に満たされただろう,と歴史家Jeffrey P. Kimballは書いている.ニクソンが作戦を地上軍の投入にまで拡大しようと決断したとき,それが公表され,反戦運動が爆発して,ニクソンはこれを抑えきれなかった.

バラク・オバマはニクソンではない.彼は透明性をわれわれに保証した.新しい秘密戦争を許さないはずだ.


l  キプロス救済とユーロ危機

NYT March 21, 2013

Treasure Island Trauma

By PAUL KRUGMAN

国際的な租税避難地域tax havensがどれほど世界の経済を損なっているか,2年前に出た本(“Treasure Islands”)でNicholas Shaxsonが示している.政府の歳入は枯渇し,犯罪者の資金が流れ込み,金融危機を頻発させる.

秘密保持の法律が破られたらどうなるか? それはキプロスで起きていることだ.その混乱は,世界が金融危機から5年を経ても,銀行システムを改革していないことを示している.

なぜキプロスのような小さな経済が騒がれているのか? それはキプロスがユーロ圏であり,もっと大きな国の銀行にも危機が波及する,例えば,取付が起きる,という不安があるからだ.しかも,キプロスの銀行部門は,その国の経済規模の4~5倍もある.

キプロスは,企業や外国人が富を隠すタックス・ヘイブンであるからだ.公式統計で預金の37%が非居住者のものであり,非公式に,あるいは名目だけの居住者による預金は,もっと多い.ロシア人などが富を税務署や規制から隠し,資金洗浄に利用している.キプロスが,ドイツよりも多くのロシア向け投資を行っているのは,課税を逃れたロシア人が資金を還流させるからだ.

キプロスの失敗した投資,たとえば,ギリシャ債券や不動産バブルに関わった者が生き残るには,多くの資金を必要とするが,もはや得られないだろう.

これは経済規模を大幅に超える銀行部門を持ったアイスランドと似ているが,大きく異なる点がある.アイスランドは銀行を破産させ,国内預金者を守り,その投資は外国投資家の損失として処理した.キプロスには自国の通貨がなく,こうした決定をするのはブラッセルやベルリンである.彼らは銀行の倒産を好まないのだ.

キプロス政府はタックス・ヘイブンや資金洗浄のビジネスを諦めず,外国人の預金者を守るために国内の少額預金者にまで課税しようとして憤慨を招いている.豊かな諸国から救済融資が行われるだろうが,それが決まるまでに,多くの時間と資金が失われるのだ.

キプロスのタックス・ヘイブン危機が我々にとって意味することは,他にも多くの租税回避地が未だに放置されており,他方,議会では財政赤字の削減を叫ぶ政治家たちが多い,という矛盾した姿だ.企業や富裕層が,こうした土地をもっぱら利用しているのだ.

guardian.co.uk, Friday 22 March 2013

Cyprus needs to tax Russian deposit holders

Katinka Barysch

guardian.co.uk, Friday 22 March 2013

Cyprus: deserted island

Editorial

4年半前に,アメリカ財務長官,ハンク・ポールソンは金融機関の救済を拒んで,倒産させた.リーマン・ブラザーズである.彼はそれがこのルールを欠く金融システムに規律を与えることになると考えた.そして,金融秩序の全体が銀行は債務を支払うという前提で成り立っていることに目を向けなかった.キプロス危機に対するヨーロッパの対応には,同じものが感じられる.

10万ユーロ以下の預金にも課徴金を持ちとめるアイデアがキプロスのNicos Anastasiades大統領から出たものであっても,ブラッセルやフランクフルトはこれを受け入れるべきではなかった.この案に,キプロス国民は憤慨し,議会が拒否して,消滅した.それは手遅れであった.保証された10万ユーロ以下の預金も危ない,と理解されたのだ.

資本規制が導入されるという.これも,ポールソンを思わせる,単一通貨圏からの逸脱である.彼がリーマン救済を嫌ったように,ドイツはキプロス救済を嫌う.慎重さを欠いた,タックス・ヘイブン・ビジネスで成長したことをキプロスは自慢し,ロシア人による税金逃れの資金を大量に吸収していたが,異様にも,ロシア政府はそれを保証するように主張していた.

月曜日の朝に銀行が開けば,人々は預金引き出しに殺到するだろう.それまでにヨーロッパは問題を解決しなければ,パニックが広まる.キプロスはユーロ圏にとどまれなくなり,自国通貨を印刷し始める.そしてユーロ圏の永続性は完全に失われる.

リチャード・ニクソンが金による保証を否定してから,貨幣の価値を保証するのは政府の約束だけである.それは暗黙のものでしかなく,その約束が守られないとわかったら,世界はどうなるのか?

guardian.co.uk, Friday 22 March 2013

The Cyprus crisis reveals much about German-Russian relations

Stefan Meister

ロシアから見れば,なぜEUはキプロスを救済する170億ユーロ程度の少額を出さないのか,不思議である.また,もしロシアの資金をほしいのであれば,なぜ最初から救済に協力してほしいと交渉しないのか,驚きである.

これは,特にプーチンが大統領に復帰してから,メルケル首相がそれを嫌っていることの表れであり,ドイツ国内,特に政治家たちへのロシアの影響力(資金供与)を,これ以上,放置しない姿勢を示すものだ.

FT March 22, 2013

Cyprus: A poor diagnosis, a bitter pill

By Peter Spiegel, Kerin Hope and Quentin Peel

FT March 22, 2013

Cyprus tremors could shake the world

By TonyBarber

FT March 22, 2013

Cyprus confiscation could happen in UK

By Neil Collins

FT March 22, 2013

Cyprus exposes eurozone’s lack of financial stability

Howard Davies

SPIEGEL ONLINE 03/22/2013

Iron Chancellor Returns

Merkel Can't Contain Anger over Cyprus

By Severin Weiland and Philipp Wittrock

議会で,金曜日の朝,メルケル首相は怒りを爆発させた.それは連立政権でもこれまで見せたことがない様子だった.彼女は常に温和な表現で,冷静に,計算された姿勢を示してきた人物である.

しかし,キプロスの情勢には我慢が尽きたようだ.メルケルは以前から小国の危機もユーロ圏に波及するドミノを指摘して救済に努めた.しかしキプロスの事態が危機的に悪化しても,なかなかベルリンとの情報交換に応じないニコシアの姿勢を受け入れがたいと感じたのである.ニコシアの発表したプラン(ESMから100億ユーロ,預金から58億ユーロ)は,ドイツ政府に詳しく伝えられていなかった.キプロス政府は,トロイカの忍耐を試すべきではない,とキリスト教民主同盟の幹部は発言した.

キプロスの救済は,その銀行部門の肥大化において例外的なものだ.預金への課徴金は,それゆえに,救済計画に含められた.メルケルは,キプロスの金利がドイツよりもずっと高いことを指摘し,預金からの負担を支持した.ただし,少額預金は除くべきだ,と述べた.

VOX 22 March 2013

Cyprus: What are the alternatives?

Thorsten Beck

NYT March 22, 2013

Wealthy Russians Ensnared as Cyprus Crisis Deepens

By ANDREW E. KRAMER

NYT March 23, 2013

Cyprus Makes Fitful Progress Toward a Deal on Bailing Out Its Banks

By LIZ ALDERMAN and JAMES KANTER

guardian.co.uk, Sunday 24 March 2013

Cyprus and the euro: crisis island

Editorial

1783年,ヨーロッパの縁で起きた噴火が大陸全体の混沌をもたらした.アイスランドのLaki火山から溶岩と有毒ガスが噴出し,農業を破壊し,家畜を殺し,飢饉をもたらした.粉じんと硫黄の粒子は北半球全体に及び,ノルウェーからエジプトまで噴火音が聞こえた.噴霧が去って数年してからも,Laki噴火の影響は残り,歴史家のGreg Nealeは,それがフランス革命に及ぶ食糧不足につながった,と書いた.

先週.ヨーロッパの縁にある小さな島で起きた事件も,世界に及ぶ危険があった.アイスランドではなく,キプロスで,自然現象ではなく,完全に人為的な事件であるが,歴史は韻を踏んで再現した.危機の渦中にある2大銀行の1つは,Laiki銀行であった.

スペインに比べてギリシャがそうであったように,辺境の小国キプロスが,トロイカによる救済融資の条件を緩和してもらえる見込みはなかった.しかし,資本規制など,トロイカが自分勝手な方針を押し付ければ,Laiki銀行の破綻が及ぼす歴史の影響は,そのよく似た名前の火山に並ぶかもしれない.

guardian.co.uk, Sunday 24 March 2013

Like Cyprus, Britain should beware of becoming a playground for Russia's rich

John Kampfner

FT March 24, 2013

Eurozone break-up edges even closer

Wolfgang Münchau

キプロスは,ユーロ圏が集合行為問題を解決できないことを示す典型的なケースである.

私は,昨年11月,キプロスの危機が起きたとき,10日間で解決できる,と断定した.同様に,2006年,プロディ政権がイタリアのユーロ圏における持続可能な地位を保持する,と断定した.どちらも間違いだった.

ドイツとキプロスのような異なる経済を含む通貨同盟には,銀行同盟がなければならない.しかし,それを実現できない.キプロスの救済融資に,bail-inを取り入れたいとき,単純に課税すればよかったのに,預金から徴収しようとした.そして銀行取付を起こした.

各国の指導者たちは,自国の利益を実現しようとしてユーロ圏の利益を損なっている.最悪の霊は,救済融資の条件として,財政緊縮という非対称的な調整を求めることだ.

FT March 24, 2013

Bailout exposes differences within troika

By Peter Spiegel in Brussels

FT March 24, 2013

Russian cash carries wider risk in Cyprus

By Misha Glenny

FT March 24, 2013

Cyprus falls victim to Europe’s bailout fatigue

Mohamed El-Erian

これはヨーロッパの「救済疲れ」bailout fatigueである.債務国は救済融資を得るために不況をこれ以上続けたくない.債権国は成長が低下する中で,改革の約束を守らない債務国に融資を重ねたくない.ECBIMFなど,国際機関は財源を集められない.

NYT March 24, 2013

Hot Money Blues

By PAUL KRUGMAN

IMFはキプロスで資本規制を準備している.それはアイスランドでも行われた.

2次世界大戦後の20年間は,国境を越える資金移動は制限されていた.それは良い政策であると考えられた.たとえば1979年まで,イギリスは海外投資を制限していたのだ.アメリカでさえ,1960年代のある時期には資本流出を制限した.

その後,こうした規制は支持されなくなった.資本規制にはコストがともなうからだ.煩雑な事務作業,成長を損なうという分析,そして,自由市場のイデオロギー.逆に,1998年,資本流出を禁止したマレーシアは厳しく非難された.

しかし,本当は,資本自由化の実験が間違いであったと次第に証明されたのだ.1980年以降の危機を思い出せばよい.Mexico, Brazil, Argentina and Chile in 1982. Sweden and Finland in 1991. Mexico again in 1995. Thailand, Malaysia, Indonesia and Korea in 1998. Argentina again in 2002. Iceland, Ireland, Greece, Portugal, Spain, Italy, Cyprus. 危機の原因として財政赤字を責めるが,そうではない.外国資本の大規模な流出が原因だった.

グローバルな資本主義は支持されなくなる.

NYT March 24, 2013

E.U. Officials Agree to a Deal Rescuing Cyprus

By JAMES KANTER, LIZ ALDERMAN and ANDREW HIGGINS

FT March 25, 2013

Scratch one stupid idea

Joseph Cotterill

FT March 25, 2013

Cyprus rescue signals new line on bailouts

By Peter Spiegel in Brussels

FT March 25, 2013

Role of Cyprus in a German Europe

By Gideon Rachman

ますます大国としてのドイツが憎まれる.

FT March 25, 2013

Capital controls will put the euro at risk

Guntram Wolff

FT March 25, 2013

Europe gets real – not before time

SPIEGEL ONLINE 03/25/2013

Lessons from Cyprus

Euro Crisis Poses Grave Dangers to EU Unity

SPIEGEL ONLINE 03/25/2013

Stubborn and Egotistical

Europe Is Right to Doubt German Euro Leadership

A Commentary by Jakob Augstein

Project Syndicate 25 March 2013

A New Business Model for Cyprus

Javier Solana

東地中海の海底資源をめぐる開発計画が関係する.

VOX 25 March 2013

Europe’s Cyprus blunder and its consequences

Nicolas Véron

NYT March 25, 2013

Stricter Rules but Signs of Disarray in Cyprus Deal

By STEVEN ERLANGER and JAMES KANTER

BLOOMBERG Mar 25, 2013

Cyprus Shows Trust in ECB Is Misplaced

By Megan Greene

The Guardian, Tuesday 26 March 2013

The Cyprus bailout isn't all bad: here are four silver linings

Sony Kapoor

救済案を非難する理由はある.しかし,その正しい理由を見失ってはならない.これはユーロ圏の銀行整理というモデルを実行したものだ.金融危機が起きた直後,政治家たちはポピュリスト的な怒りに応じて,ヘッジファンドやプライヴェート・エクイティ・ファンドを攻撃した.しかし,いくつかの国の銀行システムが危険であるとわかると,その規制強化はヨーロッパの銀行システム再編を懸念する結果,躊躇されていた.しかしキプロスでは迅速な処理モデルを示した.また,銀行に資産はないが,10万ユーロ以下の預金は政府によって保証された.そして,経済規模を超えた銀行部門の肥大化(オフショア金融センター,タックス・ヘイブン)が,銀行解体によって処罰された.そして,問題は銀行同盟やESMがそのうち解決する,という希望を打ち砕いた.

The Guardian, Tuesday 26 March 2013

Germany and Europe: on top, but not in charge

Editorial

FT March 26, 2013

Cyprus adds to Europe’s confusion

By Martin Wolf

10万ユーロ以下の預金にも損失を生じる政府の最初の提案は拒否された.

現在のプランは,秩序ある銀行整理を目指すものと見ることもできる.Laiki銀行はgood bankbad bank分割される.10万ユーロ以下の預金と90億ユーロの資産がキプロス銀行に移される.10億ユーロを超える預金は,bad bankの資産が不足するなら失われるだろう.

キプロス銀行の預金者も,10万ユーロを超える分から,おそらく40%の「ヘアカット(銀行の債務削減)」が行われる.そして,一時的な交換規制が導入される.

その教訓とは,1.ユーロ圏は,他の手段がすべて尽きたとき,正しいことを行う能力がある.現行案よりも優れた処理策はあるだろうが,政府間交渉も,有権者の反対も,それらを不可能にしている.

2.ユーロはどこでも同じではない.ユーロの価値はそれが使用されている政府によって保証されているだけである.政府が支払い不能になれば,価値を減じる.ユーロ圏内部における資本規制は,通貨同盟と根本的に矛盾する.

3.銀行と,国家と,ユーロ圏との関係は,複雑だ.キプロスは特別なのか,他の弱小国家にも適用されるのか,すべてのユーロ圏に当てはまるのか? ユーロ圏の銀行は自己資本を増やし,各国は財政再建することだ.真の銀行同盟は,財源と銀行監督を共有しなければならず,まだ不可能だ.

4.ユーロ圏は「失敗した結婚」であるが,その「離婚費用」があまりにも高いから持続している.時間とともに統合が進むより,ますます関係は悪化している.債務国は緊縮と不況に耐え,債権国は(返済しないとわかっている)融資を増やす.それはユーロ圏の健全性を回復することなどないだろう.

キプロス危機は小さく,ユーロ圏にとって重要でない.しかし,長く苦しい物語の一つであり,その結末はまだ先にある.

FT March 26, 2013

A road to freedom for euro taxpayers

FT March 26, 2013

Cyprus capital controls threaten eurozone

By John Plender

FT March 26, 2013

Why Russia refused to bail out Cyprus

Ian Bremmer

1.キプロスのユーロ離脱と危機の波及.2.モスクワによるキプロス救済(ロシア人の保養地として買収).3.ロシア人の預金に手を出したことに対するEUへの報復.

ロシアはキプロスの提供する天然ガス開発や温暖な港を歓迎するはずだ.なぜロシアは独自のキプロス救済をためらうのか? モスクワの主要な関心は予算の制約や失業増である.キプロス救済の支出など好まれない.むしろ,中国がギリシャにそうしたように,救済せずに,投げ売りされる資産を安く買えばよい.

また,プーチンはロシアの脱オフショア化を提唱した.確かにプーチンの支持基盤はロシアの富裕層であるが,彼らのオフショア預金を救済することは他の国民に好まれない.そして,海底資源は規模や分布も不明確で,トルコとの紛争を招く.温暖な港を得ても,EUとの対立を生じる.

SPIEGEL ONLINE 03/26/2013

Bailout Insights

What Cyprus Tells Us about Germany's Character

A Commentary by Tyson Barker

WSJ March 26, 2013

Shocked About Cyprus

WSJ March 26, 2013

Reflections on the Revolution in Cyprus

By RAYMOND ZHONG

WSJ March 26, 2013

Cyprus Bends With the German Wind

By RAYMOND ZHONG

Project Syndicate 26 March 2013

The Dirge of Cyprus

Harold James

キプロス救済は,むしろ将来に向けてヨーロッパの裂け目を拡大した.それは20世紀初め,特に大恐慌で生じた論争が2008年の金融崩壊とその後のユーロ危機において再活性化したことと関係がある.

戦間期の経済困難は解決が難しかった.なぜなら,それは社会の安定性,民主主義,国際政治秩序の危機でもあったからだ.破産と失業が増え,社会対立が強まった.最後には,正常な民主政治が機能しなくなった.ドイツは,民主主義崩壊の震源地であったが,左右の過激派が戦後の講和条件とベルサイユ条約を攻撃した.

ますます不安定化するワイマール共和国の最後の年には,民主主義が損なわれ,政府が反対する過激派の圧力を利用して,西側の大国に安全保障の譲歩を求めるようになった.国内の民主主義の緊張が国際的な対立を激化させたのだ.

現在のヨーロッパでも同じである.民主主義はヨーロッパのエリート層が最も不満を述べる標的になっている.キプロスに事件では,1.銀行預金への課徴金が憤慨を呼んだ.2.外国人,特にロシア人の預金,そして,シリア問題が,キプロスの銀行救済に国際関係からの影響を与えた.

10万ユーロ未満の預金にまで課徴金を求めたのはキプロス政府であって,EUでもドイツでもない.しかし,おそらくキプロス政府が考えたように,国民の怒りはヨーロッパを支配するドイツと,そのイチジクの葉でしかないEUに向けられた.

キプロスがロシアにEUに代わる救済融資を求めたとき,ドイツのブンデスバンクはECBの新しい調査報告に言及した.すなわち,平均的なドイツ人の資産は,南欧諸国の人々よりも少ない.それはドイツで住宅を所有している人は少ないからだ.その意味するところは,地中海の金持ちにドイツ人が救済資金を与える必要はない,である.

金融危機後,所得や富の分配が政治論争の中心になっている.それはローマ法王の決定にも影響しただろう.

国際関係で見れば,2010年以降,ヨーロッパ人の預金はキプロスから逃げ,ロシア人とロシア企業の預金がやってきた.キプロスは地中海におけるアメリカの安全保障の拠点であり,天然ガスの埋蔵がある.将来,ヨーロッパのエネルギーがロシアに依存するのを減らすものだ.だからロシアはキプロスの政治支配を求める.30億ドルの支援を行った後,危機が生じて,ロシアはキプロスの銀行を買収することが求められた.しかし,貧富の格差が論争されて危機が深刻化すれば,その後,ロシアはもっと多く,もっと安価に支配する可能性がある.

社会の分極化が進み,政治的統一を欠いた通貨同盟の弱さ,特に,ヨーロッパの福祉国家が社会紛争を仲裁し,打開するメカニズムを持たなければ,国家は機能しない.EUにはそれがない.

Project Syndicate 26 March 2013

Penny Wise, Gas Foolish

Giles Merritt

guardian.co.uk, Wednesday 27 March 2013

Cyprus crisis: why do we need banks at all?

Richard Seymour

guardian.co.uk, Wednesday 27 March 2013

To survive, the EU must repair trust damaged by the Cyprus crisis

Sharon Bowles

FT March 27, 2013

Cyprus imposes severe capital controls

By Courtney Weaver and Michael Stothard in Nicosia

FT March 27, 2013

Cyprus finds not all nations are equal

By Christopher Pissarides

FT March 27, 2013

Suspicious Transactions

Cypriot Parliament Investigating Capital Flight

By Stefan Schultz in Nicosia

NYT MARCH 27, 2013

The New Russian Mob

By JOE NOCERA

キプロス危機では,EUの処理がまずかったが,同時にロシアの資金が動いていた.キプロスはロシアとの親密な関係の中で,かつてのスイス銀行口座と同じ役割を引き受けていたのだ.

ロシアの親分であったプーチンは法律を手玉にとって富と権力を得たが,今度は苦い薬を飲まされた.ロシアの官僚たちは,国民から奪った富を直ちによその土地に移して守ろうとするが,その奪った富を失うことは許せない,というのでキプロス政府を訴えるかもしれない.

NYT MARCH 27, 2013

Cypriots’ Criticism of Bailout Rattles Nerves and Raises Ire in Germany

By MELISSA EDDY

BLOOMBERG Mar 27, 2013

Cyprus’s Plan B Is Still a Disaster

By Clive Crook

BLOOMBERG Mar 27, 2013

Escape From the Euro Zone: A Tragedy in Three Acts

By Caroline Baum

The Guardian, Thursday 28 March 2013

The euro survives, but where are the Europeans?

Timothy Garton Ash

10年前に,熱狂的にヨーロッパを感じた人々が,憤慨して国民のステレオタイプを語っている.

今週初め,キプロスの群集は「ヒトラー・メルケル」の横断幕を掲げて抗議した.まるで異なる種族のように,「北欧」と「南欧」とを一般化して悲観する言葉が並ぶ.高度な教育を受けた者までが,これまで考えたとしても,決して口にしなかったようなことを,公然と語っている.ヨーロッパ各地が反ドイツになり,ドイツには反ヨーロッパが増える.アメリカ中部の竜巻のように悪循環を描く.

しかし,ギリシャのGolden Dawnのようなネオファシストは例外であり,ほかには存在しない.ユダヤ人やイスラム教徒,移民を攻撃することはなく,無気力なギリシャ人や無慈悲なドイツ人を非難する.EUは帝国には程遠いし,その中でもドイツは帝国を望まない.むしろ,ヴィルヘルム2世の時代に比較するべきは現代のアジアと中国である.しかし,政治コミュニティーが必要とする感情の絆,同朋意識は薄れている.

もし失業して,精神の均衡を欠いたギリシャ人やキプロス人が,ドイツの政治家に向けて発砲したらどうなるだろうか?

相互の怨嗟を深める循環の原因は,ユーロ圏の制度ミスであり,緊縮政策に偏った調整の失敗である.しかし,危機の最深の原因は,単一通貨圏が17の国民的政治体に分かれていることだ.経済は大陸におよび,政治は国民に止まる.ユーロ圏の政治家たちは各国の選挙を恐れている.それは,今年の9月にメルケルを脅かすように,主要国で次々と待っている.改革を議論しても,常に誰かが国内選挙を気にしているのだ.

Giorgio BaseviBologna University)は素晴らしい提案をしている.この問題を緩和するには,各国の選挙を同時化すればよい,と.それはヨーロッパ規模の選挙となり,それぞれの国をヨーロッパの選挙区と呼ぶこともできる!

しかし,今は各国の政治指導者たちが,その国の有権者に,その国の言葉や歴史を駆使して,説得しなければならない.ギリシャ人のすべてが無気力ではない.ドイツ人のすべてが無慈悲ではない.そして,たとえ冷たく,湿ったヨーロッパ客船に乗っているという不満を感じても,外の海に沈むことはもっと恐ろしい,ということを話すべきなのだ.

新しい敵を創ってはどうか? という話は,やめてほしい.ヨーロッパと敵対してきたイギリス人としては,逃げ出したい.

The Guardian, Thursday 28 March 2013

Cyprus: lessons from a small disaster

Editorial

FT March 28, 2013

With Cyprus, Europe risks being too tough on banking moral hazard

By Nicolas Véron

NYT MARCH 28, 2013

In Cyprus, Feeling The Pain of a Bailout

By LANDON THOMAS Jr.

NYT MARCH 28, 2013

Curbs on Money Come Late to Cyprus

By FLOYD NORRIS

NYT MARCH 28, 2013

The Debate on Bank Size Is Over

By SIMON JOHNSON

FP MARCH 28, 2013

Rubles in the Sun

BY ANNA NEMTSOVA

VOX 28 March 2013

The capital controls in Cyprus and the Icelandic experience

Jon Danielsson


後半へ続く)