前半から続く)

VOX 18 March 2013

Cyprus: The next blunder

Charles Wyplosz

ヨーロッパは新しい大失策を示した.

政策担当者たちは1年近くもキプロスを議論してきた.特に,キプロスの危機はユーロ圏のシステム危機につながるか,である.問題は規模ではなく,ユーロ圏の反応だ.ロシアの預金が問題になった.どれが犯罪の資金洗浄なのか.救済融資の額も問題になった.キプロス政府はGDP100%を求めたが,キプロスはユーロ圏の0.2%でしかない.

キプロスはヨーロッパの救済融資のモデルに従った.厳しい緊縮策が融資条件である.そのもたらす意味は明白だ.財政赤字を減らすが,それ以上にGDPを減らして,その債務比率は悪化するだろう.一層の救済融資が求められ,失望が広がる.失業が急増し,経済・社会の苦痛が増す.ポピュリスト政党が勢力を拡大する.

新しい要素は,銀行預金に「課税」することだ.それはヨーロッパ中の預金保険を信用できないものにする.2008年は逆だった.アイルランドは銀行を守るために,預金の全額を保証した,その結果は政府の破たんと救済融資につながった.ギリシャ救済が特殊ケースである,という主張は間違いだとわかった.

預金への課税は,2001年にアルゼンチンが資金流出を止めるために預金封鎖をした‘corralito’になるだろう.それは経済取引を崩壊させ,一気に苦痛を高めて,国民の怒りは政府を2度も崩壊させた.キプロスの危機を長引かせれば,同じことになる.

救済融資を行っても,金融監督は各国の支配に従っている.金融監督は特殊利益集団に深く結びついているから,この救済融資も条件は守られないだろう.

キプロスの破たんは他のユーロ圏諸国に広がるのか? 広がらない,広がる,ユーロ圏を崩壊させる,というシナリオのどれになるかは,ECBに対するマーストリヒト条約の制約,a no-bailout clauseを無視するかどうか,によるだろう.ギリシャについてそれを無視したことが危機の始まりだった.

キプロス危機で,新たに,預金保険のシステムが崩壊する.

guardian.co.uk, Tuesday 19 March 2013

Cyprus's dramatic choice

Costas Lapavitsas

FT March 19, 2013

Big trouble from little Cyprus

By Martin Wolf

「ラクダは,委員会が設計した(失敗作の)馬だ,と言われる.これは厳しい環境に適応したラクダに対して,まったく不当な主張である.だが,残念なことに,ユーロ圏の救済融資には,不当と言えない.」

まず,なぜ銀行の再編が必要なのか? キプロス政府は,多くの債務を負い,それを救済できないほど肥大化した銀行部門に責任を持っている.

銀行は崩壊寸前であり,ECBはキプロス政府に融資条件を受け入れなければ資金供給を止めると脅した.銀行は資本を増強しなければならない.納税者だけではこれをできない.預金者に課税しなければ,救済融資は100億ではなく172億ユーロになり,債務/GDP比率が高く,2020年までに100%にするという計画も実現するのは難しい.将来,融資が繰り返されることになる.

EUが直接にユーロ圏の銀行の資本を増強するなら,その額は重要でなくなっただろう.しかし,銀行同盟はまだ機能せず,ロシア人の預金を救済することに主要国が反対した.

預金に課税することは泥棒である,という意見が多い.それはナンセンスだ.キプロスの銀行は資産をほとんど待たず,それでも預金者にはいつでも引き出しに応じると約束している.それは政府による支払いを前提しているからだ.銀行預金は政府債務なのである.

銀行が損失を出した場合,負担をどうするか.Nicos Anastasiadesキプロス首相は,預金に課税すると決めた.それは少額預金者に少なく,高額預金者にはもっと多く課すべきだろう.しかし,ロシア政府は憤慨するし,預金者も怒っている.

なぜ納税者が銀行を救わねばならないか? それは不当なことか? 政府は,納税者を代表して,この危険な金融システムを作った.納税者がそのコストを分担しなければならない.しかし,保証されていたはずの預金者にまで課税したのは失敗だった.また,銀行間の違いを慎重に区別して預金したものまで,一律に課税した.これは強奪に等しい.

キプロスに限らず,どこでも銀行はわずかな資本で危険なビジネスを行っている.それは政府を支払い不能にする危険がある.しかし,銀行救済を拒めば危機は拡大し,海外にも波及する.緊密に統合化したユーロ圏が崩壊する危険がある.

もっと多くの自己資本を要求し,財政を健全にして財源を確保し,規制を強化して,ユーロ圏全体で金融監督と財政支援を行うべきだ.

FT March 19, 2013

Moscowcanprotect Nicosia from bullies

By DimitryAfanasievchairman of the Russia-based law firm

メルケル首相は,キプロスの銀行危機に責任ある者が支払うべきであり,それはヨーロッパの納税者ではない,と主張した.そしてキプロスにおけるロシアの預金者は損害を受けた.ドイツ首相の政治的なご都合主義のせいだ.

キプロスの銀行が危機に陥ったのは,ドイツがその投資を守るためにギリシャの債務を再編し,それによってキプロスの銀行が大きな損失を受けたからだ.逆に,ロシアからの投資はキプロスの発展に貢献し,近代的なヨーロッパの国家に変えた.

ドイツの官僚たちは,何を根拠にロシアの預金者がマネー・ロンダリングをしていると主張するのか? 6万ユーロを保有するイギリス人年金生活者や,普通のキプロス市民と,どう区別するのか?  キプロスは,古い友人と新しい友人との間で陥穽に落ちた.ロシアはイギリスと協力してドイツの不当な介入を阻止し,キプロス政府からの援助要請に応えるべきだ.

FT March 19, 2013

Cyprus reveals chinks in ECB armour

By Ralph Atkins in London

FT March 19, 2013

The second option open to Cyprus

NYT March 19, 2013

Rejection of Deposit Tax Scuttles Deal on Bailout for Cyprus

By LIZ ALDERMAN

BLOOMBERG Mar 19, 2013

In Cyprus, Europe Sets a New Standard for Stupidity

By Clive Crook

SPIEGEL ONLINE 03/20/2013

Anger in Cyprus

'They Can't Just Penalize Us Because of the Banks!'

By Nicolai Kwasniewski in Nicosia

The Guardian, Wednesday 20 March 2013

Why we should be cautious about cheering on Cyprus's no vote

Nikos Chrysoloras

guardian.co.uk, Wednesday 20 March 2013

Can the US trust the EU after the Cyprus debacle?

Heidi Moore

FT March 20, 2013

Cyprus crisis: The four scenarios

By Ben Hall in London and Peter Spiegel in Brussels

FT March 20, 2013

The second option open to Cyprus

FT March 20, 2013

Ireland points way for Cyprus and euro periphery

Lorenzo Bini Smaghi

SPIEGEL ONLINE 03/20/2013

Bailout Clash

Why Europe Must Play Hardball with Cyprus

An Analysis by Christian Rickens

SPIEGEL ONLINE 03/20/2013

Cyprus Turns to Moscow

Scenarios for a Russian Role in the Bailout

By Benjamin Bidder in Moscow

SPIEGEL ONLINE 03/20/2013

Banks on the Brink

ECB May Cut Emergency Funding to Cyprus

WP March 20, 2013

Will Cyprus’s woes infect the rest of Europe?

By Robert J. Samuelson

BLOOMBERG Mar 20, 2013

Cyprus Pilots an ‘Exodus’ Without Paul Newman

By Caroline Baum

BLOOMBERG Mar 20, 2013

Cyprus’s Four Options to Avoid Banking Collapse

By Megan Greene

キプロスはユーロ圏を離脱し,大量の紙幣を印刷するしかないのか?

幸いなことに,まだ代案がある.第1に,ECBが資本規制を認めることだ.それはすでにバンク・ホリデーや資金移転規制で実施されている.ECBが流動性を供給する限り,議会が融資条件を拒んでも,まだ取り付けは問題にならない.それは資本規制とともに,キプロス政府に解決のための時間を与える.

キプロスが必要とする資金は,1.裕福なロシア人の預金者,2.債券保有者,3.年金基金,4.海底油田の将来の収益,5.トロイカとの再交渉,6.ロシアからの支援.

VOX 20 March 2013

Cyprus is different

Marco Annunziata

VOX 20 March 2013

Walking back from Cyprus

Mitu Gulati, Lee C. Buchheit

FT March 21, 2013

Time for Cyprus to make its choice

FT March 21, 2013

Berlin is right to say no gain without pain

By JosefJoffe

過去500年間の歴史でも,ドイツは強国として憎まれた.1890年から,皇帝ヴィルヘルムはチュートン的な政策を追求し,失敗を重ねた.現在は,キプロスの救済策で,ショイブレ財務大臣やメルケル首相が責められる.

キプロスの議会が融資案を拒否すると,たった一晩で,オリガークやロシア人課税避難者の国から,年金生活者や預金者の国に早変わりして,次にはロシア政府も介入し始めた.ドイツは罠に落ちたのだ.一方では,預金引き出しに走る人々がリスボンやアテネで待っている.他方では,ベルリンが債務免除というモラル・ハザードへの道を開くと債務諸国が待っている.

ドイツはこんな機能しない通貨圏を保護する必要があるのか,と,最後にはドイツ国民が言い始める.地中海諸国もドイツのように改革できる,というのは間違いだった.

ドイツには難しい世界だ.ヨーロッパの中では強すぎるが,ヨーロッパのルールを支配するには弱すぎる.しかし権力闘争は,60年間の統合化を経て,退屈なほど平和なものになっている.だからタブロイド紙はドイツを攻撃する.

FT March 21, 2013

Markets Insight: US ‘snowbird’ effect is what Europe needs

By Gillian Tett

数十年前,フロリダは経済的に遅れていた.アメリカ北部やカナダからフロリダに旅行者が増え,その不動産を購入する人が増えた.それは,アメリカ内の通貨システムや文化に共通性があり,インフラ投資が行われたこともあるが,同時に,法的な予測可能性が高いことも重要だった.

同じパターンはヨーロッパにも表れている.ドイツやオランダ,フィンランドの年金生活者が,ギリシャやキプロスの別荘を購入して,暖かい土地で老後を楽しむ.それが金融危機や緊縮策を緩和するかもしれない.しかし,それはアメリカよりも少なく,最近はむしろ,不穏な南欧よりもマイアミの不動産が売れている,という.

これを観ても,ヨーロッパは経済圏としての将来を悲観するべきだろう.

SPIEGEL ONLINE 03/21/2013

End of an Era

Cypriot Financial Sector Faces Collapse

By Stefan Kaiser

SPIEGEL ONLINE 03/21/2013

Search for 'Plan B'

ECB Sets Ultimatum as Cyprus Moves toward Deal

By Nicolai Kwasniewski in Nicosia

NYT MARCH 21, 2013

For Euro Zone, a Cyprus Exit Would Have Little Impact

By LANDON THOMAS Jr.

NYT MARCH 21, 2013

The London Whale, Richard Fisher and Cyprus

By SIMON JOHNSON

WP March 21, 2013

Cyprus triggers another euro-zone crisis

By Editorial Board

WSJ March 21, 2013

A Modest Cypriot Proposal

Project Syndicate 21 March 2013

Global Markets' Time Factor

Mohamed A. El-Erian


VOX 16 March 2013

The 'Good Global Citizen' remit for the international community: A novel responsibility for the IMF

Biagio Bossone, Roberta Marra


l  シリア

WP March 16, 2013

Real steps for a post-Assad Syria

By David Ignatius

FT March 19, 2013

Berlin is well placed to lead on Syria

By UlrichSpeck

FP March 21, 2013

The dearth of strategy on Syria

Posted By Stephen M. Walt


l  イラク戦争の10周年

WP March 16, 2013

Five myths about Iraq

By Rajiv Chandrasekaran

guardian.co.uk, Sunday 17 March 2013

My broken dream for Iraqi Kurdistan

Berivan Dosky

FP March 18, 2013

The Illogic of Iraq

BY JOHN ARQUILLA

NYT March 19, 2013

What America Learned in Iraq

By JOHN A. NAGL

NYT March 19, 2013

A Decade of Despair

By AHMAD SAADAWI

NYT March 19, 2013

Iraq: Where Terrorists Go to School

By JESSICA STERN

NYT March 19, 2013

Ten Years After

By THE EDITORIAL BOARD

NYT March 19, 2013

Iraq’s Fragile Future

By THE EDITORIAL BOARD

SPIEGEL ONLINE 03/20/2013

Iraq Anniversary

10 Lessons from America's 'Dumb War'

By Sebastian Fischer in Washington

WP March 21, 2013

The painful lessons of Iraq

By David Ignatius

10年前,サダム・フセインを倒すためにイラクに侵攻したことは,アメリカ現代史で最大の戦略的間違いであった.もし戦後の占領計画が準備され,イラク軍を解体しなかったら,その後,どうなったか,ほかにも多くの「もし」がある.しかし,アメリカが選択としての戦争を,こんな風に賭けるべきではなかった,というのは変わらぬ真実である.

私の友人が,戦闘が始まってから数か月後に,私に言ったことを今も覚えている.「アメリカがかわいそうだ.あなたたちは苦境に陥っている.アメリカは中東の国と同じになるのだ.アメリカは決してイラクを変えられないだろう.しかし,イラクはアメリカを変える.」

Project Syndicate 21 March 2013

Iraqi Hope Dies Last

Ayad Allawi


l  グローバル化と不平等

FT March 17, 2013

Dangers lurk in US permanent campaign

By Edward Luce

FT March 18, 2013

The hidden convergence of America’s rival budgets

Jeffrey Sachs

NYT MARCH 18, 2013

Singapore’s Lessons for an Unequal America

By JOSEPH E. STIGLITZ

不平等は世界各地で拡大している.しかし,その影響は地域により,国によって違う.

シンガポールは,社会的・経済的な公平性を重視した成功例である.経済格差の小さい国は,高い成長も実現する.シンガポールが1963年にイギリスから独立して以来,どれほど大きな変貌を遂げてきたか,想像するのも難しい.当時は労働者の4分の1が失業もしくは低雇用状態であり,所得は現在の10分の1以下であった.

シンガポールが「アジアの虎」になり,しかも平等を実現してきた条件は多くある.政府は,医療保険,住宅,年金に使うため,若い労働者の賃金の36%に及ぶ準備基金を集めた.国民すべてに教育を提供し,優れた学生は留学させた.個人の責任を重視し,政府は貧困の循環を絶ち,不平等を抑えるために介入し,そのため将来に向けた教育に大規模な投資を行った.都市化と近代化にともなう家族関係の崩壊を阻むことも重視している.

シンガポールの成功を,自由や民主主義の弾圧に関連付けて批判する意見もあるが,シンガポールには汚職が少なく,政府の透明性が高い.次第に民主化を進めている.

また,北欧諸国は,開放型で民主主義を重視したモデルを示している.成長と平等にはプラスの関係があるだけでなく,これら2つと民主主義の間にもある.それはまた,大きな不平等は経済を害するだけでなく,民主主義を弱める,と言える.

経済の諸力はグローバルに作用する.しかし,その結果がこれほど違うという事実は,各地域の諸力,特に政治が,このグローバルな諸力に形を与えているのだ.シンガポールと北欧は,平等な成長というものを示した.社会的正義を実現するには,子供たちへの教育が重要である.

アメリカのエリートたちは,移民と多様性を不平等の原因に挙げる.しかしスウェーデンは人口の14%が外国生まれであり,アメリカの13%を超えている.シンガポールも多民族,多言語,多宗教の国家である.

Project Syndicate 20 March 2013

Robert J. Shiller

Debt-Friendly Stimulus

WSJ March 21, 2013

What Would Hayek Do?

By EAMONN BUTLER


l  日本の改革

WSJ March 17, 2013

Japan's Abe Defends Trade-Pact Talks

By ALEXANDER MARTIN

FT March 18, 2013

Japan’s farmers dig in against trade deal

By Jonathan Soble in Tokyo

FT March 18, 2013

Monetary easing alone will not fix Japan

By Richard Koo

金融緩和と円安だけでは,1990年以後,民間部門の借り入れが減少して落ち込んだデフレ状態から抜け出せない.民間部門に代わって政府が支出を増やし,同時に,成熟経済として投資のフロンティアを拡大するために,規制緩和や市場開放を積極的に行う,構造改革を実行して初めて,アベノミクスは成功するだろう.

WSJ March 18, 2013

A Japanese Lesson About China for the Pope

By MEGHAN CLYNE

FP March 19, 2013

Why Japan and China could accidentally end up at war

Posted By Alicia P.Q. Wittmeyer

間違った情報伝達や判断によって核戦争が起きないように,米ソ間ではさまざまな措置が制度化された.東アジアにはそれがない.中国と日本は偶発事故から戦争が起きないように,緊張緩和を必要としている.

FT March 20, 2013

Abe is right to favour Japan’s future

By David Pilling

日本政府がインフレを促進することは,世代間再分配を促す点で意味がある.日本の若い労働者は,バブル崩壊後のデフレによって政府が高齢者の利益を守る政策を優先した結果,多くの不利益を受けてきた.民間部門の債務処理は遅く,収益の減少に企業はコスト削減で対応し,若者たちを派遣やパートで利用した.それは不公平なだけでなく,若者たちが社会保障システムを離脱してしまうように,日本の将来を脅かしている.

デフレは,皮肉なことに,利益を生んでしまう.政府は財政赤字を続けて債務を低利で増大し,老人たちは利子を失ってもデフレで利益を得て,低賃金の若者もデフレによって生活費を抑制してきた.

日本のように政府債務の90%を日本人が保有する場合,問題はデフォルトのリスクではなく,世代間の苦痛の分配である.政府はもっとバブル期に蓄積された富に課税するべきである.インフレもその一つであるが,相続税,不動産税を引き上げるべきだ.もっと言えることは,資金の乏しい家計ではなく,利潤をため込んだ企業に課税するべきだ.

WSJ March 20, 2013

Stagnant Japan Rolls Dice on New Era of Easy Money

By PHRED DVORAK and ELEANOR WARNOCK

WSJ March 20, 2013

Japan's New TPP Energy

By JOSEPH STERNBERG

WSJ March 21, 2013

Japan's TPP Fight Has Just Begun

By MICHAEL AUSLIN


l  オバマの中東政策

FP March 18, 2013

Why I hope Obama is bluffing

Posted By Stephen M. Walt

Project Syndicate 18 March 2013

The Middle East’s Lost Decade

Joschka Fischer

FT March 19, 2013

America must be responsible in its pivot to Asia

Kurt Campbell

FP MARCH 19, 2013

So You Want to Be a Peacemaker?

BY AARON DAVID MILLER

NYT March 19, 2013

Democrats, Dragons or Drones?

By THOMAS L. FRIEDMAN

WP March 19, 2013

President Obama’s to-do list for his Mideast trip

By Editorial Board

FT March 21, 2013

Middle East needs more than fine words

By Philip Stephens


l  貿易ブロック間交渉

FP March 18, 2013

Trade Coalitions of the Willing

BY DANIEL ALTMAN

WTOの不幸なドーハ開発ラウンドより,オバマ政権は,もうすぐ日本も参加するTPPと,ヨーロッパとの大西洋自由貿易交渉によって,世界の自由貿易体制を指導するべきだ.ドーハ・ラウンドは,その複雑さと交渉システムのせいで失敗した.すべての国が多くの分野で妥協することは難しく,しかも,すべての国が合意の拒否権を持っていた.

代替案はすでにある.巨大な貿易ブロックを形成して,ブロック間で相互利益を拡大することだ.フランスやインドのような,交渉を止める国はいなくなる.それは本質的に有志同盟であるからだ.アメリカ政府はTPPAPECのすべての国の参加を求めるだろうが,それが実現しなくても交渉は止めなくてよい.

巨大貿易ブロックはゲームのルールを変えるだろう.TPPEUASEANの貿易圏内では生活水準や生産パターンが次第に収斂するから,その多様性を維持するために貿易を拡大しようとするはずだ.参加しなかった国は遅れに気づき,貿易や投資をより強く求めるだろう.

VOX 21 March 2013

The transatlantic trade talks and economic policy research: Time to re-tool

Simon J Evenett, Robert M. Stern


Project Syndicate 20 March 2013

Taking Safety Littorally

Fredric Raichlen

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The Economist March 9th 2013

The rise of the sharing economy

Forestry in Japan: Killing two birds with one tree

Tibet’s future: The limits of despair

Spain’s economy: Not yet the new Germany

(コメント) 「シェア・エコノミーの誕生」は,半信半疑なまま,深く驚きました.自分が持っているけれど使わない物を,他人に貸す.他人の物を使う.そんな取引が容易になってきた,というわけです.たぶん,これもインターネットです.人々はインターネット上の関係を緊密化し,その関係上で信頼し,取引コストの非常に小さな状態で,法律や税制が有利に働けば,柔軟な取引の拡大・制度化(企業化)を受け入れるのです.

被災地の住宅不足と花粉症対策の話は別記します.中国政府の弾圧と投資にもかかわらず,チベットにおける抗議の焼身自殺は広がります.スペインの債務危機はかつてのドイツと同じような制度改革から競争力と成長を実現する,という期待を紹介しています.

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IPEの想像力 3/25/13

確かに,キプロスの債務やタックス・ヘイブンの問題は以前から指摘されていました.しかし,ギリシャよりさらに小さなキプロス(人口80万人)が,ユーロ圏を崩壊させる危機にまで拡大する危険性は,よく理解されていなかったのです.すなわち,1EU内タックス・ヘイブンの救済を嫌うドイツ国内選挙前の論戦,2.銀行同盟とモラル・ハザードにこだわるドイツ政治家と有権者の意識,3.小口預金への課税を組み込んだ救済融資案への反発と国際的波及,4.キプロス国内の政治エリートや銀行家,ロシア富裕層との関係,など.

キプロス問題では,ドイツの発言と行動が注目を集めています.ギリシャやスペインで社会紛争が広まり,キプロス救済では,ロシア人富裕層へ重く課税することがロシア政府の反発を呼びます.債務・通貨危機は,第1次世界大戦前のように各国政治状況が悪化するなら,ユーロ圏解体,ドイツとロシアとの戦争にさえ至るリスクになるのです.(ロシアの地政学的な駆け引きについては,ロイターの論説でFelix Salmonが考えています.)

昼のニュースを観ていて,日本の外務大臣が映りました.そして,この人を全く知らない自分に驚きました.自民党も大きく変わったな? いや,外交問題は安倍首相の最大の難所であるから,これは自分で管理するのだろうか? この危険な時期に,大物の政治家はだれも引き受けなかった? 問題がこじれた時に責任を取らせる? ・・・などと邪推しました.

この人,岸田文雄氏がどのような人物か,早速,Wikipediaをのぞいてみました.早稲田大学法学部,日本長期信用銀行,そして,宏池会会長,という経歴が目を引きます.そういう意味で,有能な大物政治家なのでしょう.しかし,祖父,父,そして本人が3代目の政治家であり,実業家,官僚,さらに,宮沢喜一元首相とも姻戚関係がある,ということに驚きました.

日本の政治は,硬直化した社会制度を変える前に,政治の硬直化を打破しなければなりません.

・・・「アメリカ人,ヨーロッパ人が力を結集できなければ,彼らの未来がどのようなものになるかを知るのは簡単だ.日本に目を向ければ,容易に想像がつく.」(ファリード・ザカリア「先進民主国家体制の危機―改革と投資を阻む硬直化した政治」『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2013 NO.2

・・・Barry Eichengreen David Pillingの論説紹介も日本に言及しています.見てください.

The Economistの囲み記事は,大震災から2年目の東北における住宅不足と,日本人の深刻な花粉症アレルギーとを結び付けて,一石二鳥(一木二鳥)の解決策を検討します.林業の経営者の高齢化,安価な木材輸入の自由化,住宅需要の冷え込み,など,花粉症を広めた政治経済的な原因はいろいろあるでしょう.しかし,農林水産大臣,厚生労働大臣,建設業界,高齢者層,などが協力して,花粉症対策として大量の杉を切って,その風土に適した木に植え替え,東北の被災者のために新しい住宅を建てるのです.しかし,関係者が協力できれば,というとき,日本ではそれを見捨てます.・・・日本の政治が悪い.

ザカリアの論説は,こうも書きます.かつて欧米諸国やIMFは発展途上国に成長の処方箋として,次のような指示を与えた.

「世界市場の競争に経済を開放する構造改革を実施し,労働力の流動性を高め,無駄が多く,経済をゆがめている補助金制度をなくして,成長を刺激する投資に特化せよ.」

これは,現在,問題に直面した先進諸国に必要な処方箋であるが,政治の硬直性によって,実施されない.政治は特殊利害による集団が支配するから,新しい制度や改革を受け入れない.

・・・ちょうど,バブル崩壊後,また,大震災後の日本政治がそうであるように.そして私は,NATO軍が撤退した後のアフガニスタンで,ガバナンスが,女性たちがどうなるのか,心配です(IPEの想像力 1/23/12IPEの風 5/7/2007).

日本人に理解しやすいイメージを重ねるなら,キプロス問題とは,アイスランドの金融破綻と尖閣諸島を重ねたような位置にあるのです.だから今,岸田外務大臣が,こうした問題に重要な提案を行い,解決に向けて協力を促す力が日本の政治にあることを示してほしいです.

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