前半から続く)


l  市場だけでは解決できない

NYT February 16, 2013

Equal Opportunity, Our National Myth

By JOSEPH STIGLITZ

我々の信念は,最悪の貧困に生まれた少女にも,他の誰とも同じ成功の機会がある,という者だ.なぜなら彼女はアメリカ人だから.

しかし,オバマが述べた希望は,現実とあまりにも遠く隔たっている.ますます多くの研究が,アメリカは機会の国ではなくなった,と述べている.

社会的移動性や両親の資産が子供に反映するのは,差別よりも,教育の問題が大きい.アメリカの高等教育をもっと貧しい人にも開放するべきだ.それにはいくつも方法がある.

The Observer, Sunday 17 February 2013

The meat scandal shows all that is rotten about our free marketeers

Will Hutton

馬肉問題は,環境長官Owen Patersonの危機であり,保守党全体の危機である.

Patersonは,食品の安全に責任がある.彼が巻き込まれた馬肉騒動の中で,サッチャー主義の時代は何もかも崩壊した.すなわち,市場のもたらす純粋な奇跡,ビジネスを「富破壊的な」規制から解き放つべきだ,国家は圧縮せよ,EUは必要のない集団的プロジェクトであるから,イギリスは急いで独立せよ,など.すべて間違いだ.

食品基準局FSAは,「富創出的な」スーパーマーケットや食品会社に嫌われている.1700人もの検査官が不意にチェックするのは,もっと「簡便なやり方」がよい.そして,FSA800人に減らした.馬肉加工業者は不況下にも拡大し,ヨーロッパ全体にネットワークを展開する.

地方政府のサンプル調査は,予算削減により,70%も減ったところがある.Tescoのビーフ・バーガーに29%も馬肉が入っていたケースは,アイルランドのFSAが発見した.巨大スーパーは何も言わない.自分たちに住みやすいよう,ロビー活動をしてきた.もっと消費者の視点で,供給業者にも正常な利益のマージンを許すような,政府を含めた,ステークホルダーによる世界であるべきだ.

Patersonは,効果的な規制が競争的な優位になることを理解できない.厳格なFSAは食品の金本位制である.資本主義がそれ自身で最高の結果をもたらすことはない.アメリカのシンクタンクが何を言おうとも,法律や規制を熟慮しなければならない.サプライチェーンの組織のされ方,企業の経営や財務に関して.それらを無視すれば,破局に至る.

Patersonは,地理的に,イギリスがヨーロッパの食品供給ラインから切り離せない,と知っただろう.

The Guardian, Monday 18 February 2013

How to turn a housing crisis into a homeless catastrophe

Polly Toynbee


l  イギリスの緊縮策

The Observer, Saturday 16 February 2013

George Osborne: why I am committed to global tax reform

George Osborne

FT February 18, 2013

Supply matters – but so does demand

By RobertSkidelsky andMarcusMiller

技術革新,インフラ投資,熟練.これらが成長をもたらす.

緊縮策を取るオズボーン蔵相を支持する論説もある.Ryan Bourne and Tim Knoxは,イギリスをサプライ・ショックの中にある,と考える.だから,金融・財政政策で需要を喚起しても効果がない.政府は「長期成長率」を高めるために,政府から民間へ資源を移すことが必要だ.こうして,財政赤字削減,そのための社会福祉削減,減税,銀行の資産再建,計画を破棄して,公共サーボ史を民間の競争にさらす,という,いつもの主張が出て来る.

需要と供給には関係がある.需要が不足すれば,それは熟練や人的資本を破壊し,供給能力を低下させる.これはマクロ経済学の古典的な論争を解く鍵である.Jean-Baptiste Sayは,供給があれば需要は必ず従う,と考えたが,Keynes1930年代にそうではないことを示した.重要な供給よりも少なくなる.需要が少ないとき,熟練(そして人的資本)が破壊され(履歴効果と呼ぶが),供給条件が悪化することで,論争は同じ答えを見出す.

生産的な投資を増やすべきだ.政府であれ,民間であれ,雇用を増やす生産的な投資を増やすことが将来の成長をもたらす.


l  ユーロ圏はなぜできたか?

VOX 17 February 2013

Making the European Monetary Union

Harold James

政治統合を欠いた通貨統合は不可能である,と主張し,ユーロ圏に統一の金融当局だけでなく,統一国家を主張する意見がある.Thomas SargentPaul de Grauweもそうだ.しかし,それはユーロ成立の過程を誤解している.

ユーロは二つの理由でできた.第1に,国際通貨秩序の問題.第2に,ドイツの黒字累積,である.

前者は,ドルに依拠した調整可能な為替レート体制(ブレトン・ウッズ体制)が,1960年代後半から70年代の初め,ドル準備乗る席とアメリカ金融政策にかかる政治圧力で崩壊したことである.1980年代半ばのドル高が保護主義に向かうのを避けるため,G7諸国は1987年にルーブル合意で目標相場圏を採用した.

しかし,その後のヨーロッパでは,仏蔵相Edouard Balladurと独外相Hans Dietrich Genscherにより厳格な為替レート体制を目指すことが合意され,それをドロール委員会は中央銀行家たちによる通貨同盟への期限と計画として示したのだ.

後者のドイツ黒字問題は,ブレトン・ウッズ体制下で,赤字国が外貨準備枯渇から厳しい引き締めを強いられることをフランスの政治エリートたちは嫌っていた.他方,フランスが引き締めを回避するためにドイツに拡大策を要求することを,ドイツは超インフレの記憶に影響された国民,特に,物価安定を重視する(強力で,独立した)ドイツ連銀が嫌っていた.

そこで独仏は,高度な政治メカニズムを設けて問題を回避しようとした.しかし,やはりフランスの政治家たちには緊縮策が強いられ,ドイツ連銀にはインフレ容認が求められる,と懸念された.つまり,通貨同盟は,このような政治過程を消し去る(見えなくする)ことが目的であった.金融政策は物価安定を目標として自動的に決まる.

ユーロは,このように,国家の無い通貨であるように設計された.ユーロ・コインには誰も(支配者は)刻印されていない.それはECBに管理される.

単一通貨は,真面目に,細部にまで設計されていた.ベルリンの壁が崩壊する前に報告書は完成し,特に2つの点が強調された.1.財政規律には金融市場の圧力だけでは十分ではない.巨額の赤字を借り入れる国はスピル・オーヴァー効果があり,他国にとって問題だ.ルールが必要になる.2.中央銀行家たちはこのシステムに欠陥がある(ユーロ圏の金融監督が独立していない)と考えていた.特に,物価安定だけでなく,金融秩序の維持をECBに求めることにドイツ連銀は強く反対した(金融政策が物価安定のために使えなくなる).

VOX 18 February 2013

Designing a federal bank

Harold James

アメリカの連邦準備銀行制度を,ヨーロッパの通貨統合に対しても有効なモデルにする主張は,その多くの違いを理解していない.

初期の連銀は国際金本位制と似たシステムで地域間の決済を行っていた.アメリカ連銀の成立は,地域の準備銀行やビジネス界から権利を奪う者として敵視された.幹部会12人には,7人の対抗勢力と,大統領が上院の助言もしくは同意を得て5人を指名する.

ユーロ圏は,すべての国に同じ金利を適用してバブルと危機を招いた.金本位制では違う.初期の連銀では融資の担保が異なった.アメリカ連銀が地域間の資金移転を銀行間市場に頼ったように,今のユーロ圏もTARGETが不均衡を維持している.しかし,前者には金利が付くが,後者は記録するだけだ.TARGETによる銀行の安定性保証・救済が,次第に,連邦財政を要求するだろう.

Project Syndicate 18 February 2013

The Collateral Damage of Europe’s Rescue

Hans-Werner Sinn

ECBによる赤字諸国の政府債券救済はユーロ危機を緩和し,ユーロ高を招いた.フランスのオランド大統領はユーロ高の是正を求めているが,ECBはそれを拒んだ.為替レートに対する介入は無益である.ユーロ圏内のデフレを止める介入が,ユーロ危機の根本問題,南欧諸国の競争力不足を強めている.

FT February 19, 2013

Why the euro crisis is not yet over

By Martin Wolf

ユーロ危機は短期的に鎮静化したが,ユーロの生存が確実になったとは言えない.

通貨同盟は失敗した結婚だが,離婚するとは限らない.そして,まだ良い結婚に変えることができる.その条件は,できるだけ早く健康を回復し,次の危機が起きないように改革を行うことだ.前者には,支払えない債務の償却,対外不均衡の解消,現在の不均衡の融資,が求められる.

FT February 19, 2013

Germany must decide the power it wields

By UlrichSpeck

VOX 21 February 2013

Panic-driven austerity in the Eurozone and its implications

Paul De Grauwe, Yuemei Ji,

金融市場の動きは恐怖やパニックを生じ,自己破壊的になりうる.それに対する金融・財政政策が過度にデフレに傾くことで,ユーロ圏を苦しめている.

金融不安やパニックに経済政策の変更で対応してはならない.南欧諸国は赤字の削減に取り組むべきだが,そのタイミングや程度は合理的に選択するべきであり,パニックによって決めてはならない.また,北欧諸国は同様に緊縮策を急ぐよりも,財政赤字を拡大してユーロ圏全体の需要を刺激する余地がある.


l  最低賃金の引き上げ

NYT February 17, 2013

Raise That Wage

By PAUL KRUGMAN

オバマ大統領は一般教書演説で多くの良い考えを示した.しかし,それを実行するには,財政支出が必要な場合,議会の共和党員が反対する.財政支出を必要としない,最低賃金の引き上げ,は実行できる.その政策が正しければ.

経済学の教科書が否定する(価格を上げると需要が減るから)にもかかわらず,最低賃金の引き上げは正しい.それは低過ぎるし,多くの研究が示すように,雇用を犠牲にしない.貧しい,勤勉な労働者たちの賃金を上げることは,その他の多くの目標にも関わっている.

WP February 19, 2013

A better deal than minimum wage

By Charles Lane


FT February 18, 2013

Chinese leadership to reform gulags

By Kathrin Hille in Beijing

政治改革の中でも,労働矯正所the laojiao systemの改革が最も強く求められている.人権活動家は,これこそが「警察国家」の基礎である,という.習近平の前任者,胡錦濤が国内の治安警察に大きな権限を与えて以来,法体系の整備が主張されるようになった.Liu XiaoboAi Weiweiの有罪判決や拘留が国際的な注目を集めた.

1950年代に,政治的反対派を弾圧するためにできたが,その後,治安警察が危険と見なす者に拡大された.2009年に,政府はその数を16万人を示している.収容された人々を守る弁護士や判事たちは,このシステムを憲法違反と見なしている.釈放された人々は,強制労働,拷問,虐待について語っている.

WSJ February 21, 2013

Fixing China's Harmful Inequality

By YUKON HUANG


l  中国と黒字国の改革

WSJ February 18, 2013

Beijing's Steady Progress Toward Rebalancing

By ESWAR PRASAD

新しいデータは,中国の成長が投資と輸出に依存したモデルから離れたことを示している.民間および政府による消費が2011-12年の成長を半分以上支えた.貿易収支,経常収支の不均衡は,2007年(GDP7.6%10.1%)をピークに,継続して縮小している.2012年の黒字は,両方とも3%以下である.

その理由は,外国の需要が弱いことに加えて,中国政府が資本の流出入に対する制限を緩和したことで,投資家や企業が多様化のための海外投資を始めたことだ.それは資本逃避ではなく,経済発展の過程である.また,GDPに占める民間消費の割合は,その減少傾向が止まった.

Project Syndicate 18 February 2013

Rebalancing the State’s Balance Sheet

Michael Spence

Project Syndicate 19 February 2013

The Saver’s Dilemma

Michael Pettis

過去200年間で最大の国際金融危機は,貯蓄過剰の諸国から貯蓄不足の諸国に資本が還流する過程に生じた緊張が原因であった.たとえば,ドイツとスペインの間に形成された債務が,ユーロ危機を生じ,経済に均衡回復rebalanceが強制された.

もしスペインなど,貯蓄不足の国だけで均衡を回復するなら,80年前にケインズが警告したように,その結果は失業の増大である.ドイツとスペインの貯蓄率が異なるのは,文化的な違いを議論する通説と違って,その国の政策の結果である.

1に,家計がGDPに占める割合である.アメリカのように,GDPの大きな割合を家計が占める諸国では消費率が高く(貯蓄率が低く),ドイツや中国のように,GDPの大きな割合を企業や政府が占める諸国では消費率が低い(貯蓄率が高い).

2に,所得分配.すなわち,より裕福な人々は,富よりも消費を増やすスピードが遅く,一般に貯蓄を増やす.第3に,家計の借入に対する態度.例えば,スペインでは不動産ブームのせいで,富が増えると信じた人々が借入を増やして消費した.

そして,この3つの要素に影響する外国の政策がある.例えば,ドイツは1990年に労使が合意して賃金を抑制した.それは貯蓄率を高め,対外黒字を累積した,スペインのような他国の赤字を増やした.スペインには3つの対応があった.1.保護主義や切り下げで赤字を拒む.2.国内生産・雇用(そして国内貯蓄)を減らして,ドイツの過剰貯蓄を吸収する.3.ドイツの過剰貯蓄を借り入れて,国内の消費や投資を増やす.

スペインは,ユーロ圏であり,失業を避けた.つまり,3.による赤字と債務の増大を選択した.その多くは不動産とインフラ投資に消えた.もしドイツがそれほど過剰貯蓄を持たなかったとしたら,スペインの債務はもっと早く抑えられ,貿易に介入するか(あるいは,ユーロ圏を出て切り下げるか),失業を増やしただろう.そして,切下げと同じくらい,賃金を下げねばならなかったはずだ.

低貯蓄国の調整は,高貯蓄国が調整しなければ非常に困難だ.この点が重要だ.貯蓄と投資はグローバルに均衡するのである.低貯蓄国の不況を強いることで彼らがユーロ圏から離脱するなら,調整の負担はドイツの失業増加となって現れる.ドイツが貯蓄率を引き上げたことに戻るわけだ.


l  安倍首相は大胆で賢明か?

WSJ February 18, 2013

An Open Letter to Shinzo Abe

By MICHAEL AUSLIN

安倍首相がオバマ大統領に話すべきことは3つある.1.日本は防衛予算を増額した.アメリカが防衛予算を制約される中で,共同して地域の安全保障を担う.2.日本は尖閣諸島を明確に領有し,東シナ海・南シナ海のバランス・オブ・パワーを維持する.3.日本はTPPに参加し,沖縄米軍基地の移転を進める.こうしてアメリカとの統合を強める.

BLOOMBERG Feb 19, 2013

Shinzo Abe Is Brave, But Is He Wise?

By Clive Crook

安倍晋三首相の大胆な経済再建策は概ね正しい.金融緩和(デフレ脱却)政策,財政刺激策(財政再建策の見直し),構造改革(規制緩和など,サプライ・サイドの改革),を挙げて,彼は「三つの矢」と表現した.

安倍の日銀批判は正しい.日本銀行は金融政策を失敗してきた.そのインフレ目標は曖昧で,低すぎた.名目的な低金利でも,それはデフレによって実質的な金融緩和でなくなる.日銀の量的緩和は短期資産の購入に限定された保守的なものだった.アメリカやイギリスのように,もっと長期資産を購入しなければならない.

他方で,安倍は円安を強調して「通貨戦争」の非難を招いた.日本が金融緩和によって景気回復することは誰にとっても歓迎される.その副作用として円安が起きても,成長によって円高になる.しかし,安倍はこの区別を明確にできず,間違った.G7で財務大臣がこの点を明確にしたのは正しい.

また,安倍が財政刺激策を自慢するのは間違いだ.Adam Posenが述べたように,日本の財政刺激策は効果を失っている.確かに,日本の財政破綻を懸念することはないが,長年に及ぶ財政赤字で政府債務が累積し,民間の投資を妨げている.また債務維持コストが政府の公共投資も制約している.財政刺激策は長期に使うべきではなく,日本はそれを減らす時期だ.

しかし,3つ目の構造改革は,まだ不明確であるが,もっと強調した方が良い.たとえば,訪米時にオバマ大統領と会って,TPP参加を表明することが国内の反対派を抑え,改革を促すために重要だろう.むしろこの点で,安倍の大胆さが求められる.

BLOOMBERG Feb 19, 2013

Is Currency War Breaking Out in Tokyo?

By Clive Crook

FT February 20, 2013

Wanted: BoJ believer in monetary policy

By DavidPilling

安倍晋三の経済学の知識はベン・バーナンキの生け花の知識ほどではないかと思えば,彼の名を冠した「アベノミクス」を称えるのは大げさであるが,アベノミクスの核心とは,経済学の正統的な主張にある.すなわち,デフレは貨幣的な現象だ.日銀がそれを許す限り,デフレは解消しない.

1994年以来,GDPデフレーターは18%も下がったが,日銀はその主張を認めなかった.デフレは実物経済の減少であり,金融政策では治せない,と.日銀は人口減少や中国などからの安価な輸入財をその理由と主張した.

確かに日本人はデフレ経済に生きる道を学んだ.しかし,長期にわたるデフレは経済を腐食する.政府の債務比率は高まり,民間のアニマル・スピリッツも失われる.老人たちの貯蓄は物価の下落で価値を増すが,若者たちは住宅を建てるのも,企業を起こすのも,遅らせることになった.

日本は,新しい日銀総裁の下で,緩やかなインフレにおいて均衡する新しい経済に移行するべきだ.

その移行過程には難しい問題がある.長期金利が上昇すれば歳入をすべて債務負担の増加によって失う.国債の価格下落は銀行の自己資本を破壊する.賃金が上がるまで,国民はインフレに苦しむ.しかし,それは誇張されている面がある.投資や融資が回復すること,歳入が増えること,銀行は高い金利で融資し始め,政府は金利上昇までに債務の借り換えを低利で進める.賢明な政府であれば,増税と支出削減を組み合わせて,この難しい移行を安定化できる.

WSJ February 20, 2013

Fighting the Last Currency War

By JOSEPH STERNBERG

WP February 21, 2013

Shinzo Abe’s new agenda: Better ties with U.S.

By Fred Hiatt

FP FEBRUARY 21, 2013

How Obama can change the game with Japan

Posted By Clyde Prestowitz

TPPに入れて複雑な制約を増やされるより,日本をNAFTAに入れるべきだ.そしてNAFTAを通貨同盟にも拡大するのがよい.


Project Syndicate 18 February 2013

India’s Growth Crossroads

Haruhiko Kuroda

アジアの成長回復には,中国とインドの成長が重要である.しかし,中国に比べて,インドの回復は遅れている.インドがより包括的で持続可能な成長を実現するためには,4つの課題が解決される必要がある.

1.巨大なサービス部門をインターネット時代に適合した姿に近代化すること.2.インフラ投資を民間で進めて,投資環境を改善すること.3.未熟練・判熟練労働者を教育・訓練し,質を高めること.4.都市化が進む中で,環境問題に配慮した投資を計画すること.

アジア開発銀行は協力し,民間部門の参加と競争を促し,SAECなど,地域協力に向けてインドが指導力を発揮するべきだ.


NYT February 18, 2013

The Trouble With Online College


l  ロボット時代の雇用問題

Project Syndicate 19 February 2013

The Rise of the Robots

Robert Skidelsky

いわゆる「ロボットの台頭」は失業の時代を拓くのか?  David RicardoKarl Marxは機械化が雇用を失わせると考えた.ラッダイトたちが機械を破壊した.しかし,その後恐怖は薄らいだ.

非常に長期を考えれば,雇用は失われるだろう.2011年,中国企業はロボットに80億元投資した.しかも,機械化は製造業だけでなく,スーパーマーケットなどの低熟練労働にも広まっている.最近のFTの記事は,教育や医療における機械化を伝えている.

データ処理やロボット工学など,新しいタイプの雇用が生まれる,と楽観する意見もある.しかし,Twitterはソーシャル・メディア業界の巨人だが,Kidderminsterの中規模のじゅうたん工場ほどの雇用ももたらしていない.90億ドルの資本総額に対して,世界全部で,たった400人しか雇用していない.

現在の失業は,機械化によるものではなく,2008年の危機から回復が遅れているからだ.しかし,構造的な失業者は増える傾向にある.ケインズが「技術的失業」と読んだように,雇用は失われ,人間は不要になる.

貧しい諸国では雇用をシェアする現象が見られる.エコノミストたちはこれを「偽装失業」と呼ぶが,貧困を減らすことではなく,雇用を維持することが目標になれば,それは見直されるべきだろう.もし機会が労働者の雇用を半分にするなら,失業させるより,彼らの労働時間を半分にする方が良い.

しかし,そのためには,社会的な思考に革命を必要とする.


FT February 21, 2013

The Fed will opt for the lesser of two evils

Mohamed El-Erian

FT February 21, 2013

The deal to avoid a US fiscal crunch

By RogerAltman

NYT FEBRUARY 21, 2013

Twelve Angry Central Bankers

By SIMON JOHNSON


Project Syndicate 21 February 2013

The Coming Atlantic Century

Anne-Marie Slaughter

「西側の富は,緩やかに,しかし確実に,増えている.欧米を合わせれば,世界GDPの半分を超え,他を数倍した軍事力,ますます増大するエネルギー資源を支配する.欧米派外向的能力,開発支援に優れ,民主的で平和な社会を実現し,人類の権利や尊厳,可能性に共通の関与を示す.」

アメリカはヨーロッパを出て,アジアに旋回するのではない.ヨーロッパとともに,アジア旋回を遂げる.それはラテンアメリカの西海岸からアフリカ東海岸まで広がる,大西洋の世紀である.

******************************

The Economist February 9th 2012

Change in North Korea

North Korea: Rumblings from below

China’s currency: Yuan for the money

Online identity: Not a dog

(コメント) 北朝鮮の闇市場経済に驚きます.政府はこれを弾圧しません.なぜなら,弾圧策はすでに試みて失敗したからです.

新しい富裕層は政府に反対する姿勢を示しません.しかし,闇経済によっても庶民の窮状は改善できないでしょう.むしろ,体制の求めた平等な貧困より,韓国やアメリカのDVDを観ることで知った繁栄を彼らは得たいのです.キム・ジョンウンは,だから核兵器とミサイルの開発を急ぐのかもしれません.

中国の通貨は,資本規制を維持したまま,海外の利用者を拡大しています.また,オンラインのID認証や管理に関して,闇の世界を抑える試みが始まっている.

******************************

IPEの想像力 2/25/13

レムニックの『レーニンの墓』を読んでいます.すばらしい著作だと思います.

ソ連の崩壊過程を描いた,というより,スターリンの築いた秘密警察国家の本質を示す小説です.これは,おそらく,広島・長崎の後,核爆弾の競争的累積がもたらした冷戦という異常心理を,個人権力の神聖化に利用した極端なケースでした.この作品は,その個々の瓦解シーンを描くことで,私たちの想像の中に悪夢を再生するドキュメンタリー装置です.

ある若者は,公式の歴史から消された多くの人々の記録を探しています.体制に反対する者は拘束され,強制収容所に送られ,そこで亡くなる場合もありました.自分の父親がなぜいなくなったのか,その後,どうなったのか,まったくわからなかった,という娘から,感謝の手紙が届きます.また,ブハーリンなど,多くの指導者たちが,捏造された罪を告白し,有罪の判決を受けて処刑されました.そうすることでしか,家族や,自分の信じた理想を守れなかったからでしょう.

権力や体制を維持する,ということが,これほど多くの殺戮や弾圧を正当化することに,驚くほかありません.社会主義や国家主義,市場自由化,など,個人を超越するさまざまな正義が個々人の判断や想像力を縛ります.戦争や集団殺戮,飢餓状態は,そのような人間集団を培養する,共通の経験された運命なのです.

「中国の台頭」や「日本の軍国主義復活」を恐れ,互いにその歴史認識を批判することが,正しい,と思うのは,こうした権力の本質が今もあるからです.

北朝鮮では,市場が闇経済として拡大しています.キム・ジョンウンの核実験は,北朝鮮のキム独裁が何も変わらず,3世代目に及ぶことを示すのではなく,むしろ体制の終焉を予期したバーゲン・セールなのかもしれません.

たとえ核実験が成功しても,体制を侵食する闇経済の重要性はもはや否定できない,とThe Economistの記者は考えます.闇市場ではDVDも携帯電話も販売されるし,インターネットを観る人々から外国の情報が広がります.2009年に,政府が通貨のデノミや新紙幣を導入したのは,こうした闇経済と蓄財を一掃するためでした.しかし,闇市場が無ければ,ピョンヤンでは建設工事も進まない,とわかったときから,弾圧政策は放棄されたのです.

中国や韓国の製品を扱う国境貿易は,急速に富を蓄積する階層を形成しつつある,と言います.官僚や軍人たちが賄賂を得て闇取引に加わり,その拡大に貢献します.1990年代後半の飢饉で,100万人が死んだ頃から変化が起きた,と言われます.体制が食糧を供給できないことは,次第に,体制への忠誠心を損ない,むしろ外部とのつながりや,貨幣経済,人民元を重視する姿勢に変わってきたようです.

それでも,旧ソ連圏やアラブ諸国,アメリカやユーロ圏の失業者と違って,新富裕層や飢餓に苦しむ地方の住民たちは街頭に出て体制を批判しません.あまりにも幼少期から体制の正義を教育されたから,また,日本の植民地支配,それ以前も,長い王朝支配において,人々が体制を批判する歴史(その想像力)を持たなかったから,と研究者は指摘します.

日本でも国土が何度も戦場になり,内戦や飢餓の時期が続き,冷戦下の権力闘争が激化して,市民生活への弾圧や大規模な政治的粛清を組織的に行っていたら,その中に生まれた子供として,私たちも恐怖と飢餓,闇経済の時代を生きたでしょう.敗戦から朝鮮戦争の間に,もしソ連が占領地域を拡大して分断したら,あるいは,権力闘争に米ソの諜報機関から資金や武器が大量に流れたら,あるいは,朝鮮半島で核兵器が使用されていたら・・・

朝鮮半島の再統一を平和的に実現し,繁栄するアジア圏に帰属する幸運を,自分の子供たちが感謝しているかどうか,10年後,30年後の体制や権力の姿を想像するのは困難です.悲観するより,私は『レーニンの墓』を読みます.

******************************