IPEの果樹園2013

今週のReview

2/18-23

 

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ドローン戦争 ・・・シリア内戦を止める ・・・政治経済学の真実 ・・・尖閣諸島と戦争の回避 ・・・中国をめぐる諸考察 ・・・オバマの一般教書演説 ・・・通貨戦争に関する論戦 ・・・北朝鮮の核実験

 [長いReview]

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l  ドローン戦争

SPIEGEL ONLINE 02/08/2013

Germany's Drone Conundrum

'New Wars' Demand New Mindsets

A Commentary by Thomas Darnstaedt

ドイツ政府は最近,180度方針転換して,武装ドローン(無人飛行機)を戦闘で使用する計画を発表した.遠隔操作で殺傷する武器も,他の武器と異なることはない,という.しかし専門家たちは,「新しい戦争」には完ぺきに異なる,革命的なルールがともなう,という.

倫理的な観点において,武器は中立的である,とドイツ防衛大臣Thomas de Maizièreは述べた.その前任者Franz Josef Straussも,武器は使用されるときだけ邪悪になる,と述べたように. Straussは,1950年代,ドイツ軍を核武装しようとした.

それが組織された戦争の一部である限り,たとえ武器の使用が暴力的であっても,国家による暴力の独占という意味で,それは正当(合法的)な紛争なのである.しかし,国家間の戦争ではなく,国境を超えてテロリストや戦闘員を追跡し,殺傷することは,国内の警察による犯罪者の捜索と異なる.ジョージ・W・ブッシュ大統領が「テロとの戦争」を宣言してから,国際法学者が論争し始めたように,その区別がなくなった.

「新しい戦争」は,1648年のウェストファリア条約以来の,主権国家という政治秩序を終わらせる.それに代わるのは,「グローバルな警察国家」なのか?


l  シリア内戦を止める

NYT February 9, 2013

Any Solution to Syria?

By THOMAS L. FRIEDMAN

シリアの流血を止めるアメリカの介入を,4つの異なる視点から見ることができる.すなわち,ニューデリー,テルアビブ,バクダッド,国連,である.

インドの戦略家たち(the Institute for Defense Studies)に,アメリカがアフガニスタンでしていること,インド,パキスタン,イランの利害をどう扱うべきか,について質問した.・・・それは,かつて試みられたことだ.「11世紀に」,失敗した.このように,インド人は,数カ月ではなく,数世紀の単位で考える.

すべてを実現すること(ブッシュのイラン)も,まったく手を出さないこと(オバマのシリア)も,間違いだ.イラクの教訓とは,歴史の底流を見なければならない,ということだ.スンニー対シーア.クルド対アラブ.2010年のイラク選挙は,多宗派政党が選挙において支持され,民主的な統治を実現できると示した.ただし,単一宗派による支配から多宗派の政治に変わるのを保証するため,アメリカ軍はまだ10年駐留しなければならない.

シリアはイラクとそっくりだ.多宗派の政治に移行する唯一の道は,安保理決議に対するロシアの支持と,その実行を見守る武装したレフェリーとしての米軍駐留だ.

これが中東である.


l  政治経済学の真実

Project Syndicate 08 February 2013

The Tyranny of Political Economy

Dani Rodrik

経済学は,政治と分離して研究している.市場はどのように作用するか,失敗するか,優れた政策で市場の効率を高めるか.対立する目標や,再分配のような,市場のもたらす結果を改善する政策も考える.

しかし,経済学は現実によって阻まれる.経済学者は,自由市場の解決策が採用されない! と憤慨する.そこで分析ツールを政治家や官僚に向けて使用する.彼らの行動は,市場における消費者や企業と同じである,と考える.政治家は政策の供給によって所得を増やす.市民はレント・シーキングのロビー活動に向かい,特殊利益を実現する.政治システムとは,有権者の投票と政治家たちの影響力とが経済的便益のために取引される市場である.

世界を変えるには,まず,それを理解しなければならない.ここに深刻なパラドックスがある.経済学によって説明すればするほど,改善の余地は失われていく.政治家は既得権によって動き,経済学者の求める政策など実行しない.社会科学が理解を深めることで,彼らの行動は説明され,それを変えることができない.

政治経済は間違っている,とあなたは思うだろう.政治経済は,政治システムが機能するために必要な,多くの考え方the system of ideasを「現実」として仮定している.その過程を明示する中で,「既得権」は「現実」となって蒸発してしまう.政策の枠組みや政治指導力や人間の作った組織が,そこに取り込まれる.

考え方・発想が政治家・エリートたちを動かすのだ.彼らは金,名誉,地位,権力の維持,歴史の評価,などを求める.そして,世界がどのように機能するか,を考える.ある社会では,エリートが経済活動を抑圧し,他の社会では経済発展や多様化を促す.経済変動はしばしば既得権を破壊する.そのとき他の新しい戦略を創るのは,エリートの持つ想像力だ.

誰が利益を受け,誰が損失を被るか? その問題を明確にしなければ,政策は議論できない.しかし,経済変化を制約するのは,政治の現実だけでなく,我々のアイデアの貧困である.


l  尖閣諸島と戦争の回避

FP FEBRUARY 8, 2013

Good news: World War I is over and will not happen again

Posted By Stephen M. Walt

FTGideon Rachmanは,国際情勢に関する優れた評論家である.彼は最近のコラムで,東アジアの緊張状態を憂慮した.中国と日本が,第一次世界大戦の前と同様に,戦争を始めることを懸念したのだ.

しかし,第一次世界大戦WW1の類推は,繰り返し間違って利用されている.ヨーロッパの大国は,誰も望まないような,誰も利益を得られなかった,第一次世界大戦に向けて,誤算と,硬直的な動員計画と,拡大した同盟関係,そして情報交換の不足により,突き進んだ,という理解である.

1914年にWW1が起きたのは,小さな衝突から突然に制御できない形で覇権戦争になった,というのではない.だから現在,東アジアで問うべきは,そのような予防戦争を計画する国はあるのか? ということだ.

幸い,日本も中国もそれはできないだろう.中国が東アジアで覇権を狙うには,時間をかけて軍備拡大を実現し,アメリカがアジアに残る費用を膨張させ,撤退に向けることだ.そして近隣諸国を経済的に取り込み,アメリカとの同盟関係から切り離す.しかし,中国の政治経済が将来どうなるか,まだ不透明である.

私は異なる形の軍事衝突を懸念している.核武装した時代に,遠方の,住民もいない,重要でない岩礁をめぐって,双方がその決意と能力を示すために軍事衝突を選択する,という可能性だ.

FT February 14, 2013

Japan has the most to lose from a fallout with China

Ian Bremmer

日本の新政権が,これに対して,中国市場だけでなく他のアジア市場に分散させるため,安倍氏がシンガポール,オーストラリア,フィリピン,ブルネイ,ミャンマーを訪問した.そして,韓国がアメリカ,EUASEANともFTAを結んでいるように,日本もTPPに参加するべきだろう.

しかし,それでも日本は中国との関係改善が欠かせないことを認めて,最近になって,領空侵犯をめぐる双方の監視飛行が危険を増している事態を憂慮しなければならない.安倍首相は日米関係を強化すると言うが,人民解放軍より深刻な中国市場における日本企業への攻撃から,アメリカは守ってくれない.

日本の有権者は,対中国の強硬姿勢を好んだが,同時に,無用な衝突を避けて経済成長を実現するように求めているはずだ.安倍氏の好きな「強靭化」への道とは,見せかけの軍事的威嚇ではなく,経済力を回復することである.そのために,尖閣諸島の領有権問題を当面は棚上げし,双方の経済成長に資する関係改善を図るべきだ.


l  中国をめぐる諸考察

FT February 10, 2013

China’s inequality

中国のジニ係数がロシアを超えた.政府は35の所得分配改善方針を示した.汚職との戦いも進めているが,庶民は信用していない.豪華な自動車や腕時計は,成功や社会的地位を示すものから,汚職のシンボルになった.

国有企業はもっと公的な財源に資金を出し,金利は自由化して利子を支払うよう求められている.最低賃金は平均賃金の40%まで引き上げられる.これまで出稼ぎ労働者を排除していた年金・医療制度も改善される.土地の権利も強化され,地方の所得を改善し,役人の汚職を防ぐ.少数の都市のみに存在する不動産税を,全国に拡大する.

これらが実施されれば,所得分配は改善するだろう.しかし,曖昧な表現を見ると,既得権者が反撃するだろう.特に,不動産の所有がエリートに集中していることが示される不動産税や,地方政府の財源となっている土地収用を妨げる土地所有権の強化,がそうだ.

北京は問題の解法を示した.行動するときだ.

Project Syndicate 14 February 2013

Building a Chinese Rechtsstaat

Andrew Sheng, Xiao Geng

中国国内で急速に新しいコンセンサスが生まれつつある.それは,社会を包摂する,持続可能な,長期の平和と繁栄をもたらす最も重要な条件として,法の支配,を実現することだ.

「法の支配」の定義はいろいろだ.Kenneth W. DamThe Law-Growth Nexus)によれば,「法の支配」とは秘密法や刑罰を受けない者を認めない.差別的な扱いや私的利益によって法を行使しない.またThomas Binghamによれば,近づきやすい,できるだけ,理解しやすいもので,明確で,予測可能なものでなければならない.すべての者が法によって支配され,権力を持つ者の裁量から切り離される.法的な争いの処理は,禁止的なほどの高価なものでも,大幅に遅れてもいけない.法の前の平等が,基本的人権の擁護とともに,実現されるべきである.

「法の支配」は一夜にして実現しない.イングランドでは,数百年に及ぶ,数千の判例が,コモン・ローの伝統を確立した.大陸ヨーロッパでは,ローマ帝国やナポレオンから引き継がれた市民法の伝統があった.それは,体制転換や革命によって,何度も改訂された.

「法の支配」とは,価値や制度,実践,期待,行動の変化に適応する,ルールとその実践が継承されている生き物である.それゆえ,最近の北京で,人々はトクヴィルの『アンシャン・レジームとフランス革命』を読むのだろう.


l  オバマの一般教書演説

FP FEBRUARY 11, 2013

Barack Obama's Lincoln Moment

BY JOHN ARQUILLA

オバマはリンカーンを尊敬している.この二人は,戦争について,似たような転換点を示す指導者である.

リンカーンは,世界最初の真に近代的な戦争の指導者であった.1861年のアメリカ南北戦争で,基本的な技術が変化したからだ.近代的なライフル,鉄道,電信の技術,すなわち,武器・輸送・情報ネットワークが戦争を変えた.

オバマは,真にポスト近代の戦争を指導する.それは一方で諸国家間の戦いであるが,他方でテロリストや反政府ネットワークとの戦いだ.彼らの組織はネットワークを駆使し,インターネットによる情報を活用する.

リンカーンが軍隊を利用する戦略的概念を転換した.オバマも,大規模な部隊の投入による電撃的な勝利を目指す戦略から,小規模のアメリカ軍を展開するネットワークと,反政府地域で多くの住民を観方に就ける社会ネットワークを重視した作戦に転換した.

BLOOMBERG Feb 11, 2013

Don’t Try to Contain China

By Pankaj Mishra

オバマは,北東アジアの緊張を解き,この地域が冷戦後の平和に向かう政治・経済的な必然性を示すべきだ.アメリカは日米安保条約で日本を支持し,尖閣の維持に軍事力を行使する.議論はしない.そのような立場は信頼されないだろう.アジア旋回は中国の反発を招くだけだ.

幸い,どの国も戦争を望まない.中国も日本からの投資を成長のために求めている.国内問題の方が重要なのだ.

しかし,近代の歴史が中国共産党に国民的な威信の回復を唱えるナショナリストの支持を必要としている.指導者たちは西側や近隣諸国に強硬姿勢を示し,経済的に相互依存を深めるアジア諸国はそれを恐れている.しかし,アメリカはこの機会を「封じ込め」に利用するべきではない.アジア諸国は米中間での選択を嫌うし,敵対的な言葉は行動を促す.冷戦思考を払しょくすべきだ.


l  通貨戦争に関する論戦

FT February 11, 2013

No such thing as a global currency war

By PhilippHildebrandformer chairman of the Swiss National Bank

「通貨戦争」など存在しない.中央銀行は,その正当な権限に従って,国内経済の条件に合った金融政策を行使している.

金融危機以後,国内経済の回復を目的に非正統的な手段を行使し始めたことで,すべてが変化した.アメリカもイギリスも,インフレ抑制だけでなく,需要や雇用の水準を意識して金融政策を行使した.日本のデフレは長期に及び,どのような国もこれを放置できないだろう.インフレ率2%という目標は,非正統的な挑戦ではないし,ましてや戦争行為ではない.

中央銀行は,まず短期金利を引き下げ,次に低金利の継続期間を示してインフレ期待を高めようとした.しかし,その結果,中央銀行のバランスシートが膨張し,それが通貨操作の疑念を生んだ.アメリカとイギリスは経常収支赤字であるが,日本は黒字である.同じ政策によっても,日本の黒字がさらに増加することで非難の標的になった.

しかし,日本の経常収支黒字が増大するのは,長期的には正常なインフレ率を回復する調整過程である.また,開放型の小国で,変動為替レートを取っている場合,通貨価値の増大に苦しむことが同情を呼ぶ.その場合も,主要諸国の金融政策を転換するのではなく,小国が自国の情勢に合わせた金融政策を行使するしかない.

FT February 11, 2013

Fix exchange rates to revive growth

By Komal Sri-Kumar

通貨戦争,競争的切り下げは,「近隣窮乏化」政策として,大恐慌からの回復を妨げた.しかし,最近も,アメリカは量的緩和策によってドル安をもたらしている.2010年,ブラジルへの資本流入は,レアルの増価で輸出競争力を破壊し,金利引き下げはインフレ圧力を強めた.

為替レートを政策目標にすることは,政治対立の原因になり,間違いだ.人民元の為替レートを非難するより,中国の市場開放や資本移動自由化を促すほうが良い.それは中国の通貨当局に為替レートの変動を速め,西側政府の関心を中国の経済改革に向かわせる.

米欧日の競争的な金融緩和は,為替レートの不確実性を増して,景気回復をむしろ遅らせている.固定為替レートによる確実さが,それに合致する政策とともに,成長を促すだろう.世界は,固定為替レートを含む,金融政策システムに移行するべきである.

まず,ドルの価値を現行の水準(1675ドル)で金に固定し,兌換性を保証する.諸通貨はドルに対して,過大でも過小でもない水準を,消費バスケットによって決定し,為替レートを固定する.この水準が維持されると投資家や輸出業者が信じることで,金融市場間で資本取引が増大し,インフラなど,長期投資も増える.

VOX 14 February 2013

Root causes of currency wars

Simon J Evenett

モスクワのG20でも通貨戦争の論争が起きた.それは気まぐれや不規則な事件ではない.主要国の景気回復が明確になるまで,マクロ政策の転換は起きず,「戦争」は続く.

その背景にあるのは,Eichengreenに代表される,1930年代に関する一つの理解だ.すなわち,金本位制(固定レート制度)を破棄して,積極的な金融緩和政策を取ることが世界恐慌から抜け出す上で重要であった,という理解だ.今日,資本移動が相対的に自由で,為替レートの変動を許す世界では,各国の金融政策決定が名目通貨価値に影響する.金利差や為替レートが貿易相手国に影響し,通貨戦争という非難を招く.

こうした政策に5つの合理化が行われている.1.金融政策は国内向けであり,秩序に従っている(PhilippHildebrand).2.「悪意」はない(G7).3.オムレツを作るには卵を割るしかない.4.防御のための非難だ.5.自分でやれることをやればよい(1971年のConnally財務長官).

しかし,主要国の金融政策が好ましくない影響を及ぼしており,金融政策の自由は何をしても許されるという意味ではなく,中央銀行の視点がいかに自国の利益しか観ていないか,という点で,こうした正当化は他国の支持を得られないだろう.

これに代わる政策はあるのか? 貿易相手国に損害を与えず,むしろ有益な政策を採れないか? もちろん,長期的には,金融緩和で景気回復し,輸入を増やすことが貿易相手国には有益である.しかし,金融緩和と同時に財政刺激策をとれば,貿易相手国への影響を相殺できるはずだ.

つまり,貿易戦争の背景には,金融緩和政策だけに偏った,主要諸国の政治状況が存在する.もし緊縮策(財政再建)を強制したりせず,また,各国の輸出や輸入を促進する多角的自由化,ドーハ・ラウンドを合意できれば,主要国の金融緩和は「通貨戦争」という非難を呼ぶようなマイナスの影響を強めなかっただろう.

日本だけを取り上げて非難するのは間違いだ.その原因は,もっと深い.


l  ユーロ危機の諸論点

FT February 10, 2013

Ireland shows the way with its debt deal

By WolfgangMünchau

理想の世界では,銀行の破綻処理,預金保険,ユーロ債発行,経済の調整過程が,政治的に合意できる.そのためにECBはある.実際は,ECBのドラギ総裁が融資を行うことで,政治交渉プロセスは延期されるだろう.それは,すぐにではないが,次第にインフレによる処理に向かうとしても,ECBは反対できないと思う.


l  新しい米中関係の時代

YaleGlobal, 11 February 2013

Is the US Ready To Be Number Two?

Kishore Mahbubani

元大統領ビル・クリントンは,アメリカがNo.1ではなくなる時代に備える必要を知っていた.Yaleにおける講演(“Global Challenges”)では,次のように述べた.

「もしあなたが,パワーと支配,移動の絶対的自由,主権を自国の将来にとって重要だと信じるなら,アメリカは単独で行動し,世界で最大,最強の国家であることを維持するだろう.しかし,もしあなたが,アメリカは世界最強の軍事・政治・経済の超大国でない時代にも生きるように,ルールとパートナーシップ,行動慣習を持つ世界を築くべきだと信じるなら,そのような単独行動を止めるだろう.それは,あなたがどちらを信じるか次第である.」

1980年に,購買力平価で見て,世界経済に占めるアメリカの割合は25%であった.中国は,2.2%だ.2017年までに,アメリカは17.9%になり,中国は18.3%になる,とIMFは予測している.

アメリカが世界のNo.2になっても,その方が世界は良い状態になるだろう.多くの意味で,世界にはThe Great Convergence(大収斂)が起きるからだ.グローバルな中産階級が増え,戦争は減り,人々は世界中を旅行し,通信して,多くの情報を得るだろう.この変化は世界に共通の価値や規範をもたらす.教育や科学的説明は世界の共通言語を創り出す.

クリントンが理解したように,グローバル・ガバナンスは良い考えだ.しかし,中国がNo.1になるとき,ルールに依拠して行動することをアメリカやEUが望むとしたら,たとえば,国連,IMF・世界銀行は,大きな改革を進めねばならない.西側は世界人口の12%しか占めていないのに,国連安保理の60%を支配する.IMFのトップはヨーロッパから,世界銀行のトップはアメリカから決まる.こうしたことが,国際機関の信用と能力を大きく失わせている.

国連を改革するなら,それは3つの原則,民主主義,パワー・バランス,法の支配,に依拠するべきだ.指導部は,世界人口の配分を考慮し,新興国や中規模の諸国にも地政学的な配慮を行い,方の支配に従うことで紛争を抑制できる.それが21世紀の秩序である.


l  北朝鮮の核実験

NYT February 12, 2013

North Korea’s Lesson: Nukes for Sale

By GRAHAM T. ALLISON Jr.

北朝鮮の3度目の核実験で最も深刻な意味とは,核兵器が販売される,ということだ.このことはまた,今まで西側やアメリカが指導した対北朝鮮政策(ヤドカリ国家を孤立させる)の限界を示した.プルトニウムは検知しにくく,北朝鮮が輸出しやすい.その買い手は世界各地にいる.

アメリカは,北朝鮮の輸出したプルトニウムで,アメリカと同盟諸国が核攻撃を受けた場合,北朝鮮に対して必ず報復する,という方針をピョンヤンと北京に明確に伝えることだ.

WSJ February 14, 2013

China Would Benefit From a United Korea

By STEVE TSANG

中国は,難民流出や韓国による南北統一を受け入れられないから,北朝鮮が中国の意志に反しても処罰できない,と思われている.しかし,そうではない.北朝鮮の崩壊が,北京にとって許容できる,ということを明確に示すべきだ.

中国と韓国の関係は改善しており,北朝鮮よりも良好である.北朝鮮の崩壊に対しては,韓国と日本が大規模な援助と投資を行うだろう.アメリカが米軍を駐留させると主張しても,統一後の朝鮮は長期的に撤退を求めるはずだ.それらを受け入れても,世界第1の市場規模を持つ中国が統一朝鮮にとって最も重要な貿易相手国になるのは明らかだ.

北朝鮮の脅迫は日本の行動を変える危険がある.中国と日本の関係を処理することは新指導部の重要な課題であるが,日本は憲法によって軍備を制限してきた.もし北朝鮮の核武装が日本の法的な制約を変えるなら,それは中国との軍事的なリスクを高める,

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The Economist February 2nd 2012

The next supermodel

The Nordic countries: Northern lights

Chaos in Egypt: Tahrir squandered

Banyan: The limits to dialogue

Political activism: Local hero

Peru’s roaring economy: Hold on tight

Free exchange: The autopilot solution

(コメント) サッチャーのイギリスが政府の改革モデルを示した1980年代から,小国は国家を革新することで競争してきました.今や北欧の小国が世界に新しい教訓を示している,というわけです.特集記事が面白いです.

エジプトではモルシ大統領とムスリム同胞団,シンガポールではリー・シェンロンと人民行動党,中国でも社会改革のフロンティアに新しいヒーローが生まれています.ペルーの急成長や,世界中で進む高齢化に関する年金改革の動きにも,北朝鮮の核実験以上に意味があります.

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IPEの想像力 2/18/13

軍も,警察も,税金も,銀行も,貨幣も,メディアも,・・・ビジネスも,革命も,領土的な限界を失った世界が各地に現れています.それは以前から予告されていた通り,大国にも及ぶでしょうか?

DREW CHRISTIE の風刺漫画‘Drones for America!’ NYT, February 18, 2013 を観ました.KGBの元スパイが,アメリカの都市上空に情報収集や暗殺のためのドローンが大量に飛び交う姿を見て喜びます.テロリストと戦うために,政府は国境を無視し,法の支配や裁判を無視し,プライヴァシーを無視するしかないのでしょうか?

2005年,イギリスで地下鉄を爆破するテロがあったとき,街の至る所に監視カメラがあることを知りました.犯人たちが家を出てから地下鉄に乗り込むまで,さまざまな監視カメラの映像で追跡できたのです.イギリス生まれの青年たちがインターネットでイスラム過激派に近付き,心酔して訓練を受けるようになったことも驚きでした.

アメリカのテレビ・ドラマ「24 Hours」では,テロ対策室がドローンや監視カメラを頻繁に利用します.それは架空のドラマですが,クレジットカードや銀行口座,顔による人物認識,電話における会話の傍受・検索,などとともに,ドローンによる都市の監視は,ここ数年の新聞と小説の中に現れます.

安全保障と犯罪,戦争と殺人・誘拐,軍隊と警察,という区別が消えてしまう世界に,国家は何を平和や市民的秩序として実現できるのでしょうか? NYTの風刺漫画が『1984年』や『素晴らしい新世界』を示して警告するだけでなく,北朝鮮の収容所や,キューバのグアンタナモ米軍基地は今も存在します.(しかし,中国では国内の労働矯正施設を改革する,と報道されています.)

北欧でも,国家は変貌しました.社会民主主義や福祉国家のモデルと見なされたスウェーデンなどの北欧諸国が,実は,経済危機を経て,大幅な財政赤字削減や年金制度改革に成功した,ということです.Nokiaの携帯電話がAppleのスマートフォンや中国のHauweiによって市場を失った後,さまざまな改革と支援で,ビデオゲーム業界の新興企業を群生させた,というのは素晴らしいです.

国家は,個人のさまざまな挑戦や幸福を実現するために大きな役割を与えられ,常に,制度や仕事の中身を革新し,同時に,信頼されるための厳しいチェックを受けます.なぜ学校がそれほど高い成果を挙げているのか? なぜ移民や難民をそれほど多く受け入れてきたのか? そして今,自由主義の価値を受け入れない移民たちとの軋轢を,政策や制度の見直しにどのように反映するのか?

新興企業群の面白い視点にも驚かされます.オフィスや家庭の掃除,という仕事を,専門的な管理技術と企業の意識改革によって尊敬されるグローバル企業にしたとか,ベビーブーム世代が引退する中で,高齢者たちが集団で暮らし,互いに助け合えるのを促すコミュニティーの建築・設計を提供したとか,テストは厳しいが,それによる選別はせず,教師に自由な試みを奨励したとか,学校はすべて一貫教育であり,バウチャー制が普及し,人々が学校を選択できることで公立高校の質を飛躍的に改善した,・・・という話は魅力的です.

オバマがアメリカの安全保障を対テロ戦術に向けて転換したことは,主要諸国の安全保障と軍備にも影響します.中国の労働矯正システムや,北朝鮮の核実験に関する姿勢も,法の支配を重視する新しい国際システムと無縁ではないでしょう.そして北欧諸国が示すように,成功するために,すべてがアメリカや中国のルール・監視体制に従う必要はないのです.

国家の本質は,将来も,大きく変化するでしょう.優れた安全保障に関する考え方を実現しつつ,プラグマティックで,革新を好み,質素で平等な幸福を共有して,政府や公的秩序に対する信頼を維持している国として,日本が称賛される時代になってほしいです.

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