(前半から続く)
l 通貨戦争に関する論戦
FT February 10, 2013
Investors
dive into euro-yen policy gap
By Alice Ross, Currencies Correspondent
FT February 11, 2013
No
such thing as a global currency war
By Philipp Hildebrand(former chairman of the Swiss National Bank)
「通貨戦争」など存在しない.中央銀行は,その正当な権限に従って,国内経済の条件に合った金融政策を行使している.
金融危機以後,国内経済の回復を目的に非正統的な手段を行使し始めたことで,すべてが変化した.アメリカもイギリスも,インフレ抑制だけでなく,需要や雇用の水準を意識して金融政策を行使した.日本のデフレは長期に及び,どのような国もこれを放置できないだろう.インフレ率2%という目標は,非正統的な挑戦ではないし,ましてや戦争行為ではない.
中央銀行は,まず短期金利を引き下げ,次に低金利の継続期間を示してインフレ期待を高めようとした.しかし,その結果,中央銀行のバランスシートが膨張し,それが通貨操作の疑念を生んだ.アメリカとイギリスは経常収支赤字であるが,日本は黒字である.同じ政策によっても,日本の黒字がさらに増加することで非難の標的になった.
しかし,日本の経常収支黒字が増大するのは,長期的には正常なインフレ率を回復する調整過程である.また,開放型の小国で,変動為替レートを取っている場合,通貨価値の増大に苦しむことが同情を呼ぶ.その場合も,主要諸国の金融政策を転換するのではなく,小国が自国の情勢に合わせた金融政策を行使するしかない.
スイスは,為替レートの増加による強いデフレ圧力に対して,他の手段が制限されていたため,為替レートに直接影響するような無制限の介入を表明した.この場合でさえ,金融政策は国内の経済状態に対する認められた権限を行使したのである.市場はそれを承認したようだが,それでも2012年はデフレであった.
金融政策の戦場は国内である.中央銀行は需要の減退,高失業率,デフレ圧力と闘っている.それを止めたら,世界経済の危険は増すだろう.それは通貨戦争ではないのだ.
FT February 11, 2013
Fix
exchange rates to revive growth
By Komal Sri-Kumar
通貨戦争,競争的切り下げは,「近隣窮乏化」政策として,大恐慌からの回復を妨げた.しかし,最近も,アメリカは量的緩和策によってドル安をもたらしている.2010年,ブラジルへの資本流入は,レアルの増価で輸出競争力を破壊し,金利引き下げはインフレ圧力を強めた.
金融政策がこうした状態に至るのは,数式でわかることだ.nカ国が為替レートの水準を目標にしても,n-1個しか為替レートは動かせない.n番目の通貨はアンカーとして,他国の為替レートが決まることで与えられる.
第二次世界大戦後は,ドルが為替レートのアンカーとして存在したから,日本も為替レートを維持するため国内の民間部門を調整し,世界貿易の自由化や成長に重要な貢献をした.成長,貿易自由化,インフレ抑制,が共通の目標であった.単一通貨圏では,資本移動を自由化して,成長とインフレ抑制を図った.
1960年代の繁栄を支えた固定為替レートは,1971年,ニクソン大統領のドルと金との価値を切り離す決定によって放棄された.世界経済はアンカーを失った.
為替レートを政策目標にすることは,政治対立の原因になり,間違いだ.人民元の為替レートを非難するより,中国の市場開放や資本移動自由化を促すほうが良い.それは中国の通貨当局に為替レートの変動を速め,西側政府の関心を中国の経済改革に向かわせる.
米欧日の競争的な金融緩和は,為替レートの不確実性を増して,景気回復をむしろ遅らせている.固定為替レートによる確実さが,それに合致する政策とともに,成長を促すだろう.世界は,固定為替レートを含む,金融政策システムに移行するべきである.
まず,ドルの価値を現行の水準(1675ドル)で金に固定し,兌換性を保証する.諸通貨はドルに対して,過大でも過小でもない水準を,消費バスケットによって決定し,為替レートを固定する.この水準が維持されると投資家や輸出業者が信じることで,金融市場間で資本取引が増大し,インフラなど,長期投資も増える.
SPIEGEL ONLINE 02/11/2013
Calls
for Cheap Euro
ECB
Caught in Currency-War Crossfire
By Martin Hesse and Anne Seith
NYT February 11, 2013
E.U.
Ministers at Odds Over Strength of the Euro
By JAMES KANTER
ユーロ危機においてユーロの価値は低下することが問題だった.今度は,その上昇が問題になっている.しかし,ECBのように,ユーロの水準はユーロ圏全体の景気回復で判断される.その価値を政策で決めることには反対する声がある.
ユーロ高は,自動車やワインなどの輸出品価格を高くし,輸出を損なう.しかし,特に石油など,輸入面では利益である.ここでも,フランスによる介入の主張は通らず,独仏の政策論争が繰り返されるだろう.フランスは為替レートで勝てないが,その他の問題で譲歩を得る条件にするかもしれない.
たとえば,キプロスの銀行救済にヨーロッパの処理メカニズムを利用するかどうか.
FT February 12, 2013
G7
fails to defuse currency tensions
By Chris Giles and Alice Ross
NYT February 13, 2013
Preventing
a Currency War
WSJ February 13, 2013
Rumors
of (Currency) War
VOX 14 February 2013
Root
causes of currency wars
Simon J Evenett
モスクワのG20でも通貨戦争の論争が起きた.それは気まぐれや不規則な事件ではない.主要国の景気回復が明確になるまで,マクロ政策の転換は起きず,「戦争」は続く.
その背景にあるのは,Eichengreenに代表される,1930年代に関する一つの理解だ.すなわち,金本位制(固定レート制度)を破棄して,積極的な金融緩和政策を取ることが世界恐慌から抜け出す上で重要であった,という理解だ.今日,資本移動が相対的に自由で,為替レートの変動を許す世界では,各国の金融政策決定が名目通貨価値に影響する.金利差や為替レートが貿易相手国に影響し,通貨戦争という非難を招く.
こうした政策に5つの合理化が行われている.1.金融政策は国内向けであり,秩序に従っている(Philipp Hildebrand).2.「悪意」はない(G7).3.オムレツを作るには卵を割るしかない.4.防御のための非難だ.5.自分でやれることをやればよい(1971年のConnally財務長官).
しかし,主要国の金融政策が好ましくない影響を及ぼしており,金融政策の自由は何をしても許されるという意味ではなく,中央銀行の視点がいかに自国の利益しか観ていないか,という点で,こうした正当化は他国の支持を得られないだろう.
これに代わる政策はあるのか? 貿易相手国に損害を与えず,むしろ有益な政策を採れないか? もちろん,長期的には,金融緩和で景気回復し,輸入を増やすことが貿易相手国には有益である.しかし,金融緩和と同時に財政刺激策をとれば,貿易相手国への影響を相殺できるはずだ.
つまり,貿易戦争の背景には,金融緩和政策だけに偏った,主要諸国の政治状況が存在する.もし緊縮策(財政再建)を強制したりせず,また,各国の輸出や輸入を促進する多角的自由化,ドーハ・ラウンドを合意できれば,主要国の金融緩和は「通貨戦争」という非難を呼ぶようなマイナスの影響を強めなかっただろう.
日本だけを取り上げて非難するのは間違いだ.その原因は,もっと深い.
l ユーロ危機の諸論点
FT February 10, 2013
Ireland
shows the way with its debt deal
By Wolfgang Münchau
先週,アイルランドの債務問題処理に,中央銀行のよる債務の貨幣化,が承認された.分かりにくい形で.アイルランド危機は第3段階に入った.
第1段階では,数年前から金融不安に陥っていたAnglo Irish BankとIrish Nationwide Building Societyをアイルランド政府が救済した.それは緊急融資(ELA)を受けた債券後者による買収で合った.それはユーロ圏内への貨幣供給でもあったから,ECBが協力した.
第2段階は,アイルランド政府が銀行の資産を処理し始め,ELA融資を貯めの担保として,政府は約束手形を提供した.
第3段階.アイルランド政府は銀行を処理するための後続機関を破産処理した.約束手形は減額されて,25年から40年の長期債券に代わった.将来のインフレがその多くを処理するだろう.債務を支払うのを拒むか,延期するか,新しい債券発行で賄われる.こうしてアイルランドは債務の罠から抜け出すのだ.
理想の世界では,銀行の破綻処理,預金保険,ユーロ債発行,経済の調整過程が,政治的に合意できる.そのためにECBはある.実際は,ECBのドラギ総裁が融資を行うことで,政治交渉プロセスは延期されるだろう.それは,すぐにではないが,次第にインフレによる処理に向かうとしても,ECBは反対できないと思う.
債務者と債権者の関係は政策として処理できたか? 債権国の国民は,長期に,この処理方法を受け入れるのか?
guardian.co.uk, Monday 11 February 2013
Greece
is facing a humanitarian crisis
Alex Politaki
FT February 11, 2013
Productivity
is Europe’s ultimate problem
By Nemat Shafik
統合の深化より,各国が政治的には困難な改革を進めて,競争力の収斂と成長回復に向かうことが重要だ.
NYT February 12, 2013
Germany’s
Political Masochism
By ANNA SAUERBREY
l 大西洋自由貿易協定
WP February 11, 2013
Time
for EURAFTA? A European Union-American Free Trade Agreement
FP FEBRUARY 13, 2013
The
Case for TAFTA
BY KATI SUOMINEN
WTOによる多角的な自由化交渉が成功するのを待っているより,アメリカはEUとTAFTA (a transatlantic free trade agreement) を実現して,中国やインド,など,新興諸国も参加を求める基準を示すべきだ.それはアメリカにヨーロッパとの関係を重視させるだろう.
YaleGlobal, 13 February 2013
The
Hidden Global Trade in Water
Jenny Kehl
FT February 14, 2013
Transatlantic
pact promises bigger prize
By Philip Stephens
サッチャーは,イギリスの規模ゆえに,ヨーロッパを必要とした.いまや先進諸国や西側全体が,新興諸国やアジアにそのパワーを奪われている.そしてヨーロッパは,地政学的なアメリカの戦略思考から抜け落ちてしまうだろう.
「ヨーロッパ市民とアメリカ市民が必要とするのは,大西洋同盟関係の重要性,我々が共有するこの国際情勢を動かす力を思い出させるプロジェクトである.それは冷戦が終わることで失われた緊密性に代わり,経済を回復させるためにしなければならないこととして政治家たちが有権者を説得できる何かである.」
新しく出現しつつある国際システムは,多極化しても,多角化はしていない.世界秩序はもはや西側のものではない.しかし,重要なことは,それが普遍的な基本価値に依拠することだ.法の支配,集団的安全保障,人権の尊重,政府の責任,は特に求められる.それこそ復活する大西洋同盟の成果なのである.
l 新しい米中関係の時代
YaleGlobal, 11 February 2013
Is
the US Ready To Be Number Two?
Kishore Mahbubani
元大統領ビル・クリントンは,アメリカがNo.1ではなくなる時代に備える必要を知っていた.Yaleにおける講演(“Global Challenges”)では,次のように述べた.
「もしあなたが,パワーと支配,移動の絶対的自由,主権を自国の将来にとって重要だと信じるなら,アメリカは単独で行動し,世界で最大,最強の国家であることを維持するだろう.しかし,もしあなたが,アメリカは世界最強の軍事・政治・経済の超大国でない時代にも生きるように,ルールとパートナーシップ,行動慣習を持つ世界を築くべきだと信じるなら,そのような単独行動を止めるだろう.それは,あなたがどちらを信じるか次第である.」
元国務次官補のStrobe Talbottは,クリントンの政治的本能が明確な言及を避けたのだ,と書いている(The Great Experiment: The Story of Ancient Empires, Modern States, and the Quest for a Global Nation).2012年のダヴォスで司会を務めたとき(“the future of American power”),私は非常にショックを受けた.アメリカのパネリストの誰ひとり,わずか数年でアメリカは世界のNo.2になる,という明白な事実を認めようとしなかったのだ.
1980年に,購買力平価で見て,世界経済に占めるアメリカの割合は25%であった.中国は,2.2%だ.2017年までに,アメリカは17.9%になり,中国は18.3%になる,とIMFは予測している.
アメリカが世界のNo.2になっても,その方が世界は良い状態になるだろう.多くの意味で,世界にはThe Great Convergence(大収斂)が起きるからだ.グローバルな中産階級が増え,戦争は減り,人々は世界中を旅行し,通信して,多くの情報を得るだろう.この変化は世界に共通の価値や規範をもたらす.教育や科学的説明は世界の共通言語を創り出す.
しかし,絶対的貧困や戦争が減るとしても,他方で,新しい問題が生じている.気候変動,人身・麻薬の国際取引,金融危機など,国家を超えた対策が必要だ.1945年のルールに依拠した国際秩序は,明らかにそれに失敗している.
クリントンが理解したように,グローバル・ガバナンスは良い考えだ.しかし,中国がNo.1になるとき,ルールに依拠して行動することをアメリカやEUが望むとしたら,たとえば,国連,IMF・世界銀行は,大きな改革を進めねばならない.西側は世界人口の12%しか占めていないのに,国連安保理の60%を支配する.IMFのトップはヨーロッパから,世界銀行のトップはアメリカから決まる.こうしたことが,国際機関の信用と能力を大きく失わせている.
国連を改革するなら,それは3つの原則,民主主義,パワー・バランス,法の支配,に依拠するべきだ.指導部は,世界人口の配分を考慮し,新興国や中規模の諸国にも地政学的な配慮を行い,方の支配に従うことで紛争を抑制できる.それが21世紀の秩序である.
guardian.co.uk, Tuesday 12 February 2013
America's
leadership decapitation policy is prescription for endless war
James Russell
FT February 12, 2013
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Yao Yang
Xinhua | 2013-2-13
Stronger
US-China economic ties would make Obama's job easier
l 中央銀行の革新
FT February 11, 2013
The
conundrum for the world’s central bankers
Mohamed El-Erian
FT February 12, 2013
The
case for helicopter money
By Martin Wolf
VOX 12 February 2013
Misplaced
concerns about central-bank independence
Marco Annunziata
FT February 14, 2013
A
proposal for the Bank’s new mandate
By Samuel Brittan
l 未来の経済学
Project Syndicate 11 February 2013
Our
Children’s Economics
Barry Eichengreen
金融危機によって経済学は信頼されなくなった.そういう感覚が広まっている.次の世代はどうだろうか? ダヴォスの世界経済フォーラムで,2033年の経済学教科書を考える集団的な試みがあった.
彼らの予想では,さまざまな分野が拡張され,結合され,完成されるかもしれないが,その内容は何も本質的に変化していない.1890年代のマーシャルも,1930年代のケインズも,再現しない.つまり,経済学はすでに成熟した学問なのだ.
こうした考えは間違いだろう.技術革新の未来予想がしばしば悲観的で,間違いだったように,経済学も大きく変化して行く.
たとえば,新聞が記者の取材と編集者によって作られたものから,今ではウェブサイトを通じて集まるニュースを発信しているように,経済学の教科書も著者や目次が無くなるだろう.さまざまな意見や生の経験を持ち寄って,経済学は混乱し,多様化し,ダイナミックに変化する.そして,今よりも健全になる.
NYT February 11, 2013
Fears
of the Future Haunt a Budding Generation of Afghan Strivers
By GRAHAM BOWLEY
l 北朝鮮の核実験
FT February 12, 2013
China
must halt North Korea’s folly
SPIEGEL ONLINE 02/12/2013
Nuclear
Detonation
Test
Shows North Korea Prefers Bomb Over Aid
By Andreas Lorenz
NYT February 12, 2013
North
Korea’s Lesson: Nukes for Sale
By GRAHAM T. ALLISON Jr.
北朝鮮の3度目の核実験で最も深刻な意味とは,核兵器が販売される,ということだ.このことはまた,今まで西側やアメリカが指導した対北朝鮮政策(ヤドカリ国家を孤立させる)の限界を示した.プルトニウムは検知しにくく,北朝鮮が輸出しやすい.その買い手は世界各地にいる.
アメリカは,北朝鮮の輸出したプルトニウムで,アメリカと同盟諸国が核攻撃を受けた場合,北朝鮮に対して必ず報復する,という方針をピョンヤンと北京に明確に伝えることだ.
NYT February 12, 2013
A
Big Challenge to China’s New Leader
By JANE PERLEZ
NYT February 12, 2013
Test
Seen as Push by Kim for Credibility
By CHOE SANG-HUN
NYT February 12, 2013
China
Looms Over Response to Nuclear Test by North Korea
By NEIL MacFARQUHAR and JANE PERLEZ
FP FEBRUARY 12, 2013
The
Laughingstock Next Door
BY HELEN GAO
FP FEBRUARY 12, 2013
North
Korea Is a Nuclear Power
BY ANDREI LANKOV
WSJ February 12, 2013
North
Korea on the Home Stretch
Xinhua | 2013-2-12
Time
to address root causes of nuclear crisis on Korean Peninsula
北朝鮮から見れば,アメリカや日本,韓国によって,自国の安全が脅かされている.核実験は,この圧力を緩和する試みだ.事態を悪化させることなく,解決に導くには,6カ国協議による信頼醸成と,すべての国が真剣に破滅的な結果を回避する努力が求められる.
The Guardian, Wednesday 13 February 2013
Whether
it's North Korea or Iran, sanctions won't work
Simon Jenkins
FT February 13, 2013
Grand
deal with N Korea beats hollow talk
By David Pilling
WP February 13, 2013
Hit
Kim Jong Eun where it hurts: His wallet
By Sung-Yoon Lee and Joshua Stanton
アメリカと韓国は,あまりにも長い間,戦争の脅威を「宥和」によって避けられると試み続けてきた.今や,それが失敗したと認めることだ.北朝鮮は対外的な脅迫と国内の弾圧を止めない.北朝鮮の最大の弱点に的を絞るべきだ.すなわち,密輸や汚職によって何とか動いている脆弱な経済と,国内の収容所体制である.
そのために,アメリカは中国と国連を動かすことだ.
WP February 13, 2013
North
Korea’s nuclear test demands an aggressive U.S. response
FP FEBRUARY 13, 2013
Lips
and Teeth
BY SHEN DINGLI
FP February 13, 2013
Is
there anything left to sanction in North Korea?
Posted By Colum Lynch
Project Syndicate 13 February 2013
Keeping
Calm on North Korea
Gareth Evans
SPIEGEL ONLINE 02/13/2013
Gauging
the Nuclear Threat
'We
Can Greatly Diminish the Risk'
guardian.co.uk, Thursday 14 February 2013
China
talks tough over North Korea, but is hesitant to act
John Swenson-Wright
FP February 14, 2013
Obama's
'strategic patience' on North Korea is turning into strategic neglect
Posted By William Tobey
WSJ February 14, 2013
China
Would Benefit From a United Korea
By STEVE TSANG
中国は,難民流出や韓国による南北統一を受け入れられないから,北朝鮮が中国の意志に反しても処罰できない,と思われている.しかし,そうではない.北朝鮮の崩壊が,北京にとって許容できる,ということを明確に示すべきだ.
中国と韓国の関係は改善しており,北朝鮮よりも良好である.北朝鮮の崩壊に対しては,韓国と日本が大規模な援助と投資を行うだろう.アメリカが米軍を駐留させると主張しても,統一後の朝鮮は長期的に撤退を求めるはずだ.それらを受け入れても,世界第1の市場規模を持つ中国が統一朝鮮にとって最も重要な貿易相手国になるのは明らかだ.
北朝鮮の脅迫は日本の行動を変える危険がある.中国と日本の関係を処理することは新指導部の重要な課題であるが,日本は憲法によって軍備を制限してきた.もし北朝鮮の核武装が日本の法的な制約を変えるなら,それは中国との軍事的なリスクを高める,
NYT FEBRUARY 13, 2013
Avoiding
the Curse of the Oil-Rich Nations
By TINA ROSENBERG
FT February 14, 2013
Nuclear
reactors: from waste to fuel
By Sylvia Pfeifer
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The Economist February 2nd 2012
The next supermodel
The Nordic countries: Northern lights
Chaos in Egypt: Tahrir squandered
Banyan: The limits to dialogue
Political activism: Local hero
Peru’s roaring economy: Hold on tight
Free exchange: The autopilot solution
(コメント) サッチャーのイギリスが政府の改革モデルを示した1980年代から,小国は国家を革新することで競争してきました.今や北欧の小国が世界に新しい教訓を示している,というわけです.特集記事が面白いです.
エジプトではモルシ大統領とムスリム同胞団,シンガポールではリー・シェンロンと人民行動党,中国でも社会改革のフロンティアに新しいヒーローが生まれています.ペルーの急成長や,世界中で進む高齢化に関する年金改革の動きにも,北朝鮮の核実験以上に意味があります.
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IPEの想像力 2/18/13
軍も,警察も,税金も,銀行も,貨幣も,メディアも,・・・ビジネスも,革命も,領土的な限界を失った世界が各地に現れています.それは以前から予告されていた通り,大国にも及ぶでしょうか?
DREW
CHRISTIE の風刺漫画‘Drones for America!’ NYT, February
18, 2013 を観ました.KGBの元スパイが,アメリカの都市上空に情報収集や暗殺のためのドローンが大量に飛び交う姿を見て喜びます.テロリストと戦うために,政府は国境を無視し,法の支配や裁判を無視し,プライヴァシーを無視するしかないのでしょうか?
2005年,イギリスで地下鉄を爆破するテロがあったとき,街の至る所に監視カメラがあることを知りました.犯人たちが家を出てから地下鉄に乗り込むまで,さまざまな監視カメラの映像で追跡できたのです.イギリス生まれの青年たちがインターネットでイスラム過激派に近付き,心酔して訓練を受けるようになったことも驚きでした.
アメリカのテレビ・ドラマ「24 Hours」では,テロ対策室がドローンや監視カメラを頻繁に利用します.それは架空のドラマですが,クレジットカードや銀行口座,顔による人物認識,電話における会話の傍受・検索,などとともに,ドローンによる都市の監視は,ここ数年の新聞と小説の中に現れます.
安全保障と犯罪,戦争と殺人・誘拐,軍隊と警察,という区別が消えてしまう世界に,国家は何を平和や市民的秩序として実現できるのでしょうか? NYTの風刺漫画が『1984年』や『素晴らしい新世界』を示して警告するだけでなく,北朝鮮の収容所や,キューバのグアンタナモ米軍基地は今も存在します.(しかし,中国では国内の労働矯正施設を改革する,と報道されています.)
北欧でも,国家は変貌しました.社会民主主義や福祉国家のモデルと見なされたスウェーデンなどの北欧諸国が,実は,経済危機を経て,大幅な財政赤字削減や年金制度改革に成功した,ということです.Nokiaの携帯電話がAppleのスマートフォンや中国のHauweiによって市場を失った後,さまざまな改革と支援で,ビデオゲーム業界の新興企業を群生させた,というのは素晴らしいです.
国家は,個人のさまざまな挑戦や幸福を実現するために大きな役割を与えられ,常に,制度や仕事の中身を革新し,同時に,信頼されるための厳しいチェックを受けます.なぜ学校がそれほど高い成果を挙げているのか? なぜ移民や難民をそれほど多く受け入れてきたのか? そして今,自由主義の価値を受け入れない移民たちとの軋轢を,政策や制度の見直しにどのように反映するのか?
新興企業群の面白い視点にも驚かされます.オフィスや家庭の掃除,という仕事を,専門的な管理技術と企業の意識改革によって尊敬されるグローバル企業にしたとか,ベビーブーム世代が引退する中で,高齢者たちが集団で暮らし,互いに助け合えるのを促すコミュニティーの建築・設計を提供したとか,テストは厳しいが,それによる選別はせず,教師に自由な試みを奨励したとか,学校はすべて一貫教育であり,バウチャー制が普及し,人々が学校を選択できることで公立高校の質を飛躍的に改善した,・・・という話は魅力的です.
オバマがアメリカの安全保障を対テロ戦術に向けて転換したことは,主要諸国の安全保障と軍備にも影響します.中国の労働矯正システムや,北朝鮮の核実験に関する姿勢も,法の支配を重視する新しい国際システムと無縁ではないでしょう.そして北欧諸国が示すように,成功するために,すべてがアメリカや中国のルール・監視体制に従う必要はないのです.
国家の本質は,将来も,大きく変化するでしょう.優れた安全保障に関する考え方を実現しつつ,プラグマティックで,革新を好み,質素で平等な幸福を共有して,政府や公的秩序に対する信頼を維持している国として,日本が称賛される時代になってほしいです.
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