前半から続く)


l  危機後のアイスランド社会

FT February 4, 2013

Iceland: Under the volcano

By Richard Milne

北欧の英雄伝説でしか知られていなかったアイスランドが,2008年の金融危機で政治と経済が崩壊し,その後はIMF融資を受けて回復の優等生になった,という話が今では有名である.最初の年は10%以上のマイナスとなったが,漁業は活況を呈し,Icesaveの法廷闘争でも勝利した.

しかし,危機がこの小さな国(人口32万人)に与えた社会的影響はまだよく理解されていない.この回復過程は一人ひとりにとって様々な異なった意味を持つ.

Einar Már Gudmundsson:作家 ・・・2009年,中道右派の政権を崩壊させた「ポットとフライパンの革命」に参加した.危機は楽しかった.アイスランドのすべての良いところを奪った銀行を破壊したからだ.当時は皆が銀行の巨大化に酔っていた.誰も教師やバスの運転手になりたがらなかった.危機から時間が経つと,そうした喜びは消えた,債務に苦しみ,パンを盗む人が話題になっている.

Vilhjálmur Egilsson:ビジネスマン ・・・最大の企業家団体the Confederation of Icelandic Employers (SA)のトップである.急速な成長予想にも荒涼とした気分を示す.独自通貨を維持したことを称賛する声が多いけれど,EgilssonEU加盟とユーロ採用による安定性を求めている.投資は少なく,雇用は不十分で,人々はノルウェーに出稼ぎに向かっている.

Lilja Mósesdóttir:議員 ・・・夫はノルウェーに行って働いている.アイスランドの失業手当は余りにも少ない.2005年に住宅を買った.慎重に,低利の外貨建て融資は避けた.その後のアイスランド・クローナの価値は暴落し,外貨建債務の返済は膨張した.しかしその後,外貨建て債務が違法とされ,アイスランド人は返済しなかったし,増税された.彼女の賢明さは無駄になった.むしろイギリスで博士号を得るため借りた学資の返済が苦しい.自己破産を考えている.

Steingrímur Sigfússon:大臣 ・・・危機後の連立政権を組んだ少数党の指導者.改革の成果に自信を示す.しかし,選挙では金危機前の政権を担った独立党が勝利しそうだ.

Stefán Ólafsson:学者 ・・・Steinthór Pálsson:銀行家 ・・・Katrín Oddsdóttir:活動家


l  新しい経済戦略

YaleGlobal, 4 February 2013

Nations Can Try Promotion – Not Protectionism

Anthony P. D’Costa

グローバリゼーションの中でも,国家は国民の福祉を守らねばならない.特に,グローバルな市場競争がもたらす国内の不安定性や不平等は,国家が介入によって緩和しなければならない.それは積極的な「経済ナショナリズム」である.

かつてナショナリズムは国内市場を保護したが,グローバリゼーションにおける経済ナショナリズムは,経済的な挑戦を支援し,無視されている社会的側面を補うものである.それゆえ経済ナショナリズムは,その成功例を示した中国やBRICs,東アジアが示すように,市場を保護するのではない.むしろ,自国の企業や独自ブランドを育て,グローバルな市場統合を促進する.

こうしてグローバリゼーションの時代にも,国民の教育システムや健康状態を守り,自分たちの尊厳を維持するナショナリズムの使命はなくならない.

WSJ February 5, 2013

Robert Zoellick: A New U.S. International Economic Strategy

By ROBERT B. ZOELLICK

経済的な嵐が過ぎて5年経つが,アメリカの伝統的な同盟国,ヨーロッパと日本は苦しんでいる.発展しつつある経済はグローバルな経済変動を再編するだけでなく,重大な調整にも直面する.アメリカは国際システムの近代化を指導した国である.そして,安全保障,経済的な機会,自由への希望を与えてきた.アメリカ経済の復活は,それ自身のためであっても,アメリカ国境の中に収まるものではない.アメリカがそのパワーと原理を示す外交政策は,登場しつつある経済秩序の中に基礎を据えねばならない.

オバマ大統領はロナルド・レーガンの転換をもたらす思考を称賛した.レーガンは新しい国際システムを前進させることで,1970年代の石油ショックやスタグフレーション後の資本主義の復活をもたらし,1980年代のアメリカの成功が,ソビエト連邦に変化を迫り,冷戦終結に貢献した.また20年間のグローバルな高成長を実現した.

アメリカの国際経済戦略には5つの側面がある.1NAFTAによる大陸規模の経済基盤.さらに移民や教育システムを通じて西半球の繁栄と統合された民主主義を推進する.2IMFWTOを介して,アメリカは競争的切り下げ,通貨戦争,保護主義,チープ・マネーへの依存を拒む.3.ドーハ・ラウンドを完成し,WTOの改革を進め,サービス貿易を自由化する.政府支出ではなく,競争を通じた構造改革を経て,2国間・地域合意,環太平洋・環大西洋のFTAを指導する.4.女性の進出を促す.5.発展する経済圏の要求に応える.


l  ビル・ゲイツ

Project Syndicate 04 February 2013

The Measurement of Hope

Bill Gates

世界で最も貧しい人々の生活は,最近の15年間で大きく改善された.これから15年間にも私は楽観している.人類の知識は増しているからだ.

それを必要としているものに,新しい手段は届かない,という懐疑論者はいるだろう.それこそ,ガバナンスを革新し,社会的慈善団体が活躍する分野である.


l  変貌する中国の可能性

FT February 4, 2013

Foxconn’s unions

抗議,暴徒,自殺.Apple製品の主要な生産者であるFoxconnが,その労働条件の改善を要求する労働者たちに,組合の代表を選挙で決めることも受け入れた.それは前進であるが,共産党指導部のプラグマティズムに従うものだ.政府は,労働者たちの不満を工場内にとどめて,街頭での抗議活動になるのを避けたい.

都市化のもたらす社会問題,労働力不足,低成長に対して,共産党は国民の不満を恐れ,ガス抜きをしている.限られた自由選挙(選出された代表は国家の組織が承認する),ソーシャル・メディアの拡大(検閲システムを備えた表面的な寛容さ),腐敗撲滅の運動.

guardian.co.uk, Tuesday 5 February 2013

China's big divorce case exposes a hidden epidemic of domestic violence

Lijia Zhang

億万長者の中国人実業家と結婚したアメリカ市民Kim Leeの,離婚に関する判決は,中国における女性の権利を高めるものだ.それは,暴力に耐えられず夫を殺したLi Yanの,殺人罪による死刑判決と処刑の実施によって損なわれた運動の意義を回復した.

guardian.co.uk, Tuesday 5 February 2013

China's trade union reforms aim to control its militant workforce

Richard Seymour

NYT February 5, 2013

Chinese Blogger Thrives in Role of Muckraker

By ANDREW JACOBS

FT February 6, 2013

Foxconn union heralds end of cheap era

By DavidPilling

鄧小平の「先冨論」から30年を経て,それがもたらした所得格差を縮小する一つの方法は,人々に新しいこと,すなわち,投票を許すことだ.

Foxconnの会長Terry Gouは,今年から,雇用する120万人の労働者たちに組合の代表18000人を決める投票を許した.公正な選挙であることを保証するため,アメリカの団体the Fair Labor Associationが監視する.労働条件の改善,特に,自殺が続いて企業イメージを損なったことに対して,このような新しい方針を示したのではないか.

その一つの結果は,賃金上昇である.すでに組合が無くても賃金は急速に上昇しつつある.中国の競争力を支えた新規労働者の無限の供給という条件が失われたからだ.昨年,中国の労働人口は減少した.

高賃金は,中国国民が支配層の裕福な人々,共産党政府に抱く不満を緩和するのに役立つだろう.習近平の主席就任を前に,共産党は格差解消や腐敗撲滅を推進している.しかも,経済的な意味で,高賃金により,中国の成長モデルの転換が避けられない.投資や輸出ではなく,国内需要,すなわち,労働者の支出にもっと依拠した成長が必要になっている.

すでに労働集約的な産業ではバングラデシュやベトナムなどへ工場を移転し始めている.ただし,中国製造業の優位は,低賃金がなくなっても,産業の集積や生産の弾力的な調整によって今後も維持されるだろう.

WSJ February 6, 2013

China Signals Faster Push to Tackle Income Gap

By BOB DAVIS And TOM ORLIK

WSJ February 6, 2013

All the Milk in China

By JOSEPH STERNBERG

FP February 7, 2013

Silicon China

Posted By Clyde Prestowitz

アメリカは技術革新で指導的な地位を革新しているが,いつまでも,そうとは言えない.KPMG Consultingが行った,世界の起業重役たち688人への調査によれば,中国が2016年までにアメリカのシリコンバレーを抜く.・・・goodbye Google, goodbye Facebook, goodbye Apple and hello Huawei, hello Baidu, and hello names you've never heard of.

R&D投資のGDP比は20年間で倍増し,毎年のエンジニアの増加数は70万人(アメリカは6万人),新企業の設立,優れた大学.研究所の設備にも急速に投資を増やしている.

Project Syndicate 07 February 2013

Bretton Woods III

Sanjeev Sanyal

2008年の危機の前に,世界経済は「グローバル・インバランス」と呼ばれる国際収支不均衡を示していた.これが危機の原因の一つであったとしたら,危機によって不均衡は解消されたか? さらに,危機後の成長は不均衡を生じないだろうか?

2007年,アメリカの貯蓄率はGDP14.6%,投資率は19.6%で,経常赤字になった.中国は,41.7%の投資率であったが,貯蓄率はそれを超える51.9%で,巨額の黒字があった.金融危機後,アメリカの投資率は急落したが,財政赤字増大もあって,貯蓄率も13%に低下した.中国の貯蓄率は高いままである.

つまり,アメリカで投資が回復すれば,危機前の不均衡が(いっそう大規模に)再現されるのは確実である.中国の労働人口が減少する中で,国内投資を維持することも難しい.中国の貯蓄率も低下するだろうが,投資を急速に減らすことは,日本が示したように,対外黒字やバブルの問題になる.

歴史を見れば,経済発展にはこのような不均衡を恒常的に維持する共生関係が存在した.ローマ帝国,16世紀,17世紀のスペイン,エリザベス女王のイングランドとムガール帝国,そして,①870-1913年にはイギリスが世界の銀行になった.

過去60年間,アメリカは世界経済の成長を支えながら,経常赤字を続けた.ブレトン・ウッズ体制(BWS)の下では,欧州と日本が戦後再建をする中でアメリカの赤字が続く.欧州がアメリカの赤字を融資しなくなって,BWSは崩壊した.

しかし,その後のアジア諸国は,アメリカの経常赤字を融資し,成長を実現した.中国はこのBWSⅡ(“Bretton Woods II”)の最後の,そして最大の受益者である.今後,中国の経常黒字が再現する見込みが大きいから,BWSⅢ(“Bretton Woods III”)が再生し,次第に,世界のその他の地域に融資するようになるだろう.それは数年どころか,数10年も続く.

中国は,世界の工場から,世界の投資家になるのである.


l  オバマの新しい非戦争

guardian.co.uk, Tuesday 5 February 2013

Chilling legal memo from Obama DOJ justifies assassination of US citizens

Glenn Greenwald

WP February 6, 2013

U.S. needs a rulebook for secret warfare

By Jack Goldsmith

オバマ大統領はイラクとアフガニスタンから米軍を大幅に撤退させる.しかし,同時に,ドローンや特殊部隊による新しい戦争を拡大する計画だ.この新しい戦争には,新しい法的枠組みが必要である.オバマ政権は,過去の法律による薄い根拠の上で,国民の支持を理由に,この戦争を続けているにすぎない.

その枠組みは,特殊部隊を含め,大統領が戦時に何を極秘に行ったか,報告する透明な制度が無ければならない.また,将来の時期を設けて,経験から枠組みの再検討を議会が行う条項も含めるべきである.新しい戦争についての議論と合法性が,明確に示されねばならない.

FT February 6, 2013

Brennan faces drone attack from senators

By Geoff Dyer in Washington

NYT FEBRUARY 6, 2013

Drone Strikes Under Scrutiny

WP February 7, 2013

A time to explain the drone campaign

根本的な問題がある.ドローンなどによるオバマ政権の秘密の戦争は,なぜ秘密でなければならないのか?

The Post and Newsweekによれば,CIA長官に指名されたJohn O. Brennanは,ドローンによる攻撃の“playbook”を開発した人物である.それは殺害の標的となるテロリストを決める手続きを示している.

何百ものドローンが攻撃命令を受け,何千もの人間が殺害されたにもかかわらず,オバマ政権はこの“playbook”の中身を公表していない.ドローン攻撃の標的や結果について何の報告もない.パキスタンにおいては公式に(ドローン攻撃が)否定されている.

これらを秘密にしなければならない明確な根拠があるなら,政府はそれを示すべきだ.その攻撃が始まったブッシュ政権の時期に,何か根拠があったとしても,その後の経過が秘密にしなければならない事情を失わせただろう.パキスタンの新聞や議会では大論争になっている.

こうした多くの問題は,この戦争を担うのが軍隊よりもCIAであることによるだろう.その後の特殊部隊の利用もCIAが担っている.

FP February 6, 2013

The Warrior King

BY MICAH ZENKO

政府は戦争との境界線があいまいな活動を拡大している.最近の多くの事件は,他国の人間を殺傷する手段を行使している,戦時国家の特徴を示すものである.パンネッタ国防長官は述べた."We are in a war. We're in a war on terrorism and we've been in that war since 9/11."

オバマが世界中で軍事行動を拡大している,とジャーナリストたちは注意する.しかし,オバマ政権の最大の遺産は,戦争の意味を再編し,分解したことになるだろう.

リビアにおけるNATO軍の介入について,アメリカもこの戦争に参加しているのか? と訊かれたホワイトハウスのスポークスマンは,これは国際的なパートナーに協力した限定的な軍事行動でしかない,と応えた.戦争という,大規模な軍の活動はない.そこに陸軍はいない,と大統領は述べた.領土を侵攻することはない,と.アメリカの参加にかかった費用は,1兆ドルではなく,10億ドルであり,アメリカの地上軍は一人もおらず,アメリカ兵の犠牲者も一人もいない.「これは将来における成功の処方箋だ.」

しかし,これも戦争である.


l  耕地の国際争奪

SPIEGEL ONLINE 02/05/2013

Farm Wars

EU Grapples with Costs of Subsidizing Agriculture

By Susanne Amann, Jörg Schindler and Christoph Schult

NYT February 5, 2013

The Global Farmland Rush

By MICHAEL KUGELMAN

過去10年間で,人口が増加し,地球上を資本が移動し,作物の収穫が困難になれば,食糧輸入国や民間企業が世界中で耕地を確保し始めた.貧しい政府はこれを歓迎し,住民たちは食糧だけでなく,世襲されてきた資産を失った.

Oxfamによれば,この10年間で売却もしくは貸与された土地は,イギリスの全面積の8倍になる.例えば,モザンビーク北部で,ブラジル・日本の合弁企業が54000平方マイルの土地を耕作して,収穫物を輸出する計画がある.世界農業の商品化が,こうした大規模な土地契約の不安定な影響を強めている.

投資家たちは地域の雇用が増えるとか,優れた農業技術が広まる,収穫が増え,食糧安全保障が高まる,などと約束するが,それが実現することはほとんどない.彼らの収穫物は,土地の人々から奪われ,人間によって消費されるのではなく,ラクダの飼料として輸出されることもある.

多くの土地が紛争地帯で売却されており,法的に曖昧なだけでなく,地域の共同体はその所有を証明することができない.土地の売却は激しい抗議や弾圧,紛争を生じる.昨年,カンボジアでは,耕地の55%が内外の投資家に売却された.政府は強制立ち退きを実行し,活動家やジャーナリスト,10代の少女も殺した.政治的に反対する仏教の僧侶たちも嫌がらせを受けた.

受け入れ国が法的な制限を行えるはずだが,投資家の影響力は強く,政治家たちを買収してしまう.そして,貧しい,飢えた住民たちを排除し,肥沃な土地が,外国投資家の(投機的に)所有する,耕作されない大地に変わる.

NYT February 6, 2013

Europe Adopts Sweeping Changes to Fishing Policy

By DAVID JOLLY


l  小国の金融危機

Project Syndicate 05 February 2013

Austerity in Small Places

Daniel Gros

小国の金融危機と緊縮策について,何を学ぶべきか? 

Paul Krugmanは,LatviaGDPが危機前のピークから10%以上も減少したことを,「緊縮財政・賃金引き下げ」アプローチの失敗を示すもの,と主張した.他方,Icelandは緊縮策を拒んで,通貨を切り下げ,GDPの減少は小さく,回復も早かった,という.しかし,危機の最初に厳格な緊縮策を採ったEstoniaは,金融危機を回避し,今は力強く成長している.また,Greeceは緊縮策を延期し続けて,深刻な危機を経た上に,まだ回復の見込みがない.

Latviaが大幅なGDPの減少を経験したのは,危機前に,経常収支赤字が示すように,そのGDPが消費ブーム,建設ブームで膨張していたからだ.バルト海諸国と,大恐慌や現在のアメリカとを比較するのも間違いだ.前者に起きたような資本流入の突然の停止は,アメリカで起きていない.現実のGDPと潜在的GDPとの差を見なければならない.

Latviaは緊縮策を経て潜在的GDPの水準に近付いているが,Greeceは緊縮策が遅く,潜在的GDP12%も下まで生産が落ち込んでいるのに,まだ減少し続けている.Icelandの通貨価値切り下げは,輸出が資源(魚とアルミニウム)に偏っていたので,(外貨建輸出価格の低下は)それほど重要ではなく,むしろ世界需要が維持されたことで景気回復できた.そして,地球温暖化のせいで,ニシンがアイスランド沖に北上したことが,回復に有利であった.

Icelandは緊縮策を拒んだ優等生(看板娘)ではない.これほど開放的な小国では,緊縮策を取らないと景気回復は輸入を増やし,すでに過剰に累積した債務を増やすことになる.Icelandの債務/GDP比率は1005以上であるが,Latvia42%である.その差は,銀行救済のコストなど,初期条件の違いによるが,その後の財政赤字を管理したLatviaが債務を抑えられた.Icelandの巨額債務は将来の成長を損なうものだ.

たとえ緊縮策を避けても,財政的・対外的な持続可能性を回復する問題は避けられない.

The Guardian, Wednesday 6 February 2013

Germany is right: there is no right to profit, but the right to work is essential

John Studzinski

SPIEGEL ONLINE 02/06/2013

Core or Periphery?

Poland's Battle Over Embracing the Euro

By Jan Puhl


l  尖閣諸島

FT February 6, 2013

Senkaku islands row raises militarisation fears

By Jonathan Soble in Tokyo and Katherine Hille in Beijing

WP February 6, 2013

The U.S. interest in an Asian island dispute

By John Pomfret

戦争を準備しろ,と習近平は人民解放軍に述べた.中国の民衆は経済成長によって自尊心を強める一方,汚職や大気汚染,検閲,法や食品の安全性に不満を強めている.政府がナショナリズムを利用して,隣国に強硬な主張をする事情はある.

問題は,中国にも日本にも,対立を解決するつもりはないことだ.アメリカは,日中間の長い争いの歴史を通じて,再び仲裁する役割に立つ.しかし以前と違って,興隆するのは日本ではなく,中国の側である.

FP FEBRUARY 5, 2013

China and Japan's Wikipedia War

BY PETE HUNT

BLOOMBERG Feb 7, 2013

Chinese-Japanese War Games Are Dismal Economic Policy

By William Pesek

安倍晋三と習近平はTeam World Peaceを結成して,あるいは,ASEANやオバマが仲裁に入って,政治的な体面を維持しつつ領土紛争を棚上げする合意を達成するべきだ.島は,両国で観光地にしてもいいし,共同の資源開発計画を進めてもいい.世界遺産として国連に委ねてもよい.


l  ソーシャル・メディアとエジプト革命

FP February 6, 2013

Martyrs of the Revolution

BY CHRISTIAN CARYL

FP February 7, 2013

Twitter Devolutions

BY MARC LYNCH

Twitter, YouTube, and Facebookがタハリール広場の革命を実現したのか?  Twitterは,今や革命を終わらせるのを助けているのではないか? リベラルな,欧米化した,"Facebook youth"が革命で指導的な役割を果たすと信じて,まったく異なる集団に権力を与えてしまった?

ソーシャル・メディアが示す革命後の影響を評価しなければならない.

1.誇張される傾向,2.抗議運動を動員するのに適し,政党の組織化には向かない,3.危険な両極分解を促す,4.一つの物語を生むことにも,それを失わせることにも,強力に作用する,5.積極的な考えと同様に,宗派争い,恐怖,憎悪,など,マイナスの感情を広める.6.体制側からの破壊的な介入を招く,7.プラスの言論を共有したエジプトと,マイナスの恐怖と映像を広めたシリアとの違い.8

ソーシャル・メディアは,情報と言論の独占を打ち破ることで,アラブの政治空間に革命を起こした.多様な発言を可能にし,情報を広める力はプラスに働く.しかし,それがマイナスに作用する局面を,我々は考える必要がある.

Project Syndicate 07 February 2013

The Information Revolution Gets Political

Joseph S. Nye

エジプトの「アラブの春」が2周年を迎え,悲観論が強い.しかし,革命は数カ月や数年で実現するものではない.数10年にわたって,予想外の事件が起きる.フランス革命が始まったとき,その結末を予想した者はいない.

これまでは,アラブの王族たちの生存を確保するに足る権力の正当性,財源,強制力が続いている.ムバラクやカダフィのような大衆蜂起による体制の瓦解を避けている.しかし,革命が起きて,まだ2年でしかない.

情報革命が21世紀の政治権力をどのように変えるのか,まだ誰にも分からない.最も強力な体制も,かつてのように,情報を管理できない時代に,国家は生きている.グーテンベルグの印刷術もそうであったが,いつの時代も権力者は情報を管理し,こうした情報革命が起きるのを弾圧した.しかし,今日の情報手段は余りにも多数の人々に普及している.

情報は,劇的な形で,安価に,かつ,スピーディーに広まるようになった.コンピューターの能力は,30年間にわたり,18カ月ごとに倍増した.そのコストは1970年代初めに比べて,1000分の1になった.

その結果,世界政治の変化は,もはや国家によって独占されない.個人や民間団体(WikiLeaks,多国籍企業,NGOs,テロリスト,など)が直接に影響を及ぼす.官僚制を支えた情報の独占は終わった.

しかし,情報・技術革命だけで新しい変化が決まるほど,政治や権力は単純ではない.情報技術が注目されたとき,ジョージ・オーウェル『1984年』のように,それが体制によって利用されることを人々は恐れた.その技術は体制による情報管理・操作,秘密警察の仕事にも役立つからだ.イランは「グリーン革命」を破壊し,中国は情報における万里の長城を築いた.

規模は重要でない.世界政治にますます多くのアクターが登場する.その未来を予想することはできない.エジプトは,まだその端緒でしかない.

Project Syndicate 07 February 2013

Egypt’s Economic Siren

Mohamed A. El-Erian

政治の混乱,街頭デモに直面して,エジプトの政治エリートたちは経済問題に焦点を絞るべきである.それによって集団的利益と個人的利益が一致する政治過程を動かせるだろう.その理由は,7つの理解が生じるからである.

1.社会・政治的混乱が長引くほど,インフレ,国際収支,予算について危機が生じる.2.政治的混乱は協力しなければ解決できない.3.革命が乗っ取られた,ハイジャックされた,という不満が高まっている.4.犯罪が増え,権威が失われる.5.外国からの支援は続かない.6.エジプト経済の潜在能力を過小評価してはいけない.7.政治指導者たちは他国の例から学ぶことができる.

エジプトの移行過程を考える上で,4つの国が参考になる.すなわち,マンデラPresident Nelson Mandelaの南アフリカ,ルーラ・ダ・シルバPresident Luiz Inácio Lula da Silvaのブラジル,そしてインドネシアとトルコIndonesia (after the Asian financial crisis of 1997) and Turkey (after its 2001 crisis)である.

マンデラは,大衆の気分を報復から国民的再生に転換した.エジプトの指導者たちは,マンデラの「許すけれども,決して忘れない」という姿勢を学ぶべきだ.前進のために協力することができる.また,ルーラ・ダ・シルバの行った基本的な改革が,どれほど多くの貧困や不平等を減らしたか,学ぶべきだ.それは敵対するグローバルな環境で,投資が逃げ出すような条件でも,実現した.インドネシアとトルコは,イスラム教徒が多数を占める国家が経済危機(1997年アジア通貨危機,2001年トルコ経済危機)を克服し,政治改革に成功したケースである.

混乱が続くほど,政治エリートは国民の希望や支持を失う.国民は,パンと,尊厳と,社会正義,民主主義を求めている.開明的な指導者と建設的な協力があれば,エジプトは問題を解決できる.しかし,急ぐことだ.


The Guardian, Thursday 7 February 2013

This obsession with outsourcing public services has created a shadow state

Zoe Williams


SPIEGEL ONLINE 02/07/2013

David Miliband Interview

'We Will Remain at the Center of the EU'


FT February 7, 2013

Geithner doctrine lives on in Libor affair

By Neil Barofsky


WSJ February 7, 2013

Pyongyang's Reality Check

By MICHAEL AUSLIN

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The Economist January 26th 2012

Afghanistan?

Britain and Europe: The gambler

China’s population: Peak toil

Schumpeter: Davos Man and his defects

Monetary policy in Japan: Win some, lose some

Free exchange: Vive la différence

(コメント) 記事は,ソマリア,スーダンから,チャド,マリまでが,新しいイラクやアフガニスタンとなって,大きな戦争が広がっている,という見方を否定します.紛争の起源は貧困や政治経済危機であり,それを改善し,繁栄に導く政策を実行しなければなりません.他方で,紛争を起こす武装勢力は早期の介入で制圧できます.

イギリスのEU離脱に関しては,国民投票の有効な実施方法を考えさせられます.政治や経済の状況に依存せず,繰り返して多数を占める,という条件を採用してはどうでしょうか? 日本でも,同様に,国民投票が提案されるかもしれません.1.原発の廃止,2.憲法19条改正,3.尖閣諸島,などです.

日銀の金融政策は,アベノミクスと喧伝されるほど変わっていない,と指摘します.重要なのは,むしろ政府の経済改革政策である,と.他方,Avinash Persaudによるユーロ圏の銀行同盟,金融監督の統一に対する批判は重要です.異なった経済条件を単一の金利で対応できないからこそ,各地の金融行政・監督には弾力性が必要である,と主張します.ドイツは,自分たちが金融危機を回避できたことで,同じ金融監督をEU全体が採用すればよい,と誤解しているのです.

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IPEの想像力 2/11/13

世界恐慌についてキンドルバーガーが述べたように,指導的国家(諸国)には,国際システムを安定化するための積極的な行動を求められるときがあります.イギリスはその意志を持っていましたが,能力を欠き,アメリカは能力を持っていましたが,政治的意志を欠いた,というのです.国際安全保障についても,同様の困難があるようです.Philip Stephens は,現在のアフリカや中東における不安を,”the US won’t, Europe can’t” という言葉で示しました.

国際通貨・金融システムは,金融問題の深刻さやスピードと,その緊密な相互関係において,国際システムにおける覇権国の役割を強く意識させる分野です.主要諸国間で平和が維持されているにもかかわらず,同じような考察が安全保障において示されるという点に,軍備の拡散や,非政府の武装集団,攻撃や影響のスピード,などを感じます.国際システムの性格,その局面が,大きく変化し続けているわけです.

・・・期待に反して,北朝鮮が3度目の核実験をしました.北朝鮮に関して,一体,何に期待できたのか? 中国の反対と,市場改革の進展です.中国は北朝鮮に制裁を行う能力があります.また,驚くような市場改革の進展をThe Economistが伝えています.それは,すなわち,新しい蓄財や外貨の流通,情報の流入,汚職,など,北朝鮮の管理体制を深く動揺させずにはおかないでしょう.

北朝鮮のような,小国の安全保障にまで核武装が現実性を増しています.同時に,アメリカなど,国際システムを担う諸国は,軍事介入や戦争のコストを嫌って,諜報活動や特殊部隊,ドローンによる暗殺,経済取引を利用した市場かく乱の脅迫,情報ネットワークや金融市場,原発を狙ったテロ攻撃,など,新しい<戦争>のフロンティアを開拓し,急速に軍備?を拡大しています.

・・・予想に反して,安倍首相の支持率は急速に上昇し続けています.予想とは,安倍氏がナショナリズムを煽る,対中・対北朝鮮強硬派の,愛国心教育や憲法9条改正論者であるから,尖閣諸島や竹島の紛争が激化し,アメリカからも抑制を求められて,国際政治の孤立国になってしまう,というものです.そうならなかったのは,安倍氏が自制し,中国やアメリカが様子を見ているからです.アベノミクスを通貨市場や債券市場が見ているように.

こうした市場の監視を無視して,日本政府には中国と戦争する意志があるのでしょうか? しかし,能力はない? アメリカには能力があるけれど,意志が無い? 安倍氏には,戦争や外交というものを,新しい視点で組み替える能力が必要でしょう.拉致問題の解決のためにも,日本は歴史認識の問題で韓国,中国と一致して前進する方針を見出すことです.そして,北朝鮮で体制が崩壊しても,さまざまな危機を次の東アジアの秩序が受け止める制度的能力を高めるために行動することです.

・・・どのような政治的弾圧も崩壊するときが来る.・・・核兵器では体制崩壊を防げない.・・・日本を守るのは,国連安保理,アメリカや中国,国際社会・世論という曖昧な正義ではない.

エジプトの革命は,北朝鮮について何を教えるのでしょうか? グローバルな市場圧力と,情報通信革命は,いよいよ北朝鮮にも及ぶでしょう.冷戦体制からはみ出した,破綻国家への移行が始まると思います.誰かが,北朝鮮にも,食糧を支援するだけでなく,繁栄と尊厳,自分たちの未来を変える政治的発言力を持つべきだ,と呼びかけるときです.

グローバルな情報・政治空間が地殻変動を生じているなかで,国際システムを築く意志と能力を高めるために,指導者たちは競い合います.

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