IPEの果樹園2013

今週のReview

2/11-16

 

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移民自由化政策 ・・・ヨーロッパのアフリカ介入 ・・・トーマス・フリードマンの社会革命論 ・・・アベノミクスの正しい評価 ・・・イギリスのEU離脱論 ・・・安全保障の変貌 ・・・中央銀行のフロンティア ・・・危機後のアイスランド社会 ・・・新しい経済戦略 ・・・変貌する中国の可能性 ・・・オバマの新しい非戦争 ・・・耕地の国際争奪 ・・・小国の金融危機 ・・・尖閣諸島 ・・・ソーシャル・メディアとエジプト革命

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  移民自由化政策

FT February 1, 2013

Balkan migrants

移民は,経済と並んで,イギリス有権者の主要な関心になる.不況にはいつも,雇用や住宅,公共サービスの不足に対して,移民たちがスケープゴートにされる.来年から,ルーマニアとブルガリアからもイギリスへの移民の入国が特別な規制なしに行われるようになるので,議会の不安が高まっている.

キャメロンは,ヨーロッパ外からの移民の純流入を2015年までに10万人以下に抑えると約束したが,それに失敗する恐れがあり,議会で批判されている.強硬派は,欧州委員会の自由移動に従う条件について再交渉するよう求めている.しかし,人の自由移動は単一市場の柱の1つであり,イギリス人もこれをよく利用している.イギリス政府があからさまに移民に対するドアを閉じれば,イギリス市民に対して他国が移動を抑える報復に出るかもしれない.

新しい移民の波を心配するのは分かるが,強硬派は移民の数を誇張している.将来の移民を正確に予想することはできないが,2004年にポーランド人が自由移動に加わったとき,イギリスはそれを許した3カ国の一つであった.だから流入する移民も多くなった.しかし,1月に自由移動できるルーマニア人やブルガリア人に対しては,1月から,EUのすべての国が自由に入国させる.

また,確かに彼らはポーランド人よりはるかに貧しいが,経験が示すように,彼らが目指すのは,ドイツのように,職を得られる見込みの高いところであり,また,イタリアのように,文化的に近い国である.

移民たちは,イギリスに働くために来るのであって,政府の給付を得るために来るのではない.政府統計によれば,労働年齢で給付を受ける移民はわずか7%でしかなく,イギリス生まれの市民の17%に比べて大幅に低い.また,彼らはイギリス人がしたがらない仕事(果物の収穫,食事の供給,ホテルの労働,老人介護施設など,労働不足が明らかな職場)を引き受けている.

イギリスは多文化社会の成功例であることを誇りにしている.2004年の自由化後にイギリスに来たポーランド人女性たちは,今やベビーブームを担っている.彼らは税金を支払うだけでなく,多くの子供を育てて,彼らが年金を支払ってくれる.

この国に来る権利を持つ者たちを差別することは,自由の原則に反しているだけでなく,不正義である.

FT February 4, 2013

The folly of Britain’s immigration policy

By Robert Hahn

親愛なるデイヴィッド・キャメロン様

私はオックスフォード大学の教授であり,あなたはここで,哲学,政治学,経済学の優れた成績を得た.だから私を助けてほしい.私はあなたがイギリスを救い,世界を救うことができると期待している.・・・

移民の流入が経済的繁栄に貢献することは,多くの証拠が示している.通念と違って,移民は地域の最底辺の雇用や賃金を下げるとは限らない.

なぜなら移民は,その出身国と受入国の両方で,富と雇用を増やすからだ.それは原理的には,自由貿易論,と同じである.著名な経済学者たちによるいくつもの研究が,もし労働者の自由移動が実現すれば,世界の産出額は倍増する,と示唆している.世界経済は70兆ドルから140兆ドルになるのだ.もしあなたがイギリスの移民規制を徐々に緩和すれば,資本ストックの増加が,労働生産性の上昇により,賃金へのマイナスの影響を大幅に減らすだろう.

たとえば,Robert Guestbusiness editor of The Economist),Borderless Economicsを読むことだ.

政治的に反対されるかもしれないが,あなたはオリンピック招致でやったように,“can do” approachを採用するべきだ.たとえば,EU外から来た優秀な留学生がイギリスで2年間働いたら,自動的にビザを与えてはどうか? EU外からの移民を減らす,という目標を修正するのもよい.

移民自由化は,政治的な反対があっても,経済的に見てイギリスには大きな意味がある.これは,アメリカや世界に対して,あなたが優れた政策を教えることのできる数少ない分野である.


l  ヨーロッパのアフリカ介入

FT February 1, 2013

Mali: Bienvenue à Timbuktu

By Xan Rice

フランス軍が街に入ると,住民たちは禁じられていたあらゆることをして歓迎した.ある男は,口に6本も煙草をくわえて,火をつけることもなかった.

Gaoの治安が確保されたとき,フランス軍のパラシュート部隊は古都ティンブクトゥに降下した.アルカイダと結び付く軍事集団が9カ月間も支配し,荒廃させた街だ.民兵たちは喫煙から音楽まで,あらゆることを禁止した.

街頭で踊る人々もいるが,略奪を恐れて逃げる人々もいる.民兵とのエスニックな関係があるTuaregやアラブ商人たちは逃げてしまった.

北部のTuaregは政府に反対して自治を求めていたが,戦いには軍備や規律の点で劣っていた.その指導的な運動Ansar Dineに,アルカイダ系の軍事集団が加わり,MNLAを形成した.それは誘拐や密輸を行う集団だった.しかし,イスラム主義の規律を支配する諸都市に強制し,住民たちは逃げ始めた.町に残ることは,手足の切断や投石による処刑の恐怖を意味した.

MNLAを支持するTuaregもいるが,多くの者は支持していない.彼らが社会にもたらした悲惨な結果は深刻である.「銃を得たのはマイノリティーであった.しかし,彼らがすべての者を代表して発言した.それが問題だ.」

FT February 3, 2013

Al-Qaeda: The jihadi hydra

By James Blitz and Roula Khalaf

FT February 7, 2013

Intervention: the US won’t, Europe can’t

By Philip Stephens

先週末のミュンヘンにおける安全保障会議でフランス高官から,フランスとアメリカの政府間交渉はジョージ・W・ブッシュ政権のときの方が良かった,と聞いた.それは,もちろん,ブッシュ政権の末期で,アメリカが戦争よりも外交を重視し始め,フランスのサルコジ大統領は,フランスをNATO同盟に戻そうとしていたからだ.

オランド政権は,マリにおける軍事介入に際して,アメリカのオバマ政権が,当初,なかなか支持しなかったことを不満に思っていたのだ.少し前まで,ヨーロッパはアメリカの軍事力をどうやって抑えるかに腐心していたのだが,今は,オバマ大統領がそれを出し渋ることを嘆く.フランス軍がマリのイスラム主義兵士と戦っているのに,アメリカの大統領は国民に「戦争の時代は終わった」と述べている.

リビアやマリへの軍事介入は,ヨーロッパの軍事力が世界の治安維持の一翼を担う,アフガニスタン後の大西洋同盟を示すのか? 現実には,ヨーロッパに介入の意思はあっても,その手段が無い.紛争と治安を欠く地域が拡大する中東と北アフリカにおいて,アメリカは意志を欠き,ヨーロッパは軍備を欠く時代に,我々は生きている.

キャメロンやオランドは,ワシントンよりも,中東など,地域の同盟国を見つけようとしている.しかし,アメリカの提供する軍備や輸送機,情報ネットワークが無ければ軍事行動は進まない.ヨーロッパが好む民主化を,中東諸国の政府は嫌うだろう.スンニー派とシーア派との対立,イラン封じ込め,が彼らの主な関心だ.そのために,イスラム主義の武装集団に今も資金や武器を与えている.

アメリカにも,ヨーロッパにも,戦略が欠けている.戦争を何のために選択する(しない)のか? 彼らには答が無い.

FT February 7, 2013

Mali is just the latest example of failed western thinking

Jeffrey Sachs

欧米諸国が,アフリカから中東,西アジア,中央アジアまで,軍事活動を展開しつつある.そこには2種類の介入目標がある.一つは石油資源のある国,もう一つは(テロ集団の拠点となる)破綻国家である.

しかし,石油供給の安定性を維持することに成功した軍事介入でも,彼らの政策は失敗している.その体制転換後,新しい政府は石油をできるだけ多く売ろうとする.しかし民主化後の政府は,あまりにも西側の利益を実現したり,あまりにもナショナリストやイスラム主義に傾いていたりして,歪んだものになった.

破綻国家への介入も同様である.破綻国家と言われる諸国は,あまりにも貧しいために,西側に何の脅威も与えなかった.しかし,石油国家をめぐる軍事介入と戦争・内戦が,その後遺症として,周辺地域に武装勢力や不安定化の原因をまき散らし,紛争の渦に巻き込んだのだ.アフガニスタンも,ソマリアも,マリもそうだ.彼らの経済基盤は,そもそも伝統的な遊牧や人口抑制に頼っており,あまりにもぜい弱で,長期的な気候変動や人口増加の影響が深刻である.

経済的.社会的な発展なしに,こうした地域で真の安定化は不可能だ.携帯電話や情報の普及,出産抑制など,新しい手段がこの10年で現れている.しかし,それを実施する財源が無い.西側政府は,戦争のための予算に上限を設けない一方で,こうした経済・社会改良の手段にはほとんど予算を割こうとしない.


l  トーマス・フリードマンの社会革命論

NYT February 2, 2013

The Virtual Middle Class Rises

By THOMAS L. FRIEDMAN

今回インドに旅行して,これまでまったく出会ったことのないものに直面した.それは,インドの「仮想的中産階級」という政治集団である.その出現は,中国やエジプトにおいても社会的抗議の運動が激化している事実を説明するものだ.

歴史的に,民主的革命は中産階級の登場によって起きた.その中産階級とはある一定の所得水準,たとえば,年1万ドルの所得を満たす社会集団だ.彼らは衣食住についての心配が要らなくなって,市民として扱われること,自分たちの将来に関する発言力,などを求めた.

ここに重大な変化が起きた.携帯電話やタブレット型コンピューターの普及は,強力かつ安価な情報交換を可能にし,人々の連携と教育のコストを,この10年間で,劇的に引き下げたのだ.インド,中国,エジプトの,非常に多くの人々が,所得水準と関係なく,まだ1日数ドルの所得しかなくても,かつては中産階級しか手が届かなかったような情報や教育の機会を得ている.

それゆえインドには,現在,3億人の中産階級だけでなく,3億人の仮想的(ヴァーチャル)中産階級が存在する.彼らはまだ非常に貧しいが,権利,道路,元気,不正の無い選挙,グッド・ガバナンスを要求している.インドには9億台の携帯電話があり,中国には4億人のブロガーがいる.そのうえ,私はニューデリーで社会起業家たちに紹介された.それらは驚嘆すべき活動である.

Gram Powerは,スマート・マイクログリッド,スマート・マイクロメーターを建設する.電気の利用できない村人たちに,120セントで電力を提供する.Healthpoint Servicesは,6人家族に15セントで飲料水を供給し,120セントで遠隔医療診断を提供する.VisionSpringは,視力検査とメガネを2ドルと3ドルで提供する.The Institute for Reproductive Healthは,女性たちに排卵日を教え,妊娠を望まないなら避妊を促す.Digital Greenは,農民や女性のグループが優れた農作業の情報を交換するための安価な通信システムを提供する.

12月に,23歳の女性がバスで襲撃,強姦され,死亡した.彼女の父親は,空港の荷物を昼夜交代せいで整理する,月200ドルほどの労働者であったが,娘を物理療法家になる学校に行かせた.彼女は,この意欲的な,インドの仮想的中産階級の一員であった.惨劇のニュースは,インド中に激しい抗議デモを引き起こし,人々はグッド・ガバナンスを求めた.

中国では,新年を祝う論説に検閲が入り,Southern Weekend紙は,共産党政府に批判的な内容を,称賛するものに変えさせられた.中国のジャーナリストたちはこれに反発し,Twitter, Weiboにも検閲に対する不満が噴出した.

アラブの春もそうだ.その運動は中産階級の大学生から始まったのではない.中産階級になろうとした,意欲的な青年が,野菜の行商を腐敗した警察官によって邪魔されたことから始まった.

指導者たちは,その意味をよく考えておくことだ.中産階級の教育,情報手段,考え方が,多くの人々に広まっている.ガバナンスを変えない限り,彼らを止めることはできない.

NYT February 5, 2013

India vs. China vs. Egypt

By THOMAS L. FRIEDMAN

インドに行けば,中国との比較を求められる.そこで,エジプトを加えよう.弱い中央政府と強力な市民社会を持つインド.選挙や市民の連合体が至る所にある.強力な中央政府と弱い市民社会しかない中国.そして,どちらも弱いエジプト.50年間の弾圧は,選挙によっても,唯一の自由な空間を組織してきたムスリム同胞団を勝利させてしまった.

この3つの国に共通するのは,30歳以下の若者が膨張したことだ.彼らは教育を受け,情報手段を持っている.

インド,中国,エジプトの中で,21世紀に繁栄するのは,この若者の集団を成功裏に「人口の配当」とできる国であり,それに失敗して「人口爆弾」に変える国は危機に直面する.若者たちに,優れた教育サービス,雇用機会,彼らの潜在能力を実現できるように社会を変える政治的発言力,を与えなければならない.

インドの人的資源開発大臣Shashi Tharoorは,中国や工業化された世界で高齢化が進む,この40年間に,インドには若者たちの膨張が起きる,と指摘した.中国の平均年齢は38歳,インドは28歳であり,この差はさらに拡大する.もしインドの若者たちに適切な教育を与えれば,たとえば語学力も加えて,インドは世界の工場になれる.それに失敗すれば,彼らの不満が高まる.つまり,中国にも,エジプトにもなる.


l  アベノミクスの正しい評価

FT February 3, 2013

The problems with Japan’s economic experiment

By Masaaki Kanno

「アベノミクス」‘Abenomics’の主張は,政府と中央銀行の間でこれまで繰り返されてきた争いである.注目するのは,市場の取った姿勢である.通貨市場では外国のトレーダーが円安を進め,国債市場の支配的な買い手は国内の金融機関であるから,長期金利はそのままで,インフレ期待を生じていない.その結果,アベノミクスが「成功」した(ように見える)のだ.

安倍政権と日銀でインフレは起きるのか? それは,改革なしには難しいだろう.しかし,外国のトレーダーが円安を進めたのは,安倍が予想外の追加の財政刺激策・赤字拡大を決めたからだ.それでも,財政刺激策だけでデフレは解消しないかもしれない.つまり,政府と日銀はインフレを達成するまで,財政赤字を増やし,それを日銀が間接的に融資する(そして困難な改革はしない),という合意を示したわけだ.日銀による国債の貨幣化,国債バブルの延長である.

アベノミクスは,財政の健全性や中央銀行の独立性に対する挑戦である.今回の成功が,将来,財政赤字を無視してインフレ政策を取る政治的圧力を生むだろう.インフレが起きる中で,同様の政策を行えば,市場はそれを拒んで長期金利が上昇し,インフレと債務コストの累増を止めることができなくなる.

中央銀行の独立性を本当に必要とするのは,そうなったときだ.

FT February 5, 2013

Japan can put people before profits

By Martin Wolf

それは,日本経済を20年の停滞から救いだすのか? あるいは,通貨戦争とハイパーインフレの破滅をもたらすのか? 私の考えでは,どちらにもならない.

アベノミクスとは,財政刺激策,インフレ目標を2%にした金融緩和,構造改革の無視,という3つの要素からなる.

日本経済は,1.長期のデフレを続けている.2.財政赤字を累積し続けている.3.国債の利回りは1%以下である.4.経済パフォーマンスは悪くない.つまり,金融危機後の西側諸国に対して,日本経済は金融バブル破裂後の経済運営に関して,デフレの中でも成長できることを示し,国債を累積しつつも長期金利は上昇しない,という希望を与えることになる.

しかし,緊急ではないが,2つの危険がある.第1に,「キャッチアップ型成長」の機会は利用されないままになる.第2に,ある時点で,政府債務の維持コストが危険な水準に上昇する.国債のデフォルトか,間接的な形で,ハイパーインフレに向かうだろう.

日本は財政赤字とデフレを同時に続けている.それは経済学の常識に反する謎である.金融政策が悪い,というのが通説であるが,その場合,日銀はマイナス金利を採用しなければならなくなる.それは有益であるが,デフレが日本経済の根本問題ではない.

問題は,Andrew Smithersが示すように,民間部門・企業の過剰貯蓄である.企業は投資する以上に収益を挙げている.これによるデフレと需要不足を補うために,政府は財政赤字を続けてきた.日本は戦後のキャッチアップ型成長を企業の活発な投資によって実現したが,1980年代から企業は投資できなくなった.すでに過剰な投資をしてしまい,人口の減少が続く日本で,アメリカよりも30%も多い投資は再現できない.それにもかかわらず,政府はバブルを刺激し,またバブル破裂後は財政赤字で需要を維持してきたが,企業の過剰貯蓄は放置している.

企業の貯蓄を減らすような改革を行い,賃金の上昇によって経済の需給バランスを回復し,財政赤字に頼らないことだ.

WSJ February 6, 2013

Abenomics Is Bad Medicine

By RICHARD KATZ


l  イギリスのEU離脱論

FT February 3, 2013

Cameron’s critics should extol his European vision

By Robert Zoellick

EUとイギリスは,かつてドイツの東西統一で対立したが,再び,意見を一致させねばならない.アメリカと世界は,経済的に健全で,開放的な,国民の多様性を受け入れ,民主的選択に基づくEUから利益を受ける.

イギリス首相の演説はその将来を示している.第1に,急速に変化する世界経済の中で,イギリスもEUも,もっと競争的でなければならない.第2に,ユーロ危機でEUは大きく変化する.キャメロンは(政治統合よりも)ふさわしい(各国)レベルでの決定を重視するが,これはEUの補完性の原理である.第3に,イギリスの外交力が問われる.イギリスの主張は,その国益を示すだけであるが,EUを変えるには,問題ごとに仲間を集める必要がある.ベルリンは競争的なEUに共感を示す.小国は孤立より連携を好む.フランスは国家主義を好むが,英仏軍事協力による介入がEUを強める,と考えるだろう.最後に,キャメロンは国内政治における反対を克服しなければならない.

イギリスが,この議論に勝利し,EUを開放することに期待する.

Project Syndicate 03 February 2013

Does Europe Need Britain?

Ian Buruma

イギリス人の多くは,EUを離脱してもうまくやっていける,と考えているし,イギリス独立党は,離脱した方が良い,と主張する.彼らはイギリスを,西側のシンガポール,と見なし,シティが支配する通商の要衝であると思うのだろう.

しかし,ヨーロッパはイギリスのEU離脱をどう思っているのか? オランダや北欧諸国は,伝統的に,イギリスの参加を望む.フランスやドイツが議論を支配するのを嫌うからだ.ドイツは,文化的に見て,ラテン系の諸国や南欧よりも,イギリスに近い.フランス国民は,イギリスの離脱を過半数が支持している.英仏間の感情は,チャーチルが,欧州の統一を主張したとき,イギリスはその一部ではなく,それとともにある,と述べた.イギリスのEEC加盟を2度も拒んだド・ゴールもそうだ.

他方,国民文化だけでなく,右派よりも左派のEU支持が多い.それは右派のネオリベラルがイギリスに共通するからだろう.ジャン・モネのようなEUの指導者たちが計画を重視する(民主的な政治論争を軽視・蔑視する)結果,EUが官僚の理想になった.彼らはナショナリズムも嫌う.

しかし今,ユーロ危機の中で,EU市民の多くがイギリスと同様に,EU官僚たちに多くの権限を渡したことを後悔している.たとえ最善の意図で行われたにしても,民主政治は官僚のユートピアニズムを阻止する必要がある.

イギリスは,単なるオフショア金融・商業センターとしてではなく,こうした困難な問題を発する,民主政治の頑固な伝統を示す国だから,ヨーロッパにとどまる意味があるのだ.

SPIEGEL ONLINE 02/07/2013

David Miliband Interview

'We Will Remain at the Center of the EU'


l  安全保障の変貌

FT February 3, 2013

America’s new secretary of state

FT February 3, 2013

Israel and Assad raise stakes on Syria

By Roula Khalaf

guardian.co.uk, Monday 4 February 2013

US control is diminishing, but it still thinks it owns the world

Noam Chomsky for TomDispatch

NYT February 4, 2013

Intervene in Syria

By ROGER COHEN

シリア国民の被害をLakhdar Brahimiが国連安保理に報告した.その内容は流出して,多くの都市が1945年のベルリンのようになっている,という.死者は6万人,国外難民は70万人(数カ月たてば100万人を超える),国内避難民は200万人以上である.

シリアのバランス・オブ・パワーを変えて,アサドが国外退去以外に選択肢の無い状態にするべきだ.マッケイン上院議員が言うように,我々は恥ずべきであり,『アメリカの指導力』という言葉に回答を求められている.Free Syrian Armyを訓練するだけでなく,クルーズ・ミサイルでアサドの航空機が飛び立つのを破壊せよ,という彼の主張が説得的になっている.

FT February 5, 2013

Be afraid, very afraid, of the tech crisis

By Andre Geim

先月,ダヴォスに集まった賢人やエリートたちは,世界経済の状態を心配していた.治療法は,ガバナンスの改善だ.エコノミストたちは新しい金融理論を作り,インターネット起業家たちはソーシャル・メディアを信じている.

しかし,彼らは共通して,速やかに解決策が見つかる,と確信している.

50年以内に,巨大な隕石が地球に衝突するコースにあると発見される.そのときになって初めて,ソーシャル・メディアやデリバティブが一部の者を非常に豊かにしたとしても,こういった発明では地球を救えない,と人々は理解するだろう.

SPIEGEL ONLINE 02/05/2013

Killed By the Regime

Aleppo's River of the Dead

By Christoph Reuter

Project Syndicate 06 February 2013

Complacency in a Leaderless World

Joseph E. Stiglitz

グローバリゼーション,新技術,金融自由化が,無限の成長をもたらす,正しいことさえすれば,その利益は誰にでも享受できる,と産業や金融の指導者たちが主張したこれまでのダヴォスは,まったく違う雰囲気になった.そこには新しい時代精神が見える.

発展途上国で鉱山を経営する一人の重役が,不公平な通商条約や援助の減少を,西側の道義的な権威を損なう,と嘆く開発専門家の発言に応じた.「西側が道義的な権威を得たことは一度もない」と.植民地支配,奴隷制,アフリカの分割,そして資源の略奪は長い歴史を持っている.それは掠奪者たちにとって遠い過去のことかもしれないが,その結果に苦しむ者たちにとってはそうではない.

最大の関心は,不平等,であった.アメリカ国内にも見られる機会の不平等.IMFのラガルド専務理事は,さまざまな改革を進めた,というが,その一つでもギリシャなどへの融資条件に盛り込んではどうか? 中国でさえ,新しい技術と機械化によって労働者が良い職場を失っていくのを止められない.ユーロの安定化は,まだドラギの約束に頼るものでしかない.

アメリカでは共和党の反対による政治の麻痺,ヨーロッパでは緊縮策への執着と機能不全,彼らの間違った政策によって新興諸国の成長が妨げられている.ダヴォスが示す時代は,G2G7G20ではなく,Gゼロの世界である.我々にはそれを生きる用意が無い.

FP FEBRUARY 7, 2013

Westward Ho!

BY YUN SUN

アメリカのアジア旋回に対して,中国は西進戦略を採用した.それはアジアにおける米中の軍事的な対立を回避し,同時にアメリカの秩序が及ばない地域で,新しい影響圏を確立する.


FT February 3, 2013

How America should avert its looming fiscal crisis

Glenn Hubbard


l  中央銀行のフロンティア

Project Syndicate 04 February 2013

Blaming the Fed

Kenneth Rogoff

連邦公開市場委員会FOMCの議事録が公開されたことで,2008年の金融危機の発生過程で連銀の対応が間違っていた,と非難されている.しかし,その判断は当時の多くの専門家たちが共通して示したものであるし,議会は住宅バブルを煽った連邦機関を熱心に支持していた.特定の委員が愚かな発言をしても,それを理由に連銀を非難することはできない.金融危機を含むマクロ経済モデルを作ることは難しい.また,たとえ危機が来るのを正しく理解したとしても,それを金融政策によって阻止できるかわからない.政府は,結局,5000億ドルの救済資金を用意したが,それほどの資金を聴きが起きる前に議会が承認したとは思えない.

FT February 6, 2013

Helicopter money and supply-siders

退任するイギリス金融サービス庁の長官Adair Turnerが,タブーを破って,「ヘリコプター・マネー」(一方的な新貨幣の創出)を実行する条件を議論した.それにより,他の刺激策もインフレ的であること,イギリス経済が停滞するとは限らないこと,イギリスが外国からの資本移動に常にさらされていること,などを考察できる.

財政政策と金融政策の論争は,生産性を高めない成長は持続しない,という点を見失わせる.

NYT FEBRUARY 6, 2013

Time to Revive the Financial Transaction Tax

By JESSE EISINGER

FT February 7, 2013

A case to reset basis of monetary policy

By Martin Wolf

イングランド銀行総裁Mark Carneyは,現状を「変動インフレターゲット“flexible inflation targeting”」と呼んだ.現在のインフレターゲット『体制』は機能していない.しかし,名目GDP目標を主張するには,その欠陥もある.

どのような条件で政策は効果を発揮するのか,問題にしなければならない.Lord Turnerは,財政赤字の貨幣化を含めた.今こそ,政策の革新を議論するときだ.


l  エネルギーと環境

The Guardian, Monday 4 February 2013

The end of nuclear power? Careful what you wish for

George Monbiot

FT February 5, 2013

Mining: Andean concessions

By Andres Schipani

FT February 6, 2013

Environment: Frozen frontiers

By Pilita Clark

FT February 7, 2013

Finance: Buried treasure

By Sam Jones


後半へ続く)