前半から続く)


l  オバマと気候変動

FT January 25, 2013

The tide could be finally turning on climate change action

Nicholas Stern

WP January 25, 2013

Make climate change a priority

By Jim Yong Kim


l  シルクロード

YaleGlobal, 25 January 2013

The Legacy of the Silk Road

Valerie Hansen

シルクロードの重要性は,公益ではなく,情報や文化,宗教の交流であった.その遺産は多様性と寛容であった.新シルクロードはそれを破壊する.

Project Syndicate 25 January 2013

The Return of the Trading City

Alan Berube

WTO,自由貿易協定,通貨戦争.こうした時代であれば,都市も通商戦略を持つべきではないか?  PortlandOregon市長が主催した通商戦略の国際会合は,地域の成長と雇用を求める輸出戦略,諸都市の国際連携を目指している.

Adam SmithAlfred MarshallPaul Krugman,中国の開発戦略,Saskia Sassenの「世界都市」,など,世界貿易の激しい競争と人々に及ぼす旧産業の衰退はコストをともなうが,長期的な繁栄ももたらす.しばしば都市を通じて.

FT January 30, 2013

Pipeline marks scramble for Myanmar

By David Pilling


l  イギリスのEU離脱とハーシュマン

Project Syndicate 25 January 2013

Brexit, Voice, and Loyalty

Harold James

Albert Hirschman“exit, voice, and loyalty”を使って,EUやイギリスの離脱“Brexit”を理解することができる.多くの市民は,EUの決定に十分な影響力Voiceを持たない,と感じており,それがEUへの忠誠心Loyaltyを損なっている.

Hirschmanがこの問題を発見したのは,西アフリカの貧しい列車に乗ったときだ.社会システムが住民に離脱Exitの機会を与えると,その効率はさらに悪化する.むしろ望ましい解決策は,住民に留まるよう求めLoyalty,システムを改善するために彼らが要求することVoiceを実現するインセンティブを与えることだ.彼は東ドイツの崩壊をこのモデルで説明した.

キャメロン首相は,EU離脱の可能性がある,と公言した.国家は孤立するのを嫌う.だから各国の制度や価値は近隣諸国と似てくる.忠誠心の醸成にはダイナミックな過程が働くのだ.EUは拡大を続け,アメリカは世界の民主化を唱えている.

イギリスがEU離脱を選択可能だと感じるのは,それに代わる魅力的なモデルがあるからだ.かつての植民地で,同じ英語を話すアメリカがそれである.イギリスは,このモデルを使って,EU改革にアイデアを採用させることに成功した.1980年代半ば,サッチャー首相はイギリス的な規制緩和モデルを採用させて,欧州単一市場を実現した.

しかし,その後,グローバル化した世界をダイナミックに生きるはずであったアメリカ・モデルは,深刻な金融危機に至り,エンゲイジメントと民主化要求はイラクやアフガニスタンで悲惨な結果につながった.

アメリカはイギリスからの誘惑を嫌っている.アメリカにとって魅力的なヨーロッパ市場を閉ざして,イギリスの島々を優先する気持ちなどないからだ.これではシェイクスピア風の喜劇である.ヨーロッパとイギリスは結婚しているが,イギリスはアメリカとの関係を深めたいと願い,アメリカはヨーロッパを気にしている.

債券格付けが相手を決める,というのが答だろうか.

FT January 27, 2013

Euro and trade will make EU irrelevant

By Wolfgang Münchau

NYT January 28, 2013

Should the E.U. Stick Together?

SPIEGEL ONLINE 01/29/2013

SPIEGEL Interview with Tony Blair

'Leaving Europe Would Be Very Bad for Britain'

イギリスが離脱することには意味が無い.イギリスはEUに留まって,改革を指導するべきだ.グローバリゼーション,人口変化,技術革新は,競争力を維持したいなら,ヨーロッパの社会モデルに革新を求めている.われわれは十分な規模を持たない.イギリスだけでなく,ドイツもそうだ.インドネシアは容易にドイツの3倍の規模になる.

BLOOMBERG Jan 29, 2013

Cameron’s Skepticism Is Good for the EU

By Clive Crook


l  中国と封じ込め

NYT January 25, 2013

Work With China, Don’t Contain It

By JOSEPH S. NYE Jr.

日中間の戦争を警告するのは早すぎる.アメリカは中国に対して封じ込め政策を採るべきではない.クリントン政権時代,われわれは封じ込め政策を2つの理由で拒否した.封じ込め政策は中国を敵にしてしまうし,中国を友好国として扱うことで将来の平和をもたらすことができるからだ.

われわれの対中国戦略はa strategy of “integrate but hedge”「統合しつつ,リスクを回避する」戦略だった.それはレーガン政権がソ連に対して採った“trust but verify”「信頼するが,検証する」戦略をいくらかまねたものだ.中国のWTO加盟を支持し,中国やインドの台頭をアメリカは歓迎した.ジョージ・W・ブッシュもその姿勢を継承して,Robert B. Zoellick国務副長官は,中国をa “responsible stakeholder”として受け入れた.

オバマ政権は,アジアを含む太平洋に海軍を移動しただけでなく,貿易,人権,外交のイニシアティブを動かした.それはboth cooperation and competition協力と競争の要素を共に含む.アジアは単純でないから,その内的なバランス(勢力均衡の変化)が重要だ.中国はソフト・パワーによって近隣諸国の支持を得なければ,その経済・軍事力の拡大は不安を呼び,対抗力を求めさせるだろう.

ケナンは外交を軍事問題に限ることに反対した.それは中国の側に,包囲された,脅かされたという不安を生む.世界の2大国が協力することは,多くの分野で双方に利益をもたらす.

中国はますます中東からの石油に依存するだろう.われわれは中国を含む諸国の船舶に対して自由航行を保証する規制の問題で,中国と協力できる.国内のシェール・ガス開発でも協力できる.日中が2008年の海底資源合同開発計画を再開することにも,中国のTPP参加にも協力できる.

封じ込め政策は中国に対して有効ではない.アメリカのパワーは,他国と協力することによっても高められる.

FT January 28, 2013

Beijing still prefers diplomacy over force

By GrahamAllison and RobertBlackwill

中国の考えを知りたければ,Lee Kuan Yewに勝る戦略家はいないだろう.Leeは,鄧小平から習近平まで,中国のすべての指導者と最も長い時間をかけて対話し,ニクソンからオバマまで,アメリカの歴代大統領とも会った人物だ.

Leeの意見では,中国と領土紛争を高めたフィリピンとび本から中国向けの輸出額は,それぞれ20%,16%,減少したことは,未来を予告したものだ.13億の市場にアクセスすることができるのは,中国政府との対立を回避する国だけだ.

中国は,ドイツや日本のような失敗は犯さない.アメリカが技術的・軍事的な優位を維持しているときに,アメリカとの戦争を始めるつもりはない.攻撃されない限り,尖閣諸島での衝突も避けるだろう.外交的な対立にとどめるはずだ.

YaleGlobal, 28 January 2013

North Korea Tests China and the World

Shim Jae Hoon

Project Syndicate 29 January 2013

The Asian Sleepwalkers

Yoon Young-kwan

FP JANUARY 30, 2013

A Maritime Balkans of the 21st Century?

BY KEVIN RUDD

東アジアとその南シナ海,東シナ海は,ますます1世紀前のバルカン半島のように,複雑な利害と国際政治の絡み合った,最も危険な紛争地帯になりつつある.

東アジア諸国は,域内貿易を増大する一方で,時代を超えて引き継がれた,原初のナショナリズムを活性化している.最も懸念されるのは,中国と日本,中国とベトナム,の関係だ.日本は中国との関係改善を目指しており,双方の利害が一致するから,舞台裏で,問題のエスカレーションを避ける合意ができるかもしれない.他方,ベトナムとは,南シナ海のエネルギーや漁業,輸送などが複雑に絡んでおり,双方とも衝突を辞さないような姿勢を示しつつある.

歴史家Christopher Clarkの新著は,ヨーロッパがバルカン諸国のいかに些細なナショナリズムに大国間の政治が関わり,第1次世界大戦の惨禍を生じたか,示している.その教訓はアジアに十分な熟慮を求めるだろう.


l  中国経済・社会問題

NYT January 26, 2013

Leader’s Visit Lifts a Village, Yet Lays Bare China’s Woes

By ANDREW JACOBS

FT January 27, 2013

‘China’s Urban Billion’

Review by Simon Rabinovitch

FT January 29, 2013

China’s banks are too big to manage

By Yukon Huang

Project Syndicate 29 January 2013

China’s Last Soft Landing?

Stephen S. Roach

再び中国経済は急落を回避し,ソフト・ランディングに成功した.中国には危機を政策によって回避する余地があった.しかし,それは経済の回復力を大幅に損ない,次の危機に対する脆弱性を強めている.今すぐに,消費を中心とした成長モデルへの移行を進めるべきだ.すなわち,サービス部門の育成,社会保障システムの整備,戸籍管理システムの放棄,国有企業の改革,低金利による金融抑圧の終焉.

政策や国家管理によるソフト・ランでキングは,経済の協調を欠き,所得格差を拡大し,環境破壊と汚染を悪化させ,大気や水供給も危険になっている.以前の成長モデルは耐えられないのだ.

FT January 30, 2013

Beijing smog offers silver lining for some

By Jamil Anderlini in Beijing

Project Syndicate 31 January 2013

China’s Narrowing Policy Horizons

Yu Yongding

VOX 31 January 2013

China and the end of extrapolation

George Magnus


l  メキシコの答

NYT January 26, 2013

Mexico: The New China

By CHRIS ANDERSON

メキシコは中国の安価な製品とどうやって競争するのか? そして,アメリカ経済の再生も? ティファナ(TJ)の復活にその答えがある.

多くのラテンアメリカの年と同様,TJも最近まで麻薬組織とテキーラで有名なだけであった.しかし,今では200万人以上が住む,北アメリカでも注目の電子機器組み立て基地である.私の経営する3D Robotics社は3年前に,サンディエゴの工場を補完する第二の工場をTJに開いた.

Today, what Shenzhen is to Hong Kong, Tijuana is becoming to San Diego.

香港が深圳と結びついて成長したように,サンディエゴとTJとは結びついた.メキシコには安価な労働力だけでなく,多くのエンジニアも育っている.中国と比べて,メキシコの生産拠点にはサプライチェーンを短くするメリットがある.すなわち,1.中小企業でもメリットを利用できる.2.リスクが小さい.3.迅速に調整する.4.革新を刺激する.

21世紀の交易ルートは,マルコポーロほど世界を回る必要がない.

FT January 30, 2013

Mexico: Aztec tiger

By Adam Thomson


l  移民政策の改革

VOX 28 January 2013

Visa policies and multilateral resistance to migration

Simone Bertoli, Jesús Fernández-Huertas Moraga

人物認証の新しい技術は,移民の新しい可能性が開かれるだろう.ビザ制度を革新し,2国間の合意ではなく,多国間のシステムが必要になる.

WSJ January 28, 2013

Immigration Breakout

BLOOMBERG Jan 28, 2013

To Fix the U.S. Economy, Fix Immigration

By Ezra Klein

2013年に成立した最も重要な経済政策は,移民法の改正,であった.移民たちは起業し,労働力を補う.移民のメリットは類推で説明するのが簡単だ.高齢化し,子供の生まれない経済が困難に直面するのは明らかだ.その典型は現代の日本だ.

guardian.co.uk, Tuesday 29 January 2013

The Obama plan for immigration reform: panel verdict

Matt Adams, Rachel Alexander, James Antle, Michael Cohen, Ana Marie Cox and Sarahi Uribe

NYT January 29, 2013

Reforming Immigration for Good

By MAE M. NGAI

NYT January 29, 2013

Outsourcing, Insourcing and Automation

By BRUCE BARTLETT

循環的失業と構造的失業の違い.機械化は失業につながるか? 急激な技術革新と生産性上昇は,長期的に所得を増やして需要と雇用を増やすが,一時的に,失業を増やすだろう.

FP JANUARY 29, 2013

Think Again: Immigration

BY SHANNON O’NEIL

guardian.co.uk, Wednesday 30 January 2013

Immigration reform: a pathway to citizenship means prosperity for all

Ana Avendano

政治の現実を考慮して,移民を認める代わりに,その国籍を与えない,という提案がなされている.それは間違いだ.アメリカの信じる基本的な価値として,生まれに関わらず同じ市民権が認められるべきだ.

有権者の5人に4人が,雇用者に移民の資格と労働法を守るように求める,新しいシステムを支持している.それは低賃金の移民労働者が搾取されることを防ぐ.同時に,国境の安全保障を高め,移民たちは労働しながら国籍を得るまでの道を得る.

右派は移民の「自主送還」を提唱している.国籍を認めれば移民の洪水が起き,賃金が急落する,というわけだ.それは間違っている.彼らの提案は,移民たちを永久に二流市民として地下経済に閉じ込める.そのような扱いは,アメリカの価値観に反するだけでなく,経済的な意味もない.

国籍を持つ移民の方が賃金は高く,経済規模を拡大する.移民労働者たちが発言力を得て,経済的機会が増し,経済を改善することは,すべての労働者の利益である.それは雇用を増やし,税収を増やす.

激しい勤労を好む移民家族がアメリカに来ることは,その子供たちに自由と経済的機会があると信じるからだ.彼らは社会のすべての者に貢献しており,その権利と保護を受けるに値する.


l  ユーロ圏の改革

FT January 28, 2013

Eurozone banking union is deeply flawed

By Hans-Werner Sinn and Harald Hau

FP JANUARY 28, 2013

Why Can't Europe Save Itself?

BY DANIEL ALTMAN

通貨同盟は3つの足で立つ.財政政策,移民,貿易,である.ユーロ圏には最後の2つしかない.しかも,どちらの足も弱い.

多用な7か国が加盟するユーロ圏を単一の政策で管理するECBの使命は困難なものだ.同時に,公共と不況の国がある場合,これらに適した政策は見いだせない.理論的には,長期において景気変動が同時化するだろう.企業も消費者も,互いに緊密に関係する中で,雇用やインフレが同時に変化するからだ.

これは,変動レートにおいて,貿易が実現する過程である.通貨同盟の内部でも,各国における需要が貿易を通じて移転される.好況のドイツは,不況のスペインやギリシャから,もっと商品を購入すればよい.しかし,ドイツ政府はそのために減税することや財政刺激策の採用を拒んでいる.

もしユーロ圏内で,貿易に代わって,完全な労働力の移動があれば,事態は改善できただろう.不況地域から好況地域へと労働者が移動する.これも十分に自由に行えない.他国の資格は認めず,ビジネスを始めるのも難しい.不況になれば反移民感情が強まる.

多くの成功している通貨同盟には財政政策が備わっている.連邦財政はアメリカの貧困州に財政移転している.ユーロ圏にはそれが無い以上,分裂の危機を繰り返すしかない.

WSJ January 28, 2013

The Conscience of a Radical

By BRET STEPHENS

The Guardian, Tuesday 29 January 2013

Europe is haunted by the myth of the lazy mob

Ha-Joon Chang

ヨーロッパをさまよう妖怪とは,かつて共産主義と呼ばれた.今は,「怠惰な群衆」に関する神話が広められている.税収を減らして財政赤字をもたらしたのは,金融危機とそれに続く緊縮策である.貧困や不平等は構造的なものだ.

Project Syndicate 29 January 2013

Chronic Europe

Gene Frieda

FT January 31, 2013

Gloomsters buried the euro too soon

By Philip Stephens

WSJ January 31, 2013

Who Says the Euro Crisis Is Over?

By URI DADUSH


l  ダヴォス

FT January 28, 2013

A conspiracy of reasonable people

By Gideon Rachman

The Guardian, Monday 28 January 2013

When the rich are born to rule, the results can be fatal

George Monbiot


l  金融政策と景気回復

WSJ January 28, 2013

Fed Policy Is a Drag on the Economy

By JOHN B. TAYLOR

FT January 29, 2013

A perilous journey to full recovery

By Martin Wolf

ダヴォスでは安堵のため息が聞こえた.危機は回避されたのだ.しかし,そのための異常な金融緩和政策から離脱するタイミングが難しい.インフレを警戒する声がある.早まった金融引き締めは事態を悪化させるだろう.不確実さが余りにも大きい.

FT January 29, 2013

Central bank hot air pumps up bond bubble

By John Plender

VOX29 January 2013

Monetary alchemy, fiscal science

Jeffrey Frankel

金融政策と財政政策,どちらが有効か? 科学ではなく,錬金術.

Project Syndicate 31 January 2013

Grand Mal Economics

J. Bradford DeLong

金融危機の後,なぜ政府も中央銀行も景気回復に失敗するのか? 1825年のパニックで,イングランド銀行も倒産する寸前であった.

第一に,インフレ期待は管理できず,構造的な問題があった.第二に,政府は景気刺激策を知らなかった.Jean-Baptiste Sayは,現代の「債務削減」が起きていると指摘した.

その後も,John Stuart Mill, Walter Bagehot, Irving Fisher, Knut Wicksell, and John Maynard Keynesが不況回避の政策を主張した.Keynesは,清算ではなく,債務を延期するように求めた.


l  国境のない社会契約

guardian.co.uk, Tuesday 29 January 2013

One Nation: One World – and an end to absolute poverty by 2030

Ivan Lewis

コンゴ民主共和国のゴマで,武装集団にレイプされ,家族全員を殺害された女性に会った.18歳の男性は,未来への希望を2つの言葉に表した.・・・平和と職場がほしい.

次の20年間に,われわれの抱負と成果は,各国の最貧困層20%がどうなるか,紛争にまみれた諸国の悲惨な状態がどうなるか,によって測ることができるだろう.労働党の新しい開発思想は,新しい「国境のない社会契約"social contract without borders"」として表現できる.社会正義には,不平等をなくし,人権を守ることが含まれている.その実現には国境が無い.ガバナンスの改善には,援助供与国も,企業も,国際機関も関係している.

われわれの測定可能な目標とは,2030年までに世界から絶対的貧困をなくす,というものだ.われわれは一層の相互依存と緊密に結合した世界で生きている.貿易,雇用,移民,生活費,気候変動,安全保障,すべてが国境を超えた要素に依存し,一国では解決できない.われわれは,グローバリゼーションが少数者のためにではなく,多数者のために役立たねばならないと考える.21世紀において,イギリスの愛国者であるとは,国際主義者であることだ.


FT January 29, 2013

Wider euro ‘Tobin tax’ will net €35bn

By Alex Barker in Brussels


VOX 31 January 2013

Current-account rebalancing and international transfers (immaculate or not)

Giancarlo Corsetti, Philippe Martin, Paolo Pesenti

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The Economist January 19th 2012

Offshoring: Welcome home

The Senkaku/Diaouyu islands: Dangerous shoals

China and Japan square up: The drums of war

Testing education: Pisa envy

Buttonwood: War games

The other type of mobile money: Airtime is money

Free exchange: The voice of public choice

(コメント) バラバラですが,重要な話題が並びます.オフショアリング(工場の海外移転)が終わり,逆転し始めました.本当に? 尖閣諸島・釣魚島をめぐる日中間の対立は戦争勃発を予感させる.まさか? ・・・

他方,教育の成果を国際比較するOECDの試みは,教育による経済成長を願う諸国に刺激となります.フィンランドと韓国,香港が,ともに高い成果を示しているとしたら,全く共通しているように見えない教育システムについて,さまざまな考察を呼ぶでしょう.

日本の安倍が始めた,と名指しされた「通貨戦争」ですが,サッカー観戦の集合的な誤謬として非難されるだけでなく,最後は諸国のインフレ恐怖を前提に通貨切り上げを実現する,集団謀議という解釈に至ります.また,アフリカで始まった携帯電話の利用時間Airtimeを売買する疑似貨幣の利用には,何か,言葉に詰まるものがあります.

James Buchananと公共選択論に関する紹介が興味深いので,エッセーに取り上げます.

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IPEの想像力 2/4/13

今週のReviewを作成する中で,HirschmanBuchananの訃報と業績紹介を読みました.それらに刺激された,私の個人的な印象を書き留めます.

A.O. Hirschmanが示した,“exit, voice, and loyalty”に拠って,Harold JamesがイギリスのEU離脱問題を解釈しています.イギリスがEUから離脱するのを認めてしまえば,非効率なシステムを改善するより,もっと効率の良いシステムに移った方が良い,という個人の選択に流されてしまいます.かつて東ドイツや,ソ連に支配されていた社会主義圏の諸国がそうであったように.しかし,ヨーロッパの政治文化に懐疑的なイギリス国民にも,EUへの忠誠心を高める方法があるはずです.EUの改革に向けて発言し,指導力を発揮せよ,とトニー・ブレアはキャメロンに求めます.

社会システムを失った個人の選択は,非効率なシステムの下でよりも,いっそう悲惨なものになります.ヨーロッパ諸国やアメリカに移住して成功できる,ごく少数の,例外的な英才や資産・情報の保有者,新しい土地に有力な縁者のいた者でも,成功は容易でなかったはずです.それを助ける移民制度の改革は,まだ,議論もされていません.

国家も,老朽化した鉄道システムと同じで,常に,革新のための新投資が必要です.国家や制度の改革は,1回きりの革命で決まるのではなく,継続するダイナミズムが重要です.改革が次の改革を呼び,その過程に参加する者の政治的意志を高め,波及します.

J.M. Buchananは,それとは反対に,政府の役割を市場に対する補完として限定的にとらえることで,本質的な考察を得ます.政策を実行するのも人間だ,という点です.市場が支配的な民主主義型政治システムの下では,彼ら(政治家・政府職員)が政策を実行する際に,自分が再選されること,個人所得の増大を目標とします.

不況を回避するために財政赤字が正当化されると,国債を増発することへの抵抗が失われ,好況期にも,政治家たちは再選のために政府支出を削りません.環境保護のために外部性を内部化するには,規制や課税が主張されます.しかし,それらはレント・シーキングや収賄・汚職を増やすでしょう.市場の失敗を正すには,政府の失敗がそれを悪化させる危険にも注意しなければなりません.

政府を理想化するな,とBuchananは主張したそうです.政治に解決できることは,それに関わる個人の動機や制度によって制約されており,政府は「魔法の杖」ではない.政策や計画の見直しは常に必要であり,その効果を高めるような「憲法」を定める人々と,利益やイデオロギーを代表する政治家とは,区別しなければなりません.

アラブの春に関して,エジプト革命よりもヨルダン国王の立憲君主制への改革を優れたモデルとして再発見したF. Zakariaの論説があります.彼も,エジプト(やリビア)の革命,(ガザの)選挙(そして,イラクやアフガニスタンへの軍事侵攻)が,優れた政府の設計(ガバナンス)をもたらさなかった,と指摘します.むしろ,旧権力システムを維持し,外部からの意見を取り入れて,社会制度の改革を採用したヨルダン国王の方が,より多くの国民が選挙に参加し,多くの反対派を議会に送り込み,憲法に従って少数派の権利を守る政府を実現しました.

アメリカの「財政の崖」,ユーロ危機,アベノミクス,北京の大気汚染,・・・ 権力のあり方と市場システムとは,別々に機能するものではなく,それらが一致して人々の声を実現するとき,理想化と効率化を実現する改革のダイナミズムが働きます.各地のガバナンスの歴史は,その秘訣を学ぶ姿勢を私たちに求めていると思います.

P. Katzenstein, A World of Regions. の翻訳『世界政治と地域主義』があるのを知りました.じっくり読んでみたいです.何かきっと,答につながる優れた洞察を示しているでしょう.

グローバリゼーションは,政治に革新を求めます.イギリス労働党の国際援助政策は,「国境のない社会契約」,という新しい概念を掲げています.もし彼らの概念を支持するなら,私たちは,破綻国家や絶対的貧困で苦しむ人々を助けるために発言し,政治的忠誠を高める地域の姿を通して,新しい地球を発見するのでしょう.

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