IPEの果樹園2013
今週のReview
2/4-9
*****************************
アメリカの財政政策とブキャナン ・・・ガイトナーの時代 ・・・アメリカの外交方針を探す ・・・エジプト革命とヨルダン ・・・安倍内閣の問題点 ・・・円安と通貨戦争 ・・・イギリスのEU離脱とハーシュマン ・・・中国と封じ込め ・・・メキシコの答 ・・・ユーロ圏の改革 ・・・国境のない社会契約
[長いReview]
******************************
主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP:
Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian,
NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington
Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l アメリカの財政政策とブキャナン
NYT
January 24, 2013
Deficit
Hawks Down
By PAUL KRUGMAN
オバマは2期目の就任演説で,リベラルの多くの理想を掲げたが,最も良かった点は,財政赤字に言及しなかったことだ.
Project
Syndicate 27 January 2013
Taming
Leviathan
Michael Boskin
効果的で,効率的な政府が無いと社会は成功しない.それには,必要な仕事をするために財源を集めることも含まれる.しかし,大きくなり過ぎた,集権化し,官僚制度に依存し,費用のかかる政府は,個人のイニシアティブや責任を損ない,民間経済を大きく害する.民間の投資,消費,慈善は締め出され,高率の税に苦しめられる.また,防衛のような必要な機能が締め出される.それはヨーロッパが陥った問題であり,アメリカのそれに続いている.
最近亡くなったJames M.
Buchananは,公共選択論を開拓して1986年のノーベル経済学賞を受賞した.政府すなわち政府職員は,エコノミストたちが民間部門の経済的意思決定について分析するモデルをそのまま適用できる.彼らも利己的な動機で動くのであり,政治家にとっては再選されることが目標だ.市場の失敗を解決する理想的な政府の行動など存在せず,むしろ,政府が問題を悪化させること,政府の失敗の方が深刻な結果になる.
民間主体の行動の外部性を内部化する,景気変動の需要不足を補う.経済学の教科書はそう教えるが,政府の行動はそれほど単純ではない.それにもかかわらず,政府を理想化する,もしくは,ロマンティックに扱うのは間違いだ.現実には,政治家の判断は財政赤字を増やし,債務を増やす方に偏り,結局,ますます政府が肥大化する.
政府のあらゆる活動分野で,もっと低コストに,より良い結果をもたらすことができる,と右派も左派も考えている.効果のない政府支出を廃止し,近代化や経費節減に努め,サービスの改善や,成長を損なう高税率を抑える圧力をかける指導者を,われわれは見つけねばならない.
l ガイトナーの時代
NYT
JANUARY 24, 2013
Timothy
Geithner’s Legacy
By STEVEN RATTNER
WP
January 30, 2013
Five
myths about Timothy Geithner
By Noam Scheiber
ガイトナーに関する神話がある.多くの人が信じているけれど,これらは間違いだ.
1.ウォール街の申し子.2.穏健な改革を行う.3.経済政策決定はフリーハンドである.4.支出と課税に関して1%の利益を守った.5.2008年に崩壊する前よりも安全な金融システムを残した.
guardian.co.uk,
Wednesday 30 January 2013
Tim
Geithner: a legacy of financial failure containment
Leo Panitch
1988年,ガイトナーは20代で財務省に入り,東京のアメリカ大使館に派遣された.Robert Rubin and Larry Summersの財務省国際部で昇進し,1998年,国際部長になった.その後,数ブロック離れたIMF本部に移り,政策局と政策評価の部長になった.2003年,ニューヨーク連銀総裁に指名された.いわゆる「財務省・連銀・ウォール街」連合体の枢要な地位に就いたのだ.
アメリカ国家のパワーの頂点を渡り歩いた経歴は,唯一,1950年代から80年代に財務省と連銀を行き来したポール・ボルカーのみが匹敵する.1990年代のガイトナーが果たした重要な国際的役割は,1960年代にボルカ―が築いたものである.それは世界の主要資本主義諸国から集まった政府スタッフたちが,「親密な環境で」各国政府の政策が国際金融市場にもたらす意味を議論することだった.ボルカ―によれば,
「これらの人々は政治家ではなかった.彼らは主に政府内部で長い経歴を継いでいた.彼らは稀有な強い関与と共通の目的を持っていた.そして迅速な意思決定能力において示される,相互の信頼関係を深めたのだ.」
ボルカ―が取り組んだのは,ケインズ主義の時代のインフレ圧力がもたらす危機の官吏であった.他方,ガイトナーは,新自由主義の時代のグローバルな金融ビジネスがもたらす浮動性・脆弱性がもたらす危機の管理であった.アメリカは巨額の貿易赤字と財政赤字を出しながら,ドルの価値はおおむね安定していたし,膨大な資本流入をウォール街と財務省に安定的に維持することができた.2007-8年に危機が及ぶまで,常に,金融の衝撃は他所で起きていた.
1990年代の重要な報告書で,財務省は21世紀のアメリカ金融について考察し,「破綻の防止」と「破綻の封じ込め」とを明確に区別している.金融システムを安全に保つよう金融機関の手を縛ることは,革新を妨げ,経済全体の甚大なコストをもたらすとともに,アメリカの金融サービスにおける指導力を潜在的に損なうだろう,と.金融の監督や規制は金融部門の拡大を支持すべきだし,それに不可避的に伴う金融危機は,もっぱら「破綻の封じ込め」によって対処するべきだ.
1997年にアジア通貨危機が始まると,国際部次官補として日本がタイ向けの融資を組織する会議に出席したガイトナーは,「超大国になった気分はどうかな?」と日本側スタッフに呼びかけた.しかし,日本の大蔵省が進めたアジア通貨基金案については,中国を含むアジア諸国に手をまわして,葬った.ビジネス・ウィークはそれについて「ワシントンが派遣したSWATチーム(狙撃班)」という記事を載せた.ガイトナーは,アジアがアメリカの帝国を浸食する試みは必ず阻む,という意志を示した.
財務省の国際部からニューヨーク連銀に移って,1998年のLTCM危機を「封じ込め」方式で解決した.そして2007-8年の大火災に際して,Henry Paulson財務長官,Ben Bernanke連銀議長とともに鎮静化を試みた.ニューヨーク連銀は,事実上,世界中央銀行として行動したのだ.アメリカの銀行に対してだけでなく,ドイツ,フランス,中国の銀行にまで,ドルを供給した.
オバマ大統領が最初の財務長官にガイトナーを示したことは金融界から歓迎された.ガイトナーこそ,危機管理の達人であった.2011年のアメリカ銀行協会において,競争的な市場がもたらす不可避的な破たんを管理するより良い方法を見出すことが主要な目標であり,特に,危機の感染を防ぐには,よりグローバルな,国際金融協力が欠かせない,とガイトナーは述べた.
他方,金融破たんの「封じ込め」には議会による制約がある.議会は,建物が燃えているのに,消防車への給水を止める.メキシコ・ペソ危機の救済は危うく失敗する恐れもあった.
内外におけるガイトナーの遺した戦いの記録は比類ないものだ.
NYT
January 24, 2013
India’s
Next Revolution
By AMANA FONTANELLA-KHAN
l アメリカの外交方針を探す
FP
JANUARY 24, 2013
You
Can't Change the Climate from Inside Washington
BY THEDA SKOCPOL
オバマは温暖化防止の法律を成立させることができるだろうか? その就任演説で環境保護団体を歓喜させたかもしれないが,これまでの方式では支持されないだろう.共和党や反対派の宣伝は効果を発揮して,アメリカ国民の半数を超える者が地球温暖化の影響を疑っている.
これまで失敗したのは,たとえば,プロフェッショナルな環境保護団体が大企業とワシントンの舞台裏取引で"cap-and-trade"を法制化しようとする試みだった.それはオバマの選挙戦を支えたように市民運動の力を吸収できていない.もっと透明性の高い,環境保護の利益が市民たちに還元されるような仕組みを提示して,オバマ自身が広く支持を訴えるべきだ.
マーチン・ルーサー・キングJr.の行動を称えるオバマだが,もし環境保護を法制度において実現したいなら,1960年代の市民権運動と同じように広範な支持を得る運動に変える必要がある.
FP
JANUARY 28, 2013
Some
inconvenient truths
Posted By Stephen M. Walt
FP
JANUARY 28, 2013
America
in Recline
BY JOHN ARQUILLA
FP
JANUARY 28, 2013
Is
America Training Too Many Foreign Armies?
BY JOHN NORRIS | JANUARY 28, 2013
Project
Syndicate 28 January 2013
Obama’s
Year of Iran
Anne-Marie Slaughter
2013年はイランに関して決断する年になる.すでに特命チームを派遣した,と伝えられている.国務省や国防総省の軍人たちが加わっている.
オバマは核開発を中止させるため,イランに対する多国間の経済制裁を実現した.しかし,その制裁がいつまでも維持できるとは思えない.韓国や日本はイランからの石油輸入削減を嫌がったし,中国やロシアが参加したことは珍しい.
オバマがシリアの内戦に介入しなかったことで,中東諸国はアメリカの姿勢を疑い,アメリカはその信用を大きく損なってしまった.そんな中で,制裁の破たんが生じるだろう.Zbigniew Brzezinskiがイラン核保有への空爆を否定して,冷戦期と同様に,アメリカが中東諸国への核攻撃に対する報復を明確に示すなら,抑止力は確保できる,と考えることも可能だ.
しかし,オバマは「核のない世界」という目標を一貫して掲げてきた.ブッシュ政権が,インド,イスラエル,北朝鮮,パキスタンの核保有を是認したことに対して,オバマはそれを許すなら,世界の30~50か国が核保有し,核戦争の危険を受け入れがたい水準に高めてしまう,と考えている.
軍事力行使と外交とは,全く異なる,対立した選択肢ではない.オバマはイランへの外交交渉に全力を挙げるが,それが失敗したとき,2013年はイランとの戦争の年になるだろう.それを回避するために,トルコやブラジルが仲介して,イラン政府に政治的なメンツを保つような条件を示すことも有効だ.
FP
JANUARY 29, 2013
Hands
Across the Atlantic
BY CHRIS BRUMMER, FREDERICK KEMPE
FP
JANUARY 30, 2013
Ten
questions for Chuck Hagel
Posted By Stephen M. Walt
Project
Syndicate 31 January 2013
America’s
New Progressive Era?
Jeffrey D. Sachs
1981年にRonald Reaganが大統領に就任したとき,有名な宣言をした.「政府は我々の問題の解決ではない.政府が問題なのだ.」
32年と4人の大統領を経て,Barack
Obamaの就任演説では,アメリカが(そして世界が)立ち向かう緊急の諸問題に対して政府がより大きくなることを肯定することが宣言された.一つの時代が終わったのだ.
レーガンの宣言は,貧者,環境保護,科学技術に対する,右からの革命だった.大統領は政府を使って社会問題を解決するのではなく,富者のために減税した.「レーガン革命」の要素は,1.富者のために減税する,2.教育,インフラ,エネルギー,気候変動,職業訓練に対する政府支出を削減する,3.防衛予算を大幅に増やす,4.軍施設の管理や監獄のような政府の基幹部分も含めて民営化する,であった.それは「自由市場」革命と呼ばれたが,実際は,裕福な特殊利益集団が中産階級と貧困層を攻撃する時代だった.
アメリカは中産階級の社会から,富者と貧者にますます分断された社会になった.かつて平均賃金の30倍の報酬を得ていた企業重役たちは,今や230倍の報酬を得ている.かつて環境破壊と闘う指導者であったアメリカが,今では主要諸国の中で気候変動を認めない最後の国になった.金融の規制緩和はウォール街を非常に裕福にしたが,その結果,詐欺,極端なリスク,無能さ,インサイダー取引により,グローバル金融危機を招いた.
もしかしたら,オバマは新しい時代を開くかもしれない.アメリカの偉大な歴史家,Arthur Schlesinger, Jr.が,保守と革新が交代する30年循環,を指摘したことと一致する.不平等と腐敗にまみれた泥棒貴族と金ぴか時代の後,1920年代の金権政治があった.それは大恐慌とニュー・ディール,1930年代-60年代の革新の時代に交代した.しかし,1970年代の移行期を経て,レーガン革命が起きた.
しかし,新しい革新の時代を祝うのは早すぎる.議会にも,ホワイトハウスにも,既得権を守る,強力な保守派がいっぱいだ.彼らは候補者や選挙運動に対して途方もないドルをばらまいている.それでもオバマは政府を動かすべきだろう.地球を破壊から救い,技術進歩の利益を社会の全員に享受させ,持続可能な未来のために国民的,そして,グローバルな規模のインフラを構築するには,集団的な解決策が必要だから.
公共政策の実現はグッド・ガバナンスに欠かせないことだ.さまざまな課題に対して,賢明な,革新的,低コストで効率的な,政策を見出すべきだ.
Project
Syndicate 31 January 2013
America
the Unequal
Naomi Wolf
l エジプト革命とヨルダン
BLOOMBERG
Jan 24, 2013
On
Revolt’s Anniversary, Egypt Needs Economic Miracle
By Samir Radwan
2011年のエジプト革命が失敗であったというのは早すぎるが,景気回復が必要なこの時期に,革命を導いた若者たちではなく,イスラム主義者たちが権力を固めたのは確かである.
エジプト経済は悪化しており,その政府長期債の格付けが低下している.エジプト経済とその社会を最悪の未来から救うには,奇跡が起きるのを待つようなものだ.しかし,奇跡は起きるに違いない.長期の見通しと政治的意志があれば,奇跡は起きる.
真っ先に必要なのは,財政赤字と対外赤字を埋める資金だ.IMF融資は行われねばならない.そのためには,政府支出の最大割合を占める,さまざまな補助金を削るべきである.それは,政治的な対立,交渉の失敗によって阻まれている.
エジプトは独裁制を倒したが,社会を分断するのではなく,より包括的な政治システム,必要な政治的合意の形成に向けて機能する政治が求められる.
VOX 24
January 2013
Growth
and political change: Transition duration is critical
Caroline Freund, Mélise Jaud
FP
JANUARY 25, 2013
The
Revolution Continues
BY CHARLES HOLMES
カイロで演じられているドラマはハリウッド映画ではない.
われわれが目撃しているのは,ナセル時代が終わる死滅の狂騒である.1952年にエジプトの王朝を打倒したGamal
Abdel Nasserは,アラブ・ナショナリズム,反植民地主義,経済の国有化,そして軍の至高性により,その後の60年間のエジプト政治を決定した.ナセル主義は過去の政治から抜け出すことに成功したが,緩やかに衰退し,今,崩壊しつつある.
国家,社会,経済の基礎構造をなした様々な残滓が今も継続している.ギーギーと音を立てる,機能しない保護主義システムが,少数のエリートたちの既得権を守るために近代化とグローバリゼーションを拒み,なお生き残っている.
FP
JANUARY 25, 2013
Nation-Building
in the Classroom
BY JAMES TRAUB
WSJ
January 27, 2013
A
Bleak Anniversary for the Arab Spring
By THANE ROSENBAUM
WP
January 31, 2013
Arab
Spring’s hits and misses
By Fareed Zakaria
エジプトの革命は脱線した.アラブの春が失敗したことを議論する者たちは,以前の時代を懐かしむ.しかし,過去2年の事件は,憲法の重要性と優れた指導者が移行において決定的であると教えている.
エジプトとヨルダンは,改革の成否を対照的に示す.要するに,エジプトは自由化の前に民主化した.新秩序の最重要な要素は選挙だった.新政権,新大統領,新憲法を選挙で決めた.しかし,その結果は,エジプトで最も組織された勢力であったムスリム同胞団が勝利し,権力を得た.大統領も,25%の票でモルシを大統領にした.同胞団は憲法制定委員会を支配し,女性の権利や信仰の自由を否定した.安全保障を理由に,メディアの検閲を行った.大統領は,法を超える無制限の権力を得て,同胞団がこれを行使したのだ.
他方,ヨルダンは,その慎重な姿勢を批判されたが,国王が選挙への急進的な訴えを阻止した.その代わりに国王は,憲法改正のための委員会を指名した.委員たちは,ヨルダン国民や西側の専門家に,ヨルダンの政治システムをより民主的で社会を包摂するように改革する方針を諮問した.2011年9月,重要な改革の多くが実施され,国王の権力のいくつかは議会に移譲され,独立の選挙管理委員会,憲法審査委員会が設けられた.
選挙は,ヨルダンのムスリム同胞団によってボイコットされたが,有権者の70%が選挙登録し,56%が投票した.中東地域で最高である.国王や政府を批判する多くの候補者が当選し,12%が反対派のイスラム主義者であった.割当制のおかげで,女性が当選者の12%を占める.それは立憲君主制への移行の第一歩になった.
アラブ世界の二つの大実験,イラクとエジプトは,残念ながら民主化の失敗例である.どちらも「リベラルでない民主国家」になりそうだ.他方,最善のケースはヨルダンやモロッコのような小国に見られる.国王は革命よりも改革を選択し,限定的な改革と既存システムの自由化を進めた.
l アイルランドとアイスランド
BLOOMBERG
Jan 24, 2013
Ireland
Should Drop Model-Student Act and Get Help
By Megan Greene
アイルランド経済のファンダメンタルズは弱く,主要な成長の源泉である外国需要は,EU経済やアメリカ経済の悪化に影響されるだろう.銀行救済による国民の負担を,民間債務の組み替え,EUやECBの支援による買取や満期の延長,などでもっと軽減するべきだ.
NYT
JANUARY 28, 2013
Iceland
Wins Major Case Over Failed Bank
By ANDREW HIGGINS
WSJ
January 28, 2013
The
Icesave Saga
FT
January 29, 2013
Saga
ends with Icesave redemption
アイスランドは,民間銀行の失敗に対して国民の税金で支払うことを拒否した点でユニークであり,イギリスなどから非難されていた.しかし,今回,Efta裁判所は,アイスランドの勝利を認めた.イギリスやオランダの預金者は,EU諸国の預金補償がそうであるように,その全額返済を拒否された.
l 安倍内閣の問題点
FT
January 25, 2013
Wages
in way of Abe’s war on deflation
By Ben McLannahan in Tokyo
賃金が上昇しなければ,インフレを歓迎できない,と労働者は言う.アベノミクスの問題点だ.ガソリンの値上げなどが続き,消費は刺激されないだろう.政府は,法人税を下げて賃金やボーナスを増やそうと考えるが,経団連は,企業にそんな余裕はない,と応じないようだ.
WP
January 26, 2013
Japan
must face the past
By Jennifer Lind
世界のどこでも,真実を語り,罪を償うことは憤慨をもたらす.安倍晋三首相が慰安婦問題を認めた村山談話を見直すと表明したことに,日本の保守派は喜んだ.しかし,本当は,彼らが最も悔しく思うべきことだ.
日本の保守派は,国を愛することが戦前の罪を認めることで損なわれる,と考えている.だから,日本が行った戦争中の行為は西側諸国の拡大主義や人権無視と同じものである,と強調する.日本だけが特別な罪を犯したわけではない,というのだ.
その是非とは別に,こうした主張は,日本が戦後に達成した素晴らしい成果を無視して戦前の日本との同一性を強調するし,日本とそのアジアのライバル諸国との違いを見失わせる.民主的で,自由で,繁栄した,市民の福祉を重視する国家,国際機関や多国籍企業の経営で活躍し,芸術,科学,技術において世界に貢献し,平和的な外交と開発支援,被災地支援,平和維持に貢献する国家である,という優れた性格が軽視されてしまう.
北朝鮮や中国のナショナリズムを刺激し,また,中国の台頭に警戒するアジア諸国と日本との協力関係を損なうだろう.
WP
January 26, 2013
Political
climates in Japan and China ratchet up island dispute
戦争の10年を終わらせる,と約束したオバマが,東シナ海の岩礁をめぐって,中国と日本の戦争に巻き込まれるとしたら,愚かなことである.
中国は監視の程度を高め,国営メディアが,軍事衝突の起きることを警告し,「最悪の事態に備えよ」と主張している.日本側も安倍首相は,議論すべき領土問題は存在しない,という主張を変えていない.
アメリカは,クリントン国務長官が日本の防衛に関与する責任を尖閣諸島にも及ぶと認めた.それは,オバマが中国との軍事衝突を覚悟するか,アジア旋回を断念することを意味するだろう.
安倍首相は,アメリカの支援を得て,中国との対話を進め,帰属問題とは切り離して,尖閣問題を先送りするべきだ.
Project
Syndicate 30 January 2013
Japan
and the Politics of Guilt
Gareth Evans
日本は再び近隣諸国を疎外し,戦時の侵略や残虐行為に対する責任を受け入れないことで友好諸国を絶望させている.安倍晋三とその仲間の姿勢には,3つの深刻な問題点がある.
1.戦争の侵略行為に対する謝罪そのものを否定し(村山談話は社会主義者の首相が述べたことだ),2.従軍慰安婦の存在そのものを否定し(河野官房長官の左派的な発想でしかない),3.日本の征服行為を生存のためとして正当化し,戦死者を称える靖国神社への参拝を繰り返している.
日本の世論はこうした姿勢に共感している.それはナショナリスト的な言動に影響されている,と考えられる.しかし,村山談話もその表現はあいまいで,日本の世論は深い悔恨や謝罪の意味を合意していない.日本はドイツと比べて,戦後の精神的転換を遂げていないのではないか? 指導者の責任は重大だ.
FP
JANUARY 30, 2013
Saying
UnSorry
BY ROBERT WHITING
FT
January 31, 2013
BoJ’s
tug of war with Abe goes on
By Henny Sender
円安にしても,サムスンに代えて,ソニーや東芝の製品を買うことはないだろう.通貨の問題ではなく,製品の競争力が無いことを,安倍は理解していない.また財政刺激策も,過去の首相たちが失敗したように,民間の投資を消費を増やすことはないだろう.
日本の貿易赤字は増大していくだろうし,経常収支も悪化する.日銀に攻撃的な金融緩和を強いることで,円は急落する危険を冒すだろう.それが日本国債や景気に影響するはずだ.日本の資金がドル債やユーロ債から日本に還流する.あるいは,低金利を利用して,円売りを試みるヘッジファンドが増える.
FT
January 31, 2013
Japan’s
PM wows voters with ‘Abenomics’
By Jonathan Soble in Tokyo
l 円安と通貨戦争
FT
January 25, 2013
Currency
wars are best fought quietly
By Niall Ferguson
アベノミクスと称して円安を促すことは,為替レートの問題ではなく,政治的な詐称(あるいは,誇張)である.そして,日本の行動は直ちに非難を浴びた.ロシア,ドイツ,韓国の,中央銀行や財務省が「通貨戦争」を煽るという不満を示したのだ.
しかし,ダヴォスでグラスを投げ合うよりも,まず以下の4点を確認しておくことだ.
1930年代の通貨戦争は,誰が口火を切ったか,はっきりしている.イングランド銀行の金本位制離脱である.そして,Barry Eichengreenは,その行動を不況脱出のために必要だった,と称賛している.イギリスの輸出を伸ばす以上に,金融緩和の自由を得たのだ.
現代では,1971年にニクソン大統領が金本位制の遺構であるドルと金兌換を否定して,変動相場制になっている.つまり,もう40年間も,すべての国がすべての国と通貨戦争を日常的に許されているのである.
第2に,日本の苦境は特別に重い.1980年代末から,日本はずっと停滞している.名目GDPは円建て20年前とほぼ同じ水準だ.公的債務は莫大で,人口変動も世界最悪だ.円安で息抜きになるのを,拒むことはない.
第3に,日銀の金融緩和は,それほど劇的ではない.白川総裁の介入は短期国債による限定的なもの(2014年に10兆円:GDPの2%)であり,アメリカ連銀のバーナンキが行っている介入規模(毎月850億ドル,2013年中にさらに1兆ドルの長期資産を購入:GDPの6~7%)とは比べ物にならない.
第4に,9月以降,円安は目立つが,1990年代初めは158円であった.さらに重要な基準は,名目為替レートではなく,実質実効為替レートである.BISの算定したデータでは,1990年代字初めから,デフレの影響で実質実効為替レートは弱くなり,1994年と2007年の間に,競争力を大幅に(およそ3分の1も)改善している.グローバル金融危機で27%の円高が進み,最近の円安はそれを部分的に逆転した.
同じ基準で観て,韓国こそ攻撃的な為替戦争の犯人であるから,日本を非難するのは大きな欺瞞である.他方,キャメロン首相は,EU離脱の国民投票を約束し,注目されない形で,ポンド安を推進している.日本政府はそれを学ぶことだ.
FT
January 28, 2013
The
ECB will come under pressure in the currency wars
Mohamed El-Erian
ユーロ危機は,債務国の流動性危機をECBの強い関与で乗り切った.しかし,支払い不能危機に拡大し,債務悪化と(緊縮策による)不況とが悪循環をなしている.それに加わったのが,日本の円安誘導などに刺激されたユーロ高だ.
ユーロ圏の構造改革には政治的な遅れと経済的な苦痛が伴い,ECBへの金融緩和が強く求められる.それに加えて,世界的に通貨安を競う状況がある以上,ECBもユーロ高を放置することはできないだろう.しかし,同時に,相対価格で決まる為替レートを一方的に安くできる国はなく,通貨戦争の回避に向けた注意も必要である.
BLOOMBERG
Jan 28, 2013
Dollar
Thrives in Age of Competitive Devaluations
By A. Gary Shilling
不況が長引く中で,国際協調は後退し,各国の個別利益を重視した保護主義的な政策,特に,通貨価値の競争的切り下げが目立っている.問題は,それが成長を損ない,貿易額を減少させることだ.すべての国が敗者になる.
IMFによれば,各国の外貨準備は2007年の6.7兆ドルから2012年の10.53兆ドルに急増した.これは各国が通貨価値を下げるために自国通貨の売り(ドル買い)介入をしたからだ.
安倍首相はアメリカやユーロ圏の量的拡大策を非難したが,アメリカ連銀の量的拡大策は景気回復と雇用が目的であって,ドル安は副作用でしかない.それでも安倍は日銀に報復を強いた.そして財政刺激策も実施する.
しかし,安倍や日銀が何をするかに関わらず,日本の国債利回りは長期的に上昇するだろう.日本の貯蓄は財政赤字に比べて不足し,経常収支の黒字は減少して,間もなく,貿易赤字と同様,赤字に転化する.国債の累積と金利上昇がスパイラルとなって管理できなくなる可能性が高い.
確かに円安は日本の輸出企業の利潤を増やす.しかし,世界第3位の市場規模を持つ日本が取る政策は,他国に影響する.韓国,オーストラリア,中国,ブラジル,などが対抗策を採る.
この不安定化する世界で,アメリカ・ドルは世界通貨としての地位を維持することができる.その条件である,1.生産性上昇による高成長,2.経済規模,3.深く広い金融市場,4.自由で開放された金融市場と経済,5.代わる国が無い,6.ドルの信認.
ドルは競争的切り下げに加わらないが,その不利益を超えて,輝きを増すだろう.
FT
January 30, 2013
Economic
nationalism will only fuel failure
Stephen King
FT
January 31, 2013
The
folly of beggar-my-neighbour policies
By Samuel Brittan
「近隣窮乏化政策」とは,1937年にJoan Robinsonが定義したものだ.現代の条件を考慮して再定義すれば,無理もないことだが,その結果は世界の雇用をおそらく減らす.
l ソマリアとマリ
FT
January 25, 2013
Support
Mali but please send no troops
By Max Hastings
Project
Syndicate 25 January 2013
The
Algerian Tragedy
Omar Ashour
NYT
January 25, 2013
Hope,
and Lessons, in Somalia
1993年,首都モガディシオで,アメリカのブラック・ホーク(戦闘型ヘリコプター)2機が撃墜され,アメリカ兵18名が殺害されて以来,ソマリアは破綻国家であった.世界最貧の,最も暴力的な,武装集団が支配する,飢饉と盗賊団が襲う国の一つである.
しかし,その国にも前向きの変化が起きて,先週,Hassan Sheikh Mohamud大統領を迎えて,オバマ政権は20年ぶりにその政府を承認した.このケースは,マリに関する西側の指針になる.
Mohamudは安全保障の統治制度構築から始めた.公共サービス,司法,財政改革が伴った.ソマリア難民やトルコなどが投資し,各国の大使が帰還した.何よりも治安状態が回復しなければならなかった.それには,Al Shababなどの武装勢力を首都や主要都市から排除するため,アメリカ政府は,この6年間に,6億5000万ドルをAUを通じて支援した.さらに数百万ドルの人道支援,開発支援をソマリア向けに行った.
なお政府は弱く,事実上,軍隊は存在しない.ケニアとウガンダの軍隊が引き揚げれば,ソマリア政府も消滅するだろう.競合する戦闘グループや部族を和解させなければならない.
FP
JANUARY 28, 2013
Mali's
2.5 Percent Problem
BY ROGER HOWARD
FT
January 29, 2013
Energy:
Danger money
By Guy Chazan
アルジェリアのテロ事件は西側のエネルギー供給やその価格に影響する.
FT
January 29, 2013
The
bigger battle after Timbuktu
SPIEGEL
ONLINE 01/29/2013
Battling
Big Oil
How
Four Nigerian Villagers Took Shell to Court
By Nils Klawitter
guardian.co.uk,
Wednesday 30 January 2013
In
Mali, military intervention is not enough
Kofi Annan
FT
January 30, 2013
Mali
could make France governable
By Dominique Moïsi
FP
JANUARY 30, 2013
Mali
Is Not a Stan
BY LAURA SEAY
WP
January 31, 2013
U.S.
policy toward countering al-Qaeda 2.0
By David Ignatius
(後半へ続く)