IPEの果樹園2009

今週のReview

7/6-7/11

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

Frankelの見た人民元、 イランの抗議デモ、 ROHATYNの金融批判、 アメリカの金融改革論、 中国のインターネット規制、 コミュニティー、 北朝鮮、 オバマ外交

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT June 23 2009

Obama needs to be bold on trade

By Fred Bergsten

FT June 25 2009

The perils of trade protectionism

(コメント) Fred Bergstenは、オバマ政権がもっと貿易自由化について取り組むように求めています。アメリカの積極的な役割について、同盟諸国、友好諸国に対する、重要なアピールになるでしょう。ドーハ・ラウンドの完成、温暖化防止の枠組み、そして、貿易減少と世界不況の克服、についてアメリカが行動するべきです。

ところが、FTの他の論説は、アメリカと中国の貿易が減少し、資源や農産物価格への互いの不満から、アメリカ議会の保護主義的な主張、それを嫌う中国の姿勢について、関心を向けています。


China Daily 2009-06-25

Time to aim for better balance in growth

(コメント) Jeffrey Frankelの見解を詳しく紹介しています。Frankelは、為替レートの指導的研究者ですが、アメリカ議会が中国の人民元を批判するのは間違っている、と考えるからです。

その理由は、アジア諸国全体が為替レートを調整しないなら、二国間交渉で、中国だけが切り上げても意味がない。また、たとえそれでアメリカの輸出が伸び、中国の輸出が減っても、アメリカの財務省証券に対する投資が減れば、金利が上昇する。この金利上昇を考慮すればアメリカにとって大きな利益にはならない。

最後に、為替レートの最善の政策は容易に判断できず、各国はそれを選択できる、とIMFも合意している。IMFが「不適切な介入」とみなさない限り、中国政府が責められる理由はない、と。

問題は、中国がどのように外貨準備を管理するべきか、です。ドルだけに頼っていることは望ましくない、と分かっているので、今ではドルとユーロに対して安定化し、外貨準備も保有するようになっています。それでも、ドルの外貨準備を急速に減らすことが、ドル建資産の価値を減らし、中国自身の利益にならないと分かっています。

中国国内の景気過熱やインフレを抑えるために、為替レートを弾力化し、金利の引き上げや人民元レートの増価を認めることは、中国の経済にとって好ましいのであり、それゆえ2005-2008年には実行されたわけです。アメリカ議会が騒いだからではありません。

BBC 2009/06/26

China argues to replace US dollar

The Guardian, Wednesday 1 July 2009

Building an Asian century

Jamie F Metzl

FT July 1 2009

Exiting the dragon

By Sundeep Tucker and Jamil Anderlini

(コメント) 中国人民銀行総裁は、ドルに代わる国際通貨を求め、特定の国の経済管理とは切り離された、その意味ではIMFが管理するSDRの方が望ましい、と発言しました。しかしBBCは、なぜIMFが国際通貨を正しく管理できると考えるのか? IMFであれば特定の国の利害を無視できるのか? という批判を示唆しています。

たとえ平和を維持するために軍隊が必要でも、それを自国から切り離して国際機関に委ねればよい、と考える国は、(ひょっとしたら日本はそうかもしれませんが)なかなかないわけです。

まさに、通貨と軍事力とは、国家の主権と国家を超える秩序の問題を明確にします。特に、アメリカの圧倒的な権力が国際秩序を支えるという意識が失われたアジアでは、国境紛争や海上輸送の安全確保、資源開発、国境を超えるインフラ投資、環境問題、その他の紛争について、交渉による解決の制度化が必要であると指摘されながら、遅れています。

Jamie F Metzlは、大西洋から太平洋へ、欧米からアジア(特に中国)へのパワー・シフトとして、この問題を描きます。もし中国、インド、ASEANなどが、北朝鮮やビルマの問題を平和的に解決できれば、国際秩序の改革にも発言力を高めるでしょう。

第二次世界大戦後のアメリカのもたらした国際秩序は、いくつかの深刻な失敗を含みながらも、非常に多くの利益を世界にもたらした、とMetzlは考えます。アメリカがイラクなどから退避することにより、アジアはもっと国際的な負担を引き受けるようになります。あるいは、アジア地域が協力できる体制がなければ、それは大きく損なわれるでしょう。すなわち、ヨーロッパのように、もっとナショナリズムを抑え、中国と日本、日本と韓国、インドとパキスタン、シンガポールとマレーシアなど、多くの国が交流を深めて協力できる体制を築くべきである、と。

しかし、金融危機は中国金融システムへの資本参加を逆転させました。


SPIEGEL ONLINE 06/25/2009

FORTRESS DEUTSCHLAND: Germany Shoots Self in the Foot with Eastern European Worker Ban

By Miriam Vogel and Torben Waleczek

BBC 2009/06/28

Spain's downturn hits foreign workers

Oana Lungescu

(コメント) ドイツの財界は労働者に国境を開放するべきだ、という報告書をまとめました。そうでなければ、EU統合の利益を実現できない、と。ドイツとオーストリアは東欧の新加盟諸国から移民が流入することを制限しています。

イギリスとアイルランドは、移民労働者を受け入れて、国内の労働市場を補完することで成長を高めた、と指摘されます。

しかし、不況になれば、逆の面で労働市場が問われます。すなわち、イギリス、アイルランド、スペインなどは、不況に対する失業の抑制策として、移民の解雇と帰国を促すのでしょうか?

特にスペインは、東欧とラテンアメリカから移民を受け入れ、労働市場においてEUの中でも最高の比率に達する、と指摘されています。すなわち、過去10年で約500万人が流入し、それは労働人口の10%に及びます。

今や失業率は17%であり、移民労働者たちが真っ先に解雇されます。スペイン政府は、少なくとも3年間は戻らないという条件で、彼らの帰国を資金援助しています。しかし、煩雑な書類を必要とし、それに応じたのは4000人に過ぎません。

さらにスペイン政府は、7万人以上のルーマニア人失業者に帰国を奨励しています。これはEUで初めての試みである、と記事は注意します。ロマ(ジプシー)への人種差別はヨーロッパ各地にあります。ルーマニア語はラテン系ですから、イタリア語やスペイン語と似ています。スペインのルーマニア人の集まるコミュニティーがあります。

EUにルーマニアが加盟したらどうなるか? EU市民はすべての加盟国を自由に移動し、どこでも働けます。スペインの失業手当は、ルーマニアの平均賃金により多い、とスペイン側のスタッフは嘆きます。


FP JUNE 26, 2009 The End of the Beginning BY TRITA PARSI, REZA ASLAN

LAT June 26, 2009 The prescience of protest By Natan Sharansky

(コメント) Natan Sharanskyは、ソ連時代に反政府活動を行い、9年間、収容所で暮らしました。テヘランを埋める抗議の群衆に驚くことはない、と彼は考えます。

1980年代に、諜報機関や専門家たちが予想もしない形でポーランドに連帯が現れ、その運動は拡大して、ソ連邦を崩壊させました。どのようにして、イスラム革命後の厳しい抑圧を跳ね返したのか? どのようにして体制に深く、広く、浸透していったのか?

このような大規模なデモは、イランの民主的な反体制派、亡命者、国内の政治犯などが、多くいたから起きています。しかし、西側の政府や専門家たちは、彼らのこのような体制を動揺させる力があるとは信じていませんでした。

ソ連の反体制派は、どのようにして組織されたのか? Andrei Amalrikの著書("Will the Soviet Union Survive Until 1984?," 1969)が紹介されています。

全体主義的な社会においては、完全な信奉者、二重思考者、反体制派、の三つが存在します。そして、どこでも、全体主義社会では、信奉者から二重思考者への転換が進みます。彼らの多くは、もはや体制を信じていませんが、それをはっきりと口にすることはないのです。そして反体制派の人びとは、二重思考と他のすべての物との間に線を引きます。彼らは内面に及び、結びつけ、民族の最奥の部分とつながります。それはソ連共産主義が最後の瞬間に示したものでした。

しかも、かつてソ連の体制を批判する者は、世界の関心を引くために街頭で声をあげましたが、5人から10人が集まり、5分以上続けることはできなかった、と書いています。KGBが来てしまうからです。そして、一人の西側ジャーナリストの前で抗議行動を示して、それが外国のメディアを通じて広まるチャンスに賭けたわけです。

今やそうではない。抗議の声やその活動は、新しいメディアによって、もっと鮮明に、もっと多く伝えることができる。世界はそれを見ているし、それを聞いている。しかし、西側指導者たちは動かない。アヤトラや軍人、指導部との対立を好まないからだ。

LAT June 26, 2009 The mullahs must go By John R. Bolton

WP Friday, June 26, 2009 Iran: Desperately Seeking Yeltsin By Charles Krauthammer

(コメント) 保守派の二人は何を考えたか?

John R. Boltonの意見は明快です。独裁者と交渉しても無駄だ。オバマ政権も、結局、知るに違いない。正しい答えは「体制転換」しかない、ということだ。

ところが、オバマは選挙中もそうであったように、イランの現政権と核問題を処理従っている、と批判します。

オバマ政権は現政権との交渉を拒否し、体制転換の機会に目を向けるべきだ。豊富な資源がありながら経済運営に失敗し、多くの若者と多民族・多宗教の国民が、イスラム神権政治に反対していることを忘れないことだ。民衆を支持する、というのは、単なるレトリックであってはならない、と主張しています。

あるいは、イスラム体制の内部から分裂が拡大するでしょうか?  Charles Krauthammerは、ロシアのエリツィンが果たしたような、革命の指導者を求めています。指導者がいなければ、催涙ガスや棍棒、銃撃によって、抵抗運動は弾圧されてしまいます。エリツィンは、旧政治支配層に属しながら、新し革命運動の正当性を認め、戦車に上に立って反対運動に(考えられない)目標を与えたのです。旧政治体制を破壊せよ、と。

体制の暴力は、抵抗運動を原子化し、孤立させることで破滅させます。見えざる手によって反対派は殺されるでしょう。インターネットや携帯電話が最先端の技術で閉じられて行きます。デモの指導者たちは、裏通りに連行されて殺害され、屋上から狙撃されるでしょう。真夜中に学生寮を襲って、主要な学生たちが行方不明になる(抹殺される)でしょう。

抗議運動に発砲を命じる者は、兵士たちがそれに従うなら(天安門のように)体制が生き延びるけれど、従わなければ(ルーマニアのチャウシェスクのように)体制とともに虐殺されるのです。

弾圧を止めるのは大規模なデモだけです。ムサビがエリツィンになれるでしょうか?  この点で、Krauthammerはオバマ政権が失敗した、と考えます。アフマディネジャドとムサビのどちらにも無差別な政策を採ったからです。革命はダイナミックに変化し続けます。ホメイニの首相であったムサビが、革命のダイナミズムによって、民主化を要求する人々に支持されるようになりました。今や、大衆を武力で弾圧するハメネイを批判しています。

ムサビは、ゴルバチョフとエリツィンの間を揺れています。そしてイランは、1989年の中国と1991年のロシアとの間で揺れている、というわけです。

FT June 26 2009 Man in the News: Ayatollah Ali Khamenei By Roula Khalaf

WSJ JUNE 26, 2009 Obama, the Neocons and Iran By ROBERT MCFARLANE

China Daily 2009-06-26 Why doesn't the media leave Iran alone By Huang Xiangyang

WSJ JUNE 27, 2009 Silence Has Consequences for Iran By JOSé MARIA AZNAR

WP Saturday, June 27, 2009 Iran's Lessons

(コメント) このままハメネイ=アフマディネジャドの体制が維持されるなら、イランは正当性を確立するために激しい弾圧と対外的な攻撃姿勢、テロ支援を強めるでしょう。せめて西側の政策は、デモ隊が求めた「体制転換」を阻むものであってはならないでしょう。

WP Saturday, June 27, 2009 For Radical Islam, the End Begins By Joshua Muravchik

(コメント) 歴史は再び終わるのか? 

1989年にベルリンの壁が崩れ、共産主義のイデオロギーが終わったように、今また、大衆の抗議デモは、西側に挑戦したイスラム過激派の終わりを示しているのでしょうか?

イスラム教の再生を唱える運動には、原理主義のように攻撃的でないものでも、西側世界に犠牲になった、その支配を打ち破るべきだ、という考え方が共通しています。しかし、イスラム教の神権政治体制がイラン民衆の血で通りを染めたことは、イスラム過激派や原理主義運動の凋落に結びつくでしょう。

大衆は、原理主義の暴力や危険性を知るようになって、その政治運動から離反しつつあります。世界中のイスラム国家で、選挙結果はその傾向を示しました。モロッコ、ヨルダン、パキスタン、インドネシア、クウェート、レバノン。

それはブッシュの軍事介入であれ、オバマの説得であれ、アメリカの影響力にもよるでしょう。そして、イスラム教の影響がなくなることはありえず、将来の世界政治において、キリスト教民主党と同じような重要な役割を担う、ということです。・・・すなわち、主要国には、イスラム教民主党やイスラム社会党などが誕生します。

LAT June 28, 2009 The trick when talking to Iran

BG June 28, 2009 The new era in Iran

(コメント) オバマは、イランの現政権と交渉することを重視して抑制するのか、あるいは、民衆の抗議を重視して政権との対話を抑制するのか、難しい局面を迎えています。

BG June 28, 2009 When the revolution isn't broadcast By Martha Bayles

CSM June 29, 2009 Iran today: 1979 revolution redux? By Lydia Khalil

SPIEGEL ONLINE 06/29/2009 END OF THE GREEN REVOLUTION? The Power of Iran's Iron Fist By Dieter Bednarz

(コメント) 反対派は、単に投票の結果に対する不正に抗議する運動から、それを暴力によって弾圧する政府やイスラム神権政治への反対運動に変化しました。犠牲者の数は正確に分かりませんが、急速に増えているでしょう。病院の医学生からインターネットに情報が流れています。テヘラン市の病院はけが人でいっぱいだ、というのです。その病院だけでも、昨夜のうちに9人が死亡し、28人の銃弾によるけがを治療しました。逮捕者の数とその後の行方は不明です。

弾圧が野蛮さを加えて、改革派は抗議への参加を呼びかけなくなりました。抗議において虐殺されたネダの葬儀に参加した人々は、緑と黒の風船を飛ばしてテヘランの空を覆った、と書かれています。

WP Monday, June 29, 2009 No Velvet Revolution for Iran Fareed Zakaria

(コメント) なぜイランには東欧のようなビロード革命が起きないのか?

イランの体制側には、東欧と違って、十分な組織された暴力と財源があります。石油価格は1989年に1バレル20ドルでしたが、今では69ドルもします。

さらに重要なことは、1989年が例外的な年であった、ということです。Fareed Zakariaは、近代世界を変化させてきた最も大きなパワーを三つ考えます。すなわち、民主主義、宗教、ナショナリズム、です。1989年の東欧では、これら三つのパワーがすべて既存の政治体制に反対しました。政治参加を認めない政府を嫌い、宗教を弾圧する政府を憎み、外部から秩序を強制する、ソ連の支配を呪ったわけです。すべてが反対運動を加速しました。

イランはそうではありません。民主主義は体制に反対します。然し、宗教はそうではありません。国民の多くはイスラム神権政治に不満を感じていますが、イスラム教の信仰を捨てることはありません。特に貧しい農村部の民衆は、アフマディネジャドに投票したでしょう。イラクから宗派の違う指導者が呼びかけを行うことも、成功しないでしょう。

ナショナリズムは最も複雑なパワーです。イランの過去の政変でもナショナリズムは重要な役割を果たしました。アメリカのオバマ政権は、この点で、賢明な姿勢を保った、とFareed Zakariaは考えます。しかし、アフマディネジャドはアメリカやイギリスの干渉を非難し、政治的に利用します。

FT June 29 2009 Iran’s intimidation needs EU response

Asia Times Online, Jun 30, 2009 Requiem for a revolution By Pepe Escobar

Times Online, June 30, 2009 The fight for Iran’s future is far from over Amir Taheri

(コメント) イスラム体制の防衛力は分裂の危機をはらんでいます。民兵組織Basijは地方からの若者が多く、抗議デモに同情するかもしれません。革命防衛隊は、聖職者たちを守るより、自ら権力を握ろうとするでしょう。

The Guardian, Tuesday 30 June 2009 Clerics pose little threat to Khamenei Meir Javedanfar

WP Tuesday, June 30, 2009 In Morocco, an Alternative to Iran By Anne Applebaum

(コメント) Anne Applebaumが伝えるモロッコの改革に目を瞠ります。

イランの首都ではデモ隊が殴打され、少女が殺されています。他方、モロッコの首都ではデモ隊を襲う者などおらず、議会の外で一群の人々が穏やかに抗議のプラカードを掲げています。少女たちもいますが、狙撃者の標的ではありません。

これがモロッコ王国です。今も預言者マホメッドの子孫であるという王様が支配し、ヨーロッパになろうとしていません。フランス語がビジネスでは使用され、高等教育も充実していますが、イスラム教圏の一部として、宗教が支配的です。近隣諸国と違って、モロッコは伝統的な王国から立憲君主制へ着実に変貌しました。政党や自由な新聞、革新的な政治指導者(たとえば、マラケシュ市長は33歳の女性)が現れ、家族法や人権がシャリア(イスラム法)に代わるようになりました。

それは西側の自由民主主義ではありません。旧くからの問題も多くあります。しかし、過去の政治体制は明確に転換したのです。たとえば、南アフリカから学んだ、「真実委員会」です。前王の時代に行われた体制側の犯罪について、調査が行われています。すなわち、逮捕、行方不明、拷問、強制執行、などです。1999年に前王が亡くなって、その息子の現在の王が2004年から始め、すでに約23000人の犠牲者が賠償を受けました。

これは世代交代による体制転換であり、暴力や流血はなく、革命でもありません。しかし、国民は過去の体制から転換したことを歓迎しています。権威主義的体制から民主主義体制への転換は可能です。イスラム国家で、多民族、イスラム原理主義の影響がある土地でも。こうした文化的背景を持つ国でも、人権侵害を問うことはできます。政治的意志があれば。

Asia Times Online, Jul 1, 2009 China doesn't want Iran unstable By Jian Junbo

IHT July 1, 2009 In Praise of Caution By PAUL KENNEDY

(コメント) これはオバマの「宥和政策だ」という非難が高まっています。イラン政府をもっと批判しなければならない。デモ参加者への暴力をやめさせるべきだ。独裁者と交渉してはならない。・・・

しかし、そのような批判を間違っている、とPAUL KENNEDYは考えます。なぜなら、第一に、アメリカにはイランで行われているデモ隊の弾圧を止める具体的な手段がないからです。

確かにアメリカは、第一次・第二次世界大戦で、ヨーロッパの戦争を終わらせました。世界に版権できる軍備を持つのは明らかです。しかし、1945年以後、アメリカは戦略を変えました。国際紛争に参加する大国ではなく、国際秩序の辺境、安全保障の最前線を守る役割に徹したのです。ベルリン、地中海、朝鮮半島、東南アジア、・・・英仏が退却するにつれて、アメリカの展開は増えました。

しかし、国際秩序が不安定化すれば、そこには必ずアメリカが介入しなければならない、という考えを広まることは、アメリカ政府にとって過大な負担であり、実行できない約束に期待を高めることです。この期待を利用して、世界の無法国家やテロ集団はアメリカと国際秩序を脅かします。オバマ政権は、その方針を明確に否定する、という賢明さを示しています。

1870年代、80年代、バルカン半島で紛争が繰り返され、ロシアが軍事介入し、それに対抗して、オーストリア・ハンガリー帝国も介入します。しかし、ドイツの宰相、ビスマルクは介入しませんでした。ただ、しっかりと沈黙を守って、自国の軍備を充実させたのです。それは各国の不安を高めて、ドイツの外交政策に対する彼らの警戒心を強め、結果的に、外国への軍事介入を抑制することになりました。

PAUL KENNEDYは、アメリカも同じことをするべきだ、と主張します。しかし、派手なトークショーや、無責任な議会の行動を求める声が強まる中、大統領が沈黙を守ることはできないだろう、と心配します。

CSM July 01, 2009 What's the tipping point for revolution? By Elizabeth Pond

The Guardian, Wednesday 1 July 2009 The facts of the election are disputed. Iranians can make the next one better Timothy Garton Ash

(コメント) 選挙の不正は、結果に対してではなく、その過程において仕組まれています。民主主義は、選挙に対する国際監視の必要性を高めるでしょう。ヨーロッパにはその用意があります。

SPIEGEL ONLINE 07/01/2009 IRANIAN REGIME CRITIC MOHSEN KADIVAR: 'This Iranian Form of Theocracy Has Failed' Mohsen Kadivar

WP Thursday, July 2, 2009 Time for an Israeli Strike? By John R. Bolton

FT July 2 2009 Israel struggles to adapt to a changing picture of Iran By Philip Stephens

(コメント) テヘランで起きている抗議デモに最も注目しているのは、イスラエル政府です。なぜなら、テルアビブやエルサレムの将来に関する計画を根本的に変えるかもしれないからです。


SPIEGEL ONLINE 06/26/2009

ARGENTINA VOTES ON THE CRISIS: The Vanishing Power of President Kirchner

By Jens Glüsing

(コメント) キルチンネル大統領夫妻が国中で不動産を購入し、高級車を乗り回している、というのは、なんとも不正義な話です。左派を気取る、こんな権力者たちが、アルゼンチン経済を食い物にしているのでしょうか?

そして、自分たちの権力を正当化するのは、2001年の通貨・経済危機から国を救った、という妄想です。実際には、IMFと外国債権者たちに借金の踏み倒しを強制し、通貨価値を切り下げて、増加した農産物輸出に課税しました。その上に、干ばつが加わったのです。国際投資家に加えて、国内の農民たちとの政争が彼らの主要な任務なのです。

(国際投資家やアメリカに近い)市民革命連合が勝つか、(チャベスが近づき、ペロニストたちに頼る)マフィア風の組合政治が勝つか?


FT June 26 2009

Fading political will has let banks off the hook

By John Plender

WSJ JUNE 27, 2009

A Unified Bank Regulator Is a Good Start

By JAMIE DIMONchairman and CEO of J.P. Morgan Chase & Co.

The Guardian, Sunday 28 June 2009

One small step forward

Joseph Stiglitz

(コメント) Plender の論説で金融規制の勢いが衰えていることを懸念し、Dimonの論説では金融ビジネスの反応が伝えられています。世界的規模で活発に取引し、金融革新によって利益をふくらませる、ビジネスの性格に大きな変化はなさそうだ?

Joseph Stiglitzは、国連による金融改革の報告書に合意できたことを強調します。それはG20 よりも強力な内容を含んでいるからです。G20では議論しないような、主要国が避けている問題を、192カ国の国連であれば取り上げるからです。たとえば、銀行の秘密主義は脱税や贈収賄に利用されている、という問題です。

G20は世界不況の回避を訴えましたが、その対策はカ国別の刺激策にとどまって、他国への影響についても検討は不十分でした。しかし国連では、景気循環を抑制するような政策を世界的規模で判断します。さらに、貧しい国への援助がもっと重視されています。国際収支不均衡やドルによる国際通貨制度の問題を議論されました。

また、国連は、貿易・金融自由化のための国際機関を強化するように求めています。各国はそのような政策を勧告され、監視されます。政治的なグローバリゼーションを超えて進む経済のグローバリゼーションが正される過程を、国連は積極的に制度化します。

FT June 28 2009

Regulating banks calls for attack on inertia

By John Gieve

FT June 28 2009

In search of the exit

By Ralph Atkins and Krishna Guha

IHT June 29, 2009

Saving American Capitalism

By FELIX ROHATYN

(コメント) 金融危機に対して空前の大規模介入を行った後、市場に信頼を取戻せるのか? モラル・ハザード論や規制の国際裁定論が繰り返されます。そして、連銀とECBの極端な金融緩和から正常化するタイミングが問題になります。

FELIX ROHATYNは、回復過程について、アメリカ資本主義が自由でダイナミックな市場経済というイメージとかなり異なる、と指摘します。なぜなら1980年代までは、ヨーロッパの社会民主主義がそうであるように、資本主義の政治的な基礎が重視されていたからです。それはすなわち、富の生産と、その公平な分配、です。

経営者と、労働者と、政府とは、暗黙の社会契約を結んでおり、経済の安定性が重視されていました。アメリカ社会がヨーロッパから離れたのは、1990年代でした。人口の増加率や研究開発への投資について、その隔たりが生じただけでなく、特に企業文化や金融市場の働きについて、アメリカは安価な融資と投機的なビジネスによって莫大な富を得ました。そして、公平さ、に関する法的・倫理的な基礎を捨ててしまったのです。

1990年代の後半にフランスへアメリカ大使として派遣され、アメリカ資本主義について、その優秀さを話して回ったのに、帰国してみると、それらが変わってしまったことに気付いた、とROHATYNは書いています。メディアは金融をショー・ビジネスのようにもてはやし、莫大な富を得るスターたちの話で大騒ぎしました。そして、SECも連銀も、議会も、政府も、誰もその狂騒を止めようとしなかったのです。

1980年代までは、金融と産業は同じ経済活動を分かち合っていました。その後、投資銀行やM&A、ストック・オプションが現れて、変化が生じました。株価は急騰し、実際の企業業績と関係がなくなったのです。この機会に、政治家たちは規制緩和のダイナミズムを歓迎しました。大恐慌以来の制度が破壊され、証券ビジネスが金融に再統合されます。エンロンのスキャンダルでできた法律も、投資銀行とアナリストたちの分割をもたらしただけで、不十分でした。

ROHATYNの心配は尽きません。・・・プライヴェート・イクイティ・ファンドの登場、ますます巨大化するヘッジ・ファンド、債務に依存したアメリカ政府自身の投機的な性格、財務省も連銀もドルの価値をまるで重視していない、世界最大の債務国。増税を嫌い、社会的給付を削って、今や、アメリカの家計が保有する資産は、その45%を上位1%の者が所有する。ところが、財政は空っぽで、学校などの公共施設、輸送のインフラはガタガタだ。

・・・金融も保険も、極端に個人の問題として、ビジネスが支配している。その質や信頼性、業績以外の関心は失われた。世界金融危機は、この投機的な政策の結果として起きた。経済があまりにもレバレッジに依存し、ショックに対して脆弱になっていた。I am a capitalist, and believe that market capitalism is the best economic system ever invented. But it must be fair, it must be regulated, and it must be ethical.

彼の理想は、F.D.ルーズベルトより、セオドア・ルーズベルトです。「所有者の社会」、「労働者と経営者の協力関係を長期的に再建する」、「通貨価値の安定」、・・・アメリカ資本主義と自由世界の再建。

FT June 29 2009

A sound funeral plan can prolong a bank’s life

By Anil Kashyap

FT June 30 2009

The cautious approach to fixing banks will not work

By Martin Wolf

(コメント) 資本主義再生のためには「即時埋葬プラン」を提供するべきだ、とAnil Kashyapは主張します。発展途上諸国の債務危機やアジア通貨危機、移行経済、日本のバブル崩壊、・・・その他、資本主義の再生には過去の埋葬が迅速化されるべきだ、というわけです。

Martin Wolfは、規模が巨大であるからという理由で救済され、生き残った金融機関の寡占体制に対して、リスクを読み間違えた金融機関を助けて納税者を犠牲にするだけでは失敗です。救済に代わる方法として検討されるのは、ナロー・バンクの分離、自己資本比率や流動性による規制、金融システム全体へのプルーデンシャル規制、です。

金融システムが極端なレバレッジを縮小し、インセンティブを改める過程は、一気にではなく、徐々に進む、と考えます。

FT June 30 2009

Tightening capital rules could increase risk-taking

By Takafumi Satocommissioner of Japan’s Financial Services Agency

(コメント) 日本の金融庁長官が論説を寄稿していました。そして、自己資本規制に頼るだけでは金融システムの危機は防げない、と主張します。

金融機関がより多くの自己資本を要求されて、株を発行すれば、彼らはますます多くの利潤を必要とされます。それは投機的な取引を増やすかもしれません。しかも、ますます複雑な投資を考えて規制を免れようとします。金融ビジネスの健全化には、堅実なリスク評価、長期的視点、などが必要です。

また、金融ビジネスにはいろいろなやり方があります。自己資本規制という基準だけでなく、もっと多様な金融機関が成長するような条件を保証することが望ましいでしょう。・・・孔子いわく。「過ぎたるは及ばざるが如し。」

もちろんこれは、自己資本規制で日本の金融機関が欧米市場において不利な競争条件を押し付けられるのではないか、という危惧も反映しているでしょう。

WSJ JULY 2, 2009

Too Bernanke To Fail?

By HOLMAN W. JENKINS, JR.

FT July 2 2009

Much ado about central bankers

By Martin Wolf

(コメント) “Too Bernanke To Fail?”というのは、なかなか気が利いています。銀行が大き過ぎて潰せない(“Too Big To Fail”)とか、大き過ぎて救えない(“Too Big To Save”)と言われます。それに引っかけた表現です。銀行に必要な自己資本や流動性は求めても、結局、パニックになれば不足しており、救済するしかありません。バーナンキによる銀行救済によって、最後は、オバマ政権のドル価値下落や増税策にたどりつく、とWSJは考えます。

財政赤字が膨大な規模になれば、中央銀行の独立性が損なわれ、国債管理のために政府に資金供給するような地位に下げられるかもしれません。しかし、国家は政府の所有物ではなく、その債権債務管理は安定した貨幣秩序の根幹です。中央銀行は政府に対して明確に発言するべきでしょう。

FT July 2 2009

European banking needs a state-led triage body

By Adam Posen and Nicolas Véron

(コメント) Adam Posen and Nicolas Véron a “European Bank Treuhand”の設立を主張します。銀行システムの危機は、最終的に銀行を選別して、資本を増強しなければ終わりません。これは、ヨーロッパ規模の銀行業を抱える諸国が共同で立ち上げる銀行選別過程を促す管財人です。

ヨーロッパ管財人が誕生することで、国境を超える銀行業務を行ってきた主要銀行が同じ基準でバランス・シートを表示し、資産を査定されます。そして、政府間交渉や各政府による資本増強の過程を促進します。少数株主の場合も、負担だけでなく発言を確保できるでしょう。しかも、政治的な交渉が行き詰まるのを避けて、より専門的・技術的な助言を行えます。

軍事力や核エネルギーを国際共同管理するように、国際銀行業にも国家を超えた制度化が必要です。


FT June 26 2009 Control, halt, delete By Joseph Menn, Richard Waters and Kathrin Hille

FT June 28 2009 Internet censorship

WP Monday, June 29, 2009 China's Information Dam

BBC 2009/06/30 China delays internet filter plan

The Guardian, Tuesday 30 June 2009 China thinks twice – and its 300m internet users scent a rare victory Jonathan Watts in Beijing, Bobbie Johnson in San Francisco and Ian Black

Asia Times Online, Jul 1, 2009 China creates an Internet albatross By Sreeram Chaulia

The Guardian, Wednesday 1 July 2009 Green Dam delayed – but for how long? Alice Xin Liu

FT July 1 2009 A breach in China’s Green Dam

WSJ JULY 1, 2009 China's Web 'Dam'

(コメント) 中国で販売するパソコンにはフィルタリングのソフトが内蔵され、グーグルは中国国内から外国の情報源に接続できなくなる。これが政府の求めたインターネット鎖国でした。

若者たちをポルノグラフィーから守るGreen Dam-Youth Escortです。そして、それは政府にとって好ましくない情報や政治表現からも、インターネットを遮断します。

NYT June 28, 2009

Invent, Invent, Invent

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 不況から抜け出す上で決定的なことは、貨幣を印刷することではなく、新発明の波である。新発明に向かう投資の波が新しい持続的な好景気をもたらす。

アメリカはチャンスだ。ロシアは経済を多様化する必要があるのに、石油価格が予想外に早く回復したために、その努力を放棄してしまった。石油に依存した硬直した社会を続ける気だ。他方、中国はインターネットによる革命を恐れて、コンピューターに検閲ソフトを組み込むことを命じている。それは中国の優秀な若者たちを中国の外に向かわせるだろう。

つまり、今こそアメリカは発明のための人材を世界中から集め、単にドルを印刷できるから好況を招き寄せることなど重要でなくなる。


FT June 26 2009

Japanese deflation

FT June 29 2009

War on the samurai

By Mure Dickie

The Japan Times: Tuesday, June 30, 2009

Older, smaller population to impact Japan's choices

By BRAD GLOSSERMAN and TOMOKO TSUNODA

WSJ JULY 2, 2009

Japan's Obama Opportunity

By HISAHIKO OKAZAKI

(コメント) 日本を支配しているのはだれか? と外国のジャーナリストはよく迷います。政府も、皇居も、軍隊も、支配者という気がしないからです。そして、憲法の定めた主権者である国民は、政治のことに無関心か、軽蔑しており、話しません。

もし選挙で民主党が自民党から政権を奪ったら、ようやく彼らが納得する権力の姿に近づくわけです。ところが、日本政治の専門家たちは、権力を動かす具体的な政策決定で支配的な役割を果たすのは、一貫して、官僚たちである、と考えます。明治維新以来、あるいは、江戸時代も?

官僚たちの権力を終わらせる、という民主党、鳩山代表の主張が国民に支持されるだろうか?

日本の防衛政策(そして政治)を決めているのは、高齢化かもしれません。日本の人口は2055年までに30%も減少し、9000万人を切るでしょう。南北朝鮮が統一し、人口を増やせば、同じ規模になるかもしれません。高齢の有権者や消費者が、政府に求める防衛政策も、企業に求める投資も、明らかに活気に乏しく、周辺諸国の追い上げを招くでしょう。日本は北東アジアの同盟国として、アメリカから特に重視されてきた地位を失います。

BRAD GLOSSERMAN and TOMOKO TSUNODAは、日本とアメリカが今後の政策として追求すべき目標を示します。それは、バラバラな印象も受けますが、よく言えば、日本とアメリカがアジア地域統合によって安全保障も含めて結びつきを強める、という方針です。日本政府の積極的な行動と優れた発言が必要です。

HISAHIKO OKAZAKIの論説は、日本の政治がアメリカの呼びかけに応えない場合も、辛抱強く待ってほしい、ということです。日米同盟を基本として、中国を国際秩序に取り込むべきであって、最善の策が米中による2国間交渉ではない、と考えます。


BG June 26, 2009

The Greenland example

(コメント) 新疆ウィグル自治区で騒乱があって、140名以上の死者が出た、というニュースを聞きました。他方、グリーンランドはデンマークからの独立を達成しています。記念式典にはデンマークの女王も出席しました。

グリーンランドは地球温暖化の影響で土地が耕作できるようになり、氷河の下から資源が採掘できるようになりました。デンマークはイヌイットを中心とした住民たちが投票によって独立の意志を示したことで、その独立を受け入れ、新政府のための財政援助を申し出たのです。

なぜ中国も、イスラム教徒の多く住む西域に対してそうしなかったのでしょうか?


The Japan Times: Saturday, June 27, 2009

Asia and the climate crisis

By HARUHIKO KURODA

(コメント) アジア太平洋地域が、成長を持続しながら温暖化にも取り組むために、ADBは積極的に融資する、と述べています。それが国家を超えた交流や協力を促し、アジアの地域貿易や投資を盛んにするでしょう。エネルギー不足や安全保障にも積極的な解決策を示すものです。


The Guardian, Sunday 28 June 2009

Market dogma is exposed as myth. Where is the new vision to unite us?

Madeleine Bunting

(コメント) 何でも市場が最高だ、という勝利宣言は終わりました。哲学者のMichael Sandelが「政治の再ロマン主義化」を唱えたそうです。市場の価値・価格変動、富の大きさや効率性で判断するのではなく、政治は元来が共通の善をめぐる価値の表現であり、宗教や価値の対立がよみがえるでしょう。他方、政治はますます技術的に専門家した問題を扱い、その結果、金融制度改革のように、有権者には理解できなくなります。

ところが、欧米でも日本でも、専門家・官僚や政治家への信頼は失われています。私たちは、個人主義的な解釈の向こうに共通の物語を描く力、共通の歴史認識を得る能力を失ってしまったのです。理想主義や、宿命論、希望、性善説。・・・たとえ宗教でなくても、私たちは一緒に神の国を目指します。現世の罪をあがない、救済されるのです。


The Guardian, Sunday 28 June 2009

How can we change the UN?

Hugh Roberts

IHT July 3, 2009

Come Together, Right Away

By BAN KI-MOON

(コメント) G8よりも国連総会の方が重要です。しかし、国連は機能せず、マスコミの関心も集まりません。

BAN KI-MOON事務総長は、オバマほどではないですが、ソフト・パワーを試みます。すなわち、世界は多くの危機に沈んでいます。食糧、燃料、インフルエンザ、金融危機(Food. Fuel. Flu. Financial.)をどうやって解決するのか? しかも、本当に重要な危機は、貧困の増大です。

私たちは、彼らが貧困から抜け出せるように、それを助ける政策を示すべきです。


The Guardian, Sunday 28 June 2009

Dreaming of a Ministry of Imagination

Yvonne Roberts

(コメント) 二人の研究者Buonfino and Guglielmiが、イギリスのコミュニティーを調査しました。かつては貧しい労働者階級の町にコミュニティーがありました。今では、裕福な中産階級の町に「コミュニティー」があります。そんな町には巨大スーパー、たとえばTesco、しかなく、他の商店はつぶれてしまって、テスコのコミュニティー・フェアが開かれています。子供たちは作文を書いて、テスコに集まります。

イギリス人の多くは感じています。・・・自分たちは親の世代よりも豊かになった。家も良くなった。自分が受けた教育よりも、子供たちはもっと多くを学ぶだろう。しかし、町は以前ほど安全でないし、清潔でもない。いたるところでシステムの抜け穴を利用し、詐欺によって社会を蝕む連中が潜んでいる。・・・

人々がコミュニティーを失ったのは、労働者への搾取や管理の強化と一致しています。彼らはいつも不確実で、近隣地区を出ると、不信や敵意にさらされていました。だからそれを補うものとして、彼らの幸福感は強いコミュニティーの一部であったはずです。ところが今では、労働者たちがコミュニティーを持てず、裕福な中産層がテスコに集まります。

市民の感覚が失われ、政治も惰性に向かいます。公共領域が失われ、夢見ることがなくなります。Martin Luther Kingや、アメリカの詩人、Carl Sandburgの言葉・・・"Nothing happens unless first we dream it".を知らない人が増えるばかりです。ラテンアメリカの革新を好む大統領なら、「想像省(Ministry of Imagination)」を設けるでしょう。

そしてイギリス人は、テスコに通う。


FT June 28 2009

Germany and France need to sing in tune

By Wolfgang Münchau

The Guardian, Monday 29 June 2009

Death of the super model

Ruben Andersson

WSJ JULY 3, 2009

Europe's Fiscal Woes

(コメント) ドイツが財政赤字を嫌って均衡化を義務付ける法律を定め、フランスは財政赤字にもよいことがあると主張して均衡化を遅らせる。それはどちらも正しい主張を含んでいますが、同じユーロ圏で二つの異なった債務管理、財政再建策が存在することは、将来の深刻な対立を予感させます。

Ruben Anderssonは、スウェーデン・モデルが崩壊したことを確認します。たとえEUの議長国になっても、EUの左派はスウェーデンをその社会モデルとして使うことができません。1986年に首相が暗殺され、人種差別が広まり、1990年代には金融危機とその処理によって、銀行家ではなく、市民たちの社会的給付が削られました。社会民主党が敗北し、新自由主義が勝利したのです。その改革は成功しませんでしたが、もはやスウェーデン・モデルは存在しません。

WSJが指摘するように、EU諸国は、財政赤字の大きさだけを問題にするのではなく、社会保障制度や成長刺激策の中身を問題にする方がよいでしょう。その区別や合意形成こそが政治に求められます。問題は、ケインズ主義的な雇用維持のために政府支出を膨張させ、成長が減速してしまう、すなわち、EUが日本になってしまうことだ、と。


FT June 28 2009

The Fed must reassure markets on inflation

By Martin Feldstein

(コメント) 長期金利が上昇したことは何を意味するのか? 政府と連銀はどのような政策を求められているのか?


The Guardian, Monday 29 June 2009

Will Brown succeed in Building Britain's Future?

Simon Jenkins, Jonathan Freedland, Seumas Milne, Jackie Ashley and Martin Kettle

The Guardian, Monday 29 June 2009

Gordon Brown unveils new agenda for government

Deborah Summers, politics editor

FT June 30 2009

Britain has sunk itself deep into a fiscal black hole

By John Kay

(コメント) イギリス政府とゴードン・ブラウン首相の不人気は、政治不信や政策失敗と重なって悪化しています。・・・ジョン・メージャー的な抽象表現と統計数字のごちゃまぜ、スターリニストの集団農場監督者のような振る舞いだ。サウザンズ、ミリオンズ、ビリオンズ、と連発して、「保証」「資格」「権利」「パワー」「投資」を語るが、その中身はわからない。・・・

しかし、少なくとも自分の言葉を駆使して、国家のパワーをどのような未来に向けて行使するのか(雇用を増やすため、教育と住宅、病院に投資する)、積極的な想像力に訴える姿勢は、本来の政治家である、と私は思いました。しかし、不況と財政赤字の圧力下では、首相は蔵相や中央銀行の積極的支持を得られないのです。


NYT June 29, 2009

Betraying the Planet

By PAUL KRUGMAN

NYT June 29, 2009

The Dirty War Against Clean Coal

By GREGG EASTERBROOK

(コメント) 環境保護の法案に反対する者を「反逆者」とPAUL KRUGMAN呼びます。それは「地球に対する反逆罪」である、と。地球の環境破壊は予想を超えて進行しています。われわれが今、経済成長の進路を転換しなければ、その破壊は将来まで大きなコストを強いるでしょう。

環境の危機は「たわごと」だという議員の意見が喝采を呼んだそうです。KRUGMANは、ブッシュ政権がテロの危険に対する政策を「生存権」に関わる問題である、として強引に進めたことと比較します。テロの脅威と違って、環境破壊は現実だ、と。

石炭による火力発電所から温暖化ガスを全く出さない方法が開発されれば、確かに、温暖化防止の国際秩序は大きく前進するでしょう。


WSJ JUNE 30, 2009

Korean War II

By GORDON G. CHANG From today's Wall Street Journal Asia.

LAT July 2, 2009

China is the key to North Korea

(コメント) アメリカ海軍が北朝鮮の貨物船を停止させ、その航路を変えさせたことは重要です。北朝鮮による核の拡散を許さない、という主張を実行したわけです。北朝鮮による核開発とミサイルの発射実験、それを放棄するという約束と経済援助、検証過程の遅延、そして再実験・発射、交渉によって解決することを拒む北朝鮮の姿勢を続けさせてはならない、という姿勢を明確に示しました。この点で、オバマ政権の決断は非常に重要な転換点であったかもしれません。

中国もこの決議やアメリカの行動を受け入れています。


Asia Times Online, Jul 1, 2009

Lessons from the revolution

By Martin Hutchinson

(コメント) Robert Allen, The British Industrial Revolution in Global Perspective, Cambridge University Press, April 2009.の紹介です。産業革命がイギリスで始まった理由は何か? 帝国主義、安価な石炭、羊たち、プロテスタントの勤労倫理、・・・ 黒死病です。


FT July 1 2009 End the go-slow on gas in the East China Sea By Mure Dickie

NYT July 2, 2009 Muted Recovery Seen in Asia, With a Long Way to Go By BETTINA WASSENER

The Japan Times: Thursday, July 2, 2009 Don't bait the Russian bear By BRAHMA CHELLANEY

China Daily 2009-07-02 Hoping for a US-Japan-China triangle to emerge By Mark Hughes

(コメント) 日中間の海底油田開発について、明確な合意と共同開発が望まれます。領土問題やナショナリズムを刺激しる話題ですが、時機をとらえて、日中の友好関係を確立するチャンスでもあるはずです。

新疆ウィグル自治区において大規模な騒乱が起きている、とニュースは伝えています。中国は内政に不安を抱え、領土問題でも姿勢を変えるかもしれません。何もない時期にこそ、交渉を進めて、決定的な合意に至るべきなのです。

中国の論説では、G2だけでなく、中米日の三角形が重視されています。互いに敵視してはならない、と主張します。「不確実さを考慮した統合化」というJ.ナイのアプローチを支持します。


FT July 1 2009

Russia must re-focus with post-imperial eyes

Zbigniew Brzezinski

(コメント) ロシアの役割については、アメリカも迷うところが多いでしょう。核兵器削減や拡散防止について、イラン、イラクについて、石油・天然ガスについて、グルジアやウクライナについて、話し合うべき重要な問題が多くあります。しかし、ロシアのナショナリズムやプーチン=メドヴェージェフの政治権力、ロシア経済内部の市場メカニズム、市民社会や民主主義、その他、関係改善に向けた評価は難しいのです。

ブッシュ政権のような、プーチンとの個人的関係を重視することはなくなる、とZbigniew Brzezinskiは述べています。そして、米ソの帝国的な領土分割ではなく、合意された「ゲームのルール」を模索します。

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The Economist June 20th 2009

Iran rises up

Iran’s election: Demanding to be counted

Obama, Iran, North Korea: Meeting thuggery with coolness

Lexington: Madame Secretary

Banyan: Kim family saga: third and final act

BRICs, emerging markets and the world economy: Not just straw men

(コメント) オバマ政権が分裂、崩壊する、と予告されていた外交政策の面で、いよいよ危機が起きるはずでしたが、むしろ評価を上げました。テヘランの抗議デモに対して「体制転換」が必要だ、という保守派の主張は支持されていません。北朝鮮の再度のミサイル発射や核爆弾保有国としての主張に、中国とともに反対しています。もちろん、アジアの軍拡競争やBRICsの初会合はオバマの協調路線を阻むでしょう。しかし、オバマが成功するなら、誰でも彼と組みたいのです。


The Economist June 20th 2009

Argentina’s mid-term election: A chance to change course

Reforming financial regulations in America: Better broth, still too many cooks

Financial reform in America: New foundation, walls intact

Corporate restructuring in Japan: Breaking free

Economics focus: The lessons of 1937

(コメント) アルゼンチンでは金融危機後の権力が崩壊しつつあります。アメリカの金融改革は小幅にとどまるかもしれません。日本企業は、すっかり自分たちの生き残りのために、人員整理や非正規社員の利用を拡大してしまいました。大恐慌の歴史家がアメリカの経済政策を指揮するのは優れた見識だと思います。