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IPEの風 7/6/09

中国政府の求めるGreen Dam-Youth Escortに対して、欧米の論説は反対論を展開しました。しかし、表現の自由や政治的な情報管理・操作を批判するだけで、インターネットに流れる有害情報を排除したい、という政府の方針を否定するのは間違いだと思います。

新疆ウィグル自治区で大規模な反政府抗議が起こり、鎮圧部隊が導入されたようです。死者154人というのは、韓国の光州事件を思い出します。中国政府はインターネットを遮断したのでしょうか? 他方で、海外メディアに対して、異例の取材を許した、と報道されました。ウィグル人組織は事件の国際的な調査を求めています。

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大阪では男がパチンコ店に放火し、夜間学校に通う女子学生を含む4人が犠牲となりました。「だれでも良かった。・・・大量に殺せるからガソリンを撒いて放火した。・・・」こうした言葉に、アメリカの学校における拳銃乱射事件を思い出しました。

神戸の法科大学院では,一緒に学ぶ学生同士が、特定の学生を殺せ、というインターネットへの書き込みをしていたことが見つかりました。また他の大学で,先に、コンパ会場で集団暴行を行った、という学生や教員への処分があり、その後、学長が辞任しました。

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近代の闇は、都市化、貨幣化、個人主義化(原子化、脱コミュニティー)によって深まったと言われます。その後、新しい法律や制度、人間的な結びつきが生まれて、社会生活が安定し、満足を得られるようになりました.都市の下層市民による暴力革命が減ったのではないか、と思います。

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インターネットにあふれる偽情報、悪意による破壊や汚染、暴力的な表現を、積極的に是正する仕組みが必要です。市民によるGreen Dam-Youth Escortを,早急に立ち上げてほしいです。

イギリスの政治不信が高まるきっかけになった一つの事件は、女性議員の夫が日本のインターネット有料ポルノ・サイトを利用して、その支払いを議員の公費支出に入れた、ということでした。

インターネットを開ければ、ポルノ、ポルノ、ポルノ。若者たちが、この汚泥のようにまとわりつく,偏執的・猟奇的・女性蔑視のポルノ映像に多くの時を費やし、感覚や判断、良識を変形してしまうのは,むしろ避けがたいことだと思います。これは道徳的な規範や法律、社会(そして大人たち)への信頼を根底から損ない,その希望を奪うものです。

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タバコであれ、債券格付け会社であれ、環境破壊であれ、科学的な調査や民主的な手続きで社会的な害悪を認められたものには、人々がその利用を抑制することで社会を改善できます。その場合、たとえ使用者個人がそれを好むとしても、十分な説得や代償を求めるべきです。実際、タバコには喫煙の害悪がはっきりと説明されており、価格には高い税金が含まれています。

インターネットのポルノ映像にも、同じような抑制・是正策を望みます。映像の画面は、例えば、必ず数分おきに説得の画面に切り替えます。有料映像は最低価格を決め、配信による利益には高率の課税を行います。悪質な映像は倫理委員会で社名を公表し、暴力や犯罪と結びついていないか、厳しくチェックします。決して硬直的な政府規制ではなく、市民的な監視と勧告、社会教育活動や犯罪防止、若者の雇用促進、などと組み合わせた運動にしてほしいです。

日本の若者たちから社会・政治参加する意欲、正義感や公共精神、学ぶ意欲、冒険や革新に挑む意欲を奪ったのは、インターネットのポルノ情報ではないでしょうか? そして、思春期の若者たちが、日本からのポルノ・暴力・人権否定映像で社会的な価値を破壊するようになった、という抗議や告発が殺到するのではないでしょうか?

ブッシュのアメリカが世界中で嫌われたように、ポルノ映像を垂れ流す日本は、世界から嫌悪され、軽蔑されます。あるいは、若者の破壊的性衝動、改革をともなわない暴力革命の頻発する社会になるかもしれません。

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BS世界のドキュメンタリー「瓦と砂金」を観ました。

ペルーの山中で瓦を焼く工場に働く少年二人がいました。サントスとウィルベルです。当時、17歳でした。サントスは家族や妹のことを思い、その後も、村で瓦を焼き続けました。他方、ウィルベルは村を出て、3倍の給与がもらえる、という砂金掘りをするためにアマゾンへ行きます。

サントスの労働は厳しいものでした。父親と一緒に土をこねて粘土を作り、それを瓦の形に成型します。すべて手作業です。汚れて、重たい、辛い仕事ですが、これを毎日、繰り返しました。月に一度は、サントスが徹夜で窯の火を守り、瓦を焼きました。売り物にできる瓦にするために、窯の温度が重要です。一人で朝まで、気を配りました。

彼は15歳のときから徹夜で瓦を焼いたそうです。しかし、窯の番を弟たちにはさせません。その熱と光は子供の成長に悪い、とサントスは説明します。自分もこれで目をやられた、と。

弟たちは学校に通います。しかし、帰ってくればサントスを手伝います。重い瓦を重ねて運び、干すために並べます。学校と仕事のどちらが好きか? と訊かれて、「学校」と、幼い弟は応えます。サントスは学校に通えませんでした。しかし、今も夜学に通っています。

ウィルベルに会いたい、というサントスと一緒に、10年前の取材班がアマゾンの砂金掘りの町、ワイペを訪れます。汚れた町、貧しい住宅、酒、ばくち、歓楽、泥の河。砂金を精錬する過程で水銀を使うために、労働者たちは体を壊します。

なかなか見つからなかったウィルベルでしたが、体を壊して、トラックの運転などをして暮らしていました。中学を卒業していないため免許を取れません。しかし、運転できれば、アマゾンでは免許など求めません。結婚して、妻と男の子がいました。窓のない、トタン屋根の借家に、一緒に住んでいます。10年のアマゾン暮らしの末に、朝からお酒を飲む生活でした。

二人とも、少年のような面影のまま、厳しい生活を経てきたことで、重荷を負った生活を感じているのでしょう。しかしサントスには、生活を支える自信と、将来への夢があります。家族を残したまま、稼いだ金でお酒を飲むなんて、恥ずかしくないのか、とサントスは友人を責めます。

サントスの熱心な説得により、ウィルベルと家族は村に帰ります。ウィルベルは、瓦焼の仕事を覚えている、と楽しそうに手伝いました。しかし話は、突然、終わります。彼の子供がトラックに轢かれて死に、結局、ウィルベルは妻とアマゾンに戻った、というナレーションが最後です。

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