IPEの果樹園2009

今週のReview

3/23-3/28

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

ヨーロッパの不況と分裂:東欧危機1,2、 資本主義の将来1,2,3、 アメリカの金融安定化:銀行国有化、 不況の回避・緩和・脱出策、 移民労働者、 G2からG20まで

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor, WSJWall Street Journal Asia


WP Sunday, March 1, 2009

In Europe, Breaking Up Is So Easy to Do

By William Drozdiak

(コメント) かつてヨーロッパに派遣されたワシントン・ポストの記者であったWilliam Drozdiakは、現在と過去を比較します。そして、金融危機がヨーロッパの歴史的な記憶と結びつく点で、非常に深刻な逆転が懸念される、と指摘します。

1971年に、イギリス、アイルランド、デンマークがヨーロッパ共同市場に参加し、世界の頂点を極めるはずでしたが、石油危機によって経済は停滞します。1989年、ベルリンの壁が崩壊し、その後は20年間の「拡大と深化」をたどって、今では16カ国が共通通貨ユーロを採用しています。

しかし、突如として金融危機が東欧経済の脆弱性を襲い、その崩壊を恐れる人々は過去のヨーロッパ崩壊を想像し始めました。その起源は、共産主義体制崩壊後の東欧に安定的な秩序をもたらすため、それらをNATOEUに参加させた結果、急速な改革とその成果を期待した資本が大量に流入したことです。

チェコの自動車産業は好調に拡大してきましたが、世界的な金融危機で自動車への需要が大幅に減っています。西側の銀行や保険会社が競って東欧進出を急いだ結果、特にオーストリアは東欧向けの融資がGDP70%に達し、大恐慌のきっかけになったクレディットアンシュタルトの破たんを想像させます。

フランスのサルコジ大統領は、雇用を守るために、生産コストのはるかに安いスロヴァキアとチェコ共和国に工場を建設する計画を阻止しました。これに対してチェコの首相は、1938年にチェコがナチの侵略にあったときもフランスは見捨てた、という歴史を暗に示唆しました。ますます圧力を強めるロシアと、石油や天然ガスの契約を結んで、友好的な関係を装う西側諸国の姿勢にも、東欧は不満を感じています。

ヨーロッパ各国には、国民からの圧力に応じて近隣諸国を犠牲にするような対策を取った歴史があり、その記憶が蘇ってきます。

金融危機で不況と混乱を強いられる東欧に充満するのは、旧体制下での支配層(過去の富裕層)と新しい富裕層との深刻な対立、EUに呑み込まれた小国として独立を失ったという恨みです。

The Guardian, Monday 2 March 2009

A crisis of faith is putting the EU at risk

Joschka Fischer

(コメント) ドイツの緑の党に属し、外相や副首相を経験したJoschka Fischerは、バフェットの名言を借りて、企業だけでなく、国家や経済共同体も、潮が引けば誰が裸で泳いでいたか分かる、と指摘します。

EUは拡大したものの、世界経済危機に直面して、その欠陥や限界が明らかになりました。アメリカは新しい大統領を選んで政策を転換したのに、ヨーロッパは国家のエゴイズムと保護主義を強めています。ユーロとECBは共同市場の核ですが、各国政府の対応は不十分です。少なくともユーロ圏内の財政政策や不況対策を示さなければ、地域格差を拡大しながら急速に悪化する経済に対して、各国政府は単独行動に向かうでしょう。

イタリア、スペイン、アイルランド、ポルトガル、ギリシャでは資本が枯渇し、急速に経済が悪化しています。また、東欧の新加盟諸国には、改革が遅れ、政治的にも不安定な国が多く、その崩壊を許せばユーロ圏への深刻な影響が避けられません。

待つときではない、とJoschka Fischerは強調します。たとえば、IMFに匹敵するような安定化基金を設けて、ユーロ債を発行するべきである、と。たとえ、それがドイツに大きな負担をもたらし、有権者に支持されないとしても、危機を放置してはならない。

それを阻んでいるのは、独仏が互いに自国の利益を背景に相手の提案を否定したことです。EUの政治的な未来のためにも、両国が共同提案を示すときです。

FT March 2 2009

Euroscepticism is yesterday’s creed

By Gideon Rachman

WP Tuesday, March 3, 2009

European Disunion

By Anne Applebaum

(コメント) ヨーロッパを解体に向かわせるのは、昔からある感情、自分の苦しみを他者のせいにする、という振る舞いだろう、と。ヨーロッパはその抑制を制度によって実現するはずでしたが、それは上辺だけで、隠れた差別や排斥が強まっています。

FT March 3 2009

Not so Maastricht

FT March 3 2009

The ECB

NYT March 6, 2009

In East Europe, Some Hope of Avoiding Recession

By JUDY DEMPSEY

NYT March 8, 2009

Subprime Europe

By LIAQUAT AHAMED

(コメント) アメリカのサブプライム問題に比べれば、東欧の債務は小さな問題に見えます。しかし、その解決は政治的にはるかに困難であり、その危機が及ぼす影響は一層深刻である、とLIAQUAT AHAMEDは考えます。1931年のクレディットアンシュタルト破綻を再現する。

2008年末に旧ソ連圏の13カ国が負う対外債務や外貨建債務は1兆ドル以上です。その多くは投資だけでなく、消費や不動産購入に消えてしまっています。世界的な金融逼迫が起きて、新規融資は得られず、通貨価値が急落して、債務返済が止まってしまいました。

同じように仕事や住宅を失い、不満を感じても、アメリカの失業者たちは政府の対策を待っています。他方、ヨーロッパ各国では街頭で暴動が起きています。民主主義の経験は浅く、政府は信用されていません。極右のナショナリズムが蘇ります。

結局、債務は返済できず、銀行は損失を処理しなければなりません。その際、政府が救済するために税金を使います。しかし、誰の税金か? オーストリアやイタリアは負担しきれないでしょう。すると、何らかの方法で、ドイツやフランスの納税者が支払うのです。

ドイツはケース・バイ・ケースの解決を主張しています。しかし、アメリカが試みたように、それでは金融システムへの信頼を回復することができず、救済を積み重ねるだけです。ハンガリーが主張するように、一括して危機に対処する基金を設置する方が優れている、とAHAMEDは考えます。ただし、アメリカ政府はカリフォルニアやフロリダの住宅債務者救済に必要な基金をニューヨークや中西部からも集める制度を持っています。他方、そのような制度のないヨーロッパでは、各国の政治指導者がそれを決断しなければなりません。

かつて、大恐慌はそのメカニズムを理解できないアメリカから起きました。今度は、それを理解しても政治的な意志の欠けたヨーロッパから起きるでしょう。

The Guardian, Tuesday 10 March 2009

Thank heaven we're not in the euro

John Redwood

(コメント) ユーロでなくてよかった!!!

イギリスは賢明であった、とJohn Redwoodは考えます。すでに多くの銀行を救済し、その債務を保証して、イギリス国民は多くの負担を強いられています。その上に東欧の救済を追加することはできません。それはドイツとフランスがするでしょう。

イギリスは独自の通貨を保持し、ユーロ圏が安定し成功することを願います。しかし、異なった問題に独自の解決を負担するのです。ユーロ圏は次第に内部の財政を統一し、共通の為替レートでは輸出できない地域に財源を移転することが必要だと理解するでしょう。

ユーロ圏が拡大すればするほど、この問題は難しくなり、負担も増えます。すなわち、解体の危機も深まるのです。

FT March 11 2009

Agitation as middle-class Europe struggles to cope

By John Thornhill

WSJ MARCH 12, 2009

Eastern European Currencies Need Help Now

By ZSOLT DARVAS and JEAN PISANI-FERRY

(コメント) ケース・バイ・ケースのアプローチでは、危機の伝染を防げない、とEU財務大臣の閣僚サミットに警告します。中東欧の危機には多くの共通点があり、過去の危機が示すように、伝染の可能性が高いことを思えば、EUは中東欧の危機を放置できません。通貨危機は銀行融資を減らし、消費を減らし、不況によって、さらに銀行や企業を破滅させます。

大規模な安定化基金が政治的に不可能であれば、対策として、この論説は次のような提案を示します。その目標は、中期的に、民間資本の流入を回復することです。それゆえ、1.中東欧諸国は財政の持続可能性や金融システムの安定性、マクロ経済の調整を実行する計画を示す。2.一時的に、公的資本が民間資本の不足を補う。3.ユーロ圏を目指す国、特にポーランドが、為替レートの急激な調整(大幅な減価)を望ましくないとする態度への変化と、それに見合うユーロ圏の側の調整に対する解釈を修正する。4.ユーロ圏だけでなく、圏外への通貨安定化に協力し、スワップ網を拡充する。5.信用の膨張や住宅バブルがあった国では、民間債務を救済できないだろう。6.協調体制の強化を示し、分裂を表現しない。


NYT March 1, 2009

Franklin Delano Obama

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) オバマは戦略家だ。アメリカを違った国に変えようとしている。それは生涯にわたる医療保険制度です。アメリカの制度は支離滅裂だが、それは第二次世界大戦中に、賃金統制の下で、企業が労働者雇用策として異なった医療保障を与えたからだ、とNICHOLAS D. KRISTOFは指摘しています。

反対派は言います。現在の最高の医療を官僚たちの手にわたしたら失ってしまうぞ。カナダのように、何か月も手術を待つのか? 高い税金を支払って、経済は競争力を失ってしまう、と。

しかし、NICHOLAS D. KRISTOFは反論します。それは富裕層だけのものです。多くのアメリカ人は十分な医療サービスを受けられず、ヨーロッパのほとんどの国より平均寿命が短く、キプロスでさえアメリカよりも平均寿命が長い、と。他にも、子供の死亡率、医療のコスト、高額の医療費と過剰な医療ケア、さらに、富裕層はより多くの富を支配しても十分な税金を負担していない。

WP Monday, March 2, 2009

The Re-Redistributor

By E.J. Dionne Jr.

WP Wednesday, March 4, 2009

Who You Calling Socialist?

By Harold Meyerson

(コメント) 所得再分配や社会保障政策など、オバマはF.D.ルーズベルトと比較されます。あるいは、社会主義者、と批判されます。

オバマは社会主義者なのか? 今日、社会主義を唱える主要な党派はないし、主要な工場の国有化、私的所有や賃金制度の廃止を支持する声もない、とHarold Meyersonは指摘します。今では、資本主義の廃止を唱えることに意味はない、と考えた19世紀末ドイツの修正主義者、E.ベルンシュタインの考えが支配的です。

ではなぜ保守派は「社会主義」を攻撃するのか? 彼らは進歩的な改革を嫌うのです。国民への教育を無料にしたり、最低賃金や、金融ビジネスへの厳しい規制など、彼らは「社会主義」だと非難します。国民皆保険制度も。

しかし、オバマはルーズベルトのように、崩壊した資本主義を立て直そうとしているのです。しかし、時代の要請を正しく見据えるなら、それはより社会的で、持続的な、競争する資本主義でなければならない、とHarold Meyersonは考えます。

ウォール街の投資銀行は消滅し、世界中で商業銀行が救済され、東アジア、ドイツ、アメリカの輸出が急減し、アメリカの自動車産業は衰退、世界中で株価が下落、失業者は急増する中、民主主義に依拠する各国政府が動揺しています。規制緩和された資本主義が世界中で旧体制を爆破してしまったからこそ、より社会的な資本主義が現れるのです。

WP Thursday, March 5, 2009

The Right Roosevelt?

By David Ignatius

WSJ MARCH 6, 2009

Obama's Radicalism Is Killing the Dow

By MICHAEL J. BOSKIN

(コメント) アメリカ資本主義の基礎を崩してはならない。MICHAEL J. BOSKINは、アメリカよりも生活水準が30%も低いヨーロッパ型の福祉国家を、オバマの大きな政府は目指している、と批判します。

WSJ MARCH 9, 2009

In Defense of Obamanomics

By LAURA D'ANDREA TYSON

(コメント) オバマの財政政策を的確に説明しています。財政とは、誰から税金を取って、何のために使うのか、説明しなければなりません。

オバマは、財政刺激策によって350万人の雇用をもたらす、と約束しました。その刺激策の中身についてLAURA D'ANDREA TYSONは、所得の上位3%に増税して、医療保険制度の改革に使うことを説明します。この上位3%は過去のバブルにおいて莫大な富を得た人々です。

他にも、財政支出の優先順位を得たのは、環境・エネルギー、教育、中産階級への減税です。オバマは炭素税よりもキャップ・アンド・トレードを選択しました。石油消費を減らすために価格は引き上げます。それは中東からの石油輸入を減らし、環境にやさしいエネルギーへの転換を促し、温暖化防止に働くでしょう。

オバマは同時に、財政政策の中期方針を示しました。景気回復とともに財政赤字を抑制し、アメリカ財政の持続可能性を確保します。そして、もし景気回復が予想より遅れるなら、オバマは方針を見直します。

このシンプルな方針に、世界は見習うべきだ、と感じました。

LAT March 10, 2009

Obama's fear-mongering

Jonah Goldberg

(コメント) あるいは、オバマは危機を煽り、危機を利用してアメリカ社会を改造してしまうのでしょうか?


WSJ MARCH 4, 2009

Beijing's Consumption Blues

By MICHAEL PETTIS

(コメント) 国内の投資と外需主導型の成長モデルを、国内消費による成長モデルに転換することは難しい、とMICHAEL PETTISは指摘します。たとえ政府がそれを目指しても、国内の工業生産力は過剰になり、輸出への依存は続くでしょう。資金は農村や消費者へ向かいません。

FT March 4 2009

Common goals for China and the US

Asia Times Online, Mar 5, 2009

Beijing builds on credit crisis

By Antoaneta Bezlova

FT March 5 2009

Chinese stimulus

(China Daily) 2009-03-05

Time to think globally

March 6 (Bloomberg)

China’s 2009 Rebound Is Pure Fantasy

William Pesek

The Guardian, Tuesday 10 March 2009

Will US-China relations sink or swim?

Simon Tisdall

(コメント) 中国経済の成長が世界を救う、というのは幻想だ。世界景気の悪化は需要を奪い、中国政府の約束した刺激策は絵に描いた餅だ。アメリカの財務省証券を売ることは難しく、中国経済の内需転換にも時間がかかる。

中国とアメリカは、安全保障と貿易・投資において、異なった道を歩むのか? 経済危機と地域紛争は、そのさまざまな可能性を試します。

FT March 15 2009

A quest for other ways

By David Pilling and Ralph Atkins

(コメント) 安価な信用とバブルに依拠したカジノ資本主義を目指すような、アメリカの時代は終わった、とアジア諸国の指導者や官僚、学者は主張しています。

世界の経済モデルを比較する旅に出たマルコ・ポーロのように、この論説は、本当にアメリカよりもアジアとヨーロッパの資本主義が優れているか、問い直します。

アジアについては、まだむしろ欠陥が多く、アメリカから学ぶ方が良い、と考えます。その理由は、日本を観ればわかる。日本の銀行はサブプライム・ローンを多く買っていなかったが、日本経済の落ち込みはOECD諸国内で最大の6%に近い。それはアジア資本主義が自慢している貯蓄や製造業への投資、しかもアメリカなどへの輸出に頼りすぎたからだ。中国の資本主義はまだまだ幼く、特に金融システムの改革はむしろ加速するだろう。インドが世界金融危機から免れたのは、規制緩和や世界市場への統合が最も遅れているからだ。

ヨーロッパについても、EUが成功するとしたら市場統合とアメリカ資本主義への収斂だ、と主張します。ドイツがその労使協調や銀行融資に頼る「ラインラント・モデル」から明確に転換したように、ヨーロッパ規模での経済再編と競争力の改善には、ユーロにとどまらず、単一市場の完成に向かうしかない。特に、アメリカに比べてヨーロッパには資本主義のダイナミズムが欠けている。だから、金融危機からの回復もアメリカより遅いだろう。ただし、北欧の社会保障モデルは有益だ、と。

もちろん、これは英米型の資本主義観を支持する議論です。双方が危機から何を学ぶのか?


NYT March 1, 2009

Message to Regulators: Bank Fix Needed Quickly

By TYLER COWEN

(コメント) アメリカ政府による金融秩序の回復は、なぜこれほど困難であるか? この記事はその要点を示していると思います。

基本的に、銀行システムが危機に陥った国では、三つの方法が試みられているのです。

THE SHOVEL METHOD: 銀行に損失を処理させるため、政府が補助金を与えます。その方法は色々ですが、主に、買い手のつかない債権を高く買い取ってやりますが、それは納税者の金を失うことになり、しかも、いつまで続くか分かりません。その不透明性が問題です。そこで、

THE CONTROL METHOD: 銀行を国有化もしくは破産を宣言して支配権を握ります。スウェーデンの例が成功したわけですが、アメリカのケースと規模も複雑さも全く異なる、と記事は強調します。また、破産処理すると不安が強まって、金融システム全体が危機を伝染します。たとえ大規模な銀行を一つ国有化(もしくは破産処理)するだけでも政府には十分な処理能力がないのに、金融システムの大部分を国有化するとしたら、その収益性が回復するのはさらに困難です。

銀行が支払い不能であることを判定するのは困難です。資産市場が機能しないときに、評価額を決めるのは政府の判断しかありません。危機が伝染して、政府(あるいは中央銀行)のバランス・シートが悪化し、最終的に大きな損失を残すことになれば、国民は税金で負担しなければなりません。当然、納税者はそれを嫌います。

THE BAND-AID METHOD: 最終的には、アメリカ政府のように、介入規模に財政的制約があることを意識するほど、ケース・バイ・ケースで経済が回復するのを待つしかない、と政府は判断します。あるいは、選択の余地がないほど大きな危機が生じるまで。

FT March 1 2009

How Washington can prevent ‘zombie banks’

By James Bakerchief of staff and Treasury secretary for President Ronald Reagan and secretary of state for President George H.W. Bush

(コメント) 日本ではプラザ合意であまりにも有名なベイカーJames Baker元財務・国務長官の提案です。

1990年に日本の地価や株価が下落して銀行に不良債権が増大したとき、アメリカ政府が公的資金を注入するか支払い不能になった銀行を閉鎖せよと強く要請したにもかかわらず日本政府は銀行を延命し続けました。生きる死者、というあだ名(‘zombie banks’)を欧米メディアは付けたわけです。その政策は銀行融資を回復できないまま、「失われた10年」という停滞の時代をもたらした、と批判されます。

James Bakerは、こうした要約の後に、アメリカ政府もその失敗を繰り返している、と書きます。アメリカの銀行も、流動性が一時的に足りないのではなく、支払い不能なのです。銀行国有化を嫌うBakerは、アメリカは日本政府の失敗(ケース・バイ・ケースのバンド・エイド)をまねることなく、破産処理するべきだ、と主張します。

まず、ガイトナーは、危機の最悪のシナリオも含めて、問題の全体像を国民に示すことです。最善のシナリオに期待する、というのでは、市場の不安を払しょくできません。次に、銀行を三つに分けます。健全、支払い不能、必要、です。健全と判定した銀行は市場で資本を調達して損失を処理し、支払い不能の銀行は閉鎖します。必要な銀行は公的資金を注入して政府が一時的に所有し、再編します。経営陣は交代させ、株主も債券保有者も損失を強いられます。

ただし、Bakerは国有化が一時的であって、再編処理が済めば新しい経営陣の下で速やかに民営化する、と考えます。また、預金保険や債権買い取りの手法も活用し、取り付けが生じないように声明は一度きり、一括して処理します。金融システムの健全化も、できるだけ主要諸国と国際協調することが望ましいでしょう。

Bakerは、もう一つの日本の失敗にも言及しています。それは景気回復の初期に増税したことです。アメリカ政府はこれも回避できます。

March 2 (Bloomberg)

Some Banks Must Die So the U.S. Economy Can Live

Caroline Baum

(コメント) もちろん、市場メカニズムと小さな政府を信奉する保守派からすれば、誰もが政府介入や財政刺激策を主張する現状は許せないでしょう。そもそも、大恐慌は株価暴落だけで起きたのではない。それに対する政府の政策によって拡大したのだ、とTimothy J. Kehoe批判します。今のオバマ政権がやっているような。2004年のノーベル経済学賞を受賞したEdward Prescottも、そう考える一人です。

医療保険制度やエネルギー政策、温暖化防止、富裕層への増税によって、金融システムが健全化することはない。短期の苦痛を恐れて、長期の成果を失ってはならない。正しい対策が必要だ。それは、生産性に焦点を絞って、「生産性の低い企業を倒産させること」です。

WP Monday, March 2, 2009

A Risky 'Systemic' Watchdog

By Sebastian Mallaby

FT March 2 2009

Investment and the crisis: an error-laden machine

By John Plender

(コメント) 「システミック・リスク」と言いますが、個別のリスクではなく、金融機関の「システミック・リスク」を監督しなければならない、という主張について。

民間部門の自己批判は、John Plenderの記事が紹介しています。

FT March 3 2009

To nationalise or not – that is the question

By Martin Wolf

(コメント) 銀行国有化に関する議論に納得いかない人は、Martin Wolfを読むと面白いでしょう。

1978年、ジミー・カーター大統領のインフレ対策顧問であったAlfred Kahnは、「不況」という言葉を使って大統領の逆鱗に触れ、それ以後、この言葉を使わずに「バナナ」と呼んだそうです。銀行国有化についても、Martin Wolfは別の言葉(「バナナ」)で議論されてきただけだ、と言います。フレディー・マックとファニー・メイも、AIGも、シティグループも、すでに国有化されています。

問題は、その結果なのです。つまり、銀行を倒産させるわけにはいかないとしたら、(資産価格の下落による)損失はだれが支払うのか? 銀行をどうやって整理・再編するのか?

銀行は資本市場で資金を調達しており、株式を発行してきました。株主たちは株価の下落ですでにほとんどの富を失っています。これ以上の損失はだれが支払うのか? 銀行は信用によって資産を購入してきました。銀行に対する債権者が支払うのでしょうか? もし銀行の倒産を許せば、そうなるでしょう。しかし影響はあまりにも大きく、おそらく金融システムが崩壊します。バーナンキは銀行を救済していますが、それはこの損失を(中央銀行による融資で)「社会化」することだ、とWolfは指摘します。

損失の社会化には、二つの重要な反対論があります。1.それはメガ・バンクの資金調達を助け、“Too Big To Fail”問題を悪化させます。2.それは下落した株価で銀行株主に下限を与え、銀行に「当たって砕けろ」の行動を取らせる。

賛成論は、これによって銀行の支払いに対する不安がなくなる、というものです。銀行の発行した債券は市場全体の4分の1を占めますから、その崩壊はどうしても避けたいでしょう。

次に、整理・再編問題についてです。通常は、債務を株式に交換して行われますが、銀行が国有化された場合、市場に依拠したこの方法は使えません。民間資本が追加されるか、政府が公的資本を追加するか、です。あまりにも不確実性が大きいために民間資本は債券を購入せず、有権者の不満が強いために公的資本も注入できません。そこで、ガイトナーは「ストレス・テスト」という、いわば客観的な自動的資本注入、を唱えるわけです。最悪のケースを仮定して、資産が債務を下回ると監督機関が判断した銀行には転換社債の発行を命じ、政府がこれを購入するので、もし一定期間に民間資本を増強し、返済できなければ、政府の保有する株式となって国有化されます。

Wolfは、この最悪ケースがもっと厳しい条件でなければならないし、これは「ストレス・テスト」と呼んでも、「バナナ」と呼んでも、銀行国有化だ、と指摘します。

国有化が支持されるのは、政府の銀行経営が民間よりも優れているからではなく、整理・再編が迅速に行えるから、という理由です。資産と債務を健全なものだけ分離して、“Good Bank”と“Bad Bank”を作り、“Bad Bank”の処理は民間で行います。しかし、民間部門が損失を吸収できなければ、結局、政府が長期に保有する、というわけです。1984年のコンチネンタル・イリノイ銀行の例を挙げて、その長期処理は容易でない、と主張します。

つまり、結論は何か? 容易な選択肢は無いのです。資産価格や債券価格の下落に応じた損失を分担して処理し、必要なら公的資金も使って、資本を増強して銀行を健全化し、融資を再開できるようにします。それは、一定のルールの下に、金融システム全体で行われねばなりません。

FT March 3 2009

How the competent bankers can be assisted

By John Kay

(コメント) John Kayは、政府が銀行に出資しても、銀行は株主の利益を基準に活動し続ける、と指摘します。政府が銀行に資金や保証を与えたのは、それが金融市場を不安から抜け出す助けになる、と考えたからです。しかし、結果的に国有化が進むなら、その目的は銀行システムの健全化に絞るべきでしょう。そして、日常業務は経営者に任せて、危機が終われば速やかに株を売却することです。

Asia Times Online, Mar 4, 2009

The unspeakable solution

By Nouriel Roubini

(コメント) アメリカの銀行システムは、すでに、全体として支払い不能です。Nouriel Roubiniは、金融システムを健全化する4つの方法を示しています。

1.不良債権を政府が買い取って“Bad Bank”として分離し、残った銀行には資本強化する。2.不良資産を政府が保証して民間に売却し、銀行は資本強化する。3.政府保証を付けて、不良資産を民間が購入する。4.銀行を国有化する。

しかし、“Bad Bank”は容易に機能しない。不良資産を評価することは難しく、それを管理することはさらに難しいから。Roubiniは、国有化が最も市場に優しい解決法だ、と述べます。英米は、日本型のゾンビ・バンクへの道を進んでいる、と。

NYT March 6, 2009

The Big Dither

By PAUL KRUGMAN

(コメント) オバマ政権が金融市場の安定化に失敗するパターンは、最初に政府の誰かがあいまいな観測気球を上げて、それを評論家が叩き潰し、その後、数週間して、政府は銀行救済策を発表するけれど、内容が具体的でない、などと失望をもたらす、というものです。そんなことを繰り返すのは、政府や連銀のスタッフの中に、不良債権が本当はもっと高く売れるはずだ、と主張する者がいるからです。

ガイトナー財務長官もその一人です。また、間違いなくゾンビであるAIGがあるのに、「私はアメリカの金融システムにゾンビなど見たことがない」というバーナンキもその一人です。

つまり、PAUL KRUGMANによれば、ガイトナー=バーナンキの救済策はいつも「飛べない鳥」なのです。基本的な健全な金融システムなら、「本当の価値」に比べて、これほど安い価格で買える金融資産に多くの民間資本が集まって、救済基金は十分に集まるでしょう。しかし、金融システムが健全か? 結局、資本は救済する必要のない、少数の健全な銀行に集まるでしょう。

政府や連銀は、まだ、真実を避けている。不良債権を切り離さなければ銀行は回復しないし、それには国有化して資本増強する必要がある、とは認めない。

FT March 9 2009

Put out the fire before fixing the sprinkler

By Anil Kashyap and Frederic Mishkin

(コメント) 金融監督システムを今変えてはならない、という主張です。危機からの脱出に全力を挙げて取り組み、システムが安定してから、世界的な枠組みを含めて改革せよ。

FT March 12 2009

Insight: US is ready for Swedish lesson on banks

By Gillian Tett

(コメント) スウェーデンが1990年代初めに債務危機に陥ったとき、その処理の中心にあった人物、Bo Lundgrenがアメリカ議会の監視委員会に識者として呼ばれます。

Lundgrenは、「国有化」にはいろいろな意味があり、公的資金を使うことが成功の条件ではない、と注意しました。何に使うかが問題です。

アメリカやイギリスは金融機関を救済しながら、スウェーデンのように不良資産を分離せず、株主もそのままです。スウェーデンの国有化は「社会主義」と非難されますが、銀行経営に介入しませんでした。むしろアメリカの方が細かい注文を付けています。

さらに、英米がしていないことで、スウェーデンが行った決定的に重要な政策は、すべての銀行の債務(株式と劣後債を除く)に政府保証が付いたことです。そして、これこそが真似のできない点なのです。

スウェーデンには主要な5つの金融機関しかなく、複雑な金融商品を保有していませんでした。そうであれば、今や、すべての国がスウェーデンだ、は間違いで、すべての国がアイスランドだ、と言うべきです。

LAT March 15, 2009

Banking clarity

NYT March 15, 2009

Following the A.I.G. Money

WSJ MARCH 16, 2009

Bear Stearns: The Fed's Original 'Systemic Risk' Sin

By JAMES FREEMAN


NYT March 1, 2009

The end is unknown. Beware the False Dawn By STEPHEN S.ROACH

Market gyrations are expected. A Long Goodbye By A. MICHAEL SPENCE

The short answer is not soon. Stop the Bailouts By WILLIAM POOLE

The economy is on the same path as previous bubbles. Our Great Recession By NIALL FERGUSON

The fall in American output won rebound quickly. It Can't Last Forever By ALAN S. BLINDER

By the fourth quarter, the odds are better. Rule of Four By CARMEN M. REINHART

As the contraction continues, look at more severe precedents. The L Curve By NOURIEL ROUBINI

(コメント) 2010年か2011年まで、消費や雇用が回復しない。あるいは、今年うの第4四半期に回復し始める。・・・

The Guardian, Friday 6 March 2009

Care to borrow a depression?

Kenneth Rogoff

(コメント) 高金利、公的債務の増大、成長の減速さらにはマイナス、為替レートの不安定化。危機の後は、金融の縮小、インフレ高進、そして、いくつかのデフォルトによって処理される、と。

WSJ MARCH 11, 2009

The Fed Didn't Cause the Housing Bubble

By ALAN GREENSPAN


NYT March 2, 2009

Revenge of the Glut

By Paul Krugman

(コメント) 金融危機はどうして起きたのか? なぜこれほど広がったのか? まるで、世界恐慌を研究したキンドルバーガーの問題提起です。

Paul Krugmanは、その説明を、4年前のBen Bernankeの論文に見つけます。ただし、バーナンキは、アメリカの経常収支がなぜ拡大し続けるかを説明しようとしたのです。その理由は、アメリカ(の不均衡=支出過剰)にではなく、アジア(の不均衡=貯蓄過剰)にある、と考えます。

アジア諸国は、1997-98年の通貨危機を経験したことで、その後は輸出を増やし、外貨準備を増やすようになりました。中国や日本を先頭に、こぞって支出を抑えて貯蓄を増やし、あるいは、通貨を過小評価した、というわけです。

アジアにおける貯蓄過剰は、その結果、アメリカの金融市場が非常に深く、洗練されていたために、アメリカへの資本流入となって、ドル高や経常収支赤字を続けた、というわけです。しかし、と当然、Krugmanはバーナンキの誤解を正します。アメリカの金融市場は決してそれほど洗練されていなかったわけです。

同様に、世界の資本移動に対して市場を開放し、この資本流入を受け入れて一時的な好況とバブルに酩酊した国がありました。アイスランド、アイルランド、そして東欧の諸国です。そこでも、アメリカ以上に住宅価格の上昇や資産市場のバブルが生じ、その表面的な富の増大に対しても、保守派のシンクタンクは、自由化・経済改革による成果だ、と称賛していたわけです。

しかし、バブルが破裂し、「奇跡」が消えてしまうと、彼らの富は失われ、それでも債務だけが残りました。しかも、アメリカ以外の小国では多くの債務が外貨建であり、政府・国自体の破たんが迫っているのです。

バブルの終わりと需要の崩壊は、彼らに輸出していたアジアやドイツのような製造業の拠点にも危機を輸出しました。世界には、今も、巨大な貯蓄過剰が残っており、それに見合った消費過剰は消えてしまったからです。ケインズの「倹約のパラドックス」は、こうして世界経済を恐慌の淵へと導いています。

FT March 2 2009

Obama’s chance to lead the green recovery

By Joseph Stiglitz and Nicholas Stern

(コメント) ふたつの危機を足して、人類の未来を好転させる希望に変えることはできるのでしょうか? ちょっと欲張った話ですが、Joseph Stiglitz and Nicholas Sternなら、そうかもしれません。

金融危機の不確実性を、人類社会が炭素に頼らない経済に向けて転換するチャンスと考えるなら、エネルギー価格を高く維持して、企業家に低炭素エネルギーへの投資を促すことができます。

March 3 (Bloomberg)

Gold Standard Fans Yearn for Great Depression

Michael R. Sesit

(コメント) 金本位制と大恐慌に関する、意外にも、簡潔で有益な紹介です。なぜこのような解説記事がBloombergに出るのか、と言えば、もちろん、金融危機によって政府の公的介入が急速に増大していった後、不況と財政赤字の累積でインフレが爆発するのではないか、という不安を投資家は抱いているからです。

その不安を解消する政策は、金本位制に復帰することか?

記事が要約しているように、金本位制の利点と言われているインフレ・ヘッジという利点は、金融政策の硬直化やデフレを促す効果によって打ち消され、長期的なインフレの動向は(しばしば政治的に不安定な)金生産国の供給条件に依存します。また、金本位制への政治的な支持は戦争や大量失業によって容易に失われ、肝心な時に、離脱することになるでしょう。

NYT March 4, 2009

Obama’s Ball and Chain

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 国民は若い才能豊かな指導者を選んだのに、彼は医療保険制度の改革や、より平等な社会、環境問題を解決する産業革命を起こす間もなく、その任期を破たんした金融機関(シティグループ、AIG、バンカメ、メリルリンチ、その他の住宅債務に押しつぶされる銀行)の債務処理に費やして終わるのか? 

アメリカ人は生産よりも、金融ビジネスや住宅価格の上昇によって消費を増やすことに依存していたために、金融危機の残したクレーターはあまりにも巨大なものとなった。それは、オバマの得た政治資本をすべて食いつぶす。

WSJ MARCH 4, 2009

What Are the Odds of a Depression?

By ROBERT J. BARRO

NYT March 9, 2009

Behind the Curve

By PAUL KRUGMAN

(コメント) オバマの財政刺激策は不十分だ。失業者が増加し続けて、追加の刺激策を議会に求めようとしても、最初の刺激策が失敗したとみなされ、また、銀行の救済に対する非難を浴びて、容易に成立しないだろう。

March 10 (Bloomberg)

Obama's Housing Rescue Is American Pipe Dream

Caroline Baum

BG March 11, 2009

Obama a socialist? Not quite

By Scot Lehigh, Globe Columnist

(コメント) オバマの政策に対して非難する声が高まっています。オバマは社会主義者で、マルクス主義、レーニン、スターリン、チャベスなのか? さまざまな政治指導者の下で、国有化された部門や経済に占める国営部門の比率を示しています。むしろ、オバマは「社会主義」が足りない、と非難するべきではないか?

オバマを「社会主義」と非難する理由は、その言葉が有権者を怯えさせるからです。避難する者は、事実を観たくないだけです。

BG March 12, 2009

Surviving the Great Collapse

By Robert Kuttner

(コメント) 1930年代の危機が来るのではない。もっと大規模な危機が来る、とRobert Kuttnerは警告します。その理由は、1.金融の規模と複雑さ、2.需要の落ち込み、3.政府の債務依存、が1930年代よりも悪化しているからです。

アメリカ人は「大恐慌The Great Depression」の文字を嫌うから、他の名前を探しています。「大崩壊The Great Collapse」としよう。金融とイデオロギーの二つの大崩壊が起きています。


NYT March 2, 2009

Japan Crisis of the Mind

By MASARU TAMAMOTO

March 4 (Bloomberg)

Mom, Dad Have No Right to Deny Obama-Like Leader

William Pesek

FT March 9 2009

Japan’s current account deficit

(コメント) 日本は世界不況の中で、以前のように輸出を頼りとして、中国やタイとともに市場を得るため努力するのでしょうか?

FT March 18 2009

Japanes e carmakers


Business Week, 3 March 2009

Why Skilled Immigrants Are Leaving the U.S.

By Vivek Wadhwa

NYT March 4, 2009

Who Running Immigration?

NYT March 10, 2009

Workers Without Borders

By JENNIFER GORDON

(コメント) 不況に際して移民の流入を支持する者はいません。ますます失われる職場を求めて競争するだけだ、と。しかし、JENNIFER GORDONは、だからこそ移民政策や制度の必要を訴えます。

アメリカの数百万人の非合法な移民労働者たちは、こうした中で、賃金や労働条件に関する不満を訴えることもなく、職場を守って働くしかありません。それは結果的にアメリカ人労働者の雇用条件も悪化させます。むしろ彼らの移動や権利を守る方が、失業者の国内移動や帰国、労働条件の改善をもたらすでしょう。

そこでJENNIFER GORDONは想像します。労働者たちは国境を超えて労働組合に帰属し、合法的に移動し、労働する権利を持っています。彼は、Transnational Labor Citizenshipを提唱します。その実験的な試みが、国境周辺の農場や建設業で行われるでしょう。たとえば、the Farm Labor Organizing Committee’s guest worker unionです。

EUやイギリスで成功したように、それは多くの雇用や成長に役立つでしょう。・・・成功した? 移民労働者たちは騙され、搾取されている。イギリス人労働者がポーランド人に職場を奪われ、講義している。・・・もちろん、移動の権利だけでは十分ではないでしょう。労働現場を監督して、労働条件を正しく監視しなければなりません。雇用を維持するような経済運営は政府の責任です。

GORDONは、もう一つの問題も解決できる、と考えます。それは規制や権利を守ることです。アメリカ政府は国境警備や移民労働者の摘発、労働者の搾取を取り締まる費用を大幅に減らせるでしょう。なぜなら、労働者自身が組合によって非合法移民や搾取を減らそうとするからです。


FT March 4 2009

A chance to remake the global financial system

By Paul Keating

FT March 4 2009

Look for onshore, not offshore scapegoats

By Avinash Persaud

FT March 5 2009

How the Fund can help save the world economy

By Ted Truman

(コメント) 国際金融制度の改革に向けてPaul Keatingは、G7に代わってG20を制度化し、国際政策協調の主体にします。また、IMFを大幅に改造・強化して、発展途上諸国からもトップの人事を行います。

Avinash Persaudは、オフショア金融センターやタックス・ヘイブンの廃止について述べています。これ自体は金融危機の原因ではなかった、と注意した上で、廃止する方法は二つ、1.国家による課税権の競争をなくすこと。国際課税し、付加価値に応じて分割する。2.秘密口座のような仕組みを廃止する。そして、情報交換の国際協定を結ぶ。

Ted Trumanは、主要国が財政刺激策を必要とする中で、IMFが金融システムの脆弱な諸国を救済するために、必要な資金を1回限りのSDRs発行で得るよう求めています。割り当てられたSDRを利用する国は、それによって他のIMF加盟国の通貨を得て、支払に使うことができます。SDRを利用するにはわずかな金利(今なら0.6%)を支払うだけです。

まず、支持の理由は、世界金融危機と不況に対する協調的な解決策になることです。これを利用して世界銀行などの緊急融資や援助の原資にすることも有効でしょう。また、金融危機に対処する外貨準備が不足している小国にとっても重要です。もし安定化が外貨準備の積み増しでしか行えないなら、為替レートの切り下げや貿易戦争を誘発します。

Trumanは反対論を否定します。1.厳しい融資条件が無いのは今なら問題にならない。2.インフレ的であるという批判も。3.必要ない国が得る、という批判には、どの国が必要になるか分からず、また、近隣諸国の安定化を支援することもできる、と。

WP Friday, March 6, 2009

Recovery Rides on The 'G-2'

By Robert B. Zoellick and Justin Yifu Lin

(コメント) G20の成功はG2にかかっている,というのは,どのような中身を指すのでしょうか? このRobert B. Zoellickらの論説で,二つの言葉に私は特に注目しました.“Adjustment”と “Gradually”です.

金融危機の重要な背景,条件には,アメリカの過剰消費と中国の過剰貯蓄があります.興味深い指摘は,中国の貯蓄は中小企業によって行われている,という点です.その原因は,主要銀行が政府の指導により輸出を中心とした主要企業に融資を集中させているために,必要な時に融資を得られない中小企業は自ら貯蓄するしかない,と言うのです.

だから,米中不均衡の緩和のために人民元レートを非難するより,中国の金融システムを改革するように求めるほうが良い,と指摘します.

さらに,G2協力の中身は,財政刺激策と構造的な不均衡の監視です.中国政府が目指す平等な社会や環境対策は,この点からも望ましいでしょう.さらに,中小企業への融資を促し,貿易や投資の自由化を進めることもこれらを助ける,と主張します.他方,アメリカは財政赤字をコントロールし,成長と競争力を回復します.

不均衡の「調整」は,「漸進的に」行われることが望ましいでしょう.そのためにも,中国とアメリカは協力しなければならない,と.

Time Magazine, 6 March 2009

Should China and the U.S. Swap Stimulus Packages?

By Bill Powell / Beijing

The Guardian, Monday 9 March 2009

East Asia's economic revenge

Dean Baker

(コメント) 上述のPaul Krugmanの話の前には,この話が必要です.つまり,アジアはなぜ輸出を増やし,貯蓄過剰を続けたのか?

1997-98年の通貨危機において,アジア諸国はIMFから融資を受けましたが,厳しい融資条件が付きました.緊縮政策と自由化の維持です.そして債務はすべて返済しなければならず,自国の資産や企業を暴落した価格で外国企業・銀行に買ってもらえば良い,と指導されたわけです.

それは,IMFを介して示されたアメリカの意志,タイム誌が「世界救済委員会」と称えた,グリーンスパン,ルービン,サマーズ,の意志でした.

アジアだけでなく発展途上諸国のすべてが,その意志を理解し,IMF融資に頼らず外貨準備によって自国の経済を防衛したい,と考えたわけです.それは外貨準備を増やす,ということです.安価な輸出とアメリカへの資本流入が続き,アメリカやイギリスでは安価なクレジットと消費の拡大,バブルとその破裂が繰り返されます.

もしIMF融資がもっと緩やかな条件で行われていたら,また債務の返済コストが大幅に軽減されていたら,その後の世界経済はもっと違った発展を示したはずだ,と論説は示唆します.

FT March 10 2009

Why the G20 must focus on sustaining demand

By Martin Wolf

(コメント) アメリカの財政刺激策,7500億ドルは小さすぎる,とWolfは批判します.危機の大きさに見合っていないのです.保守派のM.フェルドスタインも,アメリカが住宅の価格下落で失った富だけでも12兆ドルであり,財政刺激策は2009-10年の需要不足を40%補うにすぎない,と指摘します.

アメリカ以外の国では,そのギャップはもっと深刻です.その結果,不況は深刻で,しかも長引くでしょう.Wolfは,財政支出を過大に行っても金利がわずかに上昇するだけであることを指摘し,それを過少に行って長期の不況と大量失業をもたらすことと比較するなら,大きすぎる財政刺激策の失敗を歓迎するべきだ,と主張します.

さまざまな使い道で政治家が争うよりも,すぐに消費する傾向の高い人々に大幅な減税をすることが望ましいでしょう.

March 13 (Bloomberg)

China Needs Another $2 Trillion of Treasuries

William Pesek

FT March 13 2009

The gap of twenty

By Alan Beattie in Washington

(コメント) G20について,Alan Beattieの記事を読むべきです.

20で対立する視点とは,アメリカの「財政刺激策による需要維持」と,ヨーロッパの「国際金融制度改革」,特に,ヘッジ・ファンドとオフショア金融センターの規制,です.つまり,グローバル・ニュー・ディールa global New Dealか,それとも,ニュー・ブレトン・ウッズa new Bretton Woodsか,です.

ヨーロッパの政治家たちは,サマーズの説教に従いませんし,ガイトナーが国内で人気を失い,ゾンビ・バンクが増えるばかりで,議会に景気刺激の財源を要求できないから,ヨーロッパに助けを求めている,と解釈します.

1990年代の後半と同じような条件でありながら,何とも奇妙な要求がぶつかっている,とAlan Beattieは指摘します.すなわち,アメリカ政府は,財政を健全化することにこだわってはいけない,と世界に説き,IMFは,アジアに外貨準備を使わせてほしい,とお願いし,イギリスのブラウン首相は,ヨーロッパの団結を説く.

WP Sunday, March 15, 2009; A19

Back to the Bubble?

By David Ignatius

(コメント) G20が世界にもたらすのは,「Bretton Woods II」か,「機関車論+プラザ合意」か,「ブーム・アンド・ブスト」のメリー・ゴー・ラウンドか?

FT March 15 2009

Collective action on the crisis is our best hope

By Wolfgang Münchau

FT March 15 2009

Capitalism needs a revived Glass-Steagall

By Nigel Lawson

(コメント) G20が求めるのは,典型的な協調の解が望ましいからです.そこでWolfgang Münchauは,国際協調の重要な分野を指摘します.

第一に,各国は景気を刺激しますが,その効果が他国によって奪われることを望みません.すなわち,保護主義と組み合わせて実現するのです.しかし,保護主義は貿易を通じた不況と失業を輸出します.各国は,他国も景気刺激策をとって,しかも自由貿易を守るときだけ,世界経済は回復を早めるでしょう.

20のもう一つの主題は,中東欧諸国(CEE)の金融危機を反省して,危機の伝染を防ぐことです.そのためにも,国際協調が必要です.三つ目に,金融救済と安定化についても,顕著な波及とリンクが認められ,国際協調が重要でしょう.

イギリスの元蔵相Nigel Lawsonは,資本主義を変える必要はないが,銀行部門は変えるべきだ,と考えます.新しいグラス=スティーガル法を作って,資金の決済(や設備投資や消費への融資)を行うコア・バンクと,リスクの高い証券投資を担うインベストメント・バンクを分けるべきです.そして,バーゼル合意の改革は遅すぎるから,後者にも十分な自己資本を維持するように規制しなければなりません.


The Guardian, Thursday 5 March 2009

Crank up the presses

Larry Elliott

FT March 5 2009

Big risks for the insurer of last resort

By Martin Wolf

(コメント) イギリスやアメリカが金融緩和を限界まで行い,量的緩和にも入りつつあります.もし,それでも不況が来たら,こうした救済融資や債務保証は公的な損失として処理されるでしょう.このまま増大し続けるのが良いのか?

Martin Wolfは,商業銀行の債務を保証する政府の方針は,実際には投資銀行のすべてを保護するコストの高いもの(失敗した投資銀行業務の実質的な国有化)になっている,と批判します.この話で出てくるW. Buiterの“Good Bank”案が,過去の債務と切り離して,新しい債務だけ政府が保証する,と言います.そして過去の債務は債権者の負担で処理するのです.

FT March 5 2009

Bank of England decision

The Times, March 6, 2009

The Politics of Printing Money

FT March 9 2009

Lost through destructive creation

By Gillian Tett

The Guardian, Friday 13 March 2009

The price of a sterling crisis

DeAnne Julius and Danny Gabay

(コメント) 量的緩和策は機能するのか? 1990年代の日本の経験が言及されるとともに,イギリスにとっては,1990年代の改革の失敗が議論されます.当時,蔵相であったゴードン・ブラウンが,イングランド銀行の独立性,インフレ目標,金融政策と金融監督の分離,を行い,その後の金融ビジネスの拡大を成果と見てきたからです.

アメリカやイギリスは、インフレや為替レートの急速な減価を心配しなければならないのでしょうか? あるいは,景気刺激策として歓迎するべきでしょうか? それは減価の理由による,とDeAnne Julius and Danny Gabayの論説は指摘します.スターリングの減価は,インフレへの不安です.

イギリス政府は,もう一つの心配があります.海外投資家の不安による減価です.アイスランドのクローナ,ハンガリーのフォリント,韓国のウォン,南アのランドのように?


Asia Times Online, Mar 7, 2009

North Korea fills the air with threats

By Donald Kirk

FT March 11 2009

N Korea is more Confucian cult than rogue state

By David Pilling

BG March 16, 2009

Obama's missile test

(コメント) BGの論説によれば,オバマ政権はクリントンかキッシンジャーを派遣して,アメリカは北朝鮮と正式な外交関係を結ぶ用意がある,と伝えるでしょう.ただし,その条件は,非核化など,6カ国協議で決めます.

北朝鮮のミサイル発射を阻止するべきですが,たとえ発射しても,アメリカ政府は日本がミサイルを撃ち落とすような国際法に違反する行動を選択しないように圧力をかけるべきだ,と考えます.また,制裁にも反対します.なぜなら,北朝鮮を非核化し,軍事独裁体制を終わらせる道は,制裁では開かれず,直接対話しかないからです.


FT March 8 2009

A survival plan for global capitalism

(コメント) 資本主義の将来はどうなるのか? FTの特集です.

資本主義の姿を決めるのは,かつて起きた大きな経済危機とその解決策でした.

 

FT March 8 2009

Seeds of its own destruction

By Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfの整理は要点を衝いています.歴史的な転換は,それに先行する制度や思想が行き詰まって,危機と対抗思想が指導者たちに新しい選択肢を用意したとき,その機会をつかんだ小さな集団から始まるようです.1980年代に,サッチャーやレーガンのもとで始まった市場自由化の思想が世界で支配的になったのは,それに先行する1950年代から70年代にかけて支配的であった混合経済やケインズ主義的な経済政策が失敗した,と広く信じられたからでした.ソ連崩壊や冷戦終結,中国の市場自由化,改革開放政策が始まったことも,同じ時代を画しました.

同じ意味で,金融自由化を中心とした自由化のバブルも終わったのです.主要諸国の政府が何兆ドルもの資金を金融機関救済や国有化に費やして不況の回避と緩和を願っているとき,たとえサッチャーやレーガンが大統領であっても,自由化の思想は唱えなかいでしょう.市場システムそのものへの信頼が大きく損なわれました.今となっては危機の一部であるのに,銀行は将来のリスクを過小評価し,たがいの危機を伝染させ,経営者や大株主の莫大な利益を正当化し続けたわけです.

しかし,資本主義がどうなるのか,明確な見通しは示されていません.それに代わる思想がないのです.規制緩和を優先するアングロ・サクソン資本主義,金融と財政の分離,資産市場のバブル,グローバリゼーションが,これまでとは逆転し始めるかもしれません.政府による安定した雇用や投資を人々は好むでしょう.それは,正しいというより,以前の資本主義が歴史の試練に耐えられなかったからです.

FT March 10 2009

Adam Smith’s market never stood alone

By Amartya Sen

(コメント) アダム・スミスにまでさかのぼって、資本主義や市場の意味を考えます。世界金融危機が示したのは、市場を他の社会的、人間(行動・心理)的、制度的な側面から切り離して、抽象的な市場モデルだけの合理性が機能しているかのように主張する、“the stand-alone market economy”でした。

アダム・スミスは、逆に、市場が単独では機能しない、ということを繰り返し明確に主張していた、と言います。危機が意味するのは、市場が急速に拡大した時期に、その制度的な保障は急速に縮小してきた、という事実です。それは間違いでした。

市場が機能する抽象的な唯一の方法はありません。スミスは、国民に対する教育や貧困救済の重要性を理解していました。問題に応じた制度的対応が必要なのです。さまざまな異なる制度や組織と市場の機能とを研究することで、より好ましい市場が新しい条件の中で再生することをセンは求めています。

The Guardian, Tuesday 10 March 2009

Capitalism's self-destruction

Mukoma Wa Ngugi

FT March 11 2009

Now is the time for a less selfish capitalism

By Richard Layard

(コメント) 進歩とは「富」や「効率」を増やすことではない。「満足」や「幸せ」を高めることだ。そうであれば、たとえば経済成長を加速するために、ますます多くの他の価値を犠牲にするのは間違いなのです。

Richard Layardは、資本主義がもっと個人主義に偏らず、社会的責任や他者への信頼、共感を重視する性質に転換する方が、私たちは幸せを感じるだろう、と主張します。それを実現するには、学校から、子供たちから、変えるのです。

FT March 11 2009

The case for a Glass-Steagall ‘lite’

By John Gapper

The Guardian, Wednesday 11 March 2009

A call for a new socialism

Jon Cruddas and Jonathan Rutherford

(コメント) 単に、グラス=スティーガル法を再現するだけではなく、金融機関の規模を制限し、リスクや利益相反、そして複雑さを制限するような法律が必要です。

あるいは、Jon Cruddas and Jonathan Rutherfordは、新しい社会主義を求めます。それは国有化や計画経済が重要な特徴ではなく、もっと文化的な多様性や民主主義的な・分権的な市民社会を重視します。

社会の結束力や連帯感は、平等や正義を要求する社会の条件・倫理的な基礎です。個人の自由は、それを実現する物質的な資源の配分状態、所得分配と関係していなければなりません。私たちは互いに異邦人として個人的な満足を目指すのではなく、資源の公正な分配を実現する政治的な共同体を形成します。政府は、人々が協力して良い社会を実現するように指導力を発揮するのです。

The Guardian, Wednesday 11 March 2009

This climate crunch heralds the end of the end of history

Anthony Giddens

LAT March 12, 2009

World hunger, the crisis inside the economic crisis

By Sonni Efron

(コメント) 環境破壊や温暖化の防止、食糧・資源価格の上昇、世界的な貧困について、G20は、金融危機や世界不況からの脱出だけでなく、同時に、何らかの答えを用意しなければなりません。

WP Thursday, March 12, 2009; A19

Building a Better Capitalism

By Harold Meyerson

The Guardian, Thursday 12 March 2009

We need people-centred banks

Prem Sikka

FT March 12 2009

Read the big four to know capital’s fate

By Paul Kennedy

(コメント) Harold Meyersonは、アメリカの資本主義を改善するために、ドイツに倣って製造業とその雇用を回復し、北欧諸国に倣って社会保障制度を導入せよ、と主張します。

スミス、マルクス、シュンペーター、ケインズなら、今の危機について何を語るだろうか? とハイルブローナー(Robert Heilbroner, The Worldly Philosophers : The Lives, Times, and Ideas of the Great Economic Thinkers )に拠りながらPaul Kennedyは考えます。民主主義と同じく、資本主義もひどいものだが、他の選択肢はもっとひどい、と。

FT March 12 2009

Wanted: global politics to rescue global capitalism

By Philip Stephens

(コメント) 経済危機を解決するには、優れた経済学以上に、世界的な規模の優れた「政治」が必要です。

IMFを強化し、G20が新しい政治構造になるのでしょうか? そうでもないようです。日本とイタリアはG8の中で影響力を維持したいと願っています。そして、新興諸国を加えたG13(=G8+5)が次の国際協力機関です。アメリカはなにも示唆しません。たとえIMFを強化するとしても、ヨーロッパ諸国も今の影響力を失いたくないのです。ベネルクス3国が中国よりも大きな発言権を持つ制度です。中国も、狭く限定した国益に従うより、他の国際的な責任を重視することはないでしょう。

世界の経済統合が進んでも、危機を契機に政治統合が進むか、というのは、G20で容易に結論が出るほど簡単な問題ではないのです。つまり、世界金融危機の重要な原因は残るでしょう。

FT March 15 2009

Shareholder value re-evaluated

The Guardian, Sunday 15 March 2009

Tackling poverty in hard times

Peter Singer

The Observer, Sunday 15 March 2009

Look no further than inequality for the source of all our ills

Will Hutton

(コメント) 危機により、平等や信頼といった社会的な価値が見直されます。

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The Economist February 21st 2009

Eastern Europe: Argentina on the Danube?

Ukraine’s economic slump: Default options

Charlemagne: Unruly neighbours

Eastern European banks: The ties that bind

(コメント) 東欧経済の金融危機について、EUやユーロの責任と関与が問われています。なるほど、西欧の銀行が東欧に進出し、買収したことを別にすれば、危機の経過はアイスランドとそっくりです。

「最大の弱点は金融システムである。それは、経営状態の悪い地元銀行と、監督の行き届かない西側銀行の子会社からなります。ブームの間、外国からの資本をがつがつ食べて、経常赤字を膨らませた。どちらの銀行も、無思慮な、しばしば外貨建の融資を行って、多くの返済が止まっている。地元の銀行は倒産し、外国銀行の支店も親銀行の融資に頼っている。その本国も問題を抱えている。・・・オーストリアの東欧向け融資はGDPの80%に達する。」

ユーロが強くなったことはユーロ圏の新規加盟国にとって新しい問題でした。また、ユーロを採用していない国でも、ユーロ圏に加盟するために財政赤字を拡大できません。

排外主義や民族主義、極右でさえ、今のヨーロッパは再生しつつあります。しかしEU内の政治的な対立を抑制しているのは、少なくともEUによる通貨価値の切下げや保護主義の抑制です。


The Economist February 21st 2009

The collapse of manufacturing

Globalization: Turning their backs on the world

Chinese business: Time to change the act

German manufacturing: A thousand cries of pain

(コメント) グローバリゼーション、すなわち、貿易、投資、移民の増大が富をもたらし、特に新興諸国の追い上げを可能にする、という積極的な傾向は逆転しつつあります。旧工業中心地域でも、新興地域でも、製造業や輸出市場が大幅に変調をきたし、各国政府はなかなか協調した刺激策を採れません。

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The Economist February 28th 2009

The bill that could break up Europe

The White House and America’s banks: In knots over nationalization

Ex-communist economies: The whiff of contagion

Germany: Europe’s reluctant paymaster

Charlemagne: Europe’s family squabbles

American banks: A ghoulish prospect

(コメント) EUは東欧諸国の金融危機を救済すべきでしょうか? ドイツは救済基金を拒み(失敗した外国の債務者を救済し、ユーロの価値を損なう)、フランスは工場移転を拒み(自国の雇用を失う)、イギリスやイタリアは移民労働者を排除しています。国内の銀行救済に対して有権者の不満が高まっている時期に、ユーロ圏の辺境や外側にまで、救済支援に財源を避けるでしょうか?

EUがもたらした相互依存関係を考慮すれば、これ以上の危機が自国に波及しないように、救済を実施しなければならないでしょう。その負担は、西と東の政府間で、また債権者と債務者との間で、分担されます。国際機関も協力するでしょう。

アメリカでは銀行の(一時的)国有化が問題になっています。

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The Economist March 7th 2009

Barack Obama’s budget

Charlemagne: Extremist nightmares

Monetary policy: Now for something completely different

Japan’s economy: Rebalancing act

Economics focus: Give me scientists…

(コメント) オバマの予算案を批判しています。景気刺激策としてではなく、1.その前提が楽観的すぎる、2.税制改革をするべきだ、3.富裕層の2%に限定してはその他の改革を実行できない、と。

1930年代と比較して、EUの政治を分析しています。確かに、同じようなニュースが流れています。少なくとも、まだ、経済危機の深刻さが抑制されています。ドイツが賠償金を拒んでハイパーインフレーションを迎えたような条件が、EU内のどこかに再現するのは、無視できないけれど、遠い可能性です。たとえ東欧がその方向に近付いても、政治家たちは同じ結末を回避しなければならないと知っています。

日本が、ついに、過剰貯蓄と経常収支の(大幅な)黒字を失った、という記事が目を引きます。世代サイクルを仮定した貯蓄行動から高齢化の帰結として予測されていたことが、本当に起きたのでしょうか? むしろ、派遣労働者などの貧困問題、出産の減少が、直接に影響していると思うのです。黒字累積が支配していた時代、日米間の激しく対立した交渉がなくなったとき、どのような世界が見えてくるか? いよいよ公的債務のGDP比率や資本逃避を憂慮しなければならない?