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IPEの風 1/18/10

京都市地下鉄の今出川駅で、誰か、子供が下手な口笛を吹いているな、と、ちょっと気にした人はいませんか? 私はそのスローテンポな、足踏みするような音と、口笛が好きでした。

しかし先日、わかったのです。それはエスカレーターでした。

小説だけでなく、株式市場の変動に一喜一憂するのも、アニメや漫画の主人公と一緒に興奮するのも、私たちの特別な能力のようです。

携帯電話やインターネットが世界各地の文化をグローバル化し、人間の本質まで変化させるかもしれない、という予感が漂うのも当然です。文化を作る条件は、母親の膝の上や子守唄、父の背中ではなく、インターネットの伝える「衝撃と恐怖」、i-PodG-phoneKindle、などでできた電子情報ネットと、その隔壁・操作です(もちろん、中国政府の検閲とグーグルの反撃を意識して)。

インターネットがもたらす社会変化は、多くの産業や労働の在り方を変えてしまいました。新聞社はつぶれ、仕事のアウトソーシングが進み、ウォークマンやレコード、CDが消え、雑誌や本も急速になくなります。市場を介して分業していた世界が、今では、インターネットを介してつながり、伝統的な関係を離脱し、イベントごとに組織されていくように見えます。

The Economistは、携帯電話の爆発的な拡大を伝えています。「10年前、世界には5億人弱の携帯電話契約しかなかった。今では、46億人の契約者がいる。いたるところで利用者が増えており、裕福な国では、その人口を超えた。貧しい国でも、住民の半数が携帯電話を利用している。」

彼らが市場の価格情報、都市の職探し、海外に行った出稼ぎの家族と話し合う、などと、これまでも記事で読みました。それゆえ、たとえば、現代の移民たちは出稼ぎから永住に変わっても、その土地の言語や文化になかなか同化しようとしない、と懸念されます。あるいは、援助交際や児童ポルノ、闇金融、オレオレ詐欺が捕まらない。

かつて、インターネットがほとんど「アダルト情報」(エロチカ、裸の女性)しか流していない、と非難された時代もありました。しかし今や、さまざまな知識や情報をホームページの閲覧によって得る環境が結び付くことで、壁を倒した後の世界における「無尽蔵なポケット」となり、音楽も、テレビも、映画も,電話も、本も、辞書も、何でもインターネットで手に入るわけです。

しかし、インターネットの世界に、私は秩序を求めたいです。そうすれば、もっと根本的な社会の変革を組織する媒体になれると思うのです。

たとえば、政治家や選挙に関わる情報を観れば、悪質な宣伝ビラと同様の情報が充満しています。あるいは、性犯罪や詐欺商法のたぐいがいっぱいです。意図的に他者を貶める言葉を、これほど際限なく発し続けるのは、インターネットの世界が匿名であり、いつでも姿を隠し、逃げられると思うからでしょう。

もしインターネットが虚偽の情報に対する責任を問い、個人を特定できるようにすれば、こうした悪魔的な衝動や手段は大幅に減るのではないでしょうか? あるいは、良質な情報だけを集めたソーシャル・ネットワークから、インターネット・タウンを建設するべきでしょう。ドメイン名は、ドットgg。グッド・ガバナンスです。

情報の質を確保するために、その審査制度や情報の確認、情報発信の責任、虚偽や詐欺を取り締まる調査・捜査権限、を認めます。

インターネットが健全になれば、日本では、きっと女性の労働者や専門技術者が新しい企業、新しい金融機関をもっと立ち上げるでしょう。派遣労働者もパートの職員も、能力があれば、もっと安定した職場に移ります。子供たちも、能力と関心に応じて学校・学年を変わり、男女はふさわしいパートナーを探します。それらはどれも、すでに行われていることです。私が求める「秩序」とは、情報の真実を問うこと、情報の発信者を特定し、その市民としての責任を問うことです。

インターネットが人類や社会の性質を変化させるとしたら、水平的な、移動しやすい、信頼できる関係を築き,その上に活力のある経済が再生する、と私は期待します。

エスカレーターの不具合が修理されたら、あの少し物悲しい口笛を聞けなくなるでしょう。それはやはり、どこか残念で、せっかく友達になった小さい男の子が消えてしまったような、さびしい気分です。コンピューターやインターネットだけでなく,昔から,私たちは機械や道具の中にも,魂を感じるのです.

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