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IPEの風 1/11/10

この10年が良かったのか、悪かったのか? 日本では最後に自民党政権が敗北し、時代が変わり始めたことを示しました。チャイメリカ、ユーラビア、パックス・シニカ(Chinese Peace、中華帝国)、・・・日本はアジアや人類の未来に何を示すのでしょうか?

朝日新聞、1月4日「アジアとの共生―手携え人づくりの大循環を」

世界の安定と調和を実現するのは、アジアの新興諸国が「輸出と貯蓄」から「エコ」と「安全」への転換を進めることだ、と述べています。日本は経済を成長させるためにも「アジアへの融合」を目指します。その際、頼りになるのは、どうも政府ではない。政府間交渉で軌道を敷くのは難しそうです。そこでむしろ、企業や市町村の活力を期待します。

「商品・販路」「人材育成」において、日本企業は、欧米にも中国にもない、優れたモデルを示せるかもしれません。また、「島根県の隠岐・海士町は、千葉県我孫子市の会社が開発した瞬間冷凍装置を導入し、中国に新鮮な白イカや岩ガキなどを輸出している。」・・・まるで、冷凍船が開発されてヨーロッパ市場に牛肉を輸出できたアルゼンチンのようです。

そして、日本の中小企業や地方の村から、アジア市場をターゲットにしたブランド商品を育てます。アジアから、観光客も、留学生も、労働者も受け入れて、また、アジア・マネーも呼び込んで、日本の再生を評価してもらいます。アジアを舞台に、不確実性にもひるまない人間を育てよう、と論説は主張します。

それがアジアに広がる共同体なのです。日本と中国のGDPを気にするより、「経済や社会の下部構造を築く」ことで、共生を喜ぶ新しい世代が育ってほしい、と願います。

読売新聞、1月9日、白石隆「日本の針路 『技術立国』掲げよう」

「日本が輝いている部分はたくさんある。」という白石氏は、「科学技術立国」を、「富国強兵」、「アジアの盟主」、「経済大国」、に代わる目標と考えます。「覇権」でも、「説教」でもなく、「先端的な科学技術をいかして縁の下の力持ち」を目指す。

そのまま一気に、白石氏は「日米同盟なしに東アジア共同体は構築できない」と断言します。「地域的安全保障」、「経済的相互依存」、「水平分業」、この中に中国も取り込むことが望ましい。逆に、日米同盟が揺らぐと、中国を中心にした垂直分業の世界に取り込まれる。ASEANは(そして、日本も)原材料(と技術)の単なる輸出国になってしまう。

日経新聞、1月9日「未来への責任(5) 労働市場を育て雇用不安の根を絶て」

日本の労働市場を改善するべきです。論説は、二つの点で雇用のゆがみを指摘します。一つは「パート、派遣などの非正規社員」の低賃金、もう一つは「若者の失業率の高さ」です。

その重要な原理は、「同一労働、同一賃金」です。また、この原理による市場型の労働配置・再編を目指すためにも、解雇のルールや「欧州型のワークシェアリング」を求めます。再雇用や再訓練の仕組みが、解雇のルールと一体に議論されるなら、それも可能ではないか、と私は思います。

若者、女性、外国人が、労働市場で差別されていることが、二重労働市場として、発展途上国の2重経済モデルと同じ視点から分析できることを私は学びました。差別された、生産性の低い分野から、優れた労働者を移動させることは、新しい技術を導入する発展途上国の近代部門に労働者が移動するのと同様に、社会的な仕組みを構築することで、経済全体の富を増やすでしょう。

インターネット上で、20071129日(木)、読売国際会議2007年末フォーラム「日本の決断流動化する世界と日本外交」を見つけて、まるで彼らが今話し合っているような錯覚を覚えました。ポール・ケネディが報告者でした。・・・

「グローバルなパラダイム(理論的枠組み)の変化には、すさまじいものがある。しかし、欧州、ロシア、アメリカなど他の地域に比べ、日本にとって変化ははるかに小さかった。日本の地位はそのままで、世界のパラダイムは変化してしまった。そこに日本の課題がある。」

・・・私はゼミ生たちと、再び、帝国と共同体について議論していました。なぜ中国は(同じ東アジア共同体を唱えても)帝国をもたらすのか? 言い換えれば、軍事的拡大、領土的拡大を目指す、と恐れられるのか? たとえ貿易や投資であっても、影響圏を確立しようとして企業が国家戦略を担うのか?

・・・それは、中国の国内秩序が硬直的であるからだろう、と私は答えました。

国内の利害対立や社会紛争を抑えて、共産党の政治支配が続くためには、外的な変動や不確実さは邪魔であり、国内の支配秩序にとってプラスかマイナスとして評価され、その評価を絶対的に主張します。帝国は、国内秩序を維持するために外部の不安定性を排除し、あるいは、吸収する仕組みであり、政治的動機で誕生し、拡大しました。

・・・それなら、小沢氏のように、中国の指導部と友好関係を築くのは愚かなことではないか?

・・・そうでもない、と私は考えました。中国を支配する者は、すなわち、平和を維持して正当な政治・社会秩序を築くためには、中国の歴史や思想に基づいて、内部の権力闘争を勝った者でなければなりません。その過程が外から見て「民主的でない」としても、彼らと交渉する必要があり、条件次第では、共同体を築く過程に参加することさえ可能でしょう。

・・・冷戦の下でも、西ドイツの指導者たちはソ連との関係を深めて、緊張緩和を目指しました。

・・・たとえるなら、中国(のエリート国家)は巨大なシンガポールである、と私はゼミ生に話しました。1000個のシンガポールか、あるいは、1000個のドバイか? 成長や投資であれ、金融危機であれ、中国の変化は21世紀の国際秩序を決定する最重要な要因です。

・・・もし中国の国内で、政治秩序がもっと柔軟に、もっと多元的に組織され、変化するようになれば、帝国化を恐れる事情は大きく後退し、対外的な調整を受け入れても、その国内圧力を分散できるはずです。当然、中国の内部にも、また、共産党自身にも、さまざまな考えがあり、利益集団があるでしょう。香港に限らず、沿海部の中産階級が、韓国、台湾、インドネシアのように、民主化を求めるのは当然です。

・・・中国の中に「ベルリンの壁」がある、と私は話しました。鳩山首相は、ゴルバチョフにベルリンの壁を倒すよう求めたレーガンでなくても、せめてイラン民衆の声を聞くように求めたオバマのように、中国の政治姿勢をときには厳しく批判しなければなりません。それは、中国の政治が民主主義かどうかではなく、それが中国人民の利益になり、またアジアの平和と繁栄のためになる、と信じるからです。

・・・中国で、麻薬密輸の罪に問われたイギリス人、アクマル・シャイフが処刑され、イギリス政府は強く抗議しました。これが、逆に、「アヘン戦争の屈辱」を持ち出して反発する市民の声を刺激しています。同様に、日本政府も、正しいと思う主張を行って、何度でも自らの過ちを正し、反論し、共通の政治意識を得るためアジアにおける軋轢を引き受ける覚悟を示してください。

鳩山首相にできるでしょうか? 資産家・名望家の生まれは鳩山氏の欠点であり、また、自民党、金権・派閥政治の歴史は小沢氏の欠点です。二人が民主党の指導者として改革を唱えるとき、今のような疑惑があれば、ただちに深刻な不信感と失望を生じます。

一つは、公平、公正で、透明なルールを国民に示し、すべての政治家とともに、自分たちが率先してもっとも厳密にそれを守ることです。また一つは、自民党政権と旧政治構造を復活させず、しかし、ビジネス界や投資家、保守層の不安を緩和し、一定の理解を得る役割を担いつつ、政治家の世代交代を進めることです。もちろん、自分こそがそれを担える、という気概があれば、それを実行してください。

あなた方の主張は、一部の政治家を黙らせることで足りるのではなく、改革を求める有権者、さらにはアジア諸国の指導者や国際秩序の主要な参加者によって注目され、試されています。

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