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IPEの風 9/13/09

医療保険制度改革とアフガニスタンの不正選挙は、オバマ政権の支持基盤を大きく損なったようです。虚実入り乱れた反対派は勢いを増す一方で、和解や革新、国際協調を唱えて登場したオバマの新しい政治スタイルが深刻な危機に直面しています。

世界秩序を震撼させた二つの記念日は、言うまでもなく、並んでいます。2001年の「9・11」、同時多発テロ攻撃。2008年の「9・15」、リーマン・ブラザーズ倒産。

追悼式の様子を伝えるニュースを観ました。噛みしめるように、叩きつけるように語る、「彼が生きていてくれたら・・・」という、中年女性の震える姿が痛ましい感覚を伝えていました。彼女の夫は9・11の犠牲者です。

NHKスペシャル「金融危機から1年」を観ました。ウォール街が復活してしまったこと。国民の強い不満はあっても、金融改革法案が進まないこと。それは(多分?)中国との金融覇権競争に対する政治家たちの不安が原因だ、と伝えていました。

アメリカの消費は急速に抑制されています。かつてのような成長は期待できないでしょう。日本企業もアメリカへ輸出できなくなって、新興市場にもっと関心を向けています。たとえば、コマツはアメリカの芝刈り機から中国のコンバイン市場へ重点を移しました。しかし、新興市場における競争は未だ経験したことがないほど厳しく、品質が高くても価格の引き下げは避けられません。グローバル・サプライ・チェーンを構築するために、世界の生産拠点に基幹部分も移転するしかない。しかし、2万人以上の国内雇用をどうするのか? こうして日本企業の成長が日本の製造業の空洞化をもたらす点で、番組は終わります。

朝のNHKニュースでは、就職活動のためにスーツを貸し出すNPOが紹介されていました。自分の息子が早く亡くなって、彼に用意したスーツを誰かに利用してほしい、という両親の願いが伝わります。さまざまな事情で派遣社員として働いていた人たちが、解雇された後、何の仕事も得られない。正社員になることが非常に難しい、という状況を根本的に変えてほしい、と思いました。

・・・新興企業の雇用や資金調達、農業の再生、正規雇用と派遣や一時雇用との格差、女性差別、温暖化ガスの排出量削減、など、すべてが大きな枠でつながっていると思います。

・・・さらに、その枠には、病院、学校、年金制度、医療保険、生活保護、高齢者の介護、住宅、道路建設、天下り、官僚制、中国製品の低価格、国際競争力、デフレ、国債の累積、振り込め詐欺、麻薬、ネット犯罪、自殺、日米安保、沖縄、為替レート、直接投資、東アジア共同体、IMFや安保理の改革、・・・といった変化の争点がリンクします。

・・・誰でも、何歳からでも、中学や高校で学び直し、企業が優れた人を求めて競って雇用するような、もっと自由で、もっと柔軟な社会を求めます。雇用と教育の機会が豊富に与えられる、もっと平等で、もっと安定した経済が地方に用意されているとしたら、世界市場や金融ビジネスにおける激しい競争にも、企業や銀行、官僚は全力で挑めるでしょう。地方経済が競争を拒むのではなく、異なった、長期的な視点で市場を利用します。

・・・内外の政治経済秩序を設計して、自由な発想を実現する社会的なパワーを、政治は組織できるでしょうか? これまでになく多くの人が、新政権の閣僚を呼び出すニュースを、厳しい表情で観ています。

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