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IPEの風 8/31/09
金大中やケネディーは去って、バーナンキは残りました。アフガニスタンの選挙も、日本の選挙も、これから何が起きるのか、人びとは静かに聞き入り、次の変化に注目しています。
新しい民主党政権は、どのように、高齢化する日本社会に活力を取り戻し、社会正義と国際秩序との調和を確立するのでしょうか?
民主党は、中学校や高速道路を無料化したり、出産や育児に給付したりすることで、政治経済システムを変えられるでしょうか? 時給を最低1000円にしたり、派遣労働を禁止したりすることで、雇用や所得を増やせるでしょうか? 日本のガバナンスを改善することで、世界市場競争において優位を見いだせる新興企業や産業を、東京だけでなく地方で、次々に起こせるでしょうか? それができる、と信じるなら、その政治経済メカニズムをもっと説得しなければなりません。
鳩山代表や岡田幹事長、前原副代表など、民主党の主要なメンバーが次々にメディアに登場し、さまざまな説明を行う一方で、自民党の話はほとんど消えてしまいました。政権交代の威力を実感します。The Economistは、自民党の敗北で、日本の冷戦時代がやっと終わる、と理解しています。
次の政府は、社民党との連立であるからこそ、平和主義の理想が、現実において、どのように実行できるのか、その手段や実現過程を普遍的に(世界に向けて)示す必要があるでしょう。つまり、アメリカ政府にも、アフガニスタンの民衆にも、その理想が実現できることを説得しなければなりません。
オバマ政権と協力して、冷戦後のアジアの秩序を実現したいなら、今も、「安全保障」について具体的なアイデアを、特に、インド洋の海上給油活動に代わる対米協力策を示さなければなりません。民主党と一緒に、社民党と国民新党からも代表を出し、アフガニスタンへ行ってはどうでしょうか? そして新しい安全保障政策の構築に参加するのです。
またThe Economistは、民主党政権を予想して、その政策を心配しています。アメリカ主導のグローバリズムを批判し、国内の再分配を重視するばかりで、成長戦略がない、と考えるからです。しかし、小泉首相の唱えた「構造改革」を今も期待している点は、所かまわず市場自由化を賛美するグローバリズムの短慮だ、と私は思いました。
むしろ自由化の条件、効果的な統治メカニズムや政治家・官僚の情報処理・政策立案能力が問われています。たとえば、資源が豊富な国に政治腐敗や内戦が多く、国民は貧困に苦しんでいる現象を、「石油の呪い」として繰り返し議論しました。日本はどうでしょうか? 輸出に頼って、新しい工場は海外に建て、国内では派遣労働者を増やす、というのも、結局は外貨準備や貯蓄を失ってしまうだけの、ガバナンスの失敗、であったかもしれません。
「グローバリゼーション」の過程に参加するために、日本の政府は「オランダ病」や「自由貿易」、「通貨危機」、などに対応し、公的債務管理の長期的展望・成長戦略を示さなければなりません。私は、それを「グローバル国家」と呼びたいのです。
国民新党は、小泉・郵政民営化選挙で、自民党から分裂した党派であると思います。郵政民営化見直し論が今後どうなるのか、地方経済の活性化とともに、新政権の重要なテーマにしてください。また、社会民主党は、護憲運動・反戦運動や、さまざまな市民運動、NPO・NGOの力を集める政党として、左派のイデオロギーを継承したと思います。国民参加や情報公開を確立し、国内と世界の環境保護・温暖化防止体制を意欲的に指導する力量を、日本政府に与えてください。
市場自由化を絶対視することも、市場を敵視することも、私は間違いだと思います。政治よりも市場で解決すべき問題は多いでしょう。地方経済の再生や雇用を重視するのであれば、むしろ生活保障や就労支援を充実した地域から、率先して自由化するべきではないでしょうか? 異なるイデオロギーをぶつけ合うことで、新しい制度や政策を生み出す政権交代の威力を、これから、示してほしいです。
メディアや世論は、鳩山と小沢の二重権力を騒ぎ立てるより、彼らは二人で一人なのだ、と思うほうがよいでしょう。学者肌の、マイペースで、優雅な?鳩山代表が、田中角栄の金権政治で鍛えられ、自民党の長老支配を嫌って離党した小沢氏と盟友関係を結んだことで、二人は現在の日本政治を生み出す震源となったわけです。
たとえば、もし鳩山だけが、友愛と生活者優先の政治、アメリカ従属のグローバリズム批判、中国を重視したアジア共同体の建設、などを唱えても、それが実現できると思う人は少ないでしょう。しかし、小沢なら、やるかもしれない、と恐れるのです。鳩山と小沢が組んでいるから、新しい連立政権としても、民主党としても、権力の中枢を動かせるのです。
政治の世界であれば、それが重要な論争で内部の権力闘争を生じ、分裂と潰し合いに向かうのかもしれません。たとえば、自民党の衰退は、個々の政治家の能力より、安倍・麻生と福田・谷垣との異なるイデオロギーが、議会多数派を利用した積極的な政策展開を許さなかったのではないでしょうか? 成長と産業振興、北朝鮮や中国の脅威、ナショナリズム・愛国心、などをめぐる自民党内の論争を、一つの政策構想・国家戦略にまとめる力が(冷戦終焉とバブル景気の崩壊で)失われたのです。
このまま日本の人口が減少し続ければ、(将来の)南北再統一した朝鮮半島や、フィリピン、ベトナム、タイなどと並んで、アジアの中規模国家になるでしょう。他方、人口規模の点では、中国、インド、インドネシアがアジアの政治バランスを模索します。だから靖国神社に並んで参拝し、ナショナリズムを刺激している時ではない、と思うのです。
・・・人口、軍事力、ナショナリズムではなく、もっと開かれた、民主的で、革新を好む、優れた社会制度を構築することで競争する、新しい二大政党が日本の地表にも現れつつあった、と未来の歴史家は回顧します。
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