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IPEの風 6/1/09
北朝鮮の核実験とミサイル発射について、日本政府はどのように議論し、対処するのでしょうか?
自民党も民主党も、厳しい制裁措置を唱えます。しかし、制裁ではなく、もっと安全保障の全体を議論しなければなりません。経済制裁が何か重要な変化をもたらすでしょうか? 私には疑問です。日本は北朝鮮にとって重要な経済関係をすでに持っていません(在日朝鮮人の送金が話題になる程度ではないでしょうか?) 中国が制裁に参加しないなら、効果はないでしょう。日本の政治家たちは、何かしなければならない、という強硬論を心情的に唱えて、ますます問題の本質を見失ってしまいます。
NHK日曜討論を(後半だけ)観ました。司会のNHK解説委員・島田敏男氏が的確な質問を出して、大変興味深い内容でした。日本政府の姿勢は、「拉致、核、ミサイル」を一体として扱うものです。ところが、一部の政治家は、「核基地への先制攻撃」(さらに、日本の核武装)を唱えます。それは、不毛な議論です。北朝鮮の核施設やミサイル基地を攻撃することで、その後のシナリオをどのように考えているのか? と森本氏は問います。
染谷氏は、ピンポイントの議論ではなく、もっと大きな、安全保障の枠組みを議論しなければならない、と主張します。日米安全保障条約によって、日本は核抑止力を得ているのであり、これが信頼できない、という議論は正しくない、と指摘します。日本はアメリカとの同盟関係を強化し、国際情勢に合わせて調整しながら、同時に、中国とも軍事情報を交換し、信頼を高める努力を強めるべきなのです。この二つは矛盾するものではない、という日本の姿勢が重要です。
あるいは、岡本氏や伊豆見氏は、中国が核ミサイルの照準を日本に向けている、核を搭載した潜水艦が日本近海を潜航している、と指摘します。北朝鮮の核やミサイルを心配するなら、なぜ中国の問題を取り上げないのか? 他方、リー氏は、オバマ大統領の核全廃を目指す演説を重視し、日韓がこの機会に、朝鮮半島から東アジア全域の非核化に向けて協力する姿勢を強めるべきだ、と考えます。
拉致問題や、北朝鮮との国交正常化交渉、そして、朝鮮半島の平和的な再統一、を展望するなら、地域安全保障の確立と同時に、経済援助や市場統合、投資、移民、貿易の安定的な秩序についても主要国が合意し、各国に参加を呼びかけることが重要です。6カ国協議はこれを議論できるでしょう。日本政府は拉致問題に交渉を限定せず、地域の平和と繁栄の道を示してほしいです。
さて、学生の皆さんに話した際、私は簡単にいくつかの注意点を述べました。最も重要と思うのは、ミサイル発射や核実験に対して、感情論や個人プレーに走る政治家をたしなめ、もっと大きな全体像を見て、動かすことです[@全体を見る。A事態を動かす。Bショックに備える]。さらに、国民に対して政府の姿勢や選択肢に関する情報を開示し、時機にかなった議論を深めなければなりません[C国内合意を形成する。D時機を逃さない]。最後に、日本が目指す政治や地域統合の理念を、ひろく他国にも理解してもらうことです[E解決の道筋を重視し、原則を明確にする]。・・・こうした姿勢を示せないほど、日本の政治家たちは選挙のことで浮足立っているのでしょうか。
The Economistを読むと、日本とカリフォルニアに関する記事が隣り合っていました。どちらの政治システムも、異なった意味で機能せず、政治的なマヒは財政赤字の累積に示されています。住民による直接投票制度が悪用されて、人々はますます公共財や社会保障制度のために支払うことを拒みます。飛び地や防御壁の中の住宅地で、政治家は宗教やセックスのような文化的価値により有権者を囲い込みます。
日本の財政赤字と国債発行は、世界金融危機と輸出の急激な落ち込みを理由に、もはや抑制の歯止めを失ったようにも見えます。世界の金融市場が財政赤字に関心を向けるとき、日本の投資家たちもパニックに巻き込まれて、国外に逃避するのでしょうか? インターネットや携帯電話のように、資本の移動経路が普及し、人々の不安に点火する時を待っている・・・?
ニュースステーションを観ていると、河川の多目的開発(?)、自然の状態を一部でも回復する河川の改修が成功した例を紹介していました。都市部でも、河川をコンクリートの壁から解放し、蛇行させて、河原を十分に広く取れば、周辺の植生が回復して多くの生き物が帰ってくる、ということです。もっと多くの町で、こうした河川とともに、政治のシステムを回復するために投資してほしいです。
北朝鮮が核を放棄するほどに、日本が優れた国内とアジア地域の政治的経路を構築してはどうですか?
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