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IPEの風 3/30/09
北朝鮮の長距離弾道ミサイルが発射されそうです。・・・ラッキー! これも自民党にとって追い風だ、と選挙前の政治家たちは計算しているはずです。
日本はOECD諸国内で群を抜いた景気の落ち込みを示しています。失業対策や雇用促進には、ますます財源が必要でしょう。こんなとき、高速道路料金の上限を1000円に下げることが、はたして画期的な景気対策でしょうか?
l 大幅な割引をETCによる料金に限るのは、あまりにも差別的ではないか? 私にとって大きな驚きであり、差別的・特権的な政府の強制は(ETC車ではないので)不快でした。
l ETC(自動料金収受システム)の普及を図る、という政策は、それほど重要でしょうか? たとえそうでも、他の方法で着実に実現すべきではなかったか?
l 土曜日・日曜日の乗用車に限る、というのも、何を意図したのか? 利用度が低い、ということかもしれませんが、分配に及ぼす効果に不満です。すなわち、
l 高速道路や周辺地域で交通渋滞が起きるでしょう。道路も痛みます。その費用はだれが負担するのか?
l 交通渋滞によって、トラック運転手たちには追加の時間と費用がかかるでしょう。
l 石油・ガソリン価格の上昇を、だれが負担するのか?
l 他の代替的な交通機関や娯楽施設は利用者が減るでしょう。
l 温暖化ガスの削減という政策目標と矛盾している。
l 一時的な政策ですから、追加の投資や産業誘致は期待できません。
l 慣れない休日の長距離運転で、交通事故が増えるでしょう。
当然、利益を受ける人はいます。
l 地方から首都圏に来ている労働者や学生は、帰省するのが安くなります。
l 休日に高速道路をドライブする人も増えるでしょう。
l それによって地方の観光や宿泊客、食費やお土産の購入、特にサービスエリアの収入が増えると思います。少なくとも一時的に。
l ガソリンの消費や自動車整備工場のETC取り付け作業、ETCの生産(そして普及に関わる団体の利益)が増えるでしょう。
しかし、それが望ましいと思うなら、一律に高速道路料金やETCの価格を引き下げるべきです。日本の高速道路がフリー・ウェイでないことは、地方の経済発展を大きく損なっていると思います。いっそ無料にするべきです。
観光旅館や土産物の販売だけに頼らず、地方に財政的な移転を行い、経済全体の活性化策を刺激した方が良いでしょう。たとえば、すでに行われているような商品券や優待券の競争と都市への販売を促す方がよかった、と思います。
ETCを備えた乗用車が一律1000円で通過する横を、トラックやETCのない車は8000円や1万円以上も支払うのでしょうか? このような不正義を強いる政府に、国民が拭い難い不信感・不満を持つのは当然です。
この政策によって景気を刺激できるでしょうか? 世界金融危機からの脱出に貢献するでしょうか? 環境と両立した持続可能な成長モデルへの移行を意識しているでしょうか? GDPの2%を刺激せよ、とガイトナー財務長官は世界に呼びかけています。麻生首相は、日本の政策を世界に主張できますか?
給付金が政争の具になって、景気対策としての効果を大きく殺がれたように、高速道路料金の引き下げも、ETCによる差別的扱いと選挙目当ての大盤振る舞いが露骨すぎて、とても経済政策とは思えません。「インフレ目標」など、政治的介入を嫌って抽象的に過ぎる金融政策に比べて、財政政策の時代錯誤的な利益再分配、温情主義、封建主義に眼を見張ります。
政治はお祭りだ、と聞いたことがあります。そうかもしれません。
しかし、もっと国民の立場で計算された、戦略的な目標や民主的な説得をともなうお祭りでなければ、浪費と失望を残すでしょう。日本政府は、貴重な政治的資本を消尽し、政治への国民の期待と信頼を損ない、重要な政策転換の機会を大規模に破壊しているのではないか?
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