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IPEの風 2/23/09

大工さんのいない島に、大工見習いの若者4人が訪れる、というテレビ番組(TBS、ワンステップ)を観ました。島の産業(農業)は衰退し、人口が流出し続けて、住民の89%65歳以上、というのは驚きです。50年前に住民が600人いた島で、現在は55人が暮らします。

いたるところに崩れた廃屋が並び、老人たちが住む家も雨漏りや戸の動かない個所が目立つけれど、もはや子や孫が帰ってくるわけでもない、と諦める姿がさみしそうです。

この島は、高齢化の進む中で、農業を改善できなかった、人口が減少し、主要な産業も生産拠点を海外に移し、優秀な若者たちは外国に機会を求めて流出して、傾いたままの、あちこち雨漏りのする家で、誰が帰ってくるわけでもない、と諦め、バラバラに暮らしている未来の私や日本人を思わせます。

21世紀がどうなるのか、特に、考えたことはありませんでした。しかし、金融危機が拡大し続け、政治が迷走する中で、そのような論説も目に触れるようになりました。

「世界的規模のワイマール」・・・フランスのジャック・アタリが、世界的な拡大を示す金融危機の末路を悲観しています。金融秩序は失われ、財政政策による支出の追加と中央銀行による債務の現金化で、ハイパー・インフレーションと民主主義への不信感が爆発します。世界的なワイマール共和国の崩壊現象を、私たちは体験しつつあるのです。

201211月、サラ・ペイリン大統領勝利演説」・・・イギリスの金融経済新聞、Financial Timesでも、悲喜劇調の論説が、アメリカの次の大統領選挙にサラ・ペイリンが当選した、という未来報道記事を載せています。オバマの自由主義、進歩主義は経済危機の波に呑み込まれ、その理想の火が消えてしまい、ナショナリズム、ポピュリズム、独裁者、軍事衝突、宗教・保守革命、などが世界各地で頻発します。

「失われた10年」再び。・・・不思議なことに、ほとんど注目されなかった日本について、再び記事が増えました。日本論・日本専門家は10年ぶりの盛況です。ただし、不況やデフレを世界に示す、新しいモデルになったから。新しい成長モデルを見出せないまま、過去の失敗について、日銀や、銀行・企業の債務処理、公共投資、円高、自民党、その他、さまざまな分野で過誤と責任逃れが入り乱れています。アメリカも、EUも、中国も、日本の失敗から、現代の衰退する社会が抱える多くの問題群を知るでしょう。オバマは、その感染を恐れます。

「中国」財政刺激策か、貿易戦争か? 人民元レート論争。・・・たとえアメリカ議会や財務長官が非難しても、中国が成長を回復し、世界貿易と世界金融の基軸になる趨勢を変えることはできません。人民元レートの安定化に万全を期す、と彼らが宣言するとき、各国はそれを意識した協調政策を取り始めるのです。

酔っぱらった後始末。G7、IMF、G20。・・・欧米日の旧支配勢力は、金融膨張の後始末に追われ、国際機関の政治構造を組み変えることにも同意します。IMFと金融市場がどうなるのか、よりも、今後、労働者の権利や暮らしがどうなるのか、という点に国際機関は重要な役割を担ってほしいです。

世界的規模の離婚。・・・豊かで、変化を恐れる、老人の住む島には、金融アドバイザーや離婚専門弁護士が若者の望む高級な職業として誕生します。他方、大工さんや土木工事を担う労働者は、もっと南の島から出稼ぎに来る人々です。彼らが再び、一つのコミュニティーを形成する方が良い、と思うようになるのが、21世紀かもしれません。

大学の誰もいない建物で、門衛所からカギを借りて研究個室に入りました。パソコンと数冊の本を持ち込んで、勉強します。昼ごはんを食べるために生協へ行くとき、キャンパスを眺めて一緒に歩く、お父さんと娘さんを観ました。とても嬉しそうで、広大なキャンパスの景観に満足した様子でした。もしかしたら、地方からお父さんと一緒に下宿を探しに来たのかもしれません。ここで精一杯学ぶ、という気概と、将来への希望を、強く感じる幸せなときでしょう。

多くの新入生が、そうであってほしい、と思います。もちろん、そうでない若者も多くいるでしょう。そうでない親も。しかし、21世紀は不透明で、おそらく、この国にとって苛酷です。

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