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IPEの風 12/29/08

年の瀬に.

90日間で2倍にします。」・・・これがマドフ・スキャンダルの元になったチャールズ・ポンツィの宣伝文句であったそうです。その投資方法は誰にも理解できませんでしたが、投資家の信じるような見せかけ、偽の証拠、成功体験、その他、人々の不安、強欲と弱みにつけ入る心理的な仕掛けが施されていたわけです。

証券取引に限らず、ますます電子化される経済活動、インターネットやEメイル、携帯電話による仮想的な現実には、こうした詐欺を容易にする多くの条件がそろっています。振り込め詐欺に関心が集まりますが、インターネットには日本のマドフたちによる広告があふれています。「90日間でやせる」・・・「90日間で合格する」・・・「90日間、無料で体験できる」・・・「驚くほど上達する」・・・「外国為替トレーディング技術を伝授する」・・・「恋人が簡単にできる」・・・「絶対、英会話ができる」・・・「XX資格が取れる」・・・「OO病が治った」・・・

そのサイトをクリックした人の1%でも騙せたら、儲けは莫大です。詐欺グループは外国に拠点を置き、大規模な資金洗浄や、情報と技術、スタッフの共有・転売をしていると思います。ヴァーチャル・スペースや携帯電話などを利用した国際犯罪に対して、警察や治安組織は十分な対策と対応能力を確保しているのでしょうか?

アイスランドが国家規模の略奪行為、インターネット銀行を介した詐欺的な利益拡大を続け、破たんしました。これも「ロウグ・ステイト “rogue state”」です.その原因の一部に、銀行側と預金者の双方が短期的利益を求め、長期的かつ高度に複雑な契約に含まれるリスクの発現を無視したことがあるでしょう。「シャドー・バンキング」の解体が進みます.私はG20におけるドイツ政府の提案に共感しましたし、今週のロドリックの論説も支持したいです。

ケインズが市場に介入しなければならないと考えたのは、不確実な市場の将来に対する投資家の心理や消費者の心理から,社会の集団的な決定を市場にゆだねてはいけない状態を生じる,と考えたからです.他方,企業組織の拡大と価格メカニズムの操作,労働者の組織化と硬直的な賃金決定,などが再び注目され,かつて大恐慌を克服するために市場機能の回復,破産処理,財政均衡化,を支持した思想がよみがえります.

発展途上国のインフレ抑制策に、ヘテロドクス・アプローチがあります。加速するインフレを抑えるためには,国内の超過需要を抑制しなければならず,金融引き締めと財政赤字の削減,それにともなう不況や失業増加が避けられません.しかし,もしインフレ期待が一瞬で抑制できれば,大規模な失業を避けることができます.ヘテロドクス・アプローチは,為替レートの固定化と貿易自由化によって,国際価格(あるいは主要貿易相手国の相対的に低いインフレ率)を輸入することで,これを実現するわけです.

多くの発展途上国や移行経済がドル化し,あるいは,EUに加盟し、ユーロを採用することで、政治的・社会的な安定した秩序と経済的繁栄を手に入れることができる、と信じたわけです。しかし,それは不可逆的な通貨統合,社会・政治統合ではありませんでした.自分たちの通貨や金融政策,社会秩序,法律が信用できない国に住む人々にとって,一時的な避難所であるわけです.だからと言って,究極の答えではありません.

アメリカとイギリスだけでなく,ECBも,中国も,金利を引き下げました.日本政府も、膨大な過去の債務があるけれど、世界不況への防衛線を他の主要諸国、また、中国とともに築かねばなりません。投資の落ち込みや消費の減退は続き,グローバリゼーションとともに世界的な景気循環がよみがえったのだ,と気付くわけです.

金融機関の救済や公共投資だけでなく,貿易のルールや国際金融秩序にも世界恐慌を回避する仕組みが求められています.しかし,The Economistの年末号を読むと,保護主義や競争的切り下げ,通貨秩序の崩壊,ナショナリズムは,地下深くからよみがえる瞬間を待ちます.

数か月の失業手当や,住居の確保も欠かせませんが,多くの人は失業そのものを恐れます。それは所得を失うだけでなく、社会的な地位(そして意味)を失うからです。失業しても雇用されやすい構造の社会であれば、もっと新しい職場を探したり、もっと新しい技術を採用したりできるでしょう。

私は学校(中学・高校・大学)を開放し、失業者に奨学金を与えてはどうか,と思いました。子供が減って,学校の設備には余裕ができたと思います.もちろん同時に,こうした学生に対応できる教育内容を開発し,優れた教員を大量に採用して,育ててください.社会人やさまざまな年齢,経験を持つ人が増えることで,学校の意味は大きく変わります.

バイトやコンパで忙しい学生たち,両親の期待や苦労を気にしない,漫画やインターネットが知識のすべてで,講義や読書には見向きもしないような学生たちがいます.そうであれば,学生の半分は休学させて,働く方が良い,と指導するべきでしょう。社会に出てから,もっと勉強しておけばよかった,と思うことも多いはずです.そんなとき,彼らは復学して,大いに学ぶことを楽しめば良いからです.学籍社会や就職活動の在り方も根本的に変わるはずです.

それは地球が平らであるとか、月までの歩道を建設するような話でしょうか?

インターネットで、ポルノや犯罪、自殺を助けるのではなく、情報・意見交換や積極的な投資家の育成に役立てるべきだ,とW. Pesekは書いています.日本という国が,この社会の仕組みが,もっとダイナミックに動くのを見たい,と思います.現実の法律や制度,規制,団体が,何層にも絡み合った既得権益を守っているから,不合理な決定に従う中で人々は活力を失います.インターネットによる新しい空間は,それを打ち破る可能性を持っています.

しかし,逆に,抑圧された現実の生活から逃れる空想が,極端な破壊や不道徳,反社会的な発想と行動を蔓延させる装置に吸収され,競争的に悪化して(個人であれ社会であれ)パニックに至るとしたら,公的な介入が必要です.ヴァーチャル空間にも,私たちは社会秩序を必要としています.

イスラエルの爆撃機がガザ地区を空爆した、と報道されています。何が起きているのか? なぜ占領や軍事衝突が続くのか? 私にできることは何か? せめて,以前、読みかけて、そのままになっていた、ポーリン・カッティングの『パレスチナ難民の生と死』を、再び読み始めました。

バーナード・クリックが亡くなり、アンドリュー・ギャンブルがその業績を短く振り返っています。「政治」を動かす「活動的な市民」という理想について.

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